コンバインの姿勢制御装置
【課題】機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置を備えたコンバインにおいて、姿勢制御装置の目標傾斜角を設定する設定器であるダイヤルを他部品の兼用化により廃止してコストの低減を図る。
【解決手段】機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具65によりクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段41,61とを備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具65の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめると共に、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段62を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成した。
【解決手段】機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具65によりクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段41,61とを備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具65の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめると共に、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段62を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒の収穫作業を行なうコンバインにおいては、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御することができる姿勢制御装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このコンバインでは、収穫作業を開始するにあたって、オペレータは機体の左右姿勢の制御を「自動」で行うか「手動」で行うかを自動切換スイッチによって選択することができ、この時、「自動」を選択すると姿勢制御装置は自動制御状態となり、以後、手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御が行われない限り、傾斜センサによって検出する機体の傾斜角が目標傾斜角と一致するように、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させる自動傾斜制御が実行されるようになっている。
【0004】
一方、上述した自動傾斜制御を実行中であってもオペレータが手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御を行うと、自動傾斜制御に優先して手動制御が実行されるようになっており、当該手動制御により機体の左右姿勢が所望の傾斜角となって手動操作スイッチによる手動制御を終了した時は、この手動制御を終了した時点で傾斜センサが検出する機体の傾斜角を自動傾斜制御の目標傾斜角に置き換えて、前記自動傾斜制御に復帰できるように構成している。
【特許文献1】特許第3112779号公報(第3−4頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した特許文献1のものは、手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御を終了した時、傾斜センサが検出する機体の傾斜角を自動傾斜制御の目標傾斜角に置き換えるものであるから、自動傾斜制御に復帰した時点で設定器であるダイヤル15を一々操作して機体の目標傾斜角を調節し直す必要がなく、当該ダイヤル15を実質的に不要にすることができるのでコスト面を考慮すると改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置と、該姿勢制御装置を操作する手動操作具と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置を昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具によりクローラ走行装置を昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバインの姿勢制御装置において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことを第1の特徴としている。
そして、前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具65によるクローラ走行装置の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具によって左右一側のクローラ走行装置が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされることを第2の特徴としている。
更に、前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータを操縦部に設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめると共に、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことによって、従来のクローラ走行装置の自動傾斜制御において、機体の目標傾斜角を設定するために設けられていた設定器としてのダイヤルを設けなくて済むことからコストの低減が図られ、且つ傾斜設定モードから水平設定モードへの自動切換えも、自動傾斜制御に直接関連する起動手段を操作することによってなされるので操作の単純化により作業性が向上する。
そして、請求項2の発明によれば、前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具によるクローラ走行装置の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具によって左右一側のクローラ走行装置が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされるので、例えば圃場の傾斜が顕著に連続する畦際等を刈取走行する場合は、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えを速やかに行なえるようになり作業性が向上する。
更に、請求項3の発明によれば、水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータを操縦部に設けたことによって、オペレータは実行中(刈取走行中)の制御形態を容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図、そして図2は、一部破断したコンバイン1の左側面図、また図3は、操縦部14の平面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)4と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク5と、該穀粒タンク5内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ6と、脱穀部3で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部7と、機体後部において排稈を排出処理するカッタ8を備えた後処理部9と、オペレータが着座する座席11や操向操作具であるマルチステアリングレバー12、及び主変速レバー13等の各種操作具を配設した操縦部14を備えている。
【0009】
そして、コンバイン1は、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rに機体フレーム17を支持すると共に、この機体フレーム17の前部に前処理部2を図2にA矢印で示す如く昇降自在に連結している。即ち、前処理部2のフレームを兼ねる縦伝動筒18の上端を機体フレーム17の前部に設けた支点Pに軸支すると共に、縦伝動筒18の下面と機体フレーム17との間に油圧シリンダ19を介装し、この油圧シリンダ19を伸縮作動させることによって支点Pを回動中心とする前処理部2の昇降を可能にしている。尚、機体フレーム17上の左側前部に脱穀部3を配設する一方、機体フレーム17上の右側前部に操縦部14を配設し、更にその後方に穀粒タンク5と排藁搬送部7を設けている。
