説明

コンバインの排藁カッター装置

【課題】簡単かつ堅実にスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制する。
【解決手段】掻込刃と掻込体とを一対とした掻込刃軸と、切断刃軸とを平行させて横架し、対をなす掻込刃と掻込体との間の間隙に対向する切断刃の刃先部を配置し、切断刃軸とは反対側にはこれらの軸と平行させてスクレーパを複数取り付けた支軸を横架して、その基端部を支軸にその軸線方向に摺動自在に取り付け、先端部に形成した嵌合凹部を掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に嵌合させて、掻込刃と掻込体との間にスクレーパを介在させた排藁カッター装置であって、スクレーパの基端部の前端面に沿わせて、機体の幅方向に伸延する板状の規制体を配置し、その下端部には機体の幅方向に間隔を開けて折曲片を形成し、折曲片は先端が掻込刃ないしは掻込体に指向するように折曲させて、隣接する折曲片の側端面同士でスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの排藁カッター装置であって、スクレーパの動きを規制する構造を有する排藁カッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインに装備された排藁カッター装置の一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、かかる排藁カッター装置には、機体の幅方向である左右方向に伸延する掻込刃軸と切断刃軸とを平行させて横架している。そして、掻込刃軸にはその軸線方向に一定の間隔を開けて円板状の掻込刃と掻込体とを一対として複数対取り付けている。また、切断刃軸にはその軸線方向に一定の間隔を開けて切断刃を複数取り付けている。ここで、対をなす掻込刃と掻込体との間には一定の間隙を開けて、その間隙に対向する切断刃の刃先部を配置して、切断刃の刃先部と掻込刃の刃先部とを側面視でオーバーラップ(重合)させている。このようにして、対向する各切断刃と各掻込刃の刃先部同士で排藁を細断するようにしている。
【0003】
そして、対をなす掻込刃と掻込体との間にはスクレーパを介在させて、このスクレーパにより、対をなす掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周面に排藁が巻き付くのを防止している。ここで、スクレーパは左右方向に伸延する支軸にその軸線方向に一定の間隔を開けて複数取り付けている。支軸は掻込刃軸を挟んで切断刃軸とは反対側にこれらの軸と平行させて横架している。各スクレーパは支軸に基端部を支軸の軸線方向に摺動自在かつ軸線廻りに回動自在に取り付けている。一方、先端部に形成した嵌合凹部は掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に嵌合させている。このようにして、各スクレーパの先端部に形成した嵌合凹部を掻込刃軸の外周半部に堅実に嵌合させることができるようにしている。
【0004】
また、各スクレーパの基端部の前近傍位置にはリンクを介して左右方向に伸延する固定軸を架設している。そうすることで、各スクレーパが自重や排藁からの作用を受けて支軸を中心に前下方に回動して、先端部が掻込刃軸から離脱してその機能を果たさなくなるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−16965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した排藁カッター装置では、各スクレーパの前下方への回動は規制できるものの、支軸の軸線方向への動きは規制できない。そのために、各スクレーパの先端部に形成した嵌合凹部を掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に嵌合させるための位置決め作業が煩雑になっている。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、各スクレーパの左右の動きや前方への動きを規制することのできる簡易な規制構造を有する排藁カッター装置を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、下記の構成を特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明に係るコンバインの排藁カッター装置は、コンバインの後部に装着する排藁カッター装置において、円板状の掻込刃と掻込体とを一対として複数対取り付けた掻込刃軸と、円板状の切断刃を複数取り付けた切断刃軸とを平行させて横架し、対をなす掻込刃