カップ状容器
【課題】補強部材としての機能を有するインモールドラベルを活用して、フランジ部全体の構造を強化し、落下や運搬時の衝撃に対して、インモールドラベルの上端縁における容器本体の肉厚変化部分に生じやすい亀裂の発生を抑制して、機械的強度に優れるインモールドラベル付き合成樹脂製カップ状容器を提供する。
【解決手段】外鍔状のフランジ4を有する、射出成形された容器本体2と、補強部材としてのインモールドラベル8とから構成されたカップ状容器であって、インモールドラベル8は胴部の外周面下端縁からフランジ4の下面外周端まで連続して設けられ、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有し、容器本体を構成する樹脂材と相溶性のある材料より表面層8cを構成する。胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベル8がフランジ4の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成する。
【解決手段】外鍔状のフランジ4を有する、射出成形された容器本体2と、補強部材としてのインモールドラベル8とから構成されたカップ状容器であって、インモールドラベル8は胴部の外周面下端縁からフランジ4の下面外周端まで連続して設けられ、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有し、容器本体を構成する樹脂材と相溶性のある材料より表面層8cを構成する。胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベル8がフランジ4の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外鍔状のフランジを有する容器本体にインモールドラベルを設けた合成樹脂製射出成形品であるカップ状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有底筒状の胴部と、胴部の開口部に連設された外鍔状のフランジを有する、射出成形された容器本体と、補強部材としての機能を有するインモールドラベルとから構成された合成樹脂製カップ状容器は、簡易な使い捨て容器として大量に使用されている。
【0003】
上記のようなカップ状容器は、容器のフランジ部分の上面を利用して、アルミ箔や樹脂合成紙などの蓋材を接着して、容器を密閉するようにして利用される。しかし、落下あるいは運搬途中の衝撃によって、フランジ部分に強い応力が働くことにより、破損することがある。従って、構造的に強いフランジ部分を有するカップ状容器の実現が求められている。
【0004】
上記のようなインモールドラベル付きカップ状容器においても、ラベル表示は容器の外から明瞭に目視できなければならないため、インモールドラベルは容器本体の胴部外周面に設けることが多い。このインモールドラベルは、表示、補強等の機能を有するラベル層に、熱溶着によって接着するホットメルト型接着剤を塗布して形成した接着層が積層されて構成される。
このようなインモールドラベルを成形金型に配置して射出成形により容器本体を形成すると、インモールドラベルの接着層が射出された高温の溶融樹脂によりラベル層と容器本体が強く溶着し、表示機能を有するだけでなく構造的にも補強された容器を形成することができる。
【0005】
また、上記のカップ状容器では、各々容器本体の一部であるフランジと胴部の境界部分(以下、角部)には、衝撃や押下荷重による内部応力が集中しやすい。この角部近くにインモールドラベルの上端縁が配置されると、このインモールドラベルの上端縁部分で容器本体の肉厚が変化する。肉厚が変化した部分(以下、肉厚変化部分)は、上記した内部応力が集中するため、当該箇所より亀裂が生じやすくなり、胴部に破断などのより大きな損傷を招く恐れもある。
【0006】
従って、このようなインモールドラベル付きカップ状容器においては、上記の亀裂が胴部に発生することを防ぐため、インモールドラベル上端縁部分を、若干フランジ内部に食い込ませるように形成することで、内部応力が集中することで亀裂が発生しやすい肉厚変化部分を、胴部角部近傍に配置しないように工夫した容器もある。
また、同様の趣旨により、インモールドラベルを、フランジ下面の途中にまで設けた構成の容器もある(特許文献1)。
【0007】
しかし、インモールドラベルの上端縁部分を、若干フランジ内部に食い込ませるように形成したもの、あるいは、インモールドラベルを、フランジ下面の途中まで設けた構成のものにあっては、フランジに上記した肉厚変化部分が形成されるため、内部応力が当該部分に集中して、亀裂が生じる恐れがある。
【0008】
このような亀裂がフランジに生じると、胴部に生じた場合と同様に、発生した亀裂により破断などのより大きな損傷を招く恐れもある。
以上のように、両者何れの容器においても、フランジ部全体としての構造的な問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−227316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、補強部材としての機能を有するインモールドラベルを活用することで、フランジ部全体の構造を強化することを第一の目的とする。
さらに、内部応力の集中に起因する亀裂発生の原因となる肉厚変化部分の形成を最小限にすることで、強度に問題のあるフランジ構造を改善し、落下や運搬時の衝撃による亀裂発生の抑制を第二の目的とすることによって、強度が強く構造的にも優れるインモールドラベル付きの合成樹脂製カップ容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主たる構成は、
有底筒状の胴部と、胴部の開口部に連設された外鍔状のフランジを有する、射出成形された容器本体と、補強部材としての機能を有するインモールドラベルとから構成された合成樹脂製カップ状容器であって、
インモールドラベルは、胴部からフランジ下面外周端まで連続して設けられ、フランジ下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有することを特徴としたものである。
【0012】
上記の構成によれば、補強部材としての機能を有するインモールドラベルは、胴部からフランジの下面に沿って拡径延変形可能である伸張性を有するために、胴部で巻回状に設けられたインモールドラベルは、角部からは拡径延変形して、フランジ下面外周端まで連続して設けられる。このため、フランジ下面の全域に補強部材としての機能を有するインモールドラベルを設けることができるので、フランジ部全体として、強度の強い構造を実現できる。
【0013】
また、フランジの肉厚は、フランジ部分の全面に亘って一定であり内部応力が特定の部分に集中しない。すなわち、フランジに内部応力を集中させる部分が存在しないため、内部応力が集中することで生じる亀裂の発生を抑制し、この亀裂が誘因となる破断を防止できる。
