説明

ガラス基板積層体用ワークホルダ、及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法、及びこの製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板

【課題】本発明はガラス基板積層体を保持する作業を効率良く行えると共に、ガラス基板積層体の研磨を高精度に行えることを課題とする。
【解決手段】ワークホルダ10は、ホルダ本体50と、上側保持部60とを有する。ホルダ本体50は、下側保持部20の上部に円筒状保持部40を起立させるように組み合わせてなる。下側保持部20及び円筒状保持部40は、複数のボルト23、80により締結される。円筒状保持部40は、第1、第2外周保持部材40A、40Bを組み合わせて円筒形状を形成するように構成されている。上側保持部60は、円筒状保持部40の上部に取付けられ、円筒状保持部40の内部に収納されたガラス基板積層体130を上方から押圧して保持する。本発明は、ガラス基板積層体130の基準となるセンタリングシャフトとガラス基板が接触しないため、ガラス基板の内周端面にキズを発生させることなく、破壊強度に優れるガラス基板を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のガラス基板が積層されたガラス基板積層体の径方向の端面を研磨する際のガラス基板積層体を安定的に保持するガラス基板積層体用ワークホルダ、及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法、及びこの製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、円盤状のガラス基板を製造する製造工程においては、ガラス基板の平面及び端面(内外周面)に研削、研磨などの加工を施す加工工程があり、例えば、ガラス基板の端面の研磨効率を高める手法として複数枚(例えば、数百枚程度)のガラス基板を面方向に重ね合わせたガラス基板積層体を形成し、多数のガラス基板の端面を同時に研磨する方法が用いられている。
【0003】
このガラス基板積層体の端面の研磨加工を行う工程においては、例えば、100枚のガラス基板を同軸上に積層した積層体を形成し、当該積層体をガラス基板積層体ワークホルダによって位置決めした状態でガラス基板積層体の内周に棒状の研磨ブラシを挿入して端面の研磨加工を行う方法が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ガラス基板積層体を保持するワークホルダとしては、特許文献1、2にみられるように、研磨装置のテーブル上に固定される下側支持部と、下側支持部の上面に下方から螺入されたボルトにより固定された複数(3〜4本)の支柱と、支柱の上端に連結される上枠と、上枠にボルトにより固定される上側支持部と、上側支持部の上面に取付けられると共にガラス基板積層体の最上段のガラス基板を下方に押圧する位置決め部材とから構成されている。また、複数のガラス基板は、中心孔をセンタリングシャフトに嵌合させることで順次積層され、所定枚数まで積層されるとセンタリングシャフトと共にワークホルダの下側支持部の上面に載置される。
【0005】
下側支持部の中央には、センタリングシャフトの下端が嵌合する貫通孔が設けられている。そして、ガラス基板積層体の取付位置は、センタリングシャフトが下側支持部の貫通孔に嵌合することによって位置決めされる。
【0006】
ここで、上記従来のワークホルダを用いた研磨工程の作業手順について説明する。
(手順1)センタリングシャフトに複数のガラス基板を積層してガラス基板積層体を形成する。
(手順2)ガラス基板積層体をセンタリングシャフトとともに下側支持部に載置する。
(手順3)下側支持部に起立する各支柱の上端に取付けられた上枠に上側支持部を載置し、上側支持部を上枠にねじ止めする。
(手順4)位置決め部材を上側支持部の上面に取付け、上方から複数のボルトを螺入させて位置決め部材を固定する。
(手順5)下側支持部を架台に載置して位置決め部により上側支持部を下方に押圧する。
(手順6)位置決め部材を外した後、センタリングシャフトを下方から抜き取る。
(手順7)ガラス基板積層体が保持されたワークホルダを研磨装置に装着する。
(手順8)研磨ブラシを上方からガラス基板積層体の中央孔に挿入し、研磨ブラシの回転及び軸方向の往復動によりガラス基板の内周端部を研磨する。
(手順9)研磨終了後、研磨ブラシを抜き取り、ワークホルダを研磨装置から分離させる。
(手順10)ワークホルダの上側支持部を支柱の上枠から分離させた後、ガラス基板積層体をワークホルダから取り出す。
【0007】
以上の手順1〜10によりガラス基板積層体の内周端部を研磨による内外周の同芯度及び内周の真円度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−59727号公報
【特許文献2】特開2008−59728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のワークホルダは、ガラス基板の中央孔をセンタリングシャフトに嵌合させ、センタリングシャフトを基準として複数のガラス基板を積層してガラス基板積層体を形成していた。そのため、従来は、センタリングシャフトとガラス基板が接触するガラス基板の内周端面にキズが発生するおそれがあった。このような、ガラス基板の内周端面のキズは、内周端面研磨により除去されるものであるが、内周端面研磨の研磨量より深いキズは、内周端面研磨で除去されず、ガラス基板の内周端面にキズが残留し、ガラス基板の強度を低下させるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したガラス基板積層体用ワークホルダ及びこのワークホルダを用いたガラス基板の製造方法及びこの製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、複数枚のガラス基板が積層されたガラス基板積層体を保持するガラス基板積層体用ワークホルダにおいて、
前記ガラス基板積層体を垂直状態に支持する下側保持部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上側保持部と、
前記下側保持部と前記上側保持部との間に介在し、側方から挿入される前記ガラス基板の外周に当接して前記ガラス基板積層体の外周端面を保持する外周側受け部と、
該外周側受け部に対向して前記ガラス基板積層体の外周に当接して側方から前記ガラス基板積層体を保持する外周側保持部と、を有し、
前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、前記ガラス基板積層体の外周の位置を基準に前記ガラス基板積層体を同軸上に位置決めすることを特徴とする。
