コア、トランス、チョークコイル及びスイッチング電源装置
【課題】発熱量が小さく、温度特性の優れたコアを提供すること。
【解決手段】コア10は、トランス又はチョークコイル等に用いられるフェライト焼結体のコアである。コア10は、コイル12が囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲Caを通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10を複数に分割する複数のコア部材10Bを備えている。そして、複数のコア部材10B同士は少なくとも1箇所で接触している。また、複数のコア部材10Bのうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されている。
【解決手段】コア10は、トランス又はチョークコイル等に用いられるフェライト焼結体のコアである。コア10は、コイル12が囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲Caを通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10を複数に分割する複数のコア部材10Bを備えている。そして、複数のコア部材10B同士は少なくとも1箇所で接触している。また、複数のコア部材10Bのうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスやチョークコイルに用いるコアに関し、特に、発熱を低減し温度特性が改善されたコアに関する。また、本発明は、このようなコアを用いたトランスやチョークコイルに関する。また、本発明はこのようなトランスやチョークコイルを用いたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置などに用いられるトランスやチョークコイルは、動作時において発熱することから、発熱量が小さく放熱特性の優れたコアを採用することが望ましい。コアが高温にならないために考えられる手法は2つある。第1の手法としては、コア自体を発熱させないためにコアに低損失な磁性材料を使用する方法が挙げられる。また、コア自体を発熱させない第1の手法の別の方法として、コア形状を発熱しにくい形状にする方法が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のE型コアは、中心脚部の断面積を外側脚部の断面積よりも大きくすることで蓄熱しやすい中心脚部の温度上昇を抑えることが可能になるとされている。また、コアを高温にしないための第2の手法としては、発熱してしまったコアから熱を効率良く放熱させる方法が挙げられる。例えば、コアに放熱用部材あるいは冷媒を接触させ伝熱により放熱させる方法が挙げられる。また、効率良く放熱する第2の手法の別の方法として、コアを放熱しやすい形状とする方法が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載されたコアは、中心脚部に放熱用孔が設けられており、放熱用孔内の外気を介して放熱を行える。また、必要により前記放熱用孔に熱伝導率の高い放熱用部材を挿入して放熱特性を向上させることが可能になるとされている。特許文献2に記載されたコアは、上側梁部で発生する熱の放熱ルートを拡大することによって、コアの放熱特性を改善することが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−203726号公報
【特許文献2】特開2009−88250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2に記載された技術を用いても、特に発熱量の大きいトランスやチョークコイルにおいては、温度上昇の抑制が不十分となる問題があり、更なるコアの発熱低減のための改善が望まれている。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、発熱量が小さく、温度特性の優れたコアを提供することである。また、本発明の他の目的は、このようなコアを用いたトランス及びチョークコイルを提供することである。また、本発明の他の目的は、このようなトランス及びチョークコイルを用いたスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コイルが巻き回される焼結体のコアであって、前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲で、かつ前記コイルの軸線方向に沿って前記コアを複数に分割する複数のコア部材を備え、前記複数のコア部材同士は少なくとも1箇所で接触していることを特徴とするコアである。
【0008】
このコアは、コイルの軸線方向に沿って発生した磁束が最も集中する、前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲内に位置する前記コアを、分割して構成する。このような構造により、このコアは、焼成時に発生した歪を低減することができる。その結果、コアの磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コアの温度上昇が抑えられる。
【0009】
本発明において、前記複数のコア部材のうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されていることが好ましい。このコアによれば、分割する方向を磁気抵抗的に並列とすることで、分割したことによる歪の低減と合わせて、コア内部に発生するうず電流による損失を低減することができる。その結果、コアの磁気損失が低減し、コアの温度上昇が抑えられる。
【0010】
本発明において、前記焼結体はフェライトであることが好ましい。焼結体をフェライトとすることで、元々磁気損失の小さいフェライトの損失をさらに低減することが可能となる。その結果、コアの発熱量はさらに低減し、温度上昇がさらに抑えられる。
【0011】
本発明において、前記複数のコア部材のうち少なくとも1つは放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることが好ましい。このコアによれば、分割されたコア部材のうち少なくとも1つが放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることで、分割したことによる歪の低減と合わせて、コアの放熱特性が向上する。その結果、コアの磁気損失の低減による発熱量の低減と合わせ、コアの放熱特性の改善との相乗効果により、温度上昇がさらに抑えられる。
