説明

コンバインの刈取装置

【課題】小型のコンバインでも穀稈引起しケースの上下調節を可能とするコンバインの刈取装置を提供する。
【解決手段】走行機体1の前部に設けた刈取装置3の前部に穀稈引起し装置13を備え、該穀稈引起し装置13の引起しケース22に穀稈を引き起こすためのタイン21付チェーンを収納し、該穀稈引起しケース22の上部にタイン21付チェーンを駆動するためのギヤケース71を設け、後下方に延設した伝動軸44より動力を伝達可能とするとともに、前記引起しケース22を上下に位置調整可能に構成したコンバインの刈取装置であって、前記ギヤケース71を取り付けるブラケット100と穀稈引起しケース22上部の間、及び引起しケース22の下部と刈取フレーム38の間に位置調節機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの刈取装置、特に穀稈引起しケースを上下調節可能とするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自脱型コンバインの走行機体には、その前部に設けられた刈取装置に、走行機体の進行方向と交差する幅方向(横幅方向)に沿って並列された複数個の横回し型穀稈引起しケースを有する穀稈引起し装置が備えられている(特許文献1参照)。そして、引起し装置の引起し高さは、刈取装置を昇降する油圧シリンダ伸縮させて調節し、引起し装置の最低位置は刈取装置前端に配置した分草体の下端支持部または刈取フレームを接地させた時の高さとなり、更に、引起し装置の横回しのタインが作用する最低高さは、刈取フレームまたは引起し駆動ケースへの取付位置により略決定されていた。
【特許文献1】特開2003−79220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ユーザーや穀稈の倒伏状態によっては、前記タインの作用高さを更に低くしたいという要望があったが、前記穀稈引起しケースの刈取フレームや駆動ケースへの取付位置を変更できない構成であったため、刈取作業時に倒伏穀稈の引起しミスが生じて、収穫効率を低下させることがあった。
そこで、本発明は斯かる課題に鑑み、小型のコンバインでも穀稈引起しケースの上下調節を可能とするコンバインの刈取装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、走行機体の前部に設けた刈取装置の前部に穀稈引起し装置を備え、該穀稈引起し装置の引起しケースに穀稈を引き起こすためのタイン付チェーンを収納し、該穀稈引起しケースの上部にタイン付チェーンを駆動するためのギヤケースを設け、後下方に延設した伝動軸より動力を伝達可能とするとともに、前記穀稈引起しケースを上下に位置調整可能に構成したコンバインの刈取装置であって、前記ギヤケースを取り付けるブラケットと穀稈引起しケース上部の間、及び、穀稈引起しケースの下部と刈取フレームの間に位置調節機構を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記ブラケットまたは穀稈引起しケースの何れか一方に、上下方向に開口する長孔と、上下方向に高さの異なるネジ孔を複数設けたものである。
【0007】
請求項3においては、前記長孔とネジ孔をギヤケース取付部の上下両側に配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、ユーザーの好みや刈取条件等に合わせて、引起しケースの上下高さを調節可能とすることができ、タインの作用高さを変更して、引起しミスを防止することができる。また、引起しケースの上下両側を刈取フレーム側に強固に固定することができる。
【0010】
請求項2においては、引起しケースとブラケットの接触する面積は大きいままで上下の移動調節が可能となる。また、ボルトを緩めて上下に移動させることにより、ケースの上下調節が容易にできる。そして、ボルトの付替により容易に高さ調節ができる。
【0011】
請求項3においては、ギヤケースの両側を固定して強固に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの正面図である。図4は刈取装置の前方斜視図、図5は刈取装置の側面図、図6は刈取装置の動力伝達機構を表したスケルトン図、図7は穀稈引起しケースの背面図、図8はブラケットを取り外した穀稈引起しケースの背面図、図9は穀稈引起しケース及び引起し駆動パイプの斜視図、図10は引起し駆動パイプの斜視図、図11は引起しギヤケースの側面一部断面図、図12はブラケットの斜視図、図13は穀稈引起し装置の下部と固定部材の斜視図である。
【0013】
