説明

カラーフィルター用赤色組成物及びそれを有するカラーフィルター

【課題】輝度とコントラストとを両立したカラーフィルター用赤色組成物及びそれを有するカラーフィルターを提供する。
【解決手段】PR254、PR177及びオレンジ色顔料を含有するカラーフィルター用赤色組成物及びそれを有するカラーフィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターに有用な赤色組成物及びそれを有するカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン用のディスプレイ、携帯用端末やテレビジョン用途にカラー液晶表示装置が多く使用され、需要が拡大している。このような液晶表示装置のカラーフィルターは、一般的に透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色層と各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。このような着色層の形成法としては、印刷法、インキジェット法、フォトリソグラフィーを応用した顔料分散法などが知られている。
主にテレビジョン用途のカラーフィルター用レッド顔料(赤色顔料)としては輝度の点からDPP:ジケトピロロピロール系のC.I.ピグメントレッド254(以下、「PR254」という)の色相が好ましい。そこで従来は、PR254単独もしくはアントラキノン系のC.I.ピグメントレッド177(以下、「PR177」という)を併用し調色した赤色が一般的であった。
しかし液晶テレビジョンはコントラストの点で劣っており、着色組成物の高コントラスト化の要請が高まっていた。
これに対し、PR254顔料自体の改善の他、コントラストが高いPR177の比率増量により赤色感材として改善することが行われて来た。この方法では青味の強いPR177を増やす代わりにイエロー顔料で調色することとなるが、輝度の低減が大きいという問題があった。
【0003】
現在はPR254/PR177/イエロー顔料の系が多く採用されており、イエロー顔料のコントラスト及び輝度が重要となってきている。例えば、特許文献1では、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー139(以下、「PY139」という)を用いる、PR254/PR177/PY139の系が開示されている。この系では、輝度の低減は改善されているが、コントラストが不十分であった。
また、特許文献2では、イエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー150(以下、「PY150」という)の使用が提案されている。このPR254/PR177/PY150の系においては、非常にコントラストが高いものの輝度の低下が著しく、輝度とコントラストの両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−131517号公報
【特許文献2】特開2007−133131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、輝度とコントラストとを両立したカラーフィルター用赤色組成物及びそれを有するカラーフィルターを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、PR254及びPR177に、さらにオレンジ色顔料を組み合わせることにより上記課題を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177及びオレンジ色顔料を含有するカラーフィルター用赤色組成物、
[2]顔料合計100質量部の中で、C.I.ピグメントレッド254が10〜60質量部、C.I.ピグメントレッド177が20〜80質量部、オレンジ色顔料が10〜49質量部であることを特徴とする上記[1]に記載のカラーフィルター用赤色組成物、
[3]オレンジ色顔料の分散平均粒子径が20〜80nmであることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のカラーフィルター用赤色組成物、
[4]オレンジ色顔料が、ナフトール構造、DPP構造又は縮合アゾ構造を有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物、
[5]オレンジ色顔料が、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ71及び/又はC.I.ピグメントレッド242であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物、
[6]少なくとも顔料、分散剤、バインダー樹脂、感放射線性化合物、光重合開始剤及び溶剤を含むことを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物、
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物を有するカラーフィルター、及び
[8]C光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が以下の範囲にある上記[7]に記載のカラーフィルターである。
0.630≦x≦0.680
0.310≦y≦0.350
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、輝度とコントラストとを両立したカラーフィルター用赤色組成物及びそれを有するカラーフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】コントラストの測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のカラーフィルター用赤色組成物は、PR254、PR177及びオレンジ色顔料を含有することを特徴とする。
本発明のカラーフィルター用赤色組成物は、印刷法、インキジェット法、顔料分散法等の既知のカラーフィルター製造法に適用できるが、精度良く画素を作成できるため顔料分散法が好ましく用いられる。特に、ネガ型感光性赤色組成物を使用する方法が好ましく用いられる。
