説明

コンバイン

【課題】排出口からの藁屑の排出がスムーズであるとともに、穀稈量が少ない場合に、排出口からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】揺動選別装置27の前下方に配設される唐箕ファン28と、揺動選別装置27の後部に配設されるストローラック33と、ストローラック33の上方に配設される吸引ファン30と、吸引ファン30を覆う吸引ファンケース35の下部カバー前部43aに取り付けられる遮蔽部材44と、を備えるコンバイン100において、遮蔽部材44は、回動部45を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、穀稈量検出手段50と遮蔽部材44の回動部45とが連動連結され、穀稈量が少なくなると、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが小さくなるように遮蔽部材44が上下回動されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、を備えるコンバインの技術に関し、より詳細には、穀稈量が少なくなった場合や回行時に、該遮蔽部材の下端と前記ストローラックとの間の隙間を小さくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、を備えるコンバインの技術は公知となっている。
例えば、特許文献1には、脱穀部と、チャフシーブ及びストローラックを有する揺動選別機構と、唐箕ファンと、吸引ファンとを備え、前記吸引ファンと前記ストローラックとの間には、該吸引ファンの吸引側及び吐出側を連通する開口が設けられ、前記開口の少なくとも一部を遮るように、基端部回りに弾性変形可能な遮閉部材が設けられているコンバインが開示されている。
【特許文献1】特開2006−254815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示されているコンバインは、吸引ファンとストローラックとの間に、該吸引ファンの吸引側及び吐出側を連通する開口を設け、且つ、該開口の少なくとも一部を遮るように、基端部回りに弾性変形可能な遮閉部材を設けたので、選別風の効率的な流れを形成しつつ、該選別風に乗って飛散する穀粒が前記開口を介して機外に排出されることを有効に防止できるものであるが、前記遮蔽部材で前記開口の一部を遮って形成される該開口の開度は一定であるため、穀稈量が少ない場合に、該開口の開度を小さくして、該開口(排出口)からの穀粒の飛散を防止することができない。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、排出口からの藁屑の排出がスムーズであるとともに、穀稈量が少ない場合に、排出口からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
すなわち、請求項1においては、
揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、
該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、
該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、
該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、
を備えるコンバインにおいて、
前記遮蔽部材は、回動部を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、穀稈量検出手段と該遮蔽部材の回動部とが連動連結され、
穀稈量が少なくなると、該遮蔽部材の下端と前記ストローラックとの間の隙間が小さくなるように該遮蔽部材が上下回動される、ものである。
【0007】
請求項2においては、
揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、
該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、
該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、
該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、
を備えるコンバインにおいて、
前記遮蔽部材は、回動部を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、該遮蔽部材の回動部に回動アクチュエーターが設けられ、該回動アクチュエーターと旋回検知手段とが連動連結され、
回行時に、該遮蔽部材の下端と前記ストローラックとの間の隙間が小さくなるように該遮蔽部材が上下回動される、ものである。
【0008】
請求項3においては、
前記回動部は、前記下部カバーの後部に設けられて、前記下部カバーの前部が上下回動可能に構成され、
該下部カバーの前部に、前記遮蔽部材が取り付けられ、穀稈量に応じて該下部カバーの前部が上下回動される、ものである。
【0009】
請求項4においては、
前記遮蔽部材は、弾性変形可能な部材とされる、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、
