説明

カメラ

【課題】 撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うこと。
【解決手段】 結像光学系2の焦点調節状態を変化させながら結像光学系による結像状態を検出する焦点調節部12,15と、手動で結像光学系の焦点調節を行う焦点調節部材16と、焦点調節部材の操作に基づいて、焦点調節部による焦点調節範囲を設定する設定部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体像を撮像するカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラにおいて焦点調節時間の短縮を目的として、焦点調節範囲を制限する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−205017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した発明では、制限する焦点調節範囲は予め定められているため、被写界の状態によっては、撮影者が意図する被写体が制限する焦点調節範囲に存在しない場合もあり、不都合が生じる場合があった。
本発明のカメラは、撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のカメラは、結像光学系の焦点調節状態を変化させながら前記結像光学系による結像状態を検出する焦点調節部と、手動で前記結像光学系の焦点調節を行う焦点調節部材と、前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節部による焦点調節範囲を設定する設定部とを備える。
なお、好ましくは、前記焦点調節部は、前記焦点調節範囲に応じて、前記結像状態の検出間隔を変更するしても良い。
【0005】
また、好ましくは、前記焦点調節部は、部分的な焦点調節範囲で前記結像状態を検出する場合には、全範囲で前記結像状態を検出する場合よりも、前記検出間隔を小さくしても良い。
また、好ましくは、前記設定部は、前記結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節範囲を設定し、前記焦点調節部は、前記複数の位置の指定順序に応じて、前記焦点調節範囲における前記焦点調節状態を変化させる方向を決定しても良い。
【0006】
また、好ましくは、前記焦点調節部は、前記複数の位置のうち、前記指定順序が後の位置から前の位置に向かう方向を前記焦点調節状態を変化させる方向としても良い。
また、好ましくは、前記焦点調節部は、前記結像光学系による像の輝度に基づいて、前記焦点調節範囲の全範囲で前記結像状態を検出しても良い。
また、好ましくは、前記設定部は、前記結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節範囲を設定し、前記焦点調節部は、前記複数の位置のうち、至近の位置から遠方の位置に向かう方向を前記焦点調節状態を変化させる方向としても良い。
【0007】
また、好ましくは、前記焦点調節部は、前記結像光学系による像の輝度に基づいて、前記焦点調節範囲で山登り方式の焦点調節を行っても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカメラによれば、撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、本発明のカメラの一例として、一眼レフタイプの電子カメラを用いて説明する。また、以下の各実施形態は、図1に示すように、複数の被写体(人物Aと木B)を含む被写界に対して焦点調節を行う場合に特に好適である。図1に示すように、複数の被写体を含む被写界に対しては、撮影者が意図する被写体(例えば、人物A)を含む範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことが好ましい。
【0010】
図2は、本実施形態の電子カメラ1の構成を示す図である。図2に示すように、電子カメラ1は、撮影レンズ2、絞り3、クイックリターンミラー4、サブミラー5、拡散スクリーン6、コンデンサレンズ7、ペンタプリズム8、ビームスプリッタ9、接眼レンズ10、結像レンズ11、AE/AFセンサ12、シャッタ13、撮像素子14、焦点検出部15の各部を備える。撮影レンズ2は、不図示の複数のレンズ群から構成されるフォーカスレンズである。
【0011】
非撮影時、すなわち撮影を行わない場合には、クイックリターンミラー4は、図2に示すように、45°の角度に配置される。そして、撮影レンズ2および絞り3を通過した光束は、クイックリターンミラー4で反射され、拡散スクリーン6、コンデンサレンズ7、ペンタプリズム8、ビームスプリッタ9を介して接眼レンズ10に導かれる。撮影者は、撮影レンズ10を介して被写体の像を目視することにより構図確認を行う。一方、ビームスプリッタ9により、上方に分割された光束は、結像レンズ11を介してAE/AFセンサ12の撮像面上に再結像される。また、クイックリターンミラー4を透過した光束は、サブミラー5を介して焦点検出部15に導かれる。
【0012】
一方、撮影時には、クイックリターンミラー4が、破線で示す位置に退避してシャッタ13が開放し、撮影レンズ2からの光束は撮像素子14に導かれる。
撮像素子14は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの半導体デバイスである。
焦点検出部15は、図3Aに示すように、被写界の中心部分のエリアSを焦点検出の対象とし、位相差方式の焦点検出を行い、撮影レンズ2の焦点状態を検出する。また、電子カメラ1は、AE/AFセンサ12により検出される輝度に基づいて、コントラスト方式の焦点検出を行い、撮影レンズ2の焦点状態を検出する。位相差方式の焦点検出とコントラスト方式の焦点検出とのどちらを行うかは、ユーザ操作に応じて設定可能とするのが好ましい。また、位相差方式の焦点検出とコントラスト方式の焦点検出とを組み合わせて撮影レンズ2の焦点状態を検出する構成としても良い。
