コンバイン被覆用シート
【課題】穀粒排出オーガーにシートを支持させ、コンバインを能率よく簡単に覆うと共に、風による煽りを抑制することができるコンバイン被覆用シートを提供する。
【解決手段】走行機台１ｂの一側に前処理部３と脱穀部５を、他側に操縦部７とグレンタンク９を設置し、グレンタンク９内の穀粒を穀粒排出オーガー１３によって排出するコンバイン１を覆う袋状のシート２に、該シート２の天井面２１の裏側に穀粒排出オーガー１３にシート２を係脱可能に固定するシート固定具２０を設けた。
【解決手段】走行機台１ｂの一側に前処理部３と脱穀部５を、他側に操縦部７とグレンタンク９を設置し、グレンタンク９内の穀粒を穀粒排出オーガー１３によって排出するコンバイン１を覆う袋状のシート２に、該シート２の天井面２１の裏側に穀粒排出オーガー１３にシート２を係脱可能に固定するシート固定具２０を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、穀粒排出オーガーを利用してコンバインを覆うことができるコンバイン被覆用シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前処理部と脱穀部を前後方向に設置し、他側に操縦部及び穀粒排出オーガーを有するグレンタンクを設置したコンバインを、雨水防止用の袋状シートで覆う作業を、旋回及び上下回動される穀粒排出オーガーを利用して行うものは特許文献１で示されるように既に公知である。
上記特許文献１のシート装着装置は、穀粒排出オーガーの前後両端側にシートを支持する支持装置を設け、該支持装置に地上からシートをセットした後で穀粒排出オーガーを格納姿勢となし、この状態においてセットされたシートを広げることができる支持装置を利用し、上方からコンバイン全体を覆う構成となっている。
【特許文献１】特開２００４−３３７０２３公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
上記特許文献１で示される装置はシート覆い作業を行うとき、穀粒排出オーガーに対し支持装置を予め装着しなければならないこと、またシートを折り畳んで支持装置にセットしなければならい等の煩雑な準備作業を必要とする欠点がある。
さらに、支持装置はシートの重量を支持するに十分な強度を有する枠組構造や、刈取作業を行う際に収納させる収縮構造等を備えるので、構造が複雑で重量も大きくなると共に製造コストも高くなる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
上記課題を解決するために本発明のコンバイン被覆用シートは、走行機台１ｂの一側に前処理部３と脱穀部５を、他側に操縦部７とグレンタンク９を設置し、上昇及び旋回する穀粒排出オーガー１３によってグレンタンク９内の穀粒を排出するコンバイン１を、穀粒排出オーガー１３の格納姿勢で覆う袋状のシート２において、該シート２の天井面２１の裏側に、穀粒排出オーガー１３にシート２を係脱可能に固定するシート固定具２０を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【０００５】
本発明によるコンバイン被覆用シートは次のような効果を奏する。地表に近接させた穀粒排出オーガーに対し地上からシートを掛けてシート固定具を介し簡単に位置決め支持することができる。また穀粒排出オーガーを操作しシートを吊り上げて格納姿勢にするとき、吊り上げられるシートはシート固定具によって滑りを防止して穀粒排出オーガーに支持することができるので、穀粒排出オーガーを利用して裾が広げ易くなり機体を能率よく簡単に被覆することができる。
また機体を被覆したシートは天井面が穀粒排出オーガーに固定されるので、風による煽りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００６】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号１は本発明のコンバイン被覆用シート（以下単にシートと言う）シート２によって覆われるコンバインである。このコンバイン１はクローラー式の走行装置１ａを備えた走行機台１ｂに、従来のものと同様に前処理部３と脱穀部５及び排藁切断部５ａ等の作業部を前後方向に配置し、前処理部３の後方で走行機台１ｂの右側にキャビン６で囲われる操縦部７と、穀粒排出オーガー装置８を備えたグレンタンク９を前後方向に配置している。