(2)本発明の前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、少なくとも前記ガラス基板積層体に接触する内周面が樹脂により形成されていることを特徴とする。
(3)本発明の前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、樹脂材により一体成型されたことを特徴とする。
(4)本発明の前記外周側受け部は、前記ガラス基板積層体を側方から出し入れ可能とする開口を有し、
前記外周保持部は、前記開口を開または閉とするように側方に回動可能に取り付けられることを特徴とする。
(5)本発明の前記樹脂は、水分を吸収しにくい吸水率の小さい材質であることを特徴とする。
(6)本発明の前記上側保持部は、前記外周側保持部の上端に結合され、前記ガラス基板積層体の上端に当接する上側当接部を介して前記ガラス基板積層体を押圧することを特徴とする。
(7)本発明は、中央孔を有する円盤状のガラス基板の製造方法において、
前記ガラス基板を形成する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研削する工程と、
前記複数枚のガラス基板を前記外周側受け部に当接させながら積層してガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体の外周端面に外周側保持部を当接させるように取付ける工程と、
ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ガラス基板積層体の前記中央孔の内周端面を研磨する工程は、前記(1)乃至(6)何れかに記載のワークホルダを用いて前記ガラス基板積層体を保持した状態で前記ガラス基板の中央孔の内周端面を研磨することを特徴とする。
(8)本発明は、前記(7)記載のガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下であることを特徴とする。
(9)本発明は、前記(7)記載のガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下であることを特徴とする。
(10)本発明は、中央孔を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下、及び/又は前記中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外周側受け部と外周側保持部との間でガラス基板積層体の外周端面を保持すると共に、ガラス基板積層体の外周の位置を基準にガラス基板積層体を同軸上に位置決めするため、ガラス基板の積層枚数が増加した場合でもガラス基板積層体の中央孔の内周端面を研磨する際のガラス基板積層体の同芯度を高精度に位置決めすることができると共に、ガラス基板積層体を同軸上に位置決めする基準となるセンタリングシャフトとガラス基板との接触がないため、ガラス基板の内周端面にキズを発生させることなく、破壊強度に優れるガラス基板を得ることができる。さらに、研磨工程におけるガラス基板積層体の形成作業及び位置合わせの作業を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるガラス基板積層体ワークホルダの実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1のワークホルダの分解斜視図である。
【図3】実施例1のワークホルダの縦断面図である。
【図4】ガラス基板の製造工程の手順A1〜手順A13を示す図である。
【図5A】手順A3のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図5B】手順A3のワークホルダにガラス基板積層体を収納させた状態を模式的に示す縦断面図である。
【図5C】手順A4のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図5D】手順A6のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図5E】手順A8〜A10のワークホルダの状態を模式的に示す縦断面図である。
【図6】実施例2のワークホルダを示す斜視図である。
【図7A】実施例2の第1、第2外周側保持部材の結合状態を示す縦断面図である。
【図7B】実施例2の第1外周側保持部材の縦断面図である。
【図8】実施例2の第1外周側保持部材を示す正面図である。
【図9】実施例2の第2外周側保持部材を示す背面図である。
【図10】実施例3のワークホルダを示す斜視図である。
【図11】実施例3の第2外周側保持部が閉じた状態を示す縦断面図である。
【図12】実施例3の第2外周側保持部材を開いた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明によるガラス基板積層体ワークホルダの実施例1を示す斜視図である。図2は実施例1のワークホルダの分解斜視図である。図3は実施例1のワークホルダの縦断面図である。
【0016】
図1乃至図3に示されるように、ガラス基板積層体ワークホルダ(以下「ワークホルダ」という)10は、ガラス基板の中央孔の内周端面を研磨する研磨装置に取り付けられ、100枚〜260枚のガラス基板を同軸上に位置決めしてガラス基板積層体として保持する治具である。本実施例におけるガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板に用いられるガラス基板であって、中央孔の内周端面及び主平面が研磨された後に、洗浄工程を行なって主平面に磁気記録再生のための磁性層が薄膜形成される。尚、以下の説明では、磁気記録媒体用ガラス基板を「ガラス基板」と称する。
【0017】
ワークホルダ10は、ホルダ本体50と、上側保持部60とを有する。ホルダ本体50は、下側保持部20の上部に円筒状保持部40を起立させるように組み合わせてなる。下側保持部20及び円筒状保持部40は、夫々ステンレス等の金属により形成されており、複数のボルト23、80により締結される。
【0018】
また、円筒状保持部40は、第1、第2外周保持部材40A、40Bを組み合わせて円筒形状を形成するように構成されている。第1、第2外周保持部材40A、40Bは、内周面にガラス基板積層体の外周に当接する樹脂層30(30A、30B)が形成されており、内部空間がガラス基板積層体の収納室となる。
【0019】
各樹脂層30A、30Bは、ガラス基板積層体の外周を保護するためのものであり、低摩擦且つ吸水率の低い樹脂材(例えば、4フッ化エチレン樹脂やポリエチレン樹脂等)がコーティングされている。
【0020】
上側保持部60は、円筒状保持部40の上部に取付けられ、円筒状保持部40の内部に収納されたガラス基板積層体を上方から押圧して保持するための保持部材である。
【0021】
