説明

ガス栓

【課題】ガス流出孔の下流側の端部に水や油が入って溜まることを防止する。
【解決手段】ガス流出孔4bの上端部に弁座孔部4fを形成する。弁座孔部4fに副弁体13の弁部13cを着座、離間可能に着座させる。弁部13cの上端面13dについては、弁部13cが弁座孔部4fに着座しているとき、つまり副弁体13が閉位置に位置しているとき、プラグ部4Aの上端面と同一平面上に位置させる。主弁体8及び副弁体13については、両者が閉位置に位置しているとき、上下方向へ互いに離間するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス栓、特にソケットが接続されるプラグ部を有するガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のガス栓においては、下記特許文献1に記載されているように、栓本体の内部にガス流入孔及びガス流出孔が形成されている。ガス流入孔の上流側の端部は、栓本体の外面に開口しており、ガスが供給される。ガス流入孔の下流側の端部は、ガス流出孔の内周面に開口しており、この開口部を介してガス流入孔とガス流出孔とが連通されている。
【0003】
ガス流出孔には、主弁体が摺動可能に設けられている。主弁体は、閉位置と開位置との間を摺動可能であり、閉位置に位置するとガス流出孔の内周面におけるガス流入孔の開口部(以下、内側開口部という。)を遮蔽する。その結果、ガス流入孔とガス流出孔との間が遮断される。その一方、開位置に位置すると、主弁体が内側開口部から離間し、内側開口部を開く。その結果、ガス流入孔とガス流出孔とが連通する。
【0004】
ガス流出孔には、副弁体が設けられている。副弁体は、主弁体よりガス流出孔の下流側に配置されており、ガス流出孔の長手方向へ移動可能に設けられている。副弁体は、ガス流出孔の内周面に形成された弁座に着座した閉位置と、この弁座からガス流出孔の上流側へ移動して弁座から離間した開位置との間を移動可能である。副弁体が弁座に着座すると、ガス流出孔が閉じられる。副弁体が弁座から離間すると、ガス流出孔が開かれる。
【0005】
主弁体は、第1ばねによって開位置から閉位置に向かって付勢されている。主弁体の下流側の端部は、第1ばねによって副弁体の上流側の端部に押し付けられている。したがって、副弁体が弁座に着座すると、主弁体も停止する。このときの主弁体の位置が閉位置である。副弁体と主弁体との間には、第2ばねが設けられている。第2ばねは、主弁体を閉位置から開位置に向かって付勢している。しかし、第2ばねの付勢力は、第1ばねの付勢力より小さい値に設定されている。したがって、主弁体が第2ばねにより閉位置から開位置に向かって移動させられることは無い。第2ばねは、副弁体を開位置から閉位置に向かって付勢している。したがって、主弁体が何等かの理由により、閉位置と開位置との間において停止したとしても、副弁体は第2ばねによって弁座に着座させられる。
【0006】
ガス流出孔が開口部する栓本体の外面には、プラグ部が形成されている。このプラグ部にはソケットが外挿される。ソケットが所定の接続位置まで外挿されると、ソケットがプラグ部に位置固定して接続される。その接続状態においては、ソケットの内部に設けられた押しロッドが副弁体及び主弁体を閉位置から開位置まで移動させる。この結果、ガス栓が開状態になる。
【0007】
ソケットをプラグ部から取り外すと、主弁体及び副弁体が第1ばねにより開位置から閉位置まで移動させられる。これによって、ガス栓が閉状態に戻る。また、何等かの理由により、主弁体が閉位置と開位置との間で停止した場合には、副弁体が第2ばねによって弁座に着座させられる。これにより、多量のガスが漏れるような事故が確実に防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−77367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のガス栓においては、副弁体がガス流出孔の下流側の開口端から上流側に離れて配置されている。