【0013】
電子カメラ1は、焦点調節に関わる部材である距離環16、各部を制御する制御部17、不図示のレリーズ釦などを含む操作部をさらに備える。距離環16は、レンズ鏡筒の部分に設けられ、焦点調節をマニュアルで行う際に使用される。制御部17は、内部に不図示のメモリを備え、各部を制御するためのプログラムを予め記録する。
以下、オートフォーカス(以下、「AF」と称する)撮影について説明する。なお、以下では、上述したコントラスト方式の焦点検出の結果に基づいたオートフォーカス撮影について説明する。
【0014】
撮影者は、撮影に先立って、焦点調節範囲を手動で設定する。具体的には、図4のフローチャートに示すように、ステップS1において、焦点調節範囲設定モードを開始する。焦点調節範囲設定モードの開始は、不図示の操作部を介して指示される。
ステップS2において、焦点調節範囲の一方の端点を指定する。撮影者は、距離環を操作して焦点調節範囲の一方の端点まで撮影レンズ2を駆動し、所定の操作部材を操作して指定する。なお、所定の操作部材は、専用の釦などでも良いし、レリーズ釦などの既存の操作部材を利用(半押し)しても良い。
【0015】
ステップS3において、焦点調節範囲の他方の端点を指定する。撮影者は、距離環を操作して焦点調節範囲の他方の端点まで撮影レンズ2を駆動し、所定の操作部材を操作して指定する。
ステップS4において、焦点調節範囲設定モードを終了する。焦点調節範囲設定モードの終了は、不図示の操作部を介して指示される。
【0016】
制御部17は、以上の処理が終了すると、ステップS2およびステップS3で指定された焦点調節範囲を制御部17内の不図示のメモリに記録する。
そして、制御部17は、不図示の操作部を介してAF開始が指示されると、メモリに記録した焦点調節範囲内で焦点調節を行う。
図5に、各処理のタイミングチャートを示す。
【0017】
図5において、範囲Dは焦点調節可能な全範囲を示す。時刻t0において、上述したステップS1の焦点調節範囲設定モードの開始が指示される。時刻t1において、上述したステップS2の焦点調節範囲の一方の端点が指定される。時刻t2において、上述したステップS3の焦点調節範囲の他方の端点が指定される。時刻t3において、AF開始が指示されると、制御部17は、各部を介して、範囲DLをスキャンし、時刻t4において、スキャンを終了する。そして、スキャン結果に基づいて焦点調節を行う。
【0018】
撮影者は、範囲DL内に意図した被写体が含まれるように、焦点調節範囲を設定する。なお、図5の例では、はじめに遠方の端点が指定され、次に近方の端点が指定されたので、スキャンの方向を、指定順序が後の位置から前の位置に向かう方向としている。逆に、はじめに近方の端点が指定され、次に遠方の端点が指定された場合には、スキャンの方向を、遠方から近方へ向かう方向(指定順序が後の位置から前の位置に向かう方向)とすれば良い。
【0019】
また、図5の例では、全範囲をスキャンする焦点調節方法について説明したが、いわゆる山登り方式の焦点調節についても、同様に適用することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、結像光学系の焦点調節状態を変化させながら結像光学系による結像状態を検出する焦点調節部と、手動で結像光学系の焦点調節を行う焦点調節部材とを備え、上述した焦点調節部材の操作に基づいて、焦点調節部による焦点調節範囲を設定する。したがって、撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことができる。そのため、撮影者の意図した被写体に的確に焦点調節を行うことができる。また、焦点調節に要する時間を短縮することができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する焦点調節部材の操作に基づいて、上述した焦点調節範囲を設定し、焦点調節部は、複数の位置の指定順序に応じて、焦点調節範囲における焦点調節状態を変化させる方向を決定する。したがって、結像光学系を無駄に駆動することを防ぎ、焦点調節に要する時間をさらに短縮することができる。
【0021】
また、本実施形態によれば、焦点調節部は、結像光学系による像の輝度に基づいて、焦点調節範囲の全範囲で結像状態を検出する。したがって、公知のコントラスト方式の焦点調節を行うカメラにおいて、撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことができる。
特に、本実施形態によれば、複数の位置のうち、指定順序が後の位置から前の位置に向かう方向を前記焦点調節状態を変化させる方向とするので、焦点調節範囲の全範囲で結像状態を検出する場合に好適である。
【0022】
なお、本実施形態では、被写界の中心部分のエリアS(図3A参照)を焦点検出の対象とする例を示したが、図3Bに示すように、複数のエリア(M1〜M5)を対象とした、いわゆる多点AFにも本発明を同様に適用することができる。
また、本実施形態によれば、焦点調節部は、結像光学系による像の輝度に基づいて、焦点調節範囲で山登り方式の焦点調節を行う。したがって、公知の山登り方式の焦点調節を行うカメラにおいて、撮影者が所望する、実際の撮影に即した範囲に焦点調節範囲を制限して焦点調節を行うことができる。
【0023】
特に、本実施形態によれば、結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する焦点調節部材の操作に基づいて、焦点調節範囲を設定し、焦点調節部は、複数の位置のうち、至近の位置から遠方の位置に向かう方向を焦点調節状態を変化させる方向とする。したがって、遠方側の位置から至近側の位置の順で焦点調節範囲を指定すれば、至近側から山登り方式の焦点調節を行うので、至近側の被写体を優先したい構図での山登り方式の焦点調節にも好適である。
【0024】
