ガラスの成形方法、ガラス、一体化ガラス及び電子機器
【課題】異なる組成又は色調のガラスを一体成形するガラスの成形方法及び一体化ガラスを提供する。
【解決手段】組成又は色調の少なくとも一方が異なるガラスG1,ガラスG2を一体化するガラスの成形方法であって、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置する工程と、ガラスG2を囲繞した状態でガラスG1及びガラスG2を型枠内に収容する工程と、ガラスG1及びガラスG2を型枠内に収容した状態で、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱する工程と、を有する。
【解決手段】組成又は色調の少なくとも一方が異なるガラスG1,ガラスG2を一体化するガラスの成形方法であって、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置する工程と、ガラスG2を囲繞した状態でガラスG1及びガラスG2を型枠内に収容する工程と、ガラスG1及びガラスG2を型枠内に収容した状態で、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱する工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの成形方法、ガラス、一体化ガラス及び電子機器に関し、特に、異なる組成もしくは色調のガラスを一体に成形するガラスの成形方法、当該成形方法により成形したガラス及び一体化ガラス、該ガラス及び一体化ガラスを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPC等の電子機器の筐体には、加工性やコスト性の観点から、樹脂もしくは金属が主に使用されている。しかしながら、近年では、筐体に意匠性を求められることが多くなっており、筐体に着色したガラス(以下、着色ガラスと称する)を使用することが提案されている。
【0003】
また、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスには、透明ガラスが使用されている。従来のカバーガラスは、静止画像及び動画像を含む画像の表示領域以外の領域の裏面又は表面に塗料を塗布することで着色している。しかしながら、近年では、意匠性の観点から、表示領域以外の領域の裏面又は表面に塗料を塗布するのではなく、ガラスに着色剤を含有させ、カバーガラスの内部まで着色したいという要望がある。
【0004】
ガラスに着色する従来技術としては、例えば、携帯電話の裏面に搭載された透明太陽電池の裏面ガラスを好みの色に着色することが提案されている(特許文献1参照)。また、ディスプレイを備えた電子機器ではないが、腕時計の防風窓(カバーガラス)を、2種以上の異なる色調(色)のガラスで構成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
なお、特許文献2では、可視光を透過する無色透明なガラス(以下、透明ガラスと称する)と着色ガラスとを積層した積層体を加熱して融合させ、さらに、中央部が凸形状となるようにプレス成形した後、凸部を研削除去することで、透明ガラスと着色ガラスとが一体化したガラスを得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−129987号公報
【特許文献2】特開平9−218277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電子機器にはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵されることがある。この場合、撮像素子や受光素子が可視光や赤外光を受光できるように、筐体の一部を可視光や赤外光が透過するように構成する必要がある。つまり、筐体に着色ガラスを使用した場合は、その一部を透明ガラスとする必要がある。また、着色ガラスをディスプレイのカバーガラスとして使用する場合にも、画像を表示する領域を透明ガラスとする必要がある。
【0008】
しかしながら、引用文献1で提案される方法では、筐体として使用される着色ガラスが単色であるため撮像素子や赤外線受光素子等が内蔵された電子機器の筐体や、表示装置を備えた電子機器の筐体として使用することができない。
【0009】
特許文献2に提案される方法では、着色ガラスの一部を透明ガラスとした筐体を作成することができる。しかしながら、該方法では、プレス成形する際の金型とガラスとの離型性を考慮し、金型にテーパーをつけているため透明ガラスと着色ガラスとの境界面が、成形後のガラスの主面(表面又は裏面)に対して傾斜した状態となる。
【0010】
すなわち、透明ガラスと着色ガラスとの境界付近では、透明ガラスの厚みが漸減すると着色ガラスの厚みが漸増し、透明ガラスの厚みが漸増すると着色ガラスの厚みが漸減する関係にある。このため、着色ガラスと透明ガラスとの境界がはっきりせず、透明ガラスと着色ガラスの輪郭がぼやけてしまい、撮像素子や赤外線受光素子が正常に受光できない虞がある。また、カバーガラスに使用した場合には、画像の周囲がぼやけてしまい、ユーザの視聴性が低下してしまう。
【0011】
本発明は、異なる組成又は色調のガラスを一体成形するガラスの成形方法、ガラス、一体化ガラス及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガラスの成形方法は、組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化するガラスの成形方法であって、第2のガラスを囲繞するように第1のガラスを配置する工程と、第2のガラスを囲繞した状態で第1のガラス及び第2のガラスを型枠内に収容する工程と、第1のガラス及び第2のガラスを型枠内に収容した状態で、第1のガラス及び第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる組成又は色調の第1,第2のガラスを、第2のガラスを囲繞するように第1のガラスを配置した状態で型枠内に収容した後、第1のガラス及び第2のガラスを軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスを容易に一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る一体化ガラスの斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図3】第1の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図4】第1の実施形態に係る一体化ガラスから筐体を形成する説明図。
【図5】第1の実施形態に係る一体化ガラスを筐体として使用した電子機器の断面図。
【図6】第2の実施形態に係る一体化ガラスの斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図8】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図9】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図10】第2の実施形態に係る一体化ガラスから筐体を形成する説明図。
【図11】第2の実施形態に係る一体化ガラスを筐体として使用した電子機器の断面図。
【図12】実施例3に係る一体化ガラスの外観写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1の斜視図である。第1の実施形態に係る一体化ガラス1は、組成もしくは色調の少なくとも一方が異なる第1のガラスG1(以下、ガラスG1と称する)と第2のガラスG2(以下、ガラスG2と称する)とが一体化されたガラスである。
【0016】
ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスであり、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置されている。ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスであり、円柱形状に加工されている。なお、この第1の実施形態では、ガラスG1は黒色に着色された着色ガラスであり、ガラスG2は透明ガラスであるものとして説明する。
【0017】
ガラスG1を波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスとすることで、一体化ガラス1のガラスG1からなる箇所に高い遮光性を備えることができる。これにより、一体化ガラス1を電子機器の筐体として用いた場合、ガラスG1からなる箇所から機器内部からの光が外部に漏れることがなく、一体化ガラス1に別途遮光手段を設ける必要がない。また、一体化ガラス1を電子機器のカバーガラスとして用いた場合、表示装置の周囲の枠部分にガラスG1からなる箇所を配置することで、表示装置と枠部分との境界が明瞭となる。ガラスG1の波長380nm〜780nmにおける吸光係数は、2mm−1以上が好ましく、3mm−1以上がより好ましく、4mm−1以上がさらに好ましい。なお、本発明において、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上とは、前記波長範囲における吸光係数の最小値が1mm−1以上であることをいう。
【0018】
また、ガラスG2を波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスとすることで、一体化ガラス1のガラスG2からなる箇所に高い透明性を備えることができる。これにより、一体化ガラス1を電子機器の筐体として用いた場合、ガラスG2からなる箇所をデジタルカメラの受光部として用いることが可能である。また、一体化ガラス1を電子機器のカバーガラスとして用いた場合、ガラスG2からなる箇所を表示装置のカバーガラスとして用いることで、表示内容を明瞭に視認することが可能となる。ガラスG2の波長380nm〜780nmにおける吸光係数は、0.8mm−1未満が好ましく、0.5mm−1未満がより好ましく、0.3mm−1未満がさらに好ましい。なお、本発明において、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満とは、前記波長範囲における吸光係数の最大値が1mm−1未満であることをいう。
【0019】
(ガラスの組成)
本実施形態のガラスG1としては、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2(二酸化ケイ素)を55〜80%、Al2O3(酸化アルミニウム)を3〜16%、B2O3(酸化ホウ素)を0〜12%、Na2O(酸化ナトリウム)を5〜16%、K2O(酸化カリウム)を0〜4%、MgO(酸化マグネシウム)を0〜15%、CaO(酸化カルシウム)を0〜3%、ΣRO(Rは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛))を0〜18%、ZrO2(酸化ジルコニウム)を0〜1%、着色成分(Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Er、Sn、Ce、Pr、Eu、Nd、Agの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分)を0.1〜7%含有するガラスを使用することが好ましい。
【0020】
また、本実施形態のガラスG2としては、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2(二酸化ケイ素)を55〜80%、Al2O3(酸化アルミニウム)を3〜16%、B2O3(酸化ホウ素)を0〜12%、Na2O(酸化ナトリウム)を5〜16%、K2O(酸化カリウム)を0〜4%、MgO(酸化マグネシウム)を0〜15%、CaO(酸化カルシウム)を0〜3%、ΣRO(Rは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛))を0〜18%、ZrO2(酸化ジルコニウム)を0〜1%を含有するガラスを使用することが好ましい。
【0021】
以下、上記ガラスの各組成について説明するが、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。SiO2はガラスの骨格を構成する成分であり必須の成分である。SiO2の含有量が55%未満ではガラスとしての安定性または耐候性が低下する。このため、SiO2の含有量の下限は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、SiO2の含有量が80%超ではガラスの粘性が増大するため溶融性が著しく低下する。このため、SiO2の含有量の上限は、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0022】
Al2O3は、ガラスの耐候性および化学強化特性を向上させる成分であり、必須の成分である。Al2O3の含有量が、3%未満では耐候性が低下する。このため、Al2O3の含有量の下限は、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、Al2O3の含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。このため、Al2O3の含有量の上限は、14%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0023】
B2O3は、ガラスの耐候性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。B2O3の含有量が、4%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、B2O3の含有量の下限は、5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、B2O3の含有量が、12%超では、揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下するおそれがある。このため、B2O3の含有量の上限は、11%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0024】
Na2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、またイオン交換により表面圧縮応力層を形成するために必須の成分である。Na2Oの含有量が、5%未満では溶融性が悪く、またイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となる。このため、Na2Oの含有量の下限は、7%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましい。また、Na2Oの含有量が、16%超では耐候性が低下する。このため、Na2Oの含有量の上限は、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。
【0025】
K2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくする作用がある。このため、必須ではないが含有することが好ましい成分である。K2Oの含有量が、0.01%未満では溶融性向上またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、K2Oの含有量の下限は、0.3%以上であることが好ましい。また、K2Oの含有量が、4%超では耐候性が低下する。このため、K2Oの含有量の上限は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0026】
MgOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。MgOの含有量が、3%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、MgOの含有量の下限は、4%以上であることが好ましい。また、MgOの含有量が、15%超では耐候性が低下する。このため、MgOの含有量の上限は、13%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0027】
CaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。CaOの含有量が、0.01%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない。このため、CaOの含有量の下限は、0.1%以上であることが好ましい。また、CaOの含有量が、CaOが3%超では化学強化特性が低下する。このため、CaOの含有量の上限は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
【0028】
RO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)は、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じていずれか1種以上を含有することができる。ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない。このため、ΣROの下限は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が18%超では耐候性が低下する。このため、ΣROの上限は、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましい。なお、ΣROとは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOの合量を示すものである。
【0029】
ZrO2は、イオン交換速度を大きくする成分であり、必須ではないが必要に応じて含有してもよい。ZrO2の含有量が1%超では溶融性が悪化して未溶融物としてガラス中に残る場合が起こるおそれがある。このため、ZrO2の含有量は、1%以下とすることが好ましい。
【0030】
(SiO2+Al2O3+B2O3)/(ΣR2O+CaO+SrO+BaO)はガラスのネットワークを形成する網目状酸化物の合計量と主たる修飾酸化物の合計量との比率を示すものであり、この比が4未満であると化学強化処理後に圧痕をつけた時の破壊する確率が大きくなるおそれがある。このため、この比の下限は、4.2以上であることが好ましく、4.4以上であることがより好ましい。また、この比が、6を超えると、ガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。このため、この比の上限は、5.5以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。なお、ΣR2Oとは、Na2O、K2O、Li2Oの合量を示すものである。
【0031】
SrO(酸化ストロンチウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SrOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、SrOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、SrOの含有量が、15%超では、耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。このため、SrOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0032】
BaO(酸化バリウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。BaOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、BaOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、BaOの含有量が、15%超では耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。このため、BaOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0033】
ZnO(酸化亜鉛)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。ZnOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、ZnOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、ZnOの含有量が、15%超では耐候性が低下するおそれがある。このため、ZnOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0034】
なお、目的を損なわない範囲で、ガラスの清澄剤として、Sb2O3、Cl、F、その他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
その他、ガラスには以下の成分を含有してもよい。
【0035】
SO3(酸化硫黄)は、清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SO3の含有量が、0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。このため、SO3の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.02%以上であることがより好ましく、0.03%以上であることがさらに好ましい。また、SO3の含有量が、0.5%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。このため、SO3の含有量の上限は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく。0.1%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
SnO2(酸化スズ)は、清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SnO2の含有量が、0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。このため、SnO2の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。また、SnO2の含有量が、1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。このため、SnO2の含有量の上限は、0.8%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
TiO2(酸化チタン)は、ガラスの耐候性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。TiO2の含有量が、0.005%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、TiO2の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。また、TiO2の含有量が、1%超ではガラスが不安定になり、失透が生じるおそれがある。このため、TiO2の含有量の上限は、0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましい。
【0038】
Li2O(酸化リチウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。Li2Oの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、Li2Oの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、Li2Oの含有量が、15%超では耐候性が低下するおそれがある。このため、Li2Oの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0039】
また、ガラスG1には、ガラスを着色する目的で、着色成分として、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Er、Sn、Ce、Pr、Eu、Nd、Agの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分を、酸化物基準のモル百分率表示で、0.1〜7%含有してもよい。なお、この含有量は、複数の着色成分を用いた場合は、それらの合計量を示すものである。
【0040】
これら着色成分は、ガラスG1に対し所望の色を着ける成分であり、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスを得るために用いる。ガラス中の着色成分の含有量が、0.1%未満であると、十分な厚みを備えたガラスであっても遮光性が得られず、光がガラスを透過するおそれがある。このため、着色成分の含有量は、好ましくは、0.5%以上、典型的には1%以上である。また、着色成分の含有量が、7%を超えるとガラスが不安定となるおそれがある。このため、着色成分の含有量は、好ましくは、6.5%以下、典型的には6%以下である。一体化ガラス1は、用いられる形状等により厚さが異なるが、電子機器内部の光がガラスを透過しないよう、厚さに応じてガラスG1中の着色成分の含有量が適宜選択される。
【0041】
また、ガラスG2は、透明性を備えたガラスを得るため、上記着色成分を実質的に含有しないことが好ましい。なお、実質的に含有しないとは、原料として意図して用いないことを意味しており、原料成分や製造工程から混入する不可避不純物については含有していないとみなす。
【0042】
(一体化ガラス1の成形)
図2及び図3は、黒色ガラスであるガラスG1と透明ガラスであるガラスG2とを一体化したガラスGの成形方法を説明するための図である。以下、図2及び図3を参照して、ガラスG1とガラスG2を一体化した一体化ガラス1の成形方法について説明する。
【0043】
(ガラスG1の作成:図2(a)参照)
直方体形状のガラスG1を作成する。着色成分を含むガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へノズル101から溶融状態のガラスを流し込む。その後、ガラスG1を徐冷し、固化することで直方体形状のガラスG1を得ることができる。
【0044】
(ガラスG2の作成:図2(b)参照)
円柱形状のガラスG2を作成する。ガラス原料を溶融炉で溶解した後、ダウンドロー法やベロー法にて円柱形状に成形することで、円柱形状のガラスG2を得ることができる。図2(b)に示す例では、ダウンドロー法により円柱形状のガラスG2を形成している。図2(b)に示すダウンドロー法では、先端が円形のノズル101から溶融状態のガラスを流出させ、この流出したガラスをローラ102で引くことにより円柱形状のガラスG2を形成している。徐冷炉103は、ガラスG2を所望の温度にまで徐冷する。なお、ダウンドロー法やベロー法により、ガラスG2を作成する場合、ガラスG2の側面が、火造り面となるため、その後、ガラスG2の表面(側面)の研磨加工が不要、もしくは研磨加工に必要な時間を短縮できる利点がある。
【0045】
(穴あけ工程:図3(a)参照)
次に、固化したガラスG1を型枠Cから取り出し、ガラスG1の所定の位置、例えば、電子機器が備えるCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子に対応する位置にガラスG2を嵌め込むための孔Hを形成する。図3(a)では、ドリル104による切削加工で孔Hを形成する例を示したが、他の手法を用いて孔Hを形成してもよい。なお、生産性を考慮すると、ドリル104による切削加工により形成することが好ましい。また、型枠C内にガラスG1を収容した状態のまま、ガラスG1に孔Hを形成してもよい。
【0046】
ここで、孔Hの内径とガラスG2の外径とを同じ径とすると、孔H内にガラスG2を嵌め込むことができない。しかしながら、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が形成されないようにする観点からは、孔Hの内径とガラスG2の外径とは、できる限り同じ径であることが好ましい。具体的には、孔Hの内径とガラスG2の外径との寸法公差が40μm以下であることが好ましい。
【0047】
(研磨工程)
次に、ガラスG1に形成した孔Hの内壁、及び円柱形状のガラスG2の側面を研磨する。この研磨には、例えば、グリーンカーボン(炭化ケイ素:SiC)などの研磨材を使用することができる。なお、この研磨工程では、ガラスG1及びガラスG2の互いに接する面、すなわちガラスG1に形成した孔Hの内壁及び円柱形状のガラスG2の側面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下となるように研磨することが好ましい。
【0048】
(洗浄工程)
ガラスG1及びガラスG2を洗浄し、ガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材(例えば、グリーンカーボン)や有機物(例えば、油分)を除去する。研磨材や有機物が付着していると、後述の一体化工程において、研磨材や有機物が気化する等して、ガラスG1,G2の融合面に泡として残る虞がある。一体化工程の前に、この洗浄処理を行うことで、研磨材や有機物の付着に起因する泡の発生を抑制することができる。
【0049】
(一体化工程:図3(b)参照)
次に、直方体形状のガラスG1に形成した孔H内に、円柱形状のガラスG2を嵌め込み、型枠C内へ戻す。そして、ガラスG1の孔H内にガラスG2を嵌め込んだ状態で、ガラスG1及びガラスG2を、ガラスG1及びガラスG2の軟化点以上の温度となるまで加熱して、ガラスG1,G2の当接面を融合させて一体化する。その後、ガラスG1及びガラスG2の温度を軟化点以上の温度で一定時間保持した後、徐冷する。なお、直方体形状のガラスG1を型枠C内に戻した後、ガラスG1に形成した孔H内に、円柱形状のガラスG2を嵌め込むようにしてもよい。
【0050】
なお、ガラスG1とガラスG2との間に生じる熱歪みを抑制するために、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とは、略同じであることが好ましい。例えば、透明ガラスG2に黒色の着色剤を加えて黒色ガラスG1とすれば、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とを略同一とすることができる。また、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は、0〜5×10−7/℃の範囲内であることが好ましい。
【0051】
さらに、加熱の際は、ガラスG1及びガラスG2を型枠C内に収容した状態で加熱することに留意する。ガラスG1,G2との間に隙間がある場合、この隙間が泡としてガラスG1,G2の融合面に残る虞がある。このような泡は、ガラスG1,G2の融合面の密着強度を低下させる虞があるとともに、電子機器の筐体として使用する場合の意匠性を低減させる虞がある。
【0052】
型枠Cを使用しない場合、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができない。このため、型枠Cを使用しない場合、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じやすい。この結果、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生しやすくなる虞がある。
【0053】
一方、型枠C内でガラスG1とガラスG2とを加熱して一体化する場合、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができる。特に、この実施形態では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へ溶融状態のガラスを流し込むことでガラスG1を成形しているので、型枠CとガラスG1との間には、隙間がほとんど存在しないと考えられる。
【0054】
このため、加熱時にガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。この結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス1の寸法精度を向上することができる。
【0055】
なお、上記一体化工程は、密閉容器及び真空ポンプを用いて減圧下で行うようにしてもよい。減圧することで、ガラスG1とガラスG2との隙間の圧力が低下し、この隙間を埋めようとする方向に力が働く。このため、ガラスG1及びガラスG2を加熱して一体化する際に、ガラスG1とガラスG2との間に存在する隙間が埋まり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0056】
