コンデンサ及び電力変換装置
【課題】接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1は、収納ケース10と、複数個のコンデンサ素子2と、開口側バスバー3と、底面側バスバー4と、導電性部材5とを備える。開口側バスバー3および底面側バスバー4は、コンデンサ素子2の電極面20,21に各々接続されている。底面側バスバー4から、収納ケース10の開口部13へ向けて、接続端子40が突出している。導電性部材5は、接続端子40と、複数個のコンデンサ素子2のうち接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。この導電性部材5は、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して電気的に絶縁されている。
【解決手段】コンデンサ1は、収納ケース10と、複数個のコンデンサ素子2と、開口側バスバー3と、底面側バスバー4と、導電性部材5とを備える。開口側バスバー3および底面側バスバー4は、コンデンサ素子2の電極面20,21に各々接続されている。底面側バスバー4から、収納ケース10の開口部13へ向けて、接続端子40が突出している。導電性部材5は、接続端子40と、複数個のコンデンサ素子2のうち接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。この導電性部材5は、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して電気的に絶縁されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコンデンサ素子を有するコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力変換装置等に使用されるコンデンサとして、図11、図12に示すごとく、両端に電極面96を有する複数個のコンデンサ素子91を備え、この電極面96に一対のバスバー93,94を取り付けて、複数個のコンデンサ91を並列接続したものが知られている(下記特許文献1参照)。コンデンサ素子91及びバスバー93,94は収納ケース92に収納され、図12に示すごとく、絶縁樹脂95によって封止されている。
【0003】
バスバー93,94には、外部機器と接続するための接続端子93a,94aが形成されている。これらの接続端子93a,94aは、バスバー93,94から収納ケース92の開口部97へ向かって立設し、絶縁樹脂95の表面から突出している。
【0004】
コンデンサ90を使用すると個々のコンデンサ素子91に電流が流れて発熱する。コンデンサ素子91は、温度が許容値を超えると破損するおそれがある。そのため、コンデンサ90を使用する場合には、個々のコンデンサ素子91の温度が許容値を超えないように、全体の電流量を制限する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のコンデンサ90は、接続端子93a,94aに高周波電流が流れた場合に、接続端子94aに隣接するコンデンサ素子91aの温度が特に上昇しやすくなるという問題がある。すなわち、図12に示すごとく、接続端子94aに高周波電流Iが流れると、接続端子94aの周囲に高周波磁界Hが発生する。これに伴ってコンデンサ素子91aに渦電流が発生し、誘導加熱によってコンデンサ素子91aが発熱する。
【0007】
複数個のコンデンサ素子91のうち、接続端子94aに隣接するコンデンサ素子91aの温度が特に上昇すると、他のコンデンサ素子91は比較的低温であるにもかかわらず、それ以上電流を流せなくなる。そのため、コンデンサ90全体に流せる電流量が少なくなるという問題がある。
【0008】
特に、コンデンサ90を電力変換装置に使用した場合は、スナバコンデンサ等をコンデンサ90に並列接続する場合があり、これらコンデンサ90とスナバコンデンサとの間に共振現象が起きて、接続端子94aに高周波電流が流れやすくなる。そのため、上記問題が生じやすくなる。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、一方に底面を有すると共に他方に開口部を有する収納ケースと、
該収納ケースに収納され、該収納ケースの上記開口部側と上記底面側の端部に一対の電極面を有すると共に互いに並列接続された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の、上記開口部側の上記電極面に接続された開口側バスバーと、
上記コンデンサ素子の、上記底面側の上記電極面に接続された底面側バスバーと、
上記底面側バスバーから、上記収納ケースの上記開口部へ向けて突出する接続端子と、
該接続端子と、上記複数個のコンデンサ素子のうち上記接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に介在し、上記接続端子および上記コンデンサ素子に対して電気的に絶縁された導電性部材とを備えることを特徴とするコンデンサにある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子と、該スイッチング素子が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサと、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサとを備え、上記スナバコンデンサと上記平滑コンデンサとが並列接続されている電力変換装置であって、上記平滑コンデンサは、上記コンデンサであることを特徴とする電力変換装置にある(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明の作用効果について説明する。本発明は、接続端子と、該接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に導電性部材を介在させた。また、接続端子およびコンデンサ素子に対して導電性部材が電気的に絶縁するよう構成した。
このようにすると、接続端子に流れた高周波電流に起因して、強度が高周波で変化する磁界が接続端子の周囲に発生した場合でも、この磁界を打ち消す渦電流が導電性部材に発生する。すなわち、導電性部材によって磁界を遮蔽できる。そのため、接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子には渦電流が発生しにくくなる。これにより、上記特定のコンデンサ素子が、誘導加熱によって特に温度が上昇するという不具合を抑制できる。
【0013】
そのため、コンデンサ素子の発熱のバラツキを抑制することが可能になり、特定のコンデンサ素子のみが大きく発熱して許容温度を超える不具合を防止できる。これにより、複数のコンデンサ素子を並列接続してなるコンデンサ全体に多くの電流を流すことが可能になる。
