説明

カプセル内視鏡、カプセル内視鏡カバー、カプセル内視鏡プロセッサ、およびカプセル内視鏡姿勢検出システム

【課題】カプセル内視鏡の姿勢を簡易な方法で検知する。
【解決手段】カプセル内視鏡はカバー11、撮像素子を有する。カバー11を透明部材で形成する。カバー11の内部に密閉空間SSを形成する。密閉空間SSを凹面ccvs、凸面cvxs、および底面bsによって形成する。密閉空間SSに無色透明な液体を充填する。密閉空間SSに浮き18と錘19とを設ける。浮き18と錘19とを密閉空間SS内部で移動自在に保つ。浮き18と錘19とを方位磁石によって形成する。方位磁石を密閉空間SS内で回動自在に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内における姿勢を把握可能なカプセル内視鏡およびカプセル内視鏡の姿勢を検出するカプセル内視鏡プロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カプセル内視鏡システムが開発されている。カプセル内視鏡システムでは、撮像素子を設けたカプセル内視鏡が用いられる。カプセル内視鏡は患者に飲込まれ、体内を単独で移動する。移動しながら、カプセル内視鏡によって体内の撮影が連続的に行われる。撮影された画像は画像データとして体外機に受信される。体外器が受信した画像データに基づく画像がモニタに表示される。
【0003】
カプセル内視鏡は体内で自由に姿勢を変化させてしまうため、撮影する画像の視認だけでは、何処の部位を撮影しているかを判別するのが困難であった。そのため、体内におけるカプセル内視鏡の姿勢を把握することが求められていた。そこで、磁気を利用してカプセル内視鏡の姿勢を検出することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、磁気を利用する場合は大型の磁気検出センサが必要であり、より小型化したシステムが求められていた。特に、カプセル内視鏡による体内の撮影は長時間を要するため、大型の磁気検出センサを用いる場合に被験者が検査室において、拘束された状態下で長時間の検査を受けることになった。そのため、被験者にとって不便であった。
【特許文献1】特開2005−304638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明ではカプセル内視鏡の姿勢を簡易に把握可能な小型の姿勢検出システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカプセル内視鏡は、被写体を撮影する撮像素子と、撮像素子の前方に設けられ密閉空間が撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ透明部材により形成されるカバーと、密閉空間内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを備えることを特徴としている。
【0007】
なお、方向指標は錘であることが好ましい。さらに、錘は方位磁石であることが好ましい。また、錘は、青色または緑色に色づけられることが好ましい。
【0008】
また、密閉空間に充填される透明な液体である充填液体を備え、方向指標は充填液体に設けられる泡または浮きであることが好ましい。さらに、浮きは方位磁石であることが好ましい。さらには、浮きは青色または緑色に色づけられることが好ましい。
【0009】
また、密閉空間は撮像素子と逆方向に突出する曲面である第1のガイド曲面を有し方向指標は第1のガイド曲面にそって移動することが好ましい。さらに、第1のガイド曲面は球面の一部を有することが好ましい。さらに、密閉空間は第1のガイド曲面と同じ方向に突出する第2のガイド曲面を有することが好ましい。
【0010】