【0010】
また、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rには、図4及び図5に示すように、機体(機体フレーム17)に対して左右一対(両側)または左右一側のクローラ走行装置16L,16Rを昇降させることによって、機体の左右姿勢を制御することができる姿勢制御装置21を備えている。そして、両クローラ走行装置16L,16Rは、機体フレーム17の下方にクローラ15を掛け回すための複数の転輪22、及びアイドラ23を支持した左右一対の走行フレーム24L,24Rを備えており、両走行フレーム24L,24Rと機体フレーム17とを前後一対の前側支持アーム25と後側支持アーム26を介して連結している。
【0011】
更に詳しくは、機体フレーム17の左右両側に前後一対の支軸(横軸)27,28を回動自在に支持し、両支持軸27,28の外側端に機体後向きの前側支持アーム25と後側支持アーム26とをそれぞれ固設すると共に、この前側支持アーム25の後端を走行フレーム24L,24Rの前側に枢支し、一方後側支持アーム26の後端を走行フレーム24L,24Rの略中間部に枢支している。尚、後側支持アーム26は、前側支持アーム25よりもアーム長を長く設定してある。
【0012】
そして、前後一対の支持軸27,28の内側端には、上向きの前側操作アーム31と後側操作アーム32とをそれぞれ固設してあり、これら前後一対の操作アーム31,32と支持アーム25,26とが共通の横軸心回りに一体揺動するように構成している。また、傾斜制御用のアクチュエータである油圧シリンダ35の基端部を機体フレーム17に連結すると共に、この油圧シリンダ35のピストンロッド35aの先端を後側操作アーム32の先端(上端)に連結し、更に前側操作アーム31の先端(上端)と後側操作アーム32の略中間部とを連結ロッド36を介して連結することによって、上述した姿勢制御装置21を構成している。
【0013】
尚、図4は、姿勢制御装置21を構成する油圧シリンダ35のピストンロッド35aを、縮側ストロークエンドまで縮作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面からクローラ走行装置16L,16Rの駆動スプロケット37を駆動させる駆動軸38の軸心までの高さはh1となる。一方、図5は、油圧シリンダ35のピストンロッド35aを伸側ストロークエンドまで伸作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面から駆動スプロケット37の駆動軸38の軸心までの高さはh2となる。つまり、機体フレーム17に対する左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの独立した昇降高さの自動調整は、上述のh2−h1(h2>h1)範囲で調節可能である。
【0014】
ところで、上述した姿勢制御装置21によるコンバイン1(機体)の左右姿勢の制御は、作業を行う圃場の状態に適した制御を行っており、例えば、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図6にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側のクローラ走行装置(16L,16R)を自動上昇させる制御を行っている。そして、この場合の姿勢制御装置21による機体の姿勢制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲の上限側で行うことにより機体の水平を保ち、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込むことを可及的に防止できるようにしてある。
【0015】
一方、湿田や軟弱な圃場以外の比較的硬い圃場(乾田)を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図7にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側とは反対のクローラ走行装置(16L,16R)を自動下降させる制御を行っている。そして、この場合の姿勢制御装置21による機体の姿勢制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲下限側で行うことにより機体の水平を保ち、当該コンバイン1の安定した作業走行を可能にしている。
【0016】
また、コンバイン1は、図8に示すブロック図の如くマイクロコンピュータ(CPU、EEPROM、RAM等を含む)を用いて構成される制御手段としてのメインマイコン41を備えており、このメインマイコン41の入力側には、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43、穀粒排出オーガ6の自動旋回(格納)スイッチ44、オーガ操作具45による粒排出オーガ6の上昇操作がなされたことを検出するオーガ上昇操作検出スイッチ46、同じく下降操作がなされたことを検出するオーガ下降操作検出スイッチ47、穀粒排出オーガ6が上昇限まで上昇操作されたことを検出するオーガ上昇限検出スイッチ48、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49を所定の入力インターフェース回路を介して接続する一方、メインマイコン41の出力側には、穀粒排出オーガ6の昇降シリンダ51用電磁バルブの上昇ソレノイド52と下降ソレノイド53、穀粒排出オーガ6の旋回モータ54を所定の出力インターフェース回路を介して接続している。
【0017】
更に、メインマイコン41には、通信線Bを介してサブマイコン61を接続してあり、このサブマイコン61が必要とする状態記憶や設定値をメインマイコン41に備えるEEPROMにバックアップできるようにしてある。そして、サブマイコン61の入力側には、姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)を入りまたは切り状態とする起動手段としての傾斜自動スイッチ62、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)とを操作する手動操作レバー65の操作状態を検出する車高上昇スイッチ66、車高下降スイッチ67、傾斜左下げスイッチ68、及び傾斜右下げスイッチ69、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72bを所定の入力インターフェース回路を介して接続する一方、サブマイコン61の出力側には、上述した左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と下降ソレノイド63b(左),64b(右)、上述の自動傾斜制御モードで機体の設定傾斜が水平の時は点灯し、且つ自動傾斜制御モードで機体の設定傾斜を手動で変更している間は点滅するインジケータ70を所定の出力インターフェース回路を介して接続している。尚、上述した脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42、水平自動(傾斜自動)スイッチ62、手動操作レバー65、及びインジケータ70は、図3に示す如く座席11左側の操作パネル73に設けられている。
【0018】
そして、図9は、制御手段としてのメインマイコン41及びサブマイコン61を介して実行する制御を示すメインフローチャートであって、傾斜制御モード設定、メイン傾斜制御、及び警報制御を順次実行する。
【0019】
次に、上述した傾斜制御モード設定制御を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)を入りまたは切り状態とする傾斜自動スイッチ62が「切り」状態から「入り」状態になったかを判断し、「切り」状態ならばステップS2に進み、「入り」状態になったらステップS8に進む。
【0020】
ステップS2では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)とを操作する手動操作レバー65が設定時間以上昇降操作されたか否かを判断し、設定時間以上操作されていなければステップS3に進み、設定時間以上操作されたならばステップS12に進む。
【0021】
ステップS3では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって、左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置(上昇限または下降限)まで作動したか否かを判断し、当該クローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置まで作動していなければステップS4に進み、昇降作動範囲の限界位置まで作動したならばステップS12に進む。