【0014】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、
インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられている、
というものである。
【0015】
上記構成によれば、インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられているが、これはフランジ下面の全域に設けられたインモールドラベルと連続して設けられている。すなわち、ラベルが胴部下端縁からフランジ外端縁までの全域を覆う構造になるため、容器全体としても上述したような亀裂の発生を抑制し、強度の強いカップ状容器が構成できる。
【0016】
本発明の他の構成は、
インモールドラベルが、補強部材としての機能を有するラベル層と、ラベル層と容器本体を熱溶着によって強く接着する接着層、及び、ラベル層を保護する表面層からなり、表面層が容器本体を構成する樹脂材料と相溶性のある材料より形成されたものである、
というものである。
【0017】
上記構成によれば、インモールドラベルの上下あるいは両周端縁と、容器本体と接する場合、当該接触面において、インモールドラベルの外表面を形成する表面層が、容器本体と強固に接着される。上述のように、インモールドラベルの上下あるいは両周端縁では、容器本体の肉厚が変化するため、内部応力が集中しやすく亀裂が生じやすいが、この亀裂の生じやすい部分を、インモールドラベルの表面層と容器本体との溶着部分が補強しているため、亀裂の発生を抑制できる。
【0018】
本発明のさらに他の構成は、
胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジ下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成した、
というものである。
【0019】
上記の構成によれば、胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジの下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成したため、射出成形により容器を成形する際に、インモールドラベルがスムーズにフランジ下面に沿って拡径延変形できるため、折れ目や皺のないインモールドラベルを設けられる。
【0020】
すなわち、本願発明では、胴部で巻回状に設けられているインモールドラベルが、フランジ下面部分で拡径延変形することで、フランジ下面の全域に設けられている。そのため、インモールドラベルは、胴部に巻回状に設けられた部分と、フランジに放射状に設けられた部分の境界部分である内角部において湾曲する。この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面状に形成することで、スムーズに湾曲して折れ目や皺の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下の示す効果を奏する。
すなわち、上記の構成によれば、補強部材としての機能を有するインモールドラベルは、胴部で巻回状に設けられたインモールドラベルは、角部からは拡径延変形して、フランジ下面外周端まで連続して設けられるため、フランジの下面の全域に補強部材としての機能を有するインモールドラベルを設けることができるので、フランジ部全体として、強度の強い構造を実現できる。また、容器本体の一部としてのフランジは肉厚が一定であり、内部応力が特定の部分に集中せず、亀裂の発生を抑制できる。
このため、運搬中の不測の破損を防止できる。また、従来と同じ強度の容器を肉薄化して実現できる。
【0022】
さらに、インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられているものにあっては、フランジ下面の全域に設けられたインモールドラベルと連続して設けられているため、容器全体としてでも、強度の強いカップ状容器が構成できる。
【0023】
また、インモールドラベルの表面層が容器本体を構成する樹脂材料と相溶性のある材料よりなるものにあっては、インモールドラベルの接着層と容器本体とが熱溶着により強固に接着できることは勿論のこと、インモールドラベルの上下・両周端縁において、インモールドラベルの表面層と容器本体の接触部分が熱溶着しているため、肉厚が変化して内部応力が集中する当該部分の亀裂発生を防ぎ、強度の強いカップ状容器を形成できる。
【0024】
さらに、胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジの下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成したものにあっては、インモールドラベルは、胴部に巻回状に設けられた部分とフランジに設けられた部分との境界部分である内角部において最も湾曲するが、この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成しているため、スムーズに湾曲して折れ目や皺の発生を防ぐことができる。
そのため、射出成形時にスムーズにラベルを湾曲させて成形することができ、外見的にも美しいラベルが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例の容器の斜視図
【図2】本実施例の容器の正面図。
【図3】本実施例の容器の反転状態での斜視図
【図4】図3のC1部の拡大図
【図5】図4のC11部の拡大図(a)、同図のラベル構造(b)。
【図6】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(ラベル配置段階)
【図7】図6の角部相当部分の拡大図
【図8】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(充填段階)
【図9】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(完了段階)
【図10】図8のC2の拡大図(a)、図9のC3の拡大図(b)
【図11】図9のA−A’ 断面の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図5は、本発明のインモールドラベル付きの合成樹脂製カップ状容器の一実施例を示すものであり、図1は斜視図、図2は正面図である。また、図3は底部を上にした(反転状態の)斜視図である。
図4は、図3のC1部の拡大図である。また、図5(a)はC11部の拡大図であり、図5(b)は図5(a)のラベル構造を示している。
【0027】
本発明におけるインモールドラベル付きのカップ状容器1は、図1〜3に示されるように、射出成形された容器本体2と、インモールドラベル8とから構成されており、容器本体2(図3参照)は、底部7を有し、上方に向って若干拡径した円筒形状の胴部3の上端開口縁にフランジ4を周設し、底部7よりも下位となる胴部3の下端部分を脚部6としている。
