説明

カート

【課題】狭く、複雑な空間でも、天板上に物品を載置しつつ、自在に走行させることが可能なカートを提供する。
【解決手段】カート1は、床F上を走行可能な走行手段2が設けられた基部3と、基部3の上方に配置され、物品を載置可能な天板4と、天板4の下方に把持可能な間隔Sを有して配設された平面視略環状の把持部5と、基部3に対して天板4及び把持部5を支持する支持手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を載置可能な天板を有して床上を走行可能なカートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品を載置、収納する手段を有しつつ、床面上を走行可能なカートが知られている。このようなカートは、例えば、病院や介護施設等で病室を回診する際などに利用されており、近年、カルテなどの電子化に伴って、情報端末などの電子機器を載置可能とするカートが提案されてきている。具体的には、床面上を走行するキャスターと、所定の向きで電子機器を載置可能な天板と、設置される電子機器の前側に対応する位置に設けられ、把持して操作するための把持部となる取っ手とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。そして、このようなカートでは、把持部となる取っ手を把持しながら押すことで走行させて移動しつつ、天板上の電子機器を利用することが可能である。
【特許文献1】特開2005−46412号公報
【特許文献2】特開2008−142278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2のようなカートによれば、操作者は、把持部が設けられたカートの前側の位置での操作に限られる。すなわち、カートに対する操作者の相対位置が、把持部が設けられたカートの前側となる場合には、把持部を把持して押すまたは引くように操作することで当該カートの前後方向に移動させ、また、左右方向いずれかに操作力を与えて走行しながら方向を転換することができるが、カートの前側以外となる場合には自由に操作することができない。このため、上記のように病院や介護施設におけるベッド間など、狭く、複雑な空間では、把持部を把持可能な位置に自らを位置することができずにカートを自在に操作することができなく、また、カート自体を方向転換させることもできず、自在に走行させることができなくなってしまう問題があった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、狭く、複雑な空間でも、天板上に物品を載置しつつ、自在に走行させることが可能なカートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のカートは、床上を走行可能な走行手段が設けられた基部と、該基部の上方に配置され、物品を載置可能な天板と、該天板の下方に把持可能な間隔を有して配設された平面視略環状の把持部と、前記基部に対して前記天板及び前記把持部を支持する支持手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
この発明に係るカートによれば、把持部は、天板の下方に把持可能な間隔を有して配設されており、また、平面視略環状に形成されていることで、相対的に操作者がいずれに位置していたとしても、天板が支障となることなく略環状の把持部のいずれかの位置を把持することができ、支持手段を介して基部に操作力を与えることができる。このため、狭く、複雑な空間で、カートに対する操作者の相対位置が制限されても、操作者によってカートを、所望の方向へ走行させ、あるいは、方向転換させることができる。
【0007】
また、上記のカートにおいて、前記把持部は、平面視して前記天板の外縁に沿って配設されていることがより好ましい。
【0008】
この発明に係るカートによれば、把持部が平面視して天板の外縁に沿って配設されていることで、天板が支障となることなく好適に把持部を把持することが可能であるとともに、走行時においては把持部が外部に接触して走行の支障となってしまうことを防止することができる。
【0009】
また、上記のカートにおいて、前記支持手段は、前記基部と前記把持部との間に取り付けられて、前記把持部を支持する第一の支持杆と、前記把持部の内部を通して前記基部と前記天板との間に取り付けられて、前記天板を支持する第二の支持杆とを有することがより好ましい。
【0010】