【0014】
次に、第2の発明の作用効果について説明する。本発明の電力変換装置は、スナバコンデンサと平滑コンデンサとが並列接続されており、この平滑コンデンサに第1の発明のコンデンサを用いている。
このようにすると、第1の発明の効果、すなわち、複数のコンデンサ素子の温度を平均化させることができ、多くの電流を流すことができるという効果を、特に顕著に発揮させることができる。
すなわち、スナバコンデンサと平滑コンデンサを並列接続させると共振現象が起きるため、平滑コンデンサに高周波電流が流れやすくなる。このような状況下では、平滑コンデンサとして従来のコンデンサを用いると、高周波電流に起因する磁界によって、上記特定のコンデンサ素子に渦電流が発生しやすくなる。そのため、この特定のコンデンサ素子の温度が特に上昇しやすくなり、他のコンデンサ素子の温度が比較的低くても、大きな電流を流せなくなる。
【0015】
しかしながら、接続端子の周囲に発生した磁界を導電性部材で遮蔽できる、第1の発明に係るコンデンサを上記平滑コンデンサとして用いれば、共振現象が発生して高周波電流が流れやすい電気回路においても、特定のコンデンサ素子のみ温度が上昇する不具合を効果的に防止できる。そのため、複数のコンデンサ素子の温度を平均化でき、コンデンサ全体に多くの電流を流すことができる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、コンデンサの一部透視斜視図。
【図2】実施例1における、コンデンサの断面図であって、図3のB−B断面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図5】実施例2における、コンデンサの断面図であって、図6のD−D断面図。
【図6】図5のC−C断面図。
【図7】実施例3における、コンデンサの断面図であって、図8のF−F断面図。
【図8】図7のE−E断面図。
【図9】実施例4における、コンデンサの断面図であって、図10のJ−J断面図。
【図10】図9のG−G断面図。
【図11】従来例における、コンデンサの分解斜視図。
【図12】従来例における、コンデンサの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記導電性部材は板状に形成され、上記接続端子に対して平行に配置されていることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子と接続端子との間隔が狭くても、導電性部材を介在させることができる。そのため、収納ケースを小型化することが可能になる。
【0019】
また、上記導電性部材は、上記接続端子を取り囲むよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
このようにすると、接続端子の周囲を導電性部材で取り囲んでいるため、接続端子に高周波電流が流れた場合に生じる磁界を接続端子の全周にわたって遮断できる。そのため、特定のコンデンサ素子のみならず、他のコンデンサ素子にも渦電流が生じにくくなり、誘導加熱によるコンデンサ素子の温度上昇を効果的に防止できる。
【0020】
また、上記導電性部材は、上記特定のコンデンサ素子の側面の少なくとも一部を覆うよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子と導電性部材を一体化させることができる。そのため、特定のコンデンサ素子と接続端子との間に導電性部材を別途配置する必要がなくなり、特定のコンデンサ素子と接続端子との間隔を狭くすることができる。そのため、収納ケースを小型化できる。
【0021】
また、上記構造にすると、コンデンサ素子として例えばフィルムコンデンサを用いた場合に、その製造工程を利用して、コンデンサ素子の表面に導電性部材を容易に巻回させることができる。すなわち、フィルムコンデンサは、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回して形成するため、このフィルムの巻回工程が終了した後に、絶縁体を巻回し、さらに導電性部材を巻回する工程を連続して行うことができる。そのため、上記構造のコンデンサ素子を容易に製造することが可能である。
【0022】
また、上記導電性部材は、複数個の上記コンデンサ素子を纏めて取り囲んでいることが好ましい(請求項5)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子だけでなく、他のコンデンサ素子についても、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になる。すなわち、接続端子に生じた磁界が大きいと、特定のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子にも磁界の影響が及び、これらのコンデンサ素子に渦電流が生じる場合がある。そのため、特定のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子が、誘導加熱によって温度が上昇する場合がある。しかしながら、複数のコンデンサ素子の周りを導電性部材で取り囲むことにより、複数のコンデンサ素子を磁界から保護することができる。そのため、複数のコンデンサ素子について、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になり、コンデンサ全体に、より多くの電流を流すことが可能になる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるコンデンサ及び電力変換装置につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例のコンデンサ1は、図1〜図3に示すごとく、収納ケース10と、複数個のコンデンサ素子2と、開口側バスバー3と、底面側バスバー4と、導電性部材5とを備える。
収納ケース10は、一方に底面14を有すると共に他方に開口部13を有する。
コンデンサ素子2は、収納ケース10に収納されており、該収納ケース10の開口部13側と底面14側の端部に一対の電極面20,21を有する。
【0024】
開口側バスバー3は、コンデンサ素子2の、開口部13側の電極面20に接続されている。また、底面側バスバー4は、コンデンサ素子2の、底面14側の電極面21に接続されている。開口側バスバー3と底面側バスバー4によって、複数個のコンデンサ素子2が互いに並列接続されている。
底面側バスバー4から、収納ケース10の開口部13へ向けて、接続端子40が突出している。
導電性部材5は、接続端子40と、複数個のコンデンサ素子2のうち接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。この導電性部材5は、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して電気的に絶縁されている。