本発明のカプセル内視鏡カバーは、撮像素子を有するカプセル内視鏡の撮像素子側の外殻に冠着させるカバーであって、カプセル内視鏡に冠着させた状態における撮像素子の撮像可能範囲内に形成される密閉空間部と、密閉空間部内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを備え、透明部材により形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明のカプセル内視鏡プロセッサは、被写体を撮影する撮像素子と、撮像素子の前方に設けられ密閉空間が撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ透明部材により形成されるカバーと、密閉空間内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを有するカプセル内視鏡から撮像素子が被写体の撮影に基づいて生成する画像信号を受信する受信部と、受信機が受信した画像信号に基づいて、画像信号に相当する撮影画像における方向指標を検出する指標検出部と、撮影画像における方向指標が検出された位置に基づいてカプセル内視鏡の向きを判別する判別部とを備えることを特徴としている。
【0012】
なお、方向指標は方位磁石である錘または密閉空間に充填される透明な液体中の浮きであり、指標検出部は方向指標の磁石が指示する方向を検出し、判別部は指標検出部が検出した方向に基づいてカプセル内視鏡の向きを判別することが好ましい。
【0013】
また、撮影画像に表示される方向指標の周囲の画像を用いて補完する補間部を備えることが好ましい。
【0014】
また、カプセル内視鏡の向きが撮影画像を表示するためのモニタに表示可能であることが好ましい。
【0015】
本発明のカプセル内視鏡姿勢検出システムは被写体を撮影する撮像素子と撮像素子の前方に設けられ密閉空間が撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ透明部材により形成されるカバーと密閉空間内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを有するカプセル内視鏡と、撮像素子が被写体の撮影に基づいて生成する画像信号を受信する受信部と受信機が受信した画像信号に基づいて画像信号に相当する撮影画像における方向指標を検出する指標検出部と撮影画像における方向指標が検出された位置に基づいてカプセル内視鏡の向きを判別する判別部とを有するカプセル内視鏡プロセッサとを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表示画像における浮きまたは錘の位置に基づいてカプセル内視鏡の姿勢を簡易に判別することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用したカプセル内視鏡姿勢検出システムの使用状態を示す第1の参考図である。図2は、カプセル内視鏡姿勢検出システムの使用状態を示す第2の参考図である。
【0018】
本実施形態のカプセル内視鏡姿勢検出システムを有するカプセル内視鏡システムは、カプセル内視鏡10、外部受信機20、カプセル内視鏡プロセッサ30、およびモニタ40等によって構成される(図1、図2参照)。カプセル内視鏡システムによる体腔内部の観察は、データ採取のステップとデータに基づく画像表示のステップとによって構成される。
【0019】
図1に示すように、データ採取のステップにおいて、外部受信機20が被験者Pの体表に固定される。また、データ採取のステップにおいてカプセル内視鏡10が被験者Pに飲込まれる。カプセル内視鏡10により体腔内部の被写体が撮像され、撮像された被写体に相当する画像信号が生成される。生成された画像データは外部受信機20に無線送信される。無線送信された画像信号が外部受信機20に設けられるメモリ(図1、図2において図示せず)に格納される。
【0020】
カプセル内視鏡10による撮像を終えると、画像表示のステップを実行することが可能になる。図2に示すように、画像表示のステップにおいて外部受信機20がコネクタ31を介して内視鏡プロセッサ30に接続される。なお、内視鏡プロセッサ30はモニタ40にも接続される。
【0021】
外部受信機20に格納された画像信号は、内視鏡プロセッサ30に送られる。内視鏡プロセッサ30によって、画像信号に対して所定のデータ処理が施される。所定の信号処理が施された画像信号はモニタ40に送られる。モニタ40には、送られた画像信号に基づく画像が表示される。
【0022】
次にカプセル内視鏡10の構成について図3を用いて詳細に説明する。図3はカプセル内視鏡の内部構成を概略的に示すブロック図である。カプセル内視鏡10は、筐体26とカバー11との内部に、撮像素子12、撮影光学系L、信号処理回路13、送信回路14、送信アンテナ15、照明光源16、およびバッテリ17などを設けることにより、形成される。なお、以下の説明において、カプセル内視鏡10の向きとは撮像素子12の受光面の向く方向とする。