【0028】
インモールドラベル8は、補強部材としての機能を有するものであると共に、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有している。このインモールドラベル8が、インモールド成形によって、容器本体2の一部であるフランジ4の下面外周端まで設けられている。すなわち、図1〜3に示したように、フランジ4とインモールドラベル8によって、カップ容器1のフランジ部分である強化フランジ4aが形成されている。
インモールドラベル8は、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有するために、胴部3とフランジ4の境界部分である角部5の外側表面部分である内角部5aから、フランジ4下面に沿ってフランジ4外周端まで、拡径延変形することで、切れ目なく連続して設けることができる。そのため、フランジ4は全面に亘って補強部材としての機能を有するインモールドラベル8によって補強されている。
図2のように、インモールドラベル8の上端縁は、容器本体2とは接することなく、フランジ4の外周端に配置される。従って、特許文献1の容器のように、インモールドラベル8上端縁とフランジ4との接触部分に形成されるフランジ4の肉厚変化部分は存在しない。
このため、上述のようにフランジ4全体を補強すると同時に、内部応力の集中に起因する亀裂発生を抑制することができる。
【0029】
また、図3のように、容器本体2の一部である胴部3の外周面において巻回状に設けられているインモールドラベル8は、ラベル下端縁が胴部3下端縁に配置されている。従って、上述のフランジ4と同様に、インモールドラベル8下端縁と胴部3との接触部分に形成される胴部3の肉厚変化部分は存在しない。
このため、インモールドラベル8は胴部3全体を補強すると同時に、内部応力の集中に起因する亀裂発生を抑制することができる。
【0030】
以上のように、本実施例では、補強機能があるインモールドラベル8によってフランジ4下面が全面に亘って補強され、フランジ4とインモールドラベル8の両者の作用によって強化された強化フランジ4aが、カップ状容器1のフランジ部分として形成されている。さらに、肉厚変化部分がフランジ4には形成されていないため、内部応力が特定箇所に集中せず亀裂発生を抑制できる。
【0031】
インモールドラベル8は三層構造である(図4及び図5参照)。ラベル層8bはフランジ4の下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有している。また、補強機能を有している。接着層8aは、ラベル層8bと容器本体2を熱溶着によって強く接着する接着剤が塗布されて形成されている。これは一般的なホットメルト型接着剤を塗布して形成できる。
表面層8cは、ラベル層8bを保護する機能を有する。これは、容器本体2と相溶性のある樹脂から形成されている。そのため、表面層8cが容器本体2と接触する部分、すなわち、インモールドラベル8の上下、両周端縁と容器本体2の接触部分において、容器本体2と強く溶着する。
当該部分では、上述のように肉厚変化部分が形成されるため、内部応力が集中しやしく、亀裂が生じやすい。しかし、上記の表面層8cによって、当該部分を外側から補強することができるため、亀裂の発生を抑制することができる。
【0032】
本実施例では、上述のように、インモールドラベル8の上下端縁と容器本体2との接触部分は存在しない。
もっとも、図4のように、胴部3及びフランジ4の一部には、突合わせ状に位置するインモールドラベル8の両周端縁の間には、容器本体2の一部である胴部3あるいはフランジ4が一部露出した、ラベルの合わせ目9が形成されることがある。
【0033】
理想的には、上記のようなラベルの合わせ目9は形成されない方が良い。
しかし、現実的には、インモールドラベル8を胴部3に巻回状に設ける場合、インモールドラベル8の両周端縁が重なると、その重なった部分では強く熱溶着しないため、当該部分から剥離が生じる恐れがある。また、ラベルが重なり合うことで美観を損ねる。
【0034】
従って、多くの場合、上記のようなインモールドラベル8の両周端縁の重畳が生じないように、多少余裕を持たせるため、インモールドラベル8の両周端縁を突合わせ状に配置する。
【0035】
この場合、突合わせ状に位置するインモールドラベル8の両周端縁の間には、容器本体2の一部である胴部3あるいはフランジ4が一部露出して形成された、ラベルの合わせ目9が形成される。このラベルの合わせ目9では、容器本体2の肉厚変化部分が形成されるため、内部応力の集中により亀裂発生の恐れがある。
【0036】
しかし、本実施例では、表面層8cがラベル層8bを保護する機能を有すると同時に、容器本体2と相溶性のある樹脂から形成されているため、表面層8cと容器本体2の一部であるフランジ4とが、表面層8cの厚さdの範囲で溶着している(図5)。
従って、当該部分に応力が集中して生じる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0037】
図4に示されるように、胴部3とフランジ4の境界部分である角部5の内角部5aは、インモールドラベル8がフランジ4下面に沿って、拡径延変形しやすい曲率rを有する円孤面に形成されている。胴部3で巻回状に設けられているインモールドラベル8が、フランジ4の下面部分で拡径延変形することで、フランジ4下面の全域に設けられている。
【0038】
図4のように、インモールドラベル8は、胴部3に巻回状に設けられている部分と、フランジ4下面に設けられている部分の境界部である内角部5aにおいて湾曲する。この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率半径rを有する円孤面に形成することによって、当該部分でインモールドラベル8をスムーズに湾曲させて、折れ目や皺の発生を防いでいる。
【0039】
以下で詳述するが、射出成形の金型装置では、内角部5aに相当する型面が同曲率を有する円孤面に形成されている。従って、射出成形の際には、当該金型の円孤面に沿ってスムーズにインモールドラベル8が拡径延変形できるため、当該部分でインモールドラベル8に不自然な折れ目や皺が生じることもない。
【0040】
図6〜図11は、本発明の容器の成形方法を示す。図6は、本実施例の容器の金型配置図であり、インモールドラベルを金型に配置した段階(以下、ラベル配置段階)の状態を示す。図7は、図6の角部相当部分での拡大図を示している。図8は、本実施例の容器を形成する金型装置の配置図であり、ラベル配置と金型配置を完了し、溶融樹脂を充填している段階(以下、充填段階)を示している。また、図9は、本実施例の容器を形成する金型装置の配置図であり、溶融樹脂の充填を完了して、容器形成された状態(以下、完了段階)を示す。図10(a)は、図8のC2の拡大図であり、図10(b)は、図9のC3の拡大図である。図11は、完了段階の図9のA−A’ 断面の断面図を示している。
