説明

コンバイン

【課題】停止刈り作業に使用できるとともに停止刈り作業のための状態を装備面でも操作面でも現出できるようにする。
【解決手段】エンジンからの駆動力を走行用の無段変速装置18に伝達するとともに無段変速装置の変速作用を受けない状態で刈取り部に伝達する。無段変速装置18を操作する変速レバー24に、無段変速装置18が中立状態に操作される主中立位置N1と副中立位置N2とを備えてある。変速レバー24の操作位置を検出する操作位置検出手段41と、刈取りクラッチ17を切換え操作するアクチュエータ22と、操作位置検出手段41による検出情報を基にアクチュエータ22を操作する制御手段42とを設けてある。制御手段42は、変速レバー24が主中立位置N1に操作されると、刈取りクラッチ17が切り状態に切換え、変速レバー24が副中立位置N2に操作されると、刈取りクラッチ17が入り状態に切換えれるようアクチュエータ22を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの駆動力を走行用の無段変速装置に伝達するとともに前記無段変速装置の変速作用を受けない状態で刈取り部に伝達するように構成し、前記刈取り部への伝動を入り切りする刈取りクラッチを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインとして、従来、例えば特許文献1に示されたものがあった。
特許文献1に示されたコンバインでは、エンジンの出力軸の動力が主クラッチを介して静油圧式無段変速装置の入力軸に伝達され、この静油圧式無段変速装置の出力軸の動力が副変速装置を介して走行装置に伝達される。前記静油圧式無段変速装置の入力軸の動力が刈取り変速装置と刈取りクラッチとを介して刈取り部の入力軸に伝達される。
【0003】
また、特許文献1に示されたコンバインでは、静油圧式無段変速装置と副変速装置とを操作する変速レバーの操作位置を検出するセンサと、刈取りクラッチを操作するモータと、前記センサによる検出情報を基に前記モータを操作する制御装置とを備え、刈取り状態(脱穀クラッチが伝動状態)の場合、静油圧式無段変速装置が中立停止位置に操作されると、刈取りクラッチが制御装置によって遮断状態に操作される。
【0004】
【特許文献1】特開2005−265051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインでは、走行停止の状態で刈取りを行う作業(以下、停止刈り作業と称する。)を必要とされることがある。しかし、上記した従来のコンバインにあっては、走行を停止させるよう無段変速装置を中立状態に操作すると、刈取りクラッチが自動的に切り状態に切換え操作されて刈取り部が停止し、停止刈り作業に使用できなかった。
【0006】
副変速装置を無段変速装置とは別に単独で中立状態に切換え操作する操作手段を設けると、刈取りクラッチが入り状態に操作されるよう無段変速装置を伝動状態に操作しても、副変速装置の中立状態への切換えにより、走行停止の状態を得ることができる。
しかし、この場合、副変速装置の装備が必要条件になる。また、無段変速装置の操作の他に、副変速装置を操作する操作が必要になる。
【0007】
本発明の目的は、無段変速装置を中立状態に操作すれば刈取り部が自ずと停止するものでありながら、停止刈り作業に使用できるとともに停止刈り作業のための状態を装備面でも操作面でも有利に現出できるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、エンジンからの駆動力を走行用の無段変速装置に伝達するとともに前記無段変速装置の変速作用を受けない状態で刈取り部に伝達するように構成し、前記刈取り部への伝動を入り切りする刈取りクラッチを備えたコンバインにおいて、
前記無段変速装置を操作する変速レバーに、無段変速装置が中立状態に操作される主中立位置と副中立位置とを備え、
前記変速レバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記刈取りクラッチを切換え操作するアクチュエータとを設け、