【0012】
本発明は、前記コアを用いたことを特徴とするトランスである。前記コアを用いることにより、発熱量の小さいトランスが提供されることから、トランスが伝送する電力を増やしたり、トランスを小型化したりすることが可能となる。
【0013】
本発明は、前記コアを用いたことを特徴とするチョークコイルである。前記コアを用いることにより、発熱量の小さいチョークコイルが提供されることから、チョークコイルに蓄えられる電力を増やしたり、チョークコイルを小型化したりすることが可能となる。
【0014】
本発明は、前記トランスを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置である。このスイッチング電源装置によれば、トランスの発生する熱量が低減されることから、信頼性の高いスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【0015】
本発明は、前記チョークコイルを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置である。このスイッチング電源装置によれば、チョークコイルの発生する熱量が低減されることから、信頼性の高いスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、発熱量が小さく、温度特性の優れたコアを提供することができる。また、本発明は、このようなコアを用いたトランス及びチョークコイルを提供することができる。また、本発明は、このようなトランス及びチョークコイルを用いたスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態1に係るコアを示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るコアの平面図である。
【図3】図3は、従来のコアの一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すコアの平面図である。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図6】図6は、実施形態2に係るコアを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図8】図8は、実施形態3に係るコアを示す斜視図である。
【図9】図9は、実施形態3に係るコアの平面図である。
【図10】図10は、実施形態4に係るコアを示す斜視図である。
【図11】図11は、実施形態4の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図12】図12は、比較例及び評価例の温度上昇の測定結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るコアを示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るコアの平面図である。コア10は、コイル12が巻き回される焼結体のコアである。本実施形態において、コア10は、フェライトの焼結体であるが、コア10の材料はこれに限定されるものではない。
【0020】
コア10は、1つのE型コアを複数に分割した複数のコア部材10Bを有し、これらを組み合わせたものである。それぞれのコア部材10Bは、いずれもE型形状である。2つのコア部材10Bが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10が組み立てられる。すなわち、コア10は、4個のコア部材10Bを有する。組み立てられたコア10をトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10の主脚部11にコイル12を巻き回す。そして、コイル12の軸線方向に沿って発生した磁束13を梁部14から側脚部15へと周回させ磁気回路を形成する。
【0021】
複数のコア部材10Bは、図2に示すコイル12がコア10を囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca(図1参照)を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10を複数に分割したものである。複数のコア部材10B同士は、少なくとも1箇所で接触している。複数のコア部材10B同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10B同士が隙間なく接触していることがより好ましい。このようにすれば、磁束の通路の分断が抑制されるので、コア10の性能低下が抑制される。この場合、コア部材10B同士が接触する面は、研磨されていることが好ましい。このようにすることで、コア部材10B同士の接触面積をより大きくすることができるので、コア10の性能低下をより効果的に抑制できる。
【0022】
本実施形態において、複数のコア部材10Bのうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されている。本実施形態では、コイル12の軸線方向と直交し、かつコア10に設けられてコイル12が巻き回される2つの孔16が貫通する方向に配列される2つのコア部材10B、10Bが、磁気抵抗的に並列となるように分割されている。このようにすることで、磁気の通路が分断される箇所を少なくすることができるので、コア10の性能低下を抑制できる。少なくとも2つのコア部材が磁気抵抗的に並列となるように分割される点は、以下の変形例及び実施形態等においても同様である。
【0023】
図3は、従来のコアの一例を示す斜視図である。図4は、図3に示すコアの平面図である。図3、図4に示すように、従来のコア100は、主脚部111に巻き回されたコイル12がコア100を囲む領域Ccをコイル112の軸線方向に拡張した領域Caで、コイル112の軸線方向に沿って分割されていない。このため、従来のコア100は、発熱が大きかった。
【0024】
