説明

コンバイン

【課題】畦際で停車したままこの畦際の植立穀稈を刈り取った後、走行状態に復帰する際に、急発進による畦への衝突を少なくする。
【解決手段】コンバインの操作部(10)に機体(2)を前進させずに刈取装置(6)の駆動を可能とする掻込用ペダル(9)を設け、操作部(10)に設けた主変速レバー(11)の操作によって回転する非円形状のカム軸(13)を掻込用ペダル(9)の基部に設けたガイド溝(14)に挿し込み、主変速レバー(11)を中立位置に操作しないと掻込用ペダル(9)が踏込位置から初期位置へ復帰しない構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第3848876号公報で示すように、左右のクローラ走行装置と、該クローラ走行装置を駆動する走行用HSTと、左右の該クローラ走行装置に動力の伝達を行う左右の操向クラッチと、変速操作用の主変速レバーと、左右の操向クラッチを切断して走行を停止したまま、前処理部による穀稈搬送を継続する強制掻込み装置とを備えたコンバインにおいて、左右の操向クラッチを同時に切断、及び同時に接続する強制掻込スイッチの切換操作は、主変速レバーが走行用HSTの回転を停止させる中立位置にある場合にのみ有効であることを特徴とするコンバインであった。
【特許文献1】特許第3848876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
左右のクローラ走行装置に動力の伝達を行う左右の操作クラッチと、変速操作用の主変速レバーと、左右の操向クラッチを切断して走行を停止したまま、前処理部による穀稈搬送を継続する強制掻込み装置とを備えたコンバインにおいて、左右の操向クラッチを同時に切断、及び同時に接続する強制掻込スイッチの切換操作は、主変速レバーが走行用HSTの回転を停止させる中立位置にある場合のみ有効であることにより、操作がめんどうであると共に、構成が複雑であり、コストアップの要因になったり部品管理が困難になることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
即ち、走行装置(4)を有する車台(3)の上側に操作部(10)と脱穀装置(7)を設け、該脱穀装置(7)の前側に刈取装置(6)を設け、前記操作部(10)に機体(2)を前進させずに刈取装置(6)の駆動を可能とする掻込用ペダル(9)を設け、操作部(10)に設けた主変速レバー(11)の操作によって回転する非円形状のカム軸(13)を掻込用ペダル(9)の基部に設けたガイド溝(14)に挿し込み、主変速レバー(11)を中立位置に操作しないと掻込用ペダル(9)が踏込位置から初期位置へ復帰しない構成としたことを特徴とするコンバインとしたものである。
【0005】
例えば、畦際で停車した状態で刈取装置6に保持した植立穀稈がある時には、掻込用ペタル9を踏込んで主変速レバー11を前進操作し、走行装置4を前進駆動せずに刈取装置6のみを回転駆動させて、この穀稈を刈り取る。この掻込用ペダル9は、主変速レバー11を中立位置に操作し、カム軸13がガイド溝14内で回転してこのカム軸13の非円形状の短辺がガイド溝14の幅方向に位置しないと、踏込位置から初期位置へ復帰しない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、畦際で主変速レバー11を中立位置に戻し操作して停車し、掻込用ペダル9を踏み込んで停車状態を維持したまま、主変速レバー11を前進操作して刈取装置6を駆動し、この畦際の植立穀稈を刈り取ることができる。そして、主変速レバー11を中立位置に戻し操作せずに掻込用ペダル9を放してしまっても、掻込用ペダル9が初期位置に復帰しないため、急発進による畦への衝突を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台3の下側には、圃場面を走行する走行装置4の走行クローラ5を左右両側に設けている。該走行車台3の前側には、立毛穀稈を後方上部へ移送する刈取装置6を設け、該刈取装置6より刈取穀稈の供給を受け、脱穀する脱穀装置7を該走行車台3の上側へ載置すると共に、該脱穀装置7の右側には、脱穀済みで選別済みの穀粒の供給を受けて、一時貯留する穀粒貯留タンク8を載置している。
【0008】
立毛穀稈を廻り刈取り作業の時に、畦際で刈取装置6内に残った刈取り穀稈は、該コンバイン1の機体2を進行させずに、該刈取装置6のみを回転駆動させて、穀稈の供給を受けて、脱穀する該脱穀装置7内まで取り込むことを可能にする掻込用ペダル9を走行車台3に設け、該掻込用ペダル9は、操作部10に設けた主変速レバー11と連結したカム機構12により、該主変速レバー11を中立位置に操作しないと、該掻込用ペダル9を踏込めない構成にして設けると共に、該カム機構12を有するカム軸13は、該掻込用ペダル9の中に設けたガイド溝14に差込み、該カム軸13の外周は全て該掻込用ペダル9のプレート9aにより、囲われるように設けた構成としている。該掻込用ペダル9と該主変速レバー11等との取付け関係を主に図示して説明する。