と掻込体との間には一定の間隙を開けて、その間隙に対向する切断刃の刃先部を配置し、掻込刃軸を挟んで切断刃軸とは反対側にはこれらの軸と平行させてスクレーパを複数取り付けた支軸を横架して、各スクレーパは基端部を支軸にその軸線方向に摺動自在に取り付ける一方、先端部に形成した嵌合凹部を掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に嵌合させて、掻込刃と掻込体との間にスクレーパを介在させた排藁カッター装置であって、スクレーパの基端部の前端面に沿わせて、機体の幅方向に伸延する板状の規制体を配置し、規制体の下端部には機体の幅方向に間隔を開けて折曲片を形成するとともに、折曲片は先端が掻込刃ないしは掻込体に指向するように折曲させて形成し、隣接する折曲片の側端面同士でスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制したことを特徴とする。
【0010】
かかるコンバインの排藁カッター装置では、規制体の下端部に形成した折曲片の先端を掻込刃ないしは掻込体に指向させて、隣接する折曲片の側端面同士でスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制することができるため、複数のスクレーパを複数対の掻込刃と掻込体との間隙にそれぞれ簡単かつ堅実に配置することができる。そして、スクレーパの先端部に形成した嵌合凹部は、掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に堅実に嵌合させることができる。その結果、スクレーパの機能である掻込刃と掻込体との間隙に排藁が侵入するのを阻止する機能を良好に確保することができる。
【0011】
請求項2記載の発明に係るコンバインの排藁カッター装置は、請求項1記載の発明に係る排藁カッター装置であって、前記折曲片間に垂下片を形成するとともに、垂下片は掻込刃と掻込体との間に形成された間隙と対向させて配置して、垂下片でスクレーパの前方への回動を規制したことを特徴とする。
【0012】
かかるコンバインの排藁カッター装置では、規制体の折曲片間に形成した垂下片でスクレーパの前方への回動を規制することができるため、次のような不具合の発生を回避することができる。すなわち、掻込刃軸の外周半部に嵌合させたスクレーパの先端部の嵌合凹部が、スクレーパの自重により前下方へ回動して掻込刃軸の外周面に押圧状態に接触して摩耗する、さらには、掻込刃軸に嵌合している嵌合凹部が外れる(嵌合解除)という不具合の発生を回避することができる。その結果、掻込刃軸への嵌合凹部の嵌合状態を良好に保持することができて、スクレーパによる排藁侵入阻止機能を確保することができる。ここで、折曲片と垂下片は、規制体の下端部に縦方向の切れ目を入れて、折曲片を折り曲げ形成することで、規制体に折曲片と垂下片を同時に一体成形することができる。その結果、折曲片と垂下片を有する規制体は、簡易な規制構造となすことができる。なお、規制体は板バネ等の弾性復元力を有する素材で形成することで、特に、スクレーパの前方への回動を規制する垂下片に弾性復元力を保持させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るコンバインの排藁カッター装置は、請求項1又は2記載の発明に係る排藁カッター装置であって、前記規制体は上端部をスクレーパの基端部の上端面と後端面に沿わせて折り曲げ状に伸延させて係止片を形成して、係止片でスクレーパの上方への回動を規制したことを特徴とする。
【0014】
かかるコンバインの排藁カッター装置では、係止片でスクレーパの上方への回動を規制することができるため、排藁の詰まり等によりスクレーパが上方へ回動される作用を受けた際にも、掻込刃軸に嵌合している嵌合凹部が外れる(嵌合解除)という不具合の発生を回避することができる。その結果、掻込刃軸への嵌合凹部の嵌合状態を良好に保持することができて、この点からもスクレーパによる排藁侵入阻止機能を確保することができる。また、折曲片と垂下片と係止片は折曲片と垂下片を同時に一体成形することができる。その結果、折曲片と垂下片と係止片を有する規制体は、簡易な規制構造となすことができる。なお、規制体は板バネ等の弾性復元力を有する素材で形成することで、特に、スクレーパの前方への回動を規制する垂下片と、スクレーパの上方への回動を規制する係止片に弾性復元力を保持させることができる。
【0015】
請求項4記載の発明に係るコンバインの排藁カッター装置は、請求項1〜3のいずれか1項記載のコンバインの排藁カッター装置であって、対向する切断刃の刃先部と掻込刃の刃先部は、側面視でオーバーラップさせるとともに、両刃先部の研磨面同士を研磨面合わせ状態に配置したことを特徴とする。
