説明

クランパ、水室内作業装置およびクランプ方法

【課題】管材を安定的にクランプ保持できるクランパ、水室内作業装置およびクランプ方法を提供すること。
【解決手段】このクランパ23は、管板137に配置された管材132に挿入されて管材132をクランプする。また、クランパ23は、管板137あるいは管材132に当接可能な当接部2311bを有すると共に挿入部2311aを管材132に挿入して管材132をクランプするクランプ機構231と、クランプ機構231を挿入部2311aの挿入方向に昇降させる昇降機構232とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランパ、水室内作業装置およびクランプ方法に関し、さらに詳しくは、管材を安定的にクランプ保持できるクランパ、このクランパを備える水室内作業装置およびクランプ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの蒸気発生器では、水室内作業装置が用いられて水室内作業が行われている。また、近年では、作業用のツールを先端に取り付けたマニピュレータを備える水室内作業装置が提案されている。また、水室の床面が球面形状を有することから、水室内作業装置の作業性を高めるために、かかる室内作業装置を水室の管板面から懸垂状態で吊り下げて設置することが提案されている。このような水室内作業装置として、特許文献1に記載される技術が知られている。
【0003】
ここで、水室の管板面には、複数の伝熱管が開口して配列されている。そこで、かかる水室内作業装置では、先端部を伝熱管に挿入して伝熱管をクランプ保持するクランパを設け、このクランパにより水室内作業装置を管板面に固定する構成が提案されている。かかるクランパを有する水室内作業装置として、特許文献2に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183278号公報
【特許文献2】実用新案登録第2503172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の水室内作業装置では、マニピュレータの重量が嵩むと共に、水室内作業時にてマニピュレータの動作により多様な力およびモーメントがクランプ機構に作用する。このため、クランパが安定的に伝熱管をクランプ保持できることが要求される。
【0006】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、管材を安定的にクランプ保持できるクランパ、水室内作業装置およびクランプ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明にかかるクランパは、被クランプ材をクランプするクランパであって、前記被クランプ材をクランプするクランプ機構と、前記クランプ機構のクランプ状態にて前記クランプ機構のクランプ位置とは異なる位置にて前記被クランプ材に当接する当接部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このクランパでは、クランプ機構が被クランプ材をクランプした状態にて、当接部がクランプ機構のクランプ位置とは異なる位置(例えば、被クランプ材が管板に配置された伝熱管である場合には、伝熱管の開口縁部あるいは管板面)にて被クランプ材に当接する。したがって、クランパが、クランプ機構(コッタ)と当接部との多点支持により被クランプ材を密着状態でクランプできる。これにより、クランパが当接部を有さない構成と比較して、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0009】
また、この発明にかかるクランパは、前記クランプ機構を前記被クランプ材に対して昇降させる昇降機構を備え、且つ、前記クランプ機構が前記当接部を有する。
【0010】
このクランパでは、昇降機構がクランプ機構を昇降させることにより、クランプ機構の当接部が被クランプ材に対して昇降する。これにより、作業員の手作業によることなく、当接部を被クランプ材に近接させ得る利点がある。
【0011】
また、この発明にかかるクランパは、前記クランプ機構が、前記被クランプ材に挿入可能な挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記被クランプ材に摩擦接触するコッタと、前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを駆動するロッドシリンダとを備える。
【0012】
このクランパでは、クランプ機構が挿入部を被クランプ材に挿入した状態にて、ロッドシリンダがピストンロッドを駆動すると、ピストンロッドがコッタを押圧して挿入部から突出させる。すると、コッタが被クランプ材に押圧状態で摩擦接触して被クランプ材をクランプする。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0013】
また、この発明にかかるクランパは、前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向逆側に牽引したときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる。
【0014】
このクランパでは、ピストンロッドを挿入方向逆側(後端部側)に牽引してコッタを作動させる機構が実現される。
【0015】
また、この発明にかかるクランパは、前記コッタが前記クランプ本体内にて進退可能に配置される。
【0016】
このクランパでは、被クランプ材のクランプ状態(例えば、挿入部が被クランプ材に挿入され、ピストンロッドが牽引されてコッタが被クランプ材に摩擦接触した状態)にて、ロッドシリンダがピストンロッドをさらに牽引すると、ロッドシリンダがクランプ本体に一体化されており且つコッタがクランプ本体内にて進退可能なので、クランプ本体が挿入部の挿入方向に前進できる。すると、当接部と被クランプ材との間に隙間があるときに、この隙間を塞いで当接部を被クランプ材に密着させ得る。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0017】
また、この発明にかかるクランパは、前記挿入部が前記クランプ本体に対して別体構造を有すると共に前記クランプ本体に対してスライド可能に配置される。
【0018】
このクランパでは、挿入部がクランプ本体に対してスライド可能に嵌め合わされるので、挿入部のクランプ状態にて、クランプ本体を挿入部に対してスライドさせつつ上昇させ得る。これにより、当接部を被クランプ材に押圧して密着させ得るので、クランプ性能が向上する利点がある。
【0019】
また、この発明にかかるクランパは、前記クランプ機構を前記被クランプ材に対して昇降させると共に前記当接部を有する昇降機構と、前記昇降機構を前記被クランプ材に対して進退させる調整機構とを備える。
【0020】
このクランパは、クランプ機構が被クランプ材をクランプしつつ、昇降機構が当接部を被クランプ材に当接させて設置される。このとき、昇降機構がクランプ機構を被クランプ材に対して昇降させ、また、調整機構が昇降機構を被クランプ材に対して進退させることにより、昇降機構の当接部が被クランプ材に対して押圧状態で密着する。これにより、クランパが当接部を有さない構成と比較して、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0021】
また、この発明にかかるクランパは、前記クランプ機構が、前記被クランプ材に挿入可能な挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記被クランプ材に摩擦接触するコッタと、前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを駆動するロッドシリンダとを有する。
【0022】
このクランパでは、クランプ機構が挿入部を被クランプ材に挿入した状態にて、ロッドシリンダがピストンロッドを駆動すると、ピストンロッドがコッタを押圧して挿入部から突出させる。すると、コッタが被クランプ材に押圧状態で摩擦接触して被クランプ材をクランプする。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0023】
また、この発明にかかるクランパは、前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向に押し込んだときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる。
【0024】
このクランパでは、ピストンロッドを挿入方向(先端部側)に押し込んでコッタを作動させる機構が実現される。
【0025】
また、この発明にかかるクランパでは、前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向逆側に牽引したときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる。
【0026】
このクランパでは、ピストンロッドを挿入方向逆側(後端部側)に牽引してコッタを作動させる機構が実現される。
【0027】
また、この発明にかかるクランパでは、前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを駆動する作動流体の逆流を防止する逆止弁を有する。
【0028】
このクランパでは、クランパ23の作動流体の元圧が切断したときに、ピストンロッド2313が固定状態で保持されるので、クランパ23のクランプ状態が適正に維持される。
【0029】
また、この発明にかかるクランパは、前記被クランプ材が管材から成る部材であり、前記当接部が前記部材に当接する。
【0030】
また、この発明にかかるクランパは、前記部材が管板である。
【0031】
