説明

ガスバリア性に優れた合成樹脂製キャップ及びその製造方法

【課題】スコアにより区画された開口予定部を備えたキャップにおいても、ガスバリア性を向上させたキャップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】外筒6と、内筒7と、中央5bにスコア11で区画された開口予定部10を有する頂壁5とを備え、容器口部に嵌着される合成樹脂製キャップ1であって、前記スコア11で区画された開口予定部10は、その内部にガスバリア樹脂層12を備えている。そして、該キャップ1は、前記開口予定部10の中央10bをゲート部14として前記ガスバリア樹脂層12を形成するガスバリア性樹脂Rと、それ以外の部分を形成する樹脂Rとを共射出成形することで成形することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性に優れた合成樹脂製キャップ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内容物の風味を維持するために、容器外部の空気に含まれる酸素等の流通を遮断した、所謂、ガスバリア性に優れた種々の容器が提案されている。従来、容器の口部には、ポリエチレンやポリプロピレンといったガスバリア性の乏しい樹脂により形成されたキャップが装着されており、この口部から酸素等が流通してしまうという問題があった。そこで、ガスバリア性を付与したキャップについても提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−232162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなキャップは、耐湿性樹脂の内外層とガスバリア性樹脂の中間層からなる多層プラスチックで成形された頂板部及びスカート部からなる容器に螺合によって装着された比較的単純な構造を有するキャップであり、複雑な構造を有するキャップ、例えば、スコアにより区画された開口予定部を備えるような、使用時の使い勝手を考慮したキャップへの適用については提案されてこなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、スコアにより区画された開口予定部を備えたキャップにおいても、ガスバリア性を向上させたキャップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外筒と、内筒と、中央にスコアで区画された開口予定部を有する頂壁とを備え、容器口部に嵌着される合成樹脂製キャップであって、前記スコアで区画された開口予定部は、その内部にガスバリア樹脂層を備えていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0007】
又、本発明は、前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記頂壁の前記スコア外方の内部に亘って形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0008】
又、本発明は、前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記内筒の筒壁の内部に亘って形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0009】
又、本発明は、前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記外筒の筒壁の内部に亘って形成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0010】
又、本発明は、前記スコアで区画された開口予定部の中央に成形時のゲート部を有することを特徴とする合成樹脂製キャップである。
【0011】
又、本発明は、前記合成樹脂製キャップの製造方法であって、前記開口予定部の中央をゲート部として前記ガスバリア樹脂層を形成するガスバリア性樹脂と該ガスバリア性樹脂層以外の部分を形成する樹脂とを共射出することによって成形することを特徴とする合成樹脂製キャップの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の合成樹脂製キャップは、少なくとも前記スコアで区画された開口予定部がガスバリア性樹脂層を有しているので、開口予定部が開封されるまで優れたガスバリア性を発揮する合成樹脂製キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】共射出成形の様子を示す略図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態を図1乃至3により説明する。キャップ1はキャップ本体2及び蓋体(図示せず)を備えており、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂から成る容器(図示せず)の口部に打栓により嵌着され使用される。
【0015】
キャップ本体2は、先端が放射状で略円筒形の注出筒3、注出筒3の同心円状に設けられ、注出筒3より大径の係合筒4、注出筒3と頂壁5を介して連続する外筒6、外筒6の同心円状に設けられ、外筒6より小径の内筒7を備えている。
【0016】
係合筒4は、蓋体をキャップ本体2に係止するために設けられ、本実施形態では蓋体の螺溝と螺合する螺条8が形成されている。
【0017】
外筒6は頂壁5の外周縁5aより垂下する略円筒形の筒壁から構成され、その内周面6aには、容器口部の外周面に形成された嵌着溝と嵌合し、キャップ本体2を容器口部に係止するための嵌合突起9が設けられている。
【0018】
内筒7は、頂壁5の底面5cから垂下する筒壁から構成され、キャップ1が容器口部に嵌着された際に、容器口部の内周面に当接し、外筒6と共にキャップ本体2を容器口部に保持する。
【0019】
注出筒3より内方にある頂壁5の中央部5bには、流体の流通を遮断する開口予定部10が設けられ、開口予定部10は無端状のスコア11によって区画される。又、開口予定部10は、その内部にガスバリア性樹脂から成る中間層12を有し、中間層12がキャップ1を形成する被覆層13によって挟持される三層構造と成っている。
【0020】
中間層12を除くキャップ本体2は、公知の合成樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の脂肪族ポリエステル樹脂から適宜選択される1種または2種以上の混合樹脂を用いることができる。
【0021】
又、中間層12は、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド等やそれらの繰り返し単位を含有する共重合体、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体等の公知のガスバリア性を有する樹脂を用いることができる。
【0022】