【0023】
照明光源16により、撮像素子12の前方に照明光が照射される。照明された被写体は、カバー11および撮影光学系Lを介して撮像素子12に撮像される。撮像された画像に相当する画像信号が撮像素子12により生成される。
【0024】
画像信号は信号処理回路13に送られ、所定の信号処理が施される。所定の信号処理が施された画像信号は送信回路14に送られる。送信回路14に送られた画像信号は、送信アンテナ15を介してカプセル内視鏡10の外部に無線送信される。なお、照明光源16による照明光の照射のための電力および撮像素子12、信号処理回路13、送信回路14などを駆動するための電力は、バッテリ17により供給される。
【0025】
図4に示すように、撮像素子12を覆うカバー11は透明部材により半球のドーム状に形成される。また、カバー11の内部には、密閉空間SSが設けられる。なお、密閉空間SSは撮影光学系L(図4において図示せず)による撮像素子12の撮影可能範囲内に含まれるように曲率半径および大きさの調整が行われる。
【0026】
カバー11は、対物側ドーム部11a、対物側ドーム部11aよりも曲率半径が小さい撮像素子側ドーム部11b、および両者を端部で連結する連結部11cによって形成される。カバー11の内部には、対物側ドーム部11a、撮像素子側ドーム部11b、および連結部11cによって閉ざされる密閉空間SSが形成される。
【0027】
密閉空間SSは、対物側ドーム部11aの撮像素子12側の凹面ccvs、撮像素子側ドーム部11bの対物側の面であって凹面ccvsと対向する凸面cvxs、および底面bsを有する。凹面ccvs、凸面cvxsともに半球面状になるように形成される。また、図5に示すように、撮像素子12側から見てカバー11の頂点における法線と、撮影光学系Lの光軸と、撮像素子12の受光面における有効撮像領域の中心を通る垂直な直線とが一致するように、カバー11は設置される。
【0028】
密閉空間SSの内部には、無色透明な液体が充填される。また、密閉空間SSの内部には、浮き18と錘19とが設けられる。浮き18は緑色に色付けられ、錘19は青色に色付けられる。浮き18と錘19は、密閉空間SSの凹面ccvs、凸面cvxsに沿って移動自在である。浮き18および錘19は方位磁石であり、密閉空間SS内で磁針が南北方向を向くように回転する。なお、両者共に北側を指向する磁針が濃く色付けられる。
【0029】
図6に示すように、カプセル内視鏡10が地上に対して下側に向いている場合、すなわち、カバー11の先端部が地上に対して下側を向いている場合、錘19が地上から見た密閉空間SSの最も下側に移動する。一方、図7に示すように、カプセル内視鏡10が地上に対して上側を向いている場合、すなわち、カバー11の先端部が地上に対して上側を向いている場合、浮き18が地上から見た密閉空間SSの最も上側に移動する。
【0030】
次に、外部受信機の構成について図8を用いて説明する。図8は、外部受信機の内部構成を概略的に示すブロック図である。外部受信機20には、受信アンテナ21、受信回路22、信号処理回路23、ハードディスクドライブ24、およびバッテリ25が設けられる。
【0031】
受信アンテナ21が受信回路22に駆動されることにより、カプセル内視鏡10から無線送信される画像信号が受信される。受信した画像信号は、受信回路22を介して信号処理回路23に送信される。信号処理回路23において所定の信号処理が画像信号に対して施される。信号処理の施された画像信号は、ハードディスクドライブ24に格納される。なお、信号処理回路23、受信回路22などを駆動するための電力は、バッテリ25により供給される。
【0032】
次に、カプセル内視鏡プロセッサ30の構成について図9を用いて説明する。図9はカプセル内視鏡プロセッサの内部構成を概略的に示すブロック図である。内視鏡プロセッサ30には、前段信号処理回路32、画像信号処理回路33、姿勢判別回路34、後段信号処理回路35が設けられる。
【0033】
外部受信機20のハードディスクドライブ24はコネクタ31を介して、カプセル内視鏡プロセッサ30の前段信号処理回路32に接続される。前段信号処理回路32によって、ハードディスクドライブ24に格納された画像信号が受信される。受信された画像信号は、前段信号処理回路32において、ホワイトバランス処理や色補間処理等の所定の信号処理が施される。
【0034】