前記変速レバーが前記主中立位置に操作されると、前記刈取りクラッチが切り状態に切換え操作され、前記変速レバーが前記副中立位置に操作されると、前記刈取りクラッチが入り状態に切換え操作されるよう前記操作位置検出手段による検出情報を基に前記アクチュエータを操作する制御手段を設けてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、変速レバーを主中立位置に操作すれば、このレバー操作のために無段変速装置が中立状態に操作され、走行が停止する。これと共に操作位置検出手段の検出情報に基づく制御手段の操作によってアクチェータが刈取りクラッチを切り状態に操作し、刈取り部が停止する。
一方、変速レバーを副中立位置に操作すれば、このレバー操作のために無段変速装置が中立状態に操作され、走行が停止する。これと共に操作位置検出手段の検出情報に基づく制御手段の操作によってアクチェータが刈取りクラッチを入り状態に操作し、刈取り部が駆動される。
【0010】
これにより、作業を中断や停止する際など、変速レバーを主中立位置に操作するだけで操作簡単に走行も刈取り部も停止した非作業状態を得ることができる。しかも、変速レバーを副中立位置に操作するだけで操作簡単に走行停止させながら刈取り部が駆動される状態を得て停止刈り作業を行うことができる。さらに、走行用の副変速装置の装備あるいは中立状態への切換えが不要になり、この面からも構造簡単かつ操作簡単になる。
【0011】
本第2発明は、本第1発明の構成において、前記変速レバーの前記主中立位置から前記副中立位置への切り換わりを牽制する作用状態と、前記の牽制を解除した解除状態とに切換え自在な牽制機構を設け、前記牽制機構を前記解除状態に切換え操作する操作部を前記変速レバーに備えてある。
【0012】
移動走行や刈取り走行の際、変速レバーを主中立位置に操作し、無段変速装置を中立状態に操作して走行を停止させる。このように変速レバーを主中立位置にする操作が行われる際、本第2発明の構成によると、副中立位置に誤操作されないよう牽制機構を作用させながら行わせられる。
【0013】
本第2発明の構成によると、変速レバーを副中立位置に操作するよう牽制機構を解除状態に切換え操作するのに、変速レバーを支持している状態の手で操作部を操作して行うことができる。
【0014】
これにより、移動走行や刈取り走行などの通常時には、変速レバーを副中立位置に不用意に切り換えてしまう誤操作を防止しながら変速操作させることができる。しかも、停止刈り作業の状態を得るのに、牽制機構の解除が変速レバーから手を放さずにでき、この面からも操作簡単に得ることができる。
【0015】
本第3発明では、前記変速レバーを前記副中立位置に係止する作用状態と、前記の係止を解除した解除状態とに切換え操作自在な係止機構を設けてある。
【0016】
本第3発明の構成によると、副中立位置に操作した変速レバーを係止機構によって副中立位置に保持させ、変速レバーから手を放しても、刈取りクラッチを入り状態に維持できる。
【0017】
これにより、運転部から離れても刈取り部を駆動状態にでき、駆動しながらの注油が一人作業で行えるなど便利である。
【0018】
本第4発明では、前記係止機構を、前記牽制機構の前記操作部によって前記作用状態と前記解除状態とに切換え操作するよう構成してある。
【0019】
本第4発明の構成によると、変速レバーを副中立位置に係止させたり、この係止を解除させたりするよう係止機構を作用状態と解除状態とに切換え操作するのに、変速レバーを支持している状態の手で牽制機構の操作部を操作して行うことができる。
【0020】
これにより、変速レバーを副中立位置に係止させたり、この係止を解除したりするのに、変速レバーから手を放さずに、かつ、牽制機構の操作部を利用して操作簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1,1によって自走するよう構成され、かつ、運転座席2が装備された運転部を有した走行機体と、この走行機体の機体フレーム3の前部に連結された刈取り部4とを備え、前記機体フレーム3の後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置5と穀粒タンク6とを備えて構成してある。
【0022】