コア10は、コイル12が囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca内において、コイル12の軸線方向に沿って発生した磁束が最も集中する。本実施形態のコア10は、コイル12が囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Caのコア10を、複数のコア部材10Bで分割している。このような構造により、焼成時に発生したコア10の歪を低減することができる。その結果、コア10の磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コア10の温度上昇が抑えられる。
【0025】
コア10を用いたトランスは、発熱量が小さくなる。このため、コア10を用いたトランスは、伝送可能な電力の増加、小型化が可能になる。コア10を用いたチョークコイルは、発熱量が小さくなる。このため、コア10を用いたチョークコイルは、蓄えられる電力の増加、小型化が可能になる。なお、コア10は、主として1つのトランス又はチョークコイル等に用いられる。コア10を用いたトランス又はコア10を用いたチョークコイルが搭載されたスイッチング電源装置は、トランス又はチョークコイルの発生する熱量が低減されることから、信頼性が向上する。
【0026】
図5は、実施形態1の変形例に係るコアを示す斜視図である。コア10’は、上述したコア10と同様であるが、分割数が異なる。すなわち、コア10’は、E型形状をした複数のコア部材10Jを有しており、3つのコア部材10Jが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10’組み立てられる。すなわち、コア10’は、6個のコア部材10Jを有する。コア10’も、上述したコア10と同様の作用、効果を奏する。
【0027】
本実施形態及びその変形例の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態及びその変形例と同様の構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0028】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係るコアを示す斜視図である。図7は、実施形態2の変形例に係るコアを示す斜視図である。コア10aは、E型の2つのコア部材10Cと、I型の2つのコア部材10Dとを有する。2つのE型のコア部材10Cは、それぞれが重ね合わされる。また、2つのI型のコア部材10Dは、それぞれが重ね合わされる。重ね合わされたコア部材10Cは、開口部が重ね合わされたコア部材10Dに向けて組み合わされる。このようにして、コア10aが組み立てられる。
【0029】
図7に示すコア10bは、E型の2つのコア部材10Cと、I型の1つのコア部材10Iとを有する。2つのE型のコア部材10Cは、それぞれが重ね合わされて、開口部がコア部材10Iに向けて組み合わされる。このようにして、コア10bが組み立てられる。
【0030】
コア10aも、実施形態1のコア10と同様に、コイル12がコア10aを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10aを複数に分割する複数のコア部材10C、10Dを備えている。また、コア10bも、コイル12がコア10bを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10bを複数に分割する複数のコア部材10C、10Iを備えている。このため、コア10a、10bは、焼成時に発生したコア10a、10bの歪を低減することができる。その結果、コア10a、10bの磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コア10a、10bの温度上昇が抑えられる。
【0031】
複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10I同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10D同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましいこと、複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10D同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1と同様である。
【0032】
本実施形態の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態と同様の構成を有するものは、本実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0033】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係るコアを示す斜視図である。図9は、実施形態3に係るコアの平面図である。図8に示すように、本実施形態のコア10cは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Eを複数有しており、これらを組み合わせたものである。それぞれのコア部材10Eは、いずれもU型形状である。複数のコア部材10Eは、図9に示すコイル12がコア10cを囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca(図8参照)を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10cを複数に分割したものである。
【0034】
2つのコア部材10Eが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10cが組み立てられる。このように、コア10cは、4個のコア部材10Eを有する。複数のコア部材10E同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10E同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10E同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1、2と同様である。組み立てられたコア10cをトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10cの主脚部11cにコイル12を巻き回す。