前段信号処理回路32における所定の信号処理の施された画像信号は、画像信号処理回路33および姿勢判別回路34に送信される。後述するように、姿勢判別回路34において、カプセル内視鏡10の姿勢が画像信号に基づいて検出される。また、姿勢判別回路34において、浮き18および錘19が表示される位置が求められ、浮き18および錘19の表示領域がデータとして画像信号処理回路33に送られる。
【0035】
画像信号処理回路33では、画像信号に対してγ補正などの所定の信号処理が施される。また、画像信号には、浮き18および錘19の表示領域のデータに基づき補間処理が、さらに施される。
【0036】
カバー11の密閉空間SS内を移動自在である浮き18および錘19は、撮像素子12の撮影範囲内に含まれるため、表示する画像にも表示されることになる。そこで、浮き18および錘19の表示領域に関しては、撮影した画像を直接用いず、周囲の画像を用いて補間処理を行うことにより、表示する画像内における浮き18および錘19の写り込みが防止される。
【0037】
所定の信号処理の施された画像信号は、画像信号処理回路33から後段信号処理回路35に送信される。
【0038】
次に姿勢判別回路34におけるカプセル内視鏡10の姿勢の判別方法について説明する。姿勢判別回路34において、先ず、公知の画像認識方法により撮影された画像全体における浮き18および錘19の位置が検出される。なお、カプセル内視鏡による観察対象は被験者の体内であり、全体的に赤みを帯びた色であって、前述のように浮き18は緑色、錘19は青色に色付けられるため、容易に認識可能である。
【0039】
浮き18と錘19の位置が検出されると、次にカプセル内視鏡10が上向きであるか下向きであるかの判断が行なわれる。上向きまたは下向きの判断は、浮き18および錘19のいずれが撮影した画像の中心により近いかを判定することによって実行される。
【0040】
浮き18の方が画像の中心に近いときは、カプセル内視鏡10は地上に対して上側を向いていると、判断される。一方、錘19の方が画像の中心に近いときは、カプセル内視鏡10は地上に対して下側を向いていると、判断される。なお、浮き18および錘19の中で、画像の中心により近い方が、判定指標に設定される。
【0041】
カプセル内視鏡10が上向きか下向きであるかの判断の次には、カプセル内視鏡10の向きが、天頂方向または鉛直方向からどれだけ傾斜しているかが算出される。前述のように、受光面の中心を通る法線とカバーの頂点における法線が一致するので、天頂方向または鉛直方向からの傾斜角ωは、撮影画像の中心から判定指標の位置までの距離に応じて求めることが可能である。また、カプセル内視鏡10の受光面の中心を軸とした回転角θが、判定指標の位置に応じて求めることが可能である。
【0042】
回転角θおよび傾斜角ωの計算方法について、以下に詳細に説明する。図10に示すように、公知の画像認識方法により、判定指標として設定される浮き18または錘19の有効画素領域内AA内における位置Pが認識される。なお、位置Pは、有効画素領域AAの中心を原点Oとして互いに直行する2直線を座標軸とした直行座標(x、y)として認識される。
【0043】
図10に示すように、回転角θをx軸からの位置Pの回転角とすると、θ=tan-1(y/x)を計算することにより回転角θが求められる。また、原点Oおよび判定指標の位置を結ぶ直線と撮像素子12の受光面との間の角度を傾斜角ωとすると(図11参照)、ωは原点Oと受光面における判定指標の位置Pとの距離r(=√(x^2+y^2)の関数f(r)として求められる。なお、f(r)は撮影光学系Lのレンズ設計により定まる多項式であって、例えば、ω=A1+A2×r+A3×r^2+・・・+Anr^(n−1)である。
【0044】
また、図11における原点Oおよび判定指標の位置を結ぶ直線を軸としたカプセル内視鏡10の回転方向も、姿勢判別回路34によって求められる。なお、図11における原点Oおよび判定指標の位置を結ぶ直線B−B’は重力方向に平行な直線であり、直線B−B’を軸とした回転方向は、カプセル内視鏡10の方位として表すことが可能である。
【0045】
図12に示すように、判定指標の磁針の両先端部分の直行座標が検出される。両先端部分を結ぶ直線C−C’の傾きから直線C−C’とx軸との間の角度α’が求められる。x軸から回転角θだけ回転させた直線A−A’と直線C−C’の間の角度αは、α=α’-θを計算することにより、求められる。