まず、図1乃至図3を用いて本発明にかかるコンバインの全体的な構成について説明する。
本実施形態における三条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2、2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯溜する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。穀粒タンク7は、走行機体1の後部に設けられた縦軸(実施形態では排出オーガ8の縦オーガ筒9、図1及び図2参照)回りに水平回動可能に構成されている。刈取装置3と穀粒タンク7との間には、操向レバーや運転座席等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されている。刈取装置3にて刈り取られた刈取穀稈はフィードチェーン6に受け継ぎ搬送され、脱穀装置5にて脱穀処理される。
【0014】
脱穀装置5における扱室には扱胴17を収納し、その下方にはチャフシーブ等による揺動選別を行うための揺動選別機構(図示せず)と、唐箕ファンによる風選別を行うための風選別機構(図示せず)が配置されている。これら両選別機構にて選別されて一番受け樋(図示せず)に集められた穀粒は、一番コンベヤ及び揚穀コンベヤ(図示せず)を介して穀粒タンク7に集積される。穀粒タンク7の一番物は排出オーガ8を介して機外に搬出される。
【0015】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン18(図2参照)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0016】
次に、図4及び図5を参照しながら、刈取装置について説明する。
【0017】
刈取装置3は、脱穀装置5の前方に位置する刈取架台(図示せず)に対して回動可能に軸支された横長の刈取入力パイプ35(図1、図4及び図5参照)回りに上下回動可能に構成されている。刈取入力パイプ35の中途部には、前方斜め下向きに延びる縦伝動パイプ36が設けられている。該縦伝動パイプ36の中途部と走行機体1の前端部とが、単動式の油圧シリンダ4を介して連結されている。
【0018】
縦伝動パイプ36の先端部(下端部)には、横長の横伝動パイプ37が設けられている。該横伝動パイプ37には、前向きに突出する4本の刈取フレーム38が横伝動パイプ37の長手方向に沿って適宜間隔で並設されている。該刈取フレーム38群の下方には、バリカン式の刈刃装置12が設けられている。各刈取フレーム38の先端部には分草体15が突設されている。
【0019】
また、横伝動パイプ37には、刈り取り条数に合わせて3つの支持パイプとしての右及び中及び左の引起し駆動パイプ39a、39b、39cが前方斜め上向きに延びるように立設されている。当該中及び左及び右の引起し駆動パイプ39a、39b、39c群は、横伝動パイプ37の長手方向(走行機体1の横幅方向)に沿って適宜間隔で並んでいる。右及び中及び左の引起し駆動パイプ39a、39b、39cの各先端部には、圃場に植立した未刈穀稈を引き起こすための穀稈引起し装置13が取り付けられている。本実施形態では、刈取装置3の前部に三条分の穀稈引起し装置13が備えられている。穀稈引起し装置13とフィードチェーン6の前端部との間には、穀稈搬送装置14が配置されている。
【0020】
穀稈引起し装置13は、分草体15を介して取り込んだ未刈穀稈を起立させる引起しタイン21を有する横回し型穀稈引起しケース22を備え、これら各穀稈引起ケース22の後方下部にはスターホイル23及び掻き込みベルト24が配置されている。該スターホイル23及び掻き込みベルト24は、これらの組に対応する引起しタイン21にて引き起こされた未刈穀稈の根元部を後方に掻き込むためのものである。これらスターホイル23及び掻き込みベルト24にて掻き込まれた未刈穀稈の根元部がバリカン式の刈刃装置12にて切断される。
【0021】
穀稈搬送装置14は、右二条分の刈取穀稈を左斜め後方に搬送する右下部搬送チェーン25と、左一条分の刈取穀稈を右斜め後方に搬送してその根元部を右下部搬送チェーン25の送り終端位置近傍に合流させる左下部搬送チェーン27と、右二条分の刈取穀稈の穂先部を左斜め後方に搬送する右上部搬送タイン31と、左一条分の刈取穀稈の穂先部を右斜め後方に搬送して右上部搬送タイン31に合流させる左上部搬送タイン28と、左下部搬送チェーン27の送り終端位置近傍にて合流した三条分の刈取穀稈の根元部をフィードチェーン6に受け継ぎ搬送するための縦搬送チェーン30とにより構成されている。縦搬送チェーン30に送られた三条分の刈取穀稈の根元部は、その後フィードチェーン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この刈取穀稈の穂先部が脱穀装置5における扱室内の扱胴17にて脱穀される。