【0041】
図6のように、インモールドラベル8は、胴部3の外周壁に相当する固定金型11の型面に、その一部分が上にフランジの幅だけ突き出したように配置する。図6には図示されていないが、インモールドラベル8は、例えば、バキュームによってホールドする。その後、移動金型10を図6中の矢印方向に移動する。
尚、図6〜図11では、溶融樹脂の射出圧を利用してインモールドラベル8の拡径延変形を行っている。しかし、予め専用治具を用いてインモールドラベル8を拡径延変形させて(図10(b)のようにインモールドラベル8を寝た状態で固定金型11の型面に接するように変形させる)固定金型11からバキュームによってホールドする方法もある。
この場合、移動金型10を配置する前に、上述の専用治具を用いてインモールドラベル8を拡径延変形させた上で固定金型11にバキュームによってホールドする。
【0042】
図7に示すように、角部5は、移動金型10では外角部5bに形成された円孤面状の型面が形成されており、固定金型11では内角部5aに形成された円孤面の型面が形成されている。
外角部5bに形成された曲率半径Rの円孤面は、上記した移動金型11の移動の際に、インモールドラベルの上端縁を外側に曲げるように作用する。また、上述のように、内角部5aに形成された円孤面の曲率半径rは、インモールドラベル8がフランジ4の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成されている。尚、外角部5bに形成された円孤面の曲率半径Rと、内角部5aに形成された円孤面の曲率半径rは必ずしも一致する必要はない。
【0043】
図7において、移動金型11が移動する際には、インモールドラベル8の上端部が移動金型11の外角部5bの型面に当接して、インモールドラベル8は外方向に曲げられる(図7(a)、矢印アの方向)。さらに移動金型11が動かせば(図7(b)、矢印イの方向)、インモールドラベル8も移動金型11の動きに応じて外側に曲げられる。この際、上述のように、固定金型11では内角部5aに形成された円孤面の型面が形成されているため、インモールドラベル8は内角部5aに形成された円孤面の固定金型11の型面に沿って無理なく曲げられる。従って、金型配置が完了した状態では、図8のように、インモールドラベル8は外側に曲げられ、上端縁が移動金型11に当接する形態となる。
【0044】
図8のように、インモールドラベル8と移動金型10及び固定金型11を配置した状態で、容器本体2底部中央部分の固定金型11の型面に開口されたゲート12から溶融樹脂を射出する。
この溶融樹脂は、キャビティの底部7相当部分から、胴部3側周壁相当部分を経て、フランジ4相当部分に向かって流動する。充填を完了した後(図9)に、冷却固化を待って離型する。これにより、本実施例のインモールドラベル付きのカップ状容器1が得られる。
【0045】
図10(a)に示すように、フランジ4に設けられるインモールドラベル8の一部分は、溶融樹脂の射出圧によって、フランジ4下面に相当する固定金型11の型面に押し付けられる(図10(a)、矢印ウの方向に押し付けられる)。
インモールドラベル8は、フランジ4下面に沿って拡径延変形可能である伸張性を有する。また、内角部5a部分の固定金型11の型面にはフランジ4下面に沿って拡径延変形しやすい曲率半径rを有する円孤面が設けてある。
そのため、溶融樹脂の射出圧を受けた場合、内角部5a部分の固定金型11の型面がガイドとなって、インモールドラベル8が上記の拡径延変形を行う際に、皺や折れ曲がることなく、内角部5aに設けられるラベル部分をスムーズに湾曲させることができる。
【0046】
図11は、完了段階の図9のA−A’ 断面の断面図を示している。
補強部材としての機能を有するラベル層8bが接着層8aを介してフランジ4と熱溶着により強く接着している。また、ラベル層8bを保護する機能を有する表面層8cは、ラベルの合わせ目9で、フランジ4との接触部分(P1及びP2)で熱溶着により強く接着されている。
【0047】
以上のように、インモールドラベル8とフランジ4は、カップ状容器1のフランジ部全体としての強化フランジ4aを構成している。この強化フランジ4aにあっては、補強部材としての機能を有するインモールドラベル8がフランジ4の下面全面に設けられているため、カップ状容器1のフランジ部分である強化フランジ4aは、全体に亘ってインモールドラベル8により補強されている。また、インモールドラベル8の上端縁がフランジ4の外周端にあるため、インモールドラベル8上端縁とフランジ4との接触部分により形成される肉厚変化部分が存在しないため、応力集中による亀裂発生も抑制できる。
また、ラベルの合わせ目9が形成されたとしても、上記のようにインモールドラベル8の表面層8cとフランジ4の接触部分(P1、P2)が強く熱溶着されているため、亀裂の発生を抑制している。従って、強化フランジ4aは、強度が強く亀裂が発生しにくい構造になる。
このように、従来のカップ状容器のフランジ部分より強い構造のフランジ部分を実現できるため、上記実施例のカップ状容器1においては、さらに肉薄化することも可能である。
【0048】
以上の実施例に沿って、本願発明の実施形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明は、上からの押下荷重に対して、構造的に強いフランジ有するインモールドラベル付きカップ状容器を実現することが可能である。
このために、より構造的に強い容器が実現できるため、より肉薄で軽量化した容器の実現が期待できるものである。従って、本発明によりインモールドラベル付きカップ容器は、食品他、幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0050】
1 ;カップ状容器
2 ;容器本体
3 ;胴部
4 ;フランジ
4a ;強化フランジ
5 ;角部
5a ;内角部
5b ;外角部
6 ;脚部
7 ;底部
8 ;インモールドラベル
8a ;接着層
8b ;ラベル層
8c ;表面層
9 ;ラベルの合わせ目
10 ;移動金型
11 ;固定金型
12 ;ゲート
【技術分野】
【0001】
本発明は、外鍔状のフランジを有する容器本体にインモールドラベルを設けた合成樹脂製射出成形品であるカップ状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有底筒状の胴部と、胴部の開口部に連設された外鍔状のフランジを有する、射出成形された容器本体と、補強部材としての機能を有するインモールドラベルとから構成された合成樹脂製カップ状容器は、簡易な使い捨て容器として大量に使用されている。
【0003】
上記のようなカップ状容器は、容器のフランジ部分の上面を利用して、アルミ箔や樹脂合成紙などの蓋材を接着して、容器を密閉するようにして利用される。しかし、落下あるいは運搬途中の衝撃によって、フランジ部分に強い応力が働くことにより、破損することがある。従って、構造的に強いフランジ部分を有するカップ状容器の実現が求められている。
