説明

コンタクトピン

【課題】コンタクトピンの接触抵抗の増加を抑えるとともに、非磁性であるコンタクトピンを提供することを目的としている。
【解決手段】導電材からなる基材2上に、ニッケルとリンの合金からなる中間層3と、パラジウムと銀の最表層4を設けコンタクトピン1を構成する。このコンタクトピン1をバーンイン試験のための使われるICソケットのICの各端子に対応して装着し、ICの各端子とバーンイン試験にためのICソケットを搭載した基板との電気的接続を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーンイン試験等で用いられる導電性材料からなる基材に電気抵抗の上昇を抑えると共に、非磁性である表層を設けたコンタクトピンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(集積回路)の初期故障、固有欠陥の製品を発見するため、高温下でICを通電させるバーンイン試験が行われている。この試験では、回路基板に実装されたICソケットに検査対象であるICを換装し、この基板を加熱装置に収納して試験を行う。ここで、ICの端子と、基板の配線は、コンタクトピンを介して電気的に接続される。
【0003】
従来のコンタクトピンとしては銅(Cu)などの基材の上に、金(Au)メッキ層が形成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。また、ICの端子には、鉛フリー半田である錫(Sn)や錫合金等で形成されたものが多く用いられるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−41424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のものにあっては、バーンイン試験を繰り返すことにより、コンタクトピンとICの端子との間の接触電気抵抗値が早期の段階で大きくなってしまい適切な試験を行えないという問題を生じていた。
【0006】
接触電気抵抗値が上昇する原因として、高温下のバーンイン試験において、コンタクトピン表面の金(Au)メッキ層の金が、近年多く用いられている鉛フリーの半田の錫(Sn)と高温化で融合して合金を生成する。また、高温下における、コンタクトピンと端子の擦り合わせにより、錫(Sn)がコンタクトピン表面の金(Au)メッキ層において酸化する。この合金や酸化物がコンタクトピン表面を比抵抗の大きい膜として覆うこととなる。これにより、端子とコンタクトピンの導通を妨げられることとなるため電気抵抗値が高まっているためである。
【0007】
また、磁性を抑えた状況下でバーンイン試験を行いたい場合、従来のコンタクトピンでは磁性を有しているため適切な試験を行えないという問題もあった。
【0008】
このコンタクトピンが磁性を有してしまう理由として、従来のコンタクトピンは基材のコンタクトピン表面金属への拡散を防ぐために中間層に磁性を有するニッケルを使用していることがその原因にある。
【0009】
そこで、本願発明はバーンイン試験を繰り返し行っても、電気抵抗値の上昇を抑え、かつ磁性を有さないことを特徴とするコンタクトピンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下のことを解決するための手段とすることを特徴とする。
【0011】
電気抵抗値が高まるのを抑制するために、コンタクトピンの表面金属にIC部品の端子に用いられる錫(Sn)に対する耐食性の高い金属膜として銀、パラジウム、または銀とパラジウムの金属膜を設けることとした。
【0012】
IC部品の端子とコンタクトピンの最表層との接触抵抗を下げると共に、摺動特性を改善することを重点に置く場合には、摺動特性に優れたパラジウムまたは銀とパラジウムの金属膜をコンタクトピンの表面に形成させることとした。
【0013】
また、コンタクトピン全体を非磁性とするために、基材及び最表層のメッキ層を非磁性とし、中間層のニッケルメッキの磁性率を低下させるために中間層のニッケルにリンを含有するメッキ層とした。
【0014】
そのため、本発明では、コンタクトピンの基材の電極表面への拡散を防ぐために基材にメッキされ、接触抵抗が高いため中間層として従来使用されているニッケルに、リンを5wt%〜13wt%を含有することで中間層を非磁性化した。
【0015】
さらに中間層をリンの含有率を11wt%〜13wt%、残部をニッケルとしたメッキ層とすることによりバーンイン試験を繰り返すうちに中間層が磁性化する恐れのないメッキ層を形成した。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係るコンタクトピンは上記説明したように構成したため、バーンイン試験を繰り返し行っても、従来のコンタクトピンに比べ電気抵抗の上昇を抑えることができる。またコンタクトピンの磁性率も抑えたため、非磁性下のバーンイン試験を行うことが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかるコンタクトピンの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、コンタクトピン1の断面を示す断面概略図である。
【0020】
コンタクトピン1は、ICのバーンイン試験に用いられる回路基板上に実装された複数のICソケットのICの端子に対応して設けられている。ICソケットに換装されたICは、ICに設けられている端子と、このコンタクトピン1を介して回路基板と電気的に接続される。
【0021】
バーンイン試験を行う際には、前記複数のICソケットに、それぞれICを換装し、バーンイン試験機の中に収納して加熱試験が行われる。
【0022】