【0035】
本実施形態のコア10cも、上述したコア10、10a等と同様に、コイル12がコア10cを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10cを複数に分割する複数のコア部材10Eを備えている。このため、コア10cも、上述したコア10、10a等と同様の作用、効果を奏する。
【0036】
本実施形態の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態と同様の構成を有するものは、本実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0037】
(実施形態4)
図10は、実施形態4に係るコアを示す斜視図である。本実施形態のコア10dは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Fと、それぞれのコア部材10Fの開口部と組み合わされる複数のI型形状のコア部材10Gとを有しており、これらを組み合わせたものである。すなわち、コア10dは、コア部材10Fの開口部をコア部材10Gに向けて組み合わせて1つのコアとし、これらを2つ組み合わせることによって組み立てられる。複数のコア部材10E、10Gは、コイル12がコア10dを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10dを複数に分割している。
【0038】
コア10dは、複数のコア部材10F、10G同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10F、10G同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10F、10G同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1から3と同様である。この点は、後述する変形例でも同様である。組み立てられたコア10dをトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10dの主脚部11cにコイル12を巻き回す。
【0039】
本実施形態のコア10dも、上述したコア10、10a等と同様に、コイル12がコア10dを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10dを複数に分割する複数のコア部材10F、10Gを備えている。このため、コア10dも、上述したコア10、10a等と同様の作用、効果を奏する。
【0040】
図11は、実施形態4の変形例に係るコアを示す斜視図である。本変形例のコア10eは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Fを有する点は実施形態4のコア10dと同様であるが、それぞれのコア部材10Fの開口部とは、1つのI型形状のコア部材10Iが組み合わされる点が異なる。他の点は、コア10dと同様である。このため、コア10eも、コア10dと同様の作用、効果を奏する。
【0041】
本実施形態及びその変形例と同様の構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0042】
上述した各実施形態においては、コア単体の形状の改善による温度上昇低減を例に説明したが、コアに放熱用部材又は冷媒を接触させ、コアから冷媒への伝熱により放熱させる手法を併用してもよい。このようにすると、コアがより冷却されるのでコアの温度上昇をより低減させることができる。
【0043】
(評価例)
上述した実施形態のコアを評価した。まず、比較例として、Mn−Zn系フェライトの材質A及びMn−Zn−Ti系フェライトの材質Bを用いて、図3、図4に示す従来のコア100の温度上昇を測定した。温度上昇は、次の方法で測定した。まず、コアの初期温度を100℃とし、前記初期温度が安定した後、コア100の主脚部111において最大磁束密度230mTを発生させ、周波数100kHzで連続してコア100を励磁してコア100の温度が安定したところで、熱電対でコア100の温度を測定した。これにより、コア100の温度上昇を測定した。
【0044】
次に、評価例として、比較例と同様に材質A及び材質Bを用いて、図5に示すコア10’の温度上昇を測定した。コア10’の温度上昇は、比較例と同様の方法で測定した。測定結果は温度上昇率ΔTで示す。比較例、評価例の温度上昇率ΔTは、コア100、10’の材質ごとに、それぞれ比較例の温度上昇を1としたときの比率で表した。
【0045】
図12は、比較例及び評価例の温度上昇の測定結果を示す図表である。図12に示すとおり、材質Aにおいて、評価例は、比較例に対して温度上昇率ΔTが0.43であり、コアの温度上昇を著しく低減できた。また、材質Bにおいても、評価例は、比較例に対して温度上昇率ΔTが0.78であり、コアの温度上昇を低減できた。
【符号の説明】
【0046】
10、10’、10a、10b、10c、10d、10e、100 コア
10B、10C、10D、10E、10F、10G、10I、10J、100A コア部材
11、11c、11d、111 主脚部
12、112 コイル
13 磁束
14 梁部
15 側脚部
16 孔
