説明

コンバイン

【課題】刈取部の昇降動作の操作性を向上させる。
【解決手段】制御部100には、メイン昇降スイッチ46からの操作入力信号と、微調整昇降スイッチ39からの操作入力信号とが入力されている。制御部100は、主変速レバーに設置されたメイン昇降スイッチ46の操作内容と、ステアリングホイール33に設置された微調整昇降スイッチ39の操作内容とが異なる場合には、脱穀クラッチのオンオフ信号を参照して、刈取時には、刈取部3を上昇移動させ、非刈取時には、刈取部3を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降可能に設置された刈取部を備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインとして、クローラ式の走行装置を備え、機体前部に運転部を備え、運転部の前方に刈取部を備え、刈取部にて刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置を備え、機体に対して刈取部を昇降して刈高さを調節可能としたものが知られている。このコンバインの運転部では、運転席の前方に回転式ハンドルなどの操向操作具が配置されており、側方に主変速レバーや副変速レバー等のレバー類、及び、各種スイッチ等が纏めて配置されているが、係るコンバインの中には、主変速レバーおよび操向操作具に、刈取部を昇降させる刈高さ調節スイッチ等の操作手段類が配設されたものがある(例えば、特許文献1参照)。刈高さ調節スイッチを主変速レバーにも操向操作具にも配置すれば、オペレータが、主変速レバーを握ったままで刈高さを調節できるようになるうえ、運転操作中に操向操作具を握ったままでも刈高さを調節できるようになるため、刈高さ調節を行う際の操作性が向上する。
【特許文献1】特開2000−37123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、主変速レバーおよび操向操作具の両方に、刈取部を昇降させる操作手段が設置されていると、主変速レバーに設置された昇降操作手段に入力された操作と、ハンドルなどの操向操作具に設置された操作手段に入力された操作とが異なる場合があり得る。係る操作は、オペレータによる誤操作であり、この誤操作による刈取部の昇降動作の操作性の低下を防ぐ何等かの手だてを講じる必要がある。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、刈取部の昇降動作の操作性を向上させるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、機体に対して昇降可能に設置された刈取部を備えるコンバインであって、当該コンバインを操作するための主変速操作手段と、操向手段とを備えており、当該主変速手段および操向手段に、前記刈取部の昇降手段を操作するための昇降操作手段が設置されたコンバインにおいて、刈取動作状態で、前記主変速手段に設置された第1昇降操作手段に入力された操作と、前記操向手段に設置された第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記刈取部を上昇移動させる刈取部制御手段を備えたことを特徴とするコンバインである。
【0006】
前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記刈取部を昇降させない制御を行なうものであってもよい。
【0007】
そして、警報音を発生させる警報器を備えるものであると共に、前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記警報器に警報音を発生させる制御を行なうものであってもよい。
【0008】
また、コンバインの状態が表示される表示パネルを備えるものであると共に、前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記表示パネルに操作状態を表示する制御を行なうものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記発明のコンバインでは、刈取状態のときに、主変速操作手段に設置された第1昇降操作手段に入力された刈取部の昇降操作と、操向手段に設置された第2昇降操作手段に入力された刈取部の昇降操作とが異なる場合には、刈取部制御手段が、刈取部を上昇移動させる。このようにすれば、刈取状態で、上述のような矛盾した操作を行なったとしても、刈取部を常に上昇させて、刈取部の先端を誤って圃場に刺し込ませたり、引っ掛けたりするのを回避することができるようになるため、その操作性が向上する。また、このような制御を行なうことで、オペレータの誤操作に起因するコンバインの故障を未然に防ぐことができる。
【0010】
さらに、本発明のコンバインでは、非刈取状態のときに、第1昇降操作手段に入力された操作と、第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合には、刈取部制御手段が、刈取部を昇降させないように制御する。一般に、圃場では、コンバインは刈取状態となっていることが多いが、圃場以外の場所、例えば、車庫などの比較的狭い場所では、非刈取状態となっている場合が多く、このような狭い場所で、刈取部を昇降させると、刈取部が周囲の物体に干渉する可能性がある。そこで、本発明では、非刈取状態のときに、第1昇降操作手段と、第2昇降操作手段とで操作内容が異なった場合には、刈取部の昇降を停止させる。このようにすれば、周囲の物体との干渉が防止されるため、その操作性がさらに向上する。
【0011】
