説明

ケースモールド型コンデンサ

【課題】バスバーに近接して配置されたコンデンサ素子の発熱を抑制し、ケースモールド型コンデンサの長寿命化を図る。
【解決手段】金属化フィルムを巻回又は積層した複数のコンデンサ素子と、このコンデンサ素子の外部電極に接続されたバスバーとをケース内に収納し、バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、バスバーと、このバスバーに近接し対面するコンデンサ素子との間に少なくとも導電体からなる遮蔽板を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサをケース内に収容して樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEVに搭載される電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このようなHEVに用いられる金属化フィルムコンデンサには、使用電圧の高耐電圧化、大電流化、大容量化等が強く要求されるため、バスバーによって並列接続した複数の金属化フィルムコンデンサをケース内に収納し、このケース内にモールド樹脂を注型したケースモールド型コンデンサが開発され、実用化されている。
【0005】
図6はこの種の従来のケースモールド型コンデンサの構成を示した正面断面図であり、図6において、樹脂製のコンデンサケース102にバスバー105,106で並列に接続された複数のコンデンサ素子103a〜103dが収納され、これらの複数のコンデンサ素子103a〜103dとバスバー105,106を埋めて固定するようにエポキシ樹脂等の充填樹脂107が充填されている。バスバー105,106の一部は充填樹脂107の表面から表出し、その一部は外部機器との接続用の接続部108,109となっている。
【0006】
そして、上記コンデンサ素子103a〜103dは、図示しない金属化フィルムを巻回または積層されてなり、外部電極104が端面に設けられている。そしてバスバー105,106が外部電極104に接続され、このバスバー105,106と一体に繋がっている接続部108,109が外部機器と電気的に接続されている。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−338425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記のような従来のケースモールド型コンデンサでは、HEVや電気自動車などの限られたスペースに搭載されるために、コンデンサの形状をなるべく小さくする必要があることから、ケースに収納したコンデンサ素子と隣接するバスバーとの間隔が、絶縁性を確保できる最小の距離に設計されており、このような構造ではバスバーに近接して配置されたコンデンサ素子の金属化フィルムの金属電極に、バスバーに流れる電流で渦電流損が発生し、このコンデンサ素子が異常発熱を起こし、その結果ケースモールド型コンデンサの寿命を短くしてしまうというものであった。
【0010】
特にバスバーに接続するコンデンサ素子にスナバ用のコンデンサ素子を含むような場合には、バスバーに高周波リプル電流が流れるため、大きい渦電流損が発生し、このバスバーに近接して配置されたコンデンサ素子が、より高温に発熱するという傾向があった。
【0011】
本発明は、上記従来技術に有する課題に鑑みてなされたものであり、バスバーに近接して配置されたコンデンサ素子の発熱を抑制し、ケースモールド型コンデンサの長寿命化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のケースモールド型コンデンサは、金属化フィルムを巻回又は積層し両端面に外部電極が設けられた複数のコンデンサ素子と、このコンデンサ素子の外部電極に接続され、外部と電気的に接続するための端子部が設けられたバスバーとをケース内に収納し、バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、バスバーと、このバスバーに近接し対面するコンデンサ素子との間に少なくとも導電体からなる遮蔽板を設けたものである。
【0013】
上記構成によれば、バスバーに電流が流れた状態では、このバスバーと、バスバーに近接するコンデンサ素子との間に設けた遮蔽板の導電体に渦電流損が発生するために、コンデンサ素子の金属電極には渦電流損が殆んど発生しなくなり、コンデンサの発熱を抑制することができる。
【0014】
また、上記構成において、遮蔽板は、複数のコンデンサ素子の内、対面する部分のバスバーに流れる電流値が最も大きいコンデンサ素子と、バスバーとの間に設けたものである。
【0015】
上記構成によれば、ケースに収納された複数のコンデンサの内、遮蔽板が無ければ渦電流損による発熱が最も大きくなるコンデンサ素子の温度上昇を、遮蔽板を設けることにより抑えることができ、少ない費用で効率よくコンデンサの温度上昇を抑制することができる。
【0016】
また、上記構成において、遮蔽板は、複数のコンデンサ素子の内、バスバーに設けられた端子部との距離が最も短い位置に対面しているコンデンサ素子と、バスバーとの間に設けたものである。