この発明に係るカートによれば、把持部は、第一の支持杆によって基部に対して確実に支持された状態とすることができ、把持部に与えた操作力を好適に基部へ作用させることができる。また、天板は、第二の支持杆によって基部に対して確実に支持された状態とすることができ、載置した物品を好適に支持することができる。ここで、第二の支持杆が、把持部の内部を通して基部と天板との間に取り付けられていることで、把持部を把持する際に支障となることがない。また、第二の支持杆は、把持部によって囲まれていることで、走行時において外部に接触して、自身が損傷し、あるいは、走行の支障となってしまうことを防ぐことができる。
【0011】
また、上記のカートにおいて、前記支持手段は、略環状をなす前記把持部の内部に掛け渡されるとともに、該把持部の内部を通る前記第二の支持杆に連結された連結杆を有することがより好ましい。
【0012】
この発明に係るカートによれば、支持手段の連結杆が把持部及び第二の支持杆に連結されているので、把持部に取り付けられた第一の支持杆と、天板に取り付けられた第二の支持杆とによって、天板と把持部とを一体的な構造として全体の剛性を高めて、強固かつ安定的に基部に支持された状態にすることができる。
【0013】
また、上記のカートにおいて、前記連結杆は、前記第一の支持杆と前記把持部との取付位置近傍で該把持部に取り付けられていることがより好ましい。
【0014】
この発明に係るカートによれば、連結杆が第一の支持杆と把持部との取付位置近傍で把持部に取り付けられていることで、第一の支持杆と第二の支持杆との連結構造の剛性をより高めることができる。
【0015】
また、上記のカートにおいて、前記支持手段は、前記基部と前記把持部との間に取り付けられて、前記把持部を支持する第一の支持杆と、前記把持部と前記天板との間に取り付けられて、前記天板を支持する第三の支持杆とを有するものとしても良い。
【0016】
この発明に係るカートによれば、把持部は、第一の支持杆によって基部に対して確実に支持された状態とすることができ、把持部に与えた操作力を好適に基部へ作用させることができる。また、天板は、第三の支持杆によって、把持部及び第一の支持杆を介して基部に対して確実に支持された状態とすることができ、載置した物品を好適に支持することができる。ここで、把持部の外側に支持手段の構成を配置していないので、把持部を把持する際に支障とならず、また、走行時において外部に接触して走行の支障となってしまうこともない。また、天板を第三の支持杆によって支持することで、天板と把持部との間における支持手段の構成を最小限とすることができるので、天板と把持部との間に、外部構成を挿入可能なスペースを確保することができる。このため、例えば、固定式テーブルに向かって前進させて、自身の天板と把持部との間に固定式テーブルの天板を挿入させれば、両者を一体化させて両天板上で作業を行うことができ、多様的な使用方法を実現できる。なお、把持部の下方においても、支持手段の構成を最小限にすることができることから、例えば、把持部の下方に固定式テーブルの天板を挿入して使用することも可能である。
【0017】
また、上記のカートにおいて、前記第三の支持杆は、前記把持部及び前記天板のそれぞれに、前後方向の略中間位置、または、該中間位置よりも前側で取り付けられていることがより好ましい。
【0018】
この発明のカートによれば、第三の支持杆が把持部と天板のそれぞれに前後方向の略中間位置、または、該中間位置よりも前側に取り付けられているので、天板と把持部との間には、後側から両者の少なくとも略中間位置まで外部構成を挿入可能なスペースを確保することができる。このため、上記の例によれば、固定式テーブルの天板をさらに奥まで挿入させてより一体的な状態として使用することが可能となる。
【0019】
また、上記のカートにおいて、前記第一の支持杆は、対向して対をなして設けられ、対をなした該第一の支持杆の間に物品を載置するためのトレーが支持されていることがより好ましい。
【0020】
この発明のカートによれば、対向した第一の支持杆によって強固かつ安定的に把持部を支持することができるとともに、第一の支持杆の間にトレーが支持されていることで、スペースを有効利用し、かつ、安定的に、物品を載置して収納することができる。
【0021】
また、上記のカートにおいて、対をなす前記第一の支持杆は、前記基部に、前後方向の略中間位置で取り付けられているとともに、前記把持部に前後方向の後部位置で取り付けられていることがより好ましい。
【0022】