この結果、ガス流出孔の下流側の端部には、副弁体の下流側の端面を底面とする凹部が形成された状況を呈する。この凹部に水や油が溜まるという問題があった。特に、ガス栓が台所の床に設置される場合には、プラグ部が上方に向けられるため、洗浄時の水道水や調理中の油が飛び跳ねてガス流出孔の下流側の開口部からその内部に入り込んで溜まるという問題があった。水や油が溜まった状態でプラグ部にソケットを接続すると、副弁体が弁座から離間する結果、水や油がガス流出孔の上流側へ入り込み、主弁体にまで達する。すると、水や油に含まれる塵埃がガス流出孔の内周面に付着し、主弁体の円滑な摺動を阻害するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、内部に,ガス流入孔及びこのガス流入孔の下流側の端部が内周面に開口するガス流出孔が形成された栓本体と、上記ガス流出孔の内部に閉位置とこの閉位置より上記ガス流出孔の上流側に位置設定された開位置との間を上記ガス流出孔の長手方向へ摺動可能に設けられ、上記閉位置に位置しているときには上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を閉じ、上記開位置に位置しているときには上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を開く主弁体と、この主弁体を上記開位置から上記閉位置に向かって付勢する第1付勢手段と、上記主弁体より上流側の上記ガス流出孔内にその長手方向へ移動可能に設けられ、上記ガス流出孔の内周面に形成された弁座に着座することによって上記ガス流出孔を閉じた閉位置と、上記弁座から上記ガス流出孔の上流側へ離間することによって上記ガス流出孔を開いた開位置との間を移動可能である副弁体と、この副弁体を上記開位置から上記閉位置に向かって付勢する第2付勢手段とを備え、上記ガス流出孔の下流側の端部が開口する上記栓本体の外面部には、ソケットが外挿されるプラグ部が形成され、上記ソケットの上記プラグ部への装着時には、上記ソケットの内部に設けられた押しロッドによって上記副弁体が上記閉位置から上記開位置まで移動させられるとともに、上記主弁体が上記副弁体によって上記閉位置から上記開位置まで移動させられるガス栓において、上記ガス流出孔の下流側の端部に上記プラグ部の先端面に開口する嵌合孔部が形成され、上記副弁体の下流側の端部に、上記副弁体が上記閉位置に位置しているときには上記嵌合孔部に上記ガス流出孔の上流側へ移動可能に、かつ隙間なく嵌合し、上記副弁体が上記開位置に位置しているときには上記嵌合孔部から上記ガス流出孔の上流側へ抜け出て上記嵌合孔部を開く嵌合部が形成され、上記副弁体が上記閉位置に位置しているとき、上記嵌合部の下流側の端面が上記プラグ部の先端面に対し同一平面上に、または突出して位置させられ、上記副弁体が上記閉位置から上記開位置に向かって所定の離間距離だけ移動すると、上記副弁体が上記主弁体に突き当たって上記主弁体を閉位置から開位置側へ移動させるよう、上記閉位置に位置している上記主弁体と上記閉位置に位置している上記副弁体とが、上記ガス流出孔の長手方向へ上記離間距離だけ離間して配置されていることを特徴としている。
上記弁座が、上記ガス流出孔の上流側から下流側へ向かって漸次縮径するテーパ孔状に形成され、上記弁座の小径側の端縁が上記プラグ部の先端面と交差するように配置されることにより、上記弁座が上記嵌合孔部として兼用され、上記弁座に着座する上記副弁体の弁部が上記嵌合部として兼用されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有するこの発明によれば、副弁体の下流側の端部に形成された嵌合部がガス流出孔の開口部に隙間なく嵌合する。しかも、嵌合部の下流側の端面がプラグ部の先端面と同一平面上に位置しているか、プラグ部の先端面から前方に突出しているから、ガス流出孔の下流側の開口部に水や油が溜まることがない。したがって、プラグ部にソケットを接続する際に、水や油がガス流出孔の内部に入り込むことがない。よって、主弁体の円滑な移動が阻害されるような事態を未然に防止することができる。