【0022】
ステップS4では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチの入り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが入り状態でなければメイン傾斜制御に進み、作業機(脱穀)クラッチが入り状態であればステップS5に進む。
【0023】
ステップS5では、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49によって、穀粒排出オーガ6が格納位置にあるか否かを判断し、穀粒排出オーガ6が格納位置になければメイン傾斜制御に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置にあればステップS6に進む。
【0024】
ステップS6では、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされたか否かを、姿勢制御装置21の姿勢制御状態を検出する傾斜左下げスイッチ68または傾斜右下げスイッチ69によって検出し、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされていなければメイン傾斜制御に進み、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされていればステップS7に進む。
【0025】
ステップS7では、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71の値を姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)の傾斜設定値(目標傾斜角)とすると共に、自動傾斜制御における左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御を、前記傾斜設定値に対して機体の傾斜角が一致するように制御する「傾斜設定モード」にセットし、更に図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0026】
一方、ステップS8では、自動傾斜制御が実行中であるか否かを判断し、実行中でなければステップS9に進み、実行中であればステップS10に進む。
【0027】
ステップS9では、自動傾斜制御を「入り」状態にしてステップS12に進む。そして、ステップS10では、自動傾斜制御における左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御が、機体を自動的に水平制御する「水平設定モード」または傾斜設定値(目標傾斜角)に対して機体の傾斜角が一致するように制御する「傾斜設定モード」でなされているか否かを判断し、両クローラ走行装置16L,16Rの昇降制御が「水平設定モード」でなされていればステップS11に進み、「傾斜設定モード」でなされていればステップS12に進む。
【0028】
ステップS11では、自動傾斜制御を「切り」状態とすると共に、図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0029】
また、ステップS12では、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71の値、即ち水平記憶値を姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)の傾斜設定値(目標傾斜角)とすると共に、自動傾斜制御ドにおける左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御を、機体を自動的に水平制御する「水平設定モード」にセットし、更に図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0030】
次に、メイン傾斜制御を図11に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされたか否かを、姿勢制御装置21による姿勢制御(手動傾斜制御)状態を検出する傾斜左下げスイッチ68、傾斜右下げスイッチ69及び車高上昇スイッチ66、車高下降スイッチ67によって検出し、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされていればステップS2に進み、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされていなければステップS3に進む。
【0031】
ステップS2では、手動傾斜制御、即ち手動操作レバー65による左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの手動傾斜制御を実行して平行復帰制御に進む。
【0032】
ステップS3では、傾斜自動スイッチ62が「入り」状態で自動傾斜制御が実行中にあるか否かを判断し、実行中でなければステップS4に進み、実行中であればステップS6に進む。
【0033】
ステップS4では、自動傾斜制御が「入り」状態から「切り」状態になったならばステップS11に進み、「切り」状態になっていなければステップS5に進む。
【0034】
ステップS5では、ステップS4の自動傾斜制御が「入り」の状態から姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあるか否かを判断し、姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあれば
ステップS11に進み、姿勢制御装置21が平行復帰動作中でなければ警報制御に進む。
【0035】
そして、ステップS6では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチの入り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが入り状態であればステップS7に進み、作業機(脱穀)クラッチが入り状態でなければステップS8に進む。
【0036】
ステップS7では、傾斜設定値(目標傾斜角)に対して機体の傾斜角が一致するように制御する自動傾斜制御を実行して警報制御に進む。
【0037】
また、ステップS8では、姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあるか否かを判断し、姿勢制御装置21が平行復帰動作中でなければステップS9に進み、姿勢制御装置21が平行復帰動作中であればステップS11に進む。
【0038】
ステップS9では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチが切り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが切り状態でなければ警報制御に進み、作業機(脱穀)クラッチが切り状態であればステップS10に進む。
【0039】
ステップS10では、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49によって、穀粒排出オーガ6が格納位置にあるか否かを判断し、穀粒排出オーガ6が格納位置になければ警報制御に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置にあればステップS11に進んで、このステップS11では、詳細は後述する姿勢制御装置21の平行復帰制御を実行する。
【0040】
以上説明した制御手段としてのメインマイコン41及びサブマイコン61を介して順次実行する傾斜制御モード設定、メイン傾斜制御、及び警報制御によれば、左右両側または左右一側のクローラ走行装置16L,16Rを昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置21と、該姿勢制御装置21を操作する手動操作具である手動操作レバー65と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操レバー65によりクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段41,61を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作レバー65の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバイン1の姿勢制御装置21において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段である傾斜自動スイッチ62を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことによって、従来のクローラ走行装置16L,16Rの自動傾斜制御において、機体の目標傾斜角を設定するために設けられていた設定器としてのダイヤルを設けなくて済むことからコストの低減が図られ、且つ傾斜設定モードから水平設定モードへの自動切換えも、自動傾斜制御に直接関連する起動手段である傾斜自動スイッチ62を操作することによってなされるので操作の単純化により作業性が向上する。