この発明のカートによれば、対をなす第一の支持杆が基部に前後方向の略中間位置で取り付けられているので、基部上でより安定的に把持部を支持することができる。一方で、第一の支持杆は、把持部に前後方向の後部位置で取り付けられているので、前後方向前側から使用する際に、第一の支持杆の間に支持されたトレーから物品を出し入れするスペースをより大きく確保することができ、トレーへのアクセス性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカートによれば、天板の下方に間隔を有して配置された略環状の把持部によって、狭く、複雑な空間でも、天板上に物品を載置しつつ、自在に走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
図1から図10は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1から図4に示すように、本実施形態のカート1は、例えば、病院や介護施設等で病室を回診する際などに利用されるものであり、床F上を走行可能な走行手段であるキャスター2が設けられた基部3と、基部3の上方に配置された天板4と、天板4の下方に配置された平面視略環状の把持部5と、把持部5と基部3との間に設けられて物品を収納するトレー6と、基部3に対して天板4、把持部5及びトレー6を支持する支持手段10とを備える。基部3は、前後方向Xに配設された一対の主部材7と、一対の主部材7を前後方向Xに直交する左右方向Yに連結する連結部材8とを有する。キャスター2は、各主部材7の下面において、前後方向Xの前端部7a及び後端部7bに設けられて、方向を自在に設定することが可能となっている。また、連結部材8は、主部材7において、前後方向Xの後端部7b側で連結されている。
【0025】
また、天板4は、本実施形態では、物品として情報端末などの電子機器が載置可能な大きさのものであり、略矩形状に形成されている。前縁4aは、載置された電子機器を操作する際の操作者の手を配置するために傾斜して形成されているとともに、後縁4b並びに、両側縁4cの後側には、天板4上に載置された電子機器等の脱落防止手段として凸部4dが延設されている。また、把持部5は、把持可能に、すなわち、操作者の操作する手を挿入することが可能な間隔Sを天板4との間に有して配置されている。また、把持部5は、天板4と対応する形状で、すなわち本実施形態では略矩形枠状であり、平面視して天板4の外縁となる前縁4a、後縁4b及び側縁4cに沿って配設されている。
【0026】
支持手段10は、基部3と把持部5との間に取り付けられて、把持部5を支持する第一の支持杆11と、把持部5の内部を通して基部3と天板4との間に取り付けられて、天板4を支持する第二の支持杆12と、第二の支持杆12と把持部5とを連結する連結杆13とを有する。第一の支持杆11は、左右方向Yに対向して対をなして設けられ、それぞれ基部3の主部材7上において、前後方向Xの略中間位置で上下方向Zに立設されているとともに、上部において前後方向X後側に屈曲する屈曲部11aを有し、把持部5の側部5aにおいて、前後方向Xの後部位置で下面に取り付けられている。また、第一の支持杆11の間には、各トレー6が固定されていて、物品を収納可能となっている。ここで、トレー6の平面寸法は、天板4よりも小さく設定されていて、トレー6の外縁は、平面視して天板4の内側となるようにして設けられている。
【0027】
第二の支持杆12は、基部3の連結部材8上において、左右方向Yの略中間位置で上下方向Zに立設されている。ここで、第二の支持杆12は、支持する天板4を可動体1aとして、基部3及び把持部5を固定体1bとして、固定体1bに対して可動体1aを昇降させる昇降支柱として構成されるものであり、該連結部材8に下端が固定された略管状の外杆材15と、外杆材15に上下方向Zに進退可能に挿入されて上端部に天板4が固定された略管状の内杆材16と、内杆材16に内蔵されて外杆材15に対して内杆材16を昇降させる昇降機構17とを備える。昇降機構17は、内杆材16の内部に配設されて、上端が天板4に固定されているとともに、図示しないが下端が基部3の連結部材8に固定されたガススプリング17aと、天板4の裏面側に取り付けられた操作部17bとを有する。そして、操作部17bの操作、または、下方に負荷を与えることによりガススプリング17aを伸張、または、収縮させて、外杆材15に対して、内杆材16及び内杆材16の上端に固定された天板4を昇降させることが可能となっている。
【0028】