また、副弁体の下流側の端面がプラグ部の先端面と同一平面上に位置するか、先端面から前方に突出しているため、副弁体の先端面に物品がぶつかって副弁体が上流側へ移動させられる危険性が高くなる。しかるに、この発明においては、主弁体及び副弁体が閉位置に位置しているときに、副弁体が主弁体に対してガス流出孔の下流側へ離間させられている。したがって、副弁体が不慮の事故によって下流側へ若干移動させられたとしても、主弁体が副弁体によって直ちに閉位置から開位置側へ移動させられることがない。よって、ガス漏れ事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態をそのソケット部に接続されるソケットと一緒に示す断面図である。
【図2】図2は、同実施の形態の要部の拡大断面図である。
【図3】図3は、同実施の形態の要部の分解斜視図である。
【図4】図4は、同実施の形態のプラグ部にソケットをその押しロッドが副弁体の上端面に突き当たるまで外挿した状態を示す断面図である。
【図5】図5は、同実施の形態のプラグ部にソケットを副弁体が主弁体に突き当たるまで外挿した状態を示す断面図である。
【図6】図6は、同実施の形態のプラグ部にソケットを所定の接続位置まで外挿して、主弁体及び副弁体が開位置に達した状態を示す断面図である。
【図7】図7は、この発明の第2実施の形態の要部を示す断面図である。
【図8】図8は、この発明の第3実施の形態の要部を示す断面図である。
【図9】図9は、この発明の第4実施の形態の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図6は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を台所等の床に設置される埋設型ガス栓(ガス栓)1に適用したものである。この実施の形態のガス栓1は、壁に設置することも可能である。また、この発明は、埋設型ガス栓1以外のガス栓にも適用可能である。
【0014】
ガス栓1は、ボックス2を有している。このボックス2は、箱状をなしており、図1における上端部が開口させられている。なお、以下においては、説明の便宜上、ガス栓1の構成を図の上下左右を用いて説明することとする。勿論、この発明は、説明に用いられる上下左右に限定されるものではない。
【0015】
ボックス2は、床(図示せず)に形成された貫通孔(図示せず)に挿入された状態で床に固定されている。ボックス2の上端部には、化粧板3が固定されている。この化粧板3によってボックス2及びその近傍の床が覆われている。化粧板3には、これを上下に貫通する窓孔3aが形成されている。この窓孔3aには、蓋体(図示せず)が開閉回動可能に配置されている。蓋体を開位置に位置させると、窓孔3aが開かれ、ソケットSを窓孔3aからボックス2の内部に挿入し、後述する栓本体4のプラグ部4Aに接続することができる。ソケットSをプラグ部4Aから取り外した後、蓋体を閉位置に位置させると、窓孔3aが閉じられ、ボックス2の内部が化粧板3及び蓋体によって遮蔽される。
【0016】
ボックス2の内部には、栓本体4が固定されている。栓本体4の内部には、ガス流入孔4a及びガス流出孔4bが形成されている。ガス流入孔4aは、栓本体4の左側部外面から内側に向かって延びている。ガス流出孔4bは、栓本体4をその下端面から上端面まで上下に貫通している。ガス流出孔4bの内周面には、ガス流入孔4aの右端部(下流側の端部)が開口している。したがって、ガス流入孔4aとガス流出孔4bとは、ガス流出孔4bの内周面におけるガス流入孔の開口部(以下、内側開口部という。)4cを介して連通している。
【0017】
ガス流入孔4aが開口する栓本体4の左側部には、継手部5が設けられている。この継手部5には、一次側のフレキシブルガス管(図示せず)が接続される。そして、フレキシブルガス管からガス流入孔4aにガスが供給される。したがって、ガス流入孔4aは、左側が上流側であり、右側が下流側である。ガス流入孔4aに流入したガスは、内側開口部4cを通ってガス流出孔4bに流入する。そして、ガス流出孔4b内を上方へ向かって流れる。したがって、ガス流出孔4bは、下側が上流側であり、上側が下流側である。