【0016】
かかるコンバインの排藁カッター装置では、両刃先部の研磨面同士を近接させた研磨面合わせ状態に配置することで、両刃先部による排藁の切断性能を向上させることができる。これは、規制体の隣接する折曲片の側端面同士でスクレーパの左右方向の位置決めと動きの規制が堅実になされることから、研磨面同士の近接配置が可能となる。しかも、掻込刃と掻込体の周縁部(先端縁部)同士が近接する先狭状態となるが、スクレーパは左右方向の位置決めと動きが規制されているため、スクレーパとこれら掻込刃及び掻込体の周縁部とが干渉するのを確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、次のような効果を奏する。すなわち、本発明は、簡易な規制構造となした規制体により、簡単かつ堅実にスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制することができて、スクレーパの組み付け作業の効率性を向上させることができる。しかも、スクレーパの排藁侵入阻止機能を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る排藁カッター装置を備えたコンバインの側面図。
【図2】排藁カッター装置の正面説明図。
【図3】排藁カッター装置の背面説明図。
【図4】排藁カッター装置の平面説明図。
【図5】排藁カッター装置の部分拡大端面説明図。
【図6】排藁カッター装置の斜視説明図。
【図7】スクレーパの取付状態を示す排藁カッター装置の側面説明図。
【図8】スクレーパの取付状態を示す斜視説明図。
【図9】規制体の斜視説明図。
【図10】規制体の取付状態を示す断面側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係るコンバインAの全体構成について、図1を参照しながら説明する。すなわち、コンバインAは、左右一対のクローラ式の走行部1を備え、この走行部1上に、機体フレーム2を設けて走行機体を形成している。機体フレーム2の左側前端部には、刈取フレーム3を介して刈取部4を昇降自在に取り付けている。刈取部4には搬送部5と穀稈移送部6を設けている。機体フレーム2上の左側部には、脱穀部7と選別部8を上下段に配設すると共に、機体フレーム2の後部には、本発明に係る排藁カッター装置としての排藁処理部9を配設している。一方、機体フレーム2上の右側前部には、キャビン10を配設すると共に、機体フレーム2の右側中途部には、穀粒貯留部11を配設している。穀粒貯留部11は、穀粒般出用のオーガ12を有する。また、コンバインAは、機体フレーム2上における前部に、駆動源としてのエンジン14を含む原動機部13を備える。原動機部13は、エンジン14の動力を各部の装置に供給する。
【0020】
また、機体フレーム2上における原動機部13の前方には、ミッション部15を設けている。ミッション部15は、原動機部13が有するエンジン14の動力を走行部1や刈取部4等に伝達される前に、エンジン14の動力を調整(変速)する。
【0021】
以上のような構成を備えるコンバインAは、刈取部4により穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を搬送部5により後上方の穀稈移送部6まで搬送して、穀稈移送部6に穀稈を受け渡す。穀稈移送部6に受け渡された穀稈は、穀稈移送部6により株元を挟扼されると共に穂先を脱穀部7内に挿入させた状態で後方へ移送される。
【0022】
これにより、穀稈は、脱穀部7によって脱穀される。脱穀により得られた穀粒は、選別部8により選別されて、精粒のみが穀粒貯留部11に搬送されて貯留され、必要に応じてオーガ12を介して搬出される。
【0023】
また、脱穀された穀稈は、排藁として排藁処理部9に搬送され、この排藁処理部9にて細断・排出処理される。
【0024】
そして、キャビン10は、図1〜図4に示すように、全体として略四角形箱型に形成している。キャビン10の内部には、運転部19を設けている。運転部19においては、床部にステアリングコラム21を立設している。ステアリングコラム21の上端部には、操向手段としてのステアリングホイール22を取り付けている。ステアリングホイール22の後方位置には、運転席23を配置し、運転席23の前方から左側方にかけて、サイドコラム24を配設している。サイドコラム24の上部には、変速手段としての変速レバー26を取り付けている。
【0025】
上記のような構成において、本発明の要旨をなす排藁処理部9の構造を、以下に図2〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
