説明

コンバインの脱穀構造

【課題】本発明は、各種脱穀作業に適応できる切断刃付き送塵弁を備えて、脱穀性能や穀粒回収効率の向上を図ることにある。
【解決手段】脱穀装置5の扱胴16の上部を覆う扱室14の天板24に、扱胴16の回転駆動に伴って脱穀された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する複数の送塵弁49を装備し、この送塵弁49に、扱胴16の外周に対して遠近するように位置変更及び固定自在に扱胴16の回転に伴って脱穀処理物を切断する切断刃50を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の扱胴の上部を覆う扱室の天板に、扱胴の回転駆動に伴って脱穀された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する送塵弁を装備したコンバインの脱穀構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、扱室36に、供給された脱穀対象作物の搬送方向に沿って架設した扱胴軸心周りに回転駆動されることで脱穀対象作物に対して脱穀処理を施す扱胴(スクリューロータ21)を備え、前記扱胴21の上部を覆う前記扱室36の天板(ロータカバー37)に、前記扱胴21の回転駆動に伴って脱穀された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する複数の送塵弁38を装備し、その送塵弁38の下縁に切断刃(切刃38a)を形成したコンバインの脱穀構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−141047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場の性状や籾の品種によっては、茎稈の背丈が非常に長い場合や藁量が非常に多い場合がある。このように背丈の長い茎稈や藁量が多い脱穀対象作物を脱穀処理する場合、特許文献1に示されているように送塵弁38に切断刃38aを設けていると、切断刃38aによって排藁が切断されるので、排藁の移送がスムーズになるとともに、排藁の切断によって排藁がばらけるので、排藁中に混入している穀粒が排藁から離脱しやすくなって、脱穀された穀粒の回収率が向上する利点がある。
【0005】
しかし、扱室の前方側程、未脱穀のものが多く、未脱穀の状態で排藁が切断されると脱粒効率が低下することがある。稲穂の性状は、圃場の性状や籾の品種によって変わるが、圃場の性状や籾の品種は概して生産地によることが多い。したがって、生産地の異なる農家によって送塵弁に切断刃を多く設けた方が良い場合や切断刃を設けない方が良い場合がある。
又、普通型コンバインの場合、稲麦だけでなく、豆類の収穫作業をすることもあるが、豆類の場合は豆が切断刃に触れると傷つき品質が低下するので、極力切断刃がない方がよい。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みて、各種脱穀作業に適応できる切断刃付き送塵弁を備えた脱穀構造とすることによって、脱穀性能や穀粒回収効率の向上を図ることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、扱室に、供給された脱穀対象作物の搬送方向に沿って架設した扱胴軸心周りに回転駆動されることで脱穀対象作物に対して脱穀処理を施す扱胴を備え、前記扱胴の上部を覆う前記扱室の天板に、前記扱胴の回転駆動に伴って脱穀された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する複数の送塵弁を装備したコンバインの脱穀構造において、前記送塵弁に、前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更及び固定自在に、前記扱胴の回転に伴って脱穀処理物を切断する切断刃を設けてある。
【0008】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、切断刃を扱胴に近づけて、切断刃の刃部を送塵弁の下縁よりも下方に突出させておくことによって切断刃による切断機能が発揮される作用状態となり、切断刃を扱胴から遠ざけて、送塵弁の下縁よりも上方に移動させておくことによって切断刃による切断機能をなくす非作用状態とすることができる。
【0009】
<藁量の多い稲脱穀の場合>
切断刃を送塵弁の下縁下方に突出させた作用状態に設定したり、扱胴に接近した作用状態に設定したりすればよい。これによって、送塵弁で脱穀処理物を搬送方向下手側に搬送することを促進するとともに、その搬送過程で切断刃によって脱穀処理物の茎稈が切断され、茎稈の間に挟まれていた穀粒が開放され回収されるので、穀粒の回収効率を向上させることができる。
【0010】
<通常又は藁量の少ない稲脱穀の場合>
藁量に比べて穀粒の量が比較的多い場合は、作用状態ではあるが扱胴から少し離れた弱作用状態に設定したり、全ての切断刃を作用状態に設定しないで、脱穀処理物の搬送方向最下手側部分の切断刃に対してだけ作用状態に設定したりすればよい。これによって、長藁の状態を長く保ち、できるだけ扱胴による脱粒作用を継続させ、扱室の終端部で、切断刃で脱穀処理物の茎稈を切断させて茎稈の間に挟まれていた穀粒を開放させて回収する。
【0011】
<豆類の脱穀の場合>
切断刃を非作用状態に設定すればよい。これによって、豆類を切断刃で切断させないようにし、品質の向上を図る。
【0012】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、脱穀対象作物の種類、性状に応じて、送塵弁に取付けられた切断刃を作用状態、弱作用状態、又は非作用状態に切換えることができるので、脱穀対象作物に適合した効率のよい収穫を行うことができるに至った。
