説明

ガスバリア性フィルム、ガスバリア層、装置及びガスバリア性フィルムの製造方法

【課題】低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム、その製造方法及びガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置の提供。
【解決手段】プラスチック基材と、プラスチック基材1上に設けられた有機層2と、有機層2上に設けられた無機層3とを有し、その有機層2を、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレート、好ましくは一般式(1)で表される化合物を架橋してなる層とする(n+nは1〜20の整数であり、R,Rは水素原子又はメチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム及びガスバリア層、及び装置、並びにガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー等の装置に対し、それらの性能を劣化させる酸素又は水蒸気等の化学成分の透過を防ぐために好ましく適用されている。特に最近の電子デバイスの高性能化と高品質化に伴い、ガスバリア性フィルムにおいても高いガスバリア性が求められている。反面、特に著しい低価格化の要請から、ガスバリア性フィルムにおいてもコスト低減が要請されている。
【0003】
近年のガスバリア性フィルムには、プラスチップフィルムと、そのプラスチップフィルム上に設けられた有機層と、その有機層上に設けられた無機層とで構成されているものがある。有機層は、ガスバリア性の無機層の下に平坦化層として設けられ、無機層に生じる欠陥を低減してガスバリア性を高めるという役割を担うとされている。
【0004】
ガスバリア性フィルムの研究開発は盛んに行われており、例えば特許文献1では、基材の突起やピンホール等の影響を低減することを目的として、密着性無機化合物層、有機樹脂層、無機化合物層を順に成膜したガスバリア性フィルムが提案されている。同文献では、平坦化層として作用する有機樹脂層の好ましい構成材料として、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂と多塩基酸無水物、多官能アクリレートモノマー、重合開始剤、及び、エポキシ基を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂、を必須成分とするカルドポリマーが提案されている。
【0005】
また、特許文献2においても、基材の突起やピンホール等の影響を低減することを目的として、ガスバリア層として用いる窒化珪素等の無機層と、カルドポリマーからなる平坦化層との積層順を任意に組み合わせた2層又は3層のガスバリア性フィルムが提案されている。同文献でも、上記特許文献1と同様、平坦化層の好ましい構成材料として、ビスフェノール化合物から誘導されるフルオレン骨格を有する樹脂を含有するカルドポリマーが提案されている。
【0006】
なお、後述する本発明に関連する技術として、特許文献3には類似のカルドポリマーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−324406号公報(実施例及び第0049〜0065段落)
【特許文献2】特開2004−299233号公報(実施例及び第0046〜0049段落)
【特許文献3】特開平6−1938号公報(第0013〜0015段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近の高性能且つ低価格化の要請はガスバリア性フィルムに対しても同様であり、必要十分なガスバリア性を確保した上でより一層の低コスト化が求められている。本発明者は、必要十分な水蒸気透過率を確保することを前提とし、より低コストなガスバリア性フィルムを得るために、2層でも達成できること、そのためには、有機系の平坦化層と無機系のガスバリア層とで構成すること、平坦化層としては実績のあるカルドポリマーを用いること、の観点から検討を進めている過程で、カルドポリマーからなる平坦化層上に無機層を成膜した場合、良好なガスバリア性を安定して得られないという問題に遭遇した。
【0009】
本発明は、上記問題を解決したものであって、その目的は、低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム及びガスバリア層を提供することにある。本発明の他の目的は、低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、ガスバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記問題に対する研究過程で、ガスバリア性が安定しない理由を考察し、実証することによって本発明を完成させた。すなわち、カルドポリマーからなる平坦化層上に設ける無機層の成膜には、高い成膜速度の観点からイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段を採用するが、これらの成膜手段では、成膜時の減圧環境、熱環境又はプラズマ環境により、平坦化層中に残存する揮発成分や低分子成分が抜け出して無機層の成膜を阻害し、無機層の均一性を低下させて安定したガスバリア性の実現を阻害しているのではないかと考察した。そして、さらに検討を進め、平坦化層を構成するカルドポリマーの水酸基の存在が影響しているのではないかと推察し、水酸基のない化合物を用いて検討した結果、低価格化を実現できる2層構成であっても良好なガスバリア性を安定して得ることができることを実証し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムは、プラスチック基材と、該プラスチック基材上に設けられた有機層と、該有機層上に設けられた無機層とを有し、前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートは他の成分を吸着しやすい水酸基を含まないので、その化合物で形成した有機層上にイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できるガスバリア性フィルムとすることができる。なお、この理由としては、水酸基がない化合物を採用することにより、水分等の低分子成分の吸着が抑制されたため、その低分子成分が無機層の成膜時に有機層内から抜け出して無機層の成膜を阻害することがなく、その結果、欠陥の少ない無機層を成膜できたためであろうと推察される。本発明では、こうした有機層と無機層を積層したので、低価格化を実現できる2層構成であっても良好なガスバリア性を安定して得ることができる。
【0013】