【０００７】
上記穀粒排出オーガー装置８はグレンタンク９の後部に立設される縦排出オーガー（穀粒縦送り筒）１０と、該縦排出オーガー１０の上部に構成される中継作動機構（穀粒中継筒）１１と、中継作動機構１１によって旋回及び上昇下降回動可能に取付支持され、先端部に穀粒排出口１２を有する穀粒排出オーガー（穀粒横送り筒）１３等からなる。
【０００８】
操縦部７は、キャビン６内で前側及び側方に機体の走行操作及び各作業機の操作を司る操作レバー類が配設され、且つ運転座席１６の後部スペースに、穀粒排出オーガー装置８の駆動及び旋回並びに上下回動操作を行う操作スイッチ１５を着脱可能に備えている。
この操作スイッチ１５は、オペレータが運転座席１６に座った状態で操作することができ、また後部スペースから外して機外に取り出した状態で、機体外側の任意位置から遠隔操作することができる。
【０００９】
上記構成からなるコンバイン１は、前処理部３で刈り取った穀稈を脱穀部５に搬送供給して脱穀を行い、脱穀選別された穀粒をグレンタンク９に収容し、且つ脱穀済の排藁を排藁切断部５ａに送り切断処理をして機外に排出することにより、一連のコンバイン作業を行う。
【００１０】
そして、グレンタンク９内に収容した穀粒の排出作業は、オペレータが機体停止状態でキャビン６内又は機外から操作スイッチ１５を操作し中継作動機構１１を作動させて、格納姿勢（位置Ｄ）にある穀粒排出オーガー１３を例えば図３，図４の実線で示す穀粒排出位置に移動停止させ、且つ穀粒排出オーガー装置８を駆動する。これによりグレンタンク９内の穀粒は穀粒排出オーガー１３の穀粒排出口１２から排出され、地上に準備される図示しない穀粒袋又は路上に待機するトラック等に収容することができる。
【００１１】
以上のように一連の作業を完了したコンバイン１は、圃場の適所においてシート２によって機体全体が被覆されて格納状態にされる。次に、コンバイン１をシート２によって被覆する作業について、図１〜図５を参照し説明する。図１で示されるように穀粒排出作業を終了したコンバイン１は、穀粒排出オーガー１３をキャビン６の左側適所に設置されるオーガー受具１９に移動して受け止め支持して格納される。
【００１２】
このとき穀粒排出オーガー１３は平面視において機体の右側後部から左側前部の対角線方向に位置した格納姿勢となる。
穀粒排出オーガー１３は長手方向に沿う上側表面に、後述する固定部としてのシート固定具２０を位置させる目印となる指標２０ａが付設されいる。
またコンバイン１を上方から覆う実施形態のシート２は、図２で示されるように在来のものと同様な箱形状の袋体としている。
【００１３】
即ち、このシート２は、コンバイン１の平面視形状と略同じ長方形の天井面２１と、その前後及び左右に位置する前壁面２２，後壁面２２ａ及び側壁面２３，２３を、逢着又は接着等の手段によって互いに接続することにより、下側が方形状に開口された袋体に形成される。さらにシート２は、その裾となる各壁面のコーナー下部と側辺下部の適所に、一般的な手段によって複数の止め紐２５，２５・・が設けられ、各止め紐２５を走行機台１ｂに突設される図示しないフックや前処理部３の分草杆等に結んで、シート下部の固定が行われる。
【００１４】
そして、シート２は天井面２１の裏側の略対角線、即ち格納姿勢にある穀粒排出オーガー１３の上側表面と対応する位置に沿って、所定間隔毎に前記シート固定具２０が設けられる。このシート固定具２０はシート２を上方から被せてコンバイン１の全体を覆った状態において、対応する例えば指標２０ａの位置で穀粒排出オーガー１３に固定することができる。これによりシート２は中央部となる天井面２１の対角線位置が機体に位置決めされ、シート全体を機体に正確に被せて支持することができるので、風による天井面２１の大きな煽りやバタつき等が抑制される。
【００１５】
上記シート固定具２０は図５で示されるように、各種の固定手段にすることができるが、この実施形態ではシート２側に設けた紐体２６を穀粒排出オーガー１３に巻き付けて紐結びする構造について説明する。尚、シート固定具２０は上記紐体２６に限ることなく同図で示すように、シート２側に取付けたリング状の係合具２７に対し、穀粒排出オーガー１３側に設けた可撓性を有するフック状の係止部２９を差し込み固定する構造、又は穀粒排出オーガー１３側に設けた係止テープ３０に対し、シート２側に設けた係合テープ３１を着脱可能に取付ける面ファスナー方式の固定構造にすることができる他、摩擦係合による滑り止め手段にすることもできる。