【0013】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記切断刃を、前記扱室の後部に装備した前記送塵弁に設けてある。
【0014】
〔第2発明の作用効果〕
扱室の全長に亘たる全ての送塵弁に対して切断刃を設けた場合は、これらを全て作用状態にしておくとすると、脱穀処理開始後、穀粒が脱穀(脱粒)されないで、直ぐに脱穀処理作物の茎部(茎稈)が切断されるようになり、脱穀不良が生じやすくなる。
これに対して、第2発明によれば、切断刃を、扱室の後部に形成した送塵弁に設けたので、脱穀不良を生じさせることがなく、しかも、扱室後端部で脱穀処理物を切断することによって脱穀処理物の茎稈に挟まっている穀粒を開放した後で、脱穀処理物が機外に放出されるので、穀粒の回収効率を向上させることができる。
【0015】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1または第2発明の構成において、前記切断刃を、前記送塵弁に着脱自在に構成してある。
【0016】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、切断刃の刃部の切れ味が悪くなったときは、切断刃の交換或いは刃部の研磨をすることができる。
【0017】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第3発明の構成において、前記切断刃の刃部を上下両側に形成して、前記切断刃を、上下反転して前記送塵弁に取付けられるように構成してある。
【0018】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、切断刃の刃部の切れ味が悪くなったときは、切断刃を上下反転させて刃部の変更を行うことができるので、刃部を片面に形成してあるのに比べて、切断刃を片刃に比べて倍長持ちする。
【0019】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第1乃至第4発明のいずれか一つの発明の構成において、前記切断刃を、一つの前記送塵弁に対してその長手方向に沿って複数個取り付けてある。
【0020】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によれば、一つの送塵弁に複数の切断刃を取付けてあるので、切断刃の作用状態と非作用状態とを細かく、多様に設定することができる。
【0021】
〔第6発明の構成〕
第6発明は、第1乃至第5発明のいずれか一つの発明の構成において、前記切断刃を、その長手方向の全長に亘り前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更可能に構成してある。
【0022】
〔第6発明の作用効果〕
第6発明によれば、切断刃の全体を作用状態に設定したり、非作用状態に設定することができる他、切断刃の刃部を部分的に送塵弁の下縁よりも扱胴側に突出するように設定することによって、切断刃を部分的に作用状態にすることができるので、所望の作用状態に設定することが可能である。
【0023】
〔第7発明の構成〕
第7発明は、第1乃至第5発明のいずれか一つの発明の構成において、前記切断刃を、前記扱胴の回転方向上手側端部を支点として他端部を前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更可能に構成してある。
【0024】
〔第7発明の作用効果〕
第7発明によれば、切断刃の一端側を枢支し、扱胴の回転方向下手側端部を、送塵弁の下縁に対して、非作用位置から作用位置に位置変更するだけで、作用状態に設定することができるので、作用状態と非作用状態との設定変更が容易で、しかも、作用状態となる切断刃の刃部の出代を所望の状態となるように容易に設定することができる。
【0025】
〔第8発明の構成〕
第8発明は、第1発明乃至第7発明のいずれか一つの発明の構成において、前記送塵弁を、正面視で扱胴軸心を通る鉛直線よりも扱胴回転方向上手側における前記天板の範囲で形成してある。
【0026】
〔第8発明の作用効果〕
第8発明によれば、送塵弁を扱室天板における扱胴軸心を通る鉛直線よりも扱胴回転方向上手側に設けてあるので、天板の扱胴回転上手側で、送塵弁によって、当該送塵弁に沿って移送される脱穀処理物が、天板の扱胴回転方向下手側で送塵弁から開放されて分散されるので、送塵弁によって脱穀処理物が扱胴軸心方向下手側に搬送されながらも扱室の下方では、送塵弁で進路が規制されていた脱穀処理物が分散されることによって、穀粒が回収しやすくなる。
【0027】
〔第9発明の構成〕
第9発明は、第1発明乃至第8発明のいずれか一つの発明の構成において、前記送塵弁における脱穀処理物を案内する案内面の角度を調節可能に構成してある。
【0028】
〔第9発明の作用効果〕
第9発明によれば、脱穀処理物の性状や処理物量に応じて、送塵弁の案内面の角度を調節することによって、扱胴一回転当たりの脱穀処理物の送り量を変更することができるので、脱穀処理物の性状や処理物量に応じた良好な脱穀処理を行うことができるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全稈投入形コンバインの左全体側面図である。
【図2】全稈投入形コンバインの全体平面図である。
【図3】全稈投入形コンバインの右全体側面図である。
【図4】脱穀装置の縦断側面図である。
【図5】扱室の構成を示す一部縦断正面図である。
【図6】扱室天板に取付けた送塵弁の構成を示す平面図である。
【図7】切断刃を備えた送塵弁の正面図である。
