説明

コンクリート打設用型枠の温度保持装置

【課題】設備負担の増大を回避でき、かつ型枠各部での温度ムラの発生を防止できる。
【解決手段】コンクリート打設用の型枠3の、コンクリートCに接するその外周壁321の内面に沿って複数位置に、筒状の強化リブを利用した流体流通路35を設けるとともに、熱風発生器42からの熱風を少なくとも一つの流体流通路35に順次周期的に切換えて供給する分配器5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート打設用型枠の温度保持装置に関し、特に、トンネル等の覆工用コンクリートを打設する際に好適に使用できるコンクリート打設用型枠の温度保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの二次覆工等のためにコンクリートを打設する場合、コンクリート養生温度を適温(20〜30℃)に保って、必要な強度が出るまでの養生期間を短くすることが試みられている。例えば特許文献1には、型枠の筒状強化リブを流体流通路として利用してこれに熱媒体供給源から熱媒体を供給することによって、コンクリートに接する型枠外周壁(スキンプレート)の温度を適温に保つことが試みられている。
【特許文献1】特開2007−169982
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の構造は、強化リブを利用してその筒状空間内に熱媒体を供給するようにしたことにより、面状発熱体を敷き込む煩雑な作業が不要になり、設備費を低く抑えることができるという大きな効果が得られるものである。ところが、全ての強化リブに同時に熱媒体を供給しようとすると、設備負担が過大になるとともに、配管抵抗等によって強化リブの全てに均等に熱媒体が行き渡らず、型枠の各部で温度ムラを生じるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、設備負担の増大を回避でき、かつ型枠各部での温度ムラの発生も防止できるコンクリート打設用型枠の温度保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本第1発明では、コンクリート打設用の型枠(3)の、コンクリート(C)に接するその外周壁(321)の内面に沿って複数位置に筒状の流体流通路(35)を設けるとともに、熱媒体供給源(42)からの熱媒体を少なくとも一つの前記流体流通路(35)に順次周期的に切換えて供給する熱媒体分配手段(5)を設けたことを特徴とする。
【0006】
本第1発明によれば、型枠の外周壁の内面に沿って設けた流体流通路の群に対して、熱媒体を順次周期的に切換えて供給するようにしているから、同時に全ての流体流通路に熱媒体を供給するのに比して、設備負担を軽減できるとともに、型枠の各部での温度ムラの発生を防止することができる。
【0007】
本第2発明では、前記流体流通路を、型枠(3)の筒状をなす強化リブ(35)で構成する。本第2発明によれば、従来から設けられている強化リブを利用して安価かつ簡易に温度保持装置を構成することができる。
【0008】
本第3発明では、前記熱媒体分配手段(5)は、周期的に移動させられて前記流体流通路(35)に通じる開口(511)を選択的に開閉する切換板(58)を備えている。
本第3発明では、開口の切り換えを簡易な構造で実現することができる。
【0009】
本第4発明では、前記開口(511)を円周上に設けるとともに、前記切換板(58)を円形に成形してその中心回りに回転させ、当該切換板(58)の板面に形成した抜き穴(581)によって前記開口(511)を選択的に開閉するようにする。本第4発明において、抜き穴の大きさと開口の配置を適正に決定することによって、順次開閉される複数の開口の総開口面積を常にほぼ一定にすることができ、これによれば、開口の開閉切換に伴う熱媒体の脈動を小さくすることができる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、従来のような発熱体設置の手間がなく、設備費を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す、コンクリート打設用型枠を備えたトンネル用スライドセントルの横断面図である。
【図2】型枠部材を構成する天端フォームのフレームの斜視図である。
【図3】熱風分配装置の概略平面図である。
【図4】分配器の縦断面図で、図5のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】分配器の横断面図で、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】切換板の作動状態を示す分配器の横断面図である。
【図7】切換板の作動状態を示す分配器の横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