このコンバインは、稲、麦などの穀粒を収穫する。すなわち、刈取り部4は、これの刈取り部フレーム4aが油圧式の昇降シリンダ7によって機体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、刈取り部4の前端部に刈取り部横方向に並べて設けてある分草具4bが地面付近に下降した下降作業状態と、前記分草具4bが地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。刈取り部4を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り部4は、刈取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を対応する分草具4aによって隣りの植付け条の植立穀稈と分草し、各分草具4aからの植立穀稈を対応する引起し装置4cによって引起し処理するとともに一つのバリカン形の刈取り装置4dによって刈取り処理し、刈取り装置4dからの刈取り穀稈を搬送装置4eによって機体後方向きに搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aの始端部に供給する。脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方側に挟持搬送しながらこの刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給し、その穂先側を扱室で脱穀処理する。穀粒タンク6は、脱穀装置5から搬送された脱穀粒を回収して貯留する。穀粒タンク6は、貯留した脱穀粒を搬出する排出オーガ8を備えている。
【0023】
前記走行機体は、前記運転座席2の下方に設けたエンジン10を備えている。図2は、エンジン10からの駆動力を走行装置1と刈取り部4と脱穀装置5とに伝達する伝動装置の線図である。この図に示すように、伝動装置は、エンジン10の出力軸10aの駆動力をベルトテンションクラッチで成る主クラッチ11を介して走行用の無段変速装置18の入力軸13に伝達し、この無段変速装置18の出力軸18aの駆動力を走行ミッション12を介して出力を左右のクローラ走行装置1,1に伝達する。
【0024】
前記伝動装置は、前記無段変速装置18の入力軸13の駆動力を刈取り変速装置15に伝達し、この刈取り変速装置15の出力軸16の駆動力を刈取りクラッチ17を介して刈取り部4の入力軸4fに伝達する。これにより、伝動装置は、前記エンジン10からの駆動力を前記無段変速装置18の変速作用を受けない状態で刈取り部4に伝達する。
【0025】
前記伝動装置は、前記エンジン10の出力軸10aの駆動力を脱穀クラッチ14を介して脱穀装置5の入力軸5bに伝達する。
【0026】
前記無段変速装置18は、前記入力軸13をポンプ軸として備えた可変容量形でかつアキシャルプランジャ形の油圧ポンプ18bと、この油圧ポンプ18bからの圧油によって駆動されるアキシャル形の油圧モータ18cとを備えて構成してあり、静油圧式無段変速装置になっている。前記油圧モータ18cは、前記出力軸18aをポンプ軸として備えている。走行ミッション12と前記刈取り変速装置15とは、共用のミッションケース20に収容されている。前記無段変速装置18は、前記ミッションケース20に連設されている。
【0027】
図2,5に示すように、前記刈取りクラッチ17は、前記刈取り変速装置15の出力軸16と前記刈取り部4の入力軸4fとにわたって巻回された伝動ベルト17aと、前記出力軸16に揺動自在に支持されたテンションアーム17bとを備えて構成してあり、ベルトテンションクラッチになっている。前記脱穀クラッチ14は、前記エンジン10の出力軸10aと前記脱穀装置5の入力軸5bとにわたって巻回された伝動ベルト14aと、前記入力軸5bに揺動自在に支持されたテンションアーム14bとを備えて構成してあり、ベルトテンションクラッチになっている。
【0028】
図5に示すように、前記脱穀クラッチ14のテンションアーム14bが備える操作アーム部14dは、連動スプリング32bを有した脱穀クラッチ連動機構32を介して電動モータ22の出力ギヤ22cに連動されている。前記脱穀クラッチ連動機構32は、前記連動スプリング32bを備える他、この連動スプリング32bに一端部が連動された連動リンク32aと、この連動リンク32aの他端部に連結ピン31aを介し連動されたクラッチ操作体Cと、このクラッチ操作体Cの回転支軸37に一体回転自在に設けた扇形ギヤ38とを備えて構成してある。
【0029】