【図8】(a)は切断刃を作用状態にしてある送塵弁の縦断側面図、(b)は切断刃を非作用状態にしてある送塵弁の縦断側面図である。
【図9】穀粒搬出筒の格納用支持台の一部縦断正面図である。
【図10】(a)は2番還元機構の2番スクリューと縦スクリューの受け渡し部における2番処理羽根の仕切り板を開いた状態を示す一部縦断側面図、(b)は仕切り板を閉じた状態を示す一部縦断側面図である。
【図11】2番還元機構の2番スクリューと縦スクリューの受け渡し部を示す一部縦断背面図である。
【図12】穀粒搬送装置の駆動系を示す系統図である。
【図13】別実施の形態での送塵弁を示す一部縦断正面図である。
【図14】別実施の形態での送塵弁を示す一部縦断正面図である。
【図15】別実施の形態での送塵弁を示す一部縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には稲や麦などを収穫対象とする全稈投入形コンバインの全体左側面が、図2には全稈投入形コンバインの全体平面が、図3には全稈投入形コンバインの全体右側面がそれぞれ示されている。図1〜図3に示すように、このコンバインは、角パイプ鋼材などで形成した車体フレーム1に、エンジン2や図外の変速装置などを搭載し、車体フレーム1の下部に、変速装置などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される左右一対のクローラ式走行装置3を装備し、車体フレーム1の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置4を昇降揺動可能に連結し、車体フレーム1の左半部に、刈取搬送装置4からの刈取穀稈(脱穀対象作物)に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5を搭載し、車体フレーム1の右半部に、脱穀装置5からの穀粒を貯留する穀粒タンク40を備えた穀粒回収装置6を搭載し、車体フレーム1における穀粒回収装置6の前方箇所に搭乗運転部7を形成して構成されている。
【0031】
左右のクローラ式走行装置3は、搭乗運転部7に備えた操縦レバー8の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動されることで直進状態を現出し、それらが差動することで旋回状態を現出するように構成されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、刈取搬送装置4は、車体の走行に伴って、その前部左右両端に装備したデバイダ9が植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分け、その前部上方に配備した回転リール10が、左右のデバイダ9で梳き分けられた収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込み、その底部に装備したバリカン形の切断機構11が収穫対象の植立穀稈の株元側を切断し、切断機構11の後方に配備したオーガ12が、切断機構11による切断後の穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集めるとともに、その所定箇所において後方に向けて送り出し、その所定箇所から脱穀装置5の前上部にわたる搬送コンベヤからなるフィーダ13が、オーガ12からの刈取穀稈を脱穀装置5に向けて搬送するように構成されている。又、操縦レバー8の前後方向への揺動操作に基づいて、車体フレーム1とフィーダ13とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)が伸縮作動することで、脱穀装置5とフィーダ13との連結点を支点にして昇降揺動し、その昇降揺動で、植立穀稈に対する切断機構11の高さ位置を変更する刈り高さ調節を行えるように構成されている。
【0033】
図4及び図5に示すように、脱穀装置5は、その上部に形成した扱室14に、刈取穀稈(脱穀対象作物)の搬送方向に沿って架設した前後向きの扱胴軸15の軸心Qを支点にして回転する扱胴16を配備し、その扱胴16の下方に、扱胴16の下部側を下方から覆う正面視U字状に形成された受網17を装備し、脱穀装置5の脱穀処理方向下手側端部となる受網17の後方に排稈口18を形成し、受網17の下方に揺動選別機構19を設け、その揺動選別機構19の前下方に唐箕20を配備し、揺動選別機構19の前部側下方に1番回収部21を形成し、揺動選別機構19の後部側下方に2番回収部22を形成し、揺動選別機構19の後方に排出口23を形成し、扱胴16の上部側を上方から覆う天板24を備えて構成されている。
【0034】
扱室14は、扱胴16を覆う受網17や天板24などによって区画形成され、その前端下方部位に供給口25が形成され、その供給口25にフィーダ13の後端部が接続され、そのフィーダ13で搬送された刈取穀稈の全体が脱穀対象作物として供給口25から投入供給される。
【0035】
扱胴16は、その扱胴軸15が脱穀装置5の前壁26と後壁27とにわたって回転可能に架設され、エンジン2からの動力で扱胴軸心Qを支点にして正面視右回りに回転駆動されることで、扱室14に供給された刈取穀稈に対して脱穀処理を施して、穀粒の単粒化を促しながら、その刈取穀稈を脱穀処理方向下手側となる後方に向けて搬送する。
【0036】
受網17は、格子状に形成されたコンケーブ受網であり、扱室14に供給された刈取穀稈を受け止めて、刈取穀稈に対する扱胴16の脱穀処理を補助し、その脱穀処理で得られた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などを下方の揺動選別機構19に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構19への漏下を防止する。