通常の刈取時は、遮蔽部材とストローラックとの隙間により、排出口からの藁屑の排出がスムーズである。
穀稈量が少なくなると、遮蔽部材が回動されて遮蔽部材とストローラックとの隙間が小さくされるため、排出口からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできる。
【0012】
請求項2においては、
通常の刈取時は、遮蔽部材とストローラックとの隙間により、排出口からの藁屑の排出がスムーズである。
回行時に穀稈量が少なくなると、遮蔽部材が回動されて遮蔽部材とストローラックとの隙間が小さくされるため、排出口からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできる。
【0013】
請求項3においては、
既存の穀稈量の連動機構を利用し、下部カバーの前部を後部に回動可能に支持させる簡単な構造で、遮蔽部材とストローラックとの隙間を調節することができる。
【0014】
請求項4においては、
大きな藁屑塊が排出される場合であっても、遮蔽部材が後方に押されるため、排出がスムーズである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図、図2は同じく平面図、図3は脱穀部の側面断面図、図4は穀稈量検出手段と揺動選別装置、唐箕ファン、吸引ファンとの関係を示した側面図、図5は吸引ファンの側面断面図、図6は制御ブロック図、図7は制御フロー図である。
【0016】
先ず、本発明の一実施例に係るコンバイン100の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。
なお、以下の説明では、走行機体1の進行方向に向かって左側を単に「左側」とし、同じく進行方向に向かって右側を単に「右側」とする。また、本実施例では、二条刈りのコンバインについて説明するが、三条刈り以上のコンバインであってもよい。
【0017】
図1及び図2に示すように、コンバイン100は、左右一対の走行クローラ2によって走行機体1が支持されており、この走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部3が昇降調節可能に装着されている。走行機体1の左側には、刈り取られた穀稈を脱穀、選別する脱穀部5が配設され、走行機体1の右側には、脱穀後の穀粒を貯留する穀粒タンク7が、脱穀部5と横並びに配設されている。走行機体1の後部には、排出オーガ8が旋回可能に設けられており、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出される。そして、穀粒タンク7の前方には、運転部10が配設されている。
【0018】
運転部10には、オペレータが搭乗するステップ11と、このステップ11上のハンドルコラム12に設けられた略U形の操縦ハンドル13と、この操縦ハンドル13の後方に設けられた運転座席14と、この運転座席14の左側方のサイドコラム15に設けられた主変速レバー16と副変速レバー17と刈取クラッチレバー18と刈取変速レバー19とが配設されている。そして、運転座席14の下方には、コンバイン100自体の走行や後述するフィードチェーン6を駆動するための動力源となるエンジン20が配設されている。
【0019】
また、刈取部3下部の刈取フレーム21の下方には、圃場の未刈り穀稈の株元を切断する刈刃装置(図示省略)が配設されている。刈取部3前部の刈取フレーム21の前方には、圃場の未刈り穀稈を引き起こす2条分の引起装置23が配設されている。引起装置23とフィードチェーン6の前端部(送り始端側)との間には、前記刈刃装置によって刈り取られた穀稈をフィードチェーン6へと搬送する穀稈搬送装置24が配設されている。引起装置23下部の刈取フレーム21の前端には、圃場の未刈り穀稈を分草する分草体25が突設されている。
【0020】
このような構成により、コンバイン100は、エンジン20にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取部3を駆動して圃場の未刈り穀稈を連続的に刈り取ることができる。
【0021】
そして、フィードチェーン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェーン60が配設され、この排藁チェーン60の下側に、チェーンガイド61(図4参照)が伸縮可能に構成され、排藁を「切断」と「非切断」とに切換可能とされている。フィードチェーン6の後端側から排藁チェーン60に受け継がれた排藁は、チェーンガイド61が伸長されて、長い状態のまま走行機体1の後方に排出されるか、またはチェーンガイド61が縮長されて、脱穀部5の後方に配設された排藁カッタ62にて適宜長さに短く切断された後、走行機体1の後方下方に排出される。
【0022】
次に、脱穀部5について、図3を用いて説明する。
図3に示すように、脱穀部5は、穀稈脱穀用の扱胴26と、この扱胴26が前後方向に架設される扱室40と、扱胴26の下方周囲に配設される受網22とを備える。受網22の下方には、選別部が配設され、この選別部は、受網22を通過した穀粒を揺動選別する揺動選別装置27と、この揺動選別装置27の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファン28と、揺動選別装置27の後部(ストローラック33)上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファン30とを備える。