【0046】
原点Oと受光面における判定指標の位置Pとの間の距離r、および角度αに基づいてカプセル内視鏡10の直線B−B’回りの回転方向が一意的に決定する。なお、距離rと角度αに対する回転方向は、実測により予め求められる。
【0047】
姿勢判別回路34にはROM(図示せず)が接続される。ROMには、判定指標の位置から中心までの距離rに対する傾斜角ωが対応表として記憶されている。また、ROMには、受光面における判定指標の位置Pに対する回転角θ、および距離r、角度αに対する直線B−B’周りの回転方向も対応表として記憶されている。
【0048】
姿勢判別回路34が判定指標の表示位置Pの座標、位置Pの原点Oからの距離r、および指針の両端を結ぶ直線C−C’の傾きを算出すると、対応表が姿勢判別回路34によってROMから読出され、回転角θ、傾斜角ω、および直線B−B’周りの回転方向が求められる。
【0049】
求められた回転角θ、傾斜角ω、および直線B−B’周りの回転方向が姿勢信号として後段信号処理回路35に送信される。
【0050】
前述のように、後段信号処理回路35には、画像信号処理回路33における所定の信号処理の施された画像信号およびカプセル内視鏡の姿勢に相当する姿勢信号が、受信される。後段信号処理回路35において、画像信号に相当する撮影画像とカプセル内視鏡10の姿勢を表示する方向画像とを、モニタ40に表示させるための領域の割当てなどの後段信号処理が行われる。
【0051】
撮影画像内に写りこんでいる浮き18および錘19は、公知のパターンマッチングにより表示画像上での表示領域が把握されており、浮き18および錘19に対応する領域には、周辺の画素信号により形成された補間の画素信号に置き換えられる。
【0052】
後段信号処理を施して生成した複合ビデオ信号がモニタ40に送信される。モニタ40には、複合ビデオ信号に相当する画像が表示される。図13に示すように、モニタ40には、複合ビデオ信号に相当する画像として撮影画像MIとともに、方向画像DIが表示される。
【0053】
図14に示すように、方向画像DIには画像の上方向を天頂方向(符号T参照)、下方向を重力方向(符号B参照)として、上下方向に垂直で互いに90°ずつ開いた4方向を東西南北方向(符号E、W、S、N参照)として、カプセル内視鏡10の姿勢および方位が表示される。
【0054】
次に、カプセル内視鏡の姿勢の判別およびカプセル内視鏡が撮影した画像の再生のために、カプセル内視鏡プロセッサ30により実行される処理について図15のフローチャートを用いて説明する。図15は、姿勢判別および画像再生のために行なわれる処理を示すフローチャートである。なお、本処理は、カプセル内視鏡プロセッサ30の電源がOFFに切替えられるまで繰返される。
【0055】
ステップS100において、外部受信機10から1フィールドずつ送られる画像信号が受信される。次にステップS101において、画像信号に対して所定の信号処理が施される。
【0056】
所定の信号処理を終えると、ステップS102に進む。ステップS102では、浮き18および錘19の表示領域の検出が行なわれる。ステップS103では、浮き18および錘19の表示領域が検出されたか否かの判別が行なわれる。
【0057】
いずれの表示領域も検出されるときには、ステップS104に進む。ステップS104では、浮き18および錘19の中心座標が演算される。演算により求められた中心座標がワーキングメモリ(図示せず)に記憶される。中心座標の記憶後、ステップS105に進む。ステップS105では、浮き18および錘19の表示領域の補間処理が行われる。
【0058】
ステップS103において浮き18および錘19の少なくとも一方の表示領域が検出されなかったときにはステップS106に進む。ステップS106では、ワーキングメモリに記憶されている中心座標を当該フィールドにおける浮き18または錘19の中心座標として設定する。
【0059】
ステップS105またはステップS106の終了後、ステップS107に進む。ステップS107では、浮き18および錘19の表示領域の中心座標に基づいて、カプセル内視鏡10の姿勢が判別される。
【0060】
ステップS108では、補間処理により浮き18および錘19を消去した撮影画像MIと、カプセル内視鏡の姿勢を表示する方向画像DIとがモニタ40に表示される。1フィールドの画像信号に基づく撮影画像MIおよび方向画像DIの表示後、ステップS100に戻る。以後、ステップS100〜ステップS108の処理が繰返される。