また、この発明にかかる水室内作業装置は、上記のいずれか一つに記載のクランパを備える。
【0032】
また、この発明にかかるクランプ方法は、クランパを被クランプ材に対してクランプさせるクランプ方法であって、前記クランパが前記被クランプ材をクランプした状態にて、前記クランパの他の一部を前記被クランプ材に対するクランプ位置とは異なる位置に当接させることを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
この発明にかかるクランパでは、クランプ機構が、挿入部を管材に挿入して管材をクランプしつつ、当接部を管板あるいは管材に当接させて設置される。したがって、クランプ機構が当接部を管板面に密着させて管材をクランプできる。これにより、当接部を有さない構成と比較して、管材を安定的にクランプできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、この発明の実施例1にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【図2】図2は、図1に記載したクランパのクランプ工程を示す説明図である。
【図3】図3は、図1に記載したクランパのアンクランプ工程を示す説明図である。
【図4】図4は、図1に記載したクランパの具体例を示す模式図である。
【図5】図5は、図4に記載したクランパの作用を示す説明図である。
【図6】図6は、図1に記載したクランパにおけるコッタ縮径構造を示す説明図である。
【図7】図7は、図1に記載したクランパにおけるコッタ縮径構造を示す説明図である。
【図8】図8は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図9】図9は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図10】図10は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図11】図11は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図12】図12は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図13】図13は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図14】図14は、図11に記載したコッタ縮径構造の変形例を示す説明図である。
【図15】図15は、この発明の実施例2にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【図16】図16は、図15に記載したクランパのクランプ工程(1)を示す説明図である。
【図17】図17は、図15に記載したクランパのクランプ工程(1)を示す説明図である。
【図18】図18は、図15に記載したクランパのクランプ工程(2)を示す説明図である。
【図19】図19は、図15に記載したクランパのクランプ工程(2)を示す説明図である。
【図20】図20は、蒸気発生器の水室内作業装置を示す斜視図である。
【図21】図21は、図20に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。
【図22】図22は、図20に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。
【図23】図23は、図21に記載したベースの設置状態を示す説明図である。
【図24】図24は、図21に記載したベースの設置状態を示す説明図である。
【図25】図25は、ベースの設置工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0036】
[水室内作業装置]
このクランパ23は、例えば、原子力プラントの蒸気発生器130にて水室内作業を行う水室内作業装置1に適用される(図20参照)。
【0037】
水室内作業装置1は、蒸気発生器130の水室131に搬入されて設置され、遠隔操作されて水室内作業を行う装置である。この水室内作業装置1は、ベース2と、中間リンク3と、マニピュレータ4と、ツール5とを備える。ベース2は、水室内作業装置1のベースとなる装置であり、水室131の管板面137aに設置される。このベース2は、管板面137aの伝熱管132をクランプ保持して管板面137aに固定される。中間リンク3は、ベース2とマニピュレータ4とを連結して、マニピュレータ4の基準軸をベース2(管板面137a)に対して傾斜させるための部品である。マニピュレータ4は、多軸マニピュレータであり、ベース2および中間リンク3を介して水室131の管板面137aから吊り下げられて設置される。このマニピュレータ4は、遠隔操作により、その姿勢を変化させ得る。ツール5は、所定の水室131内作業に対応したツールであり、マニピュレータ4の先端部に取り付けられる。このツール5は、例えば、水室内の保全作業に用いられる保全作業ツールであり、検査ツール、切削ツール、溶接ツールなどにより構成される。
【0038】
この水室内作業装置1では、マニピュレータ4が水室131の管板面137aから懸垂状態で吊り下げられ、この状態にて、旋回しつつ姿勢を変化させることにより、ツール5を移動させて水室内作業を行う。これにより、管板面137aのベース2を起点とした広範囲での水室内作業を実現できる。また、水室内作業装置1は、ベース2が後述する管板歩行機能を有することにより、管板面137aに沿って水室131内を移動できる。これにより、水室131内での作業領域が拡大されて、水室131内作業の作業性が向上する。なお、水室131内作業には、例えば、入口管台135や出口管台136、伝熱管132、仕切板134と管板137との溶接作業、仕切板134と水室鏡部との溶接部の検査作業あるいは補修作業などが含まれる。
【0039】
[ベース]
図21および図22は、図20に記載した水室内作業装置のベースの具体例を示す斜視図である。図23および図24は、図21に記載したベースの設置状態を示す説明図である。これらの図において、図21および図23は、ベースがすべてのウイングを開いた状態を示し、図22および図24は、ベースがすべてのウイングを閉じた状態を示している。
【0040】
このベース2は、ベース本体21と、4つのウイング22a、22bと、複数のクランパ23a、23bとを有する。ベース本体21は、枠型形状のケーシングである。4つのウイング22a、22bは、ベース本体21に挿入されて設置される。これらのウイング22a、22bは、例えば、伸縮式のはしご機構により駆動されて、ベース本体21の設置位置に対して相互に直交する方向にスライド変位できる(図21および図22参照)。また、4つのウイング22a、22bは、相互に異なる方向にスライド変位でき、また、相互に独立して駆動される。クランパ23a、23bは、先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持する機構である。例えば、この実施の形態では、3つを一組とするクランパ23a(23b)が各ウイング22a(22b)の端部にそれぞれ設置されている。また、これらのクランパ23a(23b)が管板面137aにおける伝熱管132の設置間隔に合わせて一列に揃えられて配置されている。なお、クランパ23a、23bの具体的な構成については、後述する。
【0041】
このベース2では、各クランパ23a、23bが先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持することにより、ベース2が管板面137aから懸垂した状態で固定される(図18および図19参照)。また、ベース2は、ウイング22a(22b)を伸縮させてクランパ23a(23b)の位置をスライド変位させ、また、伝熱管132に対するクランパ23a(23b)のクランプ位置を順次切り替えることにより、管板面137aに沿って移動できる(管板歩行)(図示省略)。なお、かかるベース2の管板歩行にかかる歩行ロジックは、当業者自明の範囲内にて任意のものが採用され得る。
【実施例1】
【0042】
[ベースのクランパ]
図1は、この発明の実施例1にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【0043】
なお、この実施の形態では、伝熱管132側(水室131の管板面137a側)を上方あるいはクランパの先端部側と呼び、逆側(水室131の床面側)を下方あるいはクランパの後端部側と呼ぶ。
【0044】
このクランパ23は、先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプする機構であり、例えば、上記したベース2のクランパ23a、23bとして採用され得る。このクランパ23は、クランプ機構231と、昇降機構232とを備える。
【0045】
クランプ機構231は、先端部を伝熱管132に挿入して摩擦接触により伝熱管132をクランプする機構であり、クランプ本体2311と、コッタ2312と、ピストンロッド2313と、弾性体2314と、ロッドシリンダ2315とを有する。
【0046】
クランプ本体2311は、クランプ機構231の本体を構成する。このクランプ本体2311は、伝熱管132に挿入可能な挿入部2311aを軸方向の先端部に有する。また、クランプ本体2311は、挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて伝熱管132の管板面137aに当接可能な当接部2311bを有する。例えば、この実施例1では、クランプ本体2311が長尺な円筒部材から成り、その一方の端部に挿入部2311aを有している。また、クランプ本体2311が挿入部2311aの付け根にフランジ状の当接部2311bを有し、挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて、この当接部2311bを伝熱管132の開口縁部132aに面接触させ得る。また、クランプ本体2311の挿入部2311aには、コッタ2312の設置数に対応するスリット2311cが形成される。