【0004】
上記のようなインモールドラベル付きカップ状容器においても、ラベル表示は容器の外から明瞭に目視できなければならないため、インモールドラベルは容器本体の胴部外周面に設けることが多い。このインモールドラベルは、表示、補強等の機能を有するラベル層に、熱溶着によって接着するホットメルト型接着剤を塗布して形成した接着層が積層されて構成される。
このようなインモールドラベルを成形金型に配置して射出成形により容器本体を形成すると、インモールドラベルの接着層が射出された高温の溶融樹脂によりラベル層と容器本体が強く溶着し、表示機能を有するだけでなく構造的にも補強された容器を形成することができる。
【0005】
また、上記のカップ状容器では、各々容器本体の一部であるフランジと胴部の境界部分(以下、角部)には、衝撃や押下荷重による内部応力が集中しやすい。この角部近くにインモールドラベルの上端縁が配置されると、このインモールドラベルの上端縁部分で容器本体の肉厚が変化する。肉厚が変化した部分(以下、肉厚変化部分)は、上記した内部応力が集中するため、当該箇所より亀裂が生じやすくなり、胴部に破断などのより大きな損傷を招く恐れもある。
【0006】
従って、このようなインモールドラベル付きカップ状容器においては、上記の亀裂が胴部に発生することを防ぐため、インモールドラベル上端縁部分を、若干フランジ内部に食い込ませるように形成することで、内部応力が集中することで亀裂が発生しやすい肉厚変化部分を、胴部角部近傍に配置しないように工夫した容器もある。
また、同様の趣旨により、インモールドラベルを、フランジ下面の途中にまで設けた構成の容器もある(特許文献1)。
【0007】
しかし、インモールドラベルの上端縁部分を、若干フランジ内部に食い込ませるように形成したもの、あるいは、インモールドラベルを、フランジ下面の途中まで設けた構成のものにあっては、フランジに上記した肉厚変化部分が形成されるため、内部応力が当該部分に集中して、亀裂が生じる恐れがある。
【0008】
このような亀裂がフランジに生じると、胴部に生じた場合と同様に、発生した亀裂により破断などのより大きな損傷を招く恐れもある。
以上のように、両者何れの容器においても、フランジ部全体としての構造的な問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−227316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、補強部材としての機能を有するインモールドラベルを活用することで、フランジ部全体の構造を強化することを第一の目的とする。
さらに、内部応力の集中に起因する亀裂発生の原因となる肉厚変化部分の形成を最小限にすることで、強度に問題のあるフランジ構造を改善し、落下や運搬時の衝撃による亀裂発生の抑制を第二の目的とすることによって、強度が強く構造的にも優れるインモールドラベル付きの合成樹脂製カップ容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主たる構成は、
有底筒状の胴部と、胴部の開口部に連設された外鍔状のフランジを有する、射出成形された容器本体と、補強部材としての機能を有するインモールドラベルとから構成された合成樹脂製カップ状容器であって、
インモールドラベルは、胴部からフランジ下面外周端まで連続して設けられ、フランジ下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有することを特徴としたものである。
【0012】
上記の構成によれば、補強部材としての機能を有するインモールドラベルは、胴部からフランジの下面に沿って拡径延変形可能である伸張性を有するために、胴部で巻回状に設けられたインモールドラベルは、角部からは拡径延変形して、フランジ下面外周端まで連続して設けられる。このため、フランジ下面の全域に補強部材としての機能を有するインモールドラベルを設けることができるので、フランジ部全体として、強度の強い構造を実現できる。
【0013】
また、フランジの肉厚は、フランジ部分の全面に亘って一定であり内部応力が特定の部分に集中しない。すなわち、フランジに内部応力を集中させる部分が存在しないため、内部応力が集中することで生じる亀裂の発生を抑制し、この亀裂が誘因となる破断を防止できる。
【0014】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、
インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられている、
というものである。
【0015】
上記構成によれば、インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられているが、これはフランジ下面の全域に設けられたインモールドラベルと連続して設けられている。すなわち、ラベルが胴部下端縁からフランジ外端縁までの全域を覆う構造になるため、容器全体としても上述したような亀裂の発生を抑制し、強度の強いカップ状容器が構成できる。
【0016】
本発明の他の構成は、
インモールドラベルが、補強部材としての機能を有するラベル層と、ラベル層と容器本体を熱溶着によって強く接着する接着層、及び、ラベル層を保護する表面層からなり、表面層が容器本体を構成する樹脂材料と相溶性のある材料より形成されたものである、
というものである。
【0017】
上記構成によれば、インモールドラベルの上下あるいは両周端縁と、容器本体と接する場合、当該接触面において、インモールドラベルの外表面を形成する表面層が、容器本体と強固に接着される。上述のように、インモールドラベルの上下あるいは両周端縁では、容器本体の肉厚が変化するため、内部応力が集中しやすく亀裂が生じやすいが、この亀裂の生じやすい部分を、インモールドラベルの表面層と容器本体との溶着部分が補強しているため、亀裂の発生を抑制できる。
【0018】
本発明のさらに他の構成は、
胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジ下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成した、
というものである。
【0019】
上記の構成によれば、胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジの下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成したため、射出成形により容器を成形する際に、インモールドラベルがスムーズにフランジ下面に沿って拡径延変形できるため、折れ目や皺のないインモールドラベルを設けられる。
【0020】