また、減圧することにより、ガラスG1とガラスG2との隙間に存在する気体の分子数や原子数が減少するので、加熱した際にガラスG1とガラスG2との隙間に存在する気体の分子や原子がガラスG1又は/及びガラスG2に取り込まれる効果も期待できる。結果、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを抑制することができる。
【0057】
図4は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1から電子機器の筐体を形成する工程の説明図である。この第1の実施形態でガラスG1,G2とを一体化した一体化ガラス1は、円柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に所望の厚みに切断された後、所望の形状に加工され、表面を研磨加工してスマートフォン等の電子機器の筐体の一部として用いられる。以下、一体化ガラス1から電子機器の筐体を形成するまでの工程について、図4を参照して説明する。
【0058】
(切断工程:図4参照)
ガラスG1とガラスG2とを一体化した一体化ガラス1を型枠Cから取り出す。次に、円柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に一体化ガラス1を所望の厚みに切断する。図4(a)の破線は、一体化ガラス1の切断位置を示している。
【0059】
図4(b)は、図4(a)の破線位置での切断面を示す図である。図4(b)に示すように、一体化ガラス1の切断面は、矩形状のガラスG1内に円形状のガラスG2が配置された状態、すなわち、ガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞するように配置された状態となる。
【0060】
(研磨工程)
所望の厚みに切断された一体化ガラス1は、所望の形状(例えば、スマートフォン等の電子機器の筐体の形状である矩形状や長円形状)に加工される。その後、所望の厚み切断された一体化ガラス1の表面をラップ加工等により研磨する。
【0061】
(化学強化工程)
一体化ガラス1をスマートフォン等の電子機器の筐体として使用する場合、使用時の落下衝撃による破損や長期間の使用による接触傷を考慮し、高い強度が求められる。そこで一体化ガラス1の表面を研磨加工した後、化学強化処理を行う。
【0062】
化学強化処理は、例えば、ナトリウム成分を含有するガラスを380℃程度に加熱した硝酸カリ溶融塩に浸漬することで、アルカリイオンのイオン交換(ガラスの成分であるナトリウムイオン(Na+)をよりイオン半径の大きい溶融塩中のカリウムイオン(K+)とイオン交換)を行い、ガラス表面に圧縮応力を形成する方法であり、一体化ガラス1に高い強度を付与することができる。
【0063】
図5は、筐体の一部に一体化ガラス1を使用した電子機器10の断面図である。図5では、電子機器10の一例としてスマートフォンを示した。電子機器10は、表面ガラス11と、液晶パネル12と、複数の電子部品13と、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子14と、基板15と、裏面ガラス16と、枠17とを備える。
【0064】
表面ガラス11、裏面ガラス16及び枠17は、電子機器10の筐体を形成し、該筐体の内部には、液晶パネル12と、複数の電子部品13及び撮像素子14が実装された基板15とが収容されている。
【0065】
ここで、裏面ガラス16には、上述の黒色ガラスG1と透明ガラスG2が一体化した一体化ガラス1か使用されている。この実施形態では、基板15に実装された撮像素子14に対応する位置に透明ガラスG2が配置されている。透明ガラスG2は、可視光を透過するので撮像素子14へ入射する光を遮ることがない。
【0066】
以上のように、この第1の実施形態では、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置した状態で型枠Cにより固定した後、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を容易に一体成形することができる。
【0067】
また、ガラスG1とガラスG2を一体化する際に、型枠C内にガラスG1とガラスG2を収容した状態で加熱しているので、ガラスG1が外側、すなわちガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際にガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0068】
また、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス1の寸法精度を向上することができる。
【0069】
また、ガラスG2は、予め円柱形状に成形固化したものを用いる。この際、ダウンドロー法やベロー法にて円柱形状に成形された透明ガラスG2を用いているので、ガラスG2の側面は、火造り面となる。このため、ガラスG2の表面(側面)の研磨加工が不要、もしくは研磨加工に必要な時間を短縮することができる。
【0070】
さらに、黒色ガラスG1と透明ガラスG2との間に隙間や段差が生じないので、美観、すなわち意匠性が向上する。さらに、ガラスG1とガラスG2とを一体化するために必要な工程数が少ないため製造コストを抑制することができる。
【0071】
なお、ガラスG1とガラスG2との融合面には、泡が発生しないことが好ましいが、発生したとしても、径の大きな泡よりも径の小さな泡のほうが好ましい。ガラスG1とガラスG2との融合面に存在する泡は、一体化ガラス1に曲げ応力が印加された際に、破壊の起点となるが、径の大きな泡よりも径の小さな泡のほうが、破壊の起点として機能しにくいためである。また、視認しにくく意匠性に与える影響が相対的に小さい点でも有利である。
【0072】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵された電子機器の筐体として使用できる一体化ガラス1の成形方法について説明した。この第2の実施形態では、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスとして使用できる一体化ガラス2の成形方法について説明する。なお、以下の説明では、図1〜図5で説明した構成と同一の構成には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
図6は、第2の実施形態に係る一体化ガラス2の斜視図である。第2の実施形態に係る一体化ガラス2は、組成もしくは色調の少なくとも一方が異なる第1のガラスG1(以下、ガラスG1と称する)と第2のガラスG2(以下、ガラスG2と称する)とが一体化されたガラスである。なお、ガラスG1,G2の組成については、第1の実施形態と同じであるため重複した説明を省略する。
【0074】
ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスであり、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置されている。ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスであり、四角柱形状に加工されている。なお、この第2の実施形態では、ガラスG1は黒色に着色された着色ガラスであり、ガラスG2は透明ガラスであるものとして説明する。
【0075】
図7〜図9は、黒色ガラスであるガラスG1と透明ガラスであるガラスG2とを一体化したガラスGの成形方法を説明するための図である。以下、図7〜図9を参照して、ガラスG1とガラスG2を一体化した一体化ガラス1の成形方法について説明する。
【0076】
(ガラスG1,G2の作成:図7参照)
図7に示すように、直方体形状のガラスG1と四角柱形状のガラスG2を作成する。図7(a)は、直方体形状のガラスG1の斜視図である。図7(b)は、四角柱形状のガラスG2の斜視図である。ガラスG1,G2は、図2(a)を参照して説明したように、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へノズル101から溶融状態のガラスを流し込み、徐冷により固化することで得ることができる。
【0077】
(ガラスG1の切断:図8(a)参照)
次に、ガラスG1を所定の大きさ及び厚みに切断する。ガラスG1の切断には、例えば、ダイヤモンドカッター201を使用する。
【0078】
(ガラスG1,G2の研磨)
ガラスG1の切断後、切断したガラスG1と、ガラスG2の表面(特に、当接面)を研磨する。この研磨には、例えば、グリーンカーボン(炭化ケイ素:SiC)などの研磨材を使用することができる。なお、この研磨工程では、ガラスG1とガラスG2との当接面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下となるように研磨することが好ましい。
【0079】
(洗浄工程)
ガラスG1及びガラスG2を洗浄し、ガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材(例えば、グリーンカーボン)や有機物(例えば、油分)を除去する。研磨材や有機物が付着していると、後述の一体化工程において、研磨材や有機物が気化する等して、ガラスG1,G2の融合面に泡として残る虞がある。一体化工程の前に、この洗浄処理を行うことで、研磨材や有機物の付着に起因する泡の発生を抑制することができる。
【0080】
(囲繞工程:図8(b)参照)
切断したガラスG1を、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置する。
【0081】
(一体化工程:図9参照)
次に、切断した4枚のガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞した状態、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲んだ状態で型枠C内へ収容する(図9(a)参照)。そして、ガラスG1がガラスG2を囲繞した状態で、ガラスG1及びガラスG2の軟化点以上の温度となるまで加熱し、ガラスG1,G2の接合面を融合して一体化する(図9(b)参照)。その後、ガラスG1及びガラスG2の温度を軟化点以上の温度で一定時間保持した後、徐冷する。
【0082】
なお、型枠Cの内面とガラスG1の側面との間には、できる限り隙間がないことが好ましい。型枠Cの内面とガラスG1の側面との間に隙間が少ないと、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができる。このため、加熱時にガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。
【0083】
結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス2の寸法精度を向上することができる。
【0084】
なお、ガラスG1とガラスG2との間に生じる熱歪みを抑制するために、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とは、略同じであることが好ましい。例えば、透明ガラスG2に黒色の着色剤を加えて黒色ガラスG1とすれば、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とを略同一とすることができる。なお、着色は、黒色に限られない。着色剤には、第1の実施形態で例示したものを使用することができる。また、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は、0〜5×10−7/℃の範囲内であることが好ましい。
【0085】
なお、上記一体化工程は、第1の実施形態と同様に、密閉容器及び真空ポンプを用いて減圧下で行うようにしてもよい。第1の実施形態において説明したように、減圧することで、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、第1の実施形態と同様に、直方体形状のガラスG1に、四角柱形状のガラスG2を嵌め込む孔を形成し、この孔に四角柱形状のガラスG2を嵌め込んだ後、ガラスG1を型枠Cへ収容するようにしてもよい。
【0086】
図10は、第2の実施形態に係る一体化ガラス2からカバーガラスを形成する工程の説明図である。この第2の実施形態でガラスG1,G2とを一体化した一体化ガラス2は、四角柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に所望の厚みに切断された後、所望の形状に加工され、表面を研磨加工してスマートフォン等の電子機器の筐体の一部として用いられる。以下、一体化ガラス2から電子機器のカバーガラスを形成するまでの工程について、図10を参照して説明する。
【0087】
(切断工程:図10参照)
ガラスG1とガラスG2とを一体化した一体化ガラス2を型枠Cから取り出す。次に、四角柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に一体化ガラス2を、所望の厚みに切断する。ガラスG1の切断には、例えば、ダイヤモンドカッター201を使用する(図10a参照)。
【0088】
図10(b)は、切断後の一体化ガラス2の切断面を示す図である。図10(b)に示すように、一体化ガラス2の切断面は、矩形上のガラスG1内に矩形状のガラスG2が配置された状態、すなわち、ガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞するように配置された状態となる。
【0089】
(研磨工程)
第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同様に、所望の厚み切断された一体化ガラス2は、所望の形状(例えば、スマートフォン等の電子機器の筐体の形状である矩形状や長円形状)に加工した後、切断面をラップ加工等により研磨する。
【0090】
(化学強化工程)
第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同様に、研磨後の一体化ガラス2の表面に化学強化処理を施す。化学強化処理は、第の実施形態と同じ方法で施せばよい。
【0091】
図11は、カバーガラスとして一体化ガラス2を使用した電子機器20の断面図である。図11では、電子機器20の一例としてスマートフォンを示した。電子機器20は、表面ガラス(カバーガラス)21と、液晶パネル12と、複数の電子部品13と、基板15と、裏面ガラス16と、枠17とを備える。なお、図5で説明した構成と同一の構成には、同一の符号を付している。
【0092】
表面ガラス(カバーガラス)21、裏面ガラス16及び枠17は、電子機器20の筐体を形成し、該筐体の内部には、液晶パネル12と、複数の電子部品13が実装された基板15とが収容されている。
【0093】
ここで、表面ガラス(カバーガラス)21には、上述の黒色ガラスG1と透明ガラスG2が一体化した一体化ガラス2が使用されている。この実施形態では、表示装置である液晶パネル12に対応する位置に透明ガラスG2が配置されている。
【0094】
以上のように、この第2の実施形態では、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置した状態で型枠Cにより固定した後、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を容易に一体成形することができる。
【0095】
また、ガラスG1とガラスG2を一体化する際に、型枠C内にガラスG1とガラスG2を収容した状態で加熱しているので、ガラスG1が外側、すなわちガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際にガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0096】
さらに、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス2の寸法精度を向上することができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同じである。
【実施例】
【0097】