さらに、本発明のコンバインでは、警報音を発生させる警報器をさらに備え、刈取部制御手段が、非刈取状態のときに、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記警報器に警報音を発生させる。このようにすれば、オペレータが、誤操作を行なってからそれを認識するまでの時間を短縮することができるようになり、誤操作を速やかに解除して、刈取部を所望の状態に復帰させることができるので、コンバインの操作性をさらに向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明のコンバインでは、コンバインの状態が表示される表示パネルをさらに備え、刈取部制御手段が、非刈取状態のときに、第1昇降操作手段に入力された操作と、第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、表示パネルにその操作状態を表示する制御を行う。このようにすれば、オペレータは、その表示内容を見て、誤操作を行ったことを容易に認識することができるようになり、誤操作を速やかに解除して、刈取部を所望の状態に復帰させることができるので、その操作性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態に係るコンバインについて図面を参照しながらさらに具体的に説明する。
【0014】
本実施形態に係るコンバインについて、図1にはその側面図が示され、図2には、その上面図が示されている。
【0015】
図1、図2において総合的に示されるように、コンバインAは、左右一対のクローラ式の走行部1,1と、走行部1上に設置された車体フレーム2と、車体フレーム2の前端部に取り付けられた刈取部3と、車体フレーム2上の左側前部に設置された脱穀部4(図2参照)と、脱穀部4の直下方位置に設置された選別部(不図示)と、選別部の後方上部であって脱穀部4の直後方位置に設置された排藁処理部6(図2参照)と、車体フレーム2上の右側前部に設置された運転部7と、運転部7の直後方位置であって脱穀部4の直上方位置に設置されたグレンタンクとしての穀粒貯留部8と、原動機部9と、制御部(図1、図2では不図示、図4参照)を備えている。なお、刈取部3には、図示しない穀稈搬送機構が設けられており、穀稈の搬送に用いられる図示しないフィードチェーンが設けられている。
【0016】
刈取部3は、車体フレーム2に対して上下回動自在に枢支された刈取部支持フレーム21(図2参照)を備えている。また、刈取部支持フレーム21と車体フレーム2との間には刈取部昇降手段としての昇降用シリンダ22が介設されている。後述する制御部の駆動制御の下、昇降用シリンダ22が伸縮作動することにより、刈取部支持フレーム21が昇降する。これにより、刈高さを調節できるようになっている。また、刈取部支持フレーム21は、その前端部に取り付けられた分草体23と、分草体23の後方位置に設けられた穀稈引起体24とを備えており、穀稈引起体24の後方には図示されない刈刃が取り付けられている。
【0017】
穀稈搬送機構は、コンバインAを走行させながら刈取部3で刈り取られた穀稈を、その後方に配置された脱穀部4に搬送するものである。
【0018】
脱穀部4は、コンバインAを走行させつつ刈取部3によって刈り取った穀稈を自動的に脱穀することができるようになっている。自動的に脱穀する場合は、刈取部3から穀稈搬送機構によって搬送されてきた穀稈の株元部をフィードチェーンによって受け継いで、脱穀部4内に穀稈を搬送し、穀稈の穂先部を脱穀部4の前方から後方に向けて移送させつつ脱穀する。
【0019】
そして、いわゆる手扱きによる脱穀を行う場合は、作業者の手作業によって穀稈をフィードチェーンに供給する。供給された穀稈は、自動的に脱穀する場合と同様、フィードチェーンによって脱穀部4内に移送され、脱穀される。
【0020】
脱穀部4で脱穀された穀粒は、脱穀部4の下方の選別部に落下し、選別部で一番穀粒と二番穀粒とに選別される。その後、一番穀粒は穀粒貯留部8(グレンタンク)に搬送される一方、二番穀粒は、脱穀部4に戻され、再度脱穀される。
【0021】
穀粒貯留部8(グレンタンク)には、選別部において選別された一番穀粒が貯留される。ここに貯留された一番穀粒は、穀粒搬出部11によって適宜搬出される。この穀粒搬出部11は、穀粒貯留部8内の下部から前後方向後方に伸延した図示しない横搬出用スクリューコンベア体と、横搬出用スクリューコンベアの後端部に下端部が連通連結されており、上下方向に配置された縦搬出用スクリューコンベア12と、縦搬出用スクリューコンベア12の上端部に後端部が連通連結されており前方に向けて伸延したオーガ13とを備えている。オーガ13は後端部を中心に旋回及び上下回動自在になっている。
【0022】
原動機部9は、図示しないエンジンを備えている。このエンジンには連動機構を介して図示しないミッションケースが連動連結されている。ミッションケースには、図示しない伝動機構を介して、刈取部3の図示しない刈取駆動機構や脱穀部4の扱胴など、各種作業部の駆動機構が連動連結されている。
【0023】
図3には、運転部7が拡大して示されている。図1〜図3に総合的に示されるように、運転部7は、その床部の前中央部に立設されたステアリングコラム31と、ステアリングコラム31の上部から上方に向けて突出するホイール支軸32と、ホイール支軸32に取り付けられた、操向手段としてのステアリングホイール33と、ステアリングコラム31から側方に延びるように設置され、各種のスイッチ類(図3では不図示)が配置されたウイングパネル34と、ステアリングホイール33の後方位置に配置された座席35と、座席35の左側方位置に配置されたサイド操作コラム36とを備えている。なお、図1に示されるように、運転部7の機体側部(本実施形態においてはコンバインAの進行方向に向かって右側部)には、運転部7への乗降の際に用いられる乗降ステップ137が配置されている。
