グラウト材注入方法
【課題】鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入するにあたって、硬化したグラウト材中に気泡が生じ難いようにする。
【解決手段】複数の鉄筋挿通孔1が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材Aの複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋14を挿通した状態で、グラウト材Gを注入するグラウト材注入方法であって、複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路5を設け、グラウト注入路7を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路9を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入する。
【解決手段】複数の鉄筋挿通孔1が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材Aの複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋14を挿通した状態で、グラウト材Gを注入するグラウト材注入方法であって、複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路5を設け、グラウト注入路7を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路9を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグラウト材注入方法では、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材において、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入できるように、グラウト注入路を上位の鉄筋挿通孔に連通させておき、上下に並設してある複数の鉄筋挿通孔どうしを、グラウト注入路に連通してある上位の鉄筋挿通孔から順に一連に連通する連通路を設けておくとともに、連通路で連通される最終位置の鉄筋挿通孔に空気抜き路を連通させておいて、一つのグラウト注入路から注入したグラウト材を各鉄筋挿通孔に順に流入させながら、最終位置の鉄筋挿通孔に連通してある空気抜き路から空気を抜いている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3072534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グラウト注入路を上位の鉄筋挿通孔に連通させて、上下に並設してある複数の鉄筋挿通孔どうしを、グラウト注入路に連通させてある上位の鉄筋挿通孔から順に一連に連通する連通路を設けてあるので、グラウト注入方向で上流側の鉄筋挿通孔を通過したグラウト材が、下流側の鉄筋挿通孔に対して下向きに流入する連通路が存在することになり、この連通路を通して、空気がグラウト材注入済みの上流側の鉄筋挿通孔に入り込んで、硬化したグラウト材中に気泡が生じ易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入するにあたって、硬化したグラウト材中に気泡が生じ難いようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法であって、前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入するので、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入するにあたって、グラウト注入路から注入したグラウト材が、いずれの連通路においてもグラウト注入方向で下流側の鉄筋挿通孔に対して上向きに流入し、同時に、グラウト材が未注入の鉄筋挿通孔を通して、空気が空気抜き路に向けて上方に押し出される。
従って、グラウト材注入済みの鉄筋挿通孔に空気が入り込み難くなり、硬化したグラウト材中に気泡が生じ難い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設けるので、複数の鉄筋挿通孔を上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けずに、全部の鉄筋挿通孔を多数の連通路で順に連通する場合に比べて、グラウト材の流入経路の長さを短縮することができる。
そして、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入するので、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、グラウト材を小さな流入抵抗で、かつ、短い時間で各鉄筋挿通孔に容易に流入させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、前記複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、前記隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、前記連通路又は前記グラウト注入路又は空気抜き路として使用する点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路又はグラウト注入路又は空気抜き路として使用するので、連通路又はグラウト注入路又は空気抜き路をプレキャストコンクリート部材に設ける手間を省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は、複数の鉄筋挿通孔1を設けてあるプレキャストコンクリート部材Aとしてのプレキャストコンクリート製柱部材2と、プレキャストコンクリート製梁部材3とを示し、図4は、本発明によるグラウト材注入方法で各鉄筋挿通孔1にグラウト材Gを注入して、柱部材2の左右両側に水平方向から隣り合う梁部材3を連結してある柱・梁連結構造を示している。