次に、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、この実施例では、一体化するガラスG1,G2の当接面の状態(表面粗さ)とガラスG1,G2の融合面に存在する泡との関係(実施例1)、及びガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材や有機物とガラスG1,G2の融合面に存在する泡との関係(実施例2)との関係について調べた。また、実際にガラスG1,G2を一体化した一体化ガラスを作成した(実施例3)。
【0098】
なお、実施例1〜3で用いたガラスG1,G2は、下記にモル百分率表示で示す組成になるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択した。なお、SO3は、ガラス原料にボウ硝(Na2SO4)を添加し、ボウ硝分解後にガラス中に残る残存SO3であり、計算値である。ガラスG1は、SiO2 61.5%、Al2O3 8%、Na2O 12%、K2O 4%、MgO 10%、ZrO2 0.5%、SO3 0.4%、Fe2O3 3.2%、Co3O4 0.4%を含有する。また、ガラスG2は、SiO2 63.8%、Al2O3 8.3%、Na2O 12.4%、K2O 4.2%、MgO 10.4%、ZrO2 0.5%、SO3 0.4%を含有する。なお、ガラスG1,G2は、ガラスG1に含有する着色成分(Fe2O3、Co3O4)以外のガラスを構成する成分の割合は同一である。
【0099】
次に、上記ガラスG1,G2の原料混合物をそれぞれ白金製るつぼに入れ、1500〜1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入した。約0.5時間で原料が溶け落ちた後、さらに1時間溶融した。その後、溶融ガラスを脱泡し、およそ300℃に予熱した縦約50mm×横約100mm×高さ約20mmの型材に流し込んで、約1℃/分の速度で徐冷し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックから適宜の厚みになるように切断、研削した後、両面を鏡面に研磨加工し、板状のガラスG1,G2を得た。
【0100】
なお、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は1×10−7/℃程度であった。また、ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値が1.12mm−1であり、ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数はほぼゼロであった。なお、ガラスG1,G2の吸光係数は、以下のようにして測定した。まず、板状のガラスG1,G2の両面を鏡面研磨し、厚さtを測定した。次に、この板状のガラスG1,G2の分光透過率Tを分光光度計(例えば、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570)を用いて測定した。そして、吸光係数αをT=e−αtの関係式を用いて算出した。
【0101】
(実施例1)
初めに、実施例1における試料の作成について説明する。
この実施例1では、上記組成のガラスを溶融し、黒色に着色したガラス(ガラスG1)と、着色していない透明ガラス(ガラスG2)とを複数枚用意した。なお、ガラスG1,G2はどちらも板形状である。
【0102】
次に、複数枚のガラスG1の表面をそれぞれ研磨し、表面粗さの異なる複数の試料A〜Eを作成した。また、ガラスG2の表面を鏡面に研磨したものを作成した。
以下の表1に試料A〜Eの作成方法及び表面粗さの測定結果を示す。なお、表1に示した各項目「Rv」及び「Ra」の測定にはレーザー顕微鏡(キーエンス社製、形状測定レーザマイクロスコープ VK−X100)を使用した。
【0103】
【表1】
【0104】
試料A〜Eは、ガラスG1の表面を、それぞれ異なる番号(#)の研磨材で研磨した試料である。表1の項目「Rv」は、測定面のうち最も深い研磨傷の深さであり、単位はμmである。表1の項目「Ra」は、測定面の中心線平均粗さ(以下、単に表面粗さ(Ra)と記載する)であり、単位はμmである。
【0105】
表1からは、番号が低い研磨材で研磨した表面ほど、表面粗さ(Ra)が粗い(数値が高い)ことがわかる。
【0106】
次に、試料A〜Eを、鏡面研磨した板状のガラスG2上の載置し、以下の条件で加熱して一体化した。
1.室温(RT)から835度まで昇温。
2.835℃の温度で1時間保持。
3.600℃に温度を下げて1時間保持。
4.12時間かけて600℃から室温(RT)まで徐冷。
【0107】
各試料A〜EのガラスG2との融合面の状態を観察した結果を表2に示す。なお、観測は、エッジライトで融合面を照らしながら、顕微鏡を使用して目視にて行った。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に示すように、400番(#400)の研磨材で研磨した試料Aには、融合面に泡が観察された。試料Aでは、研磨面に深い傷(研磨痕)がついており、この研磨痕の位置に泡が観察された。その他の試料に関しては、泡を観察することはできなかった。
【0110】
以上、実施例1の結果からは、表面粗さ(Ra)が低いほど、観察される泡の数が少ないことがわかった。実施例1においては、試料Aにのみ泡が観察されたことから、一体化前の融合面の表面粗さ(Ra)は、0.75μm以下であることが好ましいことがわかった。また、試料Aでは、深い研磨痕の位置に泡が観察されたことから、表面粗さ(Ra)は、0.75μm以下であっても、深い傷がないことが好ましいことがわかった。具体的には、最大谷深さ(Rv)は、6μm以下であることが好ましいことがわかった。
【0111】
(実施例2)
次に、実施例2における試料の作成について説明する。
この実施例2では、上記組成のガラスを溶融し、黒色に着色したガラス(ガラスG1)と、着色していない透明ガラス(ガラスG2)とを複数枚用意した。なお、ガラスG1,G2はどちらも板状に成形した。
【0112】
次に、ガラスG1,G2の表面をそれぞれ研磨した後、研磨材(グリーンカーボン(以下、GCと記載する))及び有機物(油性マジック)を研磨面に付着させた。なお、この実施例2では、研磨材(GC)及び有機物(油性マジック)とガラスG1,G2の融合面の泡との関係を調べるため、泡が観察されなかった600番(#600)の研磨材で研磨した試料と、鏡面研磨した試料のみを使用した。
【0113】
以下の表3に試料F〜試料Hの作成方法を示す。
【表3】
【0114】
試料Fは、ガラスG1の表面を600番(#600)の研磨材で研磨した後、研磨面に研磨材(GC)を付着させた試料である。
試料Gは、ガラスG2の表面を600番(#600)の研磨材で研磨した後、研磨面に研磨材(GC)を付着させた試料である。
試料Hは、ガラスG2の表面を鏡面研磨した後、研磨面に有機物(油性マジック)を付着させた試料である。
【0115】
次に、試料F〜Hを、鏡面研磨した板状のガラスG2上の載置し、以下の条件で加熱して一体化した。
1.室温(RT)から835度まで昇温。
2.835℃の温度で1時間保持。
3.600℃に温度を下げて1時間保持。
4.12時間かけて600℃から室温(RT)まで徐冷。
【0116】
各試料F〜HのガラスG2との融合面の状態を観察した結果を表4に示す。なお、観察は、エッジライトで融合面を照らしながら、顕微鏡を使用して目視にて行った。
【0117】
【表4】
【0118】
実施例1では、泡が観察されなかった600番(#600)の研磨材で研磨した研磨面又は鏡面研磨した研磨面であるにも関わらず、表4に示すように、試料F〜Hの融合面には、研磨材(GC)又は有機物(油性マジック)が付着した周辺に多数の泡が観察された。
【0119】
これは、ガラスG1及びガラスG2の表面(研磨面)に付着している研磨材(GC)や有機物(油性マジック)が一体化工程における加熱時に、研磨材や有機物が気化(発泡)するため、ガラスG1,G2の融合面に泡が発生するものと考えられる。このことから、一体化工程の前には、ガラスG1,G2の融合面を洗浄処理し、研磨材や有機物がのこらないようにすることが重要であることがわかった。
【0120】
以上のように実施例1からは、一体化ガラスを成形する際には、ガラスG1,G2の融合させる面の表面粗さ(Ra)が、0.75μm以下であることが好ましいことがわかった。また、最大谷深さ(Rv)についても、6μm以下であることが好ましいことがわかった。さらに、実施例2からは、一体化工程の前には、ガラスG1,G2の融合面を洗浄処理し、研磨材や有機物がのこらないようにすることが重要であることがわかった。
【0121】
(実施例3)
次に、実施例3における一体化ガラスの作成について説明する。
この実施例3では、上記組成のガラス(黒色に着色したガラス(ガラスG1)、着色していない透明ガラス(ガラスG2))を用い、第1の実施形態で説明した製造方法によって一体化ガラスを作成した。
【0122】
ガラスG1の作成では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠内に溶融状態のガラスを流し込んだ後、徐冷、固化して、40mm×40mm×50mmのブロック状のガラスG1を得た。また、ガラスG2の作成では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、ダウンドロー法にて直径6mmの円柱状のガラスG2を得た。
【0123】
次いで、ブロック状のガラスG1を型枠から取り出し、ドリルによる切削加工にて、ブロック状のガラスG1の中央に直径6mmの貫通孔を形成した。なお、切削加工は、貫通孔の径が円柱形状のガラスG2の径との公差が40μmとなるように行った。次に、ブロック状のガラスG1の貫通孔の加工部に対し、研磨加工(#1000の研磨剤を使用)を行った。そして、貫通孔内に研磨剤や研磨屑が残らないよう、超音波を用いた洗浄を行った。なお、ガラスG2は、ダウンドロー法にて成形したため、外周面が鏡面であり、研磨加工は行わなかった。
【0124】
次いで、ブロック状のガラスG1を型枠内に戻し、貫通孔に円柱状のガラスG2を嵌め込んだ。そして、ガラスG1、ガラスG2及び型枠が一体となったものを電気炉に入れ、ガラスG1及びガラスG2がそれぞれの軟化点以上となるよう加熱して一体化した。次いで、一体化したガラスを型枠から取り出し、ガラスG2の長手方向に対して垂直方向に切断し、切断面を研磨した。
【0125】
上記方法で形成した一体化したガラスの外観写真を図12に示す。一体化したガラスは、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡の発生が目視においては確認されず、泡の発生が効果的に抑制されていることがわかった。また、一体化工程前後で、ガラスG2の寸法変化が生じておらず、一体化したガラスは高い寸法精度が得られることがわかった。
【0126】
(その他の実施形態)
以上のように、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、上記第1,第2の実施形態では、ガラスG1を黒色に着色したガラス、ガラスG2を透明なガラスとして説明したが、着色する色調は、黒に限られず種々の色調とすることができる。
【0127】
また、第1の実施形態では、ガラスG1,G2の形状をそれぞれ直方体形状、円柱形状としたが、他の形状としてもよい。また、第2の実施形態では、ガラスG1,G2の形状をそれぞれ直方体形状、四角柱形状としたが、他の形状としてもよい。さらに、第1の実施形態に係る一体化ガラス1をカバーガラスとして使用してもよく、第2の実施形態に係る一体化ガラス2を電子機器の筐体として使用してもよい。
【0128】
また、上記第1,第2の実施形態では、ガラスG1、G2を一体化した一体化ガラス1,2を所望の厚み、形状に切断した後、研磨加工することで電子機器の筐体やカバーガラスに加工しているが、ガラスG1、G2を一体化したガラス1,2を、加熱・軟化した後、プレス成形することで電子機器の筐体やカバーガラスを形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のガラスの成形方法は、異なる組成もしくは色調のガラスを一体に成形することができるので、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵された電子機器の筐体として使用されるガラスや、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスとして使用されるガラスの成形に好適である。
【符号の説明】
【0130】
1,2…一体化ガラス、10,20…電子機器、11…表面ガラス(カバーガラス)、12…液晶パネル、13…電子部品、14…撮像素子、15…基板、16…裏面ガラス、17…枠、101…ノズル、102…ローラ、103…徐冷炉、104…ドリル、201…ダイヤモンドカッター、C…型枠、G1,G2…ガラス、H…孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの成形方法、ガラス、一体化ガラス及び電子機器に関し、特に、異なる組成もしくは色調のガラスを一体に成形するガラスの成形方法、当該成形方法により成形したガラス及び一体化ガラス、該ガラス及び一体化ガラスを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPC等の電子機器の筐体には、加工性やコスト性の観点から、樹脂もしくは金属が主に使用されている。しかしながら、近年では、筐体に意匠性を求められることが多くなっており、筐体に着色したガラス(以下、着色ガラスと称する)を使用することが提案されている。
【0003】
また、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスには、透明ガラスが使用されている。従来のカバーガラスは、静止画像及び動画像を含む画像の表示領域以外の領域の裏面又は表面に塗料を塗布することで着色している。しかしながら、近年では、意匠性の観点から、表示領域以外の領域の裏面又は表面に塗料を塗布するのではなく、ガラスに着色剤を含有させ、カバーガラスの内部まで着色したいという要望がある。
【0004】
ガラスに着色する従来技術としては、例えば、携帯電話の裏面に搭載された透明太陽電池の裏面ガラスを好みの色に着色することが提案されている(特許文献1参照)。また、ディスプレイを備えた電子機器ではないが、腕時計の防風窓(カバーガラス)を、2種以上の異なる色調(色)のガラスで構成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
なお、特許文献2では、可視光を透過する無色透明なガラス(以下、透明ガラスと称する)と着色ガラスとを積層した積層体を加熱して融合させ、さらに、中央部が凸形状となるようにプレス成形した後、凸部を研削除去することで、透明ガラスと着色ガラスとが一体化したガラスを得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−129987号公報
【特許文献2】特開平9−218277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電子機器にはCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵されることがある。この場合、撮像素子や受光素子が可視光や赤外光を受光できるように、筐体の一部を可視光や赤外光が透過するように構成する必要がある。つまり、筐体に着色ガラスを使用した場合は、その一部を透明ガラスとする必要がある。また、着色ガラスをディスプレイのカバーガラスとして使用する場合にも、画像を表示する領域を透明ガラスとする必要がある。
【0008】
しかしながら、引用文献1で提案される方法では、筐体として使用される着色ガラスが単色であるため撮像素子や赤外線受光素子等が内蔵された電子機器の筐体や、表示装置を備えた電子機器の筐体として使用することができない。
【0009】
特許文献2に提案される方法では、着色ガラスの一部を透明ガラスとした筐体を作成することができる。しかしながら、該方法では、プレス成形する際の金型とガラスとの離型性を考慮し、金型にテーパーをつけているため透明ガラスと着色ガラスとの境界面が、成形後のガラスの主面(表面又は裏面)に対して傾斜した状態となる。
【0010】
すなわち、透明ガラスと着色ガラスとの境界付近では、透明ガラスの厚みが漸減すると着色ガラスの厚みが漸増し、透明ガラスの厚みが漸増すると着色ガラスの厚みが漸減する関係にある。このため、着色ガラスと透明ガラスとの境界がはっきりせず、透明ガラスと着色ガラスの輪郭がぼやけてしまい、撮像素子や赤外線受光素子が正常に受光できない虞がある。また、カバーガラスに使用した場合には、画像の周囲がぼやけてしまい、ユーザの視聴性が低下してしまう。