【0024】
まず、サイド操作コラム36の周辺について説明する。
【0025】
図3に示されるように、サイド操作コラム36にはサイドパネル37が設置されている。また、サイド操作コラム36には、主変速操作手段としての主変速レバー41と、副変速レバー42と、各種作業レバー43とが配設されている。そして、これらのレバーの上端把持部は、サイドパネル37に形成された各レバーガイド溝37a,37b,37cを通ってサイドパネル37の上側に突出している。
【0026】
主変速レバー41の把持部には、各種のスイッチ類が配置されている。図4に示されるように、水平制御手動スイッチ(UFO手動スイッチ)44と、扱き深さを調節するための扱き深さ調節スイッチ45と、刈取部3を昇降させる、第1昇降操作手段としてのメイン昇降スイッチ46と、刈取部3を上昇限度位置まで自動的に上昇させるオートリフトスイッチ47と、刈取部3を予め設定した位置(自動刈高さ設定位置)に自動的に移動させるオートセットスイッチ48とが配置されている。
【0027】
これらのスイッチのうち、メイン昇降スイッチ46を操作すれば、刈取部3の昇降についてそれぞれ複数段の変速(例えば、2段変速)が可能となり、刈取部3の昇降状態として、5つの状態を設定することができる。すなわち、刈取部3を高速上昇させる高速上昇状態と、刈取部3を低速上昇させる低速上昇状態と、刈取部3を昇降させない(すなわち昇降位置が保持される)中立状態と、刈取部3を低速下降させる低速下降状態と、刈取部3を高速下降させる高速下降状態とである。
【0028】
メイン昇降スイッチ46は、図4に示されるように、上下一方向にその位置を切り替えられるようになっている。その切り替えポジションは、最上方側から、上記各状態に対応して、それぞれ「高速上昇位置」、「低速上昇位置」、「中立位置」、「低速下降位置」、「高速下降位置」の順に並んでいる。刈取部3を高速上昇させようとする場合には、オペレータは、メイン昇降スイッチ46を「高速上昇位置」に切り替え、刈取部3を低速上昇させようとする場合には、メイン昇降スイッチ46を「低速上昇位置」に切り替え、刈取部3を停止させようとする場合には、メイン昇降スイッチ46を「中立位置」に切り替え、刈取部3を低速下降させようとする場合には、メイン昇降スイッチ46を「低速下降位置」に切り替え、刈取部3を高速下降させようとする場合には、メイン昇降スイッチ46を「高速下降位置」に切り替える。
【0029】
なお、メイン昇降スイッチ46は、指を離すと、自動的に「中立位置」に戻るようになっている。メイン昇降スイッチ46が「中立位置」に戻ると、後述する制御部の制御により、刈取部3の昇降が停止するようになる。
【0030】
このように、主変速レバー41の把持部にメイン昇降スイッチ46が設けられているので、オペレータは、左手で主変速レバー41を操作しつつ、その左手の指でメイン昇降スイッチ46を操作することにより、刈取部3の昇降動作を行うことができる。
【0031】
次に、ステアリングコラム31の周辺について説明する。
【0032】
図3に戻り、ステアリングコラム31の上端部には、各種メータ類等が表示される表示パネル50が取り付けられている。表示パネル50上には、コンバインAの状態等が表示されるようになっている。表示パネル50としては、いわゆるインストルメントパネルでもよいが、本実施形態のコンバインAではディスプレイタイプの表示パネル、より具体的には液晶表示パネルが取り付けられている。この表示パネル50では、コンバインAの状態(その処理状況など)を、例えば、文字情報によって詳細に表示することができるようになっている。
【0033】
丸型ステアリングホイールであるステアリングホイール33には、警笛を鳴らすためのホーンスイッチ38と、刈取部3の昇降位置の微調整に用いられる、第2昇降操作手段としての微調整昇降スイッチ39とが取り付けられている。ホーンスイッチ38は、コンバインAが直進する状態でのポジションに位置する状態で、ステアリングホイール33の左側に取り付けられており、微調整昇降スイッチ39は、同状態で、ステアリングホイール33の右側に取り付けられている。この微調整昇降スイッチ39は、刈取部3の昇降位置の微調整のほか、後述するように、条合わせ用の微調整スイッチとしても用いられる。
【0034】
より具体的には、微調整昇降スイッチ39を操作すれば、刈取部3の昇降状態として、3つの状態を設定することができるようになっている。すなわち、刈取部3を低速上昇させるための微調整上昇状態と、昇降させない中立状態と、低速下降させるための微調整下降状態とである。微調整昇降スイッチ39は、上下方向にその位置を切り替えられるようになっている。その切り替えポジションは、上から、上記各状態に対応してそれぞれ、「微調整上昇位置」、「中立位置」、「微調整下降位置」の順に並んでいる。オペレータは、刈取部3を上昇させようとする場合には、微調整昇降スイッチ39を「微調整上昇位置」に切り替え、刈取部3の昇降を停止させようとする場合には、微調整昇降スイッチ39を「中立位置」に切り替え、刈取部3を下降させようとする場合には、微調整昇降スイッチ39を「微調整下降位置」に切り替える。
【0035】
このように、ステアリングホイール33に微調整昇降スイッチ39が設けられているので、オペレータは、ステアリングホイール33を右手で操作する状態であっても、ステアリングホイール33を握る右手の指で刈取部3の昇降位置を微調整することができる。なお、微調整昇降スイッチ39は、左右にも操作できるようになっており、微調整昇降スイッチ39を右側に移動させると、コンバインAの走行方向が右側に微調整され、微調整昇降スイッチ39を左側に移動させると、コンバインAの進行方向が左側に微調整されるようにもなっている。