【0022】
次に、図6を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0023】
エンジン11から刈取装置3に向けての動力は、扱胴入力軸や刈取変速機構(いずれも図示せず)及び刈取入力プーリ40等を介して、まず刈取入力パイプ35に内装された刈取入力軸41に伝達される。刈取入力軸41に伝達された動力は、縦伝動パイプ36内の縦伝動軸42を介して横伝動パイプ37内の横伝動軸43に伝達され、次いで、横伝動軸43から、右及び中及び左の引起し駆動パイプ39a、39b、39cに内装された右及び中及び左の引起し伝動軸44a、44b、44cと、刈刃駆動軸45とに動力伝達される。右及び中及び左の引起し伝動軸44a、44b、44cに伝達された動力は、右及び中及び左の引起し入力軸46a、46b、46c及びこれに連結された引起しスプロケット47を介して、穀稈引起し装置13の各引起しタイン21を駆動させる。刈刃駆動軸45に伝達された動力は刈刃装置12を駆動させる。
【0024】
左及び右の引起し伝動軸44c、44aからは、隣接する右及び中及び左の引起し伝動軸44a、44b、44cの間に配置された左右の下部搬送駆動軸48にも動力が分岐して伝達される。左の下部搬送駆動軸48に伝達された動力は、これに連結された駆動スプロケット49を介して、穀稈搬送装置14の左下部搬送チェーン27、穀稈引起し装置13における左側のスターホイル23及び掻き込みベルト24を駆動させる。右下部搬送駆動軸48に伝達された動力は、これに連結された駆動スプロケット49を介して、穀稈搬送装置14の右下部搬送チェーン25、穀稈引起し装置13における右側と中央とのスターホイル23及び掻き込みベルト24を駆動させる。
【0025】
また、刈取入力軸41に伝達された動力は、縦軸50を経由して、穀稈搬送装置14の縦搬送チェーン30、右上部搬送タイン31にも分岐して伝達される。
【0026】
次に、図4〜図9を参照しながら、穀稈引起し装置を構成する穀稈引起しケース群の配置等の概略について説明する。
【0027】
本実施形態における三条分の穀稈引起しケース22は、刈取装置3の前部に対して走行機体1の横幅方向に沿って適宜間隔で、且つそれぞれが後方斜め上向きの傾斜上に配置されている。各穀稈引起しケース22には、その作用側の下部から横一側上部にかけての外周側部を外向きの突出姿勢で回行して未刈穀稈を起立させる引起しタイン21が備えられている。すなわち、本実施形態の各穀稈引起しケース22はいわゆる横回し型のものである。なお、説明の便宜上、図4〜図9において各穀稈引起しケース22には、走行機体1の進行方向右側のものから順に符号a、b、cを添えている。
【0028】
走行機体1の進行方向右側に位置する右穀稈引起しケース22aと、中央に位置する中央穀稈引起しケース22bとは、それぞれの引起しタイン21a、21bが突出する作用側の横一側部同士を相対向させている。一方、走行機体1の進行方向左側に位置する単独穀稈引起しケースとしての左穀稈引起しケース22cは、その作用側の右側部を中央穀稈引起しケース22bの非作用側である左側部に対向させている。
【0029】
換言すると、右穀稈引起しケース22aと中央穀稈引起しケース22bとの配置関係は、引起しタイン21a、21bの突出する向きが左右対称上となるように設定されている。中央穀稈引起しケース22bを挟んで右穀稈引起しケース22aと反対側に位置する左穀稈引起しケース22cは、その引起しタイン21cが中央穀稈引起しケース22bの引起しタイン21bと同じ向きに突出するように配置されている。
【0030】
ここで、各穀稈引起しケース22の作用側とは、該穀稈引起しケース22の外周側部のうち引起しタイン21が外向きの突出状態で回行する領域のことをいう。右穀稈引起しケース22aの作用側は、その下部寄りの右側端部から下底部を経て左側上部までの領域である。中央穀稈引起しケース22bの作用側は、その下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域である。また、左穀稈引起しケース22cの作用側は、中央穀稈引起しケース22bと同様に、その下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域である。
【0031】