コンタクトピン1の基材2は、導電率が高く、延性に富み、適度な強度を有する銅または銅合金で形成する。そして、コンタクトピン1の一端は、バーンイン試験を行うための回路基板に電気的に接続されている。また、他の一端には中間層3、最表層4が設けられてICの端子と接触し、ICと電気的接続が行われている。このコンタクトピン1は、ICの各端子に対応してICソケットに設けられている。ここで、回路基板に接続されるコンタクトピン1の一端側においても、中間層3、最表層4が設けられていても良いことは言うまでもない。
【0023】
中間層3は、リンとニッケルの合金を無電解メッキしたものであり、ニッケルにリンを含有させて合金とすることにより、中間層3を非磁性とすることができる。ニッケルとリンの合金におけるリンの含有率は、リンが多いほどに中間層3のリン(P)は、非磁性に近くなるが、ニッケルとリンの合金とするには、リンの含有率が13wt%程度が限界となる。一方、リンの含有率が5wt%未満となるとニッケッルとリンの合金であっても磁性となる。さらに、リンの含有率が11wt%以上の範囲ではニッケルとリンの合金は、熱により磁性化することがないので、リンの含有率を11wt%〜13wt%で、残部はニッケルからなる合金であるとすると、バーンイン試験を繰り返すうちに中間層が磁性化する恐れのない中間層3を形成することが出来る。
【0024】
中間層3のリンは、バーンイン試験の際に加熱されることで、その一部がコンタクトピン1の最表層4のメッキ中に滲出し、最表層4を薄膜で形成した場合には、更に最表層4の表面にまで拡散する。そして、このリンはコンタクトピン表面全体にリン酸化物の皮膜を形成する。この酸化物による被膜は、コンタクトピン表面の電気抵抗を上げずに、緩衝膜として半田とコンタクトピンの表面金属の接触を防止する。そのため、このリン酸化物の膜により、電気抵抗の上昇の原因となる最表層4と半田の錫との化合物あるいは酸化物の形成が抑制される効果も有することとなる。
【0025】
すなわち、中間層3のニッケルに含有させたリンの含有率により中間層3の磁性率の調整をすることができるが、同時に、このリンによりコンタクトピンの電気抵抗の上昇を抑制させることができる。
【0026】
中間層3の厚みは、0.1μm〜5μmとする。厚みが増すとコンタクトピンを加工する際にクラックを生じたりバリを生じることがあるので、コンタクトピンの中間層をメッキした後にコンタクトピンの加工を行う必要がある場合には、中間層の厚みは3μm以下にすることが好ましい。逆に、厚みが0.5μm未満であると最表層4への基材2の材料成分の滲出を抑える効果が弱くなるので、中間層3の厚みは0.5μm以上が好ましい。
【0027】
最表層4は非磁性である銀、またはパラジウム、あるいはパラジウムと銀のメッキ層で形成している。具体的には、銀をメッキする。パラジウムをメッキする。パラジウムと銀を同時にメッキする。あるいは、パラジウムのメッキ層、銀のメッキ層、パラジウムと銀のメッキ層の中から二層以上を組み合わせて積層して形成されている。
【0028】
銀は初期の電気抵抗および半田付け性が安定しているが、耐摩耗性、マイグレーション性が劣っている。またパラジウムは、銀に比べ摺動特性が優れている。コンタクトピンのようにバーンイン試験のたび毎にICの端子を摺動させて使用するものにおいて、摺動特性が優れていることは重要である。またパラジウムは、接触抵抗がニッケルメッキより低く優れていると同時に中間層3のニッケルが最表層4に拡散することを防ぐ効果も大きい。一方、パラジウムは、半田付け性が銀より劣るものの、ICソケットのコンタクトピンとして用いる場合には、半田付け性は問題とはならない。
【0029】
従って、最表層4を接触抵抗を低くすることを望む場合には、最表層4のICの端子と接触する表面側に銀メッキ層、あるいはパラジウムと銀のメッキ層を配置すると良い。また動摩擦係数を低く抑えたい場合には、最表層4のICの端子と接触する表面側にパラジウムのメッキ層、あるいはパラジウムと銀のメッキ層を積層して形成すると良い。これは、パラジウムのメッキ層、銀のメッキ層、パラジウムと銀のメッキ層の中から二層以上を組み合わせて積層して形成する場合も同様である。
【0030】
上記実施態様では中間層3、最表層4は、いずれも無電解メッキを行って形成しているが、いずれも他の方法によるメッキでもよい。
【0031】
以上述べてきた実施形態の構成は、矛盾しない範囲で適宜変更して適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 コンタクトピン
2 基材
3 ニッケル、リン合金中間層
4 銀、パラジウム最表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する材料から成る基材と、導電性を有する金属メッキの中間層と、導電性を有する金属メッキの最表層と、を有するコンタクトピンであって、
最表層は、パラジウムのメッキ層、銀のメッキ層、またはパラジウムと銀のメッキ層からなるメッキ層であり、
中間層は、ニッケルとリンの合金であって、リンの含有率が5wt%〜13wt%であるメッキ層であり、
基材は、銅または銅合金である、非磁性であり電気抵抗の上昇を抑制することを特徴とするコンタクトピン。
【請求項2】
前記最表層は、パラジウムのメッキ層、銀のメッキ層、パラジウムと銀のメッキ層の中から少なくとも銀とパラジウムを含む二層以上を組み合わせて積層していることを特徴とする請求項1記載のコンタクトピン。
【請求項3】
前記最表層の表面側はパラジウムのメッキ層、または銀とパラジウムのメッキ層であることを特徴とする請求項2記載のコンタクトピン。
【請求項4】
前記中間層は、厚さが0.5μm〜3μmであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項記載のコンタクトピン。
【請求項5】
前記中間層は、リンの含有量が11wt%〜13wt%であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項記載のコンタクトピン。

【図1】
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