【0037】
揺動選別機構19は、カム式の駆動機構28によって前後方向に揺動駆動されるシーブケース29の上部に、粗選別用のグレンパン30とチャフシーブ31とストローラック32とを、その順にシーブケース29の前側から配備し、シーブケース29の下部に、精選別用のグレンパン33とグレンシーブ34とを、その順にシーブケース29の前側から配備して構成されている。そして、単粒化穀粒や稈屑などが混在する状態で受網17から漏下した選別処理物を、上部のグレンパン30やチャフシーブ31あるいはストローラック32で受け止めて、篩い選別による粗選別処理を施し、かつ、単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが混在する状態でチャフシーブ31から漏下した選別処理物を、下部のグレンパン33やグレンシーブ34で受け止めて、篩い選別による精選別処理を施して、選別処理物を、1番物としての単粒化穀粒と、2番物としての枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物と、3番物としての稈屑などの塵埃とに選別する。
【0038】
唐箕20は、ベルト式の伝動機構(図示せず)を介して伝達されるエンジン2からの動力で、その支軸20Aを支点にして回転駆動されることで選別風を生起し、その選別風が、3つの風路R1〜R3を通って、受網17から漏下した選別処理物や、揺動選別機構19で選別される選別処理物などに向けて供給されることで、選別処理物に対して風力選別処理を施して、選別処理物から比重の小さい稈屑などを吹き分けて、脱穀処理方向下手側の排出口23に向けて搬送する。
【0039】
1番回収部21は、唐箕20からの選別風で藁屑などの塵埃が除去された状態で、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下した単粒化穀粒を、1番物として回収し、回収した1番物を、その底部に左右向きに配備した1番スクリュー36で、その右端に連通接続した揚送スクリュー37(図2参照)に向けて搬送する。
【0040】
2番回収部22は、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下せずにグレンシーブ34の後端から流下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物、及び、揺動選別機構19のストローラック32から漏下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物を2番物として回収し、回収した2番物を、その底部に左右向きに配備した2番スクリュー38で、その右端に連通接続した2番還元機構39(図2参照)に向けて搬送する。
【0041】
揚送スクリュー37は、1番スクリュー36で搬送された1番物を揚送して、穀粒回収装置6のグレンタンク40に供給する(図1及び図2参照)。2番還元機構39は、2番スクリュー38で搬送された2番物に対して再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、その再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構19に還元する(図2参照)。
【0042】
図10(a)及び(b)に示すように、2番スクリュー38の終端部に、2番還元機構39を構成する縦スクリュー筒39aと縦スクリュー39bを備えている。又、2番スクリュー38の終端部の下方に、2番スクリュー38で搬送された穀粒を縦スクリュー39bに向けて跳ね上げるための2番処理羽根102を設けており、2番処理羽根102の後方のカバー103側から、2番スクリュー38と2番処理羽根102との間を仕切る仕切り板104を挿脱固定自在に備えている。
【0043】
穀類を脱穀する場合は、前記仕切り板104を外して、穀粒を2番スクリュー38、2番処理羽根102、縦スクリュー39bの流れで、2番物が揺動選別機構19に還元される。大豆等の豆類を脱穀する場合は、仕切り板104を装着して、豆粒を2番スクリュー38、縦スクリュー39bの流れで、2番物が揺動選別機構19に還元される。
【0044】
排出口23は、受網17から漏下せずに排稈口18から流下する脱粒穀稈や、篩い選別処理や風力選別処理で揺動選別機構19の後方に選別搬送された稈屑などを車外に放出する。
【0045】
前記グレンタンク40は、タンク本体60の下部に貯留した穀粒を後方に向けて送り出す底スクリュー61を備えて構成されている。
また、図1及び図2に示すように、前記グレンタンク40の下部後端には、底スクリュー61の後端部を支承する搬出ケース62が連結されるとともに、グレンタンク40が搬出ケース62とともに上下向き軸心y回りで旋回可能に支持されている。
【0046】
前記タンク本体60の天井部63は、車体フレーム1上に位置しているタンク本体60の前部側の天井部63aよりも後部側の天井部63bが低くなるように形成されている。そして、低く形成された後部側の天井部63bに設けたメンテナンス用開口を蓋体64で閉塞するように構成してあるとともに、その蓋体64に、穀粒搬出装置65の穀粒搬出筒66を案内するためのガイド体67を設け、このガイド体67を手で持つことによりメンテナンス用開口の開閉操作が行い易くなるように構成してある。
【0047】
図1及び図2に示す穀粒排出筒66は、格納用支持台68を最下位置に下げた状態で穀粒搬出筒66を格納用支持台68に支持させた状態の図を示す。
【0048】
前記ガイド体67は、穀粒搬出装置65の穀粒搬出筒66が車体の上方を移動するに伴って、水平よりも下向き姿勢にある穀粒搬出筒66を上方側へ持ち上げ案内するように機能させるためのものであり、上下向き軸心y回りで旋回する穀粒搬出筒66が、車体上を移動する際に、横向き軸心x回りで上下揺動して、比較的機体上の高さが高いプレクリーナ69を交わして、機体上の格納用支持台68に載置させるようにするためのものである。