【0041】
そして、傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具65によるクローラ走行装置16L,16Rの昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具65によって左右一側のクローラ走行装置16L,16Rが昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされるので、例えば圃場の傾斜が顕著に連続する畦際等を刈取走行する場合は、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えを速やかに行なえるようになり作業性が向上する。
【0042】
更に、前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータ70を操縦部14に設けることによって、オペレータは実行中(刈取走行中)の制御形態を容易に認識することができる。
【0043】
次に、上述した姿勢制御装置21の水平復帰制御を図12に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さ、即ち左右の車高が一致しているか否かを判断し、左右の車高が一致していれば警報制御に進み、左右の車高が一致していなければステップS2に進む。
【0044】
ステップS2では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)の作動開始時のみ報知を行なう図示しない平行復帰警報をセットしてステップS3に進む。
【0045】
ステップS3では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さの状態、即ち左側の車高に対して右側の車高が高くなっているか否かを判断し、左側の車高に対して右側の車高が高くなっていればステップS4に進み、左側の車高に対して右側の車高が高くなっていなければステップS7に進む。
【0046】
ステップS4では、姿勢制御装置21の平行復帰条件、即ち、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態か、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあるか否かをチェックし、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態であればステップS5に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあればステップS6に進む。
【0047】
ステップS5では、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド64bに連続出力を行なって右側の車高を一気に低くする制御を実行して警報制御に進む。一方、ステップS6では、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド64bに断続出力を行なって右側の車高を徐々に低くする制御を実行して警報制御に進む。
【0048】
そして、ステップS7では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さの状態、即ち右側の車高に対して左側の車高が高くなっているか否かを判断し、右側の車高に対して左側の車高が高くなっていればステップS8に進み、右側の車高に対して左側の車高が高くなっていなければ警報制御に進む。
【0049】
ステップS8では、姿勢制御装置21の平行復帰条件、即ち、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態か、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあるか否かをチェックし、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態であればステップS9に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあればステップS10に進む。
【0050】
ステップS9では、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド63bに連続出力を行なって左側の車高を一気に低くする制御を実行して警報制御に進む。一方、ステップS10では、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド63bに断続出力を行なって左側の車高を徐々に低くする制御を実行して警報制御に進む。
【0051】
以上説明した姿勢制御装置21の平行復帰制御は、姿勢制御装置21が平行復帰する直前に平行復帰警報を出力すると共に、自動傾斜制御の起動手段である傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態で、且つ穀粒排出オーガ6が格納位置にあることを平行復帰の条件としており、例えば脱穀フィードチェン75側で補助作業者が手扱ぎ作業を行なっている時、この補助作業者が意図しない姿勢制御装置21の平行復帰制御が不意になされることはない。また、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にある時は、左右一側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド(63b,64b)に断続出力を行なうので、急激な姿勢制御装置21の平行復帰がなされず、上述の如く手扱ぎ作業を行なう補助作業者の安全が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの一部破断した左側面図。
【図3】操縦部の平面図。
【図4】作用状態(下降限)にある姿勢制御装置の要部側面図。
【図5】作用状態(上昇限)にある姿勢制御装置の要部側面図。
【図6】姿勢制御装置によるクローラ走行装置の上限側制御を示す概略図。
【図7】姿勢制御装置によるクローラ走行装置の下限側制御を示す概略図。
【図8】制御手段のブロック図。
【図9】制御手段を介して実行する制御を示すメインフローチャート。
【図10】傾斜制御モード設定制御を示すフローチャート。
【図11】メイン傾斜制御を示すフローチャート。
【図12】水平復帰制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
14 操縦部
16L クローラ走行装置(左側)
16R クローラ走行装置(右側)
21 姿勢制御装置
41 制御手段(メインマイコン)
61 制御手段(サブマイコン)
62 起動手段
65 手動操作具
70 インジケータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒の収穫作業を行なうコンバインにおいては、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御することができる姿勢制御装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このコンバインでは、収穫作業を開始するにあたって、オペレータは機体の左右姿勢の制御を「自動」で行うか「手動」で行うかを自動切換スイッチによって選択することができ、この時、「自動」を選択すると姿勢制御装置は自動制御状態となり、以後、手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御が行われない限り、傾斜センサによって検出する機体の傾斜角が目標傾斜角と一致するように、機体に対して左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させる自動傾斜制御が実行されるようになっている。
【0004】