【0018】
ガス流入孔4a内には、過流出防止弁機構6が設けられている。この過流出防止弁機構6は、ガス流入孔4a内を流れるガスの流量が所定の流量を越えると、閉状態になってガス流入孔4aを閉じる。閉状態になった過流出防止弁機構6は、後述する主弁体8を閉位置に移動させると、リセットされる。つまり、閉状態から開状態に戻される。なお、継手部5及び過流出防止弁機構6は、この発明との関連性が薄く、しかも周知の構造を有しているので、それら詳細な構造については説明を省略する。
【0019】
ガス流出孔4bの下端開口部には、蓋体7が螺合固定されている。この蓋体7によってガス流出孔4bの下端開口部が閉じられている。ガス流出孔4bの上端部は、栓本体4の上端面に開口している。ガス流出孔4bが開口する栓本体4の上端部外面には、プラグ部4Aが形成されている。プラグ部4Aは、日本工業規格JIS S 2135に規定された迅速継手のプラグと同一の形状及び寸法を有しており、その中心線をガス流出孔4bの中心線と一致させた状態で形成されている。
【0020】
図2に示すように、ガス流出孔4bは、その下端部から上端部に向かって順次形成された大径孔部4d、摺動孔部4e及び弁座孔部(弁座;嵌合孔部)4fを有している。大径孔部4d、摺動孔部4e及び弁座孔部4fは、互いの中心線を一致させて配置されている。
【0021】
大径孔部4dは、内側開口部4cより下側に配置されている。摺動孔部4eは、大径孔部4dから上方へ続いて配置されている。摺動孔部4eの内径は、大径孔部4dより小径に設定されている。この結果、摺動孔部4eと大径孔部4dとの間には、下方を向く係止面4gが環状に形成されている。なお、摺動孔部4eの内周面には、内側開口部4cが形成されている。
【0022】
弁座孔部4fは、上方へ向かうにしたがって大径になるテーパ孔として形成されており、その内周面の小径側の端縁たる上端縁がプラグ部4Aの先端面と交差している。弁座孔部4fの大径側の端縁たる下端縁は、摺動孔部4eより小径であり、弁座孔部4fの下端縁と摺動孔部4eの上端縁との間には、弁座孔部4fより大きなテーパ角度を有するテーパ孔部4hが形成されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、ガス流出孔4bの内部には、主弁体8、球体9、ばね受け10、第1ばね11,12、副弁体13及び第2ばね14が収容されている。
【0024】
主弁体8は、内側開口部4cを開閉することによってガス流入孔4aとガス流出孔4bとの間を連通、遮断するためのものであり、両端が開口した円筒として形成されている。主弁体8の外径は、摺動孔部4eの内径より若干大径に設定されている。主弁体8には、その上端から下端まで延びるスリット8aが形成されている。これにより、主弁体8が拡縮径可能になっている。そして、主弁体8は、縮径した状態で摺動孔部4eに摺動可能に挿入されている。したがって、主弁体8の外周面は、主弁体8自体の弾性によって摺動孔部4eの内周面に押し付けられている。
【0025】
摺動孔部4eの内周面には、球体9が位置固定して設けられている。この球体9は、スリット8aにその長手方向へは相対移動可能に、かつ幅方向へは移動不能に挿入されている。これにより、主弁体8が、その中心線を中心として回転することなく、ガス流出孔4bの中心線方向へのみ摺動するようになっている。主弁体8は、図1及び図2に示す閉位置と、この閉位置より下方に配置された図6に示す開位置との間を摺動可能である。主弁体8は、閉位置に位置すると、その外周面が内側開口部4cを覆い、ガス流入孔4aとガス流出孔4bとの間を遮断する。その一方、開位置に位置すると、内側開口部4cを開き、ガス流入孔4aとガス流出孔4bとを連通させる。
【0026】
主弁体8の下端部には、ばね受け10が挿入されている。ばね受け10は、有底円筒状をなしており、その底部10aを上側に位置させた状態で主弁体8に挿入されている。ばね受け10の下端部外周面には、径方向外側に突出する鍔部10bが形成されている。この鍔部10bは、主弁体8の下端面に突き当たっている。これにより、主弁体8とばね受け10とがガス流出孔4bの摺動孔部4e内をその中心線方向へ一緒に移動するようになっている。