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスやチョークコイルに用いるコアに関し、特に、発熱を低減し温度特性が改善されたコアに関する。また、本発明は、このようなコアを用いたトランスやチョークコイルに関する。また、本発明はこのようなトランスやチョークコイルを用いたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置などに用いられるトランスやチョークコイルは、動作時において発熱することから、発熱量が小さく放熱特性の優れたコアを採用することが望ましい。コアが高温にならないために考えられる手法は2つある。第1の手法としては、コア自体を発熱させないためにコアに低損失な磁性材料を使用する方法が挙げられる。また、コア自体を発熱させない第1の手法の別の方法として、コア形状を発熱しにくい形状にする方法が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のE型コアは、中心脚部の断面積を外側脚部の断面積よりも大きくすることで蓄熱しやすい中心脚部の温度上昇を抑えることが可能になるとされている。また、コアを高温にしないための第2の手法としては、発熱してしまったコアから熱を効率良く放熱させる方法が挙げられる。例えば、コアに放熱用部材あるいは冷媒を接触させ伝熱により放熱させる方法が挙げられる。また、効率良く放熱する第2の手法の別の方法として、コアを放熱しやすい形状とする方法が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載されたコアは、中心脚部に放熱用孔が設けられており、放熱用孔内の外気を介して放熱を行える。また、必要により前記放熱用孔に熱伝導率の高い放熱用部材を挿入して放熱特性を向上させることが可能になるとされている。特許文献2に記載されたコアは、上側梁部で発生する熱の放熱ルートを拡大することによって、コアの放熱特性を改善することが可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−203726号公報
【特許文献2】特開2009−88250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1や特許文献2に記載された技術を用いても、特に発熱量の大きいトランスやチョークコイルにおいては、温度上昇の抑制が不十分となる問題があり、更なるコアの発熱低減のための改善が望まれている。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、発熱量が小さく、温度特性の優れたコアを提供することである。また、本発明の他の目的は、このようなコアを用いたトランス及びチョークコイルを提供することである。また、本発明の他の目的は、このようなトランス及びチョークコイルを用いたスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コイルが巻き回される焼結体のコアであって、前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲で、かつ前記コイルの軸線方向に沿って前記コアを複数に分割する複数のコア部材を備え、前記複数のコア部材同士は少なくとも1箇所で接触していることを特徴とするコアである。
【0008】
このコアは、コイルの軸線方向に沿って発生した磁束が最も集中する、前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲内に位置する前記コアを、分割して構成する。このような構造により、このコアは、焼成時に発生した歪を低減することができる。その結果、コアの磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コアの温度上昇が抑えられる。
【0009】
本発明において、前記複数のコア部材のうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されていることが好ましい。このコアによれば、分割する方向を磁気抵抗的に並列とすることで、分割したことによる歪の低減と合わせて、コア内部に発生するうず電流による損失を低減することができる。その結果、コアの磁気損失が低減し、コアの温度上昇が抑えられる。
【0010】
本発明において、前記焼結体はフェライトであることが好ましい。焼結体をフェライトとすることで、元々磁気損失の小さいフェライトの損失をさらに低減することが可能となる。その結果、コアの発熱量はさらに低減し、温度上昇がさらに抑えられる。
【0011】
本発明において、前記複数のコア部材のうち少なくとも1つは放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることが好ましい。このコアによれば、分割されたコア部材のうち少なくとも1つが放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることで、分割したことによる歪の低減と合わせて、コアの放熱特性が向上する。その結果、コアの磁気損失の低減による発熱量の低減と合わせ、コアの放熱特性の改善との相乗効果により、温度上昇がさらに抑えられる。
【0012】
本発明は、前記コアを用いたことを特徴とするトランスである。前記コアを用いることにより、発熱量の小さいトランスが提供されることから、トランスが伝送する電力を増やしたり、トランスを小型化したりすることが可能となる。
【0013】
本発明は、前記コアを用いたことを特徴とするチョークコイルである。前記コアを用いることにより、発熱量の小さいチョークコイルが提供されることから、チョークコイルに蓄えられる電力を増やしたり、チョークコイルを小型化したりすることが可能となる。
【0014】
本発明は、前記トランスを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置である。このスイッチング電源装置によれば、トランスの発生する熱量が低減されることから、信頼性の高いスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【0015】
本発明は、前記チョークコイルを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置である。このスイッチング電源装置によれば、チョークコイルの発生する熱量が低減されることから、信頼性の高いスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、発熱量が小さく、温度特性の優れたコアを提供することができる。また、本発明は、このようなコアを用いたトランス及びチョークコイルを提供することができる。また、本発明は、このようなトランス及びチョークコイルを用いたスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施形態1に係るコアを示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るコアの平面図である。
