説明

ガス遮断弁

【課題】弁体部1と弁駆動部2とを有するガス遮断弁において、弁体部1の遮断弁(ボールバルブ)の従動軸41を手動で操作するとき、弁駆動部2の回転力伝達機構や弁駆動用モータ等の破損を防止する。
【解決手段】ボールバルブの従動軸41の周囲に軸カバー42を軸方向に摺動可能に配設する。弁駆動部2の駆動軸7と従動軸41とを連結ピン8で連結する。連結ピン8を引きにいて連結状態を解除し、軸カバー42をスライドさせて、従動軸41のスパナ掛け部41aにより手動操作を可能とする。駆動軸7と従動軸41が連結ピン8によって連結されているときは、軸カバー42が連結ピン8に当接してスライドできないようにし、軸カバー42で従動軸41のスパナ掛け部41aを覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断弁に係り、具体的には、ガス漏れなどの異常が発生した場合にガスの供給を遮断するガス遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス遮断弁として、ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行う遮断弁を内蔵した弁体部と、この弁体部の遮断弁を駆動する駆動機構を内蔵した弁駆動部とを備えたものがある。そして、例えば弁駆動部の駆動軸と遮断弁の従動軸とが連結され、弁駆動部の弁駆動用モータ等により遮断弁を回転させるように構造になっている。
【0003】
また、ガス遮断弁には、緊急動作で弁を開閉するためにバックアップ電源を備えたものもあるが、このような構成ではコストが高くなるため、手動でも弁の開閉操作を行えることが要求される。この弁駆動部と連結された弁を手動で開閉する場合は、弁の従動軸を弁駆動用モータから切り離す必要があり、弁駆動用モータを切り離す機構としては、一般に手動式クラッチが用いられている。そして、手動による開閉操作時には、弁を弁駆動用モータから切り離した状態で、弁の従動軸をスパナ等で回して、弁を開閉している。
【0004】
なお、本発明に関連する文献公知発明のうち、出願人が当該特許出願時に知っているものがないので、開示すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガス遮断弁にあっては、駆動軸と従動軸を連結した状態で、不用意に手動により開閉操作を行うと、駆動軸を駆動する弁開閉用モータなどの駆動機構を破損してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、ガス遮断弁において、不用意に手動により弁の開閉操作を行えないようにして、弁駆動部の駆動機構の破損を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のガス遮断弁は、ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行う遮断弁を内蔵した弁体部と、該弁体部の遮断弁を駆動する駆動機構を内蔵した弁駆動部とを備えたガス遮断弁であって、前記弁体部に内蔵された前記遮断弁の従動軸が該弁体部の外部に露出されるとともに、該従動軸は該露出部分に治具掛け部を有し、前記弁駆動部には該従動軸を駆動する前記駆動機構の駆動軸が該従動軸と同軸に設けられ、前記駆動軸と前記従動軸とが、一方が他方に形成された軸孔内に挿入されるとともに、該駆動軸と従動軸とを一部を露出して貫通する連結ピンにより連結され、前記従動軸の周囲に、前記治具掛け部を覆い、該従動軸の軸方向に摺動可能に配設された軸カバーを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のガス遮断弁によれば、連結ピンを駆動軸と従動軸から外して該駆動軸と従動軸を非連結状態になるが、このとき連結ピンが外されることから軸カバーを軸方向に移動することができ、露出した治具掛け部にスパナ等の治具を掛けて弁体部内の遮断弁の手動による開閉を行うことができる。かつ、連結ピンを外さなければこの連結ピンが一部露出しているので、軸カバーを移動できずに治具掛け部を覆った状態であり、スパナ等の治具により手動による開閉を行うことができないので、弁駆動部の駆動機構の破損を防止することができる。また、いたずら等による手動操作も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態のガス遮断弁の一部破断正面図、図2は同ガス遮断弁における駆動軸と従動軸の連結部分の構造を示す図であり、この実施形態のガス遮断弁は、弁体部1と弁駆動部2とで構成されている。
【0010】
弁体部1は、管状の弁ハウジング3を有している。この弁ハウジング3には、図示しないガス管がネジ接続されるテーパーネジからなる第1ポート31と第2ポート32が形成されており、この第1ポート31と第2ポート32との間には、弁室33と管路34が形成されている。弁室33の第1ポート31側及び管路34側には弁座35,35が配設されており、この弁室33内には、「遮断弁」としてのボールバルブ4が弁座35,35に密接するように配設されている。そして、図2に示すように、ボールバルブ4の従動軸41が、弁ハウジングに設けられた軸受け36によって軸支されるとともに、この従動軸41はシール部材37により弁室33の気密を保って、弁ハウジング3の外側に露出されている。なお、弁ハウジング3には、弁駆動部2を取り付けるための取付座3Aが形成されている。
【0011】