【0027】
ばね受け10の鍔部10bは、ガス流出孔4bの大径孔部4dに上下方向へ移動可能に挿入されており、ばね受け10及び主弁体8が所定位置まで上方へ移動すると、鍔部10bが係止面4gに突き当たる。すると、ばね受け10及び主弁体8がそれ以上上方(開位置から閉位置へ向かう方向)へ移動することができなくなって停止する。このときの主弁体8の位置が閉位置である。
【0028】
ばね受け10の底部10aと蓋体7との間には、第1ばね(第1付勢手段)11,12が配置されている。第1ばね11,12は、コイルばねによって構成されている。第1ばね11は、第1ばね12より大径に形成され、第1ばね12と同芯に、かつその外側に配置されている。第1ばね11は、底部10aに突き当たり、ばね受け10を常時上方へ付勢している。この結果、主弁体8が、第1ばね11によりばね受け10を介して常時上方へ付勢されている。一方、第1ばね12は、主弁体8が閉位置から開位置側(下側)へ所定距離だけ離間した当接位置に移動すると、底部10aに突き当たるように配置されている。したがって、第1ばね12は、主弁体8が当接位置と開位置との間に位置しているときだけ、主弁体8を開位置から閉位置へ向かって付勢する。なお、第1ばね12については省略してもよい。
【0029】
副弁体13は、主弁体8より上側(ガス流出孔4bの下流側)に配置されている。副弁体13は、ガイド筒部13aと、このガイド筒部13aより上流側に配置され、ガイド筒部13aに連結腕部13bを介して一体に連結された弁部(嵌合部)13cとを有している。
【0030】
ガイド筒部13aは、摺動孔部4eに摺動可能に挿入されている。これにより、副弁体13がガス流出孔4b内をガタなく移動することができるようになっている。
【0031】
弁部13cは、ガス流出孔4bの上流側から下流側へ向かうにしたがって小径になるようにテーパ状に形成されており、弁座孔部4fと同一のテーパ角度を有している。したがって、副弁体13が上方へ移動して弁部13cが弁部孔部4fに嵌合(着座)すると、弁部13cの外周面が弁座孔部4fの内周面に環状に、かつ隙間なく接触する。このときの副弁体13の位置が閉位置である。副弁体13が閉位置に位置すると、弁部13cが弁座孔部4fに着座する結果、ガス流出孔4bが閉じられる。
【0032】
ばね受け10の底部10aと副弁体13の弁部13cとの間には、第2ばね(第2付勢手段)14が配置されている。第2ばね14は、副弁体13を常時上方へ付勢し、弁部13cを弁座孔部4fに着座させる。第2ばね14は、副弁体13を上方へ付勢すると同時にばね受け10を常時下方へ付勢している。しかし、第2ばね14の付勢力は、第1ばね11の付勢力より小さい値に設定されている。したがって、閉位置に位置している主弁体8及びばね受け10が、第2ばね14の付勢力により第1ばね11の付勢力に抗して閉位置から下側(開位置側)へ移動させられることはない。
【0033】
主弁体8及び副弁体13がそれぞれの閉位置に位置しているときには、ガイド筒部13aの下端面が主弁体8の上端面に対し所定の離間距離だけ離間させられている。したがって、閉位置に位置している副弁体13の弁部13cの上端面(下流側の端面)13dに物体がぶつかる等の不慮の事故により、副弁体13が下方へ若干移動させられたとしても、主弁体8が閉位置から開位置側へ直ちに移動することがない。
【0034】
上記離間距離は、次のように定められている。すなわち、プラグ部4AにソケットSを接続するときには、図4に示すように、まずソケットSの内部に設けられた押しロッドSaが閉位置に位置している副弁体13の弁部13cの上端面(下流側の端面)13dに突き当たる。したがって、ソケットSをプラグ部4Aにさらに外挿すると、押しロッドSaが副弁体13を下方へ移動させる。副弁体13が閉位置から開位置に向かって上記離間距離だけ移動すると、図5に示すように、副弁体13の下端面が閉位置に位置している主弁体8の上端面に突き当たる。したがって、その後はソケットSのプラグ部4Aへの外挿に伴って主弁体8及び副弁体13が一緒に下方へ移動する。