以下、詳説する。
【0025】
本例のコンデンサ1は、コンデンサ素子2としてフィルムコンデンサを使用している。フィルムコンデンサは、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回し、両端に電極を形成して電極面21としたものである。
【0026】
図3に示すごとく、コンデンサ素子2、開口側バスバー3、底面側バスバー4、導電性部材5は、絶縁樹脂11によって封止されている。また、開口側バスバー3には、開口側接続端子30が形成されている。開口側接続端子30および接続端子40は、それぞれ開口側バスバー3、底面側バスバー4から収納ケース10の開口部13へ向かって立設し、絶縁樹脂11の表面から突出している。
【0027】
図2、図3に示すごとく、導電性部材5は板状に形成され、接続端子40に対して平行に配置されている。導電性部材5は、絶縁性テープ12によって接続端子40、または接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aに接着されている。また、コンデンサ90の軸線方向Xにおける、導電性部材5の長さL1は、コンデンサ90の長さL2と略等しい。
【0028】
コンデンサ1を製造する際には、まず、複数のコンデンサ素子2の電極面20,21にバスバー3,4を接続し、絶縁性テープ12を使って導電性部材5を接続端子40、または接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aに接着しておく。そして、これらコンデンサ素子2、バスバー3,4、導電性部材5を収納ケース10に収納し、溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させる。或いは導電性部材5は、コンデンサ素子、開口側バスバー3、および底面側バスバー4と所望の絶縁を確保するためのギャップを保持するように位置決めした状態で溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させることにより絶縁性テープ12を無くしてもよい。
【0029】
図4に示すごとく、本例のコンデンサ1は電力変換装置6に用いられる。電力変換装置6は、電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子60と、該スイッチング素子60が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサ62と、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ1aとを備える。スイッチング素子60には、フリーホイールダイオード64が逆並列接続されている。また、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aとは並列接続されている。この平滑コンデンサ1aとして、上記コンデンサ1が用いられている。
【0030】
電力変換装置6は、図4に示すごとく、コンバータ部6aとインバータ部6bとを備える。直流電源63の電圧をコンバータ部6aで昇圧し、インバータ部6bを使って、昇圧した電圧を交流電圧に変換している。また、本例の電力変換装置6は車両に搭載して用いるものである。電力変換装置6によって得られた交流電圧を使って三相交流モータ65を駆動させ、車両を走行させている。
【0031】
本例の作用効果について説明する。図1〜図3に示すごとく、本例では、接続端子40と、該接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に導電性部材5を介在させた。また、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して導電性部材5が電気的に絶縁するよう構成した。
このようにすると、図3に示すごとく、接続端子40に流れた高周波電流Iに起因して、強度が高周波で変化する磁界Hが接続端子40の周囲に発生した場合でも、この磁界Hを打ち消す渦電流が導電性部材5に発生する。すなわち、導電性部材5によって磁界Hを遮蔽できる。そのため、接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aには渦電流が発生しにくくなる。これにより、特定のコンデンサ素子2aが、誘導加熱によって特に温度が上昇するという不具合を抑制できる。
【0032】
そのため、コンデンサ素子2の発熱のバラツキを抑制することが可能になり、特定のコンデンサ素子2aのみが大きく発熱して許容温度を超える不具合を防止できる。これにより、複数のコンデンサ素子2を並列接続してなるコンデンサ1全体に多くの電流Iを流すことが可能になる。
【0033】
また、本例では、図3に示すごとく、導電性部材5は板状に形成され、接続端子40に対して平行に配置されている。
このようにすると、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間隔が狭くても、導電性部材5を介在させることができる。そのため、収納ケース10を小型化することが可能になる。
【0034】
また、本例の電力変換装置6は、図4に示すごとく、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aとが並列接続されており、この平滑コンデンサ1aに本例のコンデンサ1を用いている。
このようにすると、本例のコンデンサ1の効果、すなわち、複数のコンデンサ素子2の温度を平均化させることができ、多くの電流を流すことができるという効果を、特に顕著に発揮させることができる。
すなわち、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aを並列接続させると共振現象が起きるため、平滑コンデンサ1aに高周波電流が流れやすくなる。このような状況下では、平滑コンデンサ1aとして従来のコンデンサ90(図12参照)を用いると、高周波電流に起因する磁界によって、特定のコンデンサ素子91aに渦電流が発生しやすくなる。そのため、この特定のコンデンサ素子91aの温度が特に上昇しやすくなり、他のコンデンサ素子91の温度が比較的低くても、大きな電流を流せなくなる。
【0035】
