説明

コンテナの受渡、留置、並びに供給装置。

【課題】半導体製造工場内に備える天井走行車から処理装置へとコンテナを受け渡す工程において、天井走行車が処理装置による処理を天井走行車が待つことにより、工場全体のスループットが低下する不具合が生じていた。
【解決手段】天井走行車から一時コンテナを受け取って留置すると共に、留置したコンテナを重要度に応じて選択して処理装置等へ移載するために、天井走行車の下方であって処理装置の上方に天井から吊設して備えるコンテナの受渡、留置、並びに供給装置を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを内部に収納したコンテナを保持して、半導体製造工場の天井に設置されたレール上を走行するOHT(Overhead Hoist Transport=天井走行車)と、半導体ウエハの処理装置との中間の領域に備えるコンテナの受渡、留置、並びに供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高清浄な環境を要する半導体ウエハ製造工場において、ウエハは、コンテナ内に収納されて各処理装置へと搬送されている。各処理装置間でのコンテナの運搬は、半導体製造工場の天井付近に設置した走行レールに沿って走行する天井走行車により行われている。この天井走行車によるコンテナ搬送では、処理装置の処理時間待ちによる遅延が生じる不具合があった。そこで、処理待ち時間の短縮を図るべく、特許文献1において、天井に一時保管用の天井バッファを設置する天井走行システムが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の保管用バッファを備える天井走行車システム47は、天井走行車の走行レール48の下方に吊設されるものである。この保管用バッファを備える天井走行車システム47は、入庫ステーション49と出庫ステーション50とを備えて、天井走行車5とコンテナ3の入出庫を行っている。また、入庫ステーション49と出庫ステーション50との間には複数のコンテナ3を運搬できるコンベア51が備えられており、入庫ステーション49に載置されたコンテナ3は順次出庫ステーション50へと運搬される。
【特許文献1】特開平10−250835
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ロジック又は、カスタムLSIの製造工場等において少ロットで短納期での半導体ウエハの製造が求められている。このような場合に、最大で25枚収納できるコンテナ(FOUP)に2〜3枚程度収納して、処理装置間を搬送せざるを得ないことがある。そうすると、工場内を流通するコンテナの数を従来に比べて増やして対応する必要がある。また、処理装置による半導体ウエハの処理を待つコンテナによって流通が渋滞することとなる。このため、現状以上の生産量を確保することが困難となっている。前述したように先行文献1の保管用バッファを備える天井走行車システム47では、天井走行車に先に入庫したコンテナから順に出庫される事となり、急を要するコンテナについて優先的に出庫することができない不具合が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置は、天井走行車が処理装置にコンテナを受け渡す位置の上方に備える基板に、天井走行車から受け渡されたコンテナを載置する支持板部材と、天井走行車からコンテナを受け渡しする受渡位置と天井走行車から処理装置へコンテナを受け渡すために受渡位置から待避した待避位置との間で支持部材を移動させる開閉手段と、支持部材と基板上に備えるコンテナの載置台との間でコンテナを把持して移載する移載手段を備える。
【0006】
本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置は天井から吊り下げて、若しくは、地面に支柱により支持されて備える。具体的には、天井走行車が処理装置にコンテナを受け渡す位置の上方にコンテナの支持部材を備える。この支持部材上に天井走行台車がコンテナを載置してコンテナの受け渡しを行う。天井走行車が処理装置へコンテナを直接受け渡す場合には、支持部材は開閉手段により待避した位置へと移動されることとなる。
【0007】
支持部材は、回動動作、又は水平移動するために開閉手段としてモータ、プーリ、タイミングベルトからなるものや、エアシリンダ若しくはボールネジ軸等を備えるリンク機構からなる。また、支持部材の上部にコンテナを精度良く載置するために、支持部材に位置決めピンをコンテナの下面にある凹部と嵌合できる位置に備える。
【0008】