また、第二の支持杆12は、支持構造20により、外杆材15が、固定体1bとなる基部3及び把持部5に固定されているとともに、内杆材16が、外杆材15に対して進退可能に支持されている。具体的には、支持構造20は、外杆材15の下端に設けられて連結部材8と図示しない固定用ネジで固定された下側固定部20aと、外杆材15の上端に設けられて保持部材21により連結杆13と固定された上側固定部20bとを有する。
【0029】
図5から図10に示すように、上側固定部20bの保持部材21は、内杆材16が挿通された挿通孔22aを有する略管状の保持部22と、保持部22から外周側に突出して設けられて連結杆13と連結された被固定部23とを有する。ここで、保持部22は、略管状の本体部材24と、本体部材24の内周面に取り付けられた複数のスライダ25とを有し、スライダ25によって挿通孔22aの内周面を構成している。本体部材24は、例えば、樹脂などで形成されていて、外杆材15に挿入され嵌合された筒状部24aと、筒状部24aの上端に外周側に張り出すように設けられ外杆材15の上端が当接した外フランジ部24bと、外フランジ部24bと反対側の内周側に張り出すように設けられた内フランジ部24cとを有する。また、被固定部23は、筒状部24aの外周面から下方に向かって突出する下向き片23aにより構成されており、下向き片23aと筒状部24aの外周面とにより下方に開口する嵌合溝22bが形成されている。そして、筒状部24aが嵌合している外杆材15の上端の対応する一部が嵌合溝22bに嵌合されている。すなわち、本体部材24は、上記のように外杆材15に、筒状部24aが嵌合され、さらにその上端に外フランジ部24bが当接するとともに嵌合溝22bが嵌合していることで、外杆材15に固定されている。なお、図5及び図9に示すように、筒状部24aの外周面には外周側に突出する係合凸部24dが上下方向Zに沿って形成されているとともに、外杆材15の内周面には係合凸部24dと対応した係合溝15aが上下方向Zに沿って形成され、互いに係合している。このため、本体部材24は、筒状部24aが外杆材15に嵌合した状態では軸回りに位置決めされ、向きが一定となるように設定されている。
【0030】
また、図5から図10に示すように、下向き片23aは、下方に傾斜した状態から次第に径方向外周側に沿うように突出して、上面が全体として凹状の曲面を呈する凹状部23bを構成している。一方、対応する連結杆13は、凹状部23bと対応して、対向する面が全体として凸状の曲面を呈する凸状部13aを構成している。そして、凹状部23bと凸状部13aとが互いに嵌合するとともに、凹状部23bに形成された貫通孔23cを通して連結杆13に形成されたネジ孔13bに固定用ネジ23dを螺合して締め付けることで連結杆13と下向き片23aとは固定されており、これにより外杆材15の上端部は連結杆13に支持されている。
【0031】
また、スライダ25は、略板状の部材で、表面に複数の略半球状の当接部25aが突出して設けられており、上側が内フランジ部24cにより係止され、また、下側が筒状部24aから突出する下側係止片24eにより係止され、さらに、側縁が筒状部24aの内周面から突出し上下方向Zに沿って設けられた側縁係止片24fにより係止されて、本体部材24と一体となっている。また、スライダ25は、本実施形態では、四つ設けられ、本体部材24の内周面に矩形状に配列している。このため、スライダ25によって挿通孔22aの内周面が構成されて断面が非円形状となる略矩形状に形成されており、当該挿通孔22aに挿通された内杆材16も対応した略矩形状に形成されて、各スライダ25の各当接部25aに当接して摺動可能となっている。また、スライダ25を形成する材質は、本体部材24と比較して摩擦係数の小さな樹脂、例えばポリアセタール樹脂などで形成されている。
【0032】
次に、この実施形態のカート1の作用について説明する。
上記のとおり、本実施形態のカート1では、把持部5は、天板4の下方に把持可能な間隔Sを有して配設されており、また、平面視略環状に形成されている。このため、前後方向X前側の位置に限らずに、カート1に対して相対的に操作者がいずれに位置していたとしても、天板4が支障となることなく平面視略環状の把持部5のいずれかの位置を把持することができる。そして、把持部5を支持する第一の支持杆11と、連結杆13を介して支持する第二の支持杆12とを介して、基部3に操作力を与えることができる。このため、狭く、複雑な空間で、カート1に対する操作者の相対位置が制限されても、操作者によってカート1を、所望の方向へ走行させ、あるいは、方向転換させることができ、天板4上に物品を載置しつつ、自在に走行させることができ、特に回診用カートとして病室や介護施設等における回診に利用するのに最適である。