しかしながら、接続端子40の周囲に発生した磁界Hを導電性部材5で遮蔽できる、本例のコンデンサ1を平滑コンデンサ1aとして用いれば、共振現象が発生して高周波電流Iが流れやすい電気回路においても、特定のコンデンサ素子2aのみ温度が上昇する不具合を効果的に防止できる。そのため、複数のコンデンサ素子2の温度を平均化でき、コンデンサ1全体に多くの電流Iを流すことができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図5、図6に示すごとく、本例の導電性部材5は、接続端子40を取り囲むよう構成されている。本例では、接続端子40の周囲に絶縁性テープ12を巻回し、その絶縁性テープ12の表面に折り曲げ可能な導電性部材5を巻回した。或いは導電性部材5は、コンデンサ素子、開口側バスバー3、および底面側バスバー4と所望の絶縁を確保するためのギャップを保持するように位置決めした状態で溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させることにより絶縁性テープ12を無くしてもよい。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0038】
本例の作用効果について説明する。
本例では、接続端子40の周囲を導電性部材5で取り囲んでいるため、接続端子40に高周波電流が流れた場合に生じる磁界を効果的に遮断できる。すなわち、導電性部材5のうち、特定のコンデンサ2a側に位置する第1部分5aと、該第1部分5aの反対側に位置する第2部分5bとの、双方の部分5a,5bによって、磁界Hを遮蔽できる。そのため、特定のコンデンサ素子2aのみならず、他のコンデンサ素子2にも渦電流が生じにくくなり、誘導加熱による温度上昇を効果的に防止できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0039】
(実施例3)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図7、図8に示すごとく、本例の導電性部材5は、特定のコンデンサ素子2aの側面を覆うよう構成されている。すなわち、本例では、コンデンサ素子2の周囲に絶縁性テープ12を巻回し、さらに導電性部材5を巻回することにより、特定のコンデンサ素子2aを形成してある。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0040】
本例の作用効果について説明する。
上記構成にすると、特定のコンデンサ素子2aと導電性部材5を一体化させることができる。そのため、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間に導電性部材5を別途配置する必要がなくなり、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間隔を狭くすることができる。そのため、収納ケース10を小型化できる。
【0041】
また、上記構成にすると、コンデンサ素子2として例えばフィルムコンデンサ91を用いた場合に、その製造工程を利用して、コンデンサ素子2の表面に導電性部材5を容易に巻回させることができる。すなわち、フィルムコンデンサ1は、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回して形成するため、このフィルムの巻回工程が終了した後に、絶縁テープ12を巻回し、さらに導電性部材5を巻回する工程を連続して行うことができる。そのため、上記構造のコンデンサ素子2aを容易に製造することが可能である。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0042】
(実施例4)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図9、図10に示すごとく、本例の導電性部材5は、全てのコンデンサ素子2を纏めて取り囲んでいる。すなわち、本例では、導電性部材5を使って枠体を形成し、この枠体の中に全てのコンデンサ素子2を収納した。導電性部材5の一部は、接続端子40と特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0043】
本例の作用効果について説明する。
上記構成にすると、特定のコンデンサ素子2aだけでなく、他のコンデンサ素子2についても、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になる。すなわち、接続端子40に生じた磁界H(図10参照)が大きいと、特定のコンデンサ素子2a以外のコンデンサ素子2にも磁界Hの影響が及び、これらのコンデンサ素子2に渦電流が生じる場合がある。そのため、特定のコンデンサ素子2a以外のコンデンサ素子2が、誘導加熱によって温度が上昇する場合がある。しかしながら、本例のように、複数のコンデンサ素子2の周りを導電性部材5で取り囲むことにより、複数のコンデンサ素子2を磁界Hから保護することができる。そのため、複数のコンデンサ素子2について、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になり、コンデンサ1全体に、より多くの電流を流すことが可能になる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0044】
1 コンデンサ
2 コンデンサ素子
20,21 電極面
3 開口側バスバー
4 底面側バスバー
40 接続端子
5 導電性部材
6 電力変換装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコンデンサ素子を有するコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力変換装置等に使用されるコンデンサとして、図11、図12に示すごとく、両端に電極面96を有する複数個のコンデンサ素子91を備え、この電極面96に一対のバスバー93,94を取り付けて、複数個のコンデンサ91を並列接続したものが知られている(下記特許文献1参照)。コンデンサ素子91及びバスバー93,94は収納ケース92に収納され、図12に示すごとく、絶縁樹脂95によって封止されている。
【0003】
バスバー93,94には、外部機器と接続するための接続端子93a,94aが形成されている。これらの接続端子93a,94aは、バスバー93,94から収納ケース92の開口部97へ向かって立設し、絶縁樹脂95の表面から突出している。
【0004】
コンデンサ90を使用すると個々のコンデンサ素子91に電流が流れて発熱する。コンデンサ素子91は、温度が許容値を超えると破損するおそれがある。そのため、コンデンサ90を使用する場合には、個々のコンデンサ素子91の温度が許容値を超えないように、全体の電流量を制限する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のコンデンサ90は、接続端子93a,94aに高周波電流が流れた場合に、接続端子94aに隣接するコンデンサ素子91aの温度が特に上昇しやすくなるという問題がある。すなわち、図12に示すごとく、接続端子94aに高周波電流Iが流れると、接続端子94aの周囲に高周波磁界Hが発生する。これに伴ってコンデンサ素子91aに渦電流が発生し、誘導加熱によってコンデンサ素子91aが発熱する。