一方、上述した自動傾斜制御を実行中であってもオペレータが手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御を行うと、自動傾斜制御に優先して手動制御が実行されるようになっており、当該手動制御により機体の左右姿勢が所望の傾斜角となって手動操作スイッチによる手動制御を終了した時は、この手動制御を終了した時点で傾斜センサが検出する機体の傾斜角を自動傾斜制御の目標傾斜角に置き換えて、前記自動傾斜制御に復帰できるように構成している。
【特許文献1】特許第3112779号公報(第3−4頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した特許文献1のものは、手動操作スイッチによる機体の左右姿勢の手動制御を終了した時、傾斜センサが検出する機体の傾斜角を自動傾斜制御の目標傾斜角に置き換えるものであるから、自動傾斜制御に復帰した時点で設定器であるダイヤル15を一々操作して機体の目標傾斜角を調節し直す必要がなく、当該ダイヤル15を実質的に不要にすることができるのでコスト面を考慮すると改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、左右両側または左右一側のクローラ走行装置を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置と、該姿勢制御装置を操作する手動操作具と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置を昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具によりクローラ走行装置を昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバインの姿勢制御装置において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことを第1の特徴としている。
そして、前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具65によるクローラ走行装置の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具によって左右一側のクローラ走行装置が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされることを第2の特徴としている。
更に、前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータを操縦部に設けたことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめると共に、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことによって、従来のクローラ走行装置の自動傾斜制御において、機体の目標傾斜角を設定するために設けられていた設定器としてのダイヤルを設けなくて済むことからコストの低減が図られ、且つ傾斜設定モードから水平設定モードへの自動切換えも、自動傾斜制御に直接関連する起動手段を操作することによってなされるので操作の単純化により作業性が向上する。
そして、請求項2の発明によれば、前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具によるクローラ走行装置の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具によって左右一側のクローラ走行装置が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされるので、例えば圃場の傾斜が顕著に連続する畦際等を刈取走行する場合は、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えを速やかに行なえるようになり作業性が向上する。
更に、請求項3の発明によれば、水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータを操縦部に設けたことによって、オペレータは実行中(刈取走行中)の制御形態を容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図、そして図2は、一部破断したコンバイン1の左側面図、また図3は、操縦部14の平面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)4と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク5と、該穀粒タンク5内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ6と、脱穀部3で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部7と、機体後部において排稈を排出処理するカッタ8を備えた後処理部9と、オペレータが着座する座席11や操向操作具であるマルチステアリングレバー12、及び主変速レバー13等の各種操作具を配設した操縦部14を備えている。
【0009】
そして、コンバイン1は、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rに機体フレーム17を支持すると共に、この機体フレーム17の前部に前処理部2を図2にA矢印で示す如く昇降自在に連結している。即ち、前処理部2のフレームを兼ねる縦伝動筒18の上端を機体フレーム17の前部に設けた支点Pに軸支すると共に、縦伝動筒18の下面と機体フレーム17との間に油圧シリンダ19を介装し、この油圧シリンダ19を伸縮作動させることによって支点Pを回動中心とする前処理部2の昇降を可能にしている。尚、機体フレーム17上の左側前部に脱穀部3を配設する一方、機体フレーム17上の右側前部に操縦部14を配設し、更にその後方に穀粒タンク5と排藁搬送部7を設けている。
【0010】
また、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rには、図4及び図5に示すように、機体(機体フレーム17)に対して左右一対(両側)または左右一側のクローラ走行装置16L,16Rを昇降させることによって、機体の左右姿勢を制御することができる姿勢制御装置21を備えている。そして、両クローラ走行装置16L,16Rは、機体フレーム17の下方にクローラ15を掛け回すための複数の転輪22、及びアイドラ23を支持した左右一対の走行フレーム24L,24Rを備えており、両走行フレーム24L,24Rと機体フレーム17とを前後一対の前側支持アーム25と後側支持アーム26を介して連結している。
【0011】
更に詳しくは、機体フレーム17の左右両側に前後一対の支軸(横軸)27,28を回動自在に支持し、両支持軸27,28の外側端に機体後向きの前側支持アーム25と後側支持アーム26とをそれぞれ固設すると共に、この前側支持アーム25の後端を走行フレーム24L,24Rの前側に枢支し、一方後側支持アーム26の後端を走行フレーム24L,24Rの略中間部に枢支している。尚、後側支持アーム26は、前側支持アーム25よりもアーム長を長く設定してある。
【0012】
そして、前後一対の支持軸27,28の内側端には、上向きの前側操作アーム31と後側操作アーム32とをそれぞれ固設してあり、これら前後一対の操作アーム31,32と支持アーム25,26とが共通の横軸心回りに一体揺動するように構成している。また、傾斜制御用のアクチュエータである油圧シリンダ35の基端部を機体フレーム17に連結すると共に、この油圧シリンダ35のピストンロッド35aの先端を後側操作アーム32の先端(上端)に連結し、更に前側操作アーム31の先端(上端)と後側操作アーム32の略中間部とを連結ロッド36を介して連結することによって、上述した姿勢制御装置21を構成している。
【0013】
尚、図4は、姿勢制御装置21を構成する油圧シリンダ35のピストンロッド35aを、縮側ストロークエンドまで縮作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面からクローラ走行装置16L,16Rの駆動スプロケット37を駆動させる駆動軸38の軸心までの高さはh1となる。一方、図5は、油圧シリンダ35のピストンロッド35aを伸側ストロークエンドまで伸作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面から駆動スプロケット37の駆動軸38の軸心までの高さはh2となる。つまり、機体フレーム17に対する左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの独立した昇降高さの自動調整は、上述のh2−h1(h2>h1)範囲で調節可能である。