【0047】
コッタ2312は、伝熱管132のクランプ時にて伝熱管132の内周面に押圧されて摩擦接触する部材であり、例えば、金属材などから成る。このコッタ2312は、クランプ本体2311に設置され、クランプ本体2311の挿入部2311aから突出可能かつ挿入部2311aに収納可能に配置される。また、コッタ2312は、挿入部2311aに対してクランプ本体2311の軸方向に進退可能に配置される。例えば、この実施例1では、クランプ本体2311の挿入部2311aにスリット2311cが形成され、このスリット2311cにコッタ2312が差し込まれて配置されている。また、コッタ2312がスリット2311c内にてクランプ本体2311の径方向および軸方向に進退可能に配置されている。
【0048】
ピストンロッド2313は、コッタ2312を駆動するためのロッドであり、クランプ本体2311に挿入されてクランプ本体2311の軸方向に進退可能に配置される。このピストンロッド2313は、テーパ形状の先端部を有し、そのテーパ面2313aをクランプ本体2311の後端部側に向けつつコッタ2312に当接させて配置される。また、ピストンロッド2313は、クランプ本体2311の後端部側に牽引されたときに、そのテーパ面2313aにてコッタ2312の内周面を押圧してクランプ本体2311から突出させる。また、ピストンロッド2313は、その後端部にピストン部2313bを有する。
【0049】
弾性体2314は、コッタ2312をスリット2311cの上部に配置するための部材であり、例えば、コイルバネあるいはゴム管から成る。この弾性体2314は、クランプ本体2311内に挿入され、クランプ本体2311に支持されてコッタ2312の後端部に付勢する。この弾性体2314の付勢力により、コッタ2312がスリット2311cの上部で保持される。
【0050】
ロッドシリンダ2315は、ピストンロッド2313(ピストン部2313b)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。このロッドシリンダ2315は、クランプ本体2311の後端部に一体形成され、ピストンロッド2313を駆動してクランプ本体2311の軸方向に進退変位させる。また、ロッドシリンダ2315には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンロッド2313が駆動される。例えば、この実施例1では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313のピストン部2313bを介して第一流体室2315aと第二流体室2315bとに区画されている。そして、第一流体室2315aの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引される。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押圧して、コッタ2312がクランプ本体2311から突出する。また、第二流体室2315bの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれる。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312への押圧状態を解除して、コッタ2312がクランプ本体2311に収納される。
【0051】
昇降機構232は、クランプ機構231を昇降させる機構であり、昇降シリンダ2321を有する。昇降シリンダ2321は、クランプ本体2311(ピストン部2311d)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。また、昇降シリンダ2321は、クランプ機構231のロッドシリンダ2315に対して直列に連結される。また、昇降シリンダ2321は、ベース2のウイング22a(22b)に固定される。これにより、クランパ23が昇降シリンダ2321を介してベース2のウイング22a(22b)に固定されて保持される。この昇降シリンダ2321には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンであるクランプ本体2311が進退変位してクランプ機構231が昇降する。例えば、この実施例1では、昇降シリンダ2321がクランプ本体2311のピストン部2311dを介して第一流体室2321aと第二流体室2321bとに区画されている。そして、第一流体室2321aの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が先端部側に押し込まれて、クランプ本体2311が上昇する。また、第二流体室2321bの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が後端部側に牽引されて、クランプ本体2311が下降する。
【0052】
[伝熱管のクランプ工程]
図25は、ベース2の設置工程を示す説明図である。図2は、図1に記載したクランパのクランプ工程を示す説明図である。これらの図において、図25は、ベース2と中間リンク3との組立体を水室131に搬入して管板面137aに設置する工程(ベース設置工程)を示しており、図2は、このベース設置工程にて、ベース2のクランパ23が伝熱管132をクランプ保持する様子を示している。
【0053】
ベース2の設置工程では、一対のベース搬入取付治具11が水室131の管板面137aに取り付けられ、ベース2と中間リンク3との組立体がマンホール138から水室131内に搬入される(図25参照)。そして、ベース搬入取付治具11が当該組立体をワイヤ12で管板面137aまで吊り上げて保持する。その後に、ベース2がクランパ23a、23bの先端部(クランプ機構231の挿入部2311a)を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプ保持する。
【0054】
伝熱管132へのクランパ23のクランプ工程では、まず、初期状態として、クランパ23が先端部(クランプ機構231の挿入部2311a)を伝熱管132側に向けつつ軸方向を鉛直に立てて配置される(図2(a)参照)。また、クランパ23が昇降機構232の昇降シリンダ2321にてベース2のウイング22a(22b)に固定保持されている。また、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれた状態にあり、コッタ2312が縮径してクランプ本体2311のスリット2311c内に収納されている。また、弾性体2314が伸びた状態にあり、クランプ本体2311のスリット2311c内にて、コッタ2312を先端部側に押し上げている。また、昇降機構232がクランプ機構231を下降させた状態にあり、挿入部2311aが伝熱管132の手前に位置している。
【0055】
次に、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第一流体室2321aの作動流体を加圧してクランプ機構231を上昇させる(図2(b)参照)。これにより、クランプ機構231の挿入部2311aが伝熱管132に挿入される。このとき、昇降シリンダ2321がベース本体21側(ウイング22a(22b))に保持され、このベース本体21がベース搬入取付治具11のワイヤ12により吊り下げられて保持されるので(図25参照)、昇降シリンダ2321の高さ位置が一定に維持される。また、この状態では、通常、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0056】
次に、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引されて下降し、そのテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312がクランプ本体2311のスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧されて摩擦接触する。これにより、コッタ2312が伝熱管132をクランプ保持する。
【0057】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図2(d)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランプ本体2311がピストンロッド2313を後端部側に牽引して、クランパ23全体が上方に持ち上がる。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、クランプ機構231の当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。具体的には、ロッドシリンダ2315と、このロッドシリンダ2315に一体化されているクランプ本体2311と、このクランプ本体2311に係合する昇降シリンダ2321と、この昇降シリンダ2321に連結されたベース2全体とが、ロッドシリンダ2315の流体圧により牽引されて持ち上がる。また、このとき、クランプ本体2311の軸方向変位により、スリット2311cの位置がコッタ2312に対してクランプ本体2311の先端部側に移動する。また、クランプ本体2311とコッタ2312との間にある弾性体2314が圧縮変形する。
【0058】
そして、ベース2に設置された複数のクランパ23(23a、23b)が上記のように伝熱管132をクランプ保持することにより、ベース2が管板面137aに対して懸垂状態で固定される(図25参照)。このとき、各クランパ23が当接部2311bを伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)に密着させて伝熱管132をクランプ保持するので(図2(d)参照)、ベース2が管板面137aにしっかりと固定される。これにより、水室内作業時にて、水室内作業装置1が管板面137aに安定的に設置される。
