説明

コンバイン

【課題】圃場の穀稈を前進走行しながら連続して刈り取って脱穀するようにしたコンバインにおいて,前記刈取前処理装置3の駆動速度を,車速同調機構53にて前進走行時の車速に同調するという車速同調にすること,及び,刈取クィック機構54にて前記車速同調のときよりも早くするという刈取クィックにすることを,簡単な構成で達成する。
【解決手段】前記コンバインにおける走行ミッションケース18に,一本のPTO軸49を,当該PTO軸の少なくとも一端が走行ミッションケースから突出するように設け,この突出端から前記刈取前処理装置3に動力伝達するように構成する一方,前記PTO軸のうち前記走行ミッションケース内の部分に,前記車速同調機構53と,前記刈取クィック機構54を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圃場に植立する穀稈を,適宜の速度で走行しながら連続して刈り取って脱穀するようにしたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,この種のコンバインは,従来から良く知られているように,走行装置にて走行可能に支持された走行機体に,当該走行機体の前部に位置して圃場に植立する穀稈を刈取る機構及び刈り取った穀稈を後方に移送する機構を備えてなる刈取前処理装置,この刈取前処理装置より後方において穀稈の脱穀処理を行う脱穀装置,及び前記刈取前処理装置からの穀稈を前記脱穀装置における扱胴に沿って移送するフィードチエン等を設け,前記走行装置,刈取前処理装置,脱穀装置及びフィードチエン等を,前記走行機体に搭載したエンジンにて駆動するという構成である。
【0003】
また,従来のコンバインにおいては,前記刈取前処理装置を,前記走行装置による走行速度を加速すると当該刈取前処理装置における駆動速度を加速し,走行速度を減速すると当該刈取前処理装置における駆動速度を減速するというように,前記走行装置による車速に同調する(車速同調)構成にするとともに,刈取穀稈の一時的な増大等に対応するために,前記車速同調を解除したうえで,前記刈取前処理装置における駆動速度を前記車速同調の時よりも高速にするといういわゆる刈取クィック(高速一定)に切り換えることができるという構成にしている(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
この場合,従来のコンバインにおいては,前記特許文献1等に記載されているように,前記走行機体の前部に,前記エンジンから前記刈取前処理装置(及びフィードチエン)への動力伝達用のカウンタケースを取付け,このカウンタケースに,前記車速同調に切り換えるための車速同調機構と,前記刈取クィック(高速一定)に切り換えるための刈取クィック機構とを内蔵し,前記車速同調機構に,前記エンジンからの動力を,走行ミッションケースにおける車速変速機構からの変速出力軸より入力する一方,前記刈取クィック機構に,前記エンジンからの動力を直接に入力するという構成にしている。
【特許文献1】特開2005−261279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,前記した構成である場合,走行機体の前部におけるカウンタケースが,これに前記車速同調機構及び刈取クィック機構の両方を内蔵することで大型化するばかりか,前記カウンタケースへの動力伝達系統,換言すると,前記刈取前処理装置への動力伝達系統が,走行ミッションケースの車速変速機構における車速出力軸から前記車速同調機構への動力伝達系統と,エンジンから前記刈取クィック機構への直接の動力伝達系統との二つの系統になるから,コンバインにおける大幅な大型化及び重量のアップを招来するという問題がある。
【0006】
また,前記刈取前処理装置を,前記走行機体に対して平面視で外向きに回動可能に枢着し,この外向きの回動にて前記脱穀装置の前面を開放(オープン)にすることで前記脱穀装置のメンテナンス性の向上を図るように構成した場合,前記脱穀装置の前面に存在する前記大型のカウンタケース及び前記二つの動力系統が,前記脱穀装置に対するメンテナンス性を大幅に妨げることになるという問題もあった。
【0007】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を達成するため本発明の請求項1は,
「走行装置にて走行可能に支持された走行機体に,圃場に植立する穀稈を刈取る機構及び刈り取った穀稈を後方に移送する機構を備えてなる刈取前処理装置,この刈取前処理装置の後方において穀稈の脱穀処理を行う脱穀装置,前記刈取前処理装置からの穀稈を前記脱穀装置における扱胴に沿って移送するフィードチエン,及び,これらを駆動するエンジンを搭載する一方,前記走行装置に対する走行変速機構を備えた走行ミッションと,前記刈取前処理機構における駆動速度を前記走行装置における車速に同調する車速同調機構と,前記刈取前処理機構における駆動速度を前記車速同調の時よりも高速にする刈取クィック機構を備えて成るコンバインにおいて,
前記走行ミッションケースに,一本のPTO軸を,当該PTO軸の少なくとも一端が走行ミッションケースから突出するように設け,この突出端から前記刈取前処理装置に動力伝達するように構成する一方,前記PTO軸のうち前記走行ミッションケース内の部分に,前記車速同調機構と,前記刈取クィック機構を設ける。」
ことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記車速同調機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構からの変速出力軸との間の部分に設ける一方,前記刈取クィック機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構への入力軸との間の部分に設ける。」
ことを特徴としている。
【0010】
本発明における請求項3は,
「前記請求項2の記載において,前記走行変速機構からの変速出力軸と前記車速同調機構との間に,前記変速出力軸が前進走行方向に回転するときのみ前記車速同調機構に動力伝達し,前記車速同調機構から前記変速出力軸への方向には動力伝達を行わないようにした一方向クラッチ機構を設ける。」
ことを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項4は,
「前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記PTO軸から前記フィードチエンに動力伝達するように構成する。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
前記請求項1に記載したように,走行ミッションケースに,車速同調機構及び刈取クィック機構を内蔵したことにより,従来のように走行機体の前部にカウンタケースを設けることを省略できるか,或いは,仮に前記カウンタケースを設けるにしても,このカウンタケースを小型化できる。
【0013】
しかも,前記請求項1に記載したように,前記車速同調機構及び刈取クィック機構を一本のPTO軸上に設け,このPTO軸から刈取前処理装置に動力伝達することにより,前記刈取前処理装置への動力伝達系統を一つにすることができる。
【0014】
従って,請求項1の記載によると,コンバインの大幅な小型・軽量化を図ることができるのであり,また,前記刈取前処理装置を,平面視において外向き回動可能に構成した場合において,脱穀装置に対する確実なメンテナンス性を確保できる。
【0015】
この場合において,前記走行ミッションケース内における走行変速機構への入力軸における回転数は,前記走行変速機構からの変速出力軸における回転数よりも元々早くなっているから,請求項2に記載したように,前記車速同調機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構からの変速出力軸との間の部分に,前記刈取クィック機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構への入力軸との間の部分に設けることにより,刈取クィックの際に,前記PTO軸の回転数,ひいては,刈取前処理装置における駆動速度を車速同調のときよりも早くすることを,少ない歯車列にて実現できるから,前記走行ミッションケースの小型・軽量化を図ることができる。
【0016】
次に,請求項3の記載によると,走行装置を走行変速機構にて後退走行にした場合に,前記刈取前処理装置が逆回転することを阻止できるから,前記刈取前処理装置における逆回転による破損を確実に回避できるとともに,前記車速同調機構を作動したままの状態で,前記刈取クィック機構を作動することができるから,操作性を向上できる。
【0017】
特に,請求項4の記載によると,前記した効果を確保した状態のもとで,脱穀装置に対するフィードチエンを,刈取前処理装置と一緒に車速同調又は刈取クィックにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明の実施の形態を図面に示すコンバインについて説明する。
【0019】
本実施の形態のコンバインは,左右一対の走行クローラ2等の走行装置にて支持されて走行する走行機体1を備えている。走行機体1の前部には,圃場の植立穀稈(未刈穀稈)を刈り取りながら取り込んで後方に移送するようにした刈取前処理装置3が,詳しくは後述するように,水平方向の旋回可能に,且つ,上下昇降可能に装着されている。
【0020】
更に,走行機体1には,前記刈取前処理装置3の後方の部位に,フィードチェン5付きの脱穀装置4と,脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク6とが横並び状に搭載されている。この場合,脱穀装置4が走行機体1の進行方向左側に,穀粒タンク6が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部には,先端に穀粒排出口8を備えた排出コンベヤ7が水平方向に旋回可能に設けられている。穀粒タンク6内の穀粒は,排出コンベヤ7の先端における穀粒排出口8から,例えばトラックの荷台やコンテナ等に排出される。
【0021】
