説明

コンバイン

【課題】 走行機体に脱穀装置5と穀粒タンク7とを横並び状に搭載し、脱穀装置5と穀粒タンク7との間に、一番物を穀粒タンク7に搬送するための揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒33と、二番物を脱穀装置5内に戻すための還元コンベヤを内蔵した還元筒34とを設けたコンバインにおいて、悪条件での刈取作業時に詰まる可能性のある還元筒34のメンテナンス性を向上させる。
【解決手段】 揚穀筒33は、脱穀装置5の一側壁5aに近い側に配置する。還元筒34は、穀粒タンク7に近い側(脱穀装置5の一側壁5aから遠い側)に揚穀筒33と交差して延びるように配置する。還元筒34の始端寄りの部位には、メンテナンス用の窓穴を穀粒タンク7に向けて開口させ、この窓穴を着脱式又は開閉式のカバー体102で塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取られた穀稈を脱穀して、該脱穀物から精粒を選別・収集するコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインの走行機体には、穀稈を脱穀する扱胴、揺動選別機構及び風選別機構を有する脱穀装置と、穀粒タンクとが横並び状に搭載されている。脱穀装置と穀粒タンクとの間には、一番物(脱穀後の精粒)を穀粒タンクに搬送するための揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒と、二番物(枝梗付き穀粒や穂切れ粒等)を前記脱穀装置内に戻すための還元コンベヤを内蔵した還元筒とが設けられている。
【0003】
この種のコンバインの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のコンバインでは、揚穀筒と還元筒とが各々連通接続する対象に近い側に配置されている。すなわち、脱穀装置と穀粒タンクとの間において脱穀装置に近い側に、前後方向に延びる還元筒が配置され、穀粒タンクに近い側(脱穀装置から遠い側)に、上下方向に延びる揚穀筒が配置されている。揚穀筒と還元筒とは側面視で互いに交差している。
【特許文献1】特開2003−92919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、揚穀筒内は精粒等の一番物が通過するのに対して、還元筒内は精粒だけでなく枝梗や藁屑等も含む二番物が通過するため、揚穀筒よりも還元筒の方が詰まり易い傾向にある。還元筒内で枝梗等の詰まりが生じた場合は、穀粒タンクを取り外す等して還元筒を露出させたのち、例えば脱穀装置から還元筒を取り外して、還元筒内に詰まった枝梗や藁屑等を取り除かなければならない。
【0005】
しかし、前記従来の構成では、作業者(穀粒タンク側)から見て還元筒より手前に、揚穀筒が還元筒と交差した状態で位置しているため、詰まり除去作業を行うに際しては、揚穀筒が邪魔になって、作業者の手が還元筒にまで届きにくく、還元筒を取り外す等の作業に手間がかかるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、詰まり易い還元筒のメンテナンス性を向上させたコンバインを提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、走行機体に、穀稈を脱穀する扱胴、揺動選別機構及び風選別機構を有する脱穀装置と、穀粒タンクとが横並び状に搭載され、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間には、一番物を前記穀粒タンクに搬送するための揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒と、二番物を前記脱穀装置内に戻すための還元コンベヤを内蔵した還元筒とが設けられているコンバインであって、前記揚穀筒は前記脱穀装置に近い側に配置され、前記還元筒は前記脱穀装置から遠い側に前記揚穀筒と交差して延びるように配置されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記還元筒の始端寄りの部位には、メンテナンス用の窓穴を前記穀粒タンクに向けて開口させ、前記窓穴が着脱式又は開閉式のカバー体で塞がれているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のコンバインにおいて、前記揚穀筒は上下方向に延びた形態である一方、前記還元筒は前記揚穀筒と交差して前後方向に延びた形態であり、前記還元筒の終端部と前記脱穀装置における前記揺動選別機構の上方箇所とは、左右横長筒状の二番処理ケースを介して連通させ、前記二番処理ケースには、前記二番処理ケースの軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵されているというものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、走行機体に脱穀装置と穀粒タンクとが横並び状に搭載され、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間に、一番物を前記穀粒タンクに搬送するための揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒と、二番物を前記脱穀装置内に戻すための還元コンベヤを内蔵した還元筒とが設けられたコンバインに関するものである。前記揚穀筒内は精粒等の一番物が通過するのに対して、前記還元筒内は精粒だけでなく枝梗や藁屑等も含む二番物が通過するため、前記揚穀筒よりも前記還元筒の方が詰まり易い傾向にある。