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記有機層が、下記一般式(1)で表される化合物を架橋させてなる。下記一般式(1)において、n+nは1〜20の整数であり、R,Rは水素原子又はメチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0014】
【化1】

【0015】
この発明によれば、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートとして、上記一般式(1)の化合物を好ましく用いることができる。
【0016】
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記一般式(1)のn+nが1〜6であることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、一般式(1)のn+nを上記範囲内とすることにより、透明性とガスバリア性が良好で低コストなガスバリア性フィルムを得ることができる。
【0018】
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とがその順で設けられている。この発明によれば、前記有機層と前記無機層とを基材の反対面にも設けたので、安定したガスバリア性をさらに高めることができる。
【0019】
本発明に係るガスバリア性フィルムにおいて、前記基材が、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記無機層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア層は、有機層と、該有機層上に設けられた無機層とを有し、前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、水酸基を含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる有機層を含むので、その水酸基が他の成分を吸着せず、その結果、有機層上にイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できる低コストのガスバリア層とすることができる。
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係る装置は、上記本発明のガスバリア性フィルム又は上記本発明のガスバリア層を用いる表示装置又は発電装置であることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、良好なガスバリア性を安定して実現できる低コストの上記ガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いたので、低コスト化と高品質化が要求される表示装置又は発電装置を提供できる。
【0024】
上記課題を解決するための本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、プラスチック基材上に、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋して有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、水酸基を含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋する有機層形成工程を含むので、その水酸基が他の成分を吸着せず、その結果、有機層上にイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できる低コストのガスバリア性フィルムを製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム及びガスバリア層を提供することができる。また、低コストで良好なガスバリア性を示すガスバリア性フィルム又はガスバリア層を用いた装置を提供することができる。また、良好なガスバリア性を安定して実現できる低コストのガスバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るガスバリア性フィルムの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリア性フィルムの他の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0029】
[ガスバリア性フィルム及びガスバリア層]
本発明に係るガスバリア性フィルム10は、図1及び図2に示すように、プラスチック基材1と、該プラスチック基材1上に設けられた有機層2と、その有機層2上に設けられた無機層3とを有する。そして、有機層2が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係るガスバリア層4は、図1及び図2に示すように、有機層2と、有機層2上に設けられた無機層3とを有し、有機層2が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とする。
【0031】
なお、有機層2と無機層3(これら2層で「ガスバリア層4」ともいう。)は、図1に示すようにプラスチック基材1の一方の面S1にその順で少なくとも設けられるが、図2に示すように他方の面S2にも有機層2’と無機層3’と(これら2層で「ガスバリア層4’」ともいう。)をその順で設けてもよい。また、他方の面S2には、図1に示すように有機層2’も無機層3’も設けなくてよく、また、有機層2’を設けずに無機層3’を設けてもよい。他方の面S2に無機層3’を設け又はガスバリア層4’(有機層2’と無機層3’)を設けてガスバリア性をさらに高めてもよい。
【0032】
以下、ガスバリア性フィルム及びガスバリア層の構成要素を詳しく説明する。
【0033】
<プラスチック基材>
プラスチック基材1の材質は特に制限はないが、汎用性、工業性の見地から、ポリエステル系樹脂を好ましく挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、これらの共重合体、及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等を挙げることができる。ポリエステル系樹脂のうちでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及びこれらの共重合体が好ましい。
【0034】