すなわち、本願発明では、胴部で巻回状に設けられているインモールドラベルが、フランジ下面部分で拡径延変形することで、フランジ下面の全域に設けられている。そのため、インモールドラベルは、胴部に巻回状に設けられた部分と、フランジに放射状に設けられた部分の境界部分である内角部において湾曲する。この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面状に形成することで、スムーズに湾曲して折れ目や皺の発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記した構成となっているので、以下の示す効果を奏する。
すなわち、上記の構成によれば、補強部材としての機能を有するインモールドラベルは、胴部で巻回状に設けられたインモールドラベルは、角部からは拡径延変形して、フランジ下面外周端まで連続して設けられるため、フランジの下面の全域に補強部材としての機能を有するインモールドラベルを設けることができるので、フランジ部全体として、強度の強い構造を実現できる。また、容器本体の一部としてのフランジは肉厚が一定であり、内部応力が特定の部分に集中せず、亀裂の発生を抑制できる。
このため、運搬中の不測の破損を防止できる。また、従来と同じ強度の容器を肉薄化して実現できる。
【0022】
さらに、インモールドラベルが胴部の外周面下端縁から設けられているものにあっては、フランジ下面の全域に設けられたインモールドラベルと連続して設けられているため、容器全体としてでも、強度の強いカップ状容器が構成できる。
【0023】
また、インモールドラベルの表面層が容器本体を構成する樹脂材料と相溶性のある材料よりなるものにあっては、インモールドラベルの接着層と容器本体とが熱溶着により強固に接着できることは勿論のこと、インモールドラベルの上下・両周端縁において、インモールドラベルの表面層と容器本体の接触部分が熱溶着しているため、肉厚が変化して内部応力が集中する当該部分の亀裂発生を防ぎ、強度の強いカップ状容器を形成できる。
【0024】
さらに、胴部とフランジの境界部分である角部の内角部を、インモールドラベルがフランジの下面に沿って拡径延変形しやすい曲率を有する円孤面に形成したものにあっては、インモールドラベルは、胴部に巻回状に設けられた部分とフランジに設けられた部分との境界部分である内角部において最も湾曲するが、この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成しているため、スムーズに湾曲して折れ目や皺の発生を防ぐことができる。
そのため、射出成形時にスムーズにラベルを湾曲させて成形することができ、外見的にも美しいラベルが設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施例の容器の斜視図
【図2】本実施例の容器の正面図。
【図3】本実施例の容器の反転状態での斜視図
【図4】図3のC1部の拡大図
【図5】図4のC11部の拡大図(a)、同図のラベル構造(b)。
【図6】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(ラベル配置段階)
【図7】図6の角部相当部分の拡大図
【図8】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(充填段階)
【図9】本実施例の容器を形成する金型装置の配置図(完了段階)
【図10】図8のC2の拡大図(a)、図9のC3の拡大図(b)
【図11】図9のA−A’ 断面の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図5は、本発明のインモールドラベル付きの合成樹脂製カップ状容器の一実施例を示すものであり、図1は斜視図、図2は正面図である。また、図3は底部を上にした(反転状態の)斜視図である。
図4は、図3のC1部の拡大図である。また、図5(a)はC11部の拡大図であり、図5(b)は図5(a)のラベル構造を示している。
【0027】
本発明におけるインモールドラベル付きのカップ状容器1は、図1〜3に示されるように、射出成形された容器本体2と、インモールドラベル8とから構成されており、容器本体2(図3参照)は、底部7を有し、上方に向って若干拡径した円筒形状の胴部3の上端開口縁にフランジ4を周設し、底部7よりも下位となる胴部3の下端部分を脚部6としている。
【0028】
インモールドラベル8は、補強部材としての機能を有するものであると共に、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有している。このインモールドラベル8が、インモールド成形によって、容器本体2の一部であるフランジ4の下面外周端まで設けられている。すなわち、図1〜3に示したように、フランジ4とインモールドラベル8によって、カップ容器1のフランジ部分である強化フランジ4aが形成されている。
インモールドラベル8は、フランジ4下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有するために、胴部3とフランジ4の境界部分である角部5の外側表面部分である内角部5aから、フランジ4下面に沿ってフランジ4外周端まで、拡径延変形することで、切れ目なく連続して設けることができる。そのため、フランジ4は全面に亘って補強部材としての機能を有するインモールドラベル8によって補強されている。
図2のように、インモールドラベル8の上端縁は、容器本体2とは接することなく、フランジ4の外周端に配置される。従って、特許文献1の容器のように、インモールドラベル8上端縁とフランジ4との接触部分に形成されるフランジ4の肉厚変化部分は存在しない。
このため、上述のようにフランジ4全体を補強すると同時に、内部応力の集中に起因する亀裂発生を抑制することができる。
【0029】
また、図3のように、容器本体2の一部である胴部3の外周面において巻回状に設けられているインモールドラベル8は、ラベル下端縁が胴部3下端縁に配置されている。従って、上述のフランジ4と同様に、インモールドラベル8下端縁と胴部3との接触部分に形成される胴部3の肉厚変化部分は存在しない。
このため、インモールドラベル8は胴部3全体を補強すると同時に、内部応力の集中に起因する亀裂発生を抑制することができる。
【0030】
以上のように、本実施例では、補強機能があるインモールドラベル8によってフランジ4下面が全面に亘って補強され、フランジ4とインモールドラベル8の両者の作用によって強化された強化フランジ4aが、カップ状容器1のフランジ部分として形成されている。さらに、肉厚変化部分がフランジ4には形成されていないため、内部応力が特定箇所に集中せず亀裂発生を抑制できる。
【0031】
インモールドラベル8は三層構造である(図4及び図5参照)。ラベル層8bはフランジ4の下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有している。また、補強機能を有している。接着層8aは、ラベル層8bと容器本体2を熱溶着によって強く接着する接着剤が塗布されて形成されている。これは一般的なホットメルト型接着剤を塗布して形成できる。