【0061】
以上のような本実施形態のカプセル内視鏡姿勢検出システムによれば、カプセル内視鏡の姿勢を簡易な構成で検出することが可能になる。
【0062】
また、本実施形態のカプセル内視鏡姿勢検出システムによれば、モニタ40に前述のように浮き18および錘19が写りこんでいる領域の画素信号は補完の画素信号に置換えられている。そのため、撮影画像MI内には、浮き18および錘19の映像が表示されないので、浮き18および錘19の画像による患部の画像の観察の妨げられることがない。
【0063】
なお、本実施形態において、浮き18および錘19は方位磁石によって形成される構成であるが、方位磁石でなくてもよい。方位磁石によって形成されなければ南北方向の検出が出来ないが、ただの浮きおよび錘を用いても回転角θ、天頂方向または鉛直方向からの傾斜角ωを求めることは可能である。
【0064】
また、本実施形態において、浮き18および錘19を非表示にし、代わりに周囲の画像から補間処理により、浮き18および錘19の奥の被写体の画像が形成される構成であるが、浮き18および錘19を表示したままでもよい。被写体の視認性は低下するが、カプセル内視鏡10の姿勢を十分に判別可能だからである。
【0065】
また、本実施形態において、方向画像DIが撮影画像MIとは別に表示される構成であるが、撮影画像MI上にカプセル内視鏡10の方向を示す指標などが表示される構成であってもよい。
【0066】
また、本実施形態において、密閉空間SSには浮き18と錘19とが設けられる構成であるが、いずれか一方のみであってもよい。いずれか一方だけであっても、天頂方向からの傾斜角または鉛直方向からの傾斜角を検出することは可能である。例えば、カプセル内視鏡10の重心の位置を調整することによりカプセル内視鏡10を上方向および下方向のいずれかに指向させる構成であれば、一方の傾斜角のみ検出可能でっても姿勢の検出は十分に可能である。なお、錘18のみが設けられる場合には密閉空間SSに無色透明な液体を充填不要である。
【0067】
また、本実施形態において、凹面ccvsおよび凸面cvxsともに半球面状に形成されるが、撮像素子12とは逆方向に突出する曲面であればよい。完全な球面でなくても、浮き18および錘19を天頂方向および鉛直方向に移動させることは可能だからである。
【0068】
また、本実施形態において、密閉空間SSは凹面ccvsと凸面cvxsとによって形成される空間であるが、少なくとも撮像素子12とは逆方向に突出する凹面ccvsによって形成されていればよい。凹面ccvsが形成されていれば、判定指標が天頂方向または鉛直方向に向かって、凹面ccvsに沿って移動可能だからである。
【0069】
ただし、本実施形態のように、凹面ccvsに相対する凸面cvxsによっても密閉空間が形成されることが望ましい。凸面cvxsを形成することにより、判定指標とならない浮き18または錘19を画像の周囲に移動させることが可能となる。したがって、撮像素子12の上に浮き18または錘19が重なることが防止される。また、凸面cvxsを形成することにより、撮像素子12と浮き18および錘19との距離を一定の範囲に保持させることが可能になる。
【0070】
さらに凸面cvxsを形成することにより以下に説明する効果が得られる。凹面ccvsと平面とにより密閉空間を形成した場合、通常の画像を得るためには撮影光学系Lのレンズ特性を従来のカプセル内視鏡に用いられる撮影光学系のレンズ特性から大きく変更させる必要がある。しかし、本実施形態のように凸面cvxsを形成することにより撮影光学系のレンズ特性を従来のカプセル内視鏡のレンズ特性から大きく変更する必要がないため、レンズ設計が容易になる。
【0071】
また、本実施形態において、カバー11はドーム状に形成されるが、いかなる形状であってもよい。密閉空間が前述のような曲面であれば、本実施形態と同様の効果を得ることが可能だからである。ただし、再現性の高い光学像を受光するためには、ドーム形状であることが望ましい。
【0072】
また、本実施形態において、カバー11の頂点における法線と受光面の中心を通る受光面の法線とが重なる構成であるが、重ならなくてもよい。カバー11の頂点における法線と受光面との交点から浮き18または錘19の表示位置までの距離を算出すれば、傾斜角を求めることは可能である。
【0073】