【0011】
そこで、請求項1のように構成すると、前記揚穀筒が前記脱穀装置に近い側に配置され、前記還元筒は前記脱穀装置から遠い側に前記揚穀筒と交差して延びるように配置されているので、前記穀粒タンクを取り外す等すれば、作業者(前記穀粒タンク側)から見て前記揚穀筒より手前側に前記還元筒が現れ、作業者の手を前記還元筒に簡単に届かせることができる。これにより、前記還元筒内の詰まり除去等のメンテナンス作業がし易くなるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の構成によると、前記還元筒の始端寄りの部位には、メンテナンス用の窓穴を前記穀粒タンクに向けて開口させ、前記窓穴が着脱式又は開閉式のカバー体で塞がれているので、いちいち前記還元筒全体を前記脱穀装置から取り外したりしなくても、前記カバー体を取り外すか又は開けて、前記還元筒内に詰まった枝梗や藁屑等を手早く取り除くことができる。また、前記カバー体の取り付け又は閉止も簡単に行える。従って、前記還元筒に対するメンテナンス作業に要する手数を大幅に低減でき、このメンテナンス作業の容易性をより向上させることができるという効果を奏する。
【0013】
請求項3の構成においては、前記揚穀筒が上下方向に延びた形態である一方、前記還元筒が前記揚穀筒と交差して前後方向に延びた形態となっている。そして、前記還元筒の終端部と前記脱穀装置における前記揺動選別機構の上方箇所とは、左右横長筒状の二番処理ケースを介して連通させ、前記二番処理ケースには、前記二番処理ケースの軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵されている。このように構成すると、前記揚穀筒と前記還元筒との配置関係上、前記脱穀装置における前記穀粒タンク寄りの一側部と前記還元筒との間が離れているので、前記二番処理ケースにおける軸線方向(左右横方向)の長さを長くすることができる。これにより、再脱穀のために二番物が前記二番処理ケース内を移動する距離が十分に確保されることになり、前記二番処理胴による二番物の再脱穀機能の向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図10)に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの正面図、図4は脱穀装置の側面断面図、図5はコンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図、図6は脱穀装置の正面断面図、図7は脱穀装置における右側部付近の平面断面図、図8は脱穀装置に対する二番処理ケースの配置態様を示す斜視図、図9は揚穀筒と還元筒との配置関係を示す斜視図、図10は還元筒からカバー体を取り外した状態を示す側面図である。なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0015】
はじめに、図1〜図4を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。
【0016】
本実施形態のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。穀粒タンク7は、走行機体1の後部に設けられた縦軸(実施形態では後述する排出オーガ8の縦オーガ筒9、図1及び図2参照)回りに水平回動可能に構成されている。刈取前処理装置3と穀粒タンク7との間には、操向レバーや運転座席等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方には、動力源としてのエンジン11が配置されている。
【0017】
刈取前処理装置3には、下部フレームの下方に、バリカン式の刈刃装置12が設けられている。下部フレームの前方には、3条分の穀稈引起装置13が配置されている。穀稈引起装置13とフィードチェーン6の前端部との間には、穀稈搬送装置14が配置されている。穀稈引起装置13の下部前方には分草体15が突設されている。
【0018】