表面層8cは、ラベル層8bを保護する機能を有する。これは、容器本体2と相溶性のある樹脂から形成されている。そのため、表面層8cが容器本体2と接触する部分、すなわち、インモールドラベル8の上下、両周端縁と容器本体2の接触部分において、容器本体2と強く溶着する。
当該部分では、上述のように肉厚変化部分が形成されるため、内部応力が集中しやしく、亀裂が生じやすい。しかし、上記の表面層8cによって、当該部分を外側から補強することができるため、亀裂の発生を抑制することができる。
【0032】
本実施例では、上述のように、インモールドラベル8の上下端縁と容器本体2との接触部分は存在しない。
もっとも、図4のように、胴部3及びフランジ4の一部には、突合わせ状に位置するインモールドラベル8の両周端縁の間には、容器本体2の一部である胴部3あるいはフランジ4が一部露出した、ラベルの合わせ目9が形成されることがある。
【0033】
理想的には、上記のようなラベルの合わせ目9は形成されない方が良い。
しかし、現実的には、インモールドラベル8を胴部3に巻回状に設ける場合、インモールドラベル8の両周端縁が重なると、その重なった部分では強く熱溶着しないため、当該部分から剥離が生じる恐れがある。また、ラベルが重なり合うことで美観を損ねる。
【0034】
従って、多くの場合、上記のようなインモールドラベル8の両周端縁の重畳が生じないように、多少余裕を持たせるため、インモールドラベル8の両周端縁を突合わせ状に配置する。
【0035】
この場合、突合わせ状に位置するインモールドラベル8の両周端縁の間には、容器本体2の一部である胴部3あるいはフランジ4が一部露出して形成された、ラベルの合わせ目9が形成される。このラベルの合わせ目9では、容器本体2の肉厚変化部分が形成されるため、内部応力の集中により亀裂発生の恐れがある。
【0036】
しかし、本実施例では、表面層8cがラベル層8bを保護する機能を有すると同時に、容器本体2と相溶性のある樹脂から形成されているため、表面層8cと容器本体2の一部であるフランジ4とが、表面層8cの厚さdの範囲で溶着している(図5)。
従って、当該部分に応力が集中して生じる亀裂の発生を防ぐことができる。
【0037】
図4に示されるように、胴部3とフランジ4の境界部分である角部5の内角部5aは、インモールドラベル8がフランジ4下面に沿って、拡径延変形しやすい曲率rを有する円孤面に形成されている。胴部3で巻回状に設けられているインモールドラベル8が、フランジ4の下面部分で拡径延変形することで、フランジ4下面の全域に設けられている。
【0038】
図4のように、インモールドラベル8は、胴部3に巻回状に設けられている部分と、フランジ4下面に設けられている部分の境界部である内角部5aにおいて湾曲する。この湾曲部分を拡径延変形しやすいような曲率半径rを有する円孤面に形成することによって、当該部分でインモールドラベル8をスムーズに湾曲させて、折れ目や皺の発生を防いでいる。
【0039】
以下で詳述するが、射出成形の金型装置では、内角部5aに相当する型面が同曲率を有する円孤面に形成されている。従って、射出成形の際には、当該金型の円孤面に沿ってスムーズにインモールドラベル8が拡径延変形できるため、当該部分でインモールドラベル8に不自然な折れ目や皺が生じることもない。
【0040】
図6〜図11は、本発明の容器の成形方法を示す。図6は、本実施例の容器の金型配置図であり、インモールドラベルを金型に配置した段階(以下、ラベル配置段階)の状態を示す。図7は、図6の角部相当部分での拡大図を示している。図8は、本実施例の容器を形成する金型装置の配置図であり、ラベル配置と金型配置を完了し、溶融樹脂を充填している段階(以下、充填段階)を示している。また、図9は、本実施例の容器を形成する金型装置の配置図であり、溶融樹脂の充填を完了して、容器形成された状態(以下、完了段階)を示す。図10(a)は、図8のC2の拡大図であり、図10(b)は、図9のC3の拡大図である。図11は、完了段階の図9のA−A’ 断面の断面図を示している。
【0041】
図6のように、インモールドラベル8は、胴部3の外周壁に相当する固定金型11の型面に、その一部分が上にフランジの幅だけ突き出したように配置する。図6には図示されていないが、インモールドラベル8は、例えば、バキュームによってホールドする。その後、移動金型10を図6中の矢印方向に移動する。
尚、図6〜図11では、溶融樹脂の射出圧を利用してインモールドラベル8の拡径延変形を行っている。しかし、予め専用治具を用いてインモールドラベル8を拡径延変形させて(図10(b)のようにインモールドラベル8を寝た状態で固定金型11の型面に接するように変形させる)固定金型11からバキュームによってホールドする方法もある。
この場合、移動金型10を配置する前に、上述の専用治具を用いてインモールドラベル8を拡径延変形させた上で固定金型11にバキュームによってホールドする。
【0042】
図7に示すように、角部5は、移動金型10では外角部5bに形成された円孤面状の型面が形成されており、固定金型11では内角部5aに形成された円孤面の型面が形成されている。
外角部5bに形成された曲率半径Rの円孤面は、上記した移動金型11の移動の際に、インモールドラベルの上端縁を外側に曲げるように作用する。また、上述のように、内角部5aに形成された円孤面の曲率半径rは、インモールドラベル8がフランジ4の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成されている。尚、外角部5bに形成された円孤面の曲率半径Rと、内角部5aに形成された円孤面の曲率半径rは必ずしも一致する必要はない。
【0043】
図7において、移動金型11が移動する際には、インモールドラベル8の上端部が移動金型11の外角部5bの型面に当接して、インモールドラベル8は外方向に曲げられる(図7(a)、矢印アの方向)。さらに移動金型11が動かせば(図7(b)、矢印イの方向)、インモールドラベル8も移動金型11の動きに応じて外側に曲げられる。この際、上述のように、固定金型11では内角部5aに形成された円孤面の型面が形成されているため、インモールドラベル8は内角部5aに形成された円孤面の固定金型11の型面に沿って無理なく曲げられる。従って、金型配置が完了した状態では、図8のように、インモールドラベル8は外側に曲げられ、上端縁が移動金型11に当接する形態となる。
【0044】
図8のように、インモールドラベル8と移動金型10及び固定金型11を配置した状態で、容器本体2底部中央部分の固定金型11の型面に開口されたゲート12から溶融樹脂を射出する。
この溶融樹脂は、キャビティの底部7相当部分から、胴部3側周壁相当部分を経て、フランジ4相当部分に向かって流動する。充填を完了した後(図9)に、冷却固化を待って離型する。これにより、本実施例のインモールドラベル付きのカップ状容器1が得られる。