【0036】
なお、メイン昇降スイッチ46の操作による高速昇降速度、低速昇降速度と、微調整昇降スイッチ39の操作による微調整昇降速度は、それぞれ個別に設定することが可能である。したがって、例えば、メイン昇降スイッチ46の操作による低速昇降速度よりも、微調整昇降スイッチ39の操作による微調整昇降速度を遅くするなど、低速昇降速度と微調整昇降速度とを異ならせることも可能である。本実施形態では、説明の便宜上、メイン昇降スイッチ46の操作による低速昇降速度と、微調整昇降スイッチ39の操作による微調整昇降速度とが同じであるものとして説明を行う。
【0037】
CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等から成るいわゆるマイクロコンピュータを含んで構成される制御部100(図5参照)は、コンバインA全体を統括して制御する。例えば、制御部100は、上述した操作レバーやスイッチ類などの操作手段からの信号に従って、コンバインAを動作させる。この制御部100の制御により、オペレータが、各種の操作手段を操作して、コンバインAを操縦できるようになっている。
【0038】
図5には、本実施形態に係るコンバインAにおける刈取部3の昇降動作を行うための制御系のブロック図が示されている。図5に示されるように、この制御系の中心である制御部100には、メイン昇降スイッチ46からの操作入力信号と、微調整昇降スイッチ39からの操作入力信号とが入力されている。制御部100は、これらの操作入力信号に従って、後述する制御アルゴリズムに従って、昇降用シリンダ22を駆動し、刈取部3の昇降を駆動制御する。この制御部100の駆動制御により、刈高さ調節が実現される。
【0039】
また、制御部100は、上記各種スイッチ信号からの操作入力信号の入力状態に従って、表示パネル50上に警告などの必要な情報を表示したり、警報器51において警報を発生させたりする。
【0040】
また、本実施形態では、後述するように、刈取時と非刈取時とで、刈取部3の昇降動作を変更する必要がある。このため、制御部100には、脱穀クラッチのオンオフ状態を示す信号も入力されている。刈取時には、脱穀クラッチが必ずオンとなっているため、制御部100は、この信号を用いて、刈取時であるか非刈取時であるかを、判断する。
【0041】
次に、本実施形態に係るコンバインAの刈取部3の昇降動作について説明する。
【0042】
初期状態では、メイン昇降スイッチ46および微調整昇降スイッチ39は、「中立位置」に位置しており、オートリフトスイッチ47およびオートセットスイッチ48は押下されていない、いわゆる「オフ」状態となっているものとする。本実施形態では、このような「オフ」状態では、制御部100には、各スイッチからの操作信号は入力されていないものとする。そして、この場合には、刈取部3は昇降せず、その位置は一定位置に保持されているものとする。
【0043】
この状態で、オペレータが、その指などで、メイン昇降スイッチ46を「中立位置」よりも上方、すなわち「低速上昇位置」に移動させるか、微調整昇降スイッチ39を上方、すなわち「微調整上昇位置」に移動させると、制御部100には、その旨の操作信号が入力され、刈取部3が設定された速度に従って上昇する。一方、オペレータが、メイン昇降スイッチ46を「中立位置」よりも下方、すなわち「低速下降位置」に移動させるか、微調整昇降スイッチ39を「中立位置」よりも下方、すなわち「微調整下降位置」に移動させると、制御部100には、その旨の操作信号が入力され、刈取部3が設定された速度に従って下降する。
【0044】
さらに、メイン昇降スイッチ46や微調整昇降スイッチ39を上下方向に移動させた指をスイッチから離すと、そのスイッチは自動的にもとの「中立位置」に戻って、刈取部3の昇降が停止し、そのスイッチからの操作信号が入力されなくなり、刈取部3は停止し、その位置にそのまま保持されるようになる。なお、メイン昇降スイッチ46では、スイッチの上下方向の移動量を調節することにより、昇降速度を選択することができるようになっている。
【0045】
また、例えば、刈り終わり時にオートリフトスイッチ47を押下すると、刈取部3が上昇限度位置まで自動的に上昇する。さらに、刈取開始時等にオートセットスイッチ48を押下すると、刈取部3が予め設定された位置(自動刈高さ設定位置)に自動的に移動する。このような操作をすることにより、刈取部3の昇降位置を調節し、刈高さを調節することができるようになっている。
【0046】
図6には、制御部100のCPUによって実行される刈取部3の昇降動作制御の制御アルゴリズムを示すフローチャートが示されている。図6に示されるように、まず、ステップ201では、いずれかのスイッチが操作され、そのスイッチから信号が入力するまで待つ。スイッチから信号が入力されると、ステップ201の判断が肯定され、ステップ203に進む。
【0047】
ステップ203では、入力されている操作信号が1つだけであるか否かを判断する。ここで、制御部100に入力されている操作信号が1つだけであるということは、現時点では、1つのスイッチしか操作されていないということになる。入力された操作信号が1つであれば、この判断は肯定され、ステップ205に進む。
【0048】
ステップ205では、操作されたスイッチが、メイン昇降スイッチ46であるか否かを判断し、判断が肯定されれば、ステップ215に進む。ステップ215では、メイン昇降スイッチ46からの操作信号に従って、刈取部3を昇降させる。例えば、メイン昇降スイッチ46が「高速上昇位置」に切り替えられていれば、刈取部3を高速で上昇移動させる。一方、ステップ205における判断が否定されれば、ステップ207に進む。
【0049】