脱穀装置5は、扱室16内に配置された穀稈脱穀用の扱胴17と、扱室16の下方に配置された揺動選別機構18及び風選別機構19とを備えている。扱胴16の回転軸20(図4〜図6参照)はフィードチェーン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。脱穀装置5の下部には、両選別機構18,19にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物が集まる一番受け樋21と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物が集まる二番受け樋22とが設けられている。本実施形態の両受け樋21,22は、走行機体1の進行方向前側から一番受け樋21、二番受け樋22の順で、側面視において走行クローラ2,2の後部上方に横設されている。
【0019】
刈取前処理装置3から搬送された穀稈の根元部はフィードチェーン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先部が扱室16内の扱胴17にて脱穀される。
【0020】
揺動選別機構18は、扱胴17の下方に張設された扱網23、前後一対のフィードパン24,25及びチャフシーブ26等による脱穀物の搖動選別を行うためのものである。風選別機構19は、フィードパン24,25群の下方に設けられた唐箕ファン27による脱穀物の風選別を行うためのものである。
【0021】
扱胴17にて脱穀され扱網23から漏れ落ちた脱穀物は、扱網23の下方で前後揺動する前後一対のフィードパン24,25上に落下して揺動選別をされながら、後方のチャフシーブ26に送られる。このとき、フィードパン24,25やチャフシーブ26上の脱穀物は唐箕ファン27から後ろ向きに流れる選別風を受ける。かかる揺動選別と風選別との相互作用により、脱穀物は穀粒と藁屑とに分離される。
【0022】
穀粒のうち精粒等の一番物は、チャフシーブ26の下方に設けられたグレンシーブ28を通過して、流穀板等に案内されながら一番受け樋21内に集められる。枝梗付き穀粒等の二番物は、グレンシーブ28を通り抜けできずに、一番受け樋21の後方にある二番受け樋22に集められる。藁屑は、脱穀装置5の後部に配置された吸引ファン29に吸い込まれたのち、脱穀装置5の後部に設けられた排出口30から機外へ排出される。
【0023】
一番受け樋21には、これに沿う横方向に一番物を搬送する一番コンベヤ31が内装されている。二番受け樋22には、これに沿った横方向に二番物を搬送する二番コンベヤ32が内装されている。
【0024】
一番受け樋21のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5a(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀筒33が連通接続されている。二番受け樋22のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5aから外向きに突出した終端部には、環状の取り付け座76(図7参照)を介して、揚穀筒33と交差して前後方向に延びる還元筒34が連通接続されている。従って、揚穀筒33及び還元筒34は脱穀装置5と穀粒タンク7との間に位置している。
【0025】
本実施形態では、揚穀筒33と還元筒34とが互いに干渉しないように、脱穀装置5の一側壁5aに近い側に揚穀筒33が配置され、穀粒タンク7に近い側(脱穀装置5の一側壁5aから遠い側)に還元筒34が配置されている(図6、図7及び図9参照)。
【0026】
揚穀筒33内には、一番物を穀粒タンク7に向けて運ぶための揚穀コンベヤ35が設けられている。還元筒34内には、二番物を揺動選別機構18に戻し搬送するための還元コンベヤ36が設けられている。
【0027】
揚穀筒33の終端部(上端部)は、穀粒タンク7を水平回動にて脱穀装置5に近接させた作業姿勢のときに、穀粒タンク7における脱穀装置5寄りの一側部(実施形態では左側部)に形成された受け入れ口(図示せず)に連通するように構成されている。
【0028】
還元筒34の終端部(前端部)と、脱穀装置5の一側壁5a(実施形態では右側壁)のうち第1フィードパン24の上方箇所とは、二番物を再脱穀する二番処理胴81が内蔵された二番処理ケース80を介して連通している。
【0029】
一番受け樋21に集められた一番物は、一番コンベヤ31及び揚穀コンベヤ35を介して穀粒タンク7に集積される。穀粒タンク7内の一番物は、排出オーガ8を介して機外(例えばトラックの荷台等)に搬出される。二番受け樋22に集められた二番物は、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36及び二番処理胴81を介して、脱穀装置5内の第1フィードパン24上に戻され再選別される。
【0030】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン37に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ38(図5参照)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0031】