プラスチック基材1の材質としてポリエステル系樹脂を適用する場合、その全てがポリエステル系樹脂からなるフィルム状基材であってもよいし、有機層2が形成される側(図1における片面S1又は図2における両面S1,S2)に少なくともポリエステル系樹脂層が形成されているフィルム状積層基材であってもよい。このフィルム状積層基材において、有機層2が形成されるポリエステル系樹脂層以外の層は、ポリエステル系樹脂層でなくてもよい。ポリエステル系樹脂層以外の層の種類の選定にあたっては、耐熱性、熱膨張、光透過性等を考慮して各種の樹脂層が任意に選定される。
【0035】
プラスチック基材1の厚さは特に限定されないが、10μm以上500μm以下程度であることが好ましい。
【0036】
プラスチック基材1の表面は、必要に応じて、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、加熱処理、薬品処理、及び易接着処理等の表面処理を行ってもよい。こうした表面処理の具体的な方法は従来公知のものを適宜用いることができる。また、有機層2を直接形成しない側の面には、他の機能層を設けてもよい。機能層の例としては、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0037】
<有機層>
有機層2は、プラスチック基材1上に設けられて後述する無機層3とともにガスバリア層4を構成する。本発明においては、有機層2として、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層を用いる。
【0038】
(アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレート)
アルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートは、ビスフェノール化合物から誘導されるフルオレン骨格を有するものであり、カルドポリマーと総称される群に含まれることもあるが、本発明で用いるアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートは他の成分を吸着しやすい水酸基を含まない。そのため、その化合物で形成した有機層2上にイオンプレーティング法や反応性スパッタ法等の高速成膜手段で無機層3を成膜した場合であっても、良好なガスバリア性を安定して実現できるガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4とすることができる。この理由としては、水酸基がないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを採用することにより、水分等の低分子成分の吸着が抑制されたため、その低分子成分が無機層3の成膜時の熱やプラズマにより有機層2内からガスとして抜け出して無機層3の成膜を阻害することがなく、その結果、欠陥の少ない無機層3を成膜できたためであろうと推察される。本発明では、こうした有機層2と無機層3を積層したので、低価格化を実現できる2層構成であっても良好なガスバリア性を安定して得ることができると推察される。
【0039】
水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレート(以下、単に「変性フルオレンアクリレート」ともいう。)としては、一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。この一般式(1)において、n+nは1〜20の整数であり、R,Rは水素原子又はメチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。特に、R,R,R,R,R,Rは水素原子又はメチル基であることが好ましく、R,R,R,R,R,Rが同一で且つ水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
+nが1〜20の変性フルオレンアクリレートを架橋してなる有機層2は、好ましいガスバリア性を有したガスバリア層4を形成するために有効である。n+nが1未満(すなわち0)の変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成した場合は、結晶性が高くなるために溶解し難く、インキ化が困難になったり塗工が困難となってしまうことがある。一方、n+nが20を超える変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成した場合は、有機層中に直鎖状のアルキレン変性箇所が増大するため、その分子鎖中に低分子成分を取り込んでしまうおそれがある。
【0042】
なお、n+nが大きくなると、形成した有機層2のガラス転移温度(Tg)が低くなり、その有機層2上に無機層3を成膜する際の熱やプラズマの影響によって有機層2の結晶化が進み、有機層2が白化するおそれがある。有機層2が白化した場合は、有機層2の表面が荒れるため、その有機層2上に形成する無機層3にクラックが生じやすくなり、ガスバリア性が低下することがある。また、ガスバリア性が低下しなくとも有機層2の透明性が低下するので、ガスバリア性フィルム10をディスプレイ等の表示面側に設ける場合に好ましくない。こうした問題に対しては、n+nが1〜6の変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成することが好ましく、有機層2のガラス転移温度Tgを高くすることができる。その結果、有機層2の白化を防いで、透明でガスバリア性のよいガスバリア層4を形成することができる。
【0043】
とnの数は同じであっても同じでなくてもよく、合計が上記の範囲内であればよい。
【0044】
一般式(1)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。例えば、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸クロリドを用いて、フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換−OH基を含有する化合物を(メタ)アクリルエステル化することによって得られる。ここで使用する、フルオレン環を有するアルコール又はフルオレン環置換−OH基を含有する化合物としては、例えば、9−フルオレンメタノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3、3’−ジメチル−4−ヒドロキシエチルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、等を挙げることができる。
【0045】
一般式(1)で表される化合物の市販品として、例えば、新中村化学工業株式会社製のNKエステルシリーズや大阪ガスケミカル製のオグソールEAシリーズを使用することができる。