【0059】
[伝熱管のアンクランプ工程]
図3は、図1に記載したクランパのアンクランプ工程を示す説明図である。同図は、水室内作業装置1を水室131から撤去する工程(撤去工程)にて、クランパ23a、23bが伝熱管132をアンクランプする様子を示している。
【0060】
伝熱管132からのクランパ23のアンクランプ時には、クランパ23が伝熱管132をクランプ保持している状態(図3(e)参照)にて、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の第二流体室2315bの作動流体を加圧し、第一流体室2315aの作動流体を減圧する(図3(f)参照)。すると、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し上げられ、コッタ2312が縮径してクランプ本体2311内に収納される。また、弾性体2314の圧縮状態が解除されて、弾性体2314が復元する。これにより、クランプ本体2311が伝熱管132から引き抜き可能となる。
【0061】
次に、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第二流体室2321bの作動流体を加圧し、第一流体室2321aの作動流体を減圧して、クランプ機構231を下降させる(図3(g)参照)。これにより、クランプ本体2311の挿入部2311aが伝熱管132から引き抜かれて、伝熱管132のクランプ保持が解除される。
【0062】
そして、ベース2に設置された複数のクランパ23(22a、23b)が伝熱管132のクランプ保持を解除することにより、ベース2が管板面137aから取り外し可能となる。また、この状態では、ベース2がベース搬入取付治具11のワイヤ12により吊り下げられて保持されるので、ベース2の落下が防止される(図25参照)。
【0063】
なお、この実施例1では、クランパ23が伝熱管132をクランプ保持している状態にて、ピストンロッド2313がロッドシリンダ2315を貫通してロッドシリンダ2315の後端側に突出している(図3(e)参照)。かかる構成では、伝熱管132のアンクランプ時にて、ピストンロッド2313がコッタ2312に嵌り込んで抜けないときに、外部からピストンロッド2313の後端部を叩くことにより、ピストンロッド2313をコッタ2312から外し得る。これにより、非常時のアンクランプが可能となる。
【0064】
[ロッドシリンダの流体圧制御機構]
図4は、図1に記載したクランパの具体例を示す模式図である。図5は、図4に記載したクランパの作用を示す説明図である。これらの図は、ロッドシリンダ2315の流体圧制御機構の構成(図4)および作用(図5)を示している。
【0065】
図4に示すように、このクランパ23では、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の流体圧を制御する流体圧制御機構2316を有する。この流体圧制御機構2316は、加圧ポンプ2316aと、逆止弁2316bと、リリースバルブ2316cとから成り、これらとロッドシリンダ2315とが配管2316d〜2316fを介して接続されて構成される。加圧ポンプ2316aは、ロッドシリンダ2315の作動流体(例えば、空気)を加圧するためのポンプである。この加圧ポンプ2316aは、配管2316dを介してロッドシリンダ2315の第一流体室2315aに接続され、また、配管2316eを介してロッドシリンダ2315の第二流体室2315bに接続される。また、加圧ポンプ2316aは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315aおよび第二流体室2315bの作動流体を選択的に加圧できる。逆止弁2316bは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315a側の配管2316d上に配置されて、第一流体室2315aからの作動流体の逆流を防止する。リリースバルブ2316cは、ロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を外部にリリースするバルブであり、第一流体室2315aに取り付けられて設置される。このリリースバルブ2316cは、配管2316fを介して加圧ポンプ2316aに接続され、加圧ポンプ2316aにより駆動されて開閉動作する。
【0066】
伝熱管132のクランプ工程では、加圧ポンプ2316aがロッドシリンダ2315の第一流体室2315aの作動流体を加圧する(図5(a)参照)。このとき、リリースバルブ2316cが閉止状態にある。したがって、第一流体室2315aの流体圧が上昇して、ピストンロッド2313が下降する。これにより、コッタ2312が拡径して伝熱管132をクランプ保持する(図5(b)参照)。このとき、逆止弁2316bが第一流体室2315aからの作動流体の逆流を防止する。したがって、加圧ポンプ2316aが停止しても、第一流体室2315aの流体圧が保持されて、伝熱管132のクランプ状態が適正に維持される。この逆止弁2316bにより、クランパ23の作動流体の元圧が切断されたときの、伝熱管132へのクランプ状態を維持するためのフェールセーフが実現される。
【0067】
伝熱管132のアンクランプ工程では、加圧ポンプ2316aが第二流体室2315bの作動流体を加圧し、同時に、リリースバルブ2316cが開放されて第一流体室2315aの作動流体を減圧する(図5(c)参照)。すると、第二流体室2315bの流体圧が上昇して、ピストンロッド2313が上昇する。これにより、コッタ2312が縮径して伝熱管132のクランプ状態が解除される(図5(d)参照)。なお、この実施例1では、空気がロッドシリンダ2315の作動流体として用いられている。このため、第一流体室2315aの作動流体がリリースバルブ2316cからそのまま水室131内に放出されている。
【0068】
[コッタ縮径構造]
図6および図7は、図1に記載したクランパのコッタ縮径構造を示す説明図である。これらの図は、クランパ23のアンクランプ工程にて、クランプ機構231のコッタ2312を縮径させるための構造を示している。
【0069】
図6に示すクランパ23では、コッタ2312が、テーパ面2312aを有し、クランプ本体2311のスリット2311c内にて、このテーパ面2312aをクランプ本体2311の先端部側に向けて配置されている。また、弾性体2314がクランプ本体2311に支持されてコッタ2312の後端部に付勢している。この弾性体2314の付勢力により、コッタ2312がテーパ面2312aをスリット2311cの先端部側の壁面に押圧している。
【0070】
伝熱管132のクランプ状態(図3(e)参照)では、ピストンロッド2313が牽引されて下降した状態にあり、コッタ2312が拡径してクランプ本体2311のスリット2311cから突出している(図6参照)。このとき、弾性体2314が圧縮状態にある。次に、伝熱管132のアンクランプ工程にて、ロッドシリンダ2315が上昇すると(図3(f)参照)、弾性体2314がコッタ2312をスリット2311cの先端部側の壁面に押圧するので(図6参照)、コッタ2312がテーパ面2312aに沿ってスリット2311c内を摺動して縮径する(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0071】
図7に示すクランパ23では、コッタ2312が環状の弾性部材2312bを有している。この弾性部材2312bは、例えば、環状の板バネ、ゴム製のOリングから成り、コッタ2312の外周面(径方向外側)に嵌め合わされて、コッタ2312に径方向内側への弾性力を付与している。
【0072】
伝熱管132のクランプ状態(図3(e)参照)では、ピストンロッド2313が牽引されて下降した状態にあり、コッタ2312が拡径してクランプ本体2311のスリット2311cから突出している(図7参照)。このとき、弾性部材2312bは、コッタ2312の拡径により伸びた状態にある。次に、伝熱管132のアンクランプ工程にて、ロッドシリンダ2315が上昇すると(図3(f)参照)、弾性部材2312bが縮んでコッタ2312を縮径させる(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0073】
[コッタ縮径構造の変形例1]
図8〜図10は、図6に記載したコッタ縮径構造の変形例1を示す説明図である。これらの図は、コッタ縮径構造の要部拡大図(図8)、クランプ工程における作用説明図(図9)およびアンクランプ工程における作用説明図(図10)をそれぞれ示している。
【0074】
図8に示すクランパ23は、図6に示すクランパ23と比較して、以下の相異点を有する。すなわち、クランプ本体2311の挿入部2311aがクランプ本体2311に対して別体構造を有している。具体的には、挿入部2311aが、スリット2311cを有する筒状部材から成り、クランプ本体2311の先端部に挿入されて軸方向に進退可能に配置されている。また、コッタ2312が、挿入部2311aのスリット2311cに差し込まれて、スリット2311c内を挿入部2311aの軸方向および径方向に進退可能に配置されている。また、コッタ2312が、テーパ面2312aを有し、このテーパ面2312aをクランプ本体2311の先端部側に向けて配置されている。また、コッタ2312の後端部側に、コッタ2312を支持するための支持部材2317が設けられている。この支持部材2317は、フランジ形状の先端部を有する筒状部材であり、その先端部をコッタ2312の後端部に当接させて配置されている。また、支持部材2317は、挿入部2311aに挿入されて、スリット2311c内を挿入部2311aの軸方向に進退可能に配置されている。また、支持部材2317の後端部とクランプ本体2311との間に、弾性体2318が挟み込まれて配置されている。この弾性体2318は、例えば、コイルバネあるいはゴム管から成り、クランプ本体2311に支持されて支持部材2317の後端部に付勢している。この弾性体2318の付勢力により、支持部材2317がコッタ2312をスリット2311cの先端部側の壁面に押圧した状態で保持され、また、挿入部2311aがクランプ本体2311の先端部から軸方向に突出した状態で保持されている。