また、本実施形態において、密閉空間SSに浮き18が設けられる構成であるが、単に気泡、または密閉空間SSに充填される透明な液体より比重の軽い液体による液胞が設けられる構成であってもよい。
【0074】
また、本実施形態において、浮き18および錘19はそれぞれ緑色および青色に色付けられる構成であるが、いかなる色に色付けられてもよいし、または色付けられなくてもよい。ただし、前述のように色付けられることにより画像認識が容易となり、カプセル内視鏡10の向きをより正確に検出することが可能である。
【0075】
また、本実施形態において、カプセル内視鏡プロセッサ30によりカプセル内視鏡10の向きを検出させる構成であるが、姿勢判別回路34を有さない通常のカプセル内視鏡プロセッサを用いてもよい。観察者は、撮影画像に表示される浮き18または錘19の位置を視認することにより、カプセル内視鏡10の向きを判別することが可能である。
【0076】
また、本実施形態において、カプセル内視鏡10のカバー11に密閉空間SSを形成し、浮き18または錘19を密閉空間SS内部に設ける構成であるが、浮き18または錘19を密閉空間SS内に有するカプセル内視鏡カバーを通常のカプセル内視鏡に冠着させても本実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態を適用したカプセル内視鏡姿勢検出システムの使用状態を示す第1の参考図である。
【図2】カプセル内視鏡姿勢検出システムの使用状態を示す第2の参考図である。
【図3】本実施形態のカプセル内視鏡の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】カバーの断面図である。
【図5】カプセル内視鏡内部における各部位の配置された位置を示す内部配置図である。
【図6】カプセル内視鏡が下側を向いているときのカバー内の動きを説明する図である。
【図7】カプセル内視鏡が上側を向いているときのカバー内の動きを説明する図である。
【図8】外部受信機の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】本実施形態のカプセル内視鏡プロセッサの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】有効画素領域上の2次元座標における判定指標の位置と原点との距離および判定指標の位置のx軸からの回転角の関係を説明するための図である。
【図11】重力方向または天頂方向からのカプセル内視鏡の傾斜角の計算方法を説明するための図である。
【図12】判定指標の方位の判定方法について説明するための図である。
【図13】モニタに表示される撮影画像と方向画像とを示す図である。
【図14】方向画像の拡大図である。
【図15】姿勢判別および画像再生のために行なわれる処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 カプセル内視鏡
11 カバー
12 撮像素子
18 浮き
19 錘
30 カプセル内視鏡プロセッサ
32 前段信号処理回路
34 姿勢判別回路
ccvs 凹面
cvxs 凸面
DI 方向画像
MI 撮影画像
SS 密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する撮像素子と、
前記撮像素子の前方に設けられ、密閉空間が前記撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ、透明部材により形成されるカバーと、
前記密閉空間内に移動自在に設けられ、重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを備える
ことを特徴とするカプセル内視鏡。
【請求項2】
前記方向指標は、錘であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル内視鏡。
【請求項3】
前記錘は、方位磁石であることを特徴とする請求項2に記載のカプセル内視鏡。
【請求項4】
前記錘は、青色または緑色に色づけられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。
【請求項5】
前記密閉空間に充填される透明な液体である充填液体を備え、前記方向指標は前記充填液体に設けられる泡または浮きであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカプセル内視鏡。