【0049】
図9に示すように、前記格納用支持台68は、脱穀装置5の左右横方向中間部に立設した筒状のステー71の上端に取り付けてある。ステー71は、上部ステー71aと上部ステー71aを内嵌する下部ステー71bとからなり、上部ステー71aは油圧シリンダ72からなるアクチュエータに支持されている。油圧シリンダ72のシリンダ筒72aは脱穀装置5の上面に固定されており、ピストン72bの先端部は上部ステー71aに取付けた支持体73に取付けられている。格納用支持台68に穀粒搬出筒66を載置したとき、ピストン72bを下降させることによって穀粒搬出筒66の前端高さを下げることができ、これにより、出荷搬送(コンテナ格納)の時などにコンバインの最大車高を低くすることができる。
【0050】
図1〜図3に示すように、前記グレンタンク40の後方には、底スクリュー61によって送出された穀粒を揚送した後に、横搬送して機外に搬出するスクリュー式の穀粒搬出装置65が装備されている。この穀粒搬出装置65は、グレンタンク40の後面下端に連通接続されたスクリュー式の縦搬送機構73と、この縦搬送機構73の上端に連通接続されたスクリュー式の横搬送機構74とから構成されており、穀粒搬出装置65全体が、縦搬送機構73のスクリュー軸心と同芯である上下向き軸心yを中心にして、搬出ケース62に対して旋回可能となっている。
【0051】
前記縦搬送機構73は、上下向き軸心yと同心位置に設けられる縦スクリュー75と、その縦スクリュー75を内装する縦送り筒76との組み合わせで構成してある。
前記縦送り筒76は、その下端側が搬出ケース62の上端側に接続されているとともに、その接続箇所の少し上部の外周にギヤ部77を備え、そのギヤ部77に咬合するピニオン78を備えた旋回用電動モータ79によって上下向き軸心y回りで旋回駆動されるように構成してある。旋回用電動モータ79は、搬出ケース62側に固定されている。
【0052】
前記底スクリュー61と縦スクリュー75とは連動機構80を介して連動連結されている。縦送り筒76の上端側には、上端ケース81が設けられ、この上端ケース81から縦搬送機構73の動力が横搬送機構74に伝達されるように構成されている。
【0053】
前記横搬送機構74は、縦送り筒76内を揚送された穀粒を受け取って外部へ搬出するための穀粒搬出筒66と、その穀粒搬出筒66内に設けられた搬送スクリュー82との組み合わせで構成してある。
前記穀粒搬出筒66は、縦送り筒76の上端ケース81から穀粒搬出方向の下手側に接続された横送り筒部83を備えており、穀粒搬出筒66内部に搬送スクリュー82を装備してある。
【0054】
前記横送り筒部83とこれと一体に揺動するアーム部材84とに亘って油圧シリンダ85の上端部を接続し、下端部を縦送り筒76の上端部に取り付けたシリンダ取付用ブラケット86に接続してある。
【0055】
図12に示すように、底スクリュー61へのベルト式の動力伝達系には穀粒搬出用クラッチ87が備えられている。この穀粒搬出用クラッチ87は、底スクリュー61のスクリュー軸61aをグレンタンク40前方に突出させ、スクリュー軸61aの前端に設けたプーリ61bとエンジン2の動力を受けるカウンターケース88から突出された伝動軸89のプーリ89aとに伝動ベルト90を巻回して、この伝動ベルト90をテンションローラ91で押圧作用させることにより動力が伝動ベルト90を介して底スクリュー61、縦スクリュー75及び搬送スクリュー82を駆動させるテンションクラッチに構成されている。穀粒搬出用クラッチ87は、搭乗運転部7に備えた穀粒搬出用レバー92の操作で入り切り操作が行われる。
【0056】
〔穀粒搬出装置の作動に関する構成〕
穀粒搬出装置65の上下向き軸心y回りでの旋回動作、及び横向き軸心x回りでの上下揺動は次のようにして行われる。
【0057】
図2及び図3に示すように、吸気ダクト93の前下がり姿勢の傾斜面における上部側にスイッチ操作具94を設けている。スイッチ操作具94は、上方側に設けた第1操作スイッチ94aと、下方側に設けた第2操作スイッチ94bとの組み合わせで構成されている。第1操作スイッチ94aが、穀粒搬出筒66の水平方向における旋回方向の左右何れかを選択操作するシーソースイッチであり、第2操作スイッチ94bが、穀粒搬出筒66の揺動方向を上下何れかに選択するシーソースイッチである。
【0058】
前記第1操作スイッチ94aを操作すると旋回用の電動モータ79が作動し、第2操作スイッチ94bを操作すると電磁弁95が制御され、油圧シリンダ85が伸縮作動して穀粒搬出筒66が上下動する。
【0059】
図12に示すように、前記電磁弁95と穀粒搬出筒66を昇降させる油圧シリンダ85との間の油路96に切換弁97を介装し、切換弁97で変更した油路98に緊急用の油圧モータ99を介装し、油圧モータ99の伝動軸100と底スクリュー61の前方に突出させたスクリュー軸61aとをカップリング101で連結してある。これにより、穀物搬出用クラッチ87を構成するテンションクラッチの伝動ベルト90が切れたり、クラッチ87が入り作動しなくなったときは、スイッチ操作具94で、穀粒搬出筒66を所望の排出姿勢にした後、切換弁97を切換えて緊急用の油圧モータ99を駆動することで、底スクリュー61、縦スクリュー75及び搬送スクリュー82を作動させて、グレンタンク40内の穀粒を機外に排出することができる。
【0060】
図4に示すように、扱胴16は、その前端部に装備した円錐台状の掻込部41と、その掻込部41の後端に連接した扱き処理部42とを備えて構成されている。掻込部41の外周面には、扱胴16の回転作動時に、供給口25から供給された刈取穀稈を後方の扱き処理部42に向けて掻き込み搬送する2枚の螺旋歯43が一体装備されている。