【図3】図3は、従来のコアの一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すコアの平面図である。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図6】図6は、実施形態2に係るコアを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図8】図8は、実施形態3に係るコアを示す斜視図である。
【図9】図9は、実施形態3に係るコアの平面図である。
【図10】図10は、実施形態4に係るコアを示す斜視図である。
【図11】図11は、実施形態4の変形例に係るコアを示す斜視図である。
【図12】図12は、比較例及び評価例の温度上昇の測定結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るコアを示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るコアの平面図である。コア10は、コイル12が巻き回される焼結体のコアである。本実施形態において、コア10は、フェライトの焼結体であるが、コア10の材料はこれに限定されるものではない。
【0020】
コア10は、1つのE型コアを複数に分割した複数のコア部材10Bを有し、これらを組み合わせたものである。それぞれのコア部材10Bは、いずれもE型形状である。2つのコア部材10Bが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10が組み立てられる。すなわち、コア10は、4個のコア部材10Bを有する。組み立てられたコア10をトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10の主脚部11にコイル12を巻き回す。そして、コイル12の軸線方向に沿って発生した磁束13を梁部14から側脚部15へと周回させ磁気回路を形成する。
【0021】
複数のコア部材10Bは、図2に示すコイル12がコア10を囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca(図1参照)を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10を複数に分割したものである。複数のコア部材10B同士は、少なくとも1箇所で接触している。複数のコア部材10B同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10B同士が隙間なく接触していることがより好ましい。このようにすれば、磁束の通路の分断が抑制されるので、コア10の性能低下が抑制される。この場合、コア部材10B同士が接触する面は、研磨されていることが好ましい。このようにすることで、コア部材10B同士の接触面積をより大きくすることができるので、コア10の性能低下をより効果的に抑制できる。
【0022】
本実施形態において、複数のコア部材10Bのうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されている。本実施形態では、コイル12の軸線方向と直交し、かつコア10に設けられてコイル12が巻き回される2つの孔16が貫通する方向に配列される2つのコア部材10B、10Bが、磁気抵抗的に並列となるように分割されている。このようにすることで、磁気の通路が分断される箇所を少なくすることができるので、コア10の性能低下を抑制できる。少なくとも2つのコア部材が磁気抵抗的に並列となるように分割される点は、以下の変形例及び実施形態等においても同様である。
【0023】
図3は、従来のコアの一例を示す斜視図である。図4は、図3に示すコアの平面図である。図3、図4に示すように、従来のコア100は、主脚部111に巻き回されたコイル12がコア100を囲む領域Ccをコイル112の軸線方向に拡張した領域Caで、コイル112の軸線方向に沿って分割されていない。このため、従来のコア100は、発熱が大きかった。
【0024】
コア10は、コイル12が囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca内において、コイル12の軸線方向に沿って発生した磁束が最も集中する。本実施形態のコア10は、コイル12が囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Caのコア10を、複数のコア部材10Bで分割している。このような構造により、焼成時に発生したコア10の歪を低減することができる。その結果、コア10の磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コア10の温度上昇が抑えられる。
【0025】
コア10を用いたトランスは、発熱量が小さくなる。このため、コア10を用いたトランスは、伝送可能な電力の増加、小型化が可能になる。コア10を用いたチョークコイルは、発熱量が小さくなる。このため、コア10を用いたチョークコイルは、蓄えられる電力の増加、小型化が可能になる。なお、コア10は、主として1つのトランス又はチョークコイル等に用いられる。コア10を用いたトランス又はコア10を用いたチョークコイルが搭載されたスイッチング電源装置は、トランス又はチョークコイルの発生する熱量が低減されることから、信頼性が向上する。
【0026】
図5は、実施形態1の変形例に係るコアを示す斜視図である。コア10’は、上述したコア10と同様であるが、分割数が異なる。すなわち、コア10’は、E型形状をした複数のコア部材10Jを有しており、3つのコア部材10Jが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10’組み立てられる。すなわち、コア10’は、6個のコア部材10Jを有する。コア10’も、上述したコア10と同様の作用、効果を奏する。
【0027】