【0011】
本発明は、異なる組成又は色調のガラスを一体成形するガラスの成形方法、ガラス、一体化ガラス及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガラスの成形方法は、組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化するガラスの成形方法であって、第2のガラスを囲繞するように第1のガラスを配置する工程と、第2のガラスを囲繞した状態で第1のガラス及び第2のガラスを型枠内に収容する工程と、第1のガラス及び第2のガラスを型枠内に収容した状態で、第1のガラス及び第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる組成又は色調の第1,第2のガラスを、第2のガラスを囲繞するように第1のガラスを配置した状態で型枠内に収容した後、第1のガラス及び第2のガラスを軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスを容易に一体成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る一体化ガラスの斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図3】第1の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図4】第1の実施形態に係る一体化ガラスから筐体を形成する説明図。
【図5】第1の実施形態に係る一体化ガラスを筐体として使用した電子機器の断面図。
【図6】第2の実施形態に係る一体化ガラスの斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図8】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図9】第2の実施形態に係る一体化ガラスの成形方法の説明図。
【図10】第2の実施形態に係る一体化ガラスから筐体を形成する説明図。
【図11】第2の実施形態に係る一体化ガラスを筐体として使用した電子機器の断面図。
【図12】実施例3に係る一体化ガラスの外観写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1の斜視図である。第1の実施形態に係る一体化ガラス1は、組成もしくは色調の少なくとも一方が異なる第1のガラスG1(以下、ガラスG1と称する)と第2のガラスG2(以下、ガラスG2と称する)とが一体化されたガラスである。
【0016】
ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスであり、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置されている。ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスであり、円柱形状に加工されている。なお、この第1の実施形態では、ガラスG1は黒色に着色された着色ガラスであり、ガラスG2は透明ガラスであるものとして説明する。
【0017】
ガラスG1を波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスとすることで、一体化ガラス1のガラスG1からなる箇所に高い遮光性を備えることができる。これにより、一体化ガラス1を電子機器の筐体として用いた場合、ガラスG1からなる箇所から機器内部からの光が外部に漏れることがなく、一体化ガラス1に別途遮光手段を設ける必要がない。また、一体化ガラス1を電子機器のカバーガラスとして用いた場合、表示装置の周囲の枠部分にガラスG1からなる箇所を配置することで、表示装置と枠部分との境界が明瞭となる。ガラスG1の波長380nm〜780nmにおける吸光係数は、2mm−1以上が好ましく、3mm−1以上がより好ましく、4mm−1以上がさらに好ましい。なお、本発明において、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上とは、前記波長範囲における吸光係数の最小値が1mm−1以上であることをいう。
【0018】
また、ガラスG2を波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスとすることで、一体化ガラス1のガラスG2からなる箇所に高い透明性を備えることができる。これにより、一体化ガラス1を電子機器の筐体として用いた場合、ガラスG2からなる箇所をデジタルカメラの受光部として用いることが可能である。また、一体化ガラス1を電子機器のカバーガラスとして用いた場合、ガラスG2からなる箇所を表示装置のカバーガラスとして用いることで、表示内容を明瞭に視認することが可能となる。ガラスG2の波長380nm〜780nmにおける吸光係数は、0.8mm−1未満が好ましく、0.5mm−1未満がより好ましく、0.3mm−1未満がさらに好ましい。なお、本発明において、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満とは、前記波長範囲における吸光係数の最大値が1mm−1未満であることをいう。
【0019】
(ガラスの組成)
本実施形態のガラスG1としては、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2(二酸化ケイ素)を55〜80%、Al2O3(酸化アルミニウム)を3〜16%、B2O3(酸化ホウ素)を0〜12%、Na2O(酸化ナトリウム)を5〜16%、K2O(酸化カリウム)を0〜4%、MgO(酸化マグネシウム)を0〜15%、CaO(酸化カルシウム)を0〜3%、ΣRO(Rは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛))を0〜18%、ZrO2(酸化ジルコニウム)を0〜1%、着色成分(Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Er、Sn、Ce、Pr、Eu、Nd、Agの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分)を0.1〜7%含有するガラスを使用することが好ましい。
【0020】
また、本実施形態のガラスG2としては、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiO2(二酸化ケイ素)を55〜80%、Al2O3(酸化アルミニウム)を3〜16%、B2O3(酸化ホウ素)を0〜12%、Na2O(酸化ナトリウム)を5〜16%、K2O(酸化カリウム)を0〜4%、MgO(酸化マグネシウム)を0〜15%、CaO(酸化カルシウム)を0〜3%、ΣRO(Rは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Zn(亜鉛))を0〜18%、ZrO2(酸化ジルコニウム)を0〜1%を含有するガラスを使用することが好ましい。
【0021】
以下、上記ガラスの各組成について説明するが、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。SiO2はガラスの骨格を構成する成分であり必須の成分である。SiO2の含有量が55%未満ではガラスとしての安定性または耐候性が低下する。このため、SiO2の含有量の下限は、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。また、SiO2の含有量が80%超ではガラスの粘性が増大するため溶融性が著しく低下する。このため、SiO2の含有量の上限は、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0022】
Al2O3は、ガラスの耐候性および化学強化特性を向上させる成分であり、必須の成分である。Al2O3の含有量が、3%未満では耐候性が低下する。このため、Al2O3の含有量の下限は、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、Al2O3の含有量が16%超ではガラスの粘性が高くなり均質な溶融が困難になる。このため、Al2O3の含有量の上限は、14%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0023】
B2O3は、ガラスの耐候性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。B2O3の含有量が、4%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、B2O3の含有量の下限は、5%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、B2O3の含有量が、12%超では、揮散による脈理が発生し、歩留まりが低下するおそれがある。このため、B2O3の含有量の上限は、11%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0024】
Na2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、またイオン交換により表面圧縮応力層を形成するために必須の成分である。Na2Oの含有量が、5%未満では溶融性が悪く、またイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となる。このため、Na2Oの含有量の下限は、7%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましい。また、Na2Oの含有量が、16%超では耐候性が低下する。このため、Na2Oの含有量の上限は、15%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。
【0025】
K2Oは、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、化学強化におけるイオン交換速度を大きくする作用がある。このため、必須ではないが含有することが好ましい成分である。K2Oの含有量が、0.01%未満では溶融性向上またはイオン交換速度向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、K2Oの含有量の下限は、0.3%以上であることが好ましい。また、K2Oの含有量が、4%超では耐候性が低下する。このため、K2Oの含有量の上限は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0026】
MgOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。MgOの含有量が、3%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、MgOの含有量の下限は、4%以上であることが好ましい。また、MgOの含有量が、15%超では耐候性が低下する。このため、MgOの含有量の上限は、13%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0027】
CaOは、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。CaOの含有量が、0.01%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない。このため、CaOの含有量の下限は、0.1%以上であることが好ましい。また、CaOの含有量が、CaOが3%超では化学強化特性が低下する。このため、CaOの含有量の上限は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
【0028】
RO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)は、ガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じていずれか1種以上を含有することができる。ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られない。このため、ΣROの下限は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。また、ΣRO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn)が18%超では耐候性が低下する。このため、ΣROの上限は、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましい。なお、ΣROとは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOの合量を示すものである。
【0029】
ZrO2は、イオン交換速度を大きくする成分であり、必須ではないが必要に応じて含有してもよい。ZrO2の含有量が1%超では溶融性が悪化して未溶融物としてガラス中に残る場合が起こるおそれがある。このため、ZrO2の含有量は、1%以下とすることが好ましい。
【0030】
(SiO2+Al2O3+B2O3)/(ΣR2O+CaO+SrO+BaO)はガラスのネットワークを形成する網目状酸化物の合計量と主たる修飾酸化物の合計量との比率を示すものであり、この比が4未満であると化学強化処理後に圧痕をつけた時の破壊する確率が大きくなるおそれがある。このため、この比の下限は、4.2以上であることが好ましく、4.4以上であることがより好ましい。また、この比が、6を超えると、ガラスの粘性が増大し溶融性が低下する。このため、この比の上限は、5.5以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。なお、ΣR2Oとは、Na2O、K2O、Li2Oの合量を示すものである。
【0031】
SrO(酸化ストロンチウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SrOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、SrOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、SrOの含有量が、15%超では、耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。このため、SrOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0032】
BaO(酸化バリウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。BaOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、BaOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、BaOの含有量が、15%超では耐候性や化学強化特性が低下するおそれがある。このため、BaOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0033】
ZnO(酸化亜鉛)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。ZnOの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、ZnOの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、ZnOの含有量が、15%超では耐候性が低下するおそれがある。このため、ZnOの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0034】
なお、目的を損なわない範囲で、ガラスの清澄剤として、Sb2O3、Cl、F、その他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。
その他、ガラスには以下の成分を含有してもよい。
【0035】