また、第一の支持杆11は、基部3の主部材7において、前後方向Xの略中間位置に設けられているので、基部3上でより安定的に把持部5を支持することができる。また、天板4は、第二の支持杆12によって基部3に対して確実に支持された状態とすることができ、載置した物品を好適に支持することができる。ここで、第二の支持杆12が、把持部5の内部を通して基部3と天板4との間に取り付けられていることで、把持部5を把持する際に支障となることがない。また、第二の支持杆12は、把持部5によって囲まれていることで、走行時において外部に接触して、自身が損傷し、あるいは、走行の支障となってしまうことを防ぐことができる。また、連結杆13が把持部5及び第二の支持杆12に連結されているので、把持部5に取り付けられた第一の支持杆11と、天板4に取り付けられた第二の支持杆12とによって、天板4と把持部5とを一体的な構造として全体の剛性を高めて、より強固かつ安定的に基部3に支持された状態にすることができる。さらに、連結杆13が第一の支持杆11と把持部5との取付位置近傍で把持部5に取り付けられていることで、第一の支持杆11と第二の支持杆12との連結構造の剛性をより高めることができる。また、把持部5が平面視して天板4の外縁となる前縁4a、後縁4b及び側縁4cに沿って配設されていることで、天板4が支障となることなく好適に把持部5を把持することが可能であるとともに、走行時においては把持部5が外部に接触して走行の支障となってしまうことを防止することができる。なお、本実施形態では、天板4の外縁と、把持部5の外縁とは、平面視して略一致する位置に設定されているが、把持部5の外縁が外側となるようにしても良い。このようにすることで、把持部5により天板4が外部と接触するのを防ぐことができる。
【0033】
また、天板4を支持する第二の支持杆12が外杆材15と、内杆材16と、昇降機構17とを備えていることで、外杆材15に対して内杆材16を上下方向Zに進退させることで、天板4を昇降させることができる。ここで、該昇降機構17が内杆材16に内蔵されていることで、全体としてコンパクトな構造として省スペース化を図ることができるとともに、昇降機構17が外部に露呈することなく、体裁を良好なものとすることができる。
【0034】
また、外杆材15がネジ固定による下側固定部20aと、保持部材21による上側固定部20bとで構成される支持構造20により下端のみならず上端でも固定されていることで、第二の支持杆12を強固に固定されるものとし、天板4を安定的に昇降させ、また、利用することができる。ここで、上側固定部20bを構成する保持部材21が保持部22と被固定部23とを備え、保持部22に形成された嵌合溝22bが外杆材15の上端部に嵌合されているとともに、保持部22から突出した被固定部23が連結杆13に連結されていることで、外杆材15を連結杆13を含む固定体1bに強固に固定することができる。また、内杆材16が保持部22の挿通孔22aに摺動可能に挿通されていることで、外杆材15に対して内杆材16を、保持部22を介して上下に進退可能としつつ確実に支持された状態とすることができ、内杆材16と外杆材15とを有する昇降支柱全体を安定的に支持することができる。
【0035】
さらに、保持部22の外周面と被固定部23の下向き片23aとによって嵌合溝22bを形成することで、保持部22自身を外杆材15に嵌合させつつ、嵌合溝22bに外杆材15を嵌合させることができるので、保持部22を外杆材15により強固に固定することができ、これにより固定体1bに対してより安定的に外杆材15を支持することができる。また、被固定部23が凹状部23bを有し、固定体1bを構成する連結杆13に、対応して凸状部13aが形成され、両者が嵌合していることで、固定体1bに対して被固定部23を確実固定することができ、これにより被固定部23及び保持部22を介して外杆材15をより安定的に支持することができる。また、上記のとおり、外杆材15の上端部に保持部22に形成された嵌合溝22bを嵌合するとともに、挿通孔22aに内杆材16を挿入し、この状態で被固定部23を固定体1bの連結杆13に連結するだけであるので、第二の支持杆12自体に直接加工を施す必要がなく、加工工数及びコストの低減を図ることができる。
【0036】