すなわち、排藁処理部9は、図2〜図6に示すように、排藁処理室29を有している。排藁処理室29内には左右一対の軸支持壁体30,31を機体の幅方向である左右方向に一定の間隔を開けて対向状態に配設している。両軸支持壁体30,31間には左右方向に伸延する掻込刃軸32と切断刃軸33とを平行させて横架している。ここで、切断刃軸33は掻込刃軸32の後下方に配置している。
掻込刃軸32にはその軸線方向に一定の間隔を開けて円板状の掻込刃(低速側切断刃)34と掻込体35とを一対として複数対取り付けている。37は掻込刃34と掻込体35との間に介在させた円筒状のスペーサであり、掻込刃軸32に同芯円的に取り付けている。
【0027】
一方、切断刃軸33にはその軸線方向に一定の間隔を開けて切断刃(高速側切断刃)36を複数取り付けている。38は隣接する切断刃36同士の間に介在させた円筒状のスペーサであり、切断刃軸33に同芯円的に取り付けている。そして、対をなす掻込刃34と掻込体35との間には一定の間隙tを設けて、その間隙tに対向する切断刃36の刃先部36aを配置している。しかも、切断刃36の刃先部36aと掻込刃34の刃先部34aは、側面視でオーバーラップ(重合状態)させている。39は高速側の小径切断刃であり、小径切断刃39は切断刃軸33に同軸的に切断刃36と交互に取り付けている。
【0028】
ここで、図5に示すように、対向する切断刃36の刃先部36aと掻込刃34の刃先部34aは、側面視でオーバーラップさせるとともに、両刃先部34a,36aの研磨面34b,36b同士を近接させた研磨面合わせ状態(対面状態)に配置している。その結果、両刃先部34a,36aによる排藁の切断性能を向上させることができる。
【0029】
掻込刃軸32を挟んで切断刃軸33とは反対側にこれらの軸32,33と平行させて左右方向に伸延する支軸40を配設して、支軸40に複数のスクレーパ41を取り付けている。各スクレーパ41は、図7〜図10に示すように、上端部である基端部42と中途部43と後端部である先端部44とから形成している。基端部42は、側面視で、前後幅が細幅の四角形板状に形成している。中途部43は、側面視で、基端部42の下端縁部から下方及び後方へ末広がり状に膨出する板状に形成している。先端部44は、側面視で、スペーサ37の前半部外周面に沿わせて半円弧板状に形成した嵌合凹部である。基端部42の中央部には、左右方向に開口する軸挿通孔45を形成している。
【0030】
このようにして、支軸40に軸挿通孔45を介してスクレーパ41を支軸40の軸線方向に摺動自在かつ軸線廻りに回動自在に取り付けている。一方、各スクレーパ41の嵌合凹部である先端部44は、掻込刃34と掻込体35との間に位置するスペーサ37(又は掻込刃軸32)の外周半部に嵌合させて、掻込刃34と掻込体35との間にスクレーパ41を介在させている。
【0031】
支軸40は、左右一対の軸支持壁体30,31の前上部間に横架した支持体51に支持されている。すなわち、支持体51は左右方向に伸延する四角形筒状に形成している。支持体51の下面の左側部と中途部に断面鉤状の支持片52,53を垂設している。各支持片52,53には連結ブラケット54,55を連結ボルト56,57により着脱自在に連結している。各連結ブラケット54,55の内側端縁部には軸支片58,59を連設して、両軸支片58,59の側面同士を左右方向に対向させている。両軸支片58,59間に支軸40を着脱自在に架設している。60は抜け止めピンである。また、両軸支片58,59間には規制体70を架設状に一体的に連設している。
【0032】
規制体70は、図7〜図10に示すように、板バネ等の弾性復元力を有する素材で、前面形成片71と上面形成片72と後面形成片73とから一体的に形成している。前面形成片71は左右方向に伸延する板状に形成して、その後面が各スクレーパ41の基端部42の前端面に面接触するように形成している。上面形成片72は前面形成片71の上端縁部から後方へ略水平に伸延する板状に形成して、その下面が各スクレーパ41の基端部42の上端面に面接触するように形成している。後面形成片73は上面形成片72の後端縁部から下方へ略垂直に突出する板状に形成して、その前面が各スクレーパ41の基端部42の後端面に面接触するように形成している。規制体70の上部に前面形成片71と上面形成片72と後面形成片73とで上方へ凸状の矩形嵌合凹部78を形成している。
【0033】
このようにして、規制体70の上部に形成される矩形嵌合凹部78に、各スクレーパ41の上部である基端部42を下方から嵌入させることで、各スクレーパ41を左右方向に同一姿勢にて整然と配置することができるようにしている。
【0034】