図5に示すように、前記刈取りクラッチ17のテンションアーム17bは、連動スプリング34bを有した刈取りクラッチ連動機構34を介して前記電動モータ22の前記出力ギヤ22cに連動されている。前記刈取りクラッチ連動機構34は、前記連動スプリング34bを備える他、この連動スプリング34bに一端部が連動された連動リンク34aと、この連動リンク34aの他端部に連結ピン33aを介して連動された前記クラッチ操作体Cと、前記扇形ギヤ38とを備えて構成してある。前記連動スプリング34bと、前記テンションアーム17bとの間に融通付き連動部39を設けてある。この融通付き連動部39は、連動スプリング34bの端部に長溝34dを形成するよう設けた屈曲部と、前記長溝34dに摺動自在に係入するよう構成して前記テンションアーム17bに設けた連動ピン40とを備えて構成してある。
【0030】
図5に示すように前記クラッチ操作体Cは、脱穀クラッチ側の前記連動リンク32aが連結された揺動アーム31と、前記刈取りクラッチ側の前記連動リンク34aが連結された揺動アーム33と、この揺動アーム33と前記揺動アーム31とを一体回転自在に連結している前記回転支軸37とを備えている。前記クラッチ操作体Cは、運転部に位置するレバーガイドの下方に設けた支持枠30に前記回転支軸37を介して回転自在に支持されている。前記電動モータ22は、前記出力ギヤ22cを備える他、モータ本体22aと、この電動モータ本体22aの駆動力を減速して前記出力ギヤ22c伝達する減速機構を内装した減速ケース22bとを備えている。モータ本体22aは、前記減速ケース22bを介して前記支持枠30に支持されている。
【0031】
図5は、脱穀クラッチ14と刈取りクラッチ17とが切り状態に操作された状態を示している。この図に示すように、前記電動モータ22は、出力ギヤ22cによる扇形ギヤ38を介しての回転支軸37の回転操作によってクラッチ操作体Cを非作業位置に回転操作する。すると、クラッチ操作体Cの揺動アーム31が脱穀クラッチ連動機構32を緩み操作してテンションアーム14bをこれの自然下降によって揺動操作する。すると、テンションアーム14bが脱穀クラッチ連動機構32によって吊り下げ支持された切り姿勢になって伝動ベルト14aの緊張操作を解除し、脱穀クラッチ14が切り状態になる。このとき、クラッチ操作体Cの揺動アーム33が刈取りクラッチ連動機構34を緩み操作してテンションアーム17bを自然下降によって揺動操作する。すると、テンションアーム17bがストッパー21に当接して支持された切り姿勢になって伝動ベルト17aの緊張操作を解除し、刈取りクラッチ17が切り状態になる。
【0032】
図6は、脱穀クラッチ14が入り状態に操作され、刈取りクラッチ・が切り状態に操作された状態を示している。この図に示すように、電動モータ22は、図5の状態からさらに正回転方向に回転駆動されると、出力ギヤ22cによる扇形ギヤ38を介しての回転支軸37の回転操作によってクラッチ操作体Cを副作業位置に回転操作する。すると、クラッチ操作体Cの揺動アーム31が脱穀クラッチ連動機構32を引っ張り操作してテンションアーム14bをこれの重量に抗して引っ張り操作する。すると、テンションアーム14bが入り姿勢になってテンションローラ14cによって伝動ベルト14aを緊張操作し、脱穀クラッチ14が入り状態になる。このとき、クラッチ操作体Cの揺動アーム33が刈取りクラッチ連動機構34を引っ張り操作し、テンションアーム17bを少し引っ張り操作する。しかし、テンションアーム17bが前記融通付き連動部39のためにまだ切り姿勢にあって伝動ベルト17aを緊張操作せず、刈取りクラッチ17が切り状態になる。
【0033】
図7は、脱穀クラッチ14と刈取りクラッチ17とが入り状態に操作された状態を示す。この図に示すように、電動モータ22が図6の状態からさらに正回転方向に回転駆動されると、出力ギヤ22cによる扇形キヤ38を介しての回転支軸37の回転操作によってクラッチ操作体Cを主作業位置に回転操作する。すると、クラッチ操作体Cの前記揺動アーム31が図6の揺動位置からデッドポイントDを超えた揺動位置になり、クラッチ操作体Cの揺動アーム31が脱穀クラッチ連動機構32を図6での引っ張り状態とほぼ同じ引っ張り力で引っ張り操作してテンションアーム14bの引っ張り操作を維持する。これにより、テンションアーム14bが伝動ベルト14aの緊張操作を維持し、脱穀クラッチ14が入り状態になる。このとき、クラッチ操作体Cの揺動アーム33が刈取りクラッチ連動機構34を図6での引っ張り状態よりもさらに引っ張り操作してテンションアーム17bをさらに引っ張り操作する。すると、テンションアーム17bが入り姿勢になってテンションローラ17cによって伝動ベルト17aを緊張操作し、刈取りクラッチ17が入り状態になる。