【0009】
前記コンバイン1の機体2は、走行車台3の下側には、図3で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ5を張設した走行装置4を配設し、走行車台3の上側面に脱穀装置7を載置している。該走行車台3の前方部の刈取装置6で立毛穀稈を刈り取りして、後方上部に移送し、該脱穀装置7のフィードチェン7aと、挟持杆7bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済み穀粒は、該脱穀装置7の右横側へ配設した穀粒貯留タンク8内へ供給され、一時貯留される。
【0010】
前記走行車台3の前方部には、図3で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド15、及び各分草体16と、立毛穀稈を引起す各引起装置17と、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置18の各掻込装置19と、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置20と、刈取りされた穀稈を挟持移送して脱穀装置7のフィードチェン7aと、挟持杆7bとへ受渡しする該穀稈掻込移送装置18の根元・穂先移送装置21・22等からなる刈取装置6を設けている。該刈取装置6は、油圧駆動による伸縮シリンダ23により、土壌面に対して昇降する。
【0011】
前記刈取装置6の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆24aの上端部に設ける支持パイプ杆24bを、走行車台3の上側面に設けた支持装置24cで回動自在に支持させている。該伸縮シリンダ23を作動させると該支持杆24aと共に、該刈取装置6が上下回動する。
【0012】
前記刈取装置6の穀稈掻込移送装置21によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置7への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ6aを設けている。
【0013】
図1、及び図2で示すように、前記コンバイン1の該刈取装置6で立毛穀稈を廻り刈取り作業時に、畦際で該刈取装置6内に残った刈取り穀稈を処理するときには、該コンバイン1の機体2を進行操作させずに該刈取装置6のみを回転駆動させて、穀稈の供給を受けて脱穀する脱穀装置7まで取り込むことを可能にする掻込用ペダル9を走行車台3に設けている。該掻込用ペダル9は、操作部10に設けた主変速レバー11と連結したカム機構12により、該主変速レバー11を中立位置に操作しないと、該掻込用ペダル9を踏込めない構成にして設けると共に、該カム機構12を有するパイプ材よりなるカム軸13は、該掻込用ペダル9の中に設けたガイド溝14に差込み、該カム軸13の外周は全て該掻込用ペダル9のプレート9aにより、囲われるように設けた構成である。
【0014】
前記掻込用ペダル9は、図1、及び図2で示すように、略V字形状のプレート9aの一方側の端部を、走行車台3の下側の取付板3aに設けた支持ピン3bで軸支して設け、該プレート9aの上端部には、逆へ字形状の踏板9bを設けると共に、下端部には、上下方向に所定長さのガイド溝14を下部から上部へ円形状に傾斜させて設け、該掻込用ペタル9を踏込み自在に軸支して設けている。
【0015】
前記操作部10には、主変速レバー11を回動自在に軸支して設け、該主変速レバー11は、主変速レバー軸11aの下端部に回動ボス11bを設け、この回動ボス11bの外周下部には、プレート11cを設け、このプレート11cと、カム軸13に設けた支持板13aとの間には、全長を調節自在な調節ロット13bを設け、この調節ロット13bは、上・下調節軸13c、13d間に調節具13eを設け、該調節ロット13bの全長を調節可能に設けて、該主変速レバー11の「入」−「切」の作動調節を可能にして設けた構成である。
【0016】
前記掻込用ペダル9の前側には、上カバー2aと、下カバー2bとを設けた構成である。
前記コンバイン1で立毛穀稈を収穫作業の時で、穀稈を廻り刈取り時に、畦際で刈取装置6内に残った穀稈があった時には、機体2を進行させずに、該刈取装置6のみを回転駆動させて、穀稈の供給を受けて脱穀する脱穀装置7内まで取り込むことを、可能にする掻込用ペダル9を走行車台3に設け、この掻込用ペダル9は、操作部10に設けた主変速レバー11と連結したカム機構12により、該主変速レバー11を中立位置に操作しないと、該掻込用ペダル9を踏み込めない構成にして設けている。
【0017】
又、前記カム機構12を有するカム軸13は、該掻込用ペダル9の中に設けたガイド溝14に差込み、該カム軸13の外周は全て該掻込用ペタル9のプレート9aにより、囲われるように設け、該カム軸13と該掻込用ペダル9とは、一体で回動する構成である。