【0014】
ところで、上述した姿勢制御装置21によるコンバイン1(機体)の左右姿勢の制御は、作業を行う圃場の状態に適した制御を行っており、例えば、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図6にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側のクローラ走行装置(16L,16R)を自動上昇させる制御を行っている。そして、この場合の姿勢制御装置21による機体の姿勢制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲の上限側で行うことにより機体の水平を保ち、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込むことを可及的に防止できるようにしてある。
【0015】
一方、湿田や軟弱な圃場以外の比較的硬い圃場(乾田)を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図7にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側とは反対のクローラ走行装置(16L,16R)を自動下降させる制御を行っている。そして、この場合の姿勢制御装置21による機体の姿勢制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲下限側で行うことにより機体の水平を保ち、当該コンバイン1の安定した作業走行を可能にしている。
【0016】
また、コンバイン1は、図8に示すブロック図の如くマイクロコンピュータ(CPU、EEPROM、RAM等を含む)を用いて構成される制御手段としてのメインマイコン41を備えており、このメインマイコン41の入力側には、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43、穀粒排出オーガ6の自動旋回(格納)スイッチ44、オーガ操作具45による粒排出オーガ6の上昇操作がなされたことを検出するオーガ上昇操作検出スイッチ46、同じく下降操作がなされたことを検出するオーガ下降操作検出スイッチ47、穀粒排出オーガ6が上昇限まで上昇操作されたことを検出するオーガ上昇限検出スイッチ48、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49を所定の入力インターフェース回路を介して接続する一方、メインマイコン41の出力側には、穀粒排出オーガ6の昇降シリンダ51用電磁バルブの上昇ソレノイド52と下降ソレノイド53、穀粒排出オーガ6の旋回モータ54を所定の出力インターフェース回路を介して接続している。
【0017】
更に、メインマイコン41には、通信線Bを介してサブマイコン61を接続してあり、このサブマイコン61が必要とする状態記憶や設定値をメインマイコン41に備えるEEPROMにバックアップできるようにしてある。そして、サブマイコン61の入力側には、姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)を入りまたは切り状態とする起動手段としての傾斜自動スイッチ62、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)とを操作する手動操作レバー65の操作状態を検出する車高上昇スイッチ66、車高下降スイッチ67、傾斜左下げスイッチ68、及び傾斜右下げスイッチ69、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72bを所定の入力インターフェース回路を介して接続する一方、サブマイコン61の出力側には、上述した左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と下降ソレノイド63b(左),64b(右)、上述の自動傾斜制御モードで機体の設定傾斜が水平の時は点灯し、且つ自動傾斜制御モードで機体の設定傾斜を手動で変更している間は点滅するインジケータ70を所定の出力インターフェース回路を介して接続している。尚、上述した脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42、水平自動(傾斜自動)スイッチ62、手動操作レバー65、及びインジケータ70は、図3に示す如く座席11左側の操作パネル73に設けられている。
【0018】
そして、図9は、制御手段としてのメインマイコン41及びサブマイコン61を介して実行する制御を示すメインフローチャートであって、傾斜制御モード設定、メイン傾斜制御、及び警報制御を順次実行する。
【0019】
次に、上述した傾斜制御モード設定制御を図10に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)を入りまたは切り状態とする傾斜自動スイッチ62が「切り」状態から「入り」状態になったかを判断し、「切り」状態ならばステップS2に進み、「入り」状態になったらステップS8に進む。
【0020】
ステップS2では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)とを操作する手動操作レバー65が設定時間以上昇降操作されたか否かを判断し、設定時間以上操作されていなければステップS3に進み、設定時間以上操作されたならばステップS12に進む。
【0021】
ステップS3では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって、左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置(上昇限または下降限)まで作動したか否かを判断し、当該クローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置まで作動していなければステップS4に進み、昇降作動範囲の限界位置まで作動したならばステップS12に進む。
【0022】
ステップS4では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチの入り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが入り状態でなければメイン傾斜制御に進み、作業機(脱穀)クラッチが入り状態であればステップS5に進む。
【0023】
ステップS5では、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49によって、穀粒排出オーガ6が格納位置にあるか否かを判断し、穀粒排出オーガ6が格納位置になければメイン傾斜制御に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置にあればステップS6に進む。
【0024】
ステップS6では、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされたか否かを、姿勢制御装置21の姿勢制御状態を検出する傾斜左下げスイッチ68または傾斜右下げスイッチ69によって検出し、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされていなければメイン傾斜制御に進み、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作がなされていればステップS7に進む。
【0025】
ステップS7では、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71の値を姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)の傾斜設定値(目標傾斜角)とすると共に、自動傾斜制御における左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御を、前記傾斜設定値に対して機体の傾斜角が一致するように制御する「傾斜設定モード」にセットし、更に図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0026】
一方、ステップS8では、自動傾斜制御が実行中であるか否かを判断し、実行中でなければステップS9に進み、実行中であればステップS10に進む。
【0027】