図1には本発明のコンクリート打設用型枠を備えたトンネル用スライドセントルの横断面を示す。図1において、スライドセントル1は車両通行可能な門型のガントリー2を備えており、当該ガントリー2には、その上半を覆うように配設したアーチ型の型枠3が支持されている。そして、型枠3の外周壁とトンネルTの内周壁との間に二次覆工用のコンクリートCが打設されている。
【0015】
ガントリー2は紙面垂直の前後方向へ一定の長さを有しており、その前後端の脚部21下端には車輪22が設けられてレール23上に位置している。また、ガントリー2の前後方向の中間に位置する複数の各脚部24にはそれぞれ下端に補助ジャッキ25が設けられている。なお、図1の左右半部は、それぞれガントリー長手方向における異なる位置での横断面である。
【0016】
型枠3は一定幅のアーチ状同形の型枠部材31を前後方向で複数互いに連結して構成されており、各型枠部材31は、頂部に位置する天端フォーム32、天端フォーム32の両端下面に回動可能に連結されて両側に位置する側フォーム33、および側フォーム33の下端に回動可能に連結された下端フォーム34より構成されている。天端フォーム32は、ガントリー2の頂部上に前後方向へ複数設けたジャッキ26によって昇降可能に支持されている。また、側フォーム33と下端フォーム34はそれぞれジャッキ27,28によってガントリー2の脚部21,24に連結されて、内外方向へ回動させられる。
【0017】
型枠部材31を構成する天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34にはコンクリートCに接する外周壁(スキンプレート)321の内面に、前後方向(型枠部材31の幅方向)へ平行に延びる多数の強化リブ35が設けてあり、これら強化リブ35は、例えば略U字形に屈曲させた板材の開口縁を外周壁321の内面に接合して閉断面の筒状となっている。複数の型枠部材31の、天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34はその強化リブ35が一致するように前後方向へ連結されて強化リブ35の筒状空間が連通させてあり、これにより流体流通路が構成されている。なお、図2に天端フォーム32の中央フレーム36についてその連結状態を示す。
【0018】
以上のように連通させられた各強化リブ35の一端開口には図2に示すように可撓性の供給管41が連結されており、これら供給管41は図3に示す熱媒体分配手段としての熱風分配装置4から延びている。図3において、熱風分配装置4は二台の分配器5と、熱媒体供給源たる熱風発生器42を備えている。熱風発生器42はオイルバーナ43を有しており、外気を所望温度(例えば30℃〜60℃)に加熱して熱風を発生させる。発生した熱風は二台の送風機44によって各分配器5に送られる。各分配器5は後述する構造によって、これに供給される熱風を上記供給管41へ分配圧送する。
【0019】
本実施形態では、アーチ型の型枠3の右半部を構成する天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34の各強化リブ35の一端開口に連結された各供給管41を一方の分配器5に連結し、上記型枠3の左半部を構成する天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34の各強化リブ35の一端開口に連結された各供給管41を他方の分配器5に連結してある。
【0020】
図4および図5には分配器5の詳細構造を示す。なお左右の分配器5は基本的に同一構造である。
【0021】
分配器5は前板51と背板52の間に円筒状の側板53を挟持させて内部に円形の閉鎖空間Sを形成したもので、前板51と背板52の直線状の下辺が基盤54上に固定されて全体が起立している。前板51の外面中心部には減速機55が突設されて、その出力回転軸551が前板51の中心を貫通して閉鎖空間S内に突出している。減速機55には駆動モータ56が連結されている。
【0022】
前板51には中心回りに周方向へ一定間隔をおいて円形の開口たる吐出口511が複数(本実施形態では12個、図5参照)形成されており、各吐出口511にはこれに連通させて外方へ筒状の接続部57が突設されている。そして、これら接続部57に、型枠3の上記各強化リブ35に向かう供給管41がそれぞれ接続される。なお、図3に示した各接続部57は理解を容易にするために実際の配置とは異なっている。
【0023】
閉鎖空間S内には前板51の内面に沿って上記各吐出口511を閉鎖するように円形の切換板58が設けてあり、その中心は上記回転軸551に固着されてこれと一体に回転させられる。切換板58の板面にはその中心に対し円弧をなして周方向へ延びる抜き穴としての長穴581(図5)が形成されており、長孔581の幅は吐出口511の内径とほぼ等しくなっている。したがって、長孔581が位置する部分では吐出口511が開放されて閉鎖空間S内に連通する。
【0024】
本実施形態では長孔581の長さを調整して、切換板58がどの回転角度位置にあっても常にほぼ3個の吐出口511の面積分(図5の斜線部。図6、図7も同様)が閉鎖空間S内に開放連通するようにしてある。また、側壁53には一箇所に円形の流入口531が開口しており、当該流入口531からは側板53の接線方向の外方へ連結管532が突設されている。そして、この連結管532に上記送風機44に至る配管441が連結される。