SO3(酸化硫黄)は、清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SO3の含有量が、0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。このため、SO3の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.02%以上であることがより好ましく、0.03%以上であることがさらに好ましい。また、SO3の含有量が、0.5%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。このため、SO3の含有量の上限は、0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく。0.1%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
SnO2(酸化スズ)は、清澄剤として作用する成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。SnO2の含有量が、0.005%未満では期待する清澄作用が得られない。このため、SnO2の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。また、SnO2の含有量が、1%超では逆に泡の発生源となり、ガラスの溶け落ちが遅くなったり、泡個数が増加するおそれがある。このため、SnO2の含有量の上限は、0.8%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
TiO2(酸化チタン)は、ガラスの耐候性を向上させる成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。TiO2の含有量が、0.005%未満では耐候性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、TiO2の含有量の下限は、0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。また、TiO2の含有量が、1%超ではガラスが不安定になり、失透が生じるおそれがある。このため、TiO2の含有量の上限は、0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましい。
【0038】
Li2O(酸化リチウム)は、ガラスの溶融性を向上させるための成分であり、必須ではないが必要に応じて含有することができる。Li2Oの含有量が、1%未満では溶融性向上について有意な効果が得られないおそれがある。このため、Li2Oの含有量の下限は、3%以上であることが好ましく、6%以上であることがより好ましい。また、Li2Oの含有量が、15%超では耐候性が低下するおそれがある。このため、Li2Oの含有量の上限は、12%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
【0039】
また、ガラスG1には、ガラスを着色する目的で、着色成分として、Co、Mn、Fe、Ni、Cu、Cr、V、Bi、Er、Sn、Ce、Pr、Eu、Nd、Agの金属酸化物からなる群より選択された少なくとも1成分を、酸化物基準のモル百分率表示で、0.1〜7%含有してもよい。なお、この含有量は、複数の着色成分を用いた場合は、それらの合計量を示すものである。
【0040】
これら着色成分は、ガラスG1に対し所望の色を着ける成分であり、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスを得るために用いる。ガラス中の着色成分の含有量が、0.1%未満であると、十分な厚みを備えたガラスであっても遮光性が得られず、光がガラスを透過するおそれがある。このため、着色成分の含有量は、好ましくは、0.5%以上、典型的には1%以上である。また、着色成分の含有量が、7%を超えるとガラスが不安定となるおそれがある。このため、着色成分の含有量は、好ましくは、6.5%以下、典型的には6%以下である。一体化ガラス1は、用いられる形状等により厚さが異なるが、電子機器内部の光がガラスを透過しないよう、厚さに応じてガラスG1中の着色成分の含有量が適宜選択される。
【0041】
また、ガラスG2は、透明性を備えたガラスを得るため、上記着色成分を実質的に含有しないことが好ましい。なお、実質的に含有しないとは、原料として意図して用いないことを意味しており、原料成分や製造工程から混入する不可避不純物については含有していないとみなす。
【0042】
(一体化ガラス1の成形)
図2及び図3は、黒色ガラスであるガラスG1と透明ガラスであるガラスG2とを一体化したガラスGの成形方法を説明するための図である。以下、図2及び図3を参照して、ガラスG1とガラスG2を一体化した一体化ガラス1の成形方法について説明する。
【0043】
(ガラスG1の作成:図2(a)参照)
直方体形状のガラスG1を作成する。着色成分を含むガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へノズル101から溶融状態のガラスを流し込む。その後、ガラスG1を徐冷し、固化することで直方体形状のガラスG1を得ることができる。
【0044】
(ガラスG2の作成:図2(b)参照)
円柱形状のガラスG2を作成する。ガラス原料を溶融炉で溶解した後、ダウンドロー法やベロー法にて円柱形状に成形することで、円柱形状のガラスG2を得ることができる。図2(b)に示す例では、ダウンドロー法により円柱形状のガラスG2を形成している。図2(b)に示すダウンドロー法では、先端が円形のノズル101から溶融状態のガラスを流出させ、この流出したガラスをローラ102で引くことにより円柱形状のガラスG2を形成している。徐冷炉103は、ガラスG2を所望の温度にまで徐冷する。なお、ダウンドロー法やベロー法により、ガラスG2を作成する場合、ガラスG2の側面が、火造り面となるため、その後、ガラスG2の表面(側面)の研磨加工が不要、もしくは研磨加工に必要な時間を短縮できる利点がある。
【0045】
(穴あけ工程:図3(a)参照)
次に、固化したガラスG1を型枠Cから取り出し、ガラスG1の所定の位置、例えば、電子機器が備えるCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子に対応する位置にガラスG2を嵌め込むための孔Hを形成する。図3(a)では、ドリル104による切削加工で孔Hを形成する例を示したが、他の手法を用いて孔Hを形成してもよい。なお、生産性を考慮すると、ドリル104による切削加工により形成することが好ましい。また、型枠C内にガラスG1を収容した状態のまま、ガラスG1に孔Hを形成してもよい。
【0046】
ここで、孔Hの内径とガラスG2の外径とを同じ径とすると、孔H内にガラスG2を嵌め込むことができない。しかしながら、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が形成されないようにする観点からは、孔Hの内径とガラスG2の外径とは、できる限り同じ径であることが好ましい。具体的には、孔Hの内径とガラスG2の外径との寸法公差が40μm以下であることが好ましい。
【0047】
(研磨工程)
次に、ガラスG1に形成した孔Hの内壁、及び円柱形状のガラスG2の側面を研磨する。この研磨には、例えば、グリーンカーボン(炭化ケイ素:SiC)などの研磨材を使用することができる。なお、この研磨工程では、ガラスG1及びガラスG2の互いに接する面、すなわちガラスG1に形成した孔Hの内壁及び円柱形状のガラスG2の側面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下となるように研磨することが好ましい。
【0048】
(洗浄工程)
ガラスG1及びガラスG2を洗浄し、ガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材(例えば、グリーンカーボン)や有機物(例えば、油分)を除去する。研磨材や有機物が付着していると、後述の一体化工程において、研磨材や有機物が気化する等して、ガラスG1,G2の融合面に泡として残る虞がある。一体化工程の前に、この洗浄処理を行うことで、研磨材や有機物の付着に起因する泡の発生を抑制することができる。
【0049】
(一体化工程:図3(b)参照)
次に、直方体形状のガラスG1に形成した孔H内に、円柱形状のガラスG2を嵌め込み、型枠C内へ戻す。そして、ガラスG1の孔H内にガラスG2を嵌め込んだ状態で、ガラスG1及びガラスG2を、ガラスG1及びガラスG2の軟化点以上の温度となるまで加熱して、ガラスG1,G2の当接面を融合させて一体化する。その後、ガラスG1及びガラスG2の温度を軟化点以上の温度で一定時間保持した後、徐冷する。なお、直方体形状のガラスG1を型枠C内に戻した後、ガラスG1に形成した孔H内に、円柱形状のガラスG2を嵌め込むようにしてもよい。
【0050】
なお、ガラスG1とガラスG2との間に生じる熱歪みを抑制するために、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とは、略同じであることが好ましい。例えば、透明ガラスG2に黒色の着色剤を加えて黒色ガラスG1とすれば、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とを略同一とすることができる。また、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は、0〜5×10−7/℃の範囲内であることが好ましい。
【0051】
さらに、加熱の際は、ガラスG1及びガラスG2を型枠C内に収容した状態で加熱することに留意する。ガラスG1,G2との間に隙間がある場合、この隙間が泡としてガラスG1,G2の融合面に残る虞がある。このような泡は、ガラスG1,G2の融合面の密着強度を低下させる虞があるとともに、電子機器の筐体として使用する場合の意匠性を低減させる虞がある。
【0052】
型枠Cを使用しない場合、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができない。このため、型枠Cを使用しない場合、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じやすい。この結果、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生しやすくなる虞がある。
【0053】
一方、型枠C内でガラスG1とガラスG2とを加熱して一体化する場合、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができる。特に、この実施形態では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へ溶融状態のガラスを流し込むことでガラスG1を成形しているので、型枠CとガラスG1との間には、隙間がほとんど存在しないと考えられる。
【0054】
このため、加熱時にガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。この結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス1の寸法精度を向上することができる。
【0055】
なお、上記一体化工程は、密閉容器及び真空ポンプを用いて減圧下で行うようにしてもよい。減圧することで、ガラスG1とガラスG2との隙間の圧力が低下し、この隙間を埋めようとする方向に力が働く。このため、ガラスG1及びガラスG2を加熱して一体化する際に、ガラスG1とガラスG2との間に存在する隙間が埋まり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0056】
また、減圧することにより、ガラスG1とガラスG2との隙間に存在する気体の分子数や原子数が減少するので、加熱した際にガラスG1とガラスG2との隙間に存在する気体の分子や原子がガラスG1又は/及びガラスG2に取り込まれる効果も期待できる。結果、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを抑制することができる。
【0057】
図4は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1から電子機器の筐体を形成する工程の説明図である。この第1の実施形態でガラスG1,G2とを一体化した一体化ガラス1は、円柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に所望の厚みに切断された後、所望の形状に加工され、表面を研磨加工してスマートフォン等の電子機器の筐体の一部として用いられる。以下、一体化ガラス1から電子機器の筐体を形成するまでの工程について、図4を参照して説明する。
【0058】
(切断工程:図4参照)
ガラスG1とガラスG2とを一体化した一体化ガラス1を型枠Cから取り出す。次に、円柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に一体化ガラス1を所望の厚みに切断する。図4(a)の破線は、一体化ガラス1の切断位置を示している。
【0059】
図4(b)は、図4(a)の破線位置での切断面を示す図である。図4(b)に示すように、一体化ガラス1の切断面は、矩形状のガラスG1内に円形状のガラスG2が配置された状態、すなわち、ガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞するように配置された状態となる。
【0060】
(研磨工程)
所望の厚みに切断された一体化ガラス1は、所望の形状(例えば、スマートフォン等の電子機器の筐体の形状である矩形状や長円形状)に加工される。その後、所望の厚み切断された一体化ガラス1の表面をラップ加工等により研磨する。
【0061】
(化学強化工程)
一体化ガラス1をスマートフォン等の電子機器の筐体として使用する場合、使用時の落下衝撃による破損や長期間の使用による接触傷を考慮し、高い強度が求められる。そこで一体化ガラス1の表面を研磨加工した後、化学強化処理を行う。
【0062】
化学強化処理は、例えば、ナトリウム成分を含有するガラスを380℃程度に加熱した硝酸カリ溶融塩に浸漬することで、アルカリイオンのイオン交換(ガラスの成分であるナトリウムイオン(Na+)をよりイオン半径の大きい溶融塩中のカリウムイオン(K+)とイオン交換)を行い、ガラス表面に圧縮応力を形成する方法であり、一体化ガラス1に高い強度を付与することができる。
【0063】
図5は、筐体の一部に一体化ガラス1を使用した電子機器10の断面図である。図5では、電子機器10の一例としてスマートフォンを示した。電子機器10は、表面ガラス11と、液晶パネル12と、複数の電子部品13と、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子14と、基板15と、裏面ガラス16と、枠17とを備える。
【0064】
表面ガラス11、裏面ガラス16及び枠17は、電子機器10の筐体を形成し、該筐体の内部には、液晶パネル12と、複数の電子部品13及び撮像素子14が実装された基板15とが収容されている。
【0065】
ここで、裏面ガラス16には、上述の黒色ガラスG1と透明ガラスG2が一体化した一体化ガラス1か使用されている。この実施形態では、基板15に実装された撮像素子14に対応する位置に透明ガラスG2が配置されている。透明ガラスG2は、可視光を透過するので撮像素子14へ入射する光を遮ることがない。
【0066】
以上のように、この第1の実施形態では、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置した状態で型枠Cにより固定した後、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を容易に一体成形することができる。
【0067】
また、ガラスG1とガラスG2を一体化する際に、型枠C内にガラスG1とガラスG2を収容した状態で加熱しているので、ガラスG1が外側、すなわちガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際にガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0068】
また、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス1の寸法精度を向上することができる。
【0069】
また、ガラスG2は、予め円柱形状に成形固化したものを用いる。この際、ダウンドロー法やベロー法にて円柱形状に成形された透明ガラスG2を用いているので、ガラスG2の側面は、火造り面となる。このため、ガラスG2の表面(側面)の研磨加工が不要、もしくは研磨加工に必要な時間を短縮することができる。