【0035】
図6に示すように、ソケットSがプラグ部4Aに所定の接続位置まで外挿されると、主弁体8が閉位置から下方へ向かって距離L1だけ移動させられるとともに、副弁体13が閉位置から下方へ向かって距離L2だけ移動させられる。このときの主弁体8及び副弁体13の各位置が、それぞれの開位置である。離間距離Lは、次式で求めることができる。
L=L2−L1
【0036】
なお、ソケットSが接続位置まで外挿されると、ソケットSはプラグ部4Aに位置固定状態で接続される。ソケットSを取り外す場合には、ソケットSの操作筒部Sbを上方へ移動させる。このような取付及び取外し構造は、周知の迅速継手のソケットとプラグとの構造と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
【0037】
弁部13cの上端面13dは、副弁体13の軸線(=ガス流出孔4bの中心線)と直交する平面とされている。上端面13dは、副弁体13が閉位置に位置しているとき、弁部13cの上端面がプラグ部4Aの先端面と同一平面上に位置するように配置されている。弁部13cの上端面は、平面にすることなく、上方に向かって凸の円弧面としてもよい。その場合には、弁部13cの上端面のうちの外周縁だけがプラグ部4Aの先端面と同一平面上に位置し、他の部分がプラグ部4Aの先端面より上方に位置することになる。また、弁部13cの上端面を平面にする場合であっても、僅かな量であれば、弁部13cの上端部をプラグ部4Aの上端面から上方へ突出させてもよい。
【0038】
上記構成を有するガス栓1においては、副弁体13が閉位置に位置しているとき、弁部13cの上端面13dがプラグ部4Aの先端面と同一平面上に位置しているから、ガス流出孔4bの上端部(下流側端部)に凹部が形成されることがない。したがって、ソケットSのプラグ部4Aへの接続時に水や油及びそれらに含まれる塵埃がガス流出孔4bの内部に入り込むことを確実に防止することができる。しかも、弁部13cが弁座孔部4fに隙間なく嵌合しているから、弁部13cの外周面と弁座孔部4fの内周面との間から水や油が入り込むこともない。よって、主弁体8の円滑な移動が阻害されることを防止することができる。
【0039】
また、副弁体13の弁部13cの上端面13dがプラグ部4Aの先端面と同一平面上に位置しているので、弁部がガス流出孔の内部に配置された従来のガス栓に比して、上端面13dに物品がぶつかって副弁体13が閉位置から開位置側(下側)へ移動させられる危険性が高くなる。しかるに、このガス栓1においては、主弁体8及び副弁体13がいずれも閉位置に位置しているとき、副弁体13が主弁体8に対し離間距離だけ上方へ離間させられているから、副弁体13が閉位置から移動したとしても、主弁体8が閉位置から開位置側へ直ちに移動することがない。よって、ガス漏れ事故が発生するようなことはない。
【0040】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することとし、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図7は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態においては、摺動孔部4eが、下側摺動孔部4iと上側摺動孔部4jとに二分されている。下側摺動孔部4iには、内側開口部4cが形成されており、主弁体8が摺動可能に嵌合されている。上側摺動部4jには、副弁体13のガイド筒部13aが摺動可能に嵌合されている。
【0042】
下側摺動孔部4iの内径は、上側摺動孔部4jの内径より大径に設定されている。この結果、下側摺動孔部4iと上側摺動孔部4jとの間には、下方を向く係止面4kが環状に形成されている。この係止面4kに主弁体8の上端面がワッシャ15を介して突き当たることにより、主弁体8の閉位置が定められている。なお、主弁体8の開位置が係止面4kによって定められているので、上記実施の形態の係止面4gが不要になり、その結果大径孔部4dも省略されている。また、ばね受け10の鍔部10bは、主弁体8の下端面に突き当たっているだけであり、鍔部10bの外径は、主弁体8の外径より小径に設定されている。