【００１６】
以上のように構成されるシート２によれば、穀粒排出作業を終了したコンバイン１は、その場所或いは機体格納場所において、穀粒排出オーガー１３を機体と略直角をなす位置で最下降させることにより、図３，図４で示されるような位置Ａにおいて地表に近接したシート掛け姿勢に停止することができる。
【００１７】
次いで、シート掛け姿勢にある穀粒排出オーガー１３の上部に沿って、地上からシート２を所定の姿勢に広げて二つ折り状に被せ、シート２の裏側に設置されたシート固定具２０，２０・・を位置決めする。こののち各紐体２６をそれぞれ穀粒排出オーガー１３の所定位置に紐結びする。このとき指標２０ａはシート２を穀粒排出オーガー１３に掛ける位置や方向或いは固定する位置を判断する目印として利用することができる。
【００１８】
次いで、オペレータは操作スイッチ１５を操作し、穀粒排出オーガー１３を上昇及び左側旋回し機体に近接させたシート吊り上げ位置Ｂで停止させる。これにより位置Ａで装着された重量のあるシート２は、穀粒排出オーガー１３によって高く持ち上げられ吊り上げ状態となるとき、シート固定具２０によって位置決め支持されているので穀粒排出オーガー１３に対しずれることなく、且つ自身の重量によって皺が伸ばされた状態で裾部を機体の上方に近接させ臨ませることができる。
【００１９】
これによりオペレータ又は補助者は、垂れ下がったシート２のコーナー部並びに裾を機体の輪郭に沿って大まかに被せることができる。次いで穀粒排出オーガー１３を再び操作し格納姿勢の位置Ｄの上方に一時停止すると、シート２はコンバイン１の全体を覆う適正位置に吊り上げ姿勢で支持させることができる。このとき吊り上げられたシート２は、４隅のコーナー部及び各側壁を機体の各対応する箇所に自由に引き寄せて、整え易くすることができる。
【００２０】
次いで、穀粒排出オーガー１３を下降操作しオーガー受具１９に支持させると、シート２の各部はそれぞれ所定の覆い位置に引き下げることができ、各止め紐２５を機体の適所に簡単に固定することができる。従って、シート２の下方を固定するシート下止め作業を能率よく正確に行うことができる。
【００２１】
このシート下止め作業において、シート２は天井面２１の平面視対角線方向となる中央部が、紐体２６によって穀粒排出オーガー１３に固定されているので、紐体２６を支点としシート２の下方の各箇所を適切に張り支持することができる。
またシート２の側壁の任意箇所を下方に引っ張って固定するとき、対向位置にある他方の側壁が徒に引き上げられたりめくれ上がる等の不具合を生じない等の利点がある。
【００２２】
上記のようにしてシート覆い作業が行われたシート２は、必要により長いロープを上方から巻き掛けて機体に対し密着させるように縛り固定することができるが、シート２は穀粒排出オーガー１３に予め固定しているので、天井面２１の固定が確実であり強風等によっても大きな煽りを防止することができる。また長いロープによる縛り固定の簡略化を図ることができる。
【００２３】
上記作業において操作スイッチ１５の操作は、操縦部７内及び操縦部７から外に取り出した遠隔操作によって行うことができると共に、操作スイッチ１５が有するマイコンの制御プログラムによって、手動モード操作と自動モード操作を選択することができる。
即ち、操作スイッチ１５は自動モードでスイッチ操作すると、旋回及び上下回動を自動的に行って穀粒排出オーガー１３を、位置Ｄから位置Ａに、また位置Ａから位置Ｄに選択作動することができる。
【００２４】
従って、位置Ａでシート２が掛けられた穀粒排出オーガー１３を、自動モードで位置Ｄの格納姿勢に移動させながらシート被覆作業を行うときは、例えばオペレータが操縦部７側から操作スイッチ１５の自動スイッチをワンタッチ操作したのち、地上に降りて移動する穀粒排出オーガー１３に追随移動しながら、上昇旋回によりシート２の天井部が機体上方に吊り上げられるシート２を機体に順次覆い掛けることができるので、一人で行う被覆作業を簡単に行うことができる。