【0070】
さらに、黒色ガラスG1と透明ガラスG2との間に隙間や段差が生じないので、美観、すなわち意匠性が向上する。さらに、ガラスG1とガラスG2とを一体化するために必要な工程数が少ないため製造コストを抑制することができる。
【0071】
なお、ガラスG1とガラスG2との融合面には、泡が発生しないことが好ましいが、発生したとしても、径の大きな泡よりも径の小さな泡のほうが好ましい。ガラスG1とガラスG2との融合面に存在する泡は、一体化ガラス1に曲げ応力が印加された際に、破壊の起点となるが、径の大きな泡よりも径の小さな泡のほうが、破壊の起点として機能しにくいためである。また、視認しにくく意匠性に与える影響が相対的に小さい点でも有利である。
【0072】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵された電子機器の筐体として使用できる一体化ガラス1の成形方法について説明した。この第2の実施形態では、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスとして使用できる一体化ガラス2の成形方法について説明する。なお、以下の説明では、図1〜図5で説明した構成と同一の構成には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0073】
図6は、第2の実施形態に係る一体化ガラス2の斜視図である。第2の実施形態に係る一体化ガラス2は、組成もしくは色調の少なくとも一方が異なる第1のガラスG1(以下、ガラスG1と称する)と第2のガラスG2(以下、ガラスG2と称する)とが一体化されたガラスである。なお、ガラスG1,G2の組成については、第1の実施形態と同じであるため重複した説明を省略する。
【0074】
ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上のガラスであり、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置されている。ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満のガラスであり、四角柱形状に加工されている。なお、この第2の実施形態では、ガラスG1は黒色に着色された着色ガラスであり、ガラスG2は透明ガラスであるものとして説明する。
【0075】
図7〜図9は、黒色ガラスであるガラスG1と透明ガラスであるガラスG2とを一体化したガラスGの成形方法を説明するための図である。以下、図7〜図9を参照して、ガラスG1とガラスG2を一体化した一体化ガラス1の成形方法について説明する。
【0076】
(ガラスG1,G2の作成:図7参照)
図7に示すように、直方体形状のガラスG1と四角柱形状のガラスG2を作成する。図7(a)は、直方体形状のガラスG1の斜視図である。図7(b)は、四角柱形状のガラスG2の斜視図である。ガラスG1,G2は、図2(a)を参照して説明したように、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠C内へノズル101から溶融状態のガラスを流し込み、徐冷により固化することで得ることができる。
【0077】
(ガラスG1の切断:図8(a)参照)
次に、ガラスG1を所定の大きさ及び厚みに切断する。ガラスG1の切断には、例えば、ダイヤモンドカッター201を使用する。
【0078】
(ガラスG1,G2の研磨)
ガラスG1の切断後、切断したガラスG1と、ガラスG2の表面(特に、当接面)を研磨する。この研磨には、例えば、グリーンカーボン(炭化ケイ素:SiC)などの研磨材を使用することができる。なお、この研磨工程では、ガラスG1とガラスG2との当接面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下となるように研磨することが好ましい。
【0079】
(洗浄工程)
ガラスG1及びガラスG2を洗浄し、ガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材(例えば、グリーンカーボン)や有機物(例えば、油分)を除去する。研磨材や有機物が付着していると、後述の一体化工程において、研磨材や有機物が気化する等して、ガラスG1,G2の融合面に泡として残る虞がある。一体化工程の前に、この洗浄処理を行うことで、研磨材や有機物の付着に起因する泡の発生を抑制することができる。
【0080】
(囲繞工程:図8(b)参照)
切断したガラスG1を、ガラスG2の側面を囲繞するように、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲むように配置する。
【0081】
(一体化工程:図9参照)
次に、切断した4枚のガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞した状態、すなわち、ガラスG2の側面を取り囲んだ状態で型枠C内へ収容する(図9(a)参照)。そして、ガラスG1がガラスG2を囲繞した状態で、ガラスG1及びガラスG2の軟化点以上の温度となるまで加熱し、ガラスG1,G2の接合面を融合して一体化する(図9(b)参照)。その後、ガラスG1及びガラスG2の温度を軟化点以上の温度で一定時間保持した後、徐冷する。
【0082】
なお、型枠Cの内面とガラスG1の側面との間には、できる限り隙間がないことが好ましい。型枠Cの内面とガラスG1の側面との間に隙間が少ないと、ガラスG1,G2を軟化点以上の温度に加熱した際にガラスG1がガラスG2から離れる方向、つまりガラスG1が外側に向かって移動することを規制することができる。このため、加熱時にガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。
【0083】
結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス2の寸法精度を向上することができる。
【0084】
なお、ガラスG1とガラスG2との間に生じる熱歪みを抑制するために、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とは、略同じであることが好ましい。例えば、透明ガラスG2に黒色の着色剤を加えて黒色ガラスG1とすれば、ガラスG1の熱膨張係数とガラスG2の熱膨張係数とを略同一とすることができる。なお、着色は、黒色に限られない。着色剤には、第1の実施形態で例示したものを使用することができる。また、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は、0〜5×10−7/℃の範囲内であることが好ましい。
【0085】
なお、上記一体化工程は、第1の実施形態と同様に、密閉容器及び真空ポンプを用いて減圧下で行うようにしてもよい。第1の実施形態において説明したように、減圧することで、ガラスG1とガラスG2の一体化の際に、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。また、第1の実施形態と同様に、直方体形状のガラスG1に、四角柱形状のガラスG2を嵌め込む孔を形成し、この孔に四角柱形状のガラスG2を嵌め込んだ後、ガラスG1を型枠Cへ収容するようにしてもよい。
【0086】
図10は、第2の実施形態に係る一体化ガラス2からカバーガラスを形成する工程の説明図である。この第2の実施形態でガラスG1,G2とを一体化した一体化ガラス2は、四角柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に所望の厚みに切断された後、所望の形状に加工され、表面を研磨加工してスマートフォン等の電子機器の筐体の一部として用いられる。以下、一体化ガラス2から電子機器のカバーガラスを形成するまでの工程について、図10を参照して説明する。
【0087】
(切断工程:図10参照)
ガラスG1とガラスG2とを一体化した一体化ガラス2を型枠Cから取り出す。次に、四角柱形状のガラスG2の長手方向に対して垂直に一体化ガラス2を、所望の厚みに切断する。ガラスG1の切断には、例えば、ダイヤモンドカッター201を使用する(図10a参照)。
【0088】
図10(b)は、切断後の一体化ガラス2の切断面を示す図である。図10(b)に示すように、一体化ガラス2の切断面は、矩形上のガラスG1内に矩形状のガラスG2が配置された状態、すなわち、ガラスG1が、ガラスG2の側面を囲繞するように配置された状態となる。
【0089】
(研磨工程)
第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同様に、所望の厚み切断された一体化ガラス2は、所望の形状(例えば、スマートフォン等の電子機器の筐体の形状である矩形状や長円形状)に加工した後、切断面をラップ加工等により研磨する。
【0090】
(化学強化工程)
第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同様に、研磨後の一体化ガラス2の表面に化学強化処理を施す。化学強化処理は、第の実施形態と同じ方法で施せばよい。
【0091】
図11は、カバーガラスとして一体化ガラス2を使用した電子機器20の断面図である。図11では、電子機器20の一例としてスマートフォンを示した。電子機器20は、表面ガラス(カバーガラス)21と、液晶パネル12と、複数の電子部品13と、基板15と、裏面ガラス16と、枠17とを備える。なお、図5で説明した構成と同一の構成には、同一の符号を付している。
【0092】
表面ガラス(カバーガラス)21、裏面ガラス16及び枠17は、電子機器20の筐体を形成し、該筐体の内部には、液晶パネル12と、複数の電子部品13が実装された基板15とが収容されている。
【0093】
ここで、表面ガラス(カバーガラス)21には、上述の黒色ガラスG1と透明ガラスG2が一体化した一体化ガラス2が使用されている。この実施形態では、表示装置である液晶パネル12に対応する位置に透明ガラスG2が配置されている。
【0094】
以上のように、この第2の実施形態では、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を、ガラスG2を囲繞するようにガラスG1を配置した状態で型枠Cにより固定した後、ガラスG1及びガラスG2を軟化点以上に加熱して一体化しているので、異なる組成又は色調のガラスG1,G2を容易に一体成形することができる。
【0095】
また、ガラスG1とガラスG2を一体化する際に、型枠C内にガラスG1とガラスG2を収容した状態で加熱しているので、ガラスG1が外側、すなわちガラスG1がガラスG2から離れる方向に移動することを効果的に抑制することができる。結果、ガラスG1とガラスG2との間に隙間が生じにくくなり、ガラスG1とガラスG2の一体化の際にガラスG1とガラスG2との融合面に泡が発生することを効果的に抑制することができる。
【0096】
さらに、型枠C内にガラスG1及びガラスG2を収容した状態で加熱するので、ガラスG1が変形することを抑制できる。このため、ガラスG1及びガラスG2を一体化した一体化ガラス2の寸法精度を向上することができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る一体化ガラス1と同じである。
【実施例】
【0097】
次に、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、この実施例では、一体化するガラスG1,G2の当接面の状態(表面粗さ)とガラスG1,G2の融合面に存在する泡との関係(実施例1)、及びガラスG1及びガラスG2の表面に付着している研磨材や有機物とガラスG1,G2の融合面に存在する泡との関係(実施例2)との関係について調べた。また、実際にガラスG1,G2を一体化した一体化ガラスを作成した(実施例3)。
【0098】
なお、実施例1〜3で用いたガラスG1,G2は、下記にモル百分率表示で示す組成になるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択した。なお、SO3は、ガラス原料にボウ硝(Na2SO4)を添加し、ボウ硝分解後にガラス中に残る残存SO3であり、計算値である。ガラスG1は、SiO2 61.5%、Al2O3 8%、Na2O 12%、K2O 4%、MgO 10%、ZrO2 0.5%、SO3 0.4%、Fe2O3 3.2%、Co3O4 0.4%を含有する。また、ガラスG2は、SiO2 63.8%、Al2O3 8.3%、Na2O 12.4%、K2O 4.2%、MgO 10.4%、ZrO2 0.5%、SO3 0.4%を含有する。なお、ガラスG1,G2は、ガラスG1に含有する着色成分(Fe2O3、Co3O4)以外のガラスを構成する成分の割合は同一である。
【0099】
次に、上記ガラスG1,G2の原料混合物をそれぞれ白金製るつぼに入れ、1500〜1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入した。約0.5時間で原料が溶け落ちた後、さらに1時間溶融した。その後、溶融ガラスを脱泡し、およそ300℃に予熱した縦約50mm×横約100mm×高さ約20mmの型材に流し込んで、約1℃/分の速度で徐冷し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックから適宜の厚みになるように切断、研削した後、両面を鏡面に研磨加工し、板状のガラスG1,G2を得た。
【0100】
なお、25℃〜300℃の温度範囲におけるガラスG1とガラスG2との熱膨張係数の差は1×10−7/℃程度であった。また、ガラスG1は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数の最小値が1.12mm−1であり、ガラスG2は、波長380nm〜780nmにおける吸光係数はほぼゼロであった。なお、ガラスG1,G2の吸光係数は、以下のようにして測定した。まず、板状のガラスG1,G2の両面を鏡面研磨し、厚さtを測定した。次に、この板状のガラスG1,G2の分光透過率Tを分光光度計(例えば、日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V−570)を用いて測定した。そして、吸光係数αをT=e−αtの関係式を用いて算出した。
【0101】
(実施例1)
初めに、実施例1における試料の作成について説明する。
この実施例1では、上記組成のガラスを溶融し、黒色に着色したガラス(ガラスG1)と、着色していない透明ガラス(ガラスG2)とを複数枚用意した。なお、ガラスG1,G2はどちらも板形状である。
【0102】
次に、複数枚のガラスG1の表面をそれぞれ研磨し、表面粗さの異なる複数の試料A〜Eを作成した。また、ガラスG2の表面を鏡面に研磨したものを作成した。
以下の表1に試料A〜Eの作成方法及び表面粗さの測定結果を示す。なお、表1に示した各項目「Rv」及び「Ra」の測定にはレーザー顕微鏡(キーエンス社製、形状測定レーザマイクロスコープ VK−X100)を使用した。
【0103】
【表1】
【0104】
試料A〜Eは、ガラスG1の表面を、それぞれ異なる番号(#)の研磨材で研磨した試料である。表1の項目「Rv」は、測定面のうち最も深い研磨傷の深さであり、単位はμmである。表1の項目「Ra」は、測定面の中心線平均粗さ(以下、単に表面粗さ(Ra)と記載する)であり、単位はμmである。
【0105】
表1からは、番号が低い研磨材で研磨した表面ほど、表面粗さ(Ra)が粗い(数値が高い)ことがわかる。
【0106】
次に、試料A〜Eを、鏡面研磨した板状のガラスG2上の載置し、以下の条件で加熱して一体化した。
1.室温(RT)から835度まで昇温。
2.835℃の温度で1時間保持。
3.600℃に温度を下げて1時間保持。
4.12時間かけて600℃から室温(RT)まで徐冷。
【0107】
各試料A〜EのガラスG2との融合面の状態を観察した結果を表2に示す。なお、観測は、エッジライトで融合面を照らしながら、顕微鏡を使用して目視にて行った。
【0108】
【表2】
【0109】
表2に示すように、400番(#400)の研磨材で研磨した試料Aには、融合面に泡が観察された。試料Aでは、研磨面に深い傷(研磨痕)がついており、この研磨痕の位置に泡が観察された。その他の試料に関しては、泡を観察することはできなかった。
【0110】
以上、実施例1の結果からは、表面粗さ(Ra)が低いほど、観察される泡の数が少ないことがわかった。実施例1においては、試料Aにのみ泡が観察されたことから、一体化前の融合面の表面粗さ(Ra)は、0.75μm以下であることが好ましいことがわかった。また、試料Aでは、深い研磨痕の位置に泡が観察されたことから、表面粗さ(Ra)は、0.75μm以下であっても、深い傷がないことが好ましいことがわかった。具体的には、最大谷深さ(Rv)は、6μm以下であることが好ましいことがわかった。