図2に示されるように、円筒状保持部40は、第1外周側保持部材40Aと、第2外周側保持部材40Bとに半径方向に2分割可能に構成されている。第1、第2外周側保持部材40A、40Bは、夫々上方からみた形状が半円弧形状に形成されており、分割された端面同士を突き合わせて結合することで、円筒形状に組み合わされる。
【0022】
第1外周側保持部材40Aは、円筒状保持部40の内部にガラス基板積層体を形成する際にガラス基板を受け止める外周側受け部である。また、第2外周側保持部材40Bは、円筒状保持部40の内部にガラス基板積層体が形成された後に第1外周側保持部材40Aにボルト80により締結されると共にガラス基板積層体の外周に当接して側方からガラス基板積層体を保持する外周側保持部である。
【0023】
また、円筒状保持部40の内部空間に収納されたガラス基板積層体は、第1外周側保持部材40Aと、第2外周側保持部材40Bとが結合されることにより、ガラス基板の外周を基準として位置決めされ、各ガラス基板の中央孔の中心が同軸上に保持される。
【0024】
下側保持部20のフランジ22には、取付孔29が4個所に90度間隔で設けられている。取付孔29は、ボルト挿通用の大径部とボルト係止用の小径部とが連続した鍵穴形状に形成されている。
【0025】
第1外周側保持部材40Aの周方向の両端には、外側に突出する締結部42A、43Aが設けられている。締結部42A、43Aは、それぞれボルト80が螺入される雌ねじ44Aが3箇所ずつ設けられている。
【0026】
図1に示されるように、また、他方の第2外周側保持部材40Bも、上記第1外周側保持部材40Aと同様に、周方向の両端には、外側に突出する締結部42B、43Bが設けられている。締結部42B、43Bは、ボルト80が挿通されるボルト挿通孔(図1中、ボルト80の頭部に隠れている)が3箇所ずつ設けられている。
【0027】
ガラス基板積層体の形成前の段階では、第1外周側保持部材40Aのみが、下側保持部20の上部の嵌合部24に嵌合した状態で複数(3箇所)のボルト23により下側保持部20に固定される。そのため、第1外周側保持部材40Aの内周側の樹脂層30Aは、ガラス基板積層体を収納するための内部空間を形成するように露出された状態となる。尚、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの下端には、ボルト23を挿通するためのボルト取付孔(図1、図2中、ボルト23の頭部に隠れている)が半径方向に貫通している。
【0028】
また、ガラス基板積層体が収納された後、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aに第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bが結合される。その後、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの上端に設けられたフランジ45(45A、45B)には、上側保持部60がボルト68により固定される。上側保持部60は、ボルト68の締付けトルクによりガラス基板積層体130の上端を下方に押圧する。
【0029】
下側保持部20は、底部に研磨装置のテーブルに固定されるフランジ22を有し、上部外周に第1、第2外周側保持部材40A、40Bの下端内側が嵌合する嵌合部24が設けられている。嵌合部24の外周には、側方からボルト23が中心に向けて螺入される雌ねじ25が4箇所に設けられている。
【0030】
下側保持部20の中央には、軸方向(上下方向)に貫通する貫通孔26が設けられている。この貫通孔26は、後述する研磨ブラシを挿通する際の逃げ孔として作用する。
【0031】
貫通孔26の下側開口には、研磨装置のテーブル側に設けられた凹部に嵌合するベースプレート90が取り付けられる凹部28が設けられている。
【0032】
第1外周側保持部材40Aの内周には、ガラス基板の外周端面との摩擦を軽減するため、樹脂層30Aがコーティングされている。また、第1外周側保持部材40Aの内周面は、ガラス基板積層体の位置決めを行うガイド面となる。
【0033】
さらに、下側保持部20の嵌合部24に嵌合する第1外周側保持部材40A及び第1内周側保持部30Aの下端内側には、ボルト23を挿通するためのボルト取付孔が周方向の所定間隔の3箇所に設けられている。
【0034】
また、第1外周側保持部材40Aの上端には、外側(半径方向)に突出するフランジ45Aが設けられている。フランジ45Aは、ボルト68が螺入される2個のねじ孔48が鉛直方向に延在するように設けられている。
【0035】
第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aは、側方に突出する段差形状であり、第2外周側保持部材40Bと結合させる際の位置合わせ作業が容易に行えるように形成されている。
【0036】
また、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aには、異なる高さ位置の3箇所に雌ねじ44Aが設けられている。
【0037】
第2外周側保持部材40Bの内周には、第1外周側保持部材40Aと同様に、ガラス基板の外周端面との摩擦を軽減するため、樹脂層30Bがコーティングされている。また、第2外周側保持部材40Bの内周面は、第1外周側保持部材40Aの内周に積層されたガラス基板積層体の外周を側方より当接して位置決めする当接面となる。
【0038】
さらに、下側保持部20の嵌合部24に嵌合する第2外周側保持部材40Bの下端内周には、ボルト23を挿通するためのボルト挿通孔が1箇所設けられている。
【0039】
また、第2外周側保持部材40Bの上端には、外側(半径方向)に突出するフランジ45Bが設けられている。フランジ45Bは、ボルト68が螺入される2個のねじ孔48が設けられている。
【0040】
第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bは、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aに対応して、端部よりも水平方向に凹んだ形状に形成されており、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aと結合させる際の位置合わせ作業が容易に行えるように形成されている。
【0041】
締結部42B、43Bには、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aに設けられた各雌ねじ44Aに対向する高さ位置のボルト80を外周側から挿通させるためのボルト取付孔(図1中、ボルト80の頭部に隠れている)が設けられている。
【0042】