【0061】
扱き処理部42は、扱胴軸15の前部に一体装備した第1支持プレート44、扱胴軸15の前後中間部に一体装備した第2支持プレート45、扱胴軸15の後端部に一体装備した第3支持プレート46、それらの支持プレート44〜46によって、扱胴軸15に沿う前後向きの姿勢で、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てて並ぶように支持された丸パイプ鋼材などからなる6本の扱胴フレーム47、及び各扱胴フレーム47に扱胴フレーム47から扱胴16の外方に向けて突出する姿勢で前後方向に所定間隔を隔てて並ぶように装備した複数の扱歯48などによって籠状に構成されている。
【0062】
つまり、扱胴16は、その外方に向けて突出する複数の扱歯48が扱き処理部42の周方向と前後方向とに所定間隔を隔てて並ぶように整列配備され、又、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通してその内部空間Sへの脱穀処理物の入り込みを許容するようになっており、その結果、その回転作動時には、その周囲の脱穀処理物と内部空間Sに入り込んだ脱穀処理物とを攪拌しながら、それらの脱穀処理物に対して扱胴フレーム47や扱歯48の打撃や梳き込みなどによる脱穀処理を施すことになる。
【0063】
又、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通することで、大量の刈取穀稈が脱穀対象作物として扱室14に供給された場合であっても扱き処理部42の内部空間Sを脱穀処理用の処理空間として有効利用することができ、これによって、処理空間での脱穀処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。その結果、脱穀処理物の滞留や処理空間の飽和に起因した、十分な脱穀処理が行われないまま脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴16に対する伝動系が損傷するなどの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0064】
そして、扱胴16の回転作動時には、複数の扱歯48だけでなく、扱胴16の扱き処理部42を形成する6本の扱胴フレーム47までもが、脱穀処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0065】
しかも、扱胴16の前部側での脱穀処理によって、多くの穀粒が単粒化して受網17から漏下することで、脱穀処理物量が減少する扱胴16の前後中間部においては、第2支持プレート45が、扱胴16の内部空間Sでの脱穀処理物の脱穀処理方向下手側への流動を阻止し、扱胴16の回転とともに脱穀処理物を扱胴16の周囲に導いて、脱穀処理物に対する扱歯48などの打撃や梳き込みなどによる脱穀や、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促すようになることから、脱穀処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱粒穀稈などが扱胴16の内部空間Sを素通りして、脱粒穀稈とともに脱穀処理方向下手側端部の排稈口18から排出されることに起因した3番ロスの発生を阻止することができる。
【0066】
更に、扱胴16の回転作動時には、掻込部41の作用で掻き込み搬送される刈取穀稈とともに、螺旋歯43の回転に伴って供給口25から吸引された外気が、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sにスムーズに流動するようになり、これによって、脱穀処理によって発生した稈屑などの供給口25からフィーダ13への流出を防止することができるとともに、脱穀処理物の脱穀処理方向下手側への搬送をより速やかに行える。
【0067】
その上、供給口25から吸引される外気は、供給口25に接続されたフィーダ13の内部を通るものであり、そのフィーダ13は、切断機構11やオーガ12などを装備した刈取搬送装置4の刈取回収部に形成した回収穀稈搬出用の搬出口(図示せず)と供給口25とを連通するものであることから、扱胴16の回転作動時には、螺旋歯43の回転による吸引作用で、刈取回収部での刈取処理や回収処理で発生した稈屑などの塵埃も、外気とともに、刈取回収部の搬出口からフィーダ13の内部空間及び供給口25を介して、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sに流入することになる。その結果、刈取回収部での稈屑などの付着堆積や舞い上がりを抑制することができ、その付着堆積に起因した刈取穀稈の搬送不良や、その舞い上がりに起因した作業環境及び視界性の低下などを抑制することができる。
【0068】
各支持プレート44〜46は、扱胴軸心Qを中心とする円形で、その外周側における扱胴軸心Qからの等距離の位置に扱胴フレーム47がボルト連結されている。
【0069】
つまり、各支持プレート44〜46の外周側に、その周方向に一定間隔を隔てて並ぶ状態に6本の扱胴フレーム47を配備して、扱胴16の胴径を大きくするようにしているのであり、これによって、扱胴16に対する刈取穀稈の巻き付きを防止することができる。
【0070】
各扱胴フレーム47は、その前後方向を扱胴16の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴16の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に、かつ、隣り合う扱胴フレーム47との前後向きが逆になるように、各支持プレート44〜46にボルト連結されている。