ステップS9では、自動傾斜制御を「入り」状態にしてステップS12に進む。そして、ステップS10では、自動傾斜制御における左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御が、機体を自動的に水平制御する「水平設定モード」または傾斜設定値(目標傾斜角)に対して機体の傾斜角が一致するように制御する「傾斜設定モード」でなされているか否かを判断し、両クローラ走行装置16L,16Rの昇降制御が「水平設定モード」でなされていればステップS11に進み、「傾斜設定モード」でなされていればステップS12に進む。
【0028】
ステップS11では、自動傾斜制御を「切り」状態とすると共に、図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0029】
また、ステップS12では、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ71の値、即ち水平記憶値を姿勢制御装置21による機体の姿勢制御(自動傾斜制御)の傾斜設定値(目標傾斜角)とすると共に、自動傾斜制御ドにおける左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降制御を、機体を自動的に水平制御する「水平設定モード」にセットし、更に図示しないモード切換警報をセットしてメイン傾斜制御に進む。
【0030】
次に、メイン傾斜制御を図11に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされたか否かを、姿勢制御装置21による姿勢制御(手動傾斜制御)状態を検出する傾斜左下げスイッチ68、傾斜右下げスイッチ69及び車高上昇スイッチ66、車高下降スイッチ67によって検出し、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされていればステップS2に進み、手動操作レバー65の左右一側への傾倒操作または前後方向への傾倒操作がなされていなければステップS3に進む。
【0031】
ステップS2では、手動傾斜制御、即ち手動操作レバー65による左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの手動傾斜制御を実行して平行復帰制御に進む。
【0032】
ステップS3では、傾斜自動スイッチ62が「入り」状態で自動傾斜制御が実行中にあるか否かを判断し、実行中でなければステップS4に進み、実行中であればステップS6に進む。
【0033】
ステップS4では、自動傾斜制御が「入り」状態から「切り」状態になったならばステップS11に進み、「切り」状態になっていなければステップS5に進む。
【0034】
ステップS5では、ステップS4の自動傾斜制御が「入り」の状態から姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあるか否かを判断し、姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあれば
ステップS11に進み、姿勢制御装置21が平行復帰動作中でなければ警報制御に進む。
【0035】
そして、ステップS6では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチの入り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが入り状態であればステップS7に進み、作業機(脱穀)クラッチが入り状態でなければステップS8に進む。
【0036】
ステップS7では、傾斜設定値(目標傾斜角)に対して機体の傾斜角が一致するように制御する自動傾斜制御を実行して警報制御に進む。
【0037】
また、ステップS8では、姿勢制御装置21が平行復帰動作中にあるか否かを判断し、姿勢制御装置21が平行復帰動作中でなければステップS9に進み、姿勢制御装置21が平行復帰動作中であればステップS11に進む。
【0038】
ステップS9では、脱穀・刈取(作業機)クラッチレバー42による作業機(脱穀)クラッチの入り状態を検出する作業機クラッチスイッチ43によって、作業機(脱穀)クラッチが切り状態にあるか否かを判断し、作業機(脱穀)クラッチが切り状態でなければ警報制御に進み、作業機(脱穀)クラッチが切り状態であればステップS10に進む。
【0039】
ステップS10では、穀粒排出オーガ6の旋回位置を検出するオーガ旋回位置検出センサ49によって、穀粒排出オーガ6が格納位置にあるか否かを判断し、穀粒排出オーガ6が格納位置になければ警報制御に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置にあればステップS11に進んで、このステップS11では、詳細は後述する姿勢制御装置21の平行復帰制御を実行する。
【0040】
以上説明した制御手段としてのメインマイコン41及びサブマイコン61を介して順次実行する傾斜制御モード設定、メイン傾斜制御、及び警報制御によれば、左右両側または左右一側のクローラ走行装置16L,16Rを昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置21と、該姿勢制御装置21を操作する手動操作具である手動操作レバー65と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操レバー65によりクローラ走行装置16L,16Rを昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段41,61を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作レバー65の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバイン1の姿勢制御装置21において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段である傾斜自動スイッチ62を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことによって、従来のクローラ走行装置16L,16Rの自動傾斜制御において、機体の目標傾斜角を設定するために設けられていた設定器としてのダイヤルを設けなくて済むことからコストの低減が図られ、且つ傾斜設定モードから水平設定モードへの自動切換えも、自動傾斜制御に直接関連する起動手段である傾斜自動スイッチ62を操作することによってなされるので操作の単純化により作業性が向上する。
【0041】
そして、傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具65によるクローラ走行装置16L,16Rの昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具65によって左右一側のクローラ走行装置16L,16Rが昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされるので、例えば圃場の傾斜が顕著に連続する畦際等を刈取走行する場合は、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えを速やかに行なえるようになり作業性が向上する。
【0042】
更に、前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータ70を操縦部14に設けることによって、オペレータは実行中(刈取走行中)の制御形態を容易に認識することができる。
【0043】
次に、上述した姿勢制御装置21の水平復帰制御を図12に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さ、即ち左右の車高が一致しているか否かを判断し、左右の車高が一致していれば警報制御に進み、左右の車高が一致していなければステップS2に進む。
【0044】
ステップS2では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの上昇ソレノイド63a(左),64a(右)と、下降ソレノイド63b(左),64b(右)の作動開始時のみ報知を行なう図示しない平行復帰警報をセットしてステップS3に進む。
【0045】
ステップS3では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さの状態、即ち左側の車高に対して右側の車高が高くなっているか否かを判断し、左側の車高に対して右側の車高が高くなっていればステップS4に進み、左側の車高に対して右側の車高が高くなっていなければステップS7に進む。
【0046】