【0012】
前記柱部材2は正四角柱状に形成してあり、図1〜図3に示すように、鉄筋挿通孔1を形成する複数のシース管4と、鉄筋挿通孔1どうしを径方向から連通する連通路5を形成する接続管6と、各鉄筋挿通孔1にグラウト材Gを注入するためのグラウト注入路7を形成するグラウト注入管8と、グラウト材Gの注入時に各鉄筋挿通孔1内の空気を外部に押し出すための空気抜き路9を形成する空気抜き管10とを埋設固定し、設置状態で上方の柱部材に連結するための柱鉄筋11を柱上端面12から突出させてある。
【0013】
前記複数のシース管4は、互いに平行な二つの柱側面13に亘って互いに略平行に埋設固定して、複数の鉄筋挿通孔1を、後述する梁鉄筋14を水平方向から挿通できるように、設置状態で上下左右に並ぶように貫通形成してある。
【0014】
前記連通路5は、複数の鉄筋挿通孔1どうしが設置状態で下位の鉄筋挿通孔1から上位の鉄筋挿通孔1に順に連通するように設けてあり、グラウト注入路7を設置状態で最下位の鉄筋挿通孔1に連通するように設け、空気抜き路9を設置状態で最上位の鉄筋挿通孔1に連通するように設けて、グラウト注入路7と空気抜き路9とを設置状態で柱上端面12に開口させてある。
【0015】
前記梁部材3は柱部材2よりも小径又は略同径の正四角柱状に形成してあり、図4に示すように、鉄筋接続用の継手部材15を一端側に固定してある梁鉄筋14の複数を互いに平行に埋設固定して、各継手部材15の鉄筋接続口16を設置状態で上下左右に並ぶように一方の梁端面17に臨ませてあるとともに、各梁鉄筋14の他端側を設置状態で上下左右に並ぶように他方の梁端面18から略直角に突出させてある。
【0016】
そして、図5に示すように、柱部材2を鉄筋挿通孔1が上下に並設されるように設置し、図6にも示すように、一方の梁部材3(3a)の梁端面17と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、各継手部材15の鉄筋接続口16が柱部材2の鉄筋挿通孔1に同芯状に対向するように、一方の梁部材3(3a)を位置決めしておく。
【0017】
次に、図7に示すように、他方の梁部材3(3b)の梁端面18と柱側面13との目地部にも、図6で示したと同様に、その周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、その梁端面18から突出している各梁鉄筋14を柱部材2の鉄筋挿通孔1に挿通するとともに、鉄筋接続口16から継手部材15に入り込ませて一体に接続して、柱部材2を挟んで、梁部材3(3a,3b)どうしを連結した後、グラウト注入路7から各鉄筋挿通孔1と空気抜き路9とに亘ってグラウト材Gを注入して硬化させてある。
この場合、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
【0018】
〔第2実施形態〕
図8は本発明によるグラウト材注入方法の別実施形態を示し、柱部材2に形成してある複数の鉄筋挿通孔1を設置状態で、上下方向で複数の鉄筋挿通孔1からなる組み合わせを複数の組(本実施形態では4組)に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔1毎に、複数の鉄筋挿通孔1どうしを設置状態で下位の鉄筋挿通孔1から上位の鉄筋挿通孔1に順に連通する連通路5を設け、グラウト注入路7を最下位の鉄筋挿通孔1に連通させるとともに、空気抜き路9を最上位の鉄筋挿通孔1に連通させて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔1毎にグラウト注入路7からグラウト材Gを注入して硬化させてある。また、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0019】
〔第3実施形態〕
図9〜図11は、連通路5とグラウト注入路7と空気抜き路9とを柱部材2に設けずに、各梁部材3と柱部材2とが対向している目地部を、連通路5とグラウト注入路7及び空気抜き路9として夫々使用する本発明によるグラウト材注入方法の別実施形態を示し、図9,図11に示すように、一方の梁部材3(3a)の梁端面17と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、各継手部材15の鉄筋接続口16が柱部材2の鉄筋挿通孔1に同芯状に対向するように一方の梁部材3(3a)を位置決めしておく。
【0020】
次に、図10,図11に示すように、他方の梁部材3(3b)の梁端面18と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、その梁端面18から突出している各梁鉄筋14を柱部材2の鉄筋挿通孔1に挿通するとともに、鉄筋接続口16から継手部材15に入り込ませて一体に接続して、水平方向で隣り合う梁部材3と柱部材2とを連結する。
【0021】
そして、各目地空間20を連通路5として使用するとともに、一方の目地空間20をグラウト注入路7に兼用し、他方の目地空間20を空気抜き路9に兼用して、一方の目地空間20の上部開口から各鉄筋挿通孔1と各目地空間20とに亘ってグラウト材Gを注入して硬化させてある。また、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるグラウト材注入方法は、単独のプレキャストコンクリート部材に設けてある複数の鉄筋挿通孔の各々に鉄筋を挿通した後、それらの鉄筋挿通孔にグラウト材を注入するために使用しても良い。