なお、中央穀稈引起しケース22bの左側部には、中央穀稈引起しケース22bの長手方向に沿って延びる長い引起しガイド板51が取り付けられている。この場合、引起しガイド板51は、中央穀稈引起しケース22bの左側部における非作用側の箇所と作用側の箇所とに跨って延びている。正面視においては、左穀稈引起しケース22cの左側部から中央穀稈引起しケース22bに向けて突出した引起しタイン21cの先端部は、引起しガイド板51の後方に隠れることになる。
【0032】
右及び中央穀稈引起しケース22a、22bは一対で二条分の未刈穀稈を引き起こすように構成されているのに対して、左穀稈引起しケース22cは単独で一条分の未刈穀稈を引き起こすように構成されている。すなわち、条刈りに際しては、走行機体1の前方にある三条分の未刈穀稈のうち右二条分は、右及び中央穀稈引起しケース22a、22bにおける引起しタイン21a、21bの対にて引き起こされ、右及び中央穀稈引起しケース22a、22bの間に取り込まれる。左一条分の未刈穀稈は、左穀稈引起しケース22cの引起しタイン21cだけで引き起こされ、中央及び左穀稈引起しケース22b、22cの間に取り込まれることになる。
【0033】
以上の構成によると、左穀稈引起しケース22cの配置位置は、その引起しタイン21cが正面視で中央穀稈引起しケース22bに接触しない程度に中央穀稈引起しケース22bに近接し、且つ前記引起しタイン21cと中央穀稈引起しケース22bにおける下部寄りの左側端部から現れる突出初期の引起しタイン21bとが互いに干渉しない程度に中央穀稈引起しケース22bより後方にすれているので、三条分の穀稈引起しケース22全部が、圃場における未刈穀稈の条間隔に対応して穀稈引起しに最適な配置位置になる。これにより条刈りに際しての穀稈引起しを三条分全ての穀稈引起しケース22の引起しタイン21にて適切に行えるから、穀稈引起しケース22全体としての引起し性能を向上させることができるのである。
【0034】
次に、図7〜図9を参照しながら、各穀稈引起しケースの構成について説明する。各穀稈引起しケース22は右穀稈引起しケース22aと中央穀稈引起しケース22bとは左右対称状であるとか、中央穀稈引起しケース22bだけに引起しガイド板51が設けられている等の細かな違いはあるものの、基本的に同じ構成である。そこで、中央穀稈引起しケース22bを例として、その詳細構造を以下に説明する。
【0035】
中央穀稈引起しケース22bは、合成樹脂板製の前蓋61と、該前蓋61の裏面側に装着された金属板製の裏板63とにより、両者を前後合わせて薄箱状に上下に長く形成されている。前蓋61の下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域には、引起しタイン21bを外向きに突出させるためのタイン溝穴64が開口している。このタイン溝穴64の箇所が中央穀稈引起しケース22bの作用側を構成することになる。
【0036】
中央穀稈引起しケース22bの内部のうち上部側に設けられた引起しスプロケット47及びテンションスプロケット65と、下部側に設けられた従動スプロケット66とには、無端チェーン67が巻き掛けられている。無端チェーン67には、複数個の引起しタイン21bが適宜間隔で起伏揺動可能に取り付けられている。引起し駆動パイプ39b、内の引起し伝動軸44bから引起し入力軸46に伝達された動力にて回転する引起しスプロケット47により、無端チェーン67に取り付けられた複数個の引起しタイン21bは、正面視で時計回りに回行するように構成されている。
【0037】
中央穀稈引起しケース22bの内部のうち従動スプロケット66の上方箇所には、引起しタイン21bが中央穀稈引起しケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達したとき(非作用側から作用側に移行するとき)に、該引起しタイン21bの回動基端部に当接する図示せぬ突出案内部材が設けられている。中央穀稈引起しケース22bにおける下部寄りの左側端部に到達した引起しタイン21bの回動基端部が突出案内部材に当接することにより枢支状態から基部が支えられた状態となり、該引起しタイン21bはタイン溝穴64の始端箇所から外向きに突出する姿勢に切り替わるように構成されている。
【0038】
中央穀稈引起しケース22bの内部のうち作用側寄りの箇所には、引起しタイン21bを外向きの突出状態に保持するための図示せぬタインガイドが、無端チェーン67の長手方向に沿って延びるように設けられている。従って、中央穀稈引起しケース22bにおける作用側の箇所(下部寄りの左側端部から下底部を経て右側上部までの領域)では、各引起しタイン21bがタイン溝穴64に沿って外向きの突出状態で回行するように構成されている。
【0039】