次に、図5を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0032】
エンジン11の動力は、該エンジン11に突設された出力軸41から、左右両走行クローラ2,2を駆動させる走行ミッション装置42、脱穀装置5及び刈取前処理装置3、並びに排出オーガ8という3つの方向に分岐して伝達される。
【0033】
走行ミッション装置42は、油圧ポンプ及び油圧モータからなる走行用HST式変速機構43と、同じく油圧ポンプ及び油圧モータからなる旋回用HST式変速機構44とを備えている。エンジン11の出力軸41から走行ミッション装置42に向かう分岐動力は、走行用HST式変速機構43の走行用ポンプ軸45に伝達され、この走行用ポンプ軸45から旋回用HST式変速機構44の旋回用ポンプ軸46に動力伝達される。
【0034】
走行用及び旋回用のいずれのHST式変速機構43,44においても、ポンプ軸45,46に伝達された動力にて、油圧ポンプから油圧モータに向けて圧油が適宜送り込まれる。そして、運転部10に設けられた操向レバーの操作量に応じて油圧ポンプにおける回転斜板の傾斜角度を調節することにより、油圧モータへの圧油の吐出方向及び吐出量が変更され、走行用又は旋回用モータ軸(図示せず)の回転方向及び回転数、ひいては左右の走行クローラ2,2の駆動速度及び駆動方向が任意に調節される。
【0035】
エンジン11の出力軸41から排出オーガ8への分岐動力は、タンク入力軸47を介して、穀粒タンク7内の底コンベヤ48及び排出オーガ8における縦オーガ筒9内の縦コンベヤ49に動力伝達され、次いで、受け継ぎスクリュー50を介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ51に動力伝達される。
【0036】
エンジン11の出力軸41から脱穀装置5及び刈取前処理装置3に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ52を介して唐箕ファン27の唐箕軸53に伝達され、この唐箕軸53から2つの方向に分岐して動力伝達される。
【0037】
唐箕軸53からの動力の一方は、一番コンベヤ31及び揚穀コンベヤ35、二番コンベヤ32及び還元コンベヤ36、吸引ファン29の吸引軸54、並びに排稈カッタ38に動力伝達される。
【0038】
唐箕軸53からの他の動力は、扱胴入力軸55を介して刈取前処理装置3、扱胴17、及び二番処理胴81という更に3つの方向に分岐して伝達される。
【0039】
扱胴入力軸55から刈取前処理装置3への分岐動力は一旦刈取変速機構56に伝達され、その一部が揺動軸57及びフィードチェーン軸58を経て、フィードチェーン6の前端に動力伝達される。残りの分岐動力は刈取軸59から刈取クラッチ60を介して刈取入力軸61に伝達され、刈取入力軸61から刈取前処理装置3の各部に動力伝達される。
【0040】
本実施形態では、刈取入力軸61に伝達された動力は、縦伝動軸62を介して横伝動軸63に伝達され、次いで、横伝動軸63から、3つの引起伝動軸64と刈刃駆動軸65とに動力伝達される。各引起伝動軸64に伝達された動力は、引起スプロケット軸66及びこれに固定された引起スプロケット67を介して、穀稈引起装置13の各引起タイン(図示せず)を駆動させる。刈刃駆動軸65に伝達された動力は、刈刃装置12を駆動させることになる。
【0041】
左右の引起伝動軸64からは、隣接する引起伝動軸64,64の間に配置された下部搬送駆動軸68にも動力が分岐して伝達される。左下部搬送駆動軸68に伝達された動力は、これに固定された左駆動スプロケット69を介して、穀稈搬送装置14の左下部搬送チェーン70、穀稈引起装置13における左側のスターホイル71及び掻き込みベルト72を駆動させる。右下部搬送駆動軸68に伝達された動力は、これに固定された右駆動スプロケット69を介して、穀稈搬送装置14の右下部搬送チェーン70、穀稈引起装置13における右側と中央とのスターホイル71及び掻き込みベルト72を駆動させる。
【0042】
また、刈取入力軸61に伝達された動力は、縦軸73を経由して、穀稈搬送装置14の縦搬送チェーン、上部搬送タイン(共に図示せず)、及び穂先搬送タイン74にも分岐して伝達される。
【0043】
一方、扱胴入力軸55から扱胴17に向かう分岐動力は、扱胴17の回転軸20、及び排稈チェーン37に伝達される。扱胴入力軸55から二番処理胴81に向かう分岐動力は、処理胴入力軸75から、ベルト77及びプーリ78伝動により二番処理胴81の回転軸82に伝達される(図5、図7及び図9参照)。
【0044】
次に、図6〜図10を参照しながら、揚穀筒、還元筒及び穀粒タンクの配置関係について説明する。
【0045】
前述の通り、揚穀筒33及び還元筒34は、脱穀装置5と穀粒タンク7との間に、互いに干渉しない状態で側面視で互いに交差するように配置されている。揚穀筒33は、脱穀装置5の一側壁5aに近い側に配置されている一方、還元筒34は、穀粒タンク7に近い側(脱穀装置5の一側壁5aから遠い側)に配置されている。
【0046】