【0007】
複数個のコンデンサ素子91のうち、接続端子94aに隣接するコンデンサ素子91aの温度が特に上昇すると、他のコンデンサ素子91は比較的低温であるにもかかわらず、それ以上電流を流せなくなる。そのため、コンデンサ90全体に流せる電流量が少なくなるという問題がある。
【0008】
特に、コンデンサ90を電力変換装置に使用した場合は、スナバコンデンサ等をコンデンサ90に並列接続する場合があり、これらコンデンサ90とスナバコンデンサとの間に共振現象が起きて、接続端子94aに高周波電流が流れやすくなる。そのため、上記問題が生じやすくなる。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、一方に底面を有すると共に他方に開口部を有する収納ケースと、
該収納ケースに収納され、該収納ケースの上記開口部側と上記底面側の端部に一対の電極面を有すると共に互いに並列接続された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の、上記開口部側の上記電極面に接続された開口側バスバーと、
上記コンデンサ素子の、上記底面側の上記電極面に接続された底面側バスバーと、
上記底面側バスバーから、上記収納ケースの上記開口部へ向けて突出する接続端子と、
該接続端子と、上記複数個のコンデンサ素子のうち上記接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に介在し、上記接続端子および上記コンデンサ素子に対して電気的に絶縁された導電性部材とを備えることを特徴とするコンデンサにある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子と、該スイッチング素子が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサと、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサとを備え、上記スナバコンデンサと上記平滑コンデンサとが並列接続されている電力変換装置であって、上記平滑コンデンサは、上記コンデンサであることを特徴とする電力変換装置にある(請求項6)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明の作用効果について説明する。本発明は、接続端子と、該接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に導電性部材を介在させた。また、接続端子およびコンデンサ素子に対して導電性部材が電気的に絶縁するよう構成した。
このようにすると、接続端子に流れた高周波電流に起因して、強度が高周波で変化する磁界が接続端子の周囲に発生した場合でも、この磁界を打ち消す渦電流が導電性部材に発生する。すなわち、導電性部材によって磁界を遮蔽できる。そのため、接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子には渦電流が発生しにくくなる。これにより、上記特定のコンデンサ素子が、誘導加熱によって特に温度が上昇するという不具合を抑制できる。
【0013】
そのため、コンデンサ素子の発熱のバラツキを抑制することが可能になり、特定のコンデンサ素子のみが大きく発熱して許容温度を超える不具合を防止できる。これにより、複数のコンデンサ素子を並列接続してなるコンデンサ全体に多くの電流を流すことが可能になる。
【0014】
次に、第2の発明の作用効果について説明する。本発明の電力変換装置は、スナバコンデンサと平滑コンデンサとが並列接続されており、この平滑コンデンサに第1の発明のコンデンサを用いている。
このようにすると、第1の発明の効果、すなわち、複数のコンデンサ素子の温度を平均化させることができ、多くの電流を流すことができるという効果を、特に顕著に発揮させることができる。
すなわち、スナバコンデンサと平滑コンデンサを並列接続させると共振現象が起きるため、平滑コンデンサに高周波電流が流れやすくなる。このような状況下では、平滑コンデンサとして従来のコンデンサを用いると、高周波電流に起因する磁界によって、上記特定のコンデンサ素子に渦電流が発生しやすくなる。そのため、この特定のコンデンサ素子の温度が特に上昇しやすくなり、他のコンデンサ素子の温度が比較的低くても、大きな電流を流せなくなる。
【0015】
しかしながら、接続端子の周囲に発生した磁界を導電性部材で遮蔽できる、第1の発明に係るコンデンサを上記平滑コンデンサとして用いれば、共振現象が発生して高周波電流が流れやすい電気回路においても、特定のコンデンサ素子のみ温度が上昇する不具合を効果的に防止できる。そのため、複数のコンデンサ素子の温度を平均化でき、コンデンサ全体に多くの電流を流すことができる。
【0016】
以上のごとく、本発明によれば、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、コンデンサの一部透視斜視図。
【図2】実施例1における、コンデンサの断面図であって、図3のB−B断面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】実施例1における、電力変換装置の回路図。
【図5】実施例2における、コンデンサの断面図であって、図6のD−D断面図。
【図6】図5のC−C断面図。
【図7】実施例3における、コンデンサの断面図であって、図8のF−F断面図。
【図8】図7のE−E断面図。
【図9】実施例4における、コンデンサの断面図であって、図10のJ−J断面図。
【図10】図9のG−G断面図。
【図11】従来例における、コンデンサの分解斜視図。
【図12】従来例における、コンデンサの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
第1の発明において、上記導電性部材は板状に形成され、上記接続端子に対して平行に配置されていることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子と接続端子との間隔が狭くても、導電性部材を介在させることができる。そのため、収納ケースを小型化することが可能になる。
【0019】
また、上記導電性部材は、上記接続端子を取り囲むよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
このようにすると、接続端子の周囲を導電性部材で取り囲んでいるため、接続端子に高周波電流が流れた場合に生じる磁界を接続端子の全周にわたって遮断できる。そのため、特定のコンデンサ素子のみならず、他のコンデンサ素子にも渦電流が生じにくくなり、誘導加熱によるコンデンサ素子の温度上昇を効果的に防止できる。