【請求項6】
前記浮きは、方位磁石であることを特徴とする請求項5に記載のカプセル内視鏡。
【請求項7】
前記浮きは、青色または緑色に色づけられることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のカプセル内視鏡。
【請求項8】
前記密閉空間は前記撮像素子と逆方向に突出する曲面である第1のガイド曲面を有し、前記方向指標は前記第1のガイド曲面に沿って移動することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。
【請求項9】
前記第1のガイド曲面は、球面の一部を有することを特徴とする請求項8に記載のカプセル内視鏡。
【請求項10】
前記密閉空間は、前記第1のガイド曲面と同じ方向に突出する第2のガイド曲面を有することを特徴とする請求項8または請求項9のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡。
【請求項11】
撮像素子を有するカプセル内視鏡の、前記撮像素子側の外殻に冠着させるカプセル内視鏡カバーであって、
前記カプセル内視鏡に冠着させた状態における前記撮像素子の撮像可能範囲内に形成される密閉空間部と、
前記密閉空間部内に移動自在に設けられ、重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを備え、
透明部材により形成される
ことを特徴とするカプセル内視鏡カバー。
【請求項12】
被写体を撮影する撮像素子と、前記撮像素子の前方に設けられ密閉空間が前記撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ透明部材により形成されるカバーと、前記密閉空間内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを有するカプセル内視鏡から、前記撮像素子が被写体の撮影に基づいて生成する画像信号を受信する受信部と、
前記受信機が受信した前記画像信号に基づいて、前記画像信号に相当する撮影画像における前記方向指標を検出する指標検出部と、
前記撮影画像における前記方向指標が検出された位置に基づいて前記カプセル内視鏡の向きを判別する判別部とを備える
ことを特徴とするカプセル内視鏡プロセッサ。
【請求項13】
前記方向指標は方位磁石である錘または前記密閉空間に充填される透明な液体中の浮きであり、
前記指標検出部は、前記方向指標の磁石が指示する方向を検出し、
前記判別部は、前記指標検出部が検出した方向に基づいて、前記カプセル内視鏡の向きを判別する
ことを特徴とする請求項12に記載のカプセル内視鏡プロセッサ。
【請求項14】
前記撮影画像に表示される前記方向指標の周囲の画像を用いて補完する補間部を備えることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のカプセル内視鏡プロセッサ。
【請求項15】
前記カプセル内視鏡の向きが、前記撮影画像を表示するためのモニタに表示可能であることを特徴とする請求項12〜請求項14のいずれか1項に記載のカプセル内視鏡プロセッサ。
【請求項16】
被写体を撮影する撮像素子と、前記撮像素子の前方に設けられ密閉空間が前記撮像素子の撮像可能範囲内に設けられ透明部材により形成されるカバーと、前記密閉空間内に移動自在に設けられ重力方向あるいは天頂方向に移動する方向指標とを有するカプセル内視鏡と、
前記撮像素子が被写体の撮影に基づいて生成する画像信号を受信する受信部と、前記受信機が受信した前記画像信号に基づいて前記画像信号に相当する撮影画像における前記方向指標を検出する指標検出部と、前記撮影画像における前記方向指標が検出された位置に基づいて前記カプセル内視鏡の向きを判別する判別部とを有するカプセル内視鏡プロセッサとを備える
ことを特徴とするカプセル内視鏡姿勢検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−43466(P2008−43466A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220535(P2006−220535)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】