また、中央穀稈引起しケース22bにおける非作用側の箇所(右側上部から上部を経て下部寄りの左側端部までの領域)では、引起しタイン21bの先端部を内壁などに当接させる等して、該引起しタイン21bの先端部を引起しケース22内に倒れた姿勢(無端チェーン67に寄り添った姿勢)で収納するように構成されている。
【0040】
なお、テンションスプロケット65は、裏板63に対して、無端チェーン67が緊張・弛緩する方向に移動可能となるように設けられている。
【0041】
次に、本実施形態の穀稈引起し装置13の三条分の各引起しタイン21a、21b、21cの駆動構造を説明する。
【0042】
図9及び図10に示すように、横伝動パイプ37に立設させた引起し駆動パイプ39a、39b、39cの上端側には、引起しギヤケース71a、71b、71cを介して、穀稈引起しケース22a、22b、22cの上端側(引起しタイン21a、21b、21cの穀稈送り終端側)がそれぞれ連結されている。
【0043】
ここで、駆動伝達構造の一例として右引起し駆動パイプ39a、右引起しギヤケース71a、右穀稈引起しケース22aの駆動伝達構造について説明する。
図11に示すように、前記右引起しギヤケース71aは側面視略くの字型の円筒構造に鋳造加工にて形成されている。右引起し駆動パイプ39aの一端(出力)側の外周にはフランジ体72が溶接にて固設され、右引起しギヤケース71aの一端(入力)側に形成したフランジ部74と前記フランジ体72と当接させた状態で、両者に開口したボルト孔にボルト76・76・・・を螺装して着脱可能に締結されている。
【0044】
前記右引起しギヤケース71aの他端部はボルト締結部80が厚みをもって上下二箇所に形成されており、ボルト孔81が左右方向に貫通して設けられている。該ボルト孔81は、右引起しギヤケース71aの第二軸孔94に対して直角方向に穿設されている。一方、右穀稈引起しケース22a側にはブラケット100が設けられている、該ブラケット100は、図12に示すように、前記右穀稈引起しケース22aに固設する面となる底部101と該底部に対して垂直に突出した側部102から構成されており、平面視「コ」の字状に形成されている。該ブラケット100の側部102には前記右引起しギヤケース71aのボルト孔81に対応してボルト孔103・103が設けられており、ボルト孔81及びボルト孔103の位置を合わせてボルト等で締結することにより、前記右引起しギヤケース71aはブラケット100に固定されることとなる。
【0045】
一方、右引起しギヤケース71aの一端を第一軸孔93として、右引起し駆動パイプ39aの右引起し伝動軸44a端上に被嵌して軸受86にて支持される駆動ベベルギヤ82を内設し、他端を第二軸孔94として、前記右穀稈引起しケース22aの引起し入力軸46aに被嵌して軸受90にて支持される従動ベベルギヤ83とを内設し、ギヤ機構84が形成されている。前記軸受86は駆動ベベルギヤ82のボス部85上に被嵌され、スナップリング形の止め輪87によりボス部85に着脱可能に係止されている。また、前記軸受86はスナップリング形の止め輪88を右引起しギヤケース71a内面に嵌合して軸受86の抜け止めとしている。こうして、右引起しギヤケース71aに軸受86を介して、駆動ベベルギヤ82及び右引起し伝動軸44aを回転自在に支持している。
【0046】
他方、駆動ベベルギヤ82に常時噛み合う従動ベベルギヤ83のボス部89には軸受90が被嵌され、当該軸受90が、スナップリング形の止め輪91によりボス部89に着脱可能に係止されている。また、スナップリング形の止め輪92により右引起しギヤケース71a内側に前記軸受90が抜け止めされている。こうして右引起しギヤケース71aに、軸受90を介して従動ベベルギヤ83と引起し入力軸46aが回転自在に支持されている。
【0047】
そして、前記引起し伝動軸44aの出力側端にはスプラインが形成されて、駆動ベベルギヤ82の軸心側の孔内に形成したスプラインボス部にスプライン嵌合可能としている。このような構成において、組み立てる場合には、右引起しギヤケース71aの第一軸孔93内に軸受86を外嵌した駆動ベベルギヤ82を挿入して止め輪88により係止する。この状態で引起し伝動軸44aを駆動ベベルギヤ82にスプライン嵌合し、フランジ部74とフランジ体72をボルトによって固定する。
また、従動ベベルギヤ83に軸受90を嵌合固定した状態で前記と反対側から第二軸孔94に挿入して、止め輪92により抜け止めする。そして、従動ベベルギヤ83の内周と引起し入力軸46aの端部上にスプラインが形成され、引起し入力軸46aに従動ベベルギヤ83をスプライン嵌合して、ボルト締結部80をブラケット100にボルトにより固定するのである。
【0048】