【0017】
上記構成によれば、バスバーの端子部に近くなるほど大きな電流が流れるので、ケースに収納された複数のコンデンサの内、遮蔽板が無ければ渦電流損による発熱が最も大きくなるコンデンサ素子の温度上昇が遮蔽板を設けることにより抑えることができ、効率よくコンデンサの温度上昇を抑制することができる。
【0018】
また、上記構成において、遮蔽板は、バスバーに遮蔽板の導電体がバスバーとは電気的に絶縁された状態で接触しているものである。
【0019】
上記構成によれば、遮蔽板の発熱をバスバーに逃がすことができ、コンデンサ素子への熱の伝導を抑えることで、よりコンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0020】
また、遮蔽板は、導電体と絶縁体との積層体で、この積層体の少なくとも片方の面に絶縁体が設けられているものである。
【0021】
上記構成によれば、バスバーとコンデンサ素子との間の狭窄な部分に配置した遮蔽板が何らかの不具合で、バスバーとコンデンサ素子の両方に接触することがあっても、絶縁体により絶縁状態を維持することができる。
【0022】
また、上記構成において、導電体を銅とすれば、銅の優れた熱伝導性により発熱をケースモールド型コンデンサの外側方向へ迅速に逃がすことが出来るので、熱がコンデンサ内部に籠り難くなり、コンデンサの温度上昇をより抑制することができる。
【0023】
また、上記構成において、導電体をアルミニウムとすれば、熱伝導性は銅より若干劣るものの比重が銅より小さいので、コンデンサの重量増を抑制しながら温度上昇を抑制することができる。
【0024】
また、上記構成において、導電体をグラファイトシートとすれば比重がアルミよりも小さいことで、コンデンサの重量増を抑制しながらコンデンサの温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、バスバーに近接して配置されたコンデンサ素子の発熱を抑制し、ケースモールド型コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるケースモールド型コンデンサの正面断面図
【図2】本発明の実施の形態1にかかるケースモールド型コンデンサの充填樹脂が充填されていない状態の平面図
【図3】本発明の実施の形態1にかかるケースモールド型コンデンサの充填樹脂が充填されていない状態の斜視図
【図4】本発明の実施の形態2にかかるケースモールド型コンデンサの正面断面図
【図5】本発明の実施の形態3にかかるケースモールド型コンデンサの正面断面図
【図6】従来のケースモールド型コンデンサの正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるケースモールド型コンデンサの正面断面図、図2は充填樹脂が充填されていない状態の平面図、図3は同斜視図である。図1,図2,図3において、ケースモールド型コンデンサ1は、一対の端部に外部電極4を備えた複数のコンデンサ素子3a〜3eの外部電極4を、一端に端子部8,9を備えたバスバー5,6に接続したものをケース2に収納し、バスバー5とコンデンサ素子3aとの間に導電体からなる遮蔽板11を設けて、バスバー5,6の端子部8,9を除いて充填樹脂7を充填したものである。
【0029】
詳しく説明すると、複数のコンデンサ素子3a〜3eは、誘電体となる厚みが2〜5μmのポリプロピレンフィルムの表面に、コンデンサの内部電極となるアルミニウムの薄膜を真空蒸着によって形成した金属化フィルムを巻回し、断面が小判型の扁平状にプレスした巻回体の一対の端部に、外部電極4として錫と亜鉛とを主成分とする合金を溶射して設けたものである。そしてこのコンデンサ素子3a〜3eのおよその寸法は、外部電極間が30〜100mm、小判型の長辺が50〜70mm、小判型の短辺が20〜40mmである。
【0030】
バスバー5,6は厚みが0.6mm〜1.6mmの銅の板からなり、図1において水平部分15,16は複数のコンデンサ素子3a〜3eの外部電極4に半田により接続され、この水平部分15,16の幅はコンデンサ素子との接続部を含めて20〜40mmとなっている。また、垂直方向に立ち上がっている垂直部分17,18の幅は10〜15mmで、端部は貫通孔を有する端子部8,9となっている。
【0031】
そして端子部8,9は一方がP極、他方がN極として外部機器に接続されるので、バスバー5,6の垂直部分17,18はこのバスバー5,6に並列に接続されている全てのコンデンサ素子3a〜3eに入出力する電流が流れ、バスバー5,6の中で最も大きな電流が流れる部分となり、実際には50〜100Aの電流が流れる。
【0032】
遮蔽板11はコンデンサ素子3aとバスバー5の垂直部分17との間に、バスバー5およびコンデンサ素子3a〜3eに接触しないよう、バスバー5に対して略平行で対向するように設けられている。
【0033】