【0034】
図3は、前記電動モータ22に連係された操作装置26のブロック図である。この図に示すように、前記操作装置26は、変速レバー24と、この変速レバー24に連動された回転ポテンショメータ41aを有した操作位置検出手段41と、作業選択手段25と、操作体位置検出手段43と、前記各手段41,25,43に連係された制御手段42とを備えて構成してある。前記制御手段42は、前記電動モータ22に連係されている。
【0035】
図8,9に示すように、前記変速レバー24は、前記運転座席2の横側方に設けたレバーガイド50の下方において、レバー支持体51を介して支持フレーム52に支持されている。前記変速レバー24は、これの基端部に設けた筒形の連結部24aを備えている。この連結部24aは、前記レバー支持体51の支持部51aに連結軸53を介して回動自在に連結されている。レバー支持体51は、支軸54を介して前記支持フレーム52に揺動自在に支持されている。
すなわち、変速レバー24は、前記支軸54の走行機体横向き軸芯Xと、この走行機体横向き軸芯Xとは異なる向きの前記連結軸53の軸芯Yとのまわりに揺動させ、前記レバーガイド50が備える図10に示す形状のガイド溝55に沿わせて揺動操作する。
【0036】
図10は、変速レバー24の操作位置を示す平面図である。この図に示すように、変速レバー24は、前記ガイド溝55の前端側部分によって形成された前進域Fと、前記ガイド溝55の走行機体前後方向での中間部分の横一端部によって形成された主中立位置N1と、前記ガイド溝55の前記中間部分の横他端部によって形成された副中立位置N2と、前記ガイド溝55の後端側部分によって形成された後進域Rとを備えている。
【0037】
前記変速レバー24は、前記レバー支持体51と、このレバー支持体51を揺動リンクや連動ロッドを利用して前記無段変速装置18の操作部(図示せず)に連動させているリンク機構とで成る連動機構56によって無段変速装置18の操作部(図示せず)に連動されている。
【0038】
前記操作位置検出手段41は、前記回転ポテンショメータ41aと、図9に示す如く前記レバー支持体51に固定の牽制体61に取り付けた検出スイッチ41bとを備えて構成してある。前記回転ポテンショメータ41aは、前記レバー支持体51に連動されており、このレバー支持体51を介して変速レバー24の前記軸芯Xまわりでの揺動に連動している。前記検出スイッチ41bは、変速レバー24が前記副中立位置N2に操作されると、変速レバー24の基部による押圧操作によってオン状態に切り換わる。
【0039】
つまり、操作位置検出手段41は、変速レバー24が前進域Fと後進域Rとのいずれの操作位置に操作されかを回転ポテンショメータ41aによって検出し、変速レバー24が主中立位置N1と副中立位置N2とに操作されたことを回転ポテンショメータ41aと検出スイッチ41bとによって検出し、これら検出結果を回転ポテンショメータ41aと検出スイッチ41bとによって制御手段42に出力する。
【0040】
前記作業選択手段25は、入り位置「入」と切り位置「切」とに切換え操作自在にスイッチによって構成してある。この作業選択手段25は、入り位置「入」に操作されると、前記操作位置検出手段41による検出情報を基にしたクラッチ操作を行わせるべきオン指令を制御手段42に出力し、切り位置「切」に操作されると、前記操作位置検出手段41による検出情報に優先したクラッチ操作を行わせるべきオフ指令を制御手段42に出力する。
【0041】
操作体位置検出手段43は、前記クラッチ操作体Cの回転支軸37に連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、回転支軸37の回転位置をクラッチ操作体Cの操作位置として検出し、この検出結果を制御手段42にフィードバックする。
【0042】