【0020】
また、上記導電性部材は、上記特定のコンデンサ素子の側面の少なくとも一部を覆うよう構成されていることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子と導電性部材を一体化させることができる。そのため、特定のコンデンサ素子と接続端子との間に導電性部材を別途配置する必要がなくなり、特定のコンデンサ素子と接続端子との間隔を狭くすることができる。そのため、収納ケースを小型化できる。
【0021】
また、上記構造にすると、コンデンサ素子として例えばフィルムコンデンサを用いた場合に、その製造工程を利用して、コンデンサ素子の表面に導電性部材を容易に巻回させることができる。すなわち、フィルムコンデンサは、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回して形成するため、このフィルムの巻回工程が終了した後に、絶縁体を巻回し、さらに導電性部材を巻回する工程を連続して行うことができる。そのため、上記構造のコンデンサ素子を容易に製造することが可能である。
【0022】
また、上記導電性部材は、複数個の上記コンデンサ素子を纏めて取り囲んでいることが好ましい(請求項5)。
このようにすると、特定のコンデンサ素子だけでなく、他のコンデンサ素子についても、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になる。すなわち、接続端子に生じた磁界が大きいと、特定のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子にも磁界の影響が及び、これらのコンデンサ素子に渦電流が生じる場合がある。そのため、特定のコンデンサ素子以外のコンデンサ素子が、誘導加熱によって温度が上昇する場合がある。しかしながら、複数のコンデンサ素子の周りを導電性部材で取り囲むことにより、複数のコンデンサ素子を磁界から保護することができる。そのため、複数のコンデンサ素子について、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になり、コンデンサ全体に、より多くの電流を流すことが可能になる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるコンデンサ及び電力変換装置につき、図1〜図4を用いて説明する。
本例のコンデンサ1は、図1〜図3に示すごとく、収納ケース10と、複数個のコンデンサ素子2と、開口側バスバー3と、底面側バスバー4と、導電性部材5とを備える。
収納ケース10は、一方に底面14を有すると共に他方に開口部13を有する。
コンデンサ素子2は、収納ケース10に収納されており、該収納ケース10の開口部13側と底面14側の端部に一対の電極面20,21を有する。
【0024】
開口側バスバー3は、コンデンサ素子2の、開口部13側の電極面20に接続されている。また、底面側バスバー4は、コンデンサ素子2の、底面14側の電極面21に接続されている。開口側バスバー3と底面側バスバー4によって、複数個のコンデンサ素子2が互いに並列接続されている。
底面側バスバー4から、収納ケース10の開口部13へ向けて、接続端子40が突出している。
導電性部材5は、接続端子40と、複数個のコンデンサ素子2のうち接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。この導電性部材5は、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して電気的に絶縁されている。
以下、詳説する。
【0025】
本例のコンデンサ1は、コンデンサ素子2としてフィルムコンデンサを使用している。フィルムコンデンサは、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回し、両端に電極を形成して電極面21としたものである。
【0026】
図3に示すごとく、コンデンサ素子2、開口側バスバー3、底面側バスバー4、導電性部材5は、絶縁樹脂11によって封止されている。また、開口側バスバー3には、開口側接続端子30が形成されている。開口側接続端子30および接続端子40は、それぞれ開口側バスバー3、底面側バスバー4から収納ケース10の開口部13へ向かって立設し、絶縁樹脂11の表面から突出している。
【0027】
図2、図3に示すごとく、導電性部材5は板状に形成され、接続端子40に対して平行に配置されている。導電性部材5は、絶縁性テープ12によって接続端子40、または接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aに接着されている。また、コンデンサ90の軸線方向Xにおける、導電性部材5の長さL1は、コンデンサ90の長さL2と略等しい。
【0028】
コンデンサ1を製造する際には、まず、複数のコンデンサ素子2の電極面20,21にバスバー3,4を接続し、絶縁性テープ12を使って導電性部材5を接続端子40、または接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aに接着しておく。そして、これらコンデンサ素子2、バスバー3,4、導電性部材5を収納ケース10に収納し、溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させる。或いは導電性部材5は、コンデンサ素子、開口側バスバー3、および底面側バスバー4と所望の絶縁を確保するためのギャップを保持するように位置決めした状態で溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させることにより絶縁性テープ12を無くしてもよい。
【0029】
図4に示すごとく、本例のコンデンサ1は電力変換装置6に用いられる。電力変換装置6は、電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子60と、該スイッチング素子60が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサ62と、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサ1aとを備える。スイッチング素子60には、フリーホイールダイオード64が逆並列接続されている。また、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aとは並列接続されている。この平滑コンデンサ1aとして、上記コンデンサ1が用いられている。
【0030】