第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bは、後述するように、第1外周側保持部材40Aの内部空間にガラス基板積層体130を収納させた後、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aに当接させる。その際、第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aは、水平方向に突出する段差形状に形成されており、第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bは、水平方向に凹んだ形状に段差形状に形成されているので、互いに嵌合して突き合わせた位置から側方にずれにくく、組み付け作業が容易に行える。また、締結部42A、43Aと締結部42B、43Bとを当接させた状態では、雌ねじ44Aとボルト挿通孔(図1中、ボルト80の頭部に隠れている)とが連通する位置に相対しており、6本のボルト80を各ボルト挿通孔から雌ねじ44Aに螺入させる。
【0043】
上記のように締結部42A、43Aと締結部42B、43Bとが結合されると、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの半円弧状のフランジ45A、45Bは、環状のフランジ45を形成する。また、フランジ45の上面は、上側保持部60が取り付けられる取付面となる。
【0044】
ワークホルダ10は、締結部42A、43Aと締結部42B、43Bとをボルト80により締結された後、第2外周側保持部材40Bの下端のボルト取付孔にボルト23を挿通させて下側保持部20の嵌合部24の外周に設けられた雌ねじ25に螺入させる。これで、第2外周側保持部材40Bの下端が下側保持部20の嵌合部24に固定される。
【0045】
この後、上側保持部60がフランジ45の上面に載置され、ボルト68を締付けることで上側保持部60がフランジ45に固定されると共に、ガラス基板積層体130の上端を下方に押圧する。
【0046】
上側保持部60は、例えば、ステンレス等の金属により円盤状に形成されており、中心に中央孔62が軸方向に貫通している。また、中央孔62の周囲には、取付用孔66が4個所に90度間隔で軸方向に貫通して設けられている。取付用孔66は、前述したフランジ45のねじ孔48と対向する位置に配されている。また、取付用孔66は、ボルト挿通用の大径部とボルト係止用の小径部とが連続した鍵穴形状に形成されている。
【0047】
さらに、上側保持部60の下面には、ガラス基板積層体130の上部を押圧する環状突部(上側当接部)69が突出している。
【0048】
ここで、上記上側保持部60をホルダ本体50に取り付ける作業工程について説明する。
【0049】
図2に示されるように、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの上端のフランジ45A,45Bのねじ孔48に固定ボルト68を螺入する。尚、固定ボルト68は、頭部とフランジ上面との間隔が上側保持部60の厚さよりも若干大きくなる位置に螺入された状態に起立させる。
【0050】
上側保持部60は、第1外周側保持部材40Aの内部空間にガラス基板積層体が収納されて、第2外周側保持部材40Bが第1外周側保持部材40Aに結合された後、フランジ45の上面に取り付けられる。すなわち、上側保持部60は、取付用孔66の大径部を固定ボルト68の頭部に嵌合させてフランジ45上に載置された後、円周方向に所定角度回動されると、取付用孔66の小径部が固定ボルト68の軸部に嵌合して締付け可能な位置に係止される。この上側保持部60の取付状態では、上側保持部60とフランジ45の上面との間には、隙間Sがあり、この隙間Sが固定ボルト68による締め代となる。
【0051】
この後、4本の固定ボルト68を対角位置の順に締付けて徐々に上側保持部60を第1、第2外周側保持部材40A、40Bのフランジ45に当接させる。これにより、上側保持部60は、上記隙間Sが狭くなると共に、ガラス基板積層体130の上端を下方に押圧してガラス基板積層体130を保持することが可能になる。
【0052】
ここで、ガラス基板の研磨工程を説明する前に、本発明のガラス基板が磁気記録媒体用ガラス基板に適用される場合の磁気ディスクの製造工程について説明する。
【0053】
一般に、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造方法は、以下の(工程1)〜(工程6)を含む。
(工程1)フロート法、フュージョン法、またはプレス成形法で成形されたガラス素基板を、円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面に面取り加工を行うことでガラス基板を得る。
(工程2)工程1で得られたガラス基板の上下主平面に研削加工を行う。
(工程3)ガラス基板の内周、外周側面部と面取り部に端面研磨を行う。
(工程4)ガラス基板の上下主平面に研磨を行う。上下主平面の研磨工程では、1次研磨のみでも良く、1次研磨と2次研磨(1次研磨より目の細かい粒度を用いる研磨)を行っても良く、2次研磨の後に3次研磨(2次研磨より目の細かい粒度を用いる研磨)を行っても良い。
(工程5)ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を得る。
(工程6)磁気記録媒体用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクが完成する。
【0054】
なお、上記磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、各工程間にガラス基板洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。
【0055】
さらに、磁気記録媒体用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
【0056】
本発明において、磁気記録媒体用ガラス基板は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでも良く、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
【0057】
本発明のガラス基板積層体用ワークホルダを用いたガラス基板の製造方法は、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程の端面研磨工程(工程3)に係るものである。
【0058】
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板は、同芯度が5μm以下、真円度が5μm以下と、磁気記録媒体用ガラス基板の形状に優れるため、大容量の情報を磁気ディスクに対し高速で記録または再生するため、磁気ディスクの回転速度を高速化しても、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触するといった問題が発生しない。