ステップ207において、操作されたスイッチが、微調整昇降スイッチ39であるか否かを判断し、判断が肯定されれば、ステップ213に進む。ステップ213では、微調整昇降スイッチ39からの信号に従って、刈取部3を昇降させる。例えば、微調整昇降スイッチ39が「微調整上昇位置」に切り替えられていれば、刈取部3を低速で上昇移動させる。一方、ステップ207における判断が否定されれば、ステップ211に進む。
【0050】
ステップ207での判断が否定されたということは、操作されたスイッチは、メイン昇降スイッチ46でも、微調整昇降スイッチ39でもなく、オートリフトスイッチ47か、オートセットスイッチ48かのいずれかということになる。ステップ211では、これらのスイッチの操作に対応するサブルーチン処理を行う。このサブルーチン処理では、制御部100は、操作されたスイッチからの入力操作信号に従って、刈取部を昇降させる。このサブルーチン実行後は、再びステップ201に戻る。
【0051】
一方、ステップ213、ステップ215が行われた後に実行されるステップ217では、刈取部3の昇降動作が終了したか否かを判断する。この肯定が否定されれば、ステップ219に進む。ステップ219では、入力信号が1つであるか否かを検出する。ここでの判断が肯定されれば、ステップ217に戻る。すなわち、ここでは刈取部3の昇降動作が終了するか(ステップ217)、新たな信号が入力されるまで(ステップ219)、ステップ217とステップ219とを繰り返す。
【0052】
刈取部3の昇降動作が終了し、ステップ217での判断が肯定されると、ステップ241に進む。ここで、ステップ241では、コンバインA全体の操作が終了しているか否かを判断する。この判断が肯定されれば、処理を終了し、否定されれば、次の信号の入力を待つ待機状態(ステップ201)に戻る。
【0053】
一方、ステップ203、ステップ219において、判断が否定された場合には、ステップ221に進む。ここでの判断が否定されるということは、少なくとも2つの操作信号が入力されているということであり、それらの操作信号に対応する操作内容が矛盾していないかどうかを判断する必要がある。そこで、ステップ221では、昇降方向は全て同じであるか否かを判断する。この判断が肯定されると、ステップ223に進む。ここでの判断が肯定されたということは、入力された操作信号の操作内容には、スイッチ間で矛盾がないことを意味する。
【0054】
ステップ223では、現在の昇降速度より速い速度が設定されている信号が入力されているか否かを判断する。この判断が肯定されれば、ステップ225に進み、入力された操作信号のうち、最も速い速度で、刈取部3の昇降を開始する。すなわち、本実施形態では、メイン操作スイッチ46の操作内容と、微調整昇降スイッチ39の操作内容とが一致している場合には、各スイッチの操作内容で指定された速度のうち、最も速い速度で、刈取部3の昇降を行うものとする。例えば、メイン操作スイッチ46の操作内容が「高速上昇」であり、微調整操作スイッチ39の操作内容が「微調整上昇」である場合には、スイッチが操作された順番に関らず、刈取部3を高速に上昇させるようになる。
【0055】
一方、ステップ221において判断が否定された場合には、ステップ229に進む。ステップ229では、刈取時であるか否かを判断する。制御部100は、刈取時であるか否かは、脱穀クラッチが入っているか否か、すなわち脱穀クラッチのオンオフ信号によって判断する。すなわち、脱穀クラッチのオンオフ信号がオンとなっていれば(脱穀クラッチがつながっていれば)、刈取時であり、脱穀クラッチのオンオフ信号がオフとなっていれば(脱穀クラッチが切れていれば)、刈取時でない、すなわち非刈取時であると判断する。ステップ229の判断が肯定されれば、ステップ231に進み、否定されればステップ233に進む。
【0056】
ステップ231では、刈取部3を上昇させ、ステップ233では、刈取部3の昇降を停止させる。すなわち、本実施形態では、メイン昇降スイッチ46の操作内容と、微調整昇降スイッチ39の操作内容とが矛盾する場合、刈取時か否かで、刈取部3の動作を変更し、刈取時であれば刈取部3を上昇させ、非刈取時であれば刈取部3の昇降を停止させる。
【0057】
なお、ステップ231における刈取部3の上昇速度については、様々な速度を採用することが可能である。例えば、メイン昇降スイッチ46と、微調整昇降スイッチ39とのうち、上昇するように操作された方の設定速度に従って刈取部3を上昇させることができる。この場合、例えば、刈取時において、メイン昇降スイッチ46が「高速上昇位置」に操作され、微調整昇降スイッチ39が、「微調整下降位置」に操作された場合には、刈取部3は上昇するようになるが、その速度は高速となる。
【0058】
なお、これに限らず、ステップ231における刈取部3の上昇速度を、常に低速、あるいは、常に高速に設定しておくことも可能である。刈取部3を速やかに上昇させたい事情がある場合には、その上昇速度を高速に設定しておくのが望ましく、刈取部3をゆっくり上昇させたい事情がある場合には、その上昇速度を低速に設定しておくのが望ましい。
【0059】
なお、このステップ233を実行する際には、例えば図7に示されるように、表示パネル50上にアラーム表示を行うようにしてもよい。図7の表示パネル50の上側には、刈取昇降スイッチが誤操作された旨の警告(刈取昇降スイッチ誤操作)が表示されており、その下に、「誤操作です。刈取を停止します。」と表示されている。さらに、その下には、主変速レバー41のメイン昇降スイッチ46では刈取上昇操作が行われ、ハンドル(すなわちステアリングホイール33)の微調整昇降スイッチ39では刈取下降操作が行われたことが表示されている。このように、メイン昇降スイッチ46及び微調整昇降スイッチ39の操作状態が表示されるようになれば、オペレータは、その表示内容を見て、どのような操作を行なったかを認識することができるようになる。この結果、オペレータが、各スイッチの誤操作を速やかに解除し、正常な状態に復帰させることができるようになる。