【0018】
上述により、前記カム軸13と掻込用ペダル9のガイド溝14との位置関係の精度を確実に出せることにより、該掻込用ペダル9の強度を確保することができるし、又、踏込みの操作が容易である。
【0019】
前記穀粒貯留タンク8側の前部の操作部10には、図3で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置25と、操縦席26とを設け、この操縦席26の下側にエンジン27を載置している。
【0020】
前記走行車台3の前端部に装架した走行用ミッションケース28内の伝動機構28aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ28bを設けている。
【0021】
前記穀粒貯留タンク8内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク8の後側には、図3で示すように、縦移送螺旋29aを内装した排出支持筒29を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒29の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋30aを伸縮自在に内装した排出オーガ30を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【0022】
前記操作装置25は、図1〜図4で示すように、前フロントパネル25aと、後フロントパネル25bとに2分割して設けると共に、該前フロントパネル25aには、主変速レバー11を高速位置と、低速位置と、中立位置とに切換操作する切換溝25cを設けている。又、該切換溝25cは操縦席26の前方左側に設けている。
【0023】
上記により、部分的な倒伏稈への早期対応を容易にした。又、前記主変速レバー11の操作荷重の低減を図ることができる。
前記操作装置25の前フロントパネル25aには、図4、及び図5で示すように、主変速レバー11の切換溝25cの右側後部には、刈取変速レバー11d用のレバー切換溝25dを、右傾斜配置に設けている。
【0024】
上記により、前記刈取変速レバー11dの切換操作の敏速化、及び取扱性の容易化、手前に引くことにより、操作荷重の低減を図ることができる。
図7、及び図8で示すように、前記脱穀装置7の穀稈を脱穀する、扱胴31aを内装した脱穀室31の後側で排塵物を再脱穀処理する排塵胴32aを内装した排塵処理室32と、該脱穀室31との下側には、脱穀処理物の供給を受けて、揺動選別する揺動選別装置33を設け、この揺動選別装置33の移送終端部には、移送棚34を該排塵処理室32の後端部より延長して設け、この移送棚34の移送面には、所定角度で所定間隙に複数個の案内ガイド34aを固着して設けている。この案内ガイド34aは、該排塵胴32aの接線延長に配置している。又、該案内ガイド34a間の巾は、該排塵胴32側の(イ)側より、(ロ)側を広くして設けている。(イ)側の傾斜角より、(ロ)側の傾斜角をゆるくして設けている。
【0025】
上記により、前記排塵胴32aよりの排塵物を寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】主変速レバーと、掻込用ペダルとの関係側面図
【図2】主変速レバーと、掻込用ペダルとの関係正面図
【図3】コンバインの全体側面図
【図4】操作装置部と、操縦席部との関係平面図
【図5】前フロントパネル部の平面図
【図6】前フロントパネル部の側面図
【図7】脱穀装置の側断面図
【図8】脱穀装置の正面図
【符号の説明】
【0027】
2 機体
3 走行車台(車台)
4 走行装置
6 刈取装置
7 脱穀装置
9 掻込用ペダル
10 操作部
11 主変速レバー
13 カム軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(4)を有する車台(3)の上側に操作部(10)と脱穀装置(7)を設け、該脱穀装置(7)の前側に刈取装置(6)を設け、前記操作部(10)に機体(2)を前進させずに刈取装置(6)の駆動を可能とする掻込用ペダル(9)を設け、操作部(10)に設けた主変速レバー(11)の操作によって回転する非円形状のカム軸(13)を掻込用ペダル(9)の基部に設けたガイド溝(14)に挿し込み、主変速レバー(11)を中立位置に操作しないと掻込用ペダル(9)が踏込位置から初期位置へ復帰しない構成としたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−153438(P2009−153438A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334513(P2007−334513)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】