本発明のカラーフィルター用赤色組成物において、顔料合計100質量部の中で、PR254が10〜60質量部、PR177が20〜80質量部、オレンジ色顔料が10〜49質量部の範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、高輝度と高コントラストとを両立することができるので好ましい。
【0010】
本発明に用いられるオレンジ色顔料としては、特に制限されず、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ42、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド242等が挙げられる。
これらのオレンジ色顔料の内、ナフトール構造、DPP構造又は縮合アゾ構造を有するオレンジ色顔料が好ましい。ナフトール構造を有するオレンジ色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ38(以下、「PO38」という)が好ましく、DPP構造を有するオレンジ色顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ71(以下、「PO71」という)が好ましい。縮合アゾ構造を有するオレンジ色顔料としては、C.I.ピグメントレッド242(以下、「PR242」という)が好ましい。
PO38、PO71及び/又はPR242を、PR254及びPR177と併用すると、輝度が高く、かつコントラストが高い赤色組成物が得られるので特に好ましい。
【0011】
本発明の赤色組成物の固形分中の上記顔料の合計量は好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。10質量%以上であれば色再現性が高く、50質量%以下であれば、現像性に優れ、十分に感度の高い組成分が得られるからである。
【0012】
本発明において使用される顔料は、ソルトミリング法、アシッドペースト法、アシッドスラリー法等の公知の方法を用いて、より微細化したものが好ましく用いられる。よりコントラストの高い赤色組成物が得られるからである。
オレンジ色顔料の分散平均粒子径は20〜80nmであることが好ましい。分散平均粒子径が20nm以上であれば、赤色組成物中での分散安定性が向上するので好ましく、分散平均粒子径が80nm以下であれば、輝度やコントラストが向上するので好ましい。なお、分散平均粒子径は、レーザー光散乱法を利用したマイクロトラックUPA粒度分布計{日機装(株)製}で測定した。
【0013】
以上説明した顔料は、顔料分散剤と共に溶剤中に分散され、顔料分散液となる。顔料分散液を得るための混合分散は、例えば、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ペイントシェーカー、ニーダー等の混合分散機を使用して行われる。
顔料は、それぞれ単独に上記混合分散を行っても良いし、2つ以上の顔料を組み合わせて上記混合分散を行っても良い。
顔料分散剤としては、公知の高分子分散剤や低分子分散剤を使用することができ、具体的には、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、変性ポリエステル、変性ポリアミド等の高分子分散剤、リン酸エステル、アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の界面活性剤や顔料誘導体を挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、高分子分散剤が好ましく、具体的な商品名としては、EFKA−4046、EFKA−4047、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKA4300、EFKA4330(以上、チバスペシャルティケミカルズ社製)、Disperbyk111、Disperbyk161、Disperbyk165、Disperbyk167、Disperbyk182、Disperbyk2000、Disperbyk2001(以上、ビックケミー社製)、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822(味の素ファインテクノ(株)製)等を挙げることができる。
本発明の赤色組成物の固形分中の分散剤量は、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。上記範囲内であれば分散安定性及び塗膜物性の良好な赤色組成物を得ることができるからである。
【0014】
また、溶剤としては、一般的にカラーフィルター用赤色組成物に使用されているものであれば特に限定されるものではない。具体的には、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等の(モノあるいはポリ)アルキレングリコール(モノあるいはポリ)アルキルエーテル類;3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等のアセテート類;プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、n−ブチルアセテート、i−ブチルアセテート、酪酸i−ブチル、酪酸n−ブチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらの溶剤のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が溶解性、顔料分散性、塗布性の観点から好ましい。なお、上記溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
本発明の赤色組成物は、少なくとも顔料、分散剤、バインダー樹脂、感放射線性化合物、光重合開始剤及び溶剤を含むことが好ましい。
顔料分散法によって、カラーフィルターを製造する場合には、例えばネガ型の感光性赤色組成物が用いられる。この場合、感光性赤色組成物は、上記の顔料分散液と、上記溶剤に溶解したバインダー樹脂と、感放射線性化合物と、光重合開始剤と、所望により添加される添加剤とを上記の混合分散機にて混合分散して得られる。
【0016】