尚、図示例のコンバイン１は穀粒排出オーガー１３を格納姿勢の位置Ｄから右旋回させキャビン６を越えてシート掛け姿勢の位置Ａにするものを示したが、同図の点線で示すように左旋回によって行う方式にすることもできる。
【００２５】
またシート２のシート固定具２０は複数設けたが、シート固定具２０は穀粒排出オーガー１３の少なくとも先端部の一か所に設けたものでもよい。この場合にもシート掛け作業を簡単に行うことができると共に、上記紐体２６はシート吊り上げ位置Ｂ等で穀粒排出オーガー１３の最高位となる先端部でシート２を支持するので、シート２の滑りやずり落ちをより簡潔で廉価な構成によって防止することができる。
またコンバイン作業を再開する際の機体を覆ったシート２の除去は、シート覆い作業の逆順の作業によって穀粒排出オーガー１３を利用してできるので、長大で重量のあるシート２を傷めることなく一人作業でもスムーズに取り外すことができる。
【００２６】
次に図６で示す別実施形態に係わるシート２及びシート覆い作業について説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。この例は穀粒排出オーガー１３を、例えば図４の位置Ｃで示される傾斜姿勢のように、キャビン６の天井部に支持することにより傾斜状態の格納姿勢にすることができる。
【００２７】
また穀粒排出オーガー１３は図３の位置Ｃで示されるように、平面視において機体の前後方向に沿って中央部乃至はキャビン６及びグレンタンク９寄りの格納姿勢とされる。
このとき穀粒排出オーガー１３の中途部を受け止め支持するオーガー受部３２は、キャビン６の天井後部を利用することが望ましく、この場合には該天井後部の角部を一部を凹入させて形成すると、オーガー受部３２を天井から突出させないで構成できる。
【００２８】
この際に使用するシート２は、その天井面２１を前記穀粒排出オーガー１３の先端部を頂点として後壁面２２ａに至る巾を有した三角形状に形成し、該天井面２１の各周辺に対しそれぞれ対応する左右の側壁面２３，２３及び前壁面２２，後壁面２２ａを接続することにより、全体として錐形状の袋体として形成されることが望ましい。尚、前壁面２２の中央部には両開き状に開閉可能とするファスナー等の開閉部を設けると、前壁面２２を開いた状態で穀粒排出オーガー１３に対し簡単にシート掛けをすることができる。
上記シート２は前記実施形態のものと同様に、天井面２１の裏側に穀粒排出オーガー１３に対向する位置に複数のシート固定具２０が設けられる。
【００２９】
以上のように構成されるシート２は、前記のようなシート覆い作業が完了されると、穀粒排出オーガー１３によって最高位にあるキャビン６の前側上方から支持されるので、穀粒排出オーガー１３をオーガー受部３２に支持した格納姿勢で、シート２の下辺を広げて機体全体を錐形状に覆うことができる。従って、シート２は穀粒排出オーガー１３を中心として機体の形状に沿って大きな弛みを防止して被覆することができ、錐形に沿って雨水の流下を促進しシート２に対する雨水溜まりを防止することができる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明に係わるシートで覆われたコンバインの全体を示す平面図である。
【図２】図１で使用するシートの構成を示す平面図である。
【図３】図１のコンバインのシート被覆作業を示す平面図である。
【図４】図３の作業を示す背面図である。
【図５】シート固定具の各種実施形態を示す斜視図である。
【図６】シートの別実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３１】
１ コンバイン
１ａ 走行装置
１ｂ 走行機台
２ シート
３ 前処理部
４ 脱穀部
７ 操縦部
８ 穀粒排出オーガー装置
９ グレンタンク
１３ 穀粒排出オーガー
２０ シート固定具
２１ 天井面
【技術分野】
【０００１】
本発明は、穀粒排出オーガーを利用してコンバインを覆うことができるコンバイン被覆用シートに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前処理部と脱穀部を前後方向に設置し、他側に操縦部及び穀粒排出オーガーを有するグレンタンクを設置したコンバインを、雨水防止用の袋状シートで覆う作業を、旋回及び上下回動される穀粒排出オーガーを利用して行うものは特許文献１で示されるように既に公知である。