【0045】
図10(a)に示すように、フランジ4に設けられるインモールドラベル8の一部分は、溶融樹脂の射出圧によって、フランジ4下面に相当する固定金型11の型面に押し付けられる(図10(a)、矢印ウの方向に押し付けられる)。
インモールドラベル8は、フランジ4下面に沿って拡径延変形可能である伸張性を有する。また、内角部5a部分の固定金型11の型面にはフランジ4下面に沿って拡径延変形しやすい曲率半径rを有する円孤面が設けてある。
そのため、溶融樹脂の射出圧を受けた場合、内角部5a部分の固定金型11の型面がガイドとなって、インモールドラベル8が上記の拡径延変形を行う際に、皺や折れ曲がることなく、内角部5aに設けられるラベル部分をスムーズに湾曲させることができる。
【0046】
図11は、完了段階の図9のA−A’ 断面の断面図を示している。
補強部材としての機能を有するラベル層8bが接着層8aを介してフランジ4と熱溶着により強く接着している。また、ラベル層8bを保護する機能を有する表面層8cは、ラベルの合わせ目9で、フランジ4との接触部分(P1及びP2)で熱溶着により強く接着されている。
【0047】
以上のように、インモールドラベル8とフランジ4は、カップ状容器1のフランジ部全体としての強化フランジ4aを構成している。この強化フランジ4aにあっては、補強部材としての機能を有するインモールドラベル8がフランジ4の下面全面に設けられているため、カップ状容器1のフランジ部分である強化フランジ4aは、全体に亘ってインモールドラベル8により補強されている。また、インモールドラベル8の上端縁がフランジ4の外周端にあるため、インモールドラベル8上端縁とフランジ4との接触部分により形成される肉厚変化部分が存在しないため、応力集中による亀裂発生も抑制できる。
また、ラベルの合わせ目9が形成されたとしても、上記のようにインモールドラベル8の表面層8cとフランジ4の接触部分(P1、P2)が強く熱溶着されているため、亀裂の発生を抑制している。従って、強化フランジ4aは、強度が強く亀裂が発生しにくい構造になる。
このように、従来のカップ状容器のフランジ部分より強い構造のフランジ部分を実現できるため、上記実施例のカップ状容器1においては、さらに肉薄化することも可能である。
【0048】
以上の実施例に沿って、本願発明の実施形態とその作用効果について説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明は、上からの押下荷重に対して、構造的に強いフランジ有するインモールドラベル付きカップ状容器を実現することが可能である。
このために、より構造的に強い容器が実現できるため、より肉薄で軽量化した容器の実現が期待できるものである。従って、本発明によりインモールドラベル付きカップ容器は、食品他、幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0050】
1 ;カップ状容器
2 ;容器本体
3 ;胴部
4 ;フランジ
4a ;強化フランジ
5 ;角部
5a ;内角部
5b ;外角部
6 ;脚部
7 ;底部
8 ;インモールドラベル
8a ;接着層
8b ;ラベル層
8c ;表面層
9 ;ラベルの合わせ目
10 ;移動金型
11 ;固定金型
12 ;ゲート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の胴部(3)と、該胴部(3)の開口部に連設された外鍔状のフランジ(4)を有する、射出成形された容器本体(2)と、補強部材としての機能を有するインモールドラベル(8)とから構成された合成樹脂製カップ状容器であって、
前記インモールドラベル(8)は、前記胴部(3)から前記フランジ(4)の下面外周端まで連続して設けられ、前記フランジ(4)下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有することを特徴とした合成樹脂製カップ状容器。
【請求項2】
インモールドラベル(8)が胴部(3)の外周面下端縁から設けられている請求項1に記載の合成樹脂製カップ状容器
【請求項3】
インモールドラベル(8)が、補強部材としての機能を有するラベル層(8b)と、前記ラベル層(8b)と容器本体(2)を熱溶着によって強く接着する接着層(8a)、及び、前記ラベル層(8b)を保護する表面層(8c)とからなり、前記表面層(8c)が前記容器本体(2)を構成する樹脂材料と相溶性のある材料より形成されたものである、請求項1または2に記載の合成樹脂製カップ状容器。
【請求項4】
胴部(3)とフランジ(4)の境界部分である角部(5)の内角部(5a)を、インモールドラベル(8)がフランジ(4)の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成した請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂製カップ状容器。
【請求項1】
有底筒状の胴部(3)と、該胴部(3)の開口部に連設された外鍔状のフランジ(4)を有する、射出成形された容器本体(2)と、補強部材としての機能を有するインモールドラベル(8)とから構成された合成樹脂製カップ状容器であって、
前記インモールドラベル(8)は、前記胴部(3)から前記フランジ(4)の下面外周端まで連続して設けられ、前記フランジ(4)下面に沿って拡径延変形できる伸張性を有することを特徴とした合成樹脂製カップ状容器。
【請求項2】
インモールドラベル(8)が胴部(3)の外周面下端縁から設けられている請求項1に記載の合成樹脂製カップ状容器
【請求項3】
インモールドラベル(8)が、補強部材としての機能を有するラベル層(8b)と、前記ラベル層(8b)と容器本体(2)を熱溶着によって強く接着する接着層(8a)、及び、前記ラベル層(8b)を保護する表面層(8c)とからなり、前記表面層(8c)が前記容器本体(2)を構成する樹脂材料と相溶性のある材料より形成されたものである、請求項1または2に記載の合成樹脂製カップ状容器。
【請求項4】
胴部(3)とフランジ(4)の境界部分である角部(5)の内角部(5a)を、インモールドラベル(8)がフランジ(4)の下面に沿って拡径延変形しやすいような曲率を有する円孤面に形成した請求項1〜3の何れか1項に記載の合成樹脂製カップ状容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−116505(P2012−116505A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266595(P2010−266595)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】
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