本実施形態及びその変形例の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態及びその変形例と同様の構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0028】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係るコアを示す斜視図である。図7は、実施形態2の変形例に係るコアを示す斜視図である。コア10aは、E型の2つのコア部材10Cと、I型の2つのコア部材10Dとを有する。2つのE型のコア部材10Cは、それぞれが重ね合わされる。また、2つのI型のコア部材10Dは、それぞれが重ね合わされる。重ね合わされたコア部材10Cは、開口部が重ね合わされたコア部材10Dに向けて組み合わされる。このようにして、コア10aが組み立てられる。
【0029】
図7に示すコア10bは、E型の2つのコア部材10Cと、I型の1つのコア部材10Iとを有する。2つのE型のコア部材10Cは、それぞれが重ね合わされて、開口部がコア部材10Iに向けて組み合わされる。このようにして、コア10bが組み立てられる。
【0030】
コア10aも、実施形態1のコア10と同様に、コイル12がコア10aを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10aを複数に分割する複数のコア部材10C、10Dを備えている。また、コア10bも、コイル12がコア10bを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10bを複数に分割する複数のコア部材10C、10Iを備えている。このため、コア10a、10bは、焼成時に発生したコア10a、10bの歪を低減することができる。その結果、コア10a、10bの磁気損失が低減し、発熱量が低減するので、コア10a、10bの温度上昇が抑えられる。
【0031】
複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10I同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10D同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましいこと、複数のコア部材10C、10D同士又はコア部材10C、10D同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1と同様である。
【0032】
本実施形態の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態と同様の構成を有するものは、本実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0033】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係るコアを示す斜視図である。図9は、実施形態3に係るコアの平面図である。図8に示すように、本実施形態のコア10cは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Eを複数有しており、これらを組み合わせたものである。それぞれのコア部材10Eは、いずれもU型形状である。複数のコア部材10Eは、図9に示すコイル12がコア10cを囲む領域Ccをコイル12の軸線方向に拡張した範囲Ca(図8参照)を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10cを複数に分割したものである。
【0034】
2つのコア部材10Eが組み合わされて1つのE型コアとなる。2個の前記E型コアを一組として、それぞれの開口部を向き合わせてコア10cが組み立てられる。このように、コア10cは、4個のコア部材10Eを有する。複数のコア部材10E同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10E同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10E同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1、2と同様である。組み立てられたコア10cをトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10cの主脚部11cにコイル12を巻き回す。
【0035】
本実施形態のコア10cも、上述したコア10、10a等と同様に、コイル12がコア10cを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10cを複数に分割する複数のコア部材10Eを備えている。このため、コア10cも、上述したコア10、10a等と同様の作用、効果を奏する。
【0036】
本実施形態の構成は、以下においても適宜適用することができる。また、本実施形態と同様の構成を有するものは、本実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0037】
(実施形態4)
図10は、実施形態4に係るコアを示す斜視図である。本実施形態のコア10dは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Fと、それぞれのコア部材10Fの開口部と組み合わされる複数のI型形状のコア部材10Gとを有しており、これらを組み合わせたものである。すなわち、コア10dは、コア部材10Fの開口部をコア部材10Gに向けて組み合わせて1つのコアとし、これらを2つ組み合わせることによって組み立てられる。複数のコア部材10E、10Gは、コイル12がコア10dを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10dを複数に分割している。
【0038】
コア10dは、複数のコア部材10F、10G同士が少なくとも1箇所で接触していこと、複数のコア部材10F、10G同士の接触面積は可能な限り大きいことが好ましく、複数のコア部材10F、10G同士が隙間なく接触していることがより好ましいことは、実施形態1から3と同様である。この点は、後述する変形例でも同様である。組み立てられたコア10dをトランス又はチョークコイルに使用する場合は、コア10dの主脚部11cにコイル12を巻き回す。
【0039】
本実施形態のコア10dも、上述したコア10、10a等と同様に、コイル12がコア10dを囲む領域をコイル12の軸線方向に拡張した範囲を通り、かつコイル12の軸線方向に沿ってコア10dを複数に分割する複数のコア部材10F、10Gを備えている。このため、コア10dも、上述したコア10、10a等と同様の作用、効果を奏する。