【0046】
(有機層用組成物)
有機層2を形成するための有機層用組成物は、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートのみを重合性化合物として含むものであってもよいが、その他の重合性化合を併せて含むものであってもよい。通常、そうした重合性化合物と、重合開始剤とを含む電離放射線硬化樹脂組成物が、有機層用組成物として好ましく用いられる。電離放射線とは、紫外線又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線等の荷電粒子線を挙げることができる。こうした電離放射線を電離放射線硬化樹脂組成物に照射して重合性化合物を架橋重合等させることにより、有機層2を形成できる。
【0047】
水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートと併せて用いることができる重合性化合物としては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、水酸基を構造内に含むアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートであってもよい。ただし、その場合の有機層用組成物の配合割合としては、水酸基を構造内に含まないものと含むものとの質量比が、100:0〜50:50程度、好ましくは100:0〜75:25である。この範囲内であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の所期の目的を達成して、低コストでガスバリア性のよいガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を得ることができる。
【0048】
また、それ以外の重合性化合物としては、水酸基を構造内に含まないアクリレートを好ましく用いることができるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、水酸基を構造内に含むアクリレートであってもよい。ただし、その場合の有機層用組成物の配合割合としては、水酸基を構造内に含まないものと含むものとの質量比が、100:0〜50:50程度、好ましくは100:0〜75:25である。この範囲内であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の所期の目的を達成して、低コストでガスバリア性のよいガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を得ることができる。
【0049】
アクリレートの具体例としては、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールPO変性アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロハントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。また、これらアクリレートは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。これら重合性化合物の市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズを使用することができる。
【0050】
重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類等を用いることができる。
【0051】
重合開始剤の配合量は特に限定されないが、良好な重合が行われるという観点から、重合性化合物100質量部に対して0.1〜5質量部程度添加することが好ましい。
【0052】
溶剤は、塗布液の粘度調整の見地から、有機層用組成物に応じて任意に混合される。溶剤としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0053】
有機層用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて適宜添加剤を添加する。添加剤としては、例えば、光増感剤、熱安定剤、ラジカル捕捉剤、可塑剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素(着色染料、着色顔料)、体質顔料、光拡散剤等が挙げられる。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0054】
有機層2は、プラスチック基材1上に上記有機層用組成物を塗布し、塗布後の塗膜に電離放射線を照射して架橋重合等させて形成する。塗布方法は、後述の「製造方法」欄で説明する塗布方法から選択して適用できる。このときの電離放射線の照射も、後述の「製造方法」欄で説明する電離放射線及び電離放射線照射装置を任意に選択して適用できる。
【0055】
有機層2は、一回の成膜回数で形成してなる単層でも、2回以上の成膜回数で形成してなる2層以上の層であってもよい。2層以上の場合、本発明の構成要素を満たせば、各層は同じ有機層用組成物を用いてもよいし、異なる有機層用組成物を用いてもよい。有機層2の厚さは、単層又は2層以上に関わらず、基板のたわみの観点から0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、さらに表面性や生産性の観点を加えると0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0056】
以上のようにして、有機層内に水酸基を含まない又は実質的に含まない有機層2を形成することができる。ここで、「水酸基を実質的に含まない有機層」とは、有機層2上に無機層を成膜する際に、熱やプラズマによりその水酸基が吸着した低分子成分がガスとして発生し、無機層の形成を阻害しない程度に含まない有機層2を意味する。
【0057】
なお、水酸基の有無は、JIS K 1557−1970に基づいて測定することができる。このJIS K 1557−1970によれば、試料を無水酢酸を含むピリジン溶液とし、ピリジン還流下で、水酸基をアセチル化する。イミダゾールを触媒にして、この反応を促進させ、過剰のアセチル化試薬は水によって加水分解し、生成した酢酸を水酸化ナトリウムの標準液で滴定して評価できる。
【0058】
(無機層)