本発明の赤色組成物に用いられるバインダー樹脂は、特に限定されるものではないが、カラーフィルターの製造に用いられることから、耐熱性、及び製造工程において使用される有機溶剤への耐性を有する樹脂であることが好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゼラチン等の感光性又は非感光性の樹脂を挙げることができる。
【0017】
上述した中でも、特に好ましいバインダー樹脂としては、カルボキシル基等の酸性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基含有不飽和単量体と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体の共重合体が好ましく、さらに分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和基とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性不飽和基を導入したものも好ましい。
【0018】
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。なお、カルボキシル基含有不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0019】
エチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシル(メタ)エチルアクリレート等、及び、これらのマクロモノマー類;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド等のN置換マレイミド類等を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和単量体は、単独もしくは数種類を組み合わせることができる。
【0020】
また、バインダー樹脂として用いるエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等を樹脂骨格に含むアクリル共重合体等を挙げることができ、これらの樹脂は単独又はアクリル樹脂系等と組み合わせることができる。
【0021】
本発明の赤色組成物の固形分中のバインダー樹脂の量は、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。上記範囲内であれば塗布性、現像性の優れたものとなるからである。
【0022】
また、感放射線性化合物は、放射線に対して反応性を有する化合物を意味し、例えば、光反応性化合物(紫外線反応性化合物、可視光反応性化合物等)、電子線反応性化合物等を挙げることができる。より具体的には、不飽和二重結合を有する単官能モノマーや多官能モノマーが挙げられる。単官能モノマーとしては、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、及び上記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの等が挙げられる。
【0023】
上記の多官能モノマーとしては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の二官能モノマー;グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の三官能以上のモノマー、及び上記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの、並びにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。本発明では、上記の単官能モノマー及び多官能モノマーを1種又は2種以上の混合物として、あるいは、その他の化合物との混合物として使用することができる。
【0024】
本発明の赤色組成物の固形分中の上記の感放射線性化合物の量は、好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。上記範囲内であれば感度、現像性、塗膜硬度等の優れたものとなるからである。
【0025】
また、本発明のカラーフィルター用赤色組成物には、添加剤として、光重合開始剤、増感剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等が必要に応じて用いられる。
光重合開始剤としては、具体的にベンゾフェノン、ミヒラーケトン(4,4'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン)、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、スピードキュアーBMS(ラムソン社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアー369(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアー379(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアー651(チバスペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバスペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE01(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE02(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)等の光重合開始剤が挙げられる。本発明では、これらの光重合開始剤を単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
本発明の感光性赤色組成物固形成分中の、上記の光重合開始剤の使用量としては、3質量%〜40質量%、特に10質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、感度が良く、精細なパターンの得られる感光性赤色組成物を得ることができるからである。
【0026】