一方、前記ブラケット100の底部中央部であって引起し入力軸46aを貫設する部分には、ボス体104が設けられており、該ボス体104に軸受105を介して引起し入力軸46aを回動自在に支持している。該ボス体104は前記右引起しギヤケース71aの第二軸孔94にインロー嵌合することにより固定している。
【0049】
すなわち、前記右引起しギヤケース71aを右穀稈引起しケース22aに固設するには、まず、ブラケット100のボス体104に前方より軸受105を挿入して止め輪により固定し、引起し入力軸46aを後方より軸受105に挿入し、前方よりカラーとスプロケット47を前方より引起し入力軸46a上に外嵌して止め輪にて固定する。この状態で、後方より右引起しギヤケース71aをボス体104にインロー嵌合させると同時に、引起し入力軸46aと従動ベベルギヤ83をスプライン嵌合させる。そして、ボルト孔81及びボルト孔103の位置を合わせてボルト等で締結することにより固定される。
【0050】
次に、図7乃至図13を用いて本発明の要部である穀稈引起しケース22の位置調節機構について説明する。
図7及び図12に示すように、上側の位置調節機構は、前記ブラケット100と穀稈引起しケース22の裏面に上下取付位置変更可能に取り付けるための複数のネジ孔106・107L・107Rから構成されている。つまり、ブラケット100の中央に配置した前記引起しギヤケース取付部となるボス体104の下側に上下高さが同じのネジ孔107L・107Rが左右二箇所設けられている。一方、前記ボス体104の上方には長孔106が左右中央部に一箇所設けられている。該長孔106は上下方向に長い長円形に形成しており、ボルト等が上下方向に移動できるように構成されている。
【0051】
一方、図8に示すように、穀稈引起しケース22上部のボス体104を挿入するための孔108の上部と下部には前記ブラケット100のネジ孔106・107L・107Rに対応したボルト、及びネジ孔が設けられている。即ち、孔108の上方で前記長孔106に対応した位置にはボルト110が溶接等により固設されている。一方、孔108の下方両側でネジ孔107L・107Rに対応した位置にはそれぞれネジ孔111L・111Rが設けられている。但し、該右ネジ孔111Rの位置は左ネジ孔111Lに比べ高い位置にあり、この高さの差は前記長孔106の長さに相当するように形成されている。
【0052】
また、図13に示すように、下側の位置調節機構が、穀稈引起しケース22下部と刈取フレーム38の間に構成されている。即ち、稈引起しケース22下部後面から後方に固定用の複数本のボルト112・112が溶接などにより固設されており、前記刈取フレーム38から延設した固定部材120の先端には前記ボルト112・112に対応した長孔121・121が設けられている。該長孔121は上下方向に長い長円状に形成しておりボルト112の上下調節が可能となっている。この長孔121の上下方向の長さは前記長孔106と略同じ長さとしている。
【0053】
以上のように構成したことにより、穀稈引起しケース22の上下調節が可能となる。即ち、前記穀稈引起しケース22は、通常状態では上方の位置で固定されている。この場合、前記長孔106の上端でボルト110を締結し、前記ネジ孔107Rは、前記穀稈引起しケース22の右ネジ孔111Rの位置と一致することになるので、右ネジ孔111R及びネジ孔107Rにボルト等を貫設し、ナット等で締結することが可能となる。なお、他方の左ネジ孔111Lはネジ孔107Lと一致しないため、ボルト等によって固定は行わない。また、前記穀稈引起しケース22下部のボルト112・112は、前記固定部材120に設けられたネジ孔121・121の上端で締結する。
一方、前記穀稈引起しタイン21を通常状態よりも下方で作用させたい場合には、下方の位置で固定することも可能である。この場合、前記長孔106の下端でボルト110を締結し、前記ネジ孔107Lは、前記穀稈引起しケース22の左ネジ孔111Lの位置と一致することになるので、左ネジ孔111L及びネジ孔107Lにボルト等を貫設し、ナット等で締結することが可能となる。なお、他方の右ネジ孔111Rはネジ孔107Rと一致しないため、ボルト等によって固定は行わない。また、前記穀稈引起しケース22下部のボルト112・112は、前記固定部材120に設けられたネジ孔121・121の下端で締結する。
【0054】
つまり、通常状態よりも下方で引起しタイン21を作用させたいときは、穀稈引起しケース22を下方へ移動させるために、前記ボルト110・112・112の締結を緩め、前記ネジ孔107R・111Rに貫設されているボルト等を取り外すことにより、穀稈引起しケース22を引起しギヤケース71に対して相対的に下方へ移動させることが可能となる。この際、引起しスプロケット47も移動するが、テンションスプロケット65によりチェーンの張力を調節することが可能となっているため、張力が変化することはない。