上記特許文献１のシート装着装置は、穀粒排出オーガーの前後両端側にシートを支持する支持装置を設け、該支持装置に地上からシートをセットした後で穀粒排出オーガーを格納姿勢となし、この状態においてセットされたシートを広げることができる支持装置を利用し、上方からコンバイン全体を覆う構成となっている。
【特許文献１】特開２００４−３３７０２３公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
上記特許文献１で示される装置はシート覆い作業を行うとき、穀粒排出オーガーに対し支持装置を予め装着しなければならないこと、またシートを折り畳んで支持装置にセットしなければならい等の煩雑な準備作業を必要とする欠点がある。
さらに、支持装置はシートの重量を支持するに十分な強度を有する枠組構造や、刈取作業を行う際に収納させる収縮構造等を備えるので、構造が複雑で重量も大きくなると共に製造コストも高くなる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
上記課題を解決するために本発明のコンバイン被覆用シートは、走行機台１ｂの一側に前処理部３と脱穀部５を、他側に操縦部７とグレンタンク９を設置し、上昇及び旋回する穀粒排出オーガー１３によってグレンタンク９内の穀粒を排出するコンバイン１を、穀粒排出オーガー１３の格納姿勢で覆う袋状のシート２において、該シート２の天井面２１の裏側に、穀粒排出オーガー１３にシート２を係脱可能に固定するシート固定具２０を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【０００５】
本発明によるコンバイン被覆用シートは次のような効果を奏する。地表に近接させた穀粒排出オーガーに対し地上からシートを掛けてシート固定具を介し簡単に位置決め支持することができる。また穀粒排出オーガーを操作しシートを吊り上げて格納姿勢にするとき、吊り上げられるシートはシート固定具によって滑りを防止して穀粒排出オーガーに支持することができるので、穀粒排出オーガーを利用して裾が広げ易くなり機体を能率よく簡単に被覆することができる。
また機体を被覆したシートは天井面が穀粒排出オーガーに固定されるので、風による煽りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００６】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。符号１は本発明のコンバイン被覆用シート（以下単にシートと言う）シート２によって覆われるコンバインである。このコンバイン１はクローラー式の走行装置１ａを備えた走行機台１ｂに、従来のものと同様に前処理部３と脱穀部５及び排藁切断部５ａ等の作業部を前後方向に配置し、前処理部３の後方で走行機台１ｂの右側にキャビン６で囲われる操縦部７と、穀粒排出オーガー装置８を備えたグレンタンク９を前後方向に配置している。
【０００７】
上記穀粒排出オーガー装置８はグレンタンク９の後部に立設される縦排出オーガー（穀粒縦送り筒）１０と、該縦排出オーガー１０の上部に構成される中継作動機構（穀粒中継筒）１１と、中継作動機構１１によって旋回及び上昇下降回動可能に取付支持され、先端部に穀粒排出口１２を有する穀粒排出オーガー（穀粒横送り筒）１３等からなる。
【０００８】
操縦部７は、キャビン６内で前側及び側方に機体の走行操作及び各作業機の操作を司る操作レバー類が配設され、且つ運転座席１６の後部スペースに、穀粒排出オーガー装置８の駆動及び旋回並びに上下回動操作を行う操作スイッチ１５を着脱可能に備えている。
この操作スイッチ１５は、オペレータが運転座席１６に座った状態で操作することができ、また後部スペースから外して機外に取り出した状態で、機体外側の任意位置から遠隔操作することができる。
【０００９】
上記構成からなるコンバイン１は、前処理部３で刈り取った穀稈を脱穀部５に搬送供給して脱穀を行い、脱穀選別された穀粒をグレンタンク９に収容し、且つ脱穀済の排藁を排藁切断部５ａに送り切断処理をして機外に排出することにより、一連のコンバイン作業を行う。
【００１０】