【0043】
この実施の形態においては、プラグ部4AにソケットSが外挿され、それに伴って副弁体13が閉位置から離間距離だけ移動すると、主弁体8がワッシャ15を介して下方へ押され、ワッシャ15と一緒に下方へ移動する。このとき、ガイド筒部13aの下端部が下側摺動孔部4iに入り込むが、ガイド筒部13a全体が下側摺動孔部4iに入り込むことはなく、副弁体13及び主弁体8が開位置に達した状態においても、ガイド筒部13aの上端部は上側摺動孔部4jに嵌合している。したがって、副弁体13は、閉位置と開位置との間をガタ付くことなく移動することができる。一方、ソケットSがプラグ部4Aから取り外されると、第1ばね11,12により主弁体8、ワッシャ15及び副弁体13が開位置から所定の中間位置まで上方へ移動させられ、その後は閉位置まで第1ばね11によって上方へ移動させられる。
【0044】
図8は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態においては、主弁体8の下端部外周面に径方向外側に突出する鍔部8bが環状に形成されている。この鍔部8bが係止面4gに突き当たることにより、主弁体8の閉位置が定められている。したがって、この実施の形態においては、ばね受け10の鍔部10bが主弁体8の下端面に突き当たるだけであり、鍔部10bの外径が、主弁体8の鍔部8bより小径で、主弁体8の外径とほぼ同一に設定されている。
【0045】
図9は、この発明の第4実施の形態を示す。この実施の形態においては、弁座孔部4fがプラグ部4Aの先端面から下方に離間して配置されている。弁座孔部4fの上端とプラグ部4Aの先端面との間には、ガス流出孔4bの一部をなす嵌合孔部4lが形成されている。嵌合孔部4lは、その中心線を弁座孔部4fの中心線と一致させて配置されている。嵌合孔部4lの内径は、全長にわたって一定であり、弁座孔部4fの上端縁(小径側端縁)の内径と同一に設定されている。つまり、弁座孔部4fの上端に続いて嵌合孔部4lが形成されている。なお、弁座孔部4fの下端部は、摺動孔部4eの上端部に続いている。したがって、この実施の形態においては、テーパ孔部4hが形成されていない。
【0046】
弁部13cの上端面13dは、副弁体13が閉位置に位置しているとき、弁座孔部4fの上端縁より下方に位置するように配置されている。上端面13dの中央部には、嵌合部13eが形成されている。この嵌合部13eは、その中心線を副弁体13の中心線と一致させて配置されている。しかも、嵌合部13eの外径は、嵌合孔部4lの内径とほぼ同一に設定されている。したがって、嵌合部13eは、副弁体13の上下方向への移動に伴って嵌合孔部4lに対して出没することができる。嵌合部13eの長さは、弁部13cが弁座孔部4fに着座しているとき、嵌合部13eの上端面13fがプラグ部4Aの先端面と同一平面上に位置するような長さに設定されている。しかも、嵌合部13eの長さは、副弁体13が開位置に位置しているときには、嵌合部13e全体が嵌合孔部4lから下方へ離間して嵌合孔部4lを開くような長さに設定されている。
【0047】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、弁座孔部4fの内周面の上端部をプラグ部4Aの先端面と交差させているが、この交差部には、幅の小さなものであれば、円弧状又は直線状の面取りを形成してもよい。このような面取りは、嵌合孔部4lの内周面とプラグ部4Aの先端面との交差部にも形成してもよい。
また、上記の実施の形態においては、ばね受け10を弁本体8と別体に形成しているが、弁本体8と一体に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、日本工業規格JIS S 2135に規定されたプラグ部を有するガス栓に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