【0075】
クランプ工程では、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させて、クランプ機構231が挿入部2311aを伝熱管132に挿入する(図9(a)および図2(b)参照)。このとき、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0076】
次に、クランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引して下降させる(図9(b)および図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312が挿入部2311aのスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧状態で摩擦接触する。このとき、スリット2311c内にて、支持部材2317がクランプ本体2311の後端部側に変位することにより、コッタ2312がそのテーパ面2312aに沿って摺動変位できる。
【0077】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引する(図9(c)および図2(d)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランパ23全体が上方に持ち上がる。このとき、クランプ本体2311と挿入部2311aとが別体構造を有するので、クランプ本体2311が挿入部2311aに対して軸方向の先端部側にスライド変位する。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。また、クランプ本体2311の軸方向変位により、クランプ本体2311と支持部材2317との間にある弾性体2318が圧縮変形する。
【0078】
アンクランプ工程では、伝熱管132のクランプ状態にて、ピストンロッド2313が上昇すると、ピストンロッド2313からコッタ2312への押圧力が解除される(図10(d)および(e)参照)。すると、支持部材2317が弾性体2318の付勢力によりコッタ2312をクランプ本体2311(スリット2311cの先端部側の壁面)に押圧しているので、コッタ2312がテーパ面2312aに沿ってスリット2311c内を摺動して縮径する。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0079】
[コッタ縮径構造の変形例2]
図11〜図13は、図7に記載したコッタ縮径構造の変形例2を示す説明図である。これらの図は、コッタ縮径構造の要部拡大図(図11)、クランプ工程における作用説明図(図12)およびアンクランプ工程における作用説明図(図13)をそれぞれ示している。
【0080】
図11に示すクランパ23は、図7に示すクランパ23と比較して、以下の相異点を有する。すなわち、クランプ本体2311の挿入部2311aがクランプ本体2311に対して別体構造を有している。具体的には、挿入部2311aが、スリット2311cを有する筒状部材から成り、クランプ本体2311の先端部に挿入されて軸方向に進退可能に配置されている。また、挿入部2311aとクランプ本体2311との間に、弾性体2318が挟み込まれて配置されている。この弾性体2318が挿入部2311aに付勢することにより、挿入部2311aがクランプ本体2311の先端部から軸方向に突出した状態で保持されている。また、コッタ2312が、挿入部2311aのスリット2311cに差し込まれ、スリット2311c内を挿入部2311aの径方向にのみ進退可能に配置されている。そして、このコッタ2312の外周面(径方向外側)に、コッタ2312を縮径させるための環状の弾性部材2312bが嵌め合わされている。
【0081】
クランプ工程では、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させて、クランプ機構231が挿入部2311aを伝熱管132に挿入する(図12(a)および図2(b)参照)。このとき、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間は、密着状態となる(条件によっては、隙間gが発生する場合がある)。
【0082】
次に、クランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引して下降させる(図12(b)および図2(c)参照)。すると、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312が挿入部2311aのスリット2311cから突出し、コッタ2312の頂部が伝熱管132の内周面に押圧状態で摩擦接触する。
【0083】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、さらにクランプ機構231がピストンロッド2313を後端部側に牽引する(図12(c)参照)。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、クランパ23全体が上方に持ち上がる。また、クランプ本体2311と挿入部2311aとが別体構造を有するので、クランプ本体2311が挿入部2311aに対してスライド変位する。これにより、クランプ本体2311の当接部2311bと伝熱管132の開口縁部132aとの隙間gが塞がり、当接部2311bが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて面接触状態で密着する。また、クランプ本体2311の軸方向変位により、クランプ本体2311と挿入部2311aとの間にある弾性体2318が圧縮変形する。
【0084】
アンクランプ工程では、伝熱管132のクランプ状態にて、ピストンロッド2313が上昇すると、ピストンロッド2313からコッタ2312への押圧力が解除される(図13(d)および(e)参照)。すると、弾性部材2312bが縮んでコッタ2312を縮径させる(図示省略)。これにより、コッタ2312がクランプ本体2311内に収納される。
【0085】
なお、このコッタ縮径構造の変形例2では、弾性体2318が、挿入部2311aの後端部とクランプ本体2311の内底部との間に挟み込まれて配置されている(図11参照)。しかし、これに限らず、弾性体2318が、コッタ2312の後端部を支えているコッタ支え2319とクランプ本体2311の内底部との間に挟み込まれて配置されてもよい(図14参照)。かかる構成の場合、弾性体2318の付勢力がコッタ支え2319とコッタ2312を介してスリット2311cの先端部側を押圧することにより、挿入部2311aをクランプ本体2311から突出することができ、同様の機能が得られる。
【実施例2】
【0086】
[ベースのクランパ]
図15は、この発明の実施例2にかかるクランパを示す軸方向断面図である。
【0087】
この実施例2のクランパ23は、クランプ機構231と、昇降機構232と、調整機構233とを備える。したがって、この実施例2のクランパ23は、実施例1のクランパ23と比較して、調整機構233をさらに備える点で相異する。
【0088】
クランプ機構231は、先端部を伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプする機構であり、クランプ本体2311と、ピストンロッド2313と、コッタ2312と、ロッドシリンダ2315とを有する。
【0089】
クランプ本体2311は、クランプ機構231の本体を構成する。このクランプ本体2311は、伝熱管132に挿入可能な挿入部2311aを軸方向の先端部に有する。例えば、この実施例2では、クランプ本体2311が長尺な円筒部材から成り、その一方の端部に挿入部2311aを有している。また、クランプ本体2311の挿入部2311aには、コッタ2312の設置数に対応するスリット2311cが形成されている。なお、この実施例2のクランパ23では、実施例1と比較して、クランプ本体2311の当接部2311b(図1参照)が省略されて、別途、昇降機構232に当接部2321cが設けられている。この点については、後述する。
【0090】
コッタ2312は、クランプ時にて伝熱管132の内周面に押圧されて摩擦接触する部材であり、例えば、金属材などから成る。このコッタ2312は、クランプ本体2311に設置され、クランプ本体2311の挿入部2311aから突出可能かつ挿入部2311aに収納可能に配置される。例えば、この実施例2では、クランプ本体2311の挿入部2311aにスリット2311cが形成され、このスリット2311cにコッタ2312が差し込まれて配置されている。また、コッタ2312がスリット2311c内にてクランプ本体2311の径方向にのみ進退可能に配置されている。したがって、コッタ2312が径方向にのみ進退可能であり、軸方向には、スリット2311cに拘束されて変位できない。このため、実施例1のクランパ23における弾性体2314が省略されている。
【0091】