【0060】
なお、ステップ233では、警報器51(図5参照)で警報を発生させるようにしてもよい。このように、警報器51によって警報を発生させるようにすれば、オペレータが、誤操作を行なってからそれを認識するまでの時間を短縮することができるようになる。この結果、オペレータは、各スイッチの誤操作を速やかに解除して、操作状態を正常な状態に復帰させることができるようになる。
【0061】
なお、ステップ233では、非刈取作業状態(脱穀クラッチが入っていない状態)では、刈取部3を上昇させるようにしてもよい。しかしながら、例えば、狭い空間(倉庫内等)における移動時などで誤操作を行ってしまった場合を考慮すれば、刈取部3を上昇させるよりも、停止させる方が望ましいといえる。
【0062】
ステップ231終了後、ステップ225終了後、又はステップ223において判断が否定された後は、ステップ227に進む。ステップ227では、刈取部3の昇降が終了したか否かを判断する。この判断が肯定されればステップ241に進み、否定されればステップ221に戻る。ステップ221に戻った後は、ステップ221以下の処理を再び繰り返す。
【0063】
一方、ステップ233終了後は、ステップ241に進む。ステップ241では、コンバインA全体の操作が終了しているか否かを判断する。この判断が肯定されれば、処理を終了し、否定されれば、次の信号の入力を待つ待機状態(ステップ201)に戻る。
【0064】
図8には、上述した制御アルゴリズムをまとめた表が示されている。この表では、各スイッチが、上昇するように操作されている場合を、「上」と表し、下降するように操作されている場合を、「下」と表し、中立位置となっている場合には、「×」と表している。なお、メイン昇降スイッチ46は、実際には、上述のように、「高速上昇」「低速上昇」、「中立位置」、「低速下降」、「高速下降」の5つの操作内容を設定することが可能であるが、図8の表では、説明を簡単にするために、メイン操作スイッチ46の操作内容を、「上」、「下」、「×」の3種類に簡略化している。
【0065】
まず、この表の1番上の欄に示されるように、メイン昇降スイッチ46も、微調整昇降スイッチ39も「中立位置(×)」である場合には、両スイッチの操作内容は一致しているため、制御部100は、刈取部3の昇降を停止させる。続いて、2番目、3番目の欄も、メイン昇降スイッチ46の操作内容は、「×」となっているが、微調整昇降スイッチ39の操作内容が2番目の欄では、「上」となっており、3番目の欄では、「下」となっている。これらの場合には、メイン昇降スイッチ46から操作信号は入力されていないため、そのまま、微調整昇降スイッチ39の操作内容に従って、刈取部3が、昇降するようになる。
【0066】
続く4番目〜6番目の欄には、メイン昇降スイッチ46の操作内容が「上」である場合に、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、それぞれ「×」、「上」、「下」となっている場合の刈取時、非刈取時の刈取部3の動作が示されている。まず、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「×」である場合には、刈取時であっても、非刈取時であっても、刈取部3は上昇する。そして、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「上」である場合には、メイン昇降スイッチ46の操作内容と一致するので、刈取時であっても、非刈取時であっても、刈取部3は上昇する。さらに、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「下」である場合には、メイン昇降スイッチ46の操作内容と矛盾するため、刈取部3は、刈取時には上昇し、非刈取時には停止する。
【0067】
続く7番目〜9番目の欄には、メイン昇降スイッチ46の操作内容が「下」である場合に、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、それぞれ「×」、「上」、「下」となっている場合の刈取時、非刈取時の刈取部3の動作が示されている。まず、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「×」である場合には、刈取時であっても、非刈取時であっても、刈取部3は下降する。そして、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「上」である場合には、メイン昇降スイッチ46の操作内容と矛盾するので、刈取時には、刈取部3は上昇し、非刈取時には、刈取部3は停止する。さらに、微調整昇降スイッチ39の操作内容が、「下」である場合には、メイン昇降スイッチ46の操作内容と一致するため、刈取時であっても、非刈取時であっても、刈取部3は下降する。
【0068】
この表にも示されるように、本実施形態では、刈取中には、どちらかのスイッチに対して、上昇操作がなされていれば、刈取部3を上昇させるようになる。
【0069】
<スイッチの故障対策>
ところで、本実施形態に係るコンバインAでは、いずれか1つのスイッチが故障した場合には、残りのスイッチが正常に動作していれば、刈取部3の昇降操作を行えるようになっているのが望ましい。
【0070】