【0111】
(実施例2)
次に、実施例2における試料の作成について説明する。
この実施例2では、上記組成のガラスを溶融し、黒色に着色したガラス(ガラスG1)と、着色していない透明ガラス(ガラスG2)とを複数枚用意した。なお、ガラスG1,G2はどちらも板状に成形した。
【0112】
次に、ガラスG1,G2の表面をそれぞれ研磨した後、研磨材(グリーンカーボン(以下、GCと記載する))及び有機物(油性マジック)を研磨面に付着させた。なお、この実施例2では、研磨材(GC)及び有機物(油性マジック)とガラスG1,G2の融合面の泡との関係を調べるため、泡が観察されなかった600番(#600)の研磨材で研磨した試料と、鏡面研磨した試料のみを使用した。
【0113】
以下の表3に試料F〜試料Hの作成方法を示す。
【表3】
【0114】
試料Fは、ガラスG1の表面を600番(#600)の研磨材で研磨した後、研磨面に研磨材(GC)を付着させた試料である。
試料Gは、ガラスG2の表面を600番(#600)の研磨材で研磨した後、研磨面に研磨材(GC)を付着させた試料である。
試料Hは、ガラスG2の表面を鏡面研磨した後、研磨面に有機物(油性マジック)を付着させた試料である。
【0115】
次に、試料F〜Hを、鏡面研磨した板状のガラスG2上の載置し、以下の条件で加熱して一体化した。
1.室温(RT)から835度まで昇温。
2.835℃の温度で1時間保持。
3.600℃に温度を下げて1時間保持。
4.12時間かけて600℃から室温(RT)まで徐冷。
【0116】
各試料F〜HのガラスG2との融合面の状態を観察した結果を表4に示す。なお、観察は、エッジライトで融合面を照らしながら、顕微鏡を使用して目視にて行った。
【0117】
【表4】
【0118】
実施例1では、泡が観察されなかった600番(#600)の研磨材で研磨した研磨面又は鏡面研磨した研磨面であるにも関わらず、表4に示すように、試料F〜Hの融合面には、研磨材(GC)又は有機物(油性マジック)が付着した周辺に多数の泡が観察された。
【0119】
これは、ガラスG1及びガラスG2の表面(研磨面)に付着している研磨材(GC)や有機物(油性マジック)が一体化工程における加熱時に、研磨材や有機物が気化(発泡)するため、ガラスG1,G2の融合面に泡が発生するものと考えられる。このことから、一体化工程の前には、ガラスG1,G2の融合面を洗浄処理し、研磨材や有機物がのこらないようにすることが重要であることがわかった。
【0120】
以上のように実施例1からは、一体化ガラスを成形する際には、ガラスG1,G2の融合させる面の表面粗さ(Ra)が、0.75μm以下であることが好ましいことがわかった。また、最大谷深さ(Rv)についても、6μm以下であることが好ましいことがわかった。さらに、実施例2からは、一体化工程の前には、ガラスG1,G2の融合面を洗浄処理し、研磨材や有機物がのこらないようにすることが重要であることがわかった。
【0121】
(実施例3)
次に、実施例3における一体化ガラスの作成について説明する。
この実施例3では、上記組成のガラス(黒色に着色したガラス(ガラスG1)、着色していない透明ガラス(ガラスG2))を用い、第1の実施形態で説明した製造方法によって一体化ガラスを作成した。
【0122】
ガラスG1の作成では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、型枠内に溶融状態のガラスを流し込んだ後、徐冷、固化して、40mm×40mm×50mmのブロック状のガラスG1を得た。また、ガラスG2の作成では、ガラス原料を溶融炉で溶解した後、ダウンドロー法にて直径6mmの円柱状のガラスG2を得た。
【0123】
次いで、ブロック状のガラスG1を型枠から取り出し、ドリルによる切削加工にて、ブロック状のガラスG1の中央に直径6mmの貫通孔を形成した。なお、切削加工は、貫通孔の径が円柱形状のガラスG2の径との公差が40μmとなるように行った。次に、ブロック状のガラスG1の貫通孔の加工部に対し、研磨加工(#1000の研磨剤を使用)を行った。そして、貫通孔内に研磨剤や研磨屑が残らないよう、超音波を用いた洗浄を行った。なお、ガラスG2は、ダウンドロー法にて成形したため、外周面が鏡面であり、研磨加工は行わなかった。
【0124】
次いで、ブロック状のガラスG1を型枠内に戻し、貫通孔に円柱状のガラスG2を嵌め込んだ。そして、ガラスG1、ガラスG2及び型枠が一体となったものを電気炉に入れ、ガラスG1及びガラスG2がそれぞれの軟化点以上となるよう加熱して一体化した。次いで、一体化したガラスを型枠から取り出し、ガラスG2の長手方向に対して垂直方向に切断し、切断面を研磨した。
【0125】
上記方法で形成した一体化したガラスの外観写真を図12に示す。一体化したガラスは、ガラスG1とガラスG2との融合面に泡の発生が目視においては確認されず、泡の発生が効果的に抑制されていることがわかった。また、一体化工程前後で、ガラスG2の寸法変化が生じておらず、一体化したガラスは高い寸法精度が得られることがわかった。
【0126】
(その他の実施形態)
以上のように、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、上記第1,第2の実施形態では、ガラスG1を黒色に着色したガラス、ガラスG2を透明なガラスとして説明したが、着色する色調は、黒に限られず種々の色調とすることができる。
【0127】
また、第1の実施形態では、ガラスG1,G2の形状をそれぞれ直方体形状、円柱形状としたが、他の形状としてもよい。また、第2の実施形態では、ガラスG1,G2の形状をそれぞれ直方体形状、四角柱形状としたが、他の形状としてもよい。さらに、第1の実施形態に係る一体化ガラス1をカバーガラスとして使用してもよく、第2の実施形態に係る一体化ガラス2を電子機器の筐体として使用してもよい。
【0128】
また、上記第1,第2の実施形態では、ガラスG1、G2を一体化した一体化ガラス1,2を所望の厚み、形状に切断した後、研磨加工することで電子機器の筐体やカバーガラスに加工しているが、ガラスG1、G2を一体化したガラス1,2を、加熱・軟化した後、プレス成形することで電子機器の筐体やカバーガラスを形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のガラスの成形方法は、異なる組成もしくは色調のガラスを一体に成形することができるので、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子やリモートコントロール用の赤外線受光素子が内蔵された電子機器の筐体として使用されるガラスや、ディスプレイ(表示装置)を備えた電子機器のカバーガラスとして使用されるガラスの成形に好適である。
【符号の説明】
【0130】
1,2…一体化ガラス、10,20…電子機器、11…表面ガラス(カバーガラス)、12…液晶パネル、13…電子部品、14…撮像素子、15…基板、16…裏面ガラス、17…枠、101…ノズル、102…ローラ、103…徐冷炉、104…ドリル、201…ダイヤモンドカッター、C…型枠、G1,G2…ガラス、H…孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化するガラスの成形方法であって、
前記第2のガラスを囲繞するように前記第1のガラスを配置する工程と、
前記第2のガラスを囲繞した状態で前記第1のガラス及び前記第2のガラスを型枠内に収容する工程と、
前記第1のガラス及び前記第2のガラスを型枠内に収容した状態で、前記第1のガラス及び前記第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程と、
を有することを特徴とするガラスの成形方法。
【請求項2】
前記一体化した前記第1のガラス及び前記第2のガラスを所望の厚みに切断する工程と、
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの切断面を研磨する工程と、
研磨した前記第1のガラス及び前記第2のガラスの表面を化学強化処理する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のガラスの成形方法。
【請求項3】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの互いに接する面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下であることを特徴する請求項1又は請求項2に記載のガラスの成形方法。
【請求項4】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程は、減圧下において行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項5】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの熱膨張係数が略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項6】
前記第2のガラスの形状が円柱形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項7】
前記第2のガラスの形状が四角柱形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項8】
前記第2のガラスを囲繞するように前記第1のガラスを配置する工程は、
四角柱形状の前記第2のガラスの外周面を取り囲むように板形状の前記第1のガラスを配置することを特徴とする請求項7に記載のガラスの成形方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のガラスの成形方法で成形されたガラス。
【請求項10】
請求項9に記載のガラスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
前記ガラスは、前記電子機器の筐体として使用されることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記ガラスは、前記電子機器のカバーガラスとして使用されることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項13】
組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化した一体化ガラスであって、
前記第2のガラスが、前記第1のガラスで囲繞されていることを特徴とする一体化ガラス。
【請求項14】
前記第1のガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上であり、前記第2のガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満であることを特徴する請求項13に記載の一体化ガラス。
【請求項15】
前記第1,第2のガラスの熱膨張係数の差が、25℃〜300℃の温度範囲において、0〜5×10−7/℃の範囲内であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の一体化ガラス。
【請求項16】
前記第1のガラスは、前記第2のガラスに着色剤を含有させたものであることを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の一体化ガラス。
【請求項17】
請求項13乃至請求項16のいずれか1項に記載の一体化ガラスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化するガラスの成形方法であって、
前記第2のガラスを囲繞するように前記第1のガラスを配置する工程と、
前記第2のガラスを囲繞した状態で前記第1のガラス及び前記第2のガラスを型枠内に収容する工程と、
前記第1のガラス及び前記第2のガラスを型枠内に収容した状態で、前記第1のガラス及び前記第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程と、
を有することを特徴とするガラスの成形方法。
【請求項2】
前記一体化した前記第1のガラス及び前記第2のガラスを所望の厚みに切断する工程と、
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの切断面を研磨する工程と、
研磨した前記第1のガラス及び前記第2のガラスの表面を化学強化処理する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のガラスの成形方法。
【請求項3】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの互いに接する面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で、0.75μm以下であることを特徴する請求項1又は請求項2に記載のガラスの成形方法。
【請求項4】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスを軟化点以上に加熱する工程は、減圧下において行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項5】
前記第1のガラス及び前記第2のガラスの熱膨張係数が略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項6】
前記第2のガラスの形状が円柱形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項7】
前記第2のガラスの形状が四角柱形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガラスの成形方法。
【請求項8】
前記第2のガラスを囲繞するように前記第1のガラスを配置する工程は、
四角柱形状の前記第2のガラスの外周面を取り囲むように板形状の前記第1のガラスを配置することを特徴とする請求項7に記載のガラスの成形方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のガラスの成形方法で成形されたガラス。
【請求項10】
請求項9に記載のガラスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
前記ガラスは、前記電子機器の筐体として使用されることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記ガラスは、前記電子機器のカバーガラスとして使用されることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項13】
組成又は色調の少なくとも一方が異なる第1,第2のガラスを一体化した一体化ガラスであって、
前記第2のガラスが、前記第1のガラスで囲繞されていることを特徴とする一体化ガラス。
【請求項14】
前記第1のガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1以上であり、前記第2のガラスは、波長380nm〜780nmにおける吸光係数が1mm−1未満であることを特徴する請求項13に記載の一体化ガラス。
【請求項15】
前記第1,第2のガラスの熱膨張係数の差が、25℃〜300℃の温度範囲において、0〜5×10−7/℃の範囲内であることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の一体化ガラス。
【請求項16】
前記第1のガラスは、前記第2のガラスに着色剤を含有させたものであることを特徴とする請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の一体化ガラス。
【請求項17】
請求項13乃至請求項16のいずれか1項に記載の一体化ガラスを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−60336(P2013−60336A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200664(P2011−200664)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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