【0071】
図4〜図6に示すように、天板24は、扱歯先端の回転軌跡Kに略沿って湾曲する湾曲部24A、その湾曲部24Aの前後両端に位置する半円状の縦壁部24B、及び、湾曲部24Aの左右に位置する一直線状の側縁部24Cなどを備え、扱胴16の上部側を上方から覆う閉状態と、扱胴16の上部側を開放する開状態とに左側の側縁部24Cに備えた複数のヒンジ24Dを支点にした開閉揺動操作が可能となるように構成されている。右側の側縁部24Cには、天板24を閉状態で固定する複数のボルト24Eが備えられている。
【0072】
湾曲部24Aの内面には、扱胴16の回転作動に伴って、扱室14の上部に搬送された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する複数の送塵弁49が、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶように固定装備されている。複数の送塵弁49のうち、最前の送塵弁49Aは、前側の縦壁部24Bから左側の側縁部24Cにわたる円弧状に形成され、他の送塵弁49B,49Cは、左右の両側縁部24Cに亘る長さで円弧状に形成されている。
送塵弁49は、正面視弧状で断面L形に形成されており、弧状の周部材491と扱胴軸心Qに垂直な(即ち、扱胴軸心Qの径方向に沿う方向の)案内部材492とを備えている。送塵弁49の周部材491と案内部材492とは一体形成されており、周部材491を天板24の湾曲部24Aの内面に沿わせた状態で湾曲部24Aにボルトで止着してある。
【0073】
図6〜図8に示すように、前記送塵弁49のうち、後半部の後3個の送塵弁49Cの後面(扱室14の後壁27側の面)には、排藁となった脱穀処理物を切断する切断刃50がボルト51により取付けられている。案内部材492には上下方向に長い長孔52が周方向に複数形成され、切断刃50にはボルト孔が長手方向(周方向)に複数形成されている。切断刃50は前記長孔52とボルト孔にボルト51を挿通した状態でナット53で締め付けて固定される。切断刃50は、前記ナット53で固定するときに、長孔52の範囲で、排塵弁49Cの案内部材492の内端縁492a(扱胴軸心Qを中心とする求心方向の端縁)より内側(扱胴軸心Qを中心とする求心方向)に突出する位置と突出しない位置とに亘って位置調節して固定することで、切断刃50の刃部50aの全長またはほぼ全長を案内部材492の内端縁492aより内側に突出させた全切断状態と、刃部50aの一部長さ(例えば刃部全長の半分程度の長さ)だけを案内部材492の内端縁492aより内側に突出させた部分切断状態と、刃部50aの全体を案内部材492の内端縁492aより上方に位置させた非切断状態とに位置変更固定自在に取付けることができる。全切断状態及び部分切断状態において、切断刃50の刃部50aが案内部材492の内端縁492aから突出する量を、長穴52に沿って大小に調節することができる。以下、切断刃50の全切断状態と部分切断状態と含めて切断状態と総称する。
【0074】
切断刃50を切断状態に設定することによって、ほぼ脱穀が完了されて排藁となった脱穀処理物が切断刃50で切断されるので、排藁の切断によって排藁が捌かれる。例えば、絡まっていた排藁が切断されると、排藁の細断によって絡まっていた排藁がばらばらになって排藁に絡んでいた籾が放たれて受網17を通して回収される。又、排藁が細断されることによって、扱歯48に絡んでいた排藁も細断によって外れやすくなり、扱室の後端部で排藁が停滞することなく、送塵弁49Cによる案内作用との相乗効果によって、排藁をスムーズに排稈口18に向けて移送して、排出することができる。その結果、送塵弁49Cに切断刃50を備えることによって、脱穀処理物に対する脱穀性能並びに搬送性能の向上を図ることができる。
【0075】
特に、藁量が多い場合や、茎稈が長い圃場での収穫作業においては、切断刃50を、切断状態にしておくことによって、非切断状態の場合よりも脱穀性能が向上する。
脱穀対象作物が、豆類の場合は、豆が切断刃50に触れると、傷ついたり切断されたりして、品質を落すことになる。したがって、豆類を脱穀する場合は、3筋の送塵弁49Cに取付けた切断刃50のうち前2筋の送塵弁49Cに取付けた切断刃50、又は3筋全ての送塵弁49Cに取付けた切断刃50を非切断状態にして脱穀処理をする。尚、豆類を脱穀する場合は、受網も孔の大きいものに変更されるとともに、その他必要な部品も変更される。
【0076】
各扱歯48の先端と各送塵弁49A,49Bの下縁との間、及び各扱歯48と送塵弁49Cに取付けた切断刃50との間には、小さいクリアランスが設定される。又、各扱歯48の先端と受網17の内縁との間には、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促進させるために、各扱歯48の先端と各送塵弁49の下縁との間に設定したクリアランスよりも大きいクリアランスが設定されている。
【0077】
〔別実施形態〕
(1)扱胴16としては、円筒状のプレートで形成されたドラム状に構成されたものであってもよい。
【0078】
(2)天板24に装備する全ての送塵弁49又は一部の送塵弁49を、天板24の左右いずれか一方の側縁部24C、又は、左右双方の側縁部24Cにわたらない短い長さに形成するようにしてもよい。
【0079】
(3)図13に示すように、天板24を多角形に形成し、送塵弁49Dを、正面視で扱胴軸心Qを通る鉛直線(中心線L)よりも扱胴回転方向上手側の天板部分24Fの範囲に形成して、この送塵弁49Dに図4及び図5に示す切断刃50を備えてもよい。前記送塵弁49Dは、平板状の天板部分24Fに支点56を中心として、図示しないモータの駆動により回動するように構成して、送塵弁49Dにおける脱穀処理物を案内する案内面の角度を、扱室14内の脱穀処理物量に応じた開度に、調節可能に構成して、脱穀性能や脱穀効率の向上を更に図れるようにしてもよい。