無機層3は、水蒸気等のガスを遮断する機能層として有機層2上に形成され、有機層2と併せてガスバリア層4を構成する。無機層3の形成材料としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物、及び酸化珪素亜鉛等から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。具体的には、珪素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウム、セリウム、及び亜鉛から選ばれる1種又は2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができ、より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物及びインジウム合金酸化物等の無機酸化物;珪素窒化物、アルミニウム窒化物、及びチタン窒化物等の無機窒化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化珪素;を挙げることができる。特に好ましくは、酸化珪素、窒化珪素、酸化珪素亜鉛、及び酸化窒化珪素から選ばれる1又は2以上の無機化合物を挙げることができる。無機層3は上記材料を単独で用いてもよいし、本発明の要旨の範囲内で上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0059】
無機層3の厚さは、使用する無機化合物によっても異なるが、ガスバリア性確保の見地から、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、クラック等の発生を抑制する見地から、通常5000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。また、無機層3は1層であってもよいし、合計厚さが上記範囲内となる2層以上の無機層3であってもよい。2層以上の無機層3の場合には、同じ材料同士を組み合わせてもよいし、異なる材料同士を組み合わせてもよい。
【0060】
(その他の構成)
ガスバリア性フィルム10は、上述のとおり、プラスチック基材1、有機層2、及び無機層3で構成されているが、例えば、これら以外の層を有機層2と無機層3との間に適宜挿入したり、プラスチック基材1の有機層2が形成されていない側の面S2に積層したり、無機層3上又は無機層3’上に積層したりしてもよい。任意の層としては、本発明の特徴を阻害しない範囲で、例えば、従来公知のプライマー層、マット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0061】
こうして構成された本発明に係るガスバリア性フィルム10は、水蒸気ガスバリア性が0.05g/m・day未満であった。なお、水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、型名:PERMATRAN−W3/31)を用いて行った結果で評価した。
【0062】
[製造方法]
本発明に係るガスバリア性フィルム10の製造方法は、プラスチック基材1上に、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋して有機層2を形成する工程と、その有機層2上に無機層3を形成する工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0063】
(有機層形成工程)
有機層形成工程は、プラスチック基材1上に、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを有する有機層用組成物で有機層2を形成する工程である。その有機層用組成物は電離放射線硬化樹脂組成物であることが好ましく、通常、プラスチック基材1上に有機層用組成物を塗布し、その塗膜に電離放射線(紫外線等)を照射し、有機層用組成物を重合硬化させて有機層2を形成する。なお、有機層用組成物については、上記「有機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0064】
有機層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスロールコート法、リバースロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、及びダイコート法等を挙げることができる。
【0065】
有機層用組成物を塗布した後は、必要に応じて乾燥を行う。乾燥温度は、常温であってもよいが、有機層用組成物が溶剤を含有する場合には、溶剤を除去するための乾燥を、溶剤の沸点以上の温度で行うことが好ましい。有機層用組成物に照射する電離放射線としては既述したとおりであるが、電離放射線として紫外線を適用する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が用いられる。
【0066】
(無機層形成工程)
無機層形成工程は、有機層2上に無機層用材料を堆積して無機層3を形成する工程である。無機層用材料は、上記「無機層」の説明欄で説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0067】
無機層3の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法又はプラズマ化学気相成長法等を好ましく挙げることができる。こうした各種の形成方法での成膜条件は、得ようとする無機層3の物性及び厚さ等を考慮し、従来公知の成膜条件を適宜調整して行えばよい。
【0068】
より具体的には、(1)無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、又は金属等の原料を基材上に加熱蒸着させる真空蒸着法、(2)原料に酸素ガスを導入して酸化させ、基材に蒸着させる酸化反応蒸着法、(3)ターゲット原料にアルゴンガス、酸素ガスを導入してスパッタリングすることにより、基材に堆積させるスパッタリング法、(4)原料をプラズマガンで発生させたプラズマビームで加熱させ、基材に堆積させるイオンプレーティング法、(5)有機珪素化合物を原料とし、酸化珪素膜を基材に堆積させるプラズマ化学気相成長法、等を利用することができる。
【0069】
本発明では、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートで有機層2を形成したので、有機層中に含まれる低分子成分が少なく、無機層の成膜時に加わる熱やプラズマによっても、有機層中の低分子成分がガスとなって排出して無機層3の形成を阻害することがない。
【0070】
なお、ガスバリア性フィルム10が、上述した他の機能層を有する場合には、それらの層の形成工程が任意に含まれる。
【0071】
[装置]