前面形成片71の下端部には、下端から上方に向けて縦方向に切欠した切欠部74を左右方向に間隔を開けて複数形成している。ここで、切欠部74の間隔は、スクレーパ41の前端部の左右幅と略同一幅を有する第1間隔t1と、掻込刃34と掻込体35との間に介在させるスクレーパ41同士の間隔である第2間隔t2とから形成している。第1間隔t1と第2間隔t2は左右方向に交互に形成している。そして、第2間隔t2を開けて形成した前面形成片71の下端部は折曲片75となしている。
【0035】
折曲片75は先端が掻込刃34ないしは掻込体35に指向するように折曲させて形成し、隣接する折曲片75の側端面76同士でスクレーパ41の左右方向の位置決めと動きを規制している。
【0036】
第1間隔t1を開けて形成した前面形成片71の下端部は垂下片77となしている。垂下片77は掻込刃34と掻込体35との間に形成された間隙tと前後方向に対向させて配置して、垂下片77で支軸40を中心とするスクレーパ41の前方への回動を規制している。
【0037】
各スクレーパ41の基端部42の後端面に面接触する後面形成片73は係止片となしている。係止片で支軸40を中心とするスクレーパ41の後上方への回動を規制している。
【0038】
このようにして、規制体70の隣接する折曲片75間にスクレーパ41を配置すると共に、規制体70の上部に形成される矩形嵌合凹部78に、各スクレーパ41の上部である基端部42を下方から嵌入させる。そうすることで、各スクレーパ41を左右方向に同一姿勢にて整然と配置することができるとともに、各スクレーパ41の左右方向の動きと、支軸40を中心とする上下回動方向の動きを規制することができる。そして、各スクレーパ41の基端部42に形成した軸挿通孔45を左右方向に符合させることができる。かかる状態にて各スクレーパ41の軸挿通孔45に支軸40を貫通状態に挿通して、軸支片58,59間に支軸40を横架する。このように規制体70を介して支軸40に枢支した各スクレーパ41をユニットとする。そして、排藁処理室29の側壁である軸支持壁体30,31の前上部間に横架した支持体51に、支持片52,53を介して規制体70を横架状に固定する。そうすることで、スクレーパ41のユニットを掻込刃34と掻込体35との間に簡単かつ堅実に介在させることができる。
【0039】
ここで、本発明は、前記したように、対向する切断刃36の刃先部36aと掻込刃34の刃先部34aを、側面視でオーバーラップさせて両刃先部34a,36aの研磨面34b,36b同士を近接させた研磨面合わせ状態に配置することで、両刃先部34a,36aによる排藁の切断性能を向上させている。これは、規制体70の隣接する折曲片75の側端面76同士でスクレーパ41の左右方向の位置決めと動きの規制が堅実になされることから、研磨面34b,36b同士の近接配置が可能となる。しかも、掻込刃34と掻込体35の周縁部(先端縁部)同士が近接する先狭状態となるが、スクレーパ41は左右方向の位置決めと動きが規制されているため、スクレーパ41とこれら掻込刃34及び掻込体35の周縁部とが干渉するのを確実に回避することができる。
【0040】
図2〜図4及び図7に示すように、掻込刃軸32と切断刃軸33は、それぞれ左側の軸支持壁体30から外方へ左側端部32a,33aを延出させている。そして、掻込刃軸32の左側端部32aに入力側大径歯車80を取り付ける一方、切断刃軸33の左側端部33aに出力側小径歯車81を取り付けて、両歯車80,81を噛合させている。また、切断刃軸33の左側端部33aには入力プーリ82を取り付けて、入力伝動ベルト83を介してエンジン14と連動連結している。85は排藁処理室29の上部を開閉蓋する開閉蓋体である。
【0041】
このようにして、エンジン14→入力伝動ベルト83→入力プーリ82→切断刃軸33に動力を伝達して、切断刃軸33と一体的に高速側である切断刃36を図7において反時計廻りに回転させるようにしている。また、切断刃軸33→出力側小径歯車81→入力側大径歯車80→掻込刃軸32に動力を伝達して、掻込刃軸32と一体的に低速側である掻込刃34と掻込体35を図7において時計廻りに回転させるようにしている。そして、オーバーラップさせている切断刃36の刃先部36aと掻込刃34の刃先部34aとの間で搬送されてきた排藁を切断するようにしている。
【0042】
本発明に係る排藁処理部9の実施形態は上記のように構成しているものであり、排藁処理部9によれば次のような作用効果が生起される。
【0043】
すなわち、かかる排藁処理部9では、規制体70の下端部に形成した折曲片75の先端を掻込刃34ないしは掻込体35に指向させて、隣接する折曲片75の側端面同士でスクレーパ41の位置決めと左右方向の動きを規制することができるため、複数のスクレーパ41を複数対の掻込刃34と掻込体35との間隙tにそれぞれ簡単かつ堅実に配置することができる。そして、スクレーパ41の先端部に形成した嵌合凹部は、掻込刃34と掻込体35との間に位置する掻込刃軸32に同芯円的に取り付けたスペーサ37の外周前半部に堅実に嵌合させることができる。その結果、スクレーパ41の機能である掻込刃34と掻込体35との間隙tに排藁が侵入するのを阻止する機能を良好に確保することができる。