このとき、遮蔽板11をコンデンサ素子3aの側面の外部電極4を除く平坦部分(小判型の直線部分)の略全面を覆うように設ければ、効率的にコンデンサ素子3aの発熱を抑制することができるが、より確実にコンデンサ素子3aの発熱を抑制するためには、図2の線A,Bで示すように、コンデンサ素子3aのバスバー5と対面する側の平坦部分の略全面と、この平坦部分の両脇の曲面部分とを覆うようにするのが好ましい。
【0034】
ケース2はポリフェニレンサルファド樹脂等の熱可塑性樹脂を成型したもので、充填樹脂7は熱硬化性のエポキシ樹脂等を充填し硬化させたものである。
【0035】
上記構成としたケースモールド型コンデンサの実際の稼動時には、バスバー5,6に電流が流れ、この電流による渦電流損で導電体からなる遮蔽板11が優先的に発熱することで、コンデンサ素子3aが渦電流損によって発熱することを抑えることができる。
【0036】
尚、発熱した遮蔽板11の熱の影響を小さくするために、遮蔽板11のコンデンサ素子3a側の表面と、この表面に対面するコンデンサ素子3aの側面との距離を5〜12mmとするのが好ましい。この距離を5mmより小さくすると遮蔽板11からの熱でコンデンサ素子3aの温度上昇が著しく大きくなり、12mmを超える領域ではコンデンサ素子の温度上昇にほとんど影響がなくなるとともに、ケースモールド型コンデンサ1の形状が大きくなるので好ましくない。
【0037】
また、導電体からなる遮蔽板11のバスバー5の垂直部分側の表面と、この表面と対面するバスバー5の垂直部分17の表面との距離は2mm以上が好ましく、2mmより小さくすると遮蔽板11とバスバー5が接触する可能性が高くなり、遮蔽板11とバスバー5が接触してしまうと遮蔽板の機能を果たさなくなるので好ましくない。また、この距離を大きくし過ぎてもケースモールド型コンデンサ1の形状が大きくなるので好ましくない。
【0038】
以上のように、バスバー5と、このバスバー5に近接して対面するコンデンサ素子3aとの間に、導電体からなる遮蔽板11を設けることで、コンデンサ素子3aの発熱を抑制する事ができ、その結果ケースモールド型コンデンサの長寿命化を図ることができる。
【0039】
上記のように、導電体からなる遮蔽板11を、複数のコンデンサ素子の内、コンデンサ素子と対面する部分のバスバー5に流れる電流値が最も大きいコンデンサ素子3aと、バスバー5との間に設けるようにすれば、遮蔽板11を設けなければバスバー5に流れる電流による渦電流損で最も高温に発熱するコンデンサ素子3aの発熱を抑えることができるので、ケースモールド型コンデンサ1の長寿命化に最も効果的である。
【0040】
また、バスバー5またはバスバー6の中で、このバスバー5またはバスバー6に設けられた端子部8,9との距離が最も短い位置に対面しているコンデンサ素子3aと、バスバー5またはバスバー6との間に遮蔽板11を設けるようにすれば、バスバー5,6の端子部8,9に近い部分ほどバスバー5,6に高い電流が流れるので、他のコンデンサ素子3b,3c,3d,3eに比べて高温に発熱するコンデンサ素子3aの発熱を抑えることができるので、ケースモールド型コンデンサ1の長寿命化に効果的である。
【0041】
また、上記のように遮蔽板11となる導電体に銅を用いることで、銅の優れた熱伝導性により遮蔽板の発熱をケースモールド型コンデンサの外側方向へ迅速に逃がすことが出来るので、熱がコンデンサ内部に籠り難くなり、遮蔽板11からコンデンサ素子3aへの熱の影響を抑えることができる。
【0042】
また、遮蔽板11となる導電体にアルミニウムを用いれば、熱伝導性では銅に劣るものの、銅よりも比重が小さい事で、ケースモールド型コンデンサの重量増を抑えることができる。
【0043】
また、遮蔽板11となる導電体にグラファイトシートを用いれば、アルミニウムよりも更に比重が小さい事で、ケースモールド型コンデンサの重量増を更に抑えることができる。
【0044】
そして、このグラファイトシートの面方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率よりも大きいものとするか、或いは、グラファイトシート以外の導電体を用いた遮蔽板11に、面方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率よりも大きいグラファイトシートを貼り付けるようにすれば、遮蔽板11の中で特定の部分が集中的に発熱するような状態であっても、遮蔽板11に銅やアルミニウム等の導電体を単独で用いるよりも面方向に素早く熱を拡散することができるので、遮蔽板11の発熱時の最高温度を下げることができ、遮蔽板11からコンデンサ素子3aへの熱の影響を抑えることができる。
【0045】
以下具体的な実施例を用いて本発明の効果を説明する。
【0046】
複数のコンデンサ素子3a〜3eは、誘電体となる厚みが4μmのポリプロピレンフィルムの表面に、真空蒸着によって電極となるアルミニウムの薄膜を形成した金属化フィルムを巻回し、断面が小判型の扁平状になるようにプレスした巻回体の一対の端面に外部電極として錫と亜鉛を主成分とする合金を設けて、一対の外部電極の端面間の寸法が80mmで、小判型の断面の長辺の寸法が70mm、短辺の寸法が40mmの形状とし、200μFの容量とした。
【0047】