2.本発明によるグラウト材注入方法は、複数の鉄筋挿通孔の各々にプレストレスを作用させるための鉄筋を挿通した後、それらの鉄筋挿通孔にグラウト材を注入するために使用しても良い。
3.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路として使用して、グラウト注入路と空気抜き路とをプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
4.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路及び空気抜き路として使用して、グラウト注入路をプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
も良い。
5.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、グラウト注入路及び連通路として使用して、空気抜き路をプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】柱部材の一部断面側面図
【図2】図1のII−II線矢視断面図
【図3】図1のIII −III 線矢視断面図
【図4】(イ)梁部材の縦断面図,(ロ)梁部材の端面図
【図5】グラウト材注入方法の説明図
【図6】グラウト材注入方法の説明図
【図7】グラウト材注入方法の説明図
【図8】第2実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図9】第3実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図10】第3実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図11】図10のXI−XI線矢視図
【符号の説明】
【0024】
1 鉄筋挿通孔
5 連通路
7 グラウト注入路
9 空気抜き路
14 鉄筋
A プレキャストコンクリート部材
G グラウト材
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のグラウト材注入方法では、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材において、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入できるように、グラウト注入路を上位の鉄筋挿通孔に連通させておき、上下に並設してある複数の鉄筋挿通孔どうしを、グラウト注入路に連通してある上位の鉄筋挿通孔から順に一連に連通する連通路を設けておくとともに、連通路で連通される最終位置の鉄筋挿通孔に空気抜き路を連通させておいて、一つのグラウト注入路から注入したグラウト材を各鉄筋挿通孔に順に流入させながら、最終位置の鉄筋挿通孔に連通してある空気抜き路から空気を抜いている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3072534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グラウト注入路を上位の鉄筋挿通孔に連通させて、上下に並設してある複数の鉄筋挿通孔どうしを、グラウト注入路に連通させてある上位の鉄筋挿通孔から順に一連に連通する連通路を設けてあるので、グラウト注入方向で上流側の鉄筋挿通孔を通過したグラウト材が、下流側の鉄筋挿通孔に対して下向きに流入する連通路が存在することになり、この連通路を通して、空気がグラウト材注入済みの上流側の鉄筋挿通孔に入り込んで、硬化したグラウト材中に気泡が生じ易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入するにあたって、硬化したグラウト材中に気泡が生じ難いようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法であって、前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入するので、鉄筋を挿通した後の各鉄筋挿通孔にグラウト材を能率良く注入するにあたって、グラウト注入路から注入したグラウト材が、いずれの連通路においてもグラウト注入方向で下流側の鉄筋挿通孔に対して上向きに流入し、同時に、グラウト材が未注入の鉄筋挿通孔を通して、空気が空気抜き路に向けて上方に押し出される。
従って、グラウト材注入済みの鉄筋挿通孔に空気が入り込み難くなり、硬化したグラウト材中に気泡が生じ難い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設けるので、複数の鉄筋挿通孔を上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けずに、全部の鉄筋挿通孔を多数の連通路で順に連通する場合に比べて、グラウト材の流入経路の長さを短縮することができる。
そして、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、グラウト注入路からグラウト材を注入するので、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、グラウト材を小さな流入抵抗で、かつ、短い時間で各鉄筋挿通孔に容易に流入させることができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、前記複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、前記隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、前記連通路又は前記グラウト注入路又は空気抜き路として使用する点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路又はグラウト注入路又は空気抜き路として使用するので、連通路又はグラウト注入路又は空気抜き路をプレキャストコンクリート部材に設ける手間を省ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は、複数の鉄筋挿通孔1を設けてあるプレキャストコンクリート部材Aとしてのプレキャストコンクリート製柱部材2と、プレキャストコンクリート製梁部材3とを示し、図4は、本発明によるグラウト材注入方法で各鉄筋挿通孔1にグラウト材Gを注入して、柱部材2の左右両側に水平方向から隣り合う梁部材3を連結してある柱・梁連結構造を示している。