刈取前処理装置3と穀粒タンク6との間には操縦部9が設けられている。操縦部9内には,走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作する操向ハンドル10や,オペレータが着座する操縦座席11等が配置されている。操縦座席11の一側方に配置されたサイドコラム12には,走行機体1の変速操作を行うための主変速レバー13及び副変速レバー14,刈取前処理装置3への動力継断操作用の刈取クラッチレバー15,並びに,脱穀装置4への動力継断操作用の脱穀クラッチレバー16等の各種操作手段が設けられている。
【0022】
前記操縦部9の下方には,動力源としてのエンジン17が,前記走行機体1にて支持するように配置されている。エンジン17の前方には,当該エンジン17からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2に伝達するための走行ミッションケース18が,前記走行機体1にて支持するように配置されている。
【0023】
刈取前処理装置3は,その刈取フレーム19に,従来から良く知られているように,バリカン式の刈刃機構20,分草体21,穀稈引起機構22,穀稈掻き込み機構23及び穀稈搬送機構24を設けるという構成であり,分草体21は穀稈引起機構22の下部前方に突設する一方,前記穀稈搬送機構24は,穀稈引起機構22及び穀稈掻き込み機構23とフィードチェン5の送り始端部との間に配置され,刈り取った穀稈を前記フィードチェン5に移送する。走行機体1は,エンジン17にて左右両走行クローラ2を駆動させて圃場内を前進走行しながら,刈取前処理装置3の駆動にて圃場の未刈穀稈を連続的に刈り取ったのち,この刈取穀稈を前記フィードチェン5に送り込む。
【0024】
脱穀装置4は,刈取穀稈を脱穀処理するための扱胴25と,扱胴25の下方に配置された揺動選別機構26及び風選別機構27と,扱胴25の後部から取り出される脱穀物を再処理する送塵口処理胴28とを備えている。扱胴25は脱穀装置4の扱室内に配置されている。揺動選別機構26は扱胴25にて脱穀された脱穀物を揺動選別するためのものであり,風選別機構27は前記脱穀物を風選別するためのものである。
【0025】
刈取前処理装置3から送られてきた刈取穀稈の株元側はフィードチェン5に受け継がれる。そして,当該刈取穀稈の穂先側が脱穀装置4内に搬入され,扱胴25にて脱穀処理される。
【0026】
前記脱穀装置4の下部には,両選別機構26,27にて選別された穀粒のうち精粒等の一番穀粒が集まる一番コンベヤ29と,枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番穀粒が集まる二番コンベヤ30とが設けられている。一番コンベヤ29内に集められた精粒等の一番穀粒は,当該一番コンベヤ29の終端から上方に延びる揚穀コンベヤ31に受け継がれ,この揚穀コンベヤ31にて前記穀粒タンク6に送られる一方,枝梗付き穀粒等の二番穀粒は,二番コンベヤ30に集められ,この二番コンベヤ30の終端から還元コンベヤ32に受け継がれ,この還元コンベヤ32にて二番処理胴33に送られる。そして,二番穀粒は,二番処理胴33にて再脱穀されたのち,脱穀装置4内に戻されて再選別される。
【0027】
フィードチェン5の後方側(送り終端側)には排稈チェン34が配置されている。フィードチェン5の後端から排稈チェン34に受け継がれた排稈(脱粒した稈)は,長い状態で走行機体1の後方に排出されるか,又は脱穀装置4の後方にある排稈カッタ35にて適宜長さに短く切断されたのち,走行機体1の後方に排出される。
【0028】
前記脱穀装置4における扱胴25,揺動選別機構26,風選別機構27,送塵口処理胴28,一番コンベヤ29,二番コンベヤ30,揚穀コンベヤ31,還元コンベヤ32,二番処理胴33,並びに,前記排出コンベヤ7は,これらに前記エンジン17における動力を,その出力軸17aからベルト式等の動力伝達機構36を介して伝達することによって駆動される。
【0029】
前記走行機体1の前部に前記刈取前処理装置3を水平方向の旋回可能で且つ上下昇降可能に装着するに際しては,先ず,前記走行機体1における前部上面のうち前記フィードチエン5側の部分に,縦向き中空軸37を,その軸線37aを鉛直とするように立設して,この縦向き中空軸37に,走行機体1の横方向に延びるように構成した旋回用支持フレーム38に基端における中空状ボス部38aを,当該中空軸37における軸線37aの回りに自在に回転するように嵌合する。なお,前記旋回用支持フレーム38の他端は,当該旋回用支持フレーム38を平面視(図2)において走行機体1に対して横向きにした状態では,図3に示すように,前記走行機体1の上面に設けた支持台39の上面に載った状態にして支持されている。
【0030】
前記旋回用支持フレーム38の上面には,軸線を水平横向きにする横向き中空軸40を,その軸線回りに自在に回転するように軸支して,この横向き中空軸40に,前記刈取前処理装置3における刈取フレーム19の基端を固着することにより,前記刈取前処理装置3を,平面視(図2)に二点鎖線で示すように,前記縦向き中空軸37の軸線37aを中心として外向きに回動して,前記脱穀装置4の前面を開放(オープン)できるように構成するとともに,前記旋回用支持フレーム38と刈取フレーム19との間に設けた油圧シリンダ41により,前記刈取前処理装置3を上下昇降するように構成している。