また、光重合開始剤と併用し、水素供与体として、脂肪族あるいは芳香族の単、多官能チオール化合物や芳香族アミン系化合物を用いることができる。本発明の感光性赤色組成物固形成分中の、上記の水素供与体の使用量としては、0.5質量%〜30質量%の範囲内、特に2質量%〜20質量%の範囲内であることが感度の点で好ましい。
【0027】
その他、添加剤として、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、連鎖移動剤等を添加することができる。用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。
【0028】
上記のように調製された本発明の感光性赤色組成物は、例えば、これを用いて、遮光層がパターン形成されたカラーフィルター用のガラス基板に回転塗布(スピンコート)、流延塗布、浸漬塗布、ロール塗布、特にダイコート法等の公知の塗布方法により塗布し、真空度が0.1〜1.0torr程度、例えば0.2torrに到達するまで真空ベイクを行って0.5〜4μm程度(乾燥膜厚)の塗布膜を得る。得られた塗布膜に目的の画素を形成するためのネガ型のフォトマスクを介して高圧水銀灯や超高圧水銀灯等により10〜500mJ/cm2 程度の光量の紫外線を照射し露光する。露光後、光硬化した塗膜を公知のアルカリ現像液を使用してスプレイ法や浸漬法にて現像し、未露光部を溶解して目的とする色に相当する画素を得る。必要に応じて、現像後、200〜250℃程度の温度で10〜60分程度、後硬化処理(ポストベイク)することができる。上記の画素を得る工程を、カラーフィルターに必要とされる色の数だけ繰り返すことによって目的とするカラーフィルターが得られる。上記のカラーフィルターは、赤の画素のみを有する赤色カラーフィルターとして製造しても良いが、通常、本発明の感光性赤色組成物を用いて形成する赤の画素のほか、緑及び青の各画素を遮光層がパターン形成されたカラーフィルター用のガラス基板上に配置したものが製造される。
【0029】
以上のように製造したカラーフィルターは、C光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が以下の範囲にあることが好ましい。
0.630≦x≦0.680
0.310≦y≦0.350
この範囲に色度座標(x,y)があれば、バックライトと組み合わせた場合に高い色再現性と透過率を両立し、GREEN(緑色)及びBLUE(青色)と組み合わせた場合にテレビ表示に適した色度となるので好ましい。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、感光性赤色組成物の色度x、色度y、輝度Y及びコントラストは、下記の方法に従って評価した。
<色度x、色度y及び輝度Y>
オリンパス(株)製 OSP−SP200顕微分光測光装置を用いて、JIS Z8701に定める色度x、色度y及びXYZ表色系における三刺激値のY(明るさY)値を輝度Yとして測定した。測定条件は、光源がC光源、照明倍率20倍、ピンボールNo.7(50μm)である。
<コントラスト>
レジストを用いて作製した塗膜のコントラスト比を以下のように測定した。
図1は、コントラストの測定方法を示す模式図である。図1において、液晶ディスプレー用バックライトユニット1から出た光2は、第1の偏光板3を通過して偏光され、ガラス基板上に塗布された着色組成物の硬化塗膜4を通過し、第2の偏光板5に到達する。第1の偏光板3と第2の偏光板5の偏光板が平行であれば、光は第2の偏光板5を透過するが、偏光板3と5とが直交している場合には光は第2の偏光板5により遮断される。しかし、第1の偏光板3によって偏光された光が着色組成物の硬化塗膜4を通過するときに顔料粒子による散乱等が起こり偏光された光に一部にずれを生じると、偏光板3と5とが平行のときは第2の偏光板5を通過する光量が減り、偏光板3と5とが直交のときは第2の偏光板5を一部光が通過する。この透過光の輝度を輝度計6で測定し、偏光板3と5とが平行のときの輝度と、直交のときの輝度との比(コントラスト比)を算出した。
コントラスト比={平行輝度(cd/m2)}/{直交輝度(cd/m2)}
輝度測定には、輝度計(ミノルタ製、商品名「LS−100」)、偏光板としては偏光板(日東電工(株)製、商品名「NPF−G1220DU」)、バックライト((株)東芝製、商品名「メロウ5DFL10EX−D−H」、色温度6500K)を使用して測定した。
【0031】
製造例1 バインダー樹脂:ベンジルメタクリレート共重合樹脂の合成
ベンジルメタクリレート30g(0.16モル)、メタクリル酸メチル38g(0.38モル)、メタクリル酸18g(0.21モル)及びt−ブチル−オキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」、日本油脂社製)10gの混合液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを入れた重合槽中に、窒素気流下100℃で、3時間かけて滴下した。
滴下終了後、さらに3時間加熱することにより重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で8,000であった。
次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート14g(0.10モル)、トリエチルアミン0.2g及びp−メトキシフェノール0.05gを添加し、110℃で10時間加熱することにより主鎖メタクリル酸のカルボン酸基とグリシジルメタクリレートのエポキシ基との反応を行なった。反応中は、グリシジルメタクリレートの重合を防ぐため、反応溶液内に空気をバブリングさせた。反応は、溶液の酸価測定により追跡した。得られた反応溶液は固形分(NV)40質量%、酸価(AV)75mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で10,000であった。
【0032】
製造例2 クリアレジスト液の調製
製造例1で得られたバインダー樹脂40g、感放射線性化合物(光重合性モノマー)であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)16g、光重合開始剤2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(商品名「イルガキュアー369」、チバ・スペシャルティケミカルズ社製)8g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)36gを配合し、ディゾルバーを用いて1時間撹拌し、クリアレジスト液を調製した。