また、揺動選別装置27の下方には、搬送部が配設され、この搬送部は、唐箕ファン28の後方に左右方向に横設され、穀粒(一番物)を搬送する一番コンベア36と、この一番コンベア36の後方に左右方向に横設され、枝梗付き穀粒等(二番物)を搬送する二番コンベア37と、一番コンベア36の右端に連通接続され、一番物を穀粒タンク7に搬送する揚穀筒38と、二番コンベア37の右端に連通接続され、二番物をフィードパン29上に戻す還元筒39とを備える。
【0023】
このような構成により、脱穀部5は、刈取部3から穀稈搬送装置24によって搬送された穀稈が、フィードチェーン6に株元側を受け継がれて後方へと挟持搬送され、この穀稈の穂先側が扱室40内に搬入されると、扱胴26の回転により穀稈を脱穀しながら前方から後方に搬送する。そして、受網22を漏下した穀粒は、揺動選別装置27による揺動選別と、唐箕ファン28による風選別とされて、一番コンベア36または二番コンベア37に落下し、一番コンベア36に落下した穀粒(一番物)は、揚穀筒38を介して穀粒タンク7に搬送され、二番コンベア37に落下した穀粒(二番物)は、還元筒39を介してフィードパン29上に戻されて再選別される。また、唐箕ファン28からの選別風に乗ってきた塵埃は、吸引ファン30に吸引されて機外に排出される。
【0024】
次に、揺動選別装置27について、図3及び図4を用いて説明する。
図3に示すように、前記揺動選別装置27は、揺動選別装置27の前部に配設されるフィードパン29と、このフィードパン29の後部に配設されるチャフシーブ31と、このチャフシーブ31の下方に配設されるグレンシーブ32と、揺動選別装置27の後部に配設されるストローラック33とを備え、受網22を通過した穀粒を揺動選別する。
【0025】
前記フィードパン29は、揺動選別装置27の前部に配設され、受網22を漏下した穀粒を均平、比重選別する。
【0026】
前記チャフシーブ31は、フィードパン29の後部に配設され、フィードパン29より送られた穀粒と藁屑及び受網22を漏下した穀粒と藁屑を粗選別する角度可変式横棧チャフシーブである。
すなわち、チャフシーブ31は、前後方向に所定の間隔で配列された複数の選別板31a・31a・・・を備え、後述する穀稈量検出手段50により穀稈量に応じて選別板31a・31a・・・の間隔が変更されて、フィードパン29より送られた穀粒と藁屑及び受網22を漏下した穀粒と藁屑を粗選別する。
【0027】
前記グレンシーブ32は、チャフシーブ31の下方に配設され、チャフシーブ31で粗選別された穀粒を唐箕ファン28の選別風と合いまって精選別を行う。
【0028】
前記ストローラック33は、揺動選別装置27の後部に配設され、藁屑をほぐして穀粒を二番コンベア37に落下させて、再選別を行い、藁屑を排出口41(三番口)から排出する。
【0029】
図4に示すように、チャフシーブ31の選別板31aは、左右一側端部がチャフ連動板31bに連結されており、このチャフ連動板31bの一端部に接続されたチャフシーブ調整アーム31cが回動されることにより、連動してチャフ連動板31bが前後方向に移動されるとともに、選別板31a・31a・・・が回動されて、傾斜角度が変更され、間隔が変更される。
【0030】
チャフシーブ調整アーム31cは、端部に同調ワイヤ31dの一端が接続されており、この同調ワイヤ31dの他端は、後述する穀稈量検出手段50(検出アーム51)に接続されている。チャフシーブ調整アーム31cは、端部にバネ(図示省略)が接続されており、同調ワイヤ31dの引張方向と反対方向に付勢されている。
【0031】
次に、唐箕ファン28について、図3及び図4を用いて説明する。
図3に示すように、前記唐箕ファン28は、揺動選別装置27の前下方に配設され、チャフシーブ31で粗選別された穀粒に選別風を送風して精選別を行う。
すなわち、唐箕ファン28は、チャフシーブ31(グレンシーブ32)を漏下する籾等に風を当て、風に逆らって落下する穀粒を一番コンベア36へ、比重の小さい軽い物を二番コンベア37上に飛ばす。その中で比較的重い物は、二番コンベア37に落下し、前述のように再度扱室40に戻されて、フィードパン29上に還元されて、再選別される。
【0032】
唐箕ファン28は、ファン本体を覆う唐箕ファンケース34を備え、唐箕ファンケース34は、後部が開放されて選別風を送風するための風路34bが形成されているとともに、側部が開放されて空気を導入するための吸入口34a(図4参照)が形成されている。
【0033】
図4に示すように、唐箕ファン28は、吸入口34aを開閉して送風力を調節するためのシャッター28aを備え、後述する穀稈量検出手段50により穀稈量に応じて吸入口34aが開閉されて送風力が調節される。
シャッター28aは、唐箕ファンケース34の側面に軸支されているシャッター軸28bの端部に固設されている。シャッター軸28bは、端部にシャッターレバー28cの一端が固設されており、このシャッターレバー28cは、他端に同調ワイヤ28dの一端が接続されており、この同調ワイヤ28dの他端は、後述する穀稈量検出手段50(検出アーム51)に接続されている。シャッターレバー28cは、他端にバネ(図示省略)が接続されており、同調ワイヤ28dの引張方向と反対方向に付勢されている。