【0044】
しかも、規制体70の折曲片75間に形成した垂下片77でスクレーパ41の前方への回動を規制することができるため、次のような不具合の発生を回避することができる。すなわち、掻込刃軸32の外周半部に嵌合させたスクレーパ41の先端部44の嵌合凹部が、スクレーパ41の自重により前下方へ回動して掻込刃軸32の外周面に押圧状態に接触して摩耗する、さらには、掻込刃軸32に嵌合している嵌合凹部が外れる(嵌合解除)という不具合の発生を回避することができる。その結果、掻込刃軸32への嵌合凹部の嵌合状態を良好に保持することができて、スクレーパ41による排藁侵入阻止機能を確保することができる。ここで、折曲片75と垂下片77は、規制体70の下端部に縦方向の切れ目を入れて、折曲片75を折り曲げ形成することで、規制体70に折曲片75と垂下片77を同時に一体成形することができる。その結果、折曲片75と垂下片77を有する規制体70は、簡易な規制構造となすことができる。なお、規制体70は板バネ等の弾性復元力を有する素材で形成することで、特に、スクレーパ41の前方への回動を規制する垂下片77に弾性復元力を保持させることができる。
【0045】
さらには、係止片でスクレーパ41の上方への回動を規制することができるため、排藁の詰まり等によりスクレーパ41が上方へ回動される作用を受けた際にも、スペーサ37に嵌合している嵌合凹部が外れる(嵌合解除)という不具合の発生を回避することができる。その結果、掻込刃軸への嵌合凹部の嵌合状態を良好に保持することができて、この点からもスクレーパ41による排藁侵入阻止機能を確保することができる。また、折曲片75と垂下片77と係止片は折曲片75と垂下片77を同時に一体成形することができる。その結果、折曲片75と垂下片77と係止片を有する規制体70は、簡易な規制構造となすことができる。なお、規制体70は板バネ等の弾性復元力を有する素材で形成することで、特に、スクレーパ41の前方への回動を規制する垂下片77と、スクレーパ41の上方への回動を規制する係止片に弾性復元力を保持させることができる。
【符号の説明】
【0046】
A コンバイン
1 走行部
2 機体フレーム
3 刈取フレーム
9 排藁処理部
41 スクレーパ
70 規制体
75 折曲片
77 垂下片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本機の後部に装着するコンバインの排藁カッター装置において、
円板状の掻込刃と掻込体とを一対として複数対取り付けた掻込刃軸と、円板状の切断刃を複数取り付けた切断刃軸とを平行させて横架し、対をなす掻込刃と掻込体との間には一定の間隙を開けて、その間隙に対向する切断刃の刃先部を配置し、
掻込刃軸を挟んで切断刃軸とは反対側にはこれらの軸と平行させてスクレーパを複数取り付けた支軸を横架して、各スクレーパは基端部を支軸にその軸線方向に摺動自在に取り付ける一方、先端部に形成した嵌合凹部を掻込刃と掻込体との間に位置する掻込刃軸の外周半部に嵌合させて、掻込刃と掻込体との間にスクレーパを介在させた排藁カッター装置であって、
スクレーパの基端部の前端面に沿わせて、機体の幅方向に伸延する板状の規制体を配置し、規制体の下端部には機体の幅方向に間隔を開けて折曲片を形成するとともに、
折曲片は先端が掻込刃ないしは掻込体に指向するように折曲させて形成し、隣接する折曲片の側端面同士でスクレーパの位置決めと機体の幅方向の動きを規制したことを特徴とするコンバインの排藁カッター装置。
【請求項2】
前記折曲片間に垂下片を形成するとともに、垂下片は掻込刃と掻込体との間に形成された間隙と対向させて配置して、垂下片でスクレーパの前方への回動を規制したことを特徴とする請求項1記載のコンバインの排藁カッター装置。
【請求項3】
前記規制体は上端部をスクレーパの基端部の上端面と後端面に沿わせて折り曲げ状に伸延させて係止片を形成して、係止片でスクレーパの上方への回動を規制したことを特徴とする請求項1又は2記載のコンバインの排藁カッター装置。
【請求項4】
対向する切断刃の刃先部と掻込刃の刃先部は、側面視でオーバーラップさせるとともに、両刃先部の研磨面同士を研磨面合わせ状態に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコンバインの排藁カッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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