ピストンロッド2313は、コッタ2312を駆動するためのロッドであり、クランプ本体2311に挿入されてクランプ本体2311の軸方向に進退可能に配置される。このピストンロッド2313は、テーパ形状の先端部を有し、そのテーパ面2313aをクランプ本体2311の先端部側に向けつつコッタ2312に当接させて配置される。また、ピストンロッド2313は、クランプ本体2311の先端部側に押し込まれたときにコッタ2312を押圧してクランプ本体2311から突出させるように作用する。したがって、この実施例2のクランパ23では、実施例1のクランパ23と比較して、ピストンロッド2313のテーパ面2313aの向きが逆転しており、その結果、コッタ2312を進退させるためのピストンロッド2313の動作に相異点を有する。また、ピストンロッド2313は、その後端部にピストン部2313bを有する。
【0092】
ロッドシリンダ2315は、ピストンロッド2313(ピストン部2313b)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。このロッドシリンダ2315は、クランプ本体2311の後端部に一体形成され、ピストンロッド2313を駆動してクランプ本体2311の軸方向に進退変位させる。また、ロッドシリンダ2315には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンロッド2313が駆動される。例えば、この実施例2のクランパ23では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313のピストン部2313bを介して第一流体室2315aと第二流体室2315bとに区画されている。そして、第二流体室2315bの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれる。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312を押圧して、コッタ2312がクランプ本体2311から突出する。また、第一流体室2315aの作動流体が加圧されることにより、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引される。これにより、ピストンロッド2313のテーパ面2313aがコッタ2312への押圧状態を解除して、コッタ2312がクランプ本体2311に収納される。
【0093】
昇降機構232は、クランプ機構231を昇降させる機構であり、昇降シリンダ2321を有する。昇降シリンダ2321は、クランプ本体2311(ピストン部2311d)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。また、昇降シリンダ2321は、クランプ機構231のロッドシリンダ2315に対して直列に連結される。この昇降シリンダ2321には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンであるクランプ本体2311が進退変位してクランプ機構231が昇降する。例えば、この実施例2では、昇降シリンダ2321がクランプ本体2311のピストン部2311dを介して第一流体室2321aと第二流体室2321bとに区画されている。そして、第一流体室2321aの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が先端部側に押し込まれて、クランプ本体2311が上昇する。また、第二流体室2321bの作動流体が加圧されることにより、クランプ本体2311が後端部側に牽引されて、クランプ本体2311が下降する。
【0094】
また、昇降シリンダ2321は、クランプ機構231の挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて伝熱管132の管板面137aに当接可能な当接部2321cを有する。例えば、この実施例2では、当接部2321cが昇降シリンダ2321の先端側の縁部を軸方向に延長して成る筒状形状を有している。そして、挿入部2311aを伝熱管132に挿入した状態にて、この当接部2321cが筒状形状の先端側の縁部を伝熱管132の開口縁部132aに当接可能となっている。
【0095】
調整機構233は、昇降機構232(昇降シリンダ2321)を軸方向に進退変位させて、昇降シリンダ2321の当接部2321cと伝熱管132の開口縁部132aとの位置関係(隙間g)を調整する機構である。この調整機構233は、調整シリンダ2331を有する。調整シリンダ2331は、昇降シリンダ2321(ピストン部2321d)をピストンとするピストン・シリンダ機構を構成する。また、調整シリンダ2331は、昇降シリンダ2321に対して直列に連結される。この調整シリンダ2331には、外部の流体圧機構(図示省略)から流体圧が付与される。そして、この流体圧の制御により、ピストンである昇降シリンダ2321が軸方向に進退変位する。例えば、この実施例2では、調整シリンダ2331がピストン部2321dを介して第一流体室2331aと第二流体室2331bとに区画されている。そして、第一流体室2331aの作動流体が加圧されることにより、昇降シリンダ2321が先端部側に押し込まれて前進(上昇)する。また、第二流体室2331bの作動流体が加圧されることにより、昇降シリンダ2321が後端部側に牽引されて後退(下降)する。この昇降シリンダ2321の進退変位により、昇降シリンダ2321の当接部2321cと伝熱管132の開口縁部132aとの位置関係(隙間g)が変化する。
【0096】
また、調整機構233は、調整シリンダ2331にてベース2のウイング22a(22b)に固定される。これにより、クランパ23がベース2のウイング22a(22b)に保持される。
【0097】
なお、この実施例2では、ピストンロッド2313が天細地太形状(伝熱管132に対する挿入方向側が細い形状)の先端部を有し、この先端部を伝熱管132の挿入方向に前進させてコッタ2312を押し広げている(図15および図17(d)参照)。しかし、これに限らず、ピストンロッド2313が天太地細形状(伝熱管132に対する挿入方向側が太い形状)の先端部を有し、この先端部を伝熱管132の挿入方向に対して後退させてコッタ2312を押し広げても良い(図示省略。図11および図12(b)参照)。
【0098】
[伝熱管のクランプ工程(1)]
図16および図17は、図15に記載したクランパのクランプ工程(1)を示す説明図である。これらの図は、ベース設置工程にて、ベース2のクランパ23が伝熱管132をクランプ保持する様子を示している。
【0099】
まず、初期状態では、クランパ23が先端部(クランプ機構231の挿入部2311a)を伝熱管132側に向けつつ軸方向を鉛直に立てて配置される(図16(a)参照)。また、クランパ23が調整機構233の調整シリンダ2331にてベース2のウイング22a(22b)に固定保持されている。また、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の後端部側に牽引された状態にあり、コッタ2312が縮径してクランプ本体2311のスリット2311c内に収納されている。また、昇降機構232がクランプ機構231を下降させた状態にあり、また、調整機構233が昇降機構232を下方に後退させた状態にある。したがって、昇降シリンダ2321の当接部2321cと伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)との間には、隙間gが開けられている。
【0100】
次に、伝熱管132のクランプ工程では、調整機構233が調整シリンダ2331の第一流体室2331aを加圧して、昇降機構232を伝熱管132側に前進させる(図16(b)参照)。これにより、昇降シリンダ2321の当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)に当接して、隙間gが塞がる。このとき、調整シリンダ2331がベース本体21側(ウイング22a(22b))に保持され、このベース本体21がベース搬入取付治具11のワイヤまたはベルト12により吊り下げられて保持されるので(図25参照)、調整シリンダ2331の高さ位置が一定に維持される。
【0101】
次に、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第一流体室2321aの作動流体を加圧して、クランプ機構231を上昇させる(図16(c)参照)。これにより、クランプ機構231の挿入部2311aが伝熱管132に挿入される。
【0102】
次に、クランプ機構231がロッドシリンダ2315の第二流体室2315bの作動流体を加圧する(図17(d)参照)。すると、ピストンロッド2313がクランプ本体2311の先端部側に押し込まれて上昇し、そのテーパ面2313aがコッタ2312を押し開いて、コッタ2312が拡径する。すると、コッタ2312がクランプ本体2311から突出して伝熱管132の内周面に押圧状態で摩擦接触する。これにより、コッタ2312が伝熱管132をクランプ保持する。
【0103】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第二流体室2321bの作動流体を加圧し、第一流体室2321aの作動流体を減圧する(図17(e)参照)。すると、昇降シリンダ2321の第一流体室2321aの作動流体と第二流体室2321bの作動流体との圧力関係が反転する。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、昇降シリンダ2321が上方に持ち上がる。これにより、昇降シリンダ2321の当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて密着する。
【0104】
[伝熱管のクランプ工程(2)]