【0034】
次に、吸引ファン30について、図3から図5を用いて説明する。
図3に示すように、前記吸引ファン30は、揺動選別装置27の後部(ストローラック33)上方に配設され、唐箕ファン28からの選別風に乗ってきた塵埃を吸引して機外に排出する横断流ファンであり、揺動選別装置27の略全幅(左右方向)に横設されている。
図4に示すように、吸引ファン30は、ファン本体を覆う吸引ファンケース35と、この吸引ファンケース35の下部カバー43に取り付けられ、排出口41からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材44とを備え、穀稈量検出手段50と遮蔽部材44とが下部カバー43(下部カバー前部43a)を介して連動連結され、穀稈量が少なくなると、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間(図5に示す隙間D)が小さくなるように遮蔽部材44が上下回動される。
【0035】
吸引ファンケース35は、吸引ファン30の上部を覆う上部カバー42と、同じく下部を覆う下部カバー43とを備える。
吸引ファンケース35は、前部に塵埃を吸引するための吸引口35aが開口されているとともに、後部に吸引した塵埃を機外に排出するための排塵口35bが開口されており、唐箕ファン28からの選別風に乗ってきた塵埃を前部の吸引口35aから吸引し、後部の排塵口35bから機外に排出する。
【0036】
下部カバー43は、下部カバー43の前部を構成する下部カバー前部43aと、同じく後部を構成する下部カバー後部43bとを備える。
下部カバー後部43bの前端には、枢支軸等よりなる回動部45が設けられて、下部カバー前部43aが上下回動可能に構成されるとともに、下部カバー前部43aの前端に、遮蔽部材44が取り付けられ、穀稈量に応じて下部カバー前部43aが上下回動される。下部カバー前部43aは、端部に同調ワイヤ43dの一端が接続されており、この同調ワイヤ43dの他端は、後述する穀稈量検出手段50(検出アーム51)に接続されている。下部カバー前部43aは、端部にバネ43c(図5参照)が接続されており、同調ワイヤ43dの引張方向と反対方向に付勢されている。
【0037】
遮蔽部材44は、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間に所定の隙間D(図5参照)を形成して、下部カバー前部43aの前端に取り付けられている。遮蔽部材44は、弾性変形可能な部材(ゴム製等)であり、排出口41から大きな藁屑塊が排出される場合であっても、遮蔽部材44が後方に押されて弾性変形する。
【0038】
次に、穀稈量に応じて上下回動する遮蔽部材44に係る構成について、図4及び図5を用いて説明する。
図4に示すように、前記穀稈量検出手段50は、検出ロッド52と、検出プレート53と、回動軸54と、検出アーム51とを備える。
穀稈量検出手段50は、左右方向に軸心を有する回動軸54が、コンバイン100の機体に枢支されており、この回動軸54に、検出プレート53の端部(後端)及び検出アーム51の一端(上端)が固定されている。検出プレート53の上面には、チェーンガイド61の下面に垂設されている検出ロッド52の下端が当接されている。検出アーム51の他端(下端)には、前記同調ワイヤ31d(チャフシーブ調整アーム31cに接続)、28d(シャッターレバー28cに接続)、43d(下部カバー前部43aに接続)が取り付けられている。
【0039】
このような構成により、排藁チェーン60により機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が増加すると、チェーンガイド61が下方に押し下げられて、検出プレート53及び検出アーム51が回動軸54を中心として反時計回りに回動されて、検出アーム51の他端(下端)に取り付けられている同調ワイヤ31d、28dが後方に引っ張られ、同調ワイヤ43dが後方に押される。
【0040】
チャフシーブ31は、同調ワイヤ31dが後方に引っ張られると、前記バネ(図示省略)の付勢力に抗して、チャフシーブ調整アーム31cが、反時計回りに回動される。チャフシーブ調整アーム31cが反時計回りに回動されると、連動してチャフ連動板31bが後方向に移動される。チャフ連動板31bが後方向に移動されると、選別板31a・31a・・・が回動されて、傾斜角度が大きくされ、間隔が大きくされる。
【0041】
一方、唐箕ファン28は、同調ワイヤ28dが後方に引っ張られると、前記バネ(図示省略)の付勢力に抗して、シャッターレバー28cがシャッター軸28bを中心として、反時計回りに回動される。シャッターレバー28cが反時計回りに回動されると、シャッター軸28bを介してシャッター28aが反時計回りに回動されて、シャッター28aの開度が大きくされて、吸入口34aからの空気の導入量が増加される。
【0042】
そして、吸引ファン30は、排藁チェーン60により機体後部に搬送される排藁(穀稈)の量が減少すると、同調ワイヤ43dが後方に引っ張られ、図5に示すように、前記バネ43cの付勢力に抗して、下部カバー前部43aが回動部45を中心として、反時計回りに回動される。下部カバー前部43aが反時計回りに回動されると、遮蔽部材44が下方に回動されて、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが小さくされる。