弁駆動部2は、弁駆動用モータ5を内蔵した下ケース部2Aと、回転力伝達機構6と図示しない制御回路等を内蔵した上ケース部2Bとを有している。なお、下ケース部2Aと上ケース部2Bの外装部は一体に形成されている。弁駆動用モータ5は下ケース部2A内でその主軸51を上ケース部2B内に突出させている。また、上ケース部2A内の回転力伝達機構6は互いに歯合する小歯車61と大歯車62とで構成されており、小歯車61は弁駆動用モータ5の主軸51に取り付けられ、大歯車62は軸受け22で軸支された駆動軸7に取り付けられている。そして、この駆動軸7は、上ケース部2Bから弁体部1側に露出され、この駆動軸7は連結ピン8によってボールバルブ4の従動軸41に連結されている。
【0012】
そして、連結ピン8により駆動軸7と従動軸が連結されている状態では、弁駆動用モータ5の回転力が小歯車61を介して大歯車62に伝達されて大歯車62が回転し、ボールバルブ4の全開状態と全閉状態が切り換わる。なお、弁駆動部2の修理や交換等を行うときは、この弁駆動部2を取り外す。このときは、連結ピン8を引き抜いて、弁駆動部2側の駆動軸7と弁ハウジング3側の従動軸41の連結を解除し、ボルト9を緩めて駆動部2を取付座3Aから取り外す。また、連結ピン8は後述のように遮断弁4を手動で開閉操作するときも引き抜く。
【0013】
図2に示すように、従動軸41にはスパナによって手動で遮断弁4を開閉するためのスパナ掛け部41aが形成されている。また、従動軸41の上端には駆動軸7を挿入する軸孔41bが形成されるとともに、この軸孔41bに直交するように係合孔41cが形成されている。駆動軸7には軸に直交するように係合孔7aが形成されている。この係合孔41c,7aは連結ピン8の外径に整合する形状である。
【0014】
また、従動軸41の周囲には軸方向に摺動自在な筒状の軸カバー42が従動軸41に嵌合されている。なお、図1では軸カバー42は簡略化して一点鎖線で図示してある。この軸カバー42の端部には従動軸41と該軸カバー42の内側に入り込んだ異物等を排出するための切欠き42aが形成されている。そして、図2(A) に示すように、駆動軸7を従動軸41の軸孔41b内に挿入した状態で軸カバー42を弁ハウジング3側にし、連結ピン8が係合孔41c,7aに挿入され、従動軸41は駆動軸7に連結固定されている。これにより、弁駆動用モータ5により遮断弁4の開閉が可能となる。一方、図2(B) に示すように、連結ピン8を引き抜くと、従動軸41は駆動軸7に対して自由に回転できる構造であり、スパナ掛け部41aにスパナを掛けて従動軸41を回転させて遮断弁4の手動による開閉操作が可能となる。
【0015】
ここで、従動軸41の周囲の軸カバー42は、連結ピン8を引き抜いた状態では従動軸41の軸方向に摺動自在であるが、図2(A) のように連結ピン8によって従動軸41と駆動軸7が連結されている状態では、軸カバー42は駆動軸側にスライドさせようとしても連結ピン8に当接するためスライドできない。すなわち、この軸カバー42は連結ピン8を抜いて上にスライドさせない限り、スパナ掛け部41aが露出しないので、不用意に手動操作ができないようになっている。したがって、従動軸41と駆動軸7との連結状態を解除しなければ、手動操作できないので、弁駆動部2の回転力伝達機構6や弁駆動用モータ5を誤って破損することもない。また、このカバー42は弁ハウジング側の軸受け及びシール部の部分への埃等の進入を防止する役目もする。
【0016】
なお、従動軸41と駆動軸7とを、連結ピン8を係合孔41c,7aに挿入するだけで両者を連結でき、また、引き抜くことで連結を解除することができるので、構造が簡単でしかも操作も簡単になる。例えば、従来のガス遮断弁のように、弁駆動用モータを切り離す機構として手動式クラッチを用いると、弁駆動用モータを切り離すために複雑な機構を要し、手動操作するためのハンドル等を設ける必要があり、手動開閉の作業性も悪く、かつコストが高価なものとなる。この実施形態ではこのような問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のガス遮断弁の一部破断正面図である。
【図2】実施形態のガス遮断弁の従動軸と駆動軸との連結部分の詳細図である。
【符号の説明】
【0018】
1 弁体部
2 弁駆動部
4 ボールバルブ(遮断弁)
5 弁駆動用モータ
6 回転力伝達機構
7 駆動軸
8 連結ピン
41 従動軸
41a スパナ掛け部(治具掛け部)
42 軸カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス配管に接続されてガスの供給及び遮断を行う遮断弁を内蔵した弁体部と、該弁体部の遮断弁を駆動する駆動機構を内蔵した弁駆動部とを備えたガス遮断弁であって、
前記弁体部に内蔵された前記遮断弁の従動軸が該弁体部の外部に露出されるとともに、該従動軸は該露出部分に治具掛け部を有し、
前記弁駆動部には該従動軸を駆動する前記駆動機構の駆動軸が該従動軸と同軸に設けられ、
前記駆動軸と前記従動軸とが、一方が他方に形成された軸孔内に挿入されるとともに、該駆動軸と従動軸とを一部を露出して貫通する連結ピンにより連結され、前記従動軸の周囲に、前記治具掛け部を覆い、該従動軸の軸方向に摺動可能に配設された軸カバーを備えたことを特徴とするガス遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−250312(P2009−250312A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97490(P2008−97490)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】