把持手段は、コンテナの上部に備える鍔部、もしくは側面、並びに下面を把持若しくは持ちあげるものである。把持手段はコンテナを把持若しくは持ちあげる駆動源としてモータやエアシリンダ等を備えており、これらによりリンク機構やボールネジ軸による直線駆動手段を駆動することができる。ここで、コンテナを把持するとは、コンテナの上部にある鍔部の側方から把持手段の2つの把持部材を挿入して押圧をかけて挟み込んで把持、若しくは、把持部材を挿入した後把持手段を移載手段により上昇動作して持ちあげる等の方法をいう。
【0009】
移載手段は、コンテナを水平面内又は、高さ方向に移動するためのものである。水平面内を移動させるために、ボールネジ軸やベルトを備える。コンテナを高さ方向へ移動させるために、把持手段にベルトの一端を取り付け、移載手段に取りつけられたモータにより回転する巻き上げドラムにより巻き上げ、巻き下ろし動作することができる。
【0010】
また、本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置は、コンテナを把持する移載手段が移載する際に通る通路を基板の中間に備えるともに、複数の載置台を前記通路に沿って、その両側に併設することとしても良い。
【発明の効果】
【0011】
天井走行車は、処理装置による処理を待つことなく、別のコンテナを搬送することができる。これにより、工場全体のスループットが向上する。また、直接、処理装置の処理を待つコンテナの内、急を要するコンテナについて優先的に選択して、処理装置へ搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すコンテナの受渡、留置、並びに供給装置1は、製造工場の天井から吊設して基板2を備える。基板2上に、コンテナ3を載置(留置)する載置台4を複数備えるとともに、載置台4上の上方でコンテナ3の上部に備える鍔部3aを把持(もしくは保持)して水平面内及び高さ方向に移載(供給)するための移載手段8を備える。また、天井走行車5が処理装置6へとコンテナ3を受け渡す平面上での位置であり、高さ方向においてはそれらの間に位置する。コンテナ3の受渡、留置、並びに供給装置1は、天井走行車5と支持部材7の間でコンテナ3を受け取り、又は受け渡すことができ、また、移載手段8と処理装置6との間でコンテナ3を受け取り、又は受け渡すことができる。
【0013】
基板2の上面中央にコンテナ3の移載手段8によりコンテナ3を移載するための通路9を備え、その通路9に沿って左右両側に3つずつコンテナ3の載置台4を備える。この載置台4の上面にコンテナ3の底部に備える凹部と対応する位置に凸形状を有する位置決めピンを備えている。これにより把持手段15で把持したコンテナ3を(位置決めピンとコンテナ3が接触しない程度)上方に持ちあげた後、この通路9を通ってコンテナ3を支持部材7などに搬送する事ができる。この通路9を設けた効果は、通路9を設けなかった場合に比べて装置全体の高さを低く保つことができることである。また、いずれの載置台4上にあるコンテナ3を中央の通路9に面して備えることになり、把持手段15はいずれのコンテナ3をも選択して支持部材7などへと搬送することができる。そうすると、重要度の高いコンテナ3を優先的に処理装置6等へと搬送することができる。また、本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置1において載置台4の数量を増加するには、基板2を中央の通路9に沿って、より長いものに設計変更することにより容易に行うことができる。
【0014】
移載手段8は、Y軸方向駆動手段17とX軸方向駆動手段19と図示しない昇降手段と把持手段15とからなる。Y軸方向駆動手段17は、基板2上であって載置台4の列に沿って、その外側に略平行となるように2つ備える。また、X軸方向駆動手段19は、Y軸方向駆動手段17により直線駆動する2つの支柱26に跨って上部に取りつけられて備える。また、このX軸方向駆動手段19によりY軸方向(図中においてYと示す。)と直交するX軸方向(図中においてXと示す。)に進退動作できるコンテナ3の把持手段15を備えている。これにより、X軸方向駆動手段19とY軸方向駆動手段17の作動により、水平面内でコンテナ3を移載することができる。
【0015】
Y軸方向駆動手段17の側部に4つのプーリ22a〜22eを回動可能に備えるとともに、これらプーリ22a〜22eにはタイミングベルト23aをかけて備える。プーリ22a〜22eには、同心状となるようにプーリ22eを取りつけられており、このプーリ22eは、基板2上に固設されたモータ24aと、タイミングベルト23bとを介してモータ24aの動力が伝達されて連動するように構成されている。また、タイミングベルト23aの一箇所には、上下方向から挟み込んで固定するブラケット25の一端が取りつけられ、ブラケット25の他端は、支柱26に取りつけられている。また、X軸方向駆動手段19についても同様の構成となっている。