【0031】
この場合,前記縦向き中空軸37の内部には,前記走行機体1に水平横向きに延びるように軸支した前処理用駆動軸42に回転連動する縦軸43が,前記横向き中空軸40の内部には,前記縦軸43に回転連動する横軸44が各々設けられ,前記横軸44から前記刈取前処理装置3における各種の作動部,つまり,刈刃機構20,穀稈引起機構22,穀稈掻き込み機構23及び穀稈搬送機構24に動力伝達することにより,これらを駆動するように構成している。
【0032】
一方,前記走行ミッションケース18には,前記エンジン17からの入力軸45にて駆動される油圧ポンプ及びこの油圧ポンプの油圧にて回転する油圧モータから成る油圧式正逆転型の走行変速機構46を内蔵するとともに,この走行変速機構46からの変速出力軸47における回転を更に変速して前記両走行クローラ2に伝達するようにした副変速機構48を内蔵しており,前記走行変速機構46及び副変速機構48を,前記操縦部9のサイドコラム12における主変速レバー13及び副変速レバー14にて変速操作するように構成している。
【0033】
そして,走行ミッションケース18における内部には,一本のPTO軸49を,水平横向きに延びるように軸支し,このPTO軸49の一端を走行ミッションケース18の外に突出して,この突出端からベルト式等の動力伝達機構50を介して前記前処理用駆動軸42に動力伝達して,前記刈取前処理装置3における各種の作動部を駆動するとともに,前記前処理用駆動軸42から前記フィードチエン5にベルト式等の動力伝達機構51を介して動力伝達することにより,前記フィードチエン5を駆動し,このフィードチエン5にて前記排稈チェン34及び排稈カッタ35を駆動するという構成にしている。
【0034】
更に,前記走行ミッションケース18における内部には,前記走行変速機構46からの変速出力軸47と前記PTO軸49との間の部分に,一方向クラッチ機構52と車速同調機構53とが直列に設けられている一方,前記走行変速機構46への入力軸45と前記PTO軸49との間の部分に,刈取クィック機構54が設けられている。
【0035】
前記車速同調機構53は,前記PTO軸49に回転自在に被嵌した同調用歯車53aと,前記PTO軸49に摺動自在で回転不能に設けられ前記同調用歯車53aに噛合結合するように構成したクラッチ体53bとで構成され,前記クラッチ体53bを,その操作手段55にて前記同調用歯車53aに対して噛合結合することにより,前記走行変速機構46からの変速出力軸47における回転がPTO軸49を介して前記前処理用駆動軸42に伝達されるから,前記刈取前処理装置3における各種の作動部及び前記フィードチエン5の駆動速度が,前記走行機体1の前進速度,つまり車速に,当該車速が早くなると早くなり,遅くなると遅くなるというように同調して車速同調になり,前記クラッチ体53bを同調用歯車53aから切り離すことにより,前記した車速同調を解除するという構成である。
【0036】
前記一方向クラッチ機構52は,前記変速出力軸47における回転のうち走行機体1を前進走行する方向の回転は前記車速同調機構53に伝達するが,後退走行する方向の回転は前記車速同調機構53に伝達しないという構成であることに加えて,前記車速同調機構53から前記変速出力軸47への方向には回転を伝達しないという構成である。
【0037】
前記刈取クィック機構54は,前記PTO軸49に回転自在に被嵌したクィック用歯車54aと,前記PTO軸49に摺動自在で回転不能に設けられ前記クィック用歯車54aに噛合結合するように構成したクラッチ体54bとで構成され,前記クラッチ体54bを,その操作手段56にて前記クィック用歯車54aに対して噛合結合することにより,前記走行変速機構46への入力軸45における早い回転がPTO軸49を介して前記前処理用駆動軸42に伝達されるから,前記刈取前処理装置3における各種の作動部及び前記フィードチエン5の駆動速度が,前記車速同調機構53による車速同調の時よりも高速になるというように刈取クィックになり,前記クラッチ体54bをクィック用歯車54aから切り離すことにより,前記した刈取クィックを解除するという構成である。
【0038】
この構成において,走行機体1を適宜の車速で前進走行した状態で,走行ミッションケース18内における車速同調機構53において,そのクラッチ体53bを操作手段55にて前記同調用歯車53aに対して噛合結合することにより,前記走行ミッションケース18内の走行変速機構46からの変速出力軸47における前進走行の方向の回転が一方向クラッチ機構52を介してPTO軸49に伝達され,前記刈取前処理装置3及びフィードチエン5が駆動されるから,所定の刈取脱穀作業を行うことができる。
【0039】
この状態で,前進走行の速度,つまり車速を,走行変速機構46の変速操作で早くすると,前記刈取前処理装置3及びフィードチエン5における駆動速度は早くなり,また, 車速を,走行変速機構46の変速操作で遅くすると,前記刈取前処理装置3及びフィードチエン5における駆動速度は遅くなるというように,前記刈取前処理装置3及びフィードチエン5における駆動速度を,車速に同調できる。
【0040】