【0012】
前記柱部材2は正四角柱状に形成してあり、図1〜図3に示すように、鉄筋挿通孔1を形成する複数のシース管4と、鉄筋挿通孔1どうしを径方向から連通する連通路5を形成する接続管6と、各鉄筋挿通孔1にグラウト材Gを注入するためのグラウト注入路7を形成するグラウト注入管8と、グラウト材Gの注入時に各鉄筋挿通孔1内の空気を外部に押し出すための空気抜き路9を形成する空気抜き管10とを埋設固定し、設置状態で上方の柱部材に連結するための柱鉄筋11を柱上端面12から突出させてある。
【0013】
前記複数のシース管4は、互いに平行な二つの柱側面13に亘って互いに略平行に埋設固定して、複数の鉄筋挿通孔1を、後述する梁鉄筋14を水平方向から挿通できるように、設置状態で上下左右に並ぶように貫通形成してある。
【0014】
前記連通路5は、複数の鉄筋挿通孔1どうしが設置状態で下位の鉄筋挿通孔1から上位の鉄筋挿通孔1に順に連通するように設けてあり、グラウト注入路7を設置状態で最下位の鉄筋挿通孔1に連通するように設け、空気抜き路9を設置状態で最上位の鉄筋挿通孔1に連通するように設けて、グラウト注入路7と空気抜き路9とを設置状態で柱上端面12に開口させてある。
【0015】
前記梁部材3は柱部材2よりも小径又は略同径の正四角柱状に形成してあり、図4に示すように、鉄筋接続用の継手部材15を一端側に固定してある梁鉄筋14の複数を互いに平行に埋設固定して、各継手部材15の鉄筋接続口16を設置状態で上下左右に並ぶように一方の梁端面17に臨ませてあるとともに、各梁鉄筋14の他端側を設置状態で上下左右に並ぶように他方の梁端面18から略直角に突出させてある。
【0016】
そして、図5に示すように、柱部材2を鉄筋挿通孔1が上下に並設されるように設置し、図6にも示すように、一方の梁部材3(3a)の梁端面17と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、各継手部材15の鉄筋接続口16が柱部材2の鉄筋挿通孔1に同芯状に対向するように、一方の梁部材3(3a)を位置決めしておく。
【0017】
次に、図7に示すように、他方の梁部材3(3b)の梁端面18と柱側面13との目地部にも、図6で示したと同様に、その周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、その梁端面18から突出している各梁鉄筋14を柱部材2の鉄筋挿通孔1に挿通するとともに、鉄筋接続口16から継手部材15に入り込ませて一体に接続して、柱部材2を挟んで、梁部材3(3a,3b)どうしを連結した後、グラウト注入路7から各鉄筋挿通孔1と空気抜き路9とに亘ってグラウト材Gを注入して硬化させてある。
この場合、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
【0018】
〔第2実施形態〕
図8は本発明によるグラウト材注入方法の別実施形態を示し、柱部材2に形成してある複数の鉄筋挿通孔1を設置状態で、上下方向で複数の鉄筋挿通孔1からなる組み合わせを複数の組(本実施形態では4組)に分けて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔1毎に、複数の鉄筋挿通孔1どうしを設置状態で下位の鉄筋挿通孔1から上位の鉄筋挿通孔1に順に連通する連通路5を設け、グラウト注入路7を最下位の鉄筋挿通孔1に連通させるとともに、空気抜き路9を最上位の鉄筋挿通孔1に連通させて、各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔1毎にグラウト注入路7からグラウト材Gを注入して硬化させてある。また、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0019】
〔第3実施形態〕
図9〜図11は、連通路5とグラウト注入路7と空気抜き路9とを柱部材2に設けずに、各梁部材3と柱部材2とが対向している目地部を、連通路5とグラウト注入路7及び空気抜き路9として夫々使用する本発明によるグラウト材注入方法の別実施形態を示し、図9,図11に示すように、一方の梁部材3(3a)の梁端面17と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、各継手部材15の鉄筋接続口16が柱部材2の鉄筋挿通孔1に同芯状に対向するように一方の梁部材3(3a)を位置決めしておく。
【0020】
次に、図10,図11に示すように、他方の梁部材3(3b)の梁端面18と柱側面13との目地部の周縁部に沿って上向きコの字状に目地材19を挟み込んで、目地材19の内側に上向きに開口する目地空間20を形成した状態で、その梁端面18から突出している各梁鉄筋14を柱部材2の鉄筋挿通孔1に挿通するとともに、鉄筋接続口16から継手部材15に入り込ませて一体に接続して、水平方向で隣り合う梁部材3と柱部材2とを連結する。
【0021】