ステップS4では、姿勢制御装置21の平行復帰条件、即ち、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態か、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあるか否かをチェックし、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態であればステップS5に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあればステップS6に進む。
【0047】
ステップS5では、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド64bに連続出力を行なって右側の車高を一気に低くする制御を実行して警報制御に進む。一方、ステップS6では、右側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド64bに断続出力を行なって右側の車高を徐々に低くする制御を実行して警報制御に進む。
【0048】
そして、ステップS7では、左右の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出するシリンダ位置検出センサ72a,72bによって左右のクローラ走行装置16L,16Rの昇降作動高さの状態、即ち右側の車高に対して左側の車高が高くなっているか否かを判断し、右側の車高に対して左側の車高が高くなっていればステップS8に進み、右側の車高に対して左側の車高が高くなっていなければ警報制御に進む。
【0049】
ステップS8では、姿勢制御装置21の平行復帰条件、即ち、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態か、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあるか否かをチェックし、傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態であればステップS9に進み、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にあればステップS10に進む。
【0050】
ステップS9では、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド63bに連続出力を行なって左側の車高を一気に低くする制御を実行して警報制御に進む。一方、ステップS10では、左側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド63bに断続出力を行なって左側の車高を徐々に低くする制御を実行して警報制御に進む。
【0051】
以上説明した姿勢制御装置21の平行復帰制御は、姿勢制御装置21が平行復帰する直前に平行復帰警報を出力すると共に、自動傾斜制御の起動手段である傾斜自動スイッチ62が「切り」状態または作業機(脱穀)クラッチが「切り」状態で、且つ穀粒排出オーガ6が格納位置にあることを平行復帰の条件としており、例えば脱穀フィードチェン75側で補助作業者が手扱ぎ作業を行なっている時、この補助作業者が意図しない姿勢制御装置21の平行復帰制御が不意になされることはない。また、穀粒排出オーガ6が格納位置以外にある時は、左右一側の姿勢制御装置21に備える油圧シリンダ35用の電磁バルブの下降ソレノイド(63b,64b)に断続出力を行なうので、急激な姿勢制御装置21の平行復帰がなされず、上述の如く手扱ぎ作業を行なう補助作業者の安全が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの一部破断した左側面図。
【図3】操縦部の平面図。
【図4】作用状態(下降限)にある姿勢制御装置の要部側面図。
【図5】作用状態(上昇限)にある姿勢制御装置の要部側面図。
【図6】姿勢制御装置によるクローラ走行装置の上限側制御を示す概略図。
【図7】姿勢制御装置によるクローラ走行装置の下限側制御を示す概略図。
【図8】制御手段のブロック図。
【図9】制御手段を介して実行する制御を示すメインフローチャート。
【図10】傾斜制御モード設定制御を示すフローチャート。
【図11】メイン傾斜制御を示すフローチャート。
【図12】水平復帰制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
14 操縦部
16L クローラ走行装置(左側)
16R クローラ走行装置(右側)
21 姿勢制御装置
41 制御手段(メインマイコン)
61 制御手段(サブマイコン)
62 起動手段
65 手動操作具
70 インジケータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側または左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置(21)と、該姿勢制御装置(21)を操作する手動操作具(65)と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置(16L,16R)を昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具(65)によりクローラ走行装置(16L,16R)を昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段(41,61)を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具(65)の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバインの姿勢制御装置において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段(62)を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことを特徴とするコンバインの姿勢制御装置。
【請求項2】
前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具(65)によるクローラ走行装置(16L,16R)の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具(65)によって左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータ(70)を操縦部(14)に設けた請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項1】
左右両側または左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)を昇降させて機体の左右姿勢を制御する姿勢制御装置(21)と、該姿勢制御装置(21)を操作する手動操作具(65)と、機体の左右姿勢が設定傾斜となるようにクローラ走行装置(16L,16R)を昇降制御する自動傾斜制御と、該自動傾斜制御に優先して手動操作具(65)によりクローラ走行装置(16L,16R)を昇降制御する手動傾斜制御とを可能にする制御手段(41,61)を備え、前記自動傾斜制御での作業走行中に手動操作具(65)の操作を行った時は、その操作を終了した時点における機体の左右姿勢を設定傾斜とする傾斜設定モードとして自動傾斜制御に復帰せしめるコンバインの姿勢制御装置において、前記傾斜設定モードでの作業走行中に自動傾斜制御の起動手段(62)を操作すると、傾斜設定モードから機体の水平姿勢を設定傾斜とする水平設定モードへ自動的に切換えて自動傾斜制御を継続するように構成したことを特徴とするコンバインの姿勢制御装置。
【請求項2】
前記傾斜設定モードでの作業走行中に、手動操作具(65)によるクローラ走行装置(16L,16R)の昇降操作を所定時間以上行うか、または手動操作具(65)によって左右一側のクローラ走行装置(16L,16R)が昇降作動範囲の限界位置まで操作された時、手動傾斜制御から自動傾斜制御への切換えが自動的になされる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記水平設定モードの実行中は点灯し、傾斜設定モードの実行中は点滅するインジケータ(70)を操縦部(14)に設けた請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−225751(P2009−225751A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77656(P2008−77656)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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