【0059】
次に、上記のように製造される磁気記録媒体用ガラス基板の製造工程の手順について説明する。
【0060】
図4はガラス基板の製造工程の手順A1〜手順A13を示す図である。図4に示されるように、手順A1で内径、外径を所定寸法とされたガラス基板を形成する。
【0061】
手順A2では、ガラス基板の主平面を研削加工して主平面の厚さ寸法を規定寸法に加工する。続いて、ガラス基板の内周側面及び外周側面の面取り加工を粒度が#300〜#600の砥石により行う。
【0062】
手順A3では、下側保持部20の上面に下側当接部122を載置する(図5A参照)。そして、ガラス基板120を1枚ずつ第1外周側保持部材40Aの樹脂層30Aの内周面に当接させながら積層する。例えば、ガラス基板120が200枚程度積層されたガラス基板積層体130を形成する。さらに、ガラス基板積層体130上に上側当接部124を積層させる(図5B参照)。このとき、上側当接部124の上面は、第1外周側保持部材40Aの上端に形成されたフランジ45Aよりも低い位置にある。
【0063】
尚、複数のガラス基板120を積層する際は、ガラス基板120同士を直接積層しても良いし、内径、外径がガラス基板とほぼ同径のシート状に形成されている樹脂製のスペーサをガラス基板間に挿入してガラス基板120と樹脂製のスペーサが交互となるように積層しても良い。
【0064】
尚、下側当接部122、上側当接部124は、ワークホルダ10の上側保持部60、下側保持部20と直接接触するため、内径、外径がガラス基板とほぼ同径の樹脂材(例えば、ポリオキシメチレンなど)を所定の厚さに切断して用いる。
【0065】
手順A4では、上記のように第1外周側保持部材40Aの内部空間にガラス基板積層体130を収納させた後、第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bを第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aに当接させる(図5C参照)。さらに、締結部42A、43Aと締結部42B、43Bとを当接させた状態で6本のボルト80を各ボルト挿通孔から雌ねじ44Aに螺入させる。
【0066】
尚、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの内周面とガラス基板120の外周側端面の最外周の全周の間には、0.1mm〜0.5mmのクリアランスがある。
【0067】
手順A5では、ガラス基板積層体130を収納させたワークホルダ10の下側保持部20をワークセットテーブルに取り付ける。
【0068】
手順A6では、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの上端のフランジ45(45A,45B)に上側保持部60を取付ける(図3及び図5D参照)。上側保持部60は、取付用孔66の大径部に固定ボルト68の頭部を嵌合させてフランジ45に載置された後、円周方向に所定角度回動されると、取付用孔66の小径部が固定ボルト68の軸部に嵌合する。この上側保持部60の取付状態では、上側保持部60の環状突部69が上側当接部124の上面に当接すると共に、上側保持部60とフランジ45の上面との間に、隙間S(図3参照)が存在する。そのため、固定ボルト68を締付けることで上側保持部60とフランジ45の上面との間の隙間Sが狭くなると共に、上側保持部60の環状突部69が上側当接部124を下方に押圧することが可能になる。
【0069】
従って、4本の固定ボルト68を対角位置の順に締付けて徐々に上側保持部60が下方に押圧すると共に、上側保持部60の環状突部69がガラス基板積層体130の上部に積層された上側当接部124を下方に押圧する。これにより、上側保持部60は、ガラス基板積層体130を上方から押圧保持する。尚、4本の固定ボルト68の締付けトルクは、トルクレンチにより測定しており、例えば、各固定ボルト68の締付けトルクが均等(例えば、1本あたりの締付けトルク=2Nm)になるように調整する。
【0070】
手順A7では、ワークホルダ10の下側保持部20をワークセットテーブルから外す。ワークホルダ10の内部には、第1、第2外周側保持部材40A、40Bの内周面によって同軸上に積層されたガラス基板積層体130が保持されている。
【0071】
手順A8では、ワークホルダ10の下側保持部20のフランジ22を研磨装置のテーブル100に取り付ける(図5E参照)。
【0072】
手順A9では、ガラス基板積層体130の中央孔132に上方から研磨ブラシ140を挿入する(図5E参照)。
【0073】
手順A10では、ガラス基板積層体130の上方からスラリー(研磨剤)を供給し、且つテーブル100を回転させながら研磨ブラシ140を軸方向に往復動させてガラス基板積層体130の中央孔132の内周端面を研磨する(図5E参照)。
【0074】
この中央孔132の内周端面の研磨工程では、例えば内周端面の研磨量は、研磨時間によって管理している。研磨終了後、研磨ブラシ140を抜き取る。
【0075】
内周端面の研磨工程により、ガラス基板120の内周端面の傷が殆ど除去されてガラス基板120の強度をより高められる。特にガラス基板120が磁気ディスクとして用いられる場合には、ガラス基板120の内周端面にモータ回転軸が連結されるため、モータ回転数の高速化に伴って内周端面のガラス基板120の内周強度の向上が要望されている。
【0076】
手順A11では、ワークホルダ10の下側保持部20のフランジ22を研磨装置のテーブル100から外す。さらに、上側保持部60をフランジ45から外し、さらに各ボルト80を緩めて第2外周側保持部材40Bの締結部42B、43Bを第1外周側保持部材40Aの締結部42A、43Aから分離させる。これにより、ワークホルダ10に収納されていたガラス基板積層体130が露出され、各ガラス基板120を取出すことが可能になる。
【0077】
続いて、ガラス基板120の外周端面を研磨した後、ガラス基板積層体130からガラス基板120を一枚ずつ分離させる。ガラス基板積層体130を形成する際に各ガラス基板120の主平面間に薄い樹脂シートからなるスペーサを介在させている場合には、各ガラス基板120を一枚ずつ取出す際にスペーサも外す。
【0078】
なお、ガラス基板120の外周端面の研磨は、中央孔132の内周端面の研磨工程の前に実施してもよい。また、内周端面研磨をしたガラス基板の内周側面部と面取り部はエッチングしてもよい。
【0079】
手順A12では、ガラス基板積層体130から分離したガラス基板120の主平面を研磨する。
【0080】
手順A13では、ガラス基板120の表面を洗浄し、乾燥する。
【0081】