S ソケット
Sa 押しロッド
1 埋設型ガス栓(ガス栓)
4 栓本体
4A プラグ部
4a ガス流入孔
4b ガス流出孔
4c 内側開口部(ガス流出孔の内周面におけるガス流入孔の開口部)
4f 弁座孔部(弁座;嵌合孔部)
4l 嵌合孔部
8 主弁体
11 第1ばね(第1付勢手段)
12 第1ばね(第1付勢手段)
13 副弁体
13c 弁部(嵌合部)
13d (嵌合の)上端面
13e 嵌合部
13f (嵌合部の)上端面
14 第2ばね(第2付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に,ガス流入孔及びこのガス流入孔の下流側の端部が内周面に開口するガス流出孔が形成された栓本体と、上記ガス流出孔の内部に閉位置とこの閉位置より上記ガス流出孔の上流側に位置設定された開位置との間を上記ガス流出孔の長手方向へ摺動可能に設けられ、上記閉位置に位置しているときには上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を閉じ、上記開位置に位置しているときには上記ガス流出孔の内周面における上記ガス流入孔の開口部を開く主弁体と、この主弁体を上記開位置から上記閉位置に向かって付勢する第1付勢手段と、上記主弁体より上流側の上記ガス流出孔内にその長手方向へ移動可能に設けられ、上記ガス流出孔の内周面に形成された弁座に着座することによって上記ガス流出孔を閉じた閉位置と、上記弁座から上記ガス流出孔の上流側へ離間することによって上記ガス流出孔を開いた開位置との間を移動可能である副弁体と、この副弁体を上記開位置から上記閉位置に向かって付勢する第2付勢手段とを備え、上記ガス流出孔の下流側の端部が開口する上記栓本体の外面部には、ソケットが外挿されるプラグ部が形成され、上記ソケットの上記プラグ部への装着時には、上記ソケットの内部に設けられた押しロッドによって上記副弁体が上記閉位置から上記開位置まで移動させられるとともに、上記主弁体が上記副弁体によって上記閉位置から上記開位置まで移動させられるガス栓において、
上記ガス流出孔の下流側の端部に上記プラグ部の先端面に開口する嵌合孔部が形成され、上記副弁体の下流側の端部に、上記副弁体が上記閉位置に位置しているときには上記嵌合孔部に上記ガス流出孔の上流側へ移動可能に、かつ隙間なく嵌合し、上記副弁体が上記開位置に位置しているときには上記嵌合孔部から上記ガス流出孔の上流側へ抜け出て上記嵌合孔部を開く嵌合部が形成され、上記副弁体が上記閉位置に位置しているとき、上記嵌合部の下流側の端面が上記プラグ部の先端面に対し同一平面上に、または突出して位置させられ、上記副弁体が上記閉位置から上記開位置に向かって所定の離間距離だけ移動すると、上記副弁体が上記主弁体に突き当たって上記主弁体を閉位置から開位置側へ移動させるよう、上記閉位置に位置している上記主弁体と上記閉位置に位置している上記副弁体とが、上記ガス流出孔の長手方向へ上記離間距離だけ離間して配置されていることを特徴とするガス栓。
【請求項2】
上記弁座が、上記ガス流出孔の上流側から下流側へ向かって漸次縮径するテーパ孔状に形成され、上記弁座の小径側の端縁が上記プラグ部の先端面と交差するように配置されることにより、上記弁座が上記嵌合孔部として兼用され、上記弁座に着座する上記副弁体の弁部が上記嵌合部として兼用されていることを特徴とする請求項1に記載のガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82911(P2012−82911A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230357(P2010−230357)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000167325)光陽産業株式会社 (69)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】