還元筒34の始端部(後端部)と、二番受け樋22のうち脱穀装置5の一側壁5aから外向きに突出した終端部とは、環状の取り付け座76を介して連通している。また、還元筒34の終端部(前端部)と、脱穀装置5の一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所とは、二番物を再脱穀する二番処理胴81が内蔵された二番処理ケース80を介して連通している。従って、揚穀筒33における中途部の外周は、平面視において脱穀装置5の一側壁5aと取り付け座76と還元筒34と二番処理ケース80とで囲まれている(図7参照)。
【0047】
このように、脱穀装置5と穀粒タンク7との間において、揚穀筒33を脱穀装置5の一側壁5aに近い側に配置し、還元筒34を脱穀装置5の一側壁5aから遠い側に揚穀筒33と交差して延びるように配置する構成を採用すると、グレンタンク仕様の場合であっても、穀粒タンク7を水平外向きに開き回動させれば、作業者(穀粒タンク7側)から見て揚穀筒33より手前側に、詰まり易い還元筒34が現れるから、作業者の手は還元筒34に簡単に届くことになる。これにより、還元筒34内の詰まり除去等のメンテナンス作業がし易くなるのである。
【0048】
還元筒34における始端から長手中央までの部位には、穀粒タンク7に向けて開口したメンテナンス用の窓穴103が形成されている。この窓穴103は着脱式又は開閉式のカバー体102で塞がれている。
【0049】
本実施形態では、還元筒34における始端から長手中央までの部位は還元コンベヤ36を半周だけ囲う半割り筒状部101となっている。そして、この半割り筒状部101における穀粒タンク7向きの開口がメンテナンス用の窓穴103となっている(図7及び図10参照)。
【0050】
図7に示すように、本実施形態のカバー体102は、還元筒34の半割り筒状部101に対応して、同じく半割り筒型に形成されたものである。このカバー体102は、還元筒34の半割り筒状部101に対して着脱可能(取り付け・取り外し可能)に構成されている。この場合、カバー体102の長手両縁部には、フランジ105,105が外向きに折り曲げ形成されている一方、還元筒34における半割り筒状部101の長手両縁部には、カバー体102のフランジ105に重なる受け片104,104が外向きに折り曲げ形成されている。互いに対応する受け片104とフランジ105とを重ね合わせ、これら重なり合った部分104,105がボルト及びナットで締結される。このようにして、還元コンベヤ36における始端から長手中央までの部位が半割り筒状部101とカバー体102とで覆われている。
【0051】
上述のように、還元筒34の始端寄りの部位には、メンテナンス用の窓穴103を穀粒タンク7に向けて開口させ、この窓穴103を着脱式又は開閉式のカバー体102で塞ぐ構成を採用すると、いちいち還元筒34全体を脱穀装置5から取り外したりしなくても、カバー体102を取り外すか又は開けて、還元筒34内に詰まった枝梗や藁屑等を手早く取り除くことができる。また、カバー体102の取り付け又は閉止も簡単に行える。従って、還元筒34に対するメンテナンス作業に要する手数を大幅に低減でき、当該メンテナンス作業の容易性をより向上させることができるのである。
【0052】
穀粒タンク7は、合成樹脂を素材としてブロー成形法等にて製造された略箱型のものである。穀粒タンク7における脱穀装置5寄りの側端上部は、穀粒タンク7が図2及び図6に実線で示す作業姿勢のときに揚穀筒33に近接して還元筒34に上方から被さるオーバーハング状に張り出した形態となっている。逆の見方をすると、このオーバーハング状の張り出し部106の存在により、穀粒タンク7における脱穀装置5寄りの側端下部は、内向きに凹ませた凹み部107となっている。穀粒タンク7を作業姿勢にした状態では、穀粒タンク7の凹み部107と揚穀筒33との間に、還元筒34の穀粒タンク7に対する干渉を回避するための空間が形成されることになる(図6参照)。
【0053】
この構成によると、穀粒タンク7における脱穀装置5寄りの側端上部に形成された張り出し部106は、作業姿勢時に還元筒34の上方にあるデッドスペースに位置するので、かかるデッドスペースを有効利用して、走行機体1全体としての横幅寸法を大きくすることなく、張り出し部106の分だけ穀粒タンク7の容積(収容量)を拡大することができる。
【0054】
還元筒34の終端部と、脱穀装置5の一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所とを連通接続する二番処理ケース80は、左右横長の筒状に形成されたものである。図6及び図7に示すように、二番処理ケース80は、脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所に形成された嵌合穴85に嵌め込んで、脱穀装置5の内外に跨るように配置されている。この場合、二番処理ケース80の軸線80aは、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと平面視で交差する方向(左右横方向)に延びている。二番処理ケース80の軸線80aが延びる方向は、揚穀筒33と還元筒34との横並び方向と同じ方向である(図6及び図7参照)。