図9には、電源投入直後に、スイッチの故障対策として実施される制御部100のCPUによって実行される制御プログラムのフローチャートが示されている。図9に示されるように、ステップ301では、メイン昇降スイッチ46からの操作信号が入力されているが否かを判断する。電源投入直後に、すでにメイン昇降スイッチ46からの操作信号が入力されている場合には、メイン昇降スイッチ46が何らかの理由で故障している可能性が高い。そこで、このステップ301では、この判断が肯定された場合にのみ、ステップ309に進んで、メイン昇降スイッチ46から入力される操作信号をマスクする。このマスクにより、これ以降は、制御部100は、メイン昇降スイッチ46から入力される操作信号を、入力されていないものとして取り扱う。
【0071】
次のステップ303では、微調整昇降スイッチ39からの操作信号が入力されているが否かを判断する。この判断が肯定された場合には、微調整昇降スイッチ39が故障している可能性が高いため、ステップ311に進んで、微調整昇降スイッチ39から入力される操作信号をマスクする。このマスクにより、これ以降は、制御部100は、微調整昇降スイッチ39から入力される操作信号を、入力されていないものとして取り扱う。
【0072】
次のステップ305では、オートリフトスイッチ47からの操作信号が入力されているが否かを判断する。この判断が肯定された場合にのみ、ステップ313に進んで、オートリフトスイッチ47から入力される操作信号をマスクする。このマスクにより、これ以降は、制御部100は、オートリフトスイッチ47から入力される操作信号を、入力されていないものとして取り扱う。
【0073】
次のステップ307では、オートセットスイッチ48からの操作信号が入力されているが否かを判断する。この判断が肯定された場合にのみ、ステップ315に進んで、オートセットスイッチ48から入力される信号をマスクする。このマスクにより、これ以降は、制御部100は、オートセットスイッチ48から入力される操作信号を、入力されていないものとして取り扱う。
【0074】
ステップ307で判断が否定された後、又はステップ315を実施した後は、処理を終了する。
【0075】
このように、電源が投入されたときに、故障したスイッチからの操作信号のマスク処理を実施すると、いずれかのスイッチが故障している場合には、図6の制御アルゴリズムを実行しても、ステップ203やステップ217において、そのスイッチから入力される操作信号を、入力されていないものとみなし、残るスイッチからの操作信号のみに基づいて、刈取部3を昇降させるようにすることが可能となる。すなわち、いずれか1つのスイッチの故障が発生した後、一旦電源をオフにし、再度電源をオンにして制御系を再起動すれば、正常に機能する他のスイッチのみの操作に基づいて、刈取部3の昇降を行うことが可能となる。
【0076】
なお、この制御アルゴリズムでは、電源投入後に、すでに操作信号が入力されているスイッチについては、故障しているものとみなし、その操作信号の入力をマスクして、刈取部3の制御を行った。しかしながら、本発明はこれには限られず、各スイッチの操作信号とは別に、各スイッチが故障したときにエラー信号が制御部100に入力されている場合には、そのエラー信号を参照して、各スイッチの故障の有無を検出するようにしてもよい。
【0077】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、刈取部3が刈取動作状態のときに、主変速レバー41に設置されたメイン昇降スイッチ46に入力された操作と、ステアリングホイール33に設置された微調整昇降スイッチ39に入力された操作とが異なる場合、制御部100は、刈取部3を上昇移動させる制御を行う。このようにすれば、刈取状態で、上記のような操作を行なったとしても、刈取部3の先端を誤って圃場(ほじょう)に刺し込ませたり、引っ掛けたりするのを回避することができるようになるため、刈取部3の昇降操作について高い操作性が確保されるようになる。さらに、このような制御を行なうことで誤操作に起因するコンバインAの故障が防止される。
【0078】
また、本実施形態では、非刈取状態でメイン昇降スイッチ46に入力された操作内容と、微調整昇降スイッチ39に入力された操作内容とが異なる場合に、刈取部3を昇降させない制御を行う。このようにすれば、コンバインAの操作性がさらに向上する。一般に、圃場では、刈取状態であることが多いが、圃場以外の場所でコンバインを運転している場合には非刈取状態であることが多い。非刈取状態では、例えば、コンバインAをその格納場所に搬入するときなど、比較的狭い場所でコンバインAを運転する間に行われた操作が、メイン昇降スイッチ46と、微調整昇降スイッチ39とで異なる場合に、刈取部3を昇降させると、刈取部3が周囲の物体に干渉する可能性もある。このような場合には、刈取部3を昇降させないように制御すると、周囲の物体との干渉が防止され、コンバインAの優れた操作性が確保される。
【0079】
さらに、本実施形態では、警報音を発生させる警報器51を備え、非刈取状態で、メイン昇降スイッチ46に入力された操作内容と、微調整昇降スイッチ39に入力された操作内容とが異なる場合には、制御部100が、警報器51に警報音を発生させる。このようにすれば、オペレータが、その聴覚によっても、矛盾した操作(すなわち誤操作)を行ったことを認識することができるようになるため、コンバインAの操作性がさらに向上する。
【0080】
仮に、警報器51がなければ、コンバインAのオペレータは、意に反して、刈取部3を上昇移動させたり停止させたりしたときに、その原因が自らの誤操作であると気づくのに時間がかかってしまうが、警報器51で警報を発生させるようにすれば、誤操作を行なったことを認識する時間が短くなるため、その操作性が向上するのである。この結果、誤操作の状態を速やかに解除し、次の操作に移ることができるようになる。すなわち、誤操作の時間が短ければ、刈取部3の状態を、所望の状態に短時間で復帰させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、コンバインAの状態が表示される表示パネル50を備えている。そして、制御部100は、非刈取状態で、メイン昇降スイッチ46に入力された操作内容と、微調整昇降スイッチ39に入力された操作内容とが異なる場合に、表示パネル50にその操作状態を表示する制御を行なう。