そして、各目地空間20を連通路5として使用するとともに、一方の目地空間20をグラウト注入路7に兼用し、他方の目地空間20を空気抜き路9に兼用して、一方の目地空間20の上部開口から各鉄筋挿通孔1と各目地空間20とに亘ってグラウト材Gを注入して硬化させてある。また、各継手部材15の内側も下方から順次グラウト材Gが充填される。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0022】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるグラウト材注入方法は、単独のプレキャストコンクリート部材に設けてある複数の鉄筋挿通孔の各々に鉄筋を挿通した後、それらの鉄筋挿通孔にグラウト材を注入するために使用しても良い。
2.本発明によるグラウト材注入方法は、複数の鉄筋挿通孔の各々にプレストレスを作用させるための鉄筋を挿通した後、それらの鉄筋挿通孔にグラウト材を注入するために使用しても良い。
3.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路として使用して、グラウト注入路と空気抜き路とをプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
4.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、連通路及び空気抜き路として使用して、グラウト注入路をプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
も良い。
5.本発明によるグラウト材注入方法は、水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、グラウト注入路及び連通路として使用して、空気抜き路をプレキャストコンクリート部材に設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】柱部材の一部断面側面図
【図2】図1のII−II線矢視断面図
【図3】図1のIII −III 線矢視断面図
【図4】(イ)梁部材の縦断面図,(ロ)梁部材の端面図
【図5】グラウト材注入方法の説明図
【図6】グラウト材注入方法の説明図
【図7】グラウト材注入方法の説明図
【図8】第2実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図9】第3実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図10】第3実施形態のグラウト材注入方法の説明図
【図11】図10のXI−XI線矢視図
【符号の説明】
【0024】
1 鉄筋挿通孔
5 連通路
7 グラウト注入路
9 空気抜き路
14 鉄筋
A プレキャストコンクリート部材
G グラウト材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法であって、
前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、
グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、
前記グラウト注入路からグラウト材を注入するグラウト材注入方法。
【請求項2】
前記複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、
各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、
前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する請求項1記載のグラウト材注入方法。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、前記複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、
前記隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、前記連通路又は前記グラウト注入路又は空気抜き路として使用する請求項1又は2記載のグラウト材注入方法。
【請求項1】
複数の鉄筋挿通孔が上下に並設されるように設置してあるプレキャストコンクリート部材の前記複数の鉄筋挿通孔の夫々に、鉄筋を挿通した状態で、グラウト材を注入するグラウト材注入方法であって、
前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、
グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、
前記グラウト注入路からグラウト材を注入するグラウト材注入方法。
【請求項2】
前記複数の鉄筋挿通孔を、上下方向で複数の鉄筋挿通孔からなる組み合わせを複数組に分けて、
各組み合わせの複数の鉄筋挿通孔毎に、
前記複数の鉄筋挿通孔どうしを下位の鉄筋挿通孔から上位の鉄筋挿通孔に順に連通する連通路を設け、グラウト注入路を最下位の鉄筋挿通孔に連通させるとともに、空気抜き路を最上位の鉄筋挿通孔に連通させて、前記グラウト注入路からグラウト材を注入する請求項1記載のグラウト材注入方法。
【請求項3】
前記プレキャストコンクリート部材と、そのプレキャストコンクリート部材に水平方向で隣り合うプレキャストコンクリート部材とを、前記複数の鉄筋挿通孔の各々に挿通した鉄筋で接続し、
前記隣り合うプレキャストコンクリート部材どうしが対向している目地部を、前記連通路又は前記グラウト注入路又は空気抜き路として使用する請求項1又は2記載のグラウト材注入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−284954(P2007−284954A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112118(P2006−112118)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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