バスバー5,6は、厚みが1.0mmでコンデンサ素子3a〜3eの外部電極4と接続される水平部分15,16の幅が40mm、垂直部分17,18の幅が15mmの銅板とし、複数のコンデンサ素子3a〜3eの外部電極4に半田により接続した。
【0048】
導電体からなる遮蔽板11は、厚みが1.0mmの銅板とし、幅はコンデンサ素子3aの側面の平担部分と両端の曲面部分とを全て覆うように70mmとし、長さはバスバー5,6に接触しないように、コンデンサ素子3aの一対の外部電極の端面間の寸法80mmより若干短い74mmとして、バスバー5の垂直部分17の遮蔽板11側の表面と遮蔽板11のコンデンサ素子3a側の表面との距離が3mm、バスバー5の垂直部分17の遮蔽板11側の表面とコンデンサ素子3aの遮蔽板11側の表面との距離が8mmとなるように、バスバー5の垂直部分17とコンデンサ素子3aとの間に設けた。
【0049】
ケース2はポリフェニレンサルファド樹脂を成型したもので、充填樹脂7は熱硬化性のエポキシ樹脂を充填し硬化させたものである。
【0050】
このような実施例によるケースモールド型コンデンサと、比較例として遮蔽板を配置せずに、その他の構成は本発明と同じとしたケースモールド型コンデンサについて、実際に50Aの電流を流して、バスバーと対面するコンデンサ素子(本発明の実施例のコンデンサ素子3aに相当)の温度上昇を確認した。その結果を表1に示す。
【0051】
表1に示すように、本実施例におけるバスバーと対面するコンデンサ素子の、バスバー側(導電体側)表面の温度が33.4℃であるのに対し、バスバーとコンデンサ素子との間に導電体からなる遮蔽板を配置しない比較例の、コンデンサ素子のバスバー側表面の温度が46.4℃となっていることから、バスバーとコデンサ素子の間に導電体からなる遮蔽板を設けることによって、バスバーに対面するコンデンサ素子の温度上昇が抑制されていることがわかる。
【0052】
これは、比較例において、バスバー表面の温度36.1℃に対して、コンデンサ素子のバスバー側の表面の温度がバスバー表面の温度よりも高いことから、コンデンサ素子のバスバー側表面の温度上昇はバスバーからの熱の輻射や伝導ではないこと、そして実施例におけるコンデンサ素子内部の温度と比較例におけるコンデンサ素子内部の温度とが殆ど同じ30.7℃と30.5℃であることから、比較例におけるコンデンサ素子のバスバー側の表面の温度上昇は、コンデンサ素子の自己発熱によるものでもないことから、比較例におけるコンデンサ素子のバスバー側の表面の温度上昇は、バスバーを流れる電流によってコンデンサ素子の金属電極に渦電流損が発生したことによるものと考えられる。
【0053】
従って実施例のように、バスバーと、このバスバーに対面するコンデンサ素子との間に導電体からなる遮蔽板を設ければ、遮蔽板の導電体に渦電流損が発生し、コンデンサ素子の金属電極には渦電流損が殆んど発生しなくなり、コンデンサ素子の温度上昇を抑制することができるものである。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2におけるケースモールド型コンデンサの正面断面図である。図4において、ケースモールド型コンデンサ21は、一対の端部に外部電極24を備えた複数のコンデンサ素子23a〜23eの外部電極24を、一端に端子部28,29を備えたバスバー25,26の水平部分35,36に接続したものをケース22に収納し、垂直部分37,38の先端の端子部28,29が露出するように充填樹脂27を充填したものである。ここまでの構成は実施の形態1と同じである。
【0056】
実施の形態1と異なるのは、バスバー25とコンデンサ素子23aとの間に設ける、導電体からなる遮蔽板31が、バスバー25に電気的に絶縁された状態で接触していることである。
【0057】
詳しく説明すると、遮蔽板31は、厚みが0.5〜1.5mmのアルミニウムの板で、厚みが25〜50μmの耐熱性と電気絶縁性とを備えたポリイミドフィルム32を介してバスバー25に耐熱性の接着剤によって貼り付けられており、アルミニウムの板の周縁をポリイミドフィルム32の周縁から0.5〜1.5mm内側になるようにして、遮蔽板31とバスバー25との絶縁を確保している。
【0058】
上記のような構成とすることで、バスバー25,26に電流が流れ、この電流による渦電流損で導電体からなる遮蔽板31が発熱しても、この熱を、バスバー25を伝播させて外部に逃がすことができるので、ケースモールド型コンデンサ21の温度上昇が抑えられ、長寿命化により効果的である。
【0059】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3におけるケースモールド型コンデンサの正面断面図である。図5において、ケースモールド型コンデンサ41は、一対の端部に外部電極44を備えた複数のコンデンサ素子43a〜43eの外部電極44を、一端に端子部48,49を備えたバスバー45,46の水平部分55,56に接続したものをケース42に収納し、垂直部分57,58の先端の端子部48,49が露出するように充填樹脂47を充填したものである。ここまでの構成は実施の形態1と同じである。
【0060】