上記手順によりガラス基板120は、中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下に仕上げられる。また、ガラス基板120は、中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下に仕上げられる。
【実施例2】
【0082】
図6は実施例2のワークホルダを示す斜視図である。尚、上記実施例1と同一部分には、同一符合を付してその説明を省略する。
【0083】
図6に示されるように、実施例2のワークホルダ200は、ホルダ本体250と、上側保持部60とを有する。ホルダ本体250は、下側保持部20の上部に円筒状保持部240を起立させるように組み合わせるように構成されている。
【0084】
また、円筒状保持部240は、第1、第2外周保持部材240A、240Bを組み合わせて円筒形状を形成するように構成されている。第1、第2外周保持部材240A、240Bは、例えば、耐摩耗性、摩擦係数が小さく、且つ耐薬品性にも優れたポリアセタール樹脂により一体成型されている。また、第1、第2外周保持部材240A、240Bは、複数のボルト80により締結されることで円筒形状に結合され、内部空間がガラス基板積層体130の収納室となる。
【0085】
図7Aは実施例2の第1、第2外周側保持部材の結合状態を示す縦断面図である。図7Bは実施例2の第1外周側保持部材の縦断面図である。図8は実施例2の第1外周側保持部材を示す正面図である。
【0086】
図7A及び図7B、図8に示されるように、第1外周側保持部材(外周側受け部)240Aは、半円形の円弧状断面を有する基板受け部241Aを有する。この樹脂材により形成された基板受け部241Aの内周面(樹脂層)は、ガラス基板積層体130を積層する際の受け面となる。
【0087】
また、第1外周側保持部材240Aの上端のフランジ面243Aには、ボルト68が螺入される雌ねじ有するステンレス製のヘリサート81が2箇所に埋設されている。
【0088】
第1外周側保持部材240Aは、ボルト80により締結される3箇所の大径部242Aと、大径部242A間に形成された大径部242Aより小径とされた括れ部244Aとを有する。大径部242Aの端面には、ボルト80が螺入される雌ねじを有するステンレス製のヘリサート82が基板受け部241Aの接線方向(水平方向)に埋設されている。
【0089】
また、第1外周側保持部材240Aの下端には、外周側から中心(軸心)に向かって螺入されるボルト23が挿通されるステンレス製の円筒部材84が3箇所に埋設されている。
【0090】
上側保持部60の下面と第1、第2外周側保持部材240A、240Bの上面との間には、隙間Sが介在している。そして、上側保持部60に挿通され、且つ第1、第2外周側保持部材240A、240Bの上端に螺入された固定ボルト68が締付けられると、上記隙間Sが狭くなると共に、上側保持部60の環状突部69がガラス基板積層体130の上端を下方に押圧して保持する。
【0091】
図9は実施例2の第2外周側保持部材を示す背面図である。図9に示されるように、第2外周側保持部材240B(外周側保持部)は、半円形の円弧状断面を有する基板受け部241Bを有する。この樹脂材により形成された基板受け部241Bの内周面(樹脂層)は、ガラス基板積層体130を積層した際に最大外径の外周側端面に当接する保持面となる。
【0092】
また、第2外周側保持部材240Bの上端のフランジ面243Bには、ボルト68が螺入される雌ねじ有するステンレス製のヘリサート81が2箇所に埋設されている。
【0093】
第2外周側保持部材240Bは、第1外周側保持部材240Aと同様に、ボルト80により締結される3箇所の大径部242Bと、大径部242B間に形成された大径部242Aより小径とされた括れ部244Bとを有する。
【0094】
大径部242Bには、ボルト80を挿通するための円筒部材83が基板受け部241Bの接線方向(水平方向)に埋設されている。また、第2外周側保持部材240Bの下端中央部分にも、外周側から中心(軸心)に向かって螺入されるボルト23を挿通するためのステンレス製の円筒部材84が埋設されている。
【0095】
このように、第1、第2外周保持部材240A、240Bは、樹脂材により一体成型されており、且つボルト80によって締結される部分を除いて括れ部244A、244Bが設けられているので、大幅な軽量化が図られている。
【0096】
また、ボルト23、80が挿通される箇所及び螺入される箇所には、ステンレス製の円筒部材83、ステンレス製のヘリサート81、82が設けられているので、機械的強度及び耐久性が確保されている。
【0097】
第1、第2外周保持部材240A、240Bは、互いに端面に形成された締結部246A、246Bを突き合わせた状態でボルト80を円筒部材83の挿通孔83aからヘリサート82に螺入させる。
【0098】
これにより、第1、第2外周保持部材240A、240Bは、内部に基板積層体130が収納された状態で一体的に結合されると共に、基板積層体130の外周を保持する。このように、結合された第1、第2外周側保持部材240A、240Bの内周面と基板積層体130外周側端面の最外周の全周の間には、0.1mm〜0.5mmのクリアランスが形成される。
【0099】
尚、実施例2において、ガラス基板の製造工程の手順は、前述した実施例1の場合の手順A1〜A13と同様であるので、その説明は省略する。従って、実施例2のワークホルダ200を用いて内周端面を研磨した場合も、ガラス基板120は、中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下に仕上げられる。また、ガラス基板120は、中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下に仕上げられる。
【実施例3】
【0100】
図10は実施例3のワークホルダを示す斜視図である。尚、実施例3において、上記実施例1、2と同一部分には、同一符合を付してその説明を省略する。
【0101】
図10に示されるように、実施例3のワークホルダ300は、下側保持部20と、上側保持部60と、ガラス基板積層体130の外周に当接してガラス基板積層体130の外周端面を側方から受ける第1外周側保持部材(外周側受け部)310と、第1外周側保持部材310に対向してガラス基板積層体130の外周に当接して側方からガラス基板積層体130を保持する第2外周側保持部材(外周側保持部)320と、上側リング330とを有する。
【0102】
上側リング330は、第1外周側保持部材310の上端及び第2外周側保持部材320の上端に取り付けられる。また、上側リング330の上端には、上側保持部60が取付けられる。尚、上側リング330の上面には、上方から上側保持部60に挿通されるボルト68が螺入されるねじ孔(隠れて見えない)が設けられている。
【0103】