電力変換装置6は、図4に示すごとく、コンバータ部6aとインバータ部6bとを備える。直流電源63の電圧をコンバータ部6aで昇圧し、インバータ部6bを使って、昇圧した電圧を交流電圧に変換している。また、本例の電力変換装置6は車両に搭載して用いるものである。電力変換装置6によって得られた交流電圧を使って三相交流モータ65を駆動させ、車両を走行させている。
【0031】
本例の作用効果について説明する。図1〜図3に示すごとく、本例では、接続端子40と、該接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aとの間に導電性部材5を介在させた。また、接続端子40およびコンデンサ素子2に対して導電性部材5が電気的に絶縁するよう構成した。
このようにすると、図3に示すごとく、接続端子40に流れた高周波電流Iに起因して、強度が高周波で変化する磁界Hが接続端子40の周囲に発生した場合でも、この磁界Hを打ち消す渦電流が導電性部材5に発生する。すなわち、導電性部材5によって磁界Hを遮蔽できる。そのため、接続端子40に隣接する特定のコンデンサ素子2aには渦電流が発生しにくくなる。これにより、特定のコンデンサ素子2aが、誘導加熱によって特に温度が上昇するという不具合を抑制できる。
【0032】
そのため、コンデンサ素子2の発熱のバラツキを抑制することが可能になり、特定のコンデンサ素子2aのみが大きく発熱して許容温度を超える不具合を防止できる。これにより、複数のコンデンサ素子2を並列接続してなるコンデンサ1全体に多くの電流Iを流すことが可能になる。
【0033】
また、本例では、図3に示すごとく、導電性部材5は板状に形成され、接続端子40に対して平行に配置されている。
このようにすると、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間隔が狭くても、導電性部材5を介在させることができる。そのため、収納ケース10を小型化することが可能になる。
【0034】
また、本例の電力変換装置6は、図4に示すごとく、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aとが並列接続されており、この平滑コンデンサ1aに本例のコンデンサ1を用いている。
このようにすると、本例のコンデンサ1の効果、すなわち、複数のコンデンサ素子2の温度を平均化させることができ、多くの電流を流すことができるという効果を、特に顕著に発揮させることができる。
すなわち、スナバコンデンサ62と平滑コンデンサ1aを並列接続させると共振現象が起きるため、平滑コンデンサ1aに高周波電流が流れやすくなる。このような状況下では、平滑コンデンサ1aとして従来のコンデンサ90(図12参照)を用いると、高周波電流に起因する磁界によって、特定のコンデンサ素子91aに渦電流が発生しやすくなる。そのため、この特定のコンデンサ素子91aの温度が特に上昇しやすくなり、他のコンデンサ素子91の温度が比較的低くても、大きな電流を流せなくなる。
【0035】
しかしながら、接続端子40の周囲に発生した磁界Hを導電性部材5で遮蔽できる、本例のコンデンサ1を平滑コンデンサ1aとして用いれば、共振現象が発生して高周波電流Iが流れやすい電気回路においても、特定のコンデンサ素子2aのみ温度が上昇する不具合を効果的に防止できる。そのため、複数のコンデンサ素子2の温度を平均化でき、コンデンサ1全体に多くの電流Iを流すことができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、接続端子に隣接するコンデンサ素子の温度上昇を抑制しやすいコンデンサと、該コンデンサを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0037】
(実施例2)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図5、図6に示すごとく、本例の導電性部材5は、接続端子40を取り囲むよう構成されている。本例では、接続端子40の周囲に絶縁性テープ12を巻回し、その絶縁性テープ12の表面に折り曲げ可能な導電性部材5を巻回した。或いは導電性部材5は、コンデンサ素子、開口側バスバー3、および底面側バスバー4と所望の絶縁を確保するためのギャップを保持するように位置決めした状態で溶融した絶縁樹脂11を流し込んで固化させることにより絶縁性テープ12を無くしてもよい。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0038】
本例の作用効果について説明する。
本例では、接続端子40の周囲を導電性部材5で取り囲んでいるため、接続端子40に高周波電流が流れた場合に生じる磁界を効果的に遮断できる。すなわち、導電性部材5のうち、特定のコンデンサ2a側に位置する第1部分5aと、該第1部分5aの反対側に位置する第2部分5bとの、双方の部分5a,5bによって、磁界Hを遮蔽できる。そのため、特定のコンデンサ素子2aのみならず、他のコンデンサ素子2にも渦電流が生じにくくなり、誘導加熱による温度上昇を効果的に防止できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0039】
(実施例3)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図7、図8に示すごとく、本例の導電性部材5は、特定のコンデンサ素子2aの側面を覆うよう構成されている。すなわち、本例では、コンデンサ素子2の周囲に絶縁性テープ12を巻回し、さらに導電性部材5を巻回することにより、特定のコンデンサ素子2aを形成してある。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0040】
本例の作用効果について説明する。
上記構成にすると、特定のコンデンサ素子2aと導電性部材5を一体化させることができる。そのため、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間に導電性部材5を別途配置する必要がなくなり、特定のコンデンサ素子2aと接続端子40との間隔を狭くすることができる。そのため、収納ケース10を小型化できる。
【0041】
また、上記構成にすると、コンデンサ素子2として例えばフィルムコンデンサ91を用いた場合に、その製造工程を利用して、コンデンサ素子2の表面に導電性部材5を容易に巻回させることができる。すなわち、フィルムコンデンサ1は、絶縁体からなるフィルムの表面に金属被膜を形成したものを巻回して形成するため、このフィルムの巻回工程が終了した後に、絶縁テープ12を巻回し、さらに導電性部材5を巻回する工程を連続して行うことができる。そのため、上記構造のコンデンサ素子2aを容易に製造することが可能である。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【0042】
(実施例4)