【0025】
このような構造の温度保持装置において、型枠3の外周壁とトンネルTの内周壁との間に打設されたコンクリートCの養生を行う場合には、熱風発生器42のオイルバーナ43に点火して必要温度の熱風を発生させ、これを送風機44で左右の分配器5に供給する。分配器5に供給された熱風は接線方向から円形の閉鎖空間S内へ供給され、旋回流となって閉鎖空間S内に均等に拡散される。この状態で駆動モータ56を起動して切換板58を一定周期で回転させる。
【0026】
切換板58が回転するとその長穴581が周方向へ移動して、この移動に伴い、図6、図7に示すように、分配器5の前板51に周方向へ設けられた吐出口511が順次開放されるとともに順次閉鎖される。これにより、分配器5の閉鎖空間S内に連通する吐出口511が順次切り替えられ、開放された吐出口511から供給管41を経てこれが接続された型枠3の強化リブ35内へ熱風が供給される。そして、熱風は強化リブ35を流通する間に、コンクリートCに接する天端フォーム32、側フォーム33および下端フォーム34の外周壁(スキンプレート)321を加温してコンクリートCを適温に保ち、その養生を促進する。
【0027】
本実施形態においては既述のように、分配器5の切換板58がどの回転角度位置にあっても常にほぼ3個の吐出口581の面積分でこれら吐出口581を開放するようにしているから、各吐出口581の開閉を切り替える際の熱風の脈動を小さく抑えることができる。
【0028】
本実施形態では各強化リブ35内に間欠的に熱風が流れることになるが、強化リブ35内に残留する熱風温度は即座に低下することはなく、切換板58の回転速度を適当に調整して、例えば各強化リブ35への熱風供給の切り換えを3秒毎にする等によって、型枠3の外周全周に亘って均等に加温することができる。
【0029】
本実施形態によれば、天端フォーム32から下端フォーム34までの各強化リブ35への熱風供給を順次切り替えているから、従来のように全ての強化リブに同時に熱風を供給するのに比して設備負担が軽減されるとともに、強化リブの全てに均等に熱風を行き渡らせることができるから型枠各部の温度ムラを生じることがない。
【0030】
なお、雰囲気温度がコンクリート養生温度より高い場合には熱風発生器42を作動させず、送風機44から冷風を分配器5に供給するようにしても良い。あるいは熱風発生器42に代えて、所望温度の空調風を生成できる空調装置を設けても良い。なお、熱媒体としては気体に限らず、液体を使用することもできる。
【0031】
切換板58による吐出口511の開閉は上記実施形態のものに限られず、吐出口を一つずつ開閉し、あるいは離れた位置にある吐出口を同時に開閉する等、実際の使用状況に応じて種々の態様をとることができる。切換板は必ずしも円形で回転するものである必要はなく、例えば直線的に往復動するものであっても良い。また、切換板の大きさを、全ての開口(吐出口)の形成領域よりも小さなものにしておけば、板面に抜き穴を設けることは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0032】
3…型枠、321…外周壁、35…強化リブ(流体流通路)、42…熱風発生器(熱媒体供給源)、5…分配器(熱媒体分配手段)、511…吐出口(開口)、58…切換板、581…長穴(抜き穴)、C…コンクリート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート打設用の型枠の、コンクリートに接するその外周壁の内面に沿って複数位置に筒状の流体流通路を設けるとともに、熱媒体供給源からの熱媒体を少なくとも一つの前記流体流通路に順次周期的に切換えて供給する熱媒体分配手段を設けたことを特徴とするコンクリート打設用型枠の温度保持装置。
【請求項2】
前記流体流通路を、型枠の筒状をなす強化リブで構成した請求項1に記載のコンクリート打設用型枠の温度保持装置。
【請求項3】
前記熱媒体分配手段は、周期的に移動させられて前記流体流通路に通じる開口を選択的に開閉する切換板を備えている請求項1又は2に記載のコンクリート打設用型枠の温度保持装置。
【請求項4】
前記開口を円周上に設けるとともに、前記切換板を円形に成形してその中心回りに回転させ、当該切換板の板面に形成した抜き穴によって前記開口を選択的に開閉するようにした請求項3に記載のコンクリート打設用型枠の温度保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251361(P2012−251361A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124694(P2011−124694)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000158725)岐阜工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】