【0043】
このような構成により、選別風や揺動選別装置27の揺動等により飛散した穀粒は、遮蔽部材44に当たって跳ね返され、ストローラック33より二番コンベア37へ落下するため、排出口41から機外へ排出されることがなく、三番ロスを少なくできる。
一方、吸引ファン30は、羽根外周と吸引ファンケース35との間隔(吸引口35a)が大きくなり、吸引力が低下する。また、チャフシーブ31は、選別板31a・31a・・・の傾斜角度が小さくされて、間隔が小さくされ、唐箕ファン28は、シャッター28aの開度が小さくされて、吸入口34aからの空気の導入量が減少される。
なお、反対に排藁(穀稈)量が増加すると、これとは反対の動作により、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが大きくなり、通常の間隔とされて、詰まりを防止する。
【0044】
次に、穀稈量を検知して、遮蔽部材44をアクチュエーターにより上下させる構成について、図6及び図7を用いて説明する。
前記枢支軸等よりなる回動部45には、回動アクチュエーター(回動モータ、シリンダ等)55が設けられ、前記排藁チェーン60の下方に設けられている検出ロッド52には、排藁量(穀稈量)検知手段であるスイッチ56が設けられている(図6参照)。
図6に示すように、スイッチ56及び回動モータ55は、コントローラ57に接続されており、回行時や作業終了時等で排藁量が減少し、所定量以下であることをスイッチ56が検知すると、回動モータ55が駆動されるように制御されて、回動部45、下部カバー前部43aを介して遮蔽部材44が下方へ回動される。なお、スイッチ56の設置位置は、検出ロッド52に限定するものではない。
【0045】
次に、排藁が減少した時におけるコントローラ57による回動モータ55の制御フローについて、図7を用いて説明する。
【0046】
図7に示すように、スイッチ56が、排藁の減少を検知すると、コントローラ57へ検知信号が送信される(ステップ1、6)。コントローラ57は、スイッチ56から検知信号が送信される場合、「排藁減少時」を認識する(ステップ7)。コントローラ57が「排藁減少時」を認識すると、回動モータ55は、駆動される(ステップ8)。回動モータ55が駆動されて、回動部45(枢支軸)、下部カバー前部43aを介して遮蔽部材44が下方へ回動され(ステップ9)、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが小さくされる。
【0047】
その後、排藁量が設定値より増加すると、スイッチ56は、コントローラ57へ検知信号を送信しない(ステップ1、2)。コントローラ57は、スイッチ56から検知信号が送信されない場合、「排藁通常時」であることを認識する(ステップ3)と、回動モータ55は、前記「排藁減少時」とは反対方向に駆動される(ステップ4)。回動モータ55が駆動されて、回動部45(枢支軸)、下部カバー前部43aを介して遮蔽部材44が上方へ回動され(ステップ5)、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが大きくされる。
【0048】
以上のように、コンバイン100は、揺動選別装置27の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファン28と、揺動選別装置27の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口41から機外に排出するストローラック33と、ストローラック33の上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファン30と、吸引ファン30を覆う吸引ファンケース35の下部カバー前部43aに取り付けられ、排出口41からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材44と、を備えるコンバイン100において、遮蔽部材44は、回動部45を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、穀稈量検出手段50と遮蔽部材44の回動部45とが連動連結され、穀稈量が少なくなると、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが小さくなるように遮蔽部材44が上下回動されるものである。
【0049】
このような構成により、通常の刈取時は、遮蔽部材44とストローラック33との隙間Dにより、排出口41からの藁屑の排出がスムーズである。穀稈量が少なくなると、遮蔽部材44が下方に回動されて遮蔽部材44とストローラック33との隙間Dが小さくされるため、排出口41からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできる。
【0050】