図18および図19は、図15に記載したクランパのクランプ工程(2)を示す説明図である。これらの図は、昇降シリンダ2321の当接部2321cを伝熱管132の開口縁部132a(管板面137a)に当接させるステップ(図16(b)参照)にて、調整機構233が昇降機構232を伝熱管132側に前進させたにも関わらず、昇降シリンダ2321の当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132aに当接しない場合について示している。なお、この図において、図16および図17に記載したクランプ工程(1)と同様なステップについては、その旨を示唆して説明を省略する。
【0105】
まず、初期状態では、クランパ23が伝熱管132に対して所定の位置に配置される(図18(a)参照)。この初期状態は、図16(a)に記載した状態と同様である。
【0106】
次に、伝熱管132のクランプ時には、調整シリンダ2331の第一流体室2331aが加圧されて、調整機構233が昇降機構232を伝熱管132側に前進させる(図18(b)参照)。このとき、昇降シリンダ2321の当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132aに当接せず、隙間gが残存する場合がある。
【0107】
次に、昇降機構232がクランプ機構231を上昇させる(図18(c)参照)。このステップは、図16(c)に記載したステップと同様である。
【0108】
次に、ピストンロッド2313が上昇してコッタ2312を押し込み、コッタ2312が拡径して伝熱管132をクランプ保持する(図19(d)参照)。このステップは、図17(d)に記載したステップと同様である。
【0109】
次に、コッタ2312が伝熱管132に摩擦接触した状態にて、昇降機構232が昇降シリンダ2321の第二流体室2321bの作動流体を加圧して、第一流体室2321aの作動流体を減圧する(図19(e)参照)。すると、昇降シリンダ2321の第一流体室2321aの作動流体と第二流体室2321bの作動流体との圧力関係が反転する。すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を介して伝熱管132に固定されているので、昇降シリンダ2321が上方に持ち上がる。これにより、昇降シリンダ2321の当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132aに当接して隙間gが塞がり、また、当接部2321cが伝熱管132の開口縁部132aに押圧されて密着する。
【0110】
[効果]
以上説明したように、このクランパ23は、被クランプ材(例えば、管板137に配置された管材。ここでは、伝熱管132。)をクランプする(図1〜図3および図15〜図17参照)。また、クランパ23は、被クランプ材をクランプするクランプ機構231と、このクランプ機構231のクランプ状態にてクランプ機構231のクランプ位置とは異なる位置にて被クランプ材に当接する当接部2311とを備える。
【0111】
かかる構成では、クランプ機構231が、被クランプ材をクランプした状態にて、当接部2311bがクランプ機構231のクランプ位置とは異なる位置(例えば、被クランプ材が管板137に配置された伝熱管132である場合には、伝熱管132の開口縁部132aあるいは管板面137a)にて被クランプ材に当接する(図2および図16参照)。したがって、クランパ23が、クランプ機構231(コッタ2312)と当接部2311bとの多点支持により被クランプ材を密着状態でクランプできる。これにより、クランパが当接部を有さない構成と比較して、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0112】
なお、上記の実施例1、2では、被クランプ材が管板137に配置された伝熱管132であり、クランパ23がクランプ機構231の挿入部2311aを伝熱管132に挿入して伝熱管132をクランプしている(図2、図15および図19参照)。しかし、クランプ対象である被クランプ材は、伝熱管132のような管材に限定されない。例えば、被クランプ材が孔、穴、凹部、スリット、隙間などの被挿入部を有するときに、この被挿入部にクランパ23がクランプ機構231の挿入部2311を挿入して被クランプ材をクランプしても良い(図示省略)。
【0113】
また、上記の実施例1(実施例2)では、クランパ23がクランプ機構231および昇降機構232(調整機構233)を備え、クランプ工程にて、クランプ機構231および昇降機構232(調整機構233)が動作することにより、当接部2311b(2321c)が昇降して伝熱管132の開口縁部132aに当接している(図1〜図3(図15〜図17)参照)。しかし、これに限らず、クランパが昇降機構あるいは調整機構を有さない構成(図示省略)において、作業員が手作業あるいは治具を用いてクランパの当接部を伝熱管の開口縁部に押圧し、この状態で、クランプ機構が伝熱管をクランプしても良い。
【0114】
また、このクランパ23は、クランプ機構231を被クランプ材に対して昇降させる昇降機構232を備え、且つ、クランプ機構231が上記の当接部2311bを有する(図1参照)。
【0115】
かかる構成では、昇降機構232がクランプ機構231を昇降させることにより、クランプ機構231の当接部2311bが被クランプ材に対して昇降する(図2参照)。これにより、作業員の手作業によることなく、当接部2311bを被クランプ材に近接させ得る利点がある。
【0116】
また、このクランパ23では、クランプ機構231が、被クランプ材に挿入可能な挿入部2311aを有するクランプ本体2311と、挿入部2311aから突出して被クランプ材に摩擦接触するコッタ2312と、コッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させるピストンロッド2313と、クランプ本体2311に一体化されてピストンロッド2313を牽引するロッドシリンダ2315とを備える(図1参照)。
【0117】
かかる構成では、クランプ機構231が挿入部2311aを被クランプ材に挿入した状態にて、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を駆動すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させる(図2参照)。すると、コッタ2312が被クランプ材に押圧状態で摩擦接触して被クランプ材をクランプする。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0118】
また、上記の構成では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を挿入部2311aの挿入方向逆側に牽引したときに、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させることが好ましい(図2参照)。これにより、ピストンロッド2313を挿入方向逆側(後端部側)に牽引してコッタ2312を作動させる機構が実現される。
【0119】
また、このクランパ23では、コッタ2312がクランプ本体2311内にて(例えば、挿入部2311に対して挿入部2311aの挿入方向に)進退可能に配置される(図1参照)。
【0120】
かかる構成では、被クランプ材のクランプ状態(例えば、挿入部2311aが被クランプ材に挿入され、ピストンロッド2313が牽引されてコッタ2312が被クランプ材に摩擦接触した状態)にて、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313をさらに牽引すると、ロッドシリンダ2315がクランプ本体2311に一体化されており且つコッタ2312がクランプ本体2311内にて進退可能なので、クランプ本体2311が挿入部2311aの挿入方向に前進できる(図2(c)および(d)参照)。すると、当接部2311bと被クランプ材との間に隙間gがあるときに、この隙間gを塞いで当接部2311bを被クランプ材に密着させ得る。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0121】
また、このクランパ23では、挿入部2311aがクランプ本体2311に対して別体構造を有すると共にクランプ本体2311に対してスライド可能に配置される(図8および図11参照)。
【0122】
かかる構成では、挿入部2311aがクランプ本体2311に対してスライド可能に嵌め合わされるので、挿入部2311aのクランプ状態にて、クランプ本体2311を挿入部2311aに対してスライドさせつつ上昇させ得る(図9および図12参照)。これにより、当接部2311bを被クランプ材に押圧して密着させ得るので、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。また、かかる構成では、クランプ本体2311を上昇させたときに、挿入部2311a(コッタケース)とコッタ2312との相対変位が無いので、コッタ2312が挿入部2311aに安定的に保持される。これにより、コッタの落下等が防止される利点がある。
【0123】
また、このクランパ23は、クランプ機構231を被クランプ材に対して昇降させると共に当接部2321cを有する昇降機構232と、この昇降機構232を被クランプ材に対して(例えば、挿入部2311aの挿入方向に)進退させる調整機構233とを備える(図15参照)。
【0124】
かかる構成では、クランプ機構231が被クランプ材をクランプしつつ、昇降機構232が当接部2321cを被クランプ材に当接させて設置される(図17(e)および図19(e)参照)。このとき、昇降機構232がクランプ機構231を被クランプ材に対して昇降させ、また、調整機構233が昇降機構232を被クランプ材に対して進退させることにより、昇降機構232の当接部2321cが被クランプ材に対して押圧状態で密着する(図16〜図19参照)。これにより、クランパが当接部を有さない構成と比較して、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0125】