また、本実施形態では、コントラスト方式の焦点検出の結果に基づいたオートフォーカス撮影時を例に挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、位相差方式の焦点検出の結果に基づいたオートフォーカス撮影にも本発明を同様に適用することができる。
図3Bに示すように、被写界内の複数のエリアM1〜M5を焦点検出の対象とし、位相差方式の焦点検出を行い、撮影レンズ2を介した被写体の像のデフォーカス量を検出する場合には、以下のようにすれば良い。すなわち、全範囲で検出した複数のエリアにおけるデフォーカス量を焦点距離に換算し、焦点調節部材の操作に基づいて設定した焦点調節範囲内に該当するものを採用して焦点調節を行う構成とすれば良い。なお、複数のデフォーカス量が、前述した焦点調節範囲内に該当する場合には、撮影者により選択させる構成としても良いし、至近順に優先する構成としても良い。
【0025】
また、本実施形態では、距離環16を用いて焦点調節範囲を設定する例を示したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、距離環を備えないカメラにおいては、マニュアルフォーカス設定などに使用される各種操作部材(ズーム釦、十字キーなど)を使用して、焦点調節範囲を設定する構成とすれば良い。
また、本実施形態において、焦点調節部材の操作に基づいて設定した焦点調節範囲において焦点検出を行う際に、焦点調節範囲に応じて、結像状態の検出間隔を変更するしても良い。例えば、焦点調節範囲内をスキャンする速度や精度、山登り方式の焦点調節を行うピッチ、あるいは、位相差式の焦点調節における検出ピッチなどを変更しても良い。このように、検出間隔を変更する際に、検出間隔を広くすれば、検出に要する時間を短縮することが可能であるし、また、検出間隔を狭くすれば、検出の精度を向上させることができる。本発明では、焦点調節範囲を制限することにより、焦点調節に要する時間を短縮することが可能であるため、部分的な焦点調節範囲(焦点調節部材の操作に基づいて手動で設定した焦点調節範囲)で結像状態を検出する場合には、全範囲で結像状態を検出する場合よりも、検出間隔を小さくしても、全体の処理時間への影響を抑えることができる。
【0026】
また、本実施形態では、一眼レフタイプの電子カメラを用いて説明したが、銀塩カメラにも本発明を同様に適用することができる。また、一眼レフタイプではなく、コンパクトタイプのカメラにも本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】複数の被写体を含む被写界について説明する図である。
【図2】電子カメラ1の構成を示す図である。
【図3】焦点調節について説明する図である。
【図4】焦点調節範囲を手動で設定するフローチャートである。
【図5】各処理のタイミングチャートを示す。
【符号の説明】
【0028】
1,電子カメラ 2,撮影レンズ 12,AE/AFセンサ 14,撮像素子 15,焦点検出部 16,距離環 17,制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像光学系の焦点調節状態を変化させながら前記結像光学系による結像状態を検出する焦点調節部と、
手動で前記結像光学系の焦点調節を行う焦点調節部材と、
前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節部による焦点調節範囲を設定する設定部と
を備えたことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節部は、前記焦点調節範囲に応じて、前記結像状態の検出間隔を変更する
ことを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節部は、部分的な焦点調節範囲で前記結像状態を検出する場合には、全範囲で前記結像状態を検出する場合よりも、前記検出間隔を小さくする
ことを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記設定部は、前記結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節範囲を設定し、
前記焦点調節部は、前記複数の位置の指定順序に応じて、前記焦点調節範囲における前記焦点調節状態を変化させる方向を決定する
ことを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節部は、前記複数の位置のうち、前記指定順序が後の位置から前の位置に向かう方向を前記焦点調節状態を変化させる方向とする
ことを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節部は、前記結像光学系による像の輝度に基づいて、前記焦点調節範囲の全範囲で前記結像状態を検出する
ことを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記設定部は、前記結像光学系の光軸方向における複数の位置を指定する前記焦点調節部材の操作に基づいて、前記焦点調節範囲を設定し、
前記焦点調節部は、前記複数の位置のうち、至近の位置から遠方の位置に向かう方向を前記焦点調節状態を変化させる方向とする
ことを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項7に記載のカメラにおいて、
前記焦点調節部は、前記結像光学系による像の輝度に基づいて、前記焦点調節範囲で山登り方式の焦点調節を行う
ことを特徴とするカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−187894(P2007−187894A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6095(P2006−6095)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】