そして、揺動選別装置27の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファン28と、揺動選別装置27の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口41から機外に排出するストローラック33と、ストローラック33の上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファン30と、吸引ファン30を覆う吸引ファンケース35の下部カバー前部43aに取り付けられ、排出口41からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材44と、を備えるコンバイン100において、遮蔽部材44は、回動部45を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、遮蔽部材44の回動部45に回動モータ55が設けられ、回動モータ55とスイッチ56とが連動連結され、回行時に、遮蔽部材44の下端とストローラック33との間の隙間Dが小さくなるように遮蔽部材44が上下回動されるものである。
【0051】
このような構成により、通常の刈取時は、遮蔽部材44とストローラック33との隙間Dにより、排出口41からの藁屑の排出がスムーズである。回行時に穀稈量が少なくなると、遮蔽部材44が下方に回動されて遮蔽部材44とストローラック33との隙間Dが小さくされるため、排出口41からの穀粒の飛散を防止して、穀粒のロス量を少なくできる。
【0052】
また、回動部45は、下部カバー後部43bに設けられて、下部カバー前部43aが上下回動可能に構成され、下部カバー前部43aに、遮蔽部材44が取り付けられ、穀稈量に応じて下部カバー前部43aが上下回動されるものであるため、既存の穀稈量の連動機構(穀稈量検出手段50等)を利用し、下部カバー前部43aを後部に回動可能に支持させる簡単な構造で、遮蔽部材44とストローラック33との隙間Dを調節することができる。
【0053】
そして、遮蔽部材44は、弾性変形可能なゴム製等の部材とされるものであるため、大きな藁屑塊が排出される場合であっても、遮蔽部材44が後方に押されるため、排出がスムーズである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインを示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】脱穀部の側面断面図。
【図4】穀稈量検出手段と揺動選別装置、唐箕ファン、吸引ファンとの関係を示した側面図。
【図5】吸引ファンの側面断面図。
【図6】制御ブロック図。
【図7】制御フロー図。
【符号の説明】
【0055】
27 揺動選別装置
28 唐箕ファン
30 吸引ファン
33 ストローラック
35 吸引ファンケース
41 排出口
43 下部カバー
43a 下部カバー前部
43b 下部カバー後部
44 遮蔽部材
45 回動部
50 穀稈量検出手段
55 回動モータ
56 スイッチ
100 コンバイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、
該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、
該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、
該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、
を備えるコンバインにおいて、
前記遮蔽部材は、回動部を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、穀稈量検出手段と該遮蔽部材の回動部とが連動連結され、
穀稈量が少なくなると、該遮蔽部材の下端と前記ストローラックとの間の隙間が小さくなるように該遮蔽部材が上下回動される、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
揺動選別装置の前下方に配設され、揺動選別された穀粒に選別風を送風する唐箕ファンと、
該揺動選別装置の後部に配設され、藁屑を移送して機体後部の排出口から機外に排出するストローラックと、
該ストローラックの上方に配設され、塵埃を吸引して機外に排出する吸引ファンと、
該吸引ファンを覆うファンケースの下部カバーに取り付けられ、前記排出口からの穀粒の飛散を防止する遮蔽部材と、
を備えるコンバインにおいて、
前記遮蔽部材は、回動部を備えて、上下回動可能に構成されるとともに、該遮蔽部材の回動部に回動アクチュエーターが設けられ、該回動アクチュエーターと旋回検知手段とが連動連結され、
回行時に、該遮蔽部材の下端と前記ストローラックとの間の隙間が小さくなるように該遮蔽部材が上下回動される、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記回動部は、前記下部カバーの後部に設けられて、前記下部カバーの前部が上下回動可能に構成され、
該下部カバーの前部に、前記遮蔽部材が取り付けられ、穀稈量に応じて該下部カバーの前部が上下回動される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、弾性変形可能な部材とされる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−289455(P2008−289455A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141025(P2007−141025)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】