尚、本実施形態において、中間層12は、開口予定部10の略全面に亘って、又、略均一の厚みに形成されているが、開口予定部10に断片的に存在するように形成してもよく、又、必ずしも均一な厚みに形成されてなくともよい。そして、中間層12は、少なくとも開口予定部10に形成されていればよく、開口予定部10から頂壁5のスコア11の外方の内部に亘って形成することもできる。
【0023】
又、中間層12の厚さは10μm〜100μmの範囲で形成され、好ましくは20μm〜50μmの範囲で形成される。即ち、その範囲を下回るものであれば、開口予定部10より透過する酸素量が大きく、ガスバリア機能が劣り、又、その範囲を上回るものであれば、中間層12が被覆層13に覆われず表面に露出し、内容液に接触するなどし、衛生上好ましくない。本実施形態では、開口予定部10の厚みは1.3mmであり、中間層12の厚さは平均30μm程度になるよう形成されている。
【0024】
そして、頂壁5には、容器を開封する際にスコア11を破断させ開口予定部10を取除き、容器内部と外部を連通させるための開封手段としてプルリング10aが設けられている。消費者はプルリング10aを引っ張ることにより、薄肉に形成されたスコア11を破断させて開封を行う。尚、この開封手段は共射出成形(段落[0025]を参照)によってキャップ本体2を成形できる形状のものであればよく、プルリング10aのような形状に限られるものではない。
【0025】
キャップ本体2は共射出成形によって成形される。具体的には、射出成形機のノズル15より開口予定部10の中央部10bをゲート部14として、キャップ本体2及び被覆層13を形成する樹脂Rを金型内に射出し(図3(a))、その後、中間層12を形成するガスバリア性樹脂Rを樹脂Rと同時に金型内に射出する(図3(b)及び(c))。その後、ガスバリア性樹脂Rの射出を止め、再度、樹脂Rのみを金型内に射出し成形する(図3(d))。この際、中間層12が、キャップ1が使用される時に、頂壁5の底面5cに露出していると、容器内の内容液に中間層12の成分が溶出する可能性があるため、底面5cから中間層12が露出しないように成形されることが好ましい。
【0026】
本実施形態は、開口予定部10の内部にガスバリア性樹脂から成る中間層12を形成したため、開口予定部からの酸素等の流通を遮断することができる。それにより、高いガスバリア性をキャップ1に付与することができ、酸素等によって内容物の劣化するのを防止することができる。
【0027】
本発明の第2実施形態を図4により説明する。尚、同一の符号の部材は第1の実施形態と同様の構成である。第1実施形態との相違は、開口予定部10から頂壁5のスコア11外方の内部に中間層12Aを有し、さらには、開口予定部10から内筒7の内方の頂壁5を介して内筒7の筒壁の内部に亘ってガスバリア性樹脂から成る中間層12Aを形成したことである。本実施形態おいて、中間層12Aの厚さは第1実施形態と同様に10μm〜100μmの範囲で形成され、好ましくは20μm〜50μmの範囲で形成される。
【0028】
更に、スコア11に形成される中間層12Aの厚さを、開口予定部10や頂壁5のスコア11外方部分の厚さよりも、小さくなるよう形成してもよい。このように、スコア11部分の中間層12の厚さを、開口予定部10や頂壁5のスコア11外方部分の厚さに対して薄く形成することで、スコア11を破断させる際に生じる抵抗を低減したものとすることができる。
【0029】
本実施形態において、少なくとも開口予定部10を含む内筒7の内方の頂壁5は同一面上になる様に成形されている。この様にすることで、均一に且つ容器口部の内方を覆うように中間層12Aを形成することができ、開口予定部10よりも広範に酸素等の流通を遮断することができるため、より高いガスバリア性をキャップ1に付与することができる。
【0030】
本発明の第3実施形態を図5によって説明する。尚、同一の符号の部材は第1の実施形態と同様の構成である。第1実施形態および第2実施形態との相違は、開口予定部10から頂壁5を介して外筒6の筒壁の内部に亘ってガスバリア性樹脂から成る中間層12Bを形成したことである。
【0031】
本実施形態において、頂壁5は同一面上に成形される。この様にすることで、均一に且つ容器口部の外方を覆うように中間層12Bを形成することができ、開口予定部10のみならず外筒6からの酸素等の流通を遮断することができるため、より高いガスバリア性をキャップ1に付与することができる。
【0032】
尚、本発明は、上記実施形態のようなスクリューキャップのみならず、ヒンジキャップ等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 合成樹脂製キャップ 2 キャップ本体 3 注出筒
4 係合筒 5 頂壁 5a 外周縁
5b 中央部 5c 底面 6 外筒
6a 内周面 7 内筒 8 螺条
9 嵌合突起 10 開口予定部 10a プルリング
10b 中央部 11 スコア 12 中間層
13 被覆層 14 ゲート部 15 ノズル
R 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、内筒と、中央にスコアで区画された開口予定部を有する頂壁とを備え、容器口部に嵌着される合成樹脂製キャップであって、
前記スコアで区画された開口予定部は、その内部にガスバリア樹脂層を備えていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記頂壁の前記スコア外方の内部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記内筒の筒壁の内部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
前記ガスバリア樹脂層は、前記開口予定部から前記外筒の筒壁の内部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項5】
前記スコアで区画された開口予定部の中央に成形時のゲート部を有することを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項6】
請求項1乃至5何れかに記載の合成樹脂製キャップの製造方法であって、
前記開口予定部の中央をゲート部として前記ガスバリア樹脂層を形成するガスバリア性樹脂と該ガスバリア性樹脂層以外の部分を形成する樹脂とを共射出することによって成形することを特徴とする合成樹脂製キャップの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−56688(P2013−56688A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195879(P2011−195879)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000175397)三笠産業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】