制御手段42は、マイクロコンピュータを利用して構成してある。図4は、制御手段42によるクラッチ操作のフロー図である。この図に示すように、制御手段42は、作業選択手段25から指令を基に、作業選択手段25が切り位置「切」に操作されているか否かを判断する。制御手段42は、作業選択手段25が切り位置「切」に操作されていると判断した場合、クラッチ操作体Cを操作位置検出手段41からの検出情報に優先して前記非作業位置に操作させるべく電動モータ22を操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に操作する。
【0043】
制御手段42は、作業選択手段25が切り位置「切」に操作されていないと判断した場合、操作位置検出手段41からの検出情報を基に、変速レバー24が主中立位置N1と副中立位置N2と前進域Fと後進域Rとのいずれの操作位置に操作されているかを判断する。
【0044】
制御手段42は、変速レバー24が主中立位置N1に操作されていると判断した場合と、変速レバー24が後進域Rに操作されていると判断した場合とにおいて、クラッチ操作体Cを副作業位置に操作させるべく電動モータ22を操作し、刈取りクラッチ17を切り状態に操作し、脱穀クラッチ14を入り状態に操作する。
【0045】
制御手段42は、変速レバー24が副中立位置N2に操作されていると判断した場合と、変速レバー24が前進域Fに操作されていると判断した場合とにおいて、クラッチ操作体Cを主作業位置に操作させるべく電動モータ22を操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に操作する。
【0046】
つまり、移動走行の場合、作業選択手段25を切り位置「切」に操作しておけば、変速レバー24を操作するだけで、刈取り部4と脱穀装置5とを停止状態にしながら走行機体を前後進走行させたり、停止させたりできる。
【0047】
すなわち、作業選択手段25を切り位置「切」に操作すると、制御手段42による刈取りクラッチ17の切り状態への切換え操作によって刈取り部4が停止し、制御手段42による脱穀クラッチ14の切り状態への切換え操作によって脱穀装置5が停止する。
【0048】
変速レバー24を主中立位置N1に操作すると、連動機構56が無段変速装置18を中立状態に変速操作して無段変速装置18が左右一対の走行装置1,1への伝動を遮断し、走行機体が停止する。変速レバー24を前進域Fに操作すると、連動機構56が無段変速装置18を前進側の伝動状態に変速操作して無段変速装置18がエンジン10からの駆動力を前進側の駆動力にして左右一対の走行装置1,1に伝達し、走行機体が前進走行する。変速レバー24を後進域Rに操作すると、連動機構56が無段変速装置18を後進側の伝動状態に変速操作して無段変速装置18がエンジン10からの駆動力を後進側の駆動力にして左右一対の走行装置1,1に伝達し、走行機体が後進走行する。走行機体が前進走行する場合には変速レバー24を前進域Fの前端に近づけるほど、走行機体が後進走行する場合には変速レバー24を後進域Rの後端に近づけるほど、いずれの場合も、無段変速装置18がより高速状態になり、走行機体の走行速度が速くなる。
【0049】
作業時には、作業選択手段25を入り位置「入」に操作しておけば、変速レバー24を操作するだけで、走行機体を走行させながら刈取りを行う通常作業、走行機体を停止させながら刈取りを行う停止刈り、枕扱き作業、後進走行のそれぞれに対応した状態を得ることができる。
【0050】
すなわち、主変速レバー24を前進域Rに操作すると、連動機構56による無段変速装置18の前進伝動状態への変速操作により、走行機体が前進走行する。このとき、制御手段42の作業選択手段25からのオン指令と、操作位置検出手段41による検出情報とに基づく刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切換え操作により、刈取り部4と脱穀装置5とが入り状態になる。
【0051】
主変速レバー24を主中立位置N1に操作すると、連動機構56による無段変速装置18の中立状態への変速操作により、走行機体が停止する。このとき、制御手段42の作業選択手段25からのオン指令と、操作位置検出手段41による検出情報とに基づく刈取りクラッチ17の切り状態への切換え操作と脱穀クラッチ14の入り状態への切換え操作とにより、刈取り部4が切り状態になり、脱穀装置5が入り状態になる。
【0052】