また、このクランパ23は、クランプ機構231が、被クランプ材に挿入可能な挿入部2311aを有するクランプ本体2311と、この挿入部2311aから突出して被クランプ材に摩擦接触するコッタ2312と、このコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させるピストンロッド2313と、クランプ本体2311に一体化されてピストンロッド2313を駆動するロッドシリンダ2315とを有する(図15参照)。
【0126】
かかる構成では、クランプ機構231が挿入部2311aを被クランプ材に挿入した状態にて、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を駆動すると、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させる。すると、コッタ2312が被クランプ材に押圧状態で摩擦接触して被クランプ材をクランプする。これにより、被クランプ材を安定的にクランプできる利点がある。
【0127】
例えば、クランパ23のクランプ状態(図17(e)参照)にて、クランパ23の作動流体の元圧が切断されると、ベース2の重量が調整シリンダ2331および昇降シリンダ2321を介してクランプ本体2311に作用する。すると、この重量が、クランプ本体2311(スリット2311cの内壁面)からコッタ2312の上面に作用して、コッタ2312を鉛直下方に押圧する。すると、コッタ2312が、ピストンロッド2313のテーパ面2313aにより拡径方向にガイドされて、被クランプ材(伝熱管132)の内壁面に押圧される。これにより、クランパ23の作動流体の元圧が切断した場合にも、コッタ2312と被クランプ材との摩擦力が確保されて、クランパ23のクランプ状態が維持される。したがって、上記の構成(ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を挿入部2311aの挿入方向に押し込んだときに、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させる構成。図15〜図17参照。)では、安全装置としての逆止弁が不要となる点で、好ましい。
【0128】
また、上記の構成では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を挿入部2311aの挿入方向に押し込んだときに、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させることが好ましい。これにより、ピストンロッド2313を挿入方向(先端部側)に押し込んでコッタ2312を作動させる機構が実現される。
【0129】
また、このクランパ23では、上記の調整機構233を備える構成(図15参照)において、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を挿入部2311aの挿入方向逆側に牽引したときに、ピストンロッド2313がコッタ2312を押圧して挿入部2311aから突出させる構成が採用されても良い(図示省略。図2参照。)。これにより、ピストンロッド2313を挿入方向逆側(後端部側)に牽引してコッタ2312を作動させる機構が実現される。
【0130】
また、このクランパ23では、ロッドシリンダ2315がピストンロッド2313を駆動する作動流体の逆流(具体的には、第一流体室2315aからの作動流体の逆流)を防止する逆止弁2316bを有することが好ましい(実施例1につては、図4参照。実施例2については、図示省略。)。かかる構成では、クランパ23の作動流体の元圧が切断したときに、ピストンロッド2313が固定状態で保持されるので、クランパ23のクランプ状態が適正に維持される。
【0131】
また、このクランパ23では、被クランプ材が管材から成る部材であり、上記の当接部2311b、2321cがこの部材に当接する。かかる「管材から成る部材」には、例えば、蒸気発生器130の水室131に開口する伝熱管132の管板137や、原子炉容器や蒸気発生器の管台が想定される。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上のように、この発明にかかるクランパ、水室内作業装置およびクランプ方法は、管材を安定的にクランプ保持できる点で有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 水室内作業装置
2 ベース
3 中間リンク
4 マニピュレータ
5 ツール
11 ベース搬入取付治具
12 ワイヤまたはベルト
21 ベース本体
22a、22b ウイング
23、23a、23b クランパ
130 蒸気発生器
131 水室
132 伝熱管(管材)
132a 開口縁部
134 仕切板
135 入口管台
136 出口管台
137 管板
137a 管板面
138 マンホール
231 クランプ機構
2311 クランプ本体
2311a 挿入部
2311b 当接部
2311c スリット
2311d ピストン部
2312 コッタ
2312a テーパ面
2312b 弾性部材
2313 ピストンロッド
2313a テーパ面
2313b ピストン部
2314 弾性体
2315 ロッドシリンダ
2315a 第一流体室
2315b 第二流体室
2316 流体圧制御機構
2316a 加圧ポンプ
2316b 逆止弁
2316c リリースバルブ
2316d〜2316f 配管
2317 支持部材
2318 弾性体
2319 コッタ支え
232 昇降機構
2321 昇降シリンダ
2321a 第一流体室
2321b 第二流体室
2321c 当接部
2321d ピストン部
233 調整機構
2331 調整シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クランプ材をクランプするクランパであって、
前記被クランプ材をクランプするクランプ機構と、前記クランプ機構のクランプ状態にて前記クランプ機構のクランプ位置とは異なる位置にて前記被クランプ材に当接する当接部とを備えることを特徴とするクランパ。
【請求項2】
前記クランプ機構を前記被クランプ材に対して昇降させる昇降機構を備え、且つ、前記クランプ機構が前記当接部を有する請求項1に記載のクランパ。
【請求項3】
前記クランプ機構が、前記被クランプ材に挿入可能な挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記被クランプ材に摩擦接触するコッタと、前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを駆動するロッドシリンダとを備える請求項1または2に記載のクランパ。
【請求項4】
前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向逆側に牽引したときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる請求項3に記載のクランパ。
【請求項5】
前記コッタが前記クランプ本体内にて進退可能に配置される請求項3または4に記載のクランパ。
【請求項6】
前記挿入部が前記クランプ本体に対して別体構造を有すると共に前記クランプ本体に対してスライド可能に配置される請求項3〜5のいずれか一つに記載のクランパ。
【請求項7】
前記クランプ機構を前記被クランプ材に対して昇降させると共に前記当接部を有する昇降機構と、前記昇降機構を前記被クランプ材に対して進退させる調整機構とを備える請求項1に記載のクランパ。
【請求項8】
前記クランプ機構が、前記被クランプ材に挿入可能な挿入部を有するクランプ本体と、前記挿入部から突出して前記被クランプ材に摩擦接触するコッタと、前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させるピストンロッドと、前記クランプ本体に一体化されて前記ピストンロッドを駆動するロッドシリンダとを有する請求項7に記載のクランパ。
【請求項9】
前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向に押し込んだときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる請求項8に記載のクランパ。
【請求項10】
前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを前記挿入部の挿入方向逆側に牽引したときに、前記ピストンロッドが前記コッタを押圧して前記挿入部から突出させる請求項8に記載のクランパ。
【請求項11】
前記ロッドシリンダが前記ピストンロッドを駆動する作動流体の逆流を防止する逆止弁を有する請求項4または10に記載のクランパ。
【請求項12】
前記被クランプ材が管材から成る部材であり、前記当接部が前記部材に当接する請求項1〜11のいずれか一つに記載のクランパ。
【請求項13】
前記部材が管板である請求項12に記載のクランパ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載のクランパを備える水室内作業装置。
【請求項15】
クランパを被クランプ材に対してクランプさせるクランプ方法であって、
前記クランパが前記被クランプ材をクランプした状態にて、前記クランパの他の一部を前記被クランプ材に対するクランプ位置とは異なる位置に当接させることを備えることを特徴とするクランプ方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−40674(P2012−40674A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186627(P2010−186627)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】