【0080】
(4)図14に示すように、切断刃50を、一つの送塵弁49に対してその長手方向に沿って複数個取り付けてもよい。又、切断刃50の取付け個数を、前方の送塵弁49よりも後方に位置する送塵弁49に対して多くし、後方ほど切断刃長を長くしてもよい。
【0081】
(5)図14では、切断刃50の刃部50aを上下両面に形成して、上下反転して送塵弁49に取付けられるように構成してある。
【0082】
(6)図14に示す切断刃50の刃部50aは、上下両面とも直線状に形成してあるが、送塵弁49の案内部材492の内端縁492aは扱胴16の外周にほぼ沿うように湾曲面に形成してあるので、切断刃50の上下両面の刃部50aもこれに沿うように湾曲形成してもよい。
【0083】
(7)切断刃50の長手方向の両端部にボルト孔を形成し、送塵弁49Cに上下方向(取付け状態での径方向)に長い長孔52Aを形成してあり、ボルト孔と長孔52Aにボルトを通して、長孔52Aの範囲で、案内部材492の内端縁492aからの刃部50aの左右両端の出代を調節してナット53Aで固定する。切断刃50の刃部50aの切れ味が悪くなったときは、切断刃50を取外し、上下反転して取付ける。
【0084】
(8)図15のように、切断刃50を扱胴16の回転方向下手側にピン孔57を形成し、扱胴16の回転方向上手側に長孔52Bを形成し、ピン孔57にボルト58を挿通してこれを支点軸とするとともに、前記長孔52Bによる融通の範囲で切断刃50を扱胴16に対して遠近するように位置変更可能に構成し、切断刃50をボルト支点58周りに揺動させて、刃部50aを扱胴16側に大きく近接させたときには、刃部50aの大部分が案内部材492の内端縁492aよりも下方に突出し、切断刃50を支点58周りに上方に移動させるに従って刃部50aの出代幅が短くなり、切断刃50を最上昇位置まで移動させると、刃部50aが内端縁492aより上方に移動して、非切断状態となるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、稲麦の穀物や、稗、粟、豆類を脱穀する普通型コンバインの他、刈り取った穀稈をフィードチェーンで挟持しながら脱穀する自脱型コンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0086】
14 扱室
16 扱胴
24 天板
49 送塵弁
49C 送塵弁
49D 送塵弁
50 切断刃
50a 刃部
L 縁直線
Q 扱胴軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室に、供給された脱穀対象作物の搬送方向に沿って架設した扱胴軸心周りに回転駆動されることで脱穀対象作物に対して脱穀処理を施す扱胴を備え、前記扱胴の上部を覆う前記扱室の天板に、前記扱胴の回転駆動に伴って脱穀された脱穀処理物を脱穀処理方向下手側に向けて案内する複数の送塵弁を装備したコンバインの脱穀構造において、
前記送塵弁に、前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更及び固定自在に、前記扱胴の回転に伴って脱穀処理物を切断する切断刃を設けてあるコンバインの脱穀構造。
【請求項2】
前記切断刃を、前記扱室の後部に装備した前記送塵弁に設けてある請求項1記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項3】
前記切断刃を、前記送塵弁に着脱自在に構成してある請求項1または2記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項4】
前記切断刃の刃部を上下両側に形成して、前記切断刃を、上下反転して前記送塵弁に取付けられるように構成してある請求項3記載のコンバインの脱穀装置。
【請求項5】
前記切断刃を、一つの前記送塵弁に対してその長手方向に沿って複数個取り付けてある請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項6】
前記切断刃を、その長手方向の全長に亘り前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更可能に構成してある請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項7】
前記切断刃を、前記扱胴の回転方向上手側端部を支点として他端部を前記扱胴の外周に対して遠近するように位置変更可能に構成してある請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項8】
前記送塵弁を、正面視で扱胴軸心を通る鉛直線よりも扱胴回転方向上手側における前記天板の範囲で形成してある請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンバインの脱穀構造。
【請求項9】
前記送塵弁における脱穀処理物を案内する案内面の角度を調節可能に構成してある請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンバインの脱穀構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−226989(P2010−226989A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76805(P2009−76805)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】