主変速レバー24を副中立位置N2に操作すると、連動機構56による無段変速装置18の中立状態への変速操作により、走行機体が停止する。このとき、制御手段42の作業選択手段25からのオン指令と、操作位置検出手段41による検出情報とに基づく刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切換え操作により、刈取り部4と脱穀装置5とが入り状態になる。
【0053】
主変速レバー24を後進域Rに操作すると、連動機構56による無段変速装置18の中立状態への変速操作により、走行機体が停止する。このとき、制御手段42の作業選択手段25からのオン指令と、操作位置検出手段41による検出情報とに基づく刈取りクラッチ17の切り状態への切換え操作と脱穀クラッチ14の入り状態への切換え操作とにより、刈取り部4が切り状態になり、脱穀装置5が入り状態になる。
【0054】
図9に示すように、前記レバー支持体51は、皿バネ70を有した摩擦機構71を備えている。この摩擦機構71は、前記レバー支持体51に摩擦による揺動抵抗を付与することにより、変速レバー24を前進位置Fと後進域Rとでの任意の操作位置に保持する。
【0055】
図8に示すように、前記変速レバー24に、前記支軸53にコイル部が装着されたスプリング73の一端側を係止させてある。前記スプリング73は、変速レバー24を前記軸芯Yまわりに揺動付勢しており、変速レバー24が前記ガイド溝55の前記主中立位置N1と前記副中立位置N2とを形成している部分に操作された際、変速レバー24を前記主中立位置N1に向けて揺動するよう付勢する。
【0056】
図8,9に示すように、前記変速レバー24は、変速レバー24と前記牽制体61とにわたって設けた牽制機構60と係止機構67とを備えている。
【0057】
前記牽制機構60は、変速レバー24の基部に設けた牽制ピン62及びスプリング63と、前記牽制体61に設けた係止突起64とを備えて構成してある。
【0058】
前記牽制ピン62は、変速レバー24が備える長孔形の貫通孔24bに摺動自在に係入し、かつ、変速レバー24の内部から前記貫通孔24bを通って外部に突出し、外部で前記牽制体61の孔部61aに入り込んでいる。前記スプリング63は、牽制ピン62を変速レバー24の握り部側に摺動付勢することにより、前記孔部61aにおける前記係止突起64の両横側の部位に移動付勢している。
【0059】
図8(イ)は、前記牽制機構60の作用状態での正面図である。この図に示すように、変速レバー24が前記主中立位置N1に操作されると、前記牽制ピン62が前記孔部61aの前記係止突起64に対して前記検出スイッチ41b側とは反対側に位置した部位に前記スプリング63によって位置決めされる。すると、牽制機構60は、牽制ピン62と係止突起64との当たりによって変速レバー24の前記主中立位置N1から前記副中立位置N2への切り換わりを牽制するよう作用状態になり、変速レバー24を前進域Fと後進域Rとの一方から他方に移動操作する場合など、変速レバー24が主中立位置N1に位置した際に副中立位置N2に誤操作されることを回避する。
【0060】
図8,9に示すように、前記係止機構67は、前記牽制ピン62と、前記係止突起64と、前記スプリング63と、前記牽制体61の前記係止突起64に対向した孔部周壁・とを備えて構成してある。
【0061】
図8(ロ)は、前記係止機構67の作用状態での正面図である。この図に示すように、変速レバー24が副中立位置N2に操作されると、前記牽制ピン62が前記係止突起64と前記孔部周壁61bとの間に前記スプリング・によって位置決めされる。すると、係止機構67は、係止突起64と牽制ピン62との当たりと、孔部周壁61bと牽制ピン62との当たりとによって変速レバー24を副中立位置N2に係止するよう作用状態になり、副中立位置N2に操作された変速レバー24を、手による保持操作がなくても、振動などの操作力が加わってもずれ動かないように副中立位置N2に保持する。
【0062】
図8(イ)に示すように、前記牽制機構60は、変速レバー24を支持する手で操作できるよう変速レバー24の握り部24cに設けた押しボタン形の解除用の操作部65を備えている。前記操作部65は、変速レバー24の内部に摺動自在に設けた操作ロッド66を介して前記牽制ピン62に連動しており、握り部24cの内側に向けて押し操作されると、操作部65の握り部内に位置する端部に設けてある傾斜カム面65aによって操作ロッド66を牽制ピン62が位置する側に摺動操作し、この操作ロッド66を介して牽制ピン62を前記スプリング63に抗して係止突起64から外れるよう摺動操作する。