【0016】
支持部材7は開閉手段30を備えおり、コンテナ3を天井走行車5から直接、処理装置6へと搬送する場合には、開閉手段30を作動して支持部材7を鉛直となるように回転させる(基板2の開口部31aが開いた状態にする)。また、支持部材7上に載置する場合には、支持部材7を水平方向に回転させる(基板2の開口部31bを閉じた状態にする)。
【0017】
図2で示すコンテナ3の把持手段15は、X軸方向駆動手段19のX軸可動部に取りつけられた(図示しない)昇降手段により昇降動作できる。昇降手段は、X軸方向駆動手段19の可動部に備えるモータを作動して巻き取りドラムを回転させることにより、ベルト32を巻き上げ、巻き下ろし(昇降)動作ができる。把持手段15は、モータ24bにより作動するリンク機構を備えている。このリンク機構の先端の把持部材33によりコンテナ3上部の四角形の鍔部3aを把持することができる。
【0018】
図3は、支持部材7の開閉手段30を示すものである。この支持部材7の開閉手段30は、天井走行車5が処理装置6にコンテナ3を受け渡し位置に備え、高さ方向は天井走行車5と処理装置6と間の位置に備える。これにより、天井走行車5から本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置1にコンテナ3を受け渡すには、支持部材7を水平(図4Bに示す支持部材7の状態)とすることでコンテナ3を支持部材7に載置することで可能である。また、天井走行車5から処理装置6へコンテナ3を直接受け渡すには、支持部材7を上向き(図4Aで示す支持部材7の状態)とすることで可能である。
【0019】
開閉手段30は、基板2上に駆動源であるエアシリンダ35によって動作するリンク機構となっている。その構成は、エアシリンダ35によって支点36を中心に回動する連結部材37と、連結部材37の支点36から等距離に回動可能に取りつけられた2つのリンク部材39と、リンク部材39の先端に回動可能となるように備える支持部材7とからなり、支持部材7は基板2上に回動軸41を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置を示す斜視図である。
【図2】コンテナの把持手段を示す斜視図である。
【図3】支持部材と支持部材の開閉手段を示す斜視図である。
【図4】先行技術文献に記載の一時バッファを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 コンテナの受渡、留置、並びに供給装置
2 基板
3 コンテナ
3a 鍔部
4 載置台
5 天井走行車
6 処理装置
7 支持部材
8 移載手段
9 通路
15 把持手段
17 Y軸方向駆動手段
19 X軸方向駆動手段
22a〜22e プーリ
23a、23b タイミングベルト
24a、24b モータ
25 ブラケット
26 支柱
30 開閉手段
31a、31b 開口部
32 ベルト
33 把持部材
35 エアシリンダ
36 支点
37 連結部材
39 リンク部材
41 回動軸
47 保管用バッファを備える天井走行車システム
48 走行レール
49 入庫ステーション
50 出庫ステーション
51 コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井走行車が処理装置にコンテナを受け渡す位置の上方に備える基板に、天井走行車から受け渡されたコンテナを載置する支持板部材と、
天井走行車からコンテナを受け渡しする受渡位置と天井走行車から処理装置へコンテナを受渡位置から待避した待避位置との間で支持部材を移動させる開閉手段と、
支持部材、及びに基板上に備えるコンテナの載置台、並びに処理装置との間でコンテナを把持して移載する移載手段を備えることを特徴とするコンテナの受渡、留置、並びに供給装置。
【請求項2】
コンテナを把持する移載手段が移載する際に通る通路を基板の中間に備えるともに、複数の載置台を前記通路に沿って両側に併設することを特徴とする請求項1記載のコンテナの受渡、留置、並びに供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−263004(P2008−263004A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103451(P2007−103451)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(591213232)ローツェ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】