第2外周側保持部材320は、上端の回動軸325(図12を参照)が上側リング330により外周方向に回動可能に支持され、下端が下側保持部20により回動可能に支持されている。すなわち、第2外周側保持部材320は、第1外周側保持部材310に対向するガラス基板を保持する保持位置、あるいは第2外周側保持部材320が第1外周側保持部材310から離間するガラス基板の出し入れを可能にする開放位置に回動可能に取り付けられている。
【0104】
また、ガラス基板積層体130は、第1外周側保持部材310の内側に収納されると、ガラス基板積層体130の外周を保持する保持位置に回動された後、上側保持部材60が上側リング330の上端に取付けられることで、保持位置に固定される。
【0105】
第1外周側保持部材310及び上側リング330は、例えば、ステンレス等の金属材料によって形成されており、第2外周側保持部材320は樹脂により成型されている。また、第1外周側保持部材310の内周面312には、ガラス基板積層体130を保護するため、摩擦係数の小さい4フッ化エチレン樹脂等による樹脂層がコーティングされている。
【0106】
第1外周側保持部材310は、下端が下側保持部20の嵌合部24に固定され、上端が上側リング330に固定されている。第1外周側保持部材310は、内周面312が周方向に150度の範囲に形成されており、それ以外の周方向の210度の範囲が開口340になっている。
【0107】
また、第2外周側保持部材320の内周面322は、第1外周側保持部材310の開口340に対して周方向の幅が狭く、およそ40〜60度の範囲を覆うように形成されている。そして、第2外周側保持部材320は、下側保持部20と上側リング330との間で回動可能に支持されているので、ガラス基板積層体130を出し入れする際には、第1外周側保持部材310の側開口340の一部分を開放し、または収納されたガラス基板積層体130の中央孔を研磨する際は、第1外周保持部材310の開口340を閉とする位置に固定される。
【0108】
図11は実施例3の第2外周側保持部が閉じた状態を示す縦断面図である。図11に示されるように、第2外周側保持部材320は、第1外周側保持部材310の内周面312に当接されて位置決めされたガラス基板積層体130が積層された後、第1外周側保持部材310の反対側からガラス基板積層体130の外周端面に当接する保持位置に回動される。そのため、ガラス基板積層体130は、外周端面が第1外周側保持部材310の内周面312と第2外周側保持部材320の内周面(樹脂層)322との間で保持される。
【0109】
第1外周側保持部材310は、下端外周の3箇所にボルト23を挿通させるための挿通孔314が半径方向に貫通している。また、第2外周側保持部材320は、下端外周の1箇所にボルト23を挿通させるための挿通孔324が半径方向に貫通している。そのため、第2外周側保持部材320は、ボルト23の螺入により、上記保持位置に固定される。
【0110】
第1外周側保持部材310の上端及び第2外周側保持部320の上端は、上側リング330を固定するための固定ボルト350が螺入されるヘリサート81が圧入されている。また、固定ボルト350は、上記ヘリサート81に螺入されることで上側リング330を第1、第2外周側保持部材310、320の上端に固定する。尚、第2外周側保持部材320は、ガラス基板積層体130が積層された後、第2外周側保持部320がガラス基板積層体130を保持する位置に回動されると、固定ボルト350が螺入されて上側リング330に固定される。
【0111】
また、上側リング330の上面に上側保持部60が取り付けられると、上側保持部60の下方に突出する環状突部69が上側リング330の中央孔331に上方から挿通される。このとき、上側保持部60の下面と上側リング330の上面との間には、隙間Sが介在している。そして、上側保持部60に挿通され、且つ上側リング330の上端に螺入された固定ボルト68が締付けられると、上記隙間Sが狭くなると共に、上側保持部60の環状突部69がガラス基板積層体130の上端を下方に押圧して保持する。
【0112】
図12は実施例3の第2外周側保持部材を開いた状態を示す平面図である。図12に示されるように、第1外周側保持部材310は、下側保持部20に固定されており、内周面312がガラス基板積層体130を形成する際の一方の位置決め部となる。
【0113】
第1外周側保持部材310の内周面312、及び第2外周側保持部材320の内周面322は、ガラス基板120の外径と同じ曲率半径を有する曲面に形成されている。
【0114】
第2外周側保持部材320は、上端及び下端に回動支点となる回動軸325が圧入される取付孔(隠れて見えない)が設けられており、第2外周側保持部材320の下端は下側保持部20と、第2外周側保持部材320の上端は上側リング330とそれぞれ結合されている。
【0115】
第2外周側保持部材320は、上端及び下端に突出する回動軸325が上側リング330、下側保持部20に回動可能に支持されることで水平方向に開閉動作することができる。例えば、図12において、第2外周側保持部材320は、位置A(保持位置)で内周面322がガラス基板積層体130の外周端面に当接し、位置Bに回動すると内周面322がガラス基板積層体130の外周端面から離間し、位置C(開放位置)に回動するとガラス基板積層体130の取出し、あるいはガラス基板120の積層操作を可能とする。
【0116】
従って、第2外周側保持部材320が開口340を開放する位置(図12に示す位置C)に回動された状態で、第1外周側保持部材310の内周面312にガラス基板120の外周端面を当接させながら積層してガラス基板積層体130が形成される。そして、ガラス基板積層体130が形成されると、第2外周側保持部材320は、ガラス基板積層体130の外周端面の反対側を中心側に押圧するように回動される(図12に示す位置Cから位置Aへ回動)。この後、外周側から第2外周側保持部材320の挿通孔324にボルト23を挿通させて下側保持部20の嵌合部24に固定させる。そのため、ガラス基板積層体130は、外周端面が第1外周側保持部材310の内周面312と第2外周側保持部材320の内周面322との間で保持される。
【0117】
さらに、図11に示されるように、上側リング330の上面に、上側保持部60が取り付けられ、下面側の環状突部69が上側リング330の中央孔331の下方に挿通される。そして、上側保持部60が第1外周側保持部材310の上端に螺入された固定ボルト68により締結されると、環状突部69がガラス基板積層体130の上端を下方に押圧してガラス基板積層体130を安定した積層状態に保持することができる。
【0118】
このようにワークホルダ300により保持されたガラス基板積層体130は、ワークホルダ300と共に、研磨装置のテーブルに装着され、回転されながら前述した研磨ブラシ140を中央孔に挿通されて内周端面を研磨される。
【0119】