【0040】
図11は、実施形態4の変形例に係るコアを示す斜視図である。本変形例のコア10eは、1つのE型コアを2つに分割したU型のコア部材10Fを有する点は実施形態4のコア10dと同様であるが、それぞれのコア部材10Fの開口部とは、1つのI型形状のコア部材10Iが組み合わされる点が異なる。他の点は、コア10dと同様である。このため、コア10eも、コア10dと同様の作用、効果を奏する。
【0041】
本実施形態及びその変形例と同様の構成を有するものは、本実施形態及びその変形例と同様の作用、効果を奏する。
【0042】
上述した各実施形態においては、コア単体の形状の改善による温度上昇低減を例に説明したが、コアに放熱用部材又は冷媒を接触させ、コアから冷媒への伝熱により放熱させる手法を併用してもよい。このようにすると、コアがより冷却されるのでコアの温度上昇をより低減させることができる。
【0043】
(評価例)
上述した実施形態のコアを評価した。まず、比較例として、Mn−Zn系フェライトの材質A及びMn−Zn−Ti系フェライトの材質Bを用いて、図3、図4に示す従来のコア100の温度上昇を測定した。温度上昇は、次の方法で測定した。まず、コアの初期温度を100℃とし、前記初期温度が安定した後、コア100の主脚部111において最大磁束密度230mTを発生させ、周波数100kHzで連続してコア100を励磁してコア100の温度が安定したところで、熱電対でコア100の温度を測定した。これにより、コア100の温度上昇を測定した。
【0044】
次に、評価例として、比較例と同様に材質A及び材質Bを用いて、図5に示すコア10’の温度上昇を測定した。コア10’の温度上昇は、比較例と同様の方法で測定した。測定結果は温度上昇率ΔTで示す。比較例、評価例の温度上昇率ΔTは、コア100、10’の材質ごとに、それぞれ比較例の温度上昇を1としたときの比率で表した。
【0045】
図12は、比較例及び評価例の温度上昇の測定結果を示す図表である。図12に示すとおり、材質Aにおいて、評価例は、比較例に対して温度上昇率ΔTが0.43であり、コアの温度上昇を著しく低減できた。また、材質Bにおいても、評価例は、比較例に対して温度上昇率ΔTが0.78であり、コアの温度上昇を低減できた。
【符号の説明】
【0046】
10、10’、10a、10b、10c、10d、10e、100 コア
10B、10C、10D、10E、10F、10G、10I、10J、100A コア部材
11、11c、11d、111 主脚部
12、112 コイル
13 磁束
14 梁部
15 側脚部
16 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻き回される焼結体のコアであって、
前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲で、かつ前記コイルの軸線方向に沿って前記コアを複数に分割する複数のコア部材を備え、
前記複数のコア部材同士は少なくとも1箇所で接触していることを特徴とするコア。
【請求項2】
前記複数のコア部材のうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されていることを特徴とする請求項1に記載のコア。
【請求項3】
前記焼結体はフェライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコア。
【請求項4】
前記複数のコア部材のうち少なくとも1つは放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコア。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコアを用いたことを特徴とするトランス。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコアを用いたことを特徴とするチョークコイル。
【請求項7】
請求項5に記載のトランスを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
請求項6に記載のチョークコイルを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項1】
コイルが巻き回される焼結体のコアであって、
前記コイルが囲む領域を前記コイルの軸線方向に拡張した範囲で、かつ前記コイルの軸線方向に沿って前記コアを複数に分割する複数のコア部材を備え、
前記複数のコア部材同士は少なくとも1箇所で接触していることを特徴とするコア。
【請求項2】
前記複数のコア部材のうち、少なくとも2つは磁気抵抗的に並列となるように分割されていることを特徴とする請求項1に記載のコア。
【請求項3】
前記焼結体はフェライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコア。
【請求項4】
前記複数のコア部材のうち少なくとも1つは放熱用部材又は冷媒に接して設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコア。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコアを用いたことを特徴とするトランス。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコアを用いたことを特徴とするチョークコイル。
【請求項7】
請求項5に記載のトランスを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
請求項6に記載のチョークコイルを備えたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−204814(P2012−204814A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71080(P2011−71080)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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