【0055】
二番処理ケース80のうち脱穀装置5より外側に位置する側端部は蓋板84で塞がれている。また、二番処理ケース80における脱穀装置5より外側の外周上部には、上向きに開口する投入口(図示せず)が形成されている。この投入口に対して還元筒34の終端部が連通接続されている。この構成により、還元コンベヤ36にて還元筒34の終端部まで運ばれた二番物は二番処理ケース80内にスムーズに落下することになる。
【0056】
二番処理ケース80のうち脱穀装置5の内部に位置する側端部には、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと平面視で交差する方向(左右横方向)に開口する放出口89を備えている。そして、かかる放出口89より外周側に、少なくとも第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wの下流側を覆う遮断板90が設けられている。この遮断板90は、二番処理胴81の回転にて形成される風等の影響で、再脱穀後の二番物が二番処理ケース80の放出口89から前記搬送方向Wの下流側に流れることを遮るためのものである。
【0057】
本実施形態では、遮断板90は二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部から前記搬送方向Wに平面視で交差する方向(左右横方向)に延出している。すなわち、遮断板90は二番処理ケース80における放出口89側の側端部(放出口89の周縁部)に一体的に連設されている。
【0058】
また、脱穀装置5内から遮断板90を見ると、遮断板90は第1フィードパン24における前記搬送方向Wの上流側に向けて斜め下向きに湾曲した形態となっている。特に、本実施形態における遮断板90の側面視形状は、放出口89の外周をほぼ囲うようにC字状に形成されている(図6〜図8参照)。換言すると、遮断板90の側面視形状は、二番処理胴81の回転方向R(詳細は後述する)に沿った円弧状となっている。遮断板90における周方向の両縁部間には、二番処理ケース80の内部を第1フィードパン24の前部表面に臨ませるための切欠き部91が、第1フィードパン24における前記搬送方向Wの上流側(前方)に向けて斜め下向きに開口している。本実施形態の遮断板90は、側面視において放出口89の外周のうち切欠き部91を除く270°前後の範囲を囲っている。
【0059】
さらに、本実施形態では、二番処理ケース80における放出口89側の側端部(遮断板90を延出した側)が、脱穀装置5の一側壁5aに形成された嵌合穴85に対して外側から嵌め込まれている。そして、二番処理ケース80は脱穀装置5に対して着脱可能に締結されている。この場合、二番処理ケース80の外周面に形成されたフランジ86を脱穀装置5の一側壁5aに当接させ、フランジ86の外面側(脱穀装置5と反対側に位置する端面側)から脱穀装置5の一側壁5aに向けて取り付けボルト87をねじ込んでいる。
【0060】
二番処理ケース80の内部には、二番物を再脱穀するための二番処理胴81が設けられている。二番処理胴81は、第1フィードパン24による脱穀物の搬送方向Wと交差する方向(左右横方向)に延びる回転軸82を備えている。この二番処理胴81の回転軸82の延びる方向は、扱胴17の回転軸20の延びる方向と交差(略直交)している。二番処理胴81はその回転軸82回りに回転可能に構成されている。二番処理胴81の回転方向Rは図8で反時計回りとなるように設定されている。二番処理胴81の外周面には多数の回転歯83が半径方向外向きに突設されている一方、二番処理ケース80の内周面には複数のツースバー88(図7参照)が半径内向きに突設されている。回転歯83とツースバー88とは、二番処理胴81をその回転軸82回りに回転させたときに互いに干渉しない位置関係となるように設定されている。
【0061】
本実施形態では、二番処理胴81における回転軸82の一端部は、蓋板84に対して回転可能に軸支されている。回転軸82のうち蓋板84から外向きに突出する部分には、動力伝達用のプーリ78が固着されている。回転軸82の他端部は、遮断板90の内周側にボルト締めにて固定された支持アーム93に対して回転可能に軸支されている。すなわち、二番処理胴81の回転軸82は、蓋板84と支持アーム93との間に両持ち梁状に架け渡された状態で安定的に支持されている。
【0062】
上述のように、揚穀筒33を上下方向に延びた形態とする一方、還元筒34を揚穀筒33と交差して前後方向に延びた形態とし、還元筒34の終端部と、脱穀装置5の一側壁5aのうち第1フィードパン24の上方箇所とを、左右横長筒状の二番処理ケース80を介して連通接続する構成を採用すると、揚穀筒33と還元筒34との配置関係上、脱穀装置5の一側壁5aと還元筒34との間が離れているので、二番処理ケース80の軸線80a方向の長さを前記従来の場合よりも長くすることができる。