また、本実施例のワークホルダ300では、第2外周側保持部材320が回動可能に支持される構成であるので、研磨終了後に、第2外周側保持部材320を位置A(保持位置)から位置C(開放位置)に回動させることで容易にガラス基板積層体130を取り出すことが可能になり、製造工程の作業効率をより高められる。
【0120】
尚、実施例3において、ガラス基板の製造工程の手順は、前述した実施例1の場合の手順A1〜A13と同様であるので、その説明は省略する。従って、実施例3のワークホルダ300を用いて内周端面を研磨した場合も、ガラス基板120は、中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下に仕上げられる。また、ガラス基板120は、中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下に仕上げられる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
上記実施例では、ガラス基板積層体の内周端面を研磨する場合に使用されるワークホルダを一例として挙げたが、これに限らず、他の加工工程にも適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0122】
10、200、300 ワークホルダ
20 下側保持部
22 フランジ
23、80 ボルト
24 環状溝
26 貫通孔
28 凹部
29 ボルト挿通孔
30A、30B 樹脂層
40 円筒状保持部
40A 第1外周側保持部
40B 第2外周側保持部
42A、43A、42B、43B 締結部
45、45A、45B フランジ
48 取付孔
50、250 ホルダ本体
60 上側保持部
62 中央孔
66 取付用孔
68、350 固定ボルト
81、82 ヘリサート
83、84 円筒部材
100 テーブル
120 ガラス基板
122 下側当接部
124 上側当接部
130 ガラス基板積層体
132 中央孔
140 研磨ブラシ
240 円筒状保持部
240A 第1外周保持部材
240B 第2外周保持部材
241A、241B 基板受け部
243A、243B フランジ面
242A、242B 大径部
244A、244B 括れ部
246A、246B 締結部
248 挿通孔
310 第1外周側保持部材
312 内周面
314 挿通孔
320 第2外周側保持部材
322 内周面
325 回動軸
330 上側リング
331 中央孔
340 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス基板が積層されたガラス基板積層体を保持するガラス基板積層体用ワークホルダにおいて、
前記ガラス基板積層体を垂直状態に支持する下側保持部と、
前記ガラス基板積層体の上端を保持する上側保持部と、
前記下側保持部と前記上側保持部との間に介在し、側方から挿入される前記ガラス基板の外周に当接して前記ガラス基板積層体の外周端面を保持する外周側受け部と、
該外周側受け部に対向して前記ガラス基板積層体の外周に当接して側方から前記ガラス基板積層体を保持する外周側保持部と、を有し、
前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、前記ガラス基板積層体の外周の位置を基準に前記ガラス基板積層体を同軸上に位置決めすることを特徴とするガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項2】
前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、少なくとも前記ガラス基板積層体に接触する内周面が樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項3】
前記外周側保持部及び前記外周側受け部は、樹脂材により一体成型されたことを特徴とする請求項1または2記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項4】
前記外周側受け部は、前記ガラス基板積層体を側方から出し入れ可能とする開口を有し、
前記外周保持部は、前記開口を開または閉とするように側方に回動可能に取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項5】
前記樹脂は、水分を吸収しにくい吸水率の小さい材質であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項6】
前記上側保持部は、前記外周側保持部の上端に結合され、前記ガラス基板積層体の上端に当接する上側当接部を介して前記ガラス基板積層体を押圧することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のガラス基板積層体用ワークホルダ。
【請求項7】
中央孔を有する円盤状のガラス基板の製造方法において、
前記ガラス基板を形成する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研削する工程と、
前記複数枚のガラス基板を前記外周側受け部に当接させながら積層してガラス基板積層体を形成する工程と、
前記ガラス基板積層体の外周端面に外周側保持部を当接させるように取付ける工程と、
ワークホルダを研磨装置のテーブルに取付ける工程と、
前記ガラス基板積層体の中央孔に研磨ブラシを挿入して前記中央孔の内周端面を研磨する工程と、
前記ガラス基板の主平面を研磨する工程と、
前記ガラス基板を洗浄する工程と、
を有し、
前記ガラス基板積層体の前記中央孔の内周端面を研磨する工程は、前記請求項1乃至6何れかに記載のワークホルダを用いて前記ガラス基板積層体を保持した状態で前記ガラス基板の中央孔の内周端面を研磨することを特徴とするガラス基板の製造方法。
【請求項8】
前記請求項7記載のガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
【請求項9】
前記請求項7記載のガラス基板の製造方法で製造された磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。
【請求項10】
中央孔を有する円盤状の磁気記録媒体用ガラス基板であって、
前記中央孔の最内周端面とガラス基板の最外周端面との同芯度が5μm以下、及び/又は前記中央孔の最内周端面の真円度が5μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体用ガラス基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−3824(P2012−3824A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139922(P2010−139922)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】