【0055】
なお、本実施例では、引起しスプロケット47下方のネジ孔を高さの異なる孔で構成しているが、穀稈引起しケース22側もしくはブラケット100側のネジ孔を長孔で構成することによって無段階に高さを調節する構成とすることも可能である。
また、ブラケット100側のネジ孔を長孔とする代わりに、穀稈引起しケース22側に長孔を設けることも可能である。
【0056】
以上より、走行機体1の前部に設けた刈取装置3の前部に穀稈引起し装置13を備え、該穀稈引起し装置13の引起しケース22に穀稈を引き起こすためのタイン21付チェーンを収納し、該穀稈引起しケース22の上部にタイン21付チェーンを駆動するためのギヤケース71を設け、後下方に延設した伝動軸44より動力を伝達可能とするとともに、前記引起しケース22を上下に位置調整可能に構成したコンバインの刈取装置であって、前記ギヤケース71を取り付けるブラケット100と穀稈引起しケース22上部の間、及び引起しケース22の下部と刈取フレーム38の間に位置調節機構を設けた。これにより、ユーザーの好みや刈取条件等に合わせて、引起しケースの上下高さを調節可能とすることができ、タインの作用高さを変更して、引起しミスを防止することができる。また、引起しケースの上下両側を刈取フレーム側に強固に固定することができる。
【0057】
また、前記ブラケット100または引起しケース22の何れか一方に、上下方向に開口する長孔106と、上下方向に高さの異なるネジ孔111を複数設けた。これにより、引起しケース22とブラケット100の接触する面積は大きいままで上下の移動調節が可能となる。また、ボルトを緩めて上下に移動させることにより、引起しケース22の上下調節が容易にできる。そして、ボルトの付替により容易に高さ調節ができる。
【0058】
また、前記長孔106とネジ孔111をギヤケース71取付部の上下両側に配置した。これにより、ギヤケース71の両側を固定して強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの正面図。
【図4】刈取装置の前方斜視図。
【図5】刈取装置の側面図。
【図6】刈取装置の動力伝達機構を表したスケルトン図。
【図7】穀稈引起しケースの背面図。
【図8】ブラケットを取り外した穀稈引起しケースの背面図。
【図9】穀稈引起しケース及び引起し駆動パイプの斜視図。
【図10】引起し駆動パイプの斜視図。
【図11】引起しギヤケースの側面一部断面図。
【図12】ブラケットの斜視図。
【図13】穀稈引起し装置の下部と固定部材の斜視図。
【符号の説明】
【0060】
1 走行機体
3 刈取装置
13 穀稈引起し装置
21a、21b、21c 引起しタイン
22a、22b、22c 穀稈引起しケース
39a、39b、39c 引起し駆動パイプ
44a、44b、44c 引起し伝動軸
46a、46b、46c 引起し入力軸
71a、71b、71c 引起しギヤケース
100 ブラケット
106 ネジ孔
107L、107R ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に設けた刈取装置の前部に穀稈引起し装置を備え、該穀稈引起し装置の引起しケースに穀稈を引き起こすためのタイン付チェーンを収納し、該穀稈引起しケースの上部にタイン付チェーンを駆動するためのギヤケースを設け、後下方に延設した伝動軸より動力を伝達可能とするとともに、前記穀稈引起しケースを上下に位置調整可能に構成したコンバインの刈取装置であって、
前記ギヤケースを取り付けるブラケットと穀稈引起しケース上部の間、及び、穀稈引起しケースの下部と刈取フレームの間に位置調節機構を設けたことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記ブラケットまたは穀稈引起しケースの何れか一方に、上下方向に開口する長孔と、上下方向に高さの異なるネジ孔を複数設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記長孔とネジ孔をギヤケース取付部の上下両側に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバインの刈取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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