本発明に係る装置は、上記本発明のガスバリア性フィルム10又は上記本発明のガスバリア層4を用いる表示装置又は発電装置である。上記したガスバリア性フィルム10及びガスバリア層4はいずれも低コストで良好なガスバリア性を示すものであるので、そのガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4を用いれば、表示装置及び発電装置の低コスト化に貢献でき、品質特性を低下させる水蒸気等のガス成分の影響を低減できる。
【0072】
表示装置としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、タッチパネル、電子ペーパー等を挙げることができる。また、これらの表示装置をアクティブマトリックス駆動する薄膜トランジスタも、この表示装置に含まれる。なお、これら各表示装置の構成は特に限定されず、それぞれ従来公知の構成を適宜採用することができ、且つそうした各表示装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。
【0073】
具体的には、例えば、有機EL素子としては、本発明に係るガスバリア性フィルム10上に陰極と陽極を有し、両電極の間に、有機発光層(単に「発光層」ともいう。)を含む有機層を有するものを挙げることができる。発光層を含む有機層の積層態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を有してもよい。また、発光層は一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層及び第三発光層等のように発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。なお、有機EL素子は発光素子であることから、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0074】
発電装置としては、例えば、太陽電池素子(太陽電池モジュール)を挙げることができる。発電装置の構成は特に限定されず、従来公知の構成を適宜採用することができる。さらに、そうした発電装置に適用するガスバリア性フィルム10又はガスバリア層4による封止手段も特に限定されず、従来公知の手段とすることができる。例えば、ガスバリア性フィルム10を太陽電池素子の裏面保護シートとして用いることができる。
【0075】
具体的には、例えば、太陽電池モジュールとしては、本発明に係るガスバリア性フィルム10を太陽電池バックシートとして使用した例を挙げることができる。こうした太陽電池モジュールは、太陽光側から厚さ方向に順に、前面基材(ガラス又はフィルム等の高光線透過性を有するもの)、充填材、太陽電池素子、リード線、端子、端子ボックス、太陽電池バックシートの構成で、それらがシール材を介して両端の外装材(アルミ枠等)に固定されている。その太陽電池バックシートとしては、裏面封止用フィルムと、外層側に配置されるフィルムとの間に、本発明に係るガスバリア性シート10を挟んで構成される例を挙げることができる。裏面封止用フィルムとしては、太陽電池モジュール側で太陽光を反射して電換効率を高めるべく、高度な反射率を有する例えば白色のポリエステルフィルム等が使用される。また、外層側に配置されるフィルムとしては、耐候性、耐加水分解性フィルム等が使用される。
【実施例】
【0076】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
プラスチック基材1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、コスモシャインA−4300)の片面に、下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)をダイコートにて塗布し、120℃で2分間乾燥させた後、波長260nm〜400nmの範囲における積算光量300mJ/cmの条件で紫外線を照射し、厚さ5μmの有機層2を形成した。
【0078】
(紫外線硬化型有機層用インキAの組成)
・上記一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):19質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):19質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0079】
無機層3は、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に有機層2を形成したプラスチックフィルムを有機層側に成膜する向きにして、ホローカソード型イオンプレーティング装置にセットした。そして、蒸発源材料である酸化珪素(高純度化学研究所製)を、ホローカソード型イオンプレーティング装置内の坩堝に投入した後、真空引きを行った。真空度が5×10−4Paまで到達した後、プラズマガンにアルゴンガスを15sccm導入し、電流110A、電圧90Vのプラズマを発電させた。チャンバー内を1×10−1Paに維持することと磁力によりプラズマを所定方向に曲げ、本発明に係る蒸発源材料に照射させた。坩堝内の蒸発源材料は溶融状態を経て昇華することが確認された。イオンプレーティングを15秒間行って基板に堆積させることにより、膜厚100nmの酸化珪素層を形成した。
【0080】
以上のようにして得た実施例1のガスバリア性フィルム10の層構成は、ポリエチレンテレフタレート/紫外線硬化型有機層/無機層である。
【0081】
[実施例2]
下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0082】
(紫外線硬化型有機層用インキBの組成)
・一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0083】
[実施例3]
下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0084】
(紫外線硬化型有機層用インキCの組成)
・一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=10(重合性化合物、大阪ガスケミカル株式会社製、商品名:オグソールEA−1000):19質量部
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):19質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0085】
[実施例4]
下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4のガスバリア性フィルム10を製造した。
【0086】
(紫外線硬化型有機層用インキDの組成)
・一般式(1)の化合物:R〜R=水素原子、n+n=2(重合性化合物、新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A−BPEF):35質量部