【0063】
特に、本実施形態では、二番処理胴81における回転軸82の他端部を遮断板の内周側に固定された支持アーム93に対して回転可能に軸支する構成が採用されているので、二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部から遮断板90が延出する長さ分も含めて、二番処理胴81の回転軸82の長さや、二番処理ケース80a全体としての軸線80a方向の長さを長くすることができる。
【0064】
これにより、再脱穀のために二番物が二番処理ケース80内を移動する距離が十分に確保されることになり、二番処理胴81による二番物の再脱穀機能の向上を図ることができる。
【0065】
脱穀装置5における右側壁5aの内面のうち二番処理ケース80の上方箇所には、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに突出する庇状部材92が設けられている。庇状部材92は、平面視において二番処理ケース80における脱穀装置5内の側端部(遮断板90を含む)のほぼ全体を覆い隠している。この庇状部材92の存在により、二番処理ケース80における脱穀装置5内への突出部分上に脱穀物や塵埃が堆積するのを防止している。庇状部材92自身は、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに傾斜しているので、庇状部材92の傾斜面に載ろうとした脱穀物や塵埃のほとんどは、第1フィードパン24上に滑り落ちることになる。
【0066】
なお、本実施形態の庇状部材92は、脱穀装置5内に向けて斜め下向きに傾斜すると共に、後方斜め下向きにも傾斜している。かかる傾斜により、庇状部材92に向けて飛んできた脱穀物を第1フィードパン24の後部に向けて落下させて、第1フィードパン24上に落下する脱穀物の分散化を図っている。
【0067】
本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】脱穀装置の側面断面図である。
【図5】コンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図である。
【図6】脱穀装置の正面断面図である。
【図7】脱穀装置における右側部付近の平面断面図である。
【図8】脱穀装置に対する二番処理ケースの配置態様を示す斜視図である。
【図9】揚穀筒と還元筒との配置関係を示す斜視図である。
【図10】還元筒からカバー体を取り外した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 走行機体
2 走行クローラ
5 脱穀装置
5a 一側壁
6 フィードチェーン
17 扱胴
18 揺動選別機構
19 風選別機構
24 第1フィードパン
25 第2フィードパン
26 チャフシーブ
27 唐箕ファン
28 グレンシーブ
31 一番コンベヤ
32 二番コンベヤ
33 揚穀筒
34 還元筒
35 揚穀コンベヤ
36 還元コンベヤ
80 二番処理ケース
81 二番処理胴
82 二番処理胴の回転軸
101 半割り筒状部
102 カバー体
103 窓穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に、穀稈を脱穀する扱胴、揺動選別機構及び風選別機構を有する脱穀装置と、穀粒タンクとが横並び状に搭載され、前記脱穀装置と前記穀粒タンクとの間には、一番物を前記穀粒タンクに搬送するための揚穀コンベヤを内蔵した揚穀筒と、二番物を前記脱穀装置内に戻すための還元コンベヤを内蔵した還元筒とが設けられているコンバインであって、
前記揚穀筒は前記脱穀装置に近い側に配置され、前記還元筒は前記脱穀装置から遠い側に前記揚穀筒と交差して延びるように配置されていることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記還元筒の始端寄りの部位には、メンテナンス用の窓穴を前記穀粒タンクに向けて開口させ、前記窓穴が着脱式又は開閉式のカバー体で塞がれていることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記揚穀筒は上下方向に延びた形態である一方、前記還元筒は前記揚穀筒と交差して前後方向に延びた形態であり、前記還元筒の終端部と前記脱穀装置における前記揺動選別機構の上方箇所とは、左右横長筒状の二番処理ケースを介して連通させ、前記二番処理ケースには、前記二番処理ケースの軸線回りに回転可能な二番処理胴が内蔵されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−68403(P2007−68403A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255405(P2005−255405)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】