そして、グレンタンク９内に収容した穀粒の排出作業は、オペレータが機体停止状態でキャビン６内又は機外から操作スイッチ１５を操作し中継作動機構１１を作動させて、格納姿勢（位置Ｄ）にある穀粒排出オーガー１３を例えば図３，図４の実線で示す穀粒排出位置に移動停止させ、且つ穀粒排出オーガー装置８を駆動する。これによりグレンタンク９内の穀粒は穀粒排出オーガー１３の穀粒排出口１２から排出され、地上に準備される図示しない穀粒袋又は路上に待機するトラック等に収容することができる。
【００１１】
以上のように一連の作業を完了したコンバイン１は、圃場の適所においてシート２によって機体全体が被覆されて格納状態にされる。次に、コンバイン１をシート２によって被覆する作業について、図１〜図５を参照し説明する。図１で示されるように穀粒排出作業を終了したコンバイン１は、穀粒排出オーガー１３をキャビン６の左側適所に設置されるオーガー受具１９に移動して受け止め支持して格納される。
【００１２】
このとき穀粒排出オーガー１３は平面視において機体の右側後部から左側前部の対角線方向に位置した格納姿勢となる。
穀粒排出オーガー１３は長手方向に沿う上側表面に、後述する固定部としてのシート固定具２０を位置させる目印となる指標２０ａが付設されいる。
またコンバイン１を上方から覆う実施形態のシート２は、図２で示されるように在来のものと同様な箱形状の袋体としている。
【００１３】
即ち、このシート２は、コンバイン１の平面視形状と略同じ長方形の天井面２１と、その前後及び左右に位置する前壁面２２，後壁面２２ａ及び側壁面２３，２３を、逢着又は接着等の手段によって互いに接続することにより、下側が方形状に開口された袋体に形成される。さらにシート２は、その裾となる各壁面のコーナー下部と側辺下部の適所に、一般的な手段によって複数の止め紐２５，２５・・が設けられ、各止め紐２５を走行機台１ｂに突設される図示しないフックや前処理部３の分草杆等に結んで、シート下部の固定が行われる。
【００１４】
そして、シート２は天井面２１の裏側の略対角線、即ち格納姿勢にある穀粒排出オーガー１３の上側表面と対応する位置に沿って、所定間隔毎に前記シート固定具２０が設けられる。このシート固定具２０はシート２を上方から被せてコンバイン１の全体を覆った状態において、対応する例えば指標２０ａの位置で穀粒排出オーガー１３に固定することができる。これによりシート２は中央部となる天井面２１の対角線位置が機体に位置決めされ、シート全体を機体に正確に被せて支持することができるので、風による天井面２１の大きな煽りやバタつき等が抑制される。
【００１５】
上記シート固定具２０は図５で示されるように、各種の固定手段にすることができるが、この実施形態ではシート２側に設けた紐体２６を穀粒排出オーガー１３に巻き付けて紐結びする構造について説明する。尚、シート固定具２０は上記紐体２６に限ることなく同図で示すように、シート２側に取付けたリング状の係合具２７に対し、穀粒排出オーガー１３側に設けた可撓性を有するフック状の係止部２９を差し込み固定する構造、又は穀粒排出オーガー１３側に設けた係止テープ３０に対し、シート２側に設けた係合テープ３１を着脱可能に取付ける面ファスナー方式の固定構造にすることができる他、摩擦係合による滑り止め手段にすることもできる。
【００１６】
以上のように構成されるシート２によれば、穀粒排出作業を終了したコンバイン１は、その場所或いは機体格納場所において、穀粒排出オーガー１３を機体と略直角をなす位置で最下降させることにより、図３，図４で示されるような位置Ａにおいて地表に近接したシート掛け姿勢に停止することができる。
【００１７】
次いで、シート掛け姿勢にある穀粒排出オーガー１３の上部に沿って、地上からシート２を所定の姿勢に広げて二つ折り状に被せ、シート２の裏側に設置されたシート固定具２０，２０・・を位置決めする。こののち各紐体２６をそれぞれ穀粒排出オーガー１３の所定位置に紐結びする。このとき指標２０ａはシート２を穀粒排出オーガー１３に掛ける位置や方向或いは固定する位置を判断する目印として利用することができる。
【００１８】
次いで、オペレータは操作スイッチ１５を操作し、穀粒排出オーガー１３を上昇及び左側旋回し機体に近接させたシート吊り上げ位置Ｂで停止させる。これにより位置Ａで装着された重量のあるシート２は、穀粒排出オーガー１３によって高く持ち上げられ吊り上げ状態となるとき、シート固定具２０によって位置決め支持されているので穀粒排出オーガー１３に対しずれることなく、且つ自身の重量によって皺が伸ばされた状態で裾部を機体の上方に近接させ臨ませることができる。