【0033】
製造例3〜9 顔料分散液Nl〜N7の調製
分散剤としてアジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を7.2g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を80.8g配合してディゾルバーを用いて均一に溶解し、次いでPR254を12g添加し、1時間撹拌して予備分散液を作製した。次に、この予備分散液を、0.3mmジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーで3時間分散させ、顔料分散液Nlを調製した。
上記のPR254以外の各顔料についても、同様に分散して、顔料分散液N2〜N7を調製した。なお、顔料分散液Nl〜N7中の各顔料の分散平均粒子径をマイクロトラックUPA粒度分布計{日機装(株)製}で測定したところ、N1は60nm、N2は45nm、N3は25nm、N4は25nm、N5は20nm、N6は25nm、N7は20nmであった。
Nl:PR254、N2:PR177、N3:PY139、N4:PY150、N5:PO38、N6:PO71、N7:PR242
【0034】
実施例1〜3及び比較例1〜2
製造例3〜9で得られた顔料分散液Nl〜N7を100g(表1の顔料比率になるように調整)、製造例2で得られたクリアレジスト液を42g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を38g配合し、撹拌し、実施例1〜3及び比較例1〜2のネガ型感光性赤色組成物を作製した。
次に、カラーフィルター用透明ガラス基版上に上記の実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた各感光性赤色組成物をスピンコーターで塗布し、その後、70℃中ホットプレートにて、3分間加熱処理(プレベイク)することにより、感光性赤色組成物塗膜を得た。なお、感光性赤色組成物の塗布は、スピンコーター回転数を調整して、パターンの色度がC光源でx=0.648になるようにした。次に超高圧水銀灯を備えた露光機にてi線換算60mjの光量で塗膜全面を露光し、次に、0.05%の水酸化カリウム水溶液(任意で界面活性剤添加有り)でアルカリ現像を行ない、続いて純水洗浄を行なうことにより、パターニング基板を得た。得られたパターニング基板を熱風オーブン中230℃で、30分問保持することにより、アクリル系樹脂の硬化を行なった。以上より、赤色硬化塗膜を形成した基板を作製した。
上記の基板を使用し、色度x、色度y、輝度Y及びコントラストに関して上記の測定方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、PR254、PR177及びオレンジ色顔料を含有する実施例1〜3の感光性赤色組成物は、輝度とコントラストとの双方に優れていた。一方、比較例1の感光性赤色組成物はコントラストが高いものの輝度は低く、比較例2の感光性赤色組成物は比較例1と比較して輝度が改善されているもののコントラストが低かった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の感光性赤色組成物は、カラーフィルターに好適に用いられ、それを有するカラーフィルターは、テレビジョン等に用いられる高精細なカラーフィルター、特に、大型テレビジョン等の液晶表示装置の大型ガラス基板を有するカラーフィルターとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0038】
1 液晶ディスプレー用バックライトユニット
2 光
3 第1の偏光板
4 硬化塗膜
5 第2の偏光板
6 輝度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177及びオレンジ色顔料を含有するカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項2】
顔料合計100質量部の中で、C.I.ピグメントレッド254が10〜60質量部、C.I.ピグメントレッド177が20〜80質量部、オレンジ色顔料が10〜49質量部であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項3】
オレンジ色顔料の分散平均粒子径が20〜80nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項4】
オレンジ色顔料が、ナフトール構造、DPP構造又は縮合アゾ構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項5】
オレンジ色顔料が、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ71及び/又はC.I.ピグメントレッド242であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項6】
少なくとも顔料、分散剤、バインダー樹脂、感放射線性化合物、光重合開始剤及び溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用赤色組成物を有するカラーフィルター。
【請求項8】
C光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が以下の範囲にある請求項7に記載のカラーフィルター。
0.630≦x≦0.680
0.310≦y≦0.350

【図1】
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【公開番号】特開2010−223987(P2010−223987A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67954(P2009−67954)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】