本例は、導電性部材5の形状を変更した例である。図9、図10に示すごとく、本例の導電性部材5は、全てのコンデンサ素子2を纏めて取り囲んでいる。すなわち、本例では、導電性部材5を使って枠体を形成し、この枠体の中に全てのコンデンサ素子2を収納した。導電性部材5の一部は、接続端子40と特定のコンデンサ素子2aとの間に介在している。
その他、実施例1と同様の構成を備える。
【0043】
本例の作用効果について説明する。
上記構成にすると、特定のコンデンサ素子2aだけでなく、他のコンデンサ素子2についても、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になる。すなわち、接続端子40に生じた磁界H(図10参照)が大きいと、特定のコンデンサ素子2a以外のコンデンサ素子2にも磁界Hの影響が及び、これらのコンデンサ素子2に渦電流が生じる場合がある。そのため、特定のコンデンサ素子2a以外のコンデンサ素子2が、誘導加熱によって温度が上昇する場合がある。しかしながら、本例のように、複数のコンデンサ素子2の周りを導電性部材5で取り囲むことにより、複数のコンデンサ素子2を磁界Hから保護することができる。そのため、複数のコンデンサ素子2について、誘導加熱による温度上昇を防止することが可能になり、コンデンサ1全体に、より多くの電流を流すことが可能になる。
その他、実施例1と同様の作用効果を備える。
【符号の説明】
【0044】
1 コンデンサ
2 コンデンサ素子
20,21 電極面
3 開口側バスバー
4 底面側バスバー
40 接続端子
5 導電性部材
6 電力変換装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に底面を有すると共に他方に開口部を有する収納ケースと、
該収納ケースに収納され、該収納ケースの上記開口部側と上記底面側の端部に一対の電極面を有すると共に互いに並列接続された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の、上記開口部側の上記電極面に接続された開口側バスバーと、
上記コンデンサ素子の、上記底面側の上記電極面に接続された底面側バスバーと、
上記底面側バスバーから、上記収納ケースの上記開口部へ向けて突出する接続端子と、
該接続端子と、上記複数個のコンデンサ素子のうち上記接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に介在し、上記接続端子および上記コンデンサ素子に対して電気的に絶縁された導電性部材とを備えることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記導電性部材は板状に形成され、上記接続端子に対して平行に配置されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1において、上記導電性部材は、上記接続端子を取り囲むよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項1において、上記導電性部材は、上記特定のコンデンサ素子の側面の少なくとも一部を覆うよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
請求項1において、上記導電性部材は、複数個の上記コンデンサ素子を纏めて取り囲んでいることを特徴とするコンデンサ。
【請求項6】
電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子と、該スイッチング素子が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサと、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサとを備え、上記スナバコンデンサと上記平滑コンデンサとが並列接続されている電力変換装置であって、上記平滑コンデンサは、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のコンデンサであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
一方に底面を有すると共に他方に開口部を有する収納ケースと、
該収納ケースに収納され、該収納ケースの上記開口部側と上記底面側の端部に一対の電極面を有すると共に互いに並列接続された複数個のコンデンサ素子と、
該コンデンサ素子の、上記開口部側の上記電極面に接続された開口側バスバーと、
上記コンデンサ素子の、上記底面側の上記電極面に接続された底面側バスバーと、
上記底面側バスバーから、上記収納ケースの上記開口部へ向けて突出する接続端子と、
該接続端子と、上記複数個のコンデンサ素子のうち上記接続端子に隣接する特定のコンデンサ素子との間に介在し、上記接続端子および上記コンデンサ素子に対して電気的に絶縁された導電性部材とを備えることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記導電性部材は板状に形成され、上記接続端子に対して平行に配置されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1において、上記導電性部材は、上記接続端子を取り囲むよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項1において、上記導電性部材は、上記特定のコンデンサ素子の側面の少なくとも一部を覆うよう構成されていることを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
請求項1において、上記導電性部材は、複数個の上記コンデンサ素子を纏めて取り囲んでいることを特徴とするコンデンサ。
【請求項6】
電力変換回路を構成する複数のスイッチング素子と、該スイッチング素子が動作する際に生じるサージを吸収するスナバコンデンサと、入力電圧を平滑化する平滑コンデンサとを備え、上記スナバコンデンサと上記平滑コンデンサとが並列接続されている電力変換装置であって、上記平滑コンデンサは、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のコンデンサであることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−233795(P2011−233795A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104647(P2010−104647)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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