【００１９】
これによりオペレータ又は補助者は、垂れ下がったシート２のコーナー部並びに裾を機体の輪郭に沿って大まかに被せることができる。次いで穀粒排出オーガー１３を再び操作し格納姿勢の位置Ｄの上方に一時停止すると、シート２はコンバイン１の全体を覆う適正位置に吊り上げ姿勢で支持させることができる。このとき吊り上げられたシート２は、４隅のコーナー部及び各側壁を機体の各対応する箇所に自由に引き寄せて、整え易くすることができる。
【００２０】
次いで、穀粒排出オーガー１３を下降操作しオーガー受具１９に支持させると、シート２の各部はそれぞれ所定の覆い位置に引き下げることができ、各止め紐２５を機体の適所に簡単に固定することができる。従って、シート２の下方を固定するシート下止め作業を能率よく正確に行うことができる。
【００２１】
このシート下止め作業において、シート２は天井面２１の平面視対角線方向となる中央部が、紐体２６によって穀粒排出オーガー１３に固定されているので、紐体２６を支点としシート２の下方の各箇所を適切に張り支持することができる。
またシート２の側壁の任意箇所を下方に引っ張って固定するとき、対向位置にある他方の側壁が徒に引き上げられたりめくれ上がる等の不具合を生じない等の利点がある。
【００２２】
上記のようにしてシート覆い作業が行われたシート２は、必要により長いロープを上方から巻き掛けて機体に対し密着させるように縛り固定することができるが、シート２は穀粒排出オーガー１３に予め固定しているので、天井面２１の固定が確実であり強風等によっても大きな煽りを防止することができる。また長いロープによる縛り固定の簡略化を図ることができる。
【００２３】
上記作業において操作スイッチ１５の操作は、操縦部７内及び操縦部７から外に取り出した遠隔操作によって行うことができると共に、操作スイッチ１５が有するマイコンの制御プログラムによって、手動モード操作と自動モード操作を選択することができる。
即ち、操作スイッチ１５は自動モードでスイッチ操作すると、旋回及び上下回動を自動的に行って穀粒排出オーガー１３を、位置Ｄから位置Ａに、また位置Ａから位置Ｄに選択作動することができる。
【００２４】
従って、位置Ａでシート２が掛けられた穀粒排出オーガー１３を、自動モードで位置Ｄの格納姿勢に移動させながらシート被覆作業を行うときは、例えばオペレータが操縦部７側から操作スイッチ１５の自動スイッチをワンタッチ操作したのち、地上に降りて移動する穀粒排出オーガー１３に追随移動しながら、上昇旋回によりシート２の天井部が機体上方に吊り上げられるシート２を機体に順次覆い掛けることができるので、一人で行う被覆作業を簡単に行うことができる。
尚、図示例のコンバイン１は穀粒排出オーガー１３を格納姿勢の位置Ｄから右旋回させキャビン６を越えてシート掛け姿勢の位置Ａにするものを示したが、同図の点線で示すように左旋回によって行う方式にすることもできる。
【００２５】
またシート２のシート固定具２０は複数設けたが、シート固定具２０は穀粒排出オーガー１３の少なくとも先端部の一か所に設けたものでもよい。この場合にもシート掛け作業を簡単に行うことができると共に、上記紐体２６はシート吊り上げ位置Ｂ等で穀粒排出オーガー１３の最高位となる先端部でシート２を支持するので、シート２の滑りやずり落ちをより簡潔で廉価な構成によって防止することができる。
またコンバイン作業を再開する際の機体を覆ったシート２の除去は、シート覆い作業の逆順の作業によって穀粒排出オーガー１３を利用してできるので、長大で重量のあるシート２を傷めることなく一人作業でもスムーズに取り外すことができる。
【００２６】
次に図６で示す別実施形態に係わるシート２及びシート覆い作業について説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。この例は穀粒排出オーガー１３を、例えば図４の位置Ｃで示される傾斜姿勢のように、キャビン６の天井部に支持することにより傾斜状態の格納姿勢にすることができる。
【００２７】
また穀粒排出オーガー１３は図３の位置Ｃで示されるように、平面視において機体の前後方向に沿って中央部乃至はキャビン６及びグレンタンク９寄りの格納姿勢とされる。