この前進走行での刈取脱穀作業中において,刈取穀稈が一時的に増大すると,前記刈取クィック機構54におけるクラッチ体54bを,その操作手段56にて当該刈取クィック機構54におけるクィック用歯車54aに対して噛合結合することにより,前記走行変速機構46への入力軸45の回転がPTO軸49に伝達され,このPTO軸49が,前記車速同調のときよりも高速に回転するから(この高速回転の前記走行変速機構46の出力側への伝達は,前記一方向クラッチ機構52に遮断される),前記刈取前処理装置3及びフィードチエン5における駆動速度は前記車速同調のときよりも早くなるといういわゆる刈取クィックの状態になる。
【0041】
また,前記記刈取クィック機構54におけるクラッチ体54bを,その操作手段56にて当該刈取クィック機構54におけるクィック用歯車54aから切り離すことにより,前記刈取クィックの状態を解除することができる。
【0042】
また,前記した実施の形態の構成においては,前記走行機体1に前処理用駆動軸42を軸支して,この前処理用駆動軸42から前記刈取前処理装置3を外向き回動自在に枢支する中空軸37内における縦軸43を介して前記刈取前処理装置3における各種の可動部に動力伝達する一方,前記前処理用駆動軸42に,走行機体1側の走行ミッションケース18に設けたPTO軸49からの動力を,ベルト式等の動力伝達機構50を介して伝達するという構成であることにより,前記刈取前処理装置3を中空軸37を中心として外向きに回動する場合に,前記動力伝達機構50を,そのベルトを取り外す等のように分解することを必要としないから,前記刈取前処理装置3を外向きに回動することによって前記脱穀装置4の前面を開放(オープン)にする操作が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態によるコンバインの側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1のIII −III 視拡大断面図である。
【図4】前記コンバインにおける動力伝達経路の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 走行機体
2 走行クローラ(走行装置)
3 刈取前処理装置
4 脱穀装置
5 フィードチエン
17 エンジン
18 走行ミッションケース
42 前処理用駆動軸
46 走行変速機構
45 走行変速機構への入力軸
47 走行変速機構からの変速出力軸
49 PTO軸
50 PTO軸から前処理用駆動軸への動力伝達機構
52 一方向クラッチ機構
53 車速同調機構
54 刈取クィック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置にて走行可能に支持された走行機体に,圃場に植立する穀稈を刈取る機構及び刈り取った穀稈を後方に移送する機構を備えてなる刈取前処理装置,この刈取前処理装置の後方において穀稈の脱穀処理を行う脱穀装置,前記刈取前処理装置からの穀稈を前記脱穀装置における扱胴に沿って移送するフィードチエン,及び,これらを駆動するエンジンを搭載する一方,前記走行装置に対する走行変速機構を備えた走行ミッションと,前記刈取前処理機構における駆動速度を前記走行装置における車速に同調する車速同調機構と,前記刈取前処理機構における駆動速度を前記車速同調の時よりも高速にする刈取クィック機構を備えて成るコンバインにおいて,
前記走行ミッションケースに,一本のPTO軸を,当該PTO軸の少なくとも一端が走行ミッションケースから突出するように設け,この突出端から前記刈取前処理装置に動力伝達するように構成する一方,前記PTO軸のうち前記走行ミッションケース内の部分に,前記車速同調機構と,前記刈取クィック機構を設けることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記車速同調機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構からの変速出力軸との間の部分に設ける一方,前記刈取クィック機構を,前記PTO軸と前記走行変速機構への入力軸との間の部分に設けることを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
前記請求項2の記載において,前記走行変速機構からの変速出力軸と前記車速同調機構との間に,前記変速出力軸が前進走行方向に回転するときのみ前記車速同調機構に動力伝達し,前記車速同調機構から前記変速出力軸への方向には動力伝達を行わないようにした一方向クラッチ機構を設けることを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずかの記載において,前記PTO軸から前記フィードチエンに動力伝達するように構成することを特徴とするコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−39062(P2009−39062A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209064(P2007−209064)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】