また、保持部22の挿通孔22aと内杆材16との断面形状がそれぞれ対応して非円形の略矩形状とされていることで、保持部22に対して内杆材16が軸回りに回転してしまうことがなく、外杆材15に固定された保持部22に対して、内杆材16の軸回りの向き、すなわち内杆材16の上端に固定された天板4の向きを容易に一定として取り付けることができる。さらに、保持部22が、本体部材24と、本体部材24よりも摩擦係数の小さな材質で形成されたスライダ25とを有することで、本体部材24によって保持部22全体の剛性を確保しつつ、内杆材16の外周面に摺動可能に当接するスライダ25によって内杆材16を円滑に上下に進退させて天板4を昇降させることができる。
【0037】
また、対向して対をなす第一の支持杆11の間にはトレー6が支持されていることで、スペースを有効利用し、かつ、安定的に、物品を載置して収納することができる。ここで、第一の支持杆11は、基部3の主部材7に前後方向Xの略中間位置で取り付けられている一方、把持部5に前後方向Xの後部位置で取り付けられている。このため、前後方向X前側から使用する際に、第一の支持杆11の間に支持されたトレー6から物品を出し入れするスペースをより大きく確保することができ、トレー6へのアクセス性の向上を図ることができる。また、上記のようにトレー6は、外縁が平面視して天板4の内側となるように設定されている。このため、搬送時において、トレー6が外部と接触してしまうのを確実に防止することができる。さらに、図12に示すように、本実施形態のカート1の天板4を、椅子に着席しながら利用する際には、天板4の下方に着席者の脚を配置するスペースを確保することができ、椅子に座りながらの利用を好適なものとすることができる。また、トレー6を着脱可能な構成として取り外せば、天板4の下方のスペースをさらに大きく確保することができ、椅子に座りながらの利用をさらに好適なものとすることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図12及び図13は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
図12に示すように、本実施形態のカート30では、天板4及び把持部5を支持する支持手段31が、第一の支持杆11と、把持部5と天板4との間に取り付けられた第三の支持杆32とで構成されており、第1の実施形態のような基部3の連結部材8から立設された第二の支持杆12及び把持部5内部に掛け渡された連結杆13を備えていない構成となっている。第三の支持杆32は、把持部5の両側部5a上面において、前後方向X中間位置または該中間位置よりも前側の位置で立設され、上端で天板4の下面に取り付けられている。
【0040】
本実施形態のようなカート30においても、把持部5は、第一の支持杆11によって基部3に対して確実に支持された状態とすることができ、把持部5に与えた操作力を好適に基部3へ作用させることができる。また、天板4は、第三の支持杆32によって、把持部5及び第一の支持杆11を介して基部3に対して確実に支持された状態とすることができ、載置した物品を好適に支持することができる。また、把持部5の外側に支持手段31の構成を配置していないので、把持部5を把持する際に支障とならず、また、走行時において外部に接触して走行の支障となってしまうこともない。
【0041】
また、天板4は、第三の支持杆32で支持され、基部3から立設される第二の支持杆のような構成を設けていない。このため、図13に示すように、例えば、固定式テーブル40に向かって前進させて、自身の天板4と把持部5との間に固定式テーブル40の天板41を挿入させれば、両者を一体化させて両天板4、41上で作業を行うことができ、多様的な使用方法を実現できる。特に、天板4を支持する第三の支持杆32は、前後方向Xに略中間位置より前側に設けられているので、固定式テーブル40の天板41をさらに奥まで挿入してより一体的な状態として使用することが可能である。なお、把持部5の下方においても、第二の支持杆が無い状態であることから、把持部5の下方に固定式テーブル40の天板41を挿入して使用することも可能である。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態のカートの全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のカートの全体を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のカートの全体を示す側面図である。