このとき穀粒排出オーガー１３の中途部を受け止め支持するオーガー受部３２は、キャビン６の天井後部を利用することが望ましく、この場合には該天井後部の角部を一部を凹入させて形成すると、オーガー受部３２を天井から突出させないで構成できる。
【００２８】
この際に使用するシート２は、その天井面２１を前記穀粒排出オーガー１３の先端部を頂点として後壁面２２ａに至る巾を有した三角形状に形成し、該天井面２１の各周辺に対しそれぞれ対応する左右の側壁面２３，２３及び前壁面２２，後壁面２２ａを接続することにより、全体として錐形状の袋体として形成されることが望ましい。尚、前壁面２２の中央部には両開き状に開閉可能とするファスナー等の開閉部を設けると、前壁面２２を開いた状態で穀粒排出オーガー１３に対し簡単にシート掛けをすることができる。
上記シート２は前記実施形態のものと同様に、天井面２１の裏側に穀粒排出オーガー１３に対向する位置に複数のシート固定具２０が設けられる。
【００２９】
以上のように構成されるシート２は、前記のようなシート覆い作業が完了されると、穀粒排出オーガー１３によって最高位にあるキャビン６の前側上方から支持されるので、穀粒排出オーガー１３をオーガー受部３２に支持した格納姿勢で、シート２の下辺を広げて機体全体を錐形状に覆うことができる。従って、シート２は穀粒排出オーガー１３を中心として機体の形状に沿って大きな弛みを防止して被覆することができ、錐形に沿って雨水の流下を促進しシート２に対する雨水溜まりを防止することができる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明に係わるシートで覆われたコンバインの全体を示す平面図である。
【図２】図１で使用するシートの構成を示す平面図である。
【図３】図１のコンバインのシート被覆作業を示す平面図である。
【図４】図３の作業を示す背面図である。
【図５】シート固定具の各種実施形態を示す斜視図である。
【図６】シートの別実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３１】
１ コンバイン
１ａ 走行装置
１ｂ 走行機台
２ シート
３ 前処理部
４ 脱穀部
７ 操縦部
８ 穀粒排出オーガー装置
９ グレンタンク
１３ 穀粒排出オーガー
２０ シート固定具
２１ 天井面
【特許請求の範囲】
【請求項１】
走行機台（１ｂ）の一側に前処理部（３）と脱穀部（５）を、他側に操縦部（７）とグレンタンク（９）を設置し、上昇及び旋回する穀粒排出オーガー（１３）によってグレンタンク（９）内の穀粒を排出するコンバイン（１）を、穀粒排出オーガー（１３）の格納姿勢で覆う袋状のシート（２）において、該シート（２）の天井面（２１）の裏側に、穀粒排出オーガー（１３）にシート（２）を係脱可能に固定するシート固定具（２０）を設けたコンバイン被覆用シート。
【請求項１】
走行機台（１ｂ）の一側に前処理部（３）と脱穀部（５）を、他側に操縦部（７）とグレンタンク（９）を設置し、上昇及び旋回する穀粒排出オーガー（１３）によってグレンタンク（９）内の穀粒を排出するコンバイン（１）を、穀粒排出オーガー（１３）の格納姿勢で覆う袋状のシート（２）において、該シート（２）の天井面（２１）の裏側に、穀粒排出オーガー（１３）にシート（２）を係脱可能に固定するシート固定具（２０）を設けたコンバイン被覆用シート。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００６−２５４７６０（Ｐ２００６−２５４７６０Ａ）
【公開日】平成１８年９月２８日（２００６．９．２８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−７５３３３（Ｐ２００５−７５３３３）
【出願日】平成１７年３月１６日（２００５．３．１６）
【出願人】（０００００１８７８）三菱農機株式会社 (1,502)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年９月２８日（２００６．９．２８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年３月１６日（２００５．３．１６）
【出願人】（０００００１８７８）三菱農機株式会社 (1,502)
【Ｆターム（参考）】
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