実施の形態1と異なるのは、バスバー45とコンデンサ素子43aとの間に設ける導電体からなる遮蔽板51を導電体53と絶縁体54との積層体とし、遮蔽板51のバスバー45側の一方の面を絶縁体54としていることである。
【0061】
詳しく説明すると、遮蔽板51は、厚みが35μmの銅箔を厚みが0.8〜1.6mmの紙を基材としたフェノール樹脂の板に貼り合わせたものとなっている。
【0062】
遮蔽板51を上記のような構成とすることで、ケースモールド型コンデンサの実際の稼動時のバスバー45,46に電流が流れたときに、この電流による渦電流損で導電体からなる遮蔽板51が優先的に発熱して、コンデンサ素子43aが渦電流損によって発熱することを抑えることができ、更に遮蔽板51のバスバー45側の一方の面を絶縁体54としていることで、遮蔽板51がバスバー45に接触しても、遮蔽板51とバスバー45との絶縁が維持できるので、遮蔽板51とバスバー45との距離をより小さくすることが可能となり、その結果、遮蔽板51を設けることによって弊害となる形状の大型化を抑制しながらケースモールド型コンデンサの長寿命化を図ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のケースモールド型コンデンサは、稼動時の温度上昇が抑えられるので、長寿命化を図ることができ、特に、HEVや電気自動車などの限られたスペースに搭載されるコンデンサとして有用である。
【符号の説明】
【0064】
1,21,41 ケースモールド型コンデンサ
2,22,42 ケース
3a,3b,3c,3d,3e,23a,23b,23c,23d,23e,43a,43b,43c,43d,43e コンデンサ素子
4,24,44 外部電極
5,6,25,26,45,46 バスバー
7,27,47 充填樹脂
8,9,28,29,48,49 端子部
11,31,51 遮蔽板
15,16,35,36,55,56 水平部分
17,18,37,38,57,58 垂直部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化フィルムを巻回又は積層し両端面に外部電極が設けられた複数のコンデンサ素子と、このコンデンサ素子の外部電極に接続され、外部と電気的に接続するための端子部が設けられたバスバーとをケース内に収納し、前記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、前記バスバーと、このバスバーに近接し対面するコンデンサ素子との間に少なくとも導電体からなる遮蔽板が設けられていることを特徴とするケースモールド型コンデンサ。
【請求項2】
前記遮蔽板は、前記複数のコンデンサ素子の内、コンデンサ素子と対面する部分のバスバーに流れる電流値が最も大きいコンデンサ素子と、前記バスバーとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項3】
前記遮蔽板は、前記複数のコンデンサ素子の内、前記バスバーに設けられた前記端子部との距離が最も短い位置に対面しているコンデンサ素子と、前記バスバーとの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項4】
前記遮蔽板は、前記バスバーに、前記遮蔽板の導電体が前記バスバーとは電気的に絶縁された状態で接触していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項5】
前記遮蔽板は、導電体と絶縁体との積層体で、この積層体の少なくとも、前記バスバーと対向する面に絶縁体が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項6】
前記導電体が銅であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項7】
前記導電体が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項8】
前記導電体がグラファイトシートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項9】
前記グラファイトシートの面方向の熱伝導率が、厚み方向の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載のケースモールド型コンデンサ。
【請求項10】
前記導電体に、面方向の熱伝導率が、厚み方向の熱伝導率よりも大きいグラファイトシートを貼り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のケースモールド型コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30577(P2013−30577A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164972(P2011−164972)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】