【0063】
すなわち、牽制機構60は、操作部65が押し操作されることにより、牽制ピン62と係止突起64との当接を解除し、変速レバー24に対する牽制を解除した解除状態に切り換わり、変速レバー24が主中立位置N1から副中立位置N2に切換え操作されることを許容する。
【0064】
このように、前記操作部65が押し操作されると、牽制ピン62と係止突起64との当接が解除されることにより、前記係止機構67は、前記操作部65が押し操作されることにより、変速レバー24の係止を解除した解除状態に切り換わり、変速レバー24が副中立位置N2から主中立位置N1に切換え操作されることを許容する。
【0065】
〔別実施例〕
上記実施例の如く刈取りクラッチ17を電動モータ22によって操作するに替え、油圧式やエヤ式のシリンダよって操作する構成を採用して実施しても、本発明の目的を達成することができる。従って、電動モータ22、シリンダなどを総称してアクチュエータ22と呼称する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動装置の線図
【図3】操作装置のブロック図
【図4】クラッチ制御のフロー図
【図5】脱穀クラッチと刈取りクラッチとの切り状態での側面図
【図6】入り状態にある脱穀クラッチと、切り状態にある刈取りクラッチとの側面図
【図7】脱穀クラッチと刈取りクラッチとの入り状態での側面図
【図8】(イ)は、牽制機構の作用状態での正面図、(ロ)は、係止機構の作用状態での正面図
【図9】変速レバー支持構造の断面図
【図10】変速レバーの操作位置を示す平面図
【符号の説明】
【0067】
4 刈取り部
10 エンジン
17 刈取りクラッチ
18 無段変速装置
24 変速レバー
42 制御手段
60 牽制機構
65 操作部
67 係止機構
N1 主中立位置
N2 副中立位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの駆動力を走行用の無段変速装置に伝達するとともに前記無段変速装置の変速作用を受けない状態で刈取り部に伝達するように構成し、
前記刈取り部への伝動を入り切りする刈取りクラッチを備えたコンバインであって、
前記無段変速装置を操作する変速レバーに、無段変速装置が中立状態に操作される主中立位置と副中立位置とを備え、
前記変速レバーの操作位置を検出する操作位置検出手段と、前記刈取りクラッチを切換え操作するアクチュエータとを設け、
前記変速レバーが前記主中立位置に操作されると、前記刈取りクラッチが切り状態に切換え操作され、前記変速レバーが前記副中立位置に操作されると、前記刈取りクラッチが入り状態に切換え操作されるよう前記操作位置検出手段による検出情報を基に前記アクチュエータを操作する制御手段を設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記変速レバーの前記主中立位置から前記副中立位置への切り換わりを牽制する作用状態と、前記の牽制を解除した解除状態とに切換え自在な牽制機構を設け、
前記牽制機構を前記解除状態に切換え操作する操作部を前記変速レバーに備えてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記変速レバーを前記副中立位置に係止する作用状態と、前記の係止を解除した解除状態とに切換え操作自在な係止機構を設けてある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記係止機構を、前記牽制機構の前記操作部によって前記作用状態と前記解除状態とに切換え操作するよう構成してある請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−237096(P2008−237096A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81586(P2007−81586)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】