【0082】
仮に、表示パネル50に操作状態が表示されなければ、コンバインAのオペレータは、意に反して刈取部3を上昇移動させたり停止させたりしてしまったときに、どのような操作が原因で刈取部3が意に反する動作状態になったかを認識あるいは確認することができない。しかしながら、本実施形態に係るコンバインAのように表示パネル50上に操作内容が表示されるようになれば、その表示内容に基づいて、どのような操作を行なったかをオペレータが認識あるいは確認することができるようになる。これにより、誤操作を行なったとしても、表示内容に基づいて誤操作の原因を認識したり確認したりすることができるので、次回の誤操作を防止でき、コンバインAの操作性が向上する。
【0083】
なお、表示パネル50での詳細表示を行わなくても、単に、誤操作を示す警告ランプを点灯させるだけでもよい。
【0084】
また、警報や、警告表示の他、座席35をバイブレータで振動させることにより、オペレータに誤操作を知らせるようにしてもよい。
【0085】
また、図6の制御アルゴリズムは、適宜変更が可能であり、その制御アルゴリズムは、メイン昇降スイッチ46と、微調整昇降スイッチ39とで、操作内容が矛盾していた場合に、刈取時には刈取部3を上昇させ、非刈取時には刈取部3を停止させるようになっていればよい。
【0086】
また、例えば、ステアリングホイール33は、丸型でなくてもよく、クロスレバー方式のものであってもよい。このように、本発明のコンバインは、上記実施形態に限られるものではなく、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの側面図である。
【図2】図1のコンバインの上面図である。
【図3】運転部の構造を示す上面図である。
【図4】主変速レバーに設けられたスイッチ類を説明するための図である。
【図5】刈取部の昇降動作の制御系を示すブロック図である。
【図6】刈取部の昇降制御動作を行う際の制御部のフローチャートである。
【図7】アラーム表示の一例を示す図である。
【図8】メイン昇降スイッチ及び微調整昇降スイッチの操作と、刈取部の昇降動作との関係を示す表である。
【図9】電源投入後のエラー処理の制御アルゴリズムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 走行部
2 車体フレーム
3 刈取部
4 脱穀部
6 排藁処理部
7 運転部
8 穀粒貯留部
9 原動機部
10 穀粒貯留部
11 穀粒搬出部
12 縦搬出用スクリューコンベア
13 オーガ
21 刈取部支持フレーム
22 昇降用シリンダ
23 分草体
24 穀稈引起体
31 ステアリングコラム
32 ホイール支軸
33 ステアリングホイール
34 ウイングパネル
35 座席
36 サイド操作コラム
37 サイドパネル
37a,37b,37c レバーガイド溝
38 ホーンスイッチ
39 微調整昇降スイッチ
41 主変速レバー
42 副変速レバー
43 作業レバー
44 水平制御手動スイッチ
45 扱き深さ調節スイッチ
46 メイン昇降スイッチ
47 オートリフトスイッチ
48 オートセットスイッチ
50 表示パネル
100 制御部
137 乗降ステップ
A コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に対して昇降可能に設置された刈取部を備えるコンバインであって、当該コンバインを操作するための主変速操作手段と、操向手段とを備えており、当該主変速手段および操向手段に、前記刈取部の昇降手段を操作するための昇降操作手段が設置されたコンバインにおいて、
刈取動作状態で、前記主変速操作手段に設置された第1昇降操作手段に入力された操作と、前記操向手段に設置された第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記刈取部を上昇移動させる刈取部制御手段を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記刈取部を昇降させない制御を行なうものである、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
警報音を発生させる警報器を備えるものであると共に、前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記警報器に警報音を発生させる制御を行なうものである、請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
コンバインの状態が表示される表示パネルを備えるものであると共に、前記刈取部制御手段は、非刈取状態で、前記第1昇降操作手段に入力された操作と、前記第2昇降操作手段に入力された操作とが異なる場合に、前記表示パネルに操作状態を表示する制御を行なうものである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−148650(P2008−148650A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341839(P2006−341839)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】