・下記一般式(2)の化合物(重合性化合物、R〜R=水素原子):3質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0087】
【化3】

【0088】
なお、上記した一般式(2)のエポキシアクリレートは以下のように合成した。先ず、500mL四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂231g(エポキシ当量231)と、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド450mgと、2,6−ジ−イソブチルフェノール100mgと、アクリル酸72.0gとを仕込んで混合し、空気を毎分25mLの速度で吹き込みながら90〜100℃で加熱して溶解させた。この溶液は白濁していたがそのまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全に溶解させた。溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま攪拌し続け、この間に酸価を測定して酸価が2.0mgKOH/g未満になるまでこの加熱攪拌を継続した。酸価が目標(酸価0.8)に達した8時間を経過後、室温まで冷却し、無色透明な固体である、一般式(2)のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート樹脂を得た。
【0089】
[比較例1]
下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1のガスバリア性フィルムを製造した。
【0090】
(紫外線硬化型有機層用インキEの組成)
・上記一般式(2)の化合物:(重合性化合物、R〜R=水素原子):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0091】
[比較例2]
下記の組成に調整した紫外線硬化型樹脂組成物(紫外線硬化型有機層用インキ)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2のガスバリア性フィルムを製造した。
【0092】
(紫外線硬化型有機層用インキFの組成)
・ポリエステルアクリレート(重合性化合物、東亞合成株式会社製、商品名:M−8030):38質量部
・トルエン:60質量部
・オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−[1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン](光重合開始剤、lamberti社製、商品名:ESACURE ONE):2質量部
【0093】
[評価と結果]
(ガスバリア性の測定方法)
実施例1〜4及び比較例1,2のガスバリア性フィルムについて、水蒸気透過率の測定を行った。測定は、温度37.8℃、湿度100%RHの条件下で、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、商品名:PERMATRAN−W3/31)を用いて行った。その結果を表1に示す。
【0094】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜4は、水蒸気ガスバリア性が0.05g/m・day未満となり、良好な水蒸気ガスバリア性を示したが、比較例1,2はガスバリア性に劣った。透明性は、実施例3以外は透明であった。
【0095】
【表1】

【符号の説明】
【0096】
1 プラスチック基材
2,2’ 有機層
3,3’ 無機層
4,4’ ガスバリア層
10,10A,10B ガスバリア性フィルム
S1 プラスチック基材の片面
S2 プラスチック基材の他の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材と、該プラスチック基材上に設けられた有機層と、該有機層上に設けられた無機層とを有し、前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記有機層が、少なくとも下記一般式(1)で表される化合物を架橋させてなる、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。(下記一般式(1)において、n+nは1〜20の整数であり、R,Rは水素原子又はメチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基であり、R,Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。)
【化1】

【請求項3】
前記一般式(1)のn+nが1〜6である、請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記基材の他方の面にも、前記有機層と前記無機層とがその順で設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記基材が、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記無機層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、及び酸化珪素亜鉛から選ばれる1種又は2種以上からなる層である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
有機層と、該有機層上に設けられた無機層とを有し、前記有機層が、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋してなる層であることを特徴とするガスバリア層。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム又は請求項6に記載のガスバリア層を用いる表示装置又は発電装置であることを特徴とする装置。
【請求項8】
プラスチック基材上に、水酸基を構造内に含まないアルキレンオキサイド変性フルオレンアクリレートを架橋して有機層を形成する工程と、前記有機層上に無機層を形成する工程と、を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201097(P2011−201097A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69458(P2010−69458)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】