【図4】図3の切断線A−Aでの断面図である。 全体を示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態のカートの支持構造において、上側固定部の詳細を示す一部を破断した側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態のカートの支持構造において、保持部材の詳細を示す側面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のカートの支持構造において、保持部材の詳細を示す正面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態のカートの支持構造において、保持部材の詳細を示す上面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態のカートの支持構造において、保持部材の詳細を示す下面図である。
【図10】図7から図9の切断線B−Bでの断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態のカートを座った状態で利用する際の説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態のカートの全体を示す斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施形態のカートの使用状態の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1、30 カート
2 キャスター(走行手段)
3 基部
4 天板
5 把持部
6 トレー
10、31 支持手段
11 第一の支持杆
12 第二の支持杆
13 連結杆
32 第三の支持杆
S 間隔
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上を走行可能な走行手段が設けられた基部と、
該基部の上方に配置され、物品を載置可能な天板と、
該天板の下方に把持可能な間隔を有して配設された平面視略環状の把持部と、
前記基部に対して前記天板及び前記把持部を支持する支持手段とを備えることを特徴とするカート。
【請求項2】
請求項1に記載のカートにおいて、
前記把持部は、平面視して前記天板の外縁に沿って配設されていることを特徴とするカート。
【請求項3】
請求項1また請求項2に記載のカートにおいて、
前記支持手段は、前記基部と前記把持部との間に取り付けられて、前記把持部を支持する第一の支持杆と、
前記把持部の内部を通して前記基部と前記天板との間に取り付けられて、前記天板を支持する第二の支持杆とを有することを特徴とするカート。
【請求項4】
請求項3に記載のカートにおいて、
前記支持手段は、略環状をなす前記把持部の内部に掛け渡されるとともに、該把持部の内部を通る前記第二の支持杆に連結された連結杆を有することを特徴とするカート。
【請求項5】
請求項4に記載のカートにおいて、
前記連結杆は、前記第一の支持杆と前記把持部との取付位置近傍で該把持部に取り付けられていることを特徴とするカート。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のカートにおいて、
前記支持手段は、前記基部と前記把持部との間に取り付けられて、前記把持部を支持する第一の支持杆と、
前記把持部と前記天板との間に取り付けられて、前記天板を支持する第三の支持杆とを有することを特徴とするカート。
【請求項7】
請求項6に記載のカートにおいて、
前記第三の支持杆は、前記把持部及び前記天板のそれぞれに、前後方向の略中間位置、または、該中間位置よりも前側で取り付けられていることを特徴とするカート。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のカートにおいて、
前記第一の支持杆は、対向して対をなして設けられ、対をなした該第一の支持杆の間に物品を載置するためのトレーが支持されていることを特徴とするカート。
【請求項9】
請求項8に記載のカートにおいて、
対をなす前記第一の支持杆は、前記基部に、前後方向の略中間位置で取り付けられているとともに、前記把持部に前後方向の後部位置で取り付けられていることを特徴とするカート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105540(P2010−105540A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279698(P2008−279698)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】