説明

コンバイン

【課題】刈取装置の位置エネルギーを発電機モータによって電力に変換して蓄電し、この蓄電力で電動モータを作動させて脱穀装置の駆動をアシストし、燃料消費量を節減する。
【解決手段】エンジン68の駆動力で発電する発電機101と、該発電機から供給される電力で刈取装置を上昇駆動すると共に該上昇後の刈取装置の有する位置エネルギーで発電を行なう発電機モータと、該発電機モータで発電された電力を蓄電するキャパシタ109と、該キャパシタから供給される電力によって、脱穀装置4を駆動する電動モータ83を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインは、走行装置を備えた車体上に脱穀装置と穀粒排出装置を備えた穀粒貯留装置を左右に並べて設け、該脱穀装置の前方に刈取装置を昇降自在に設け、穀粒貯留装置の前側又は後側に、これら各装置を駆動するエンジンを搭載して構成している。
【0003】
一方、自動車や建設機械の分野では、環境保全のために、エンジンから排出されるガス(二酸化炭素等)量を低減することを目的として、走行部および作業部の電動化が進められている。
【0004】
また、自動車分野では、高速走行中の減速操作時に、この走行エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄電しておき、発進時および低速走行時には、エンジンを停止させたまま、この電力で電動モータを駆動して走行し、高速走行時にエンジンを始動する構成が主流である。
【0005】
建設機械分野では、走行速度が農業機械同様に低速であるため、走行エネルギーを電気エネルギーに変換するには適さない。従って、例えばバックホーにおいては、エンジン駆動力で発電した電力をバッテリーに蓄電しておき、この電力によって電動モータを駆動して機台を旋回させるような構成を採っている。
【0006】
そして、農業機械分野でも、このようなハイブリッド化が考えられており、例えば特許文献1に開示されているように、エンジンによって発電機を駆動し、発電された電力をバッテリーに蓄電し、この電力で電動モータを駆動して耕うんロータリー等の作業装置を駆動する技術が試みられている。
【0007】
また、特許文献2に例示するように、穀粒貯留装置に備える穀粒排出装置の排出螺旋軸をモータで駆動する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−161104号公報
【特許文献2】実開昭63−53230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示された技術では、主な作業装置である耕うんロータリーを電動モータで駆動する構成であるために、作業中に電動モータを常時駆動せねばならず、多大な電力を必要としてバッテリーの蓄電力が早期に消耗し、作業継続可能時間が短くなる欠点がある。また、ロータリのような作業機では、駆動開始時の負荷が最も大きく、電動モータに多大な負荷がかかるため、高出力の電動モータを必要とし、消費電力の増加によって作業継続時間が短くなる欠点がある。
【0010】
そして、このような技術を特許文献2に開示された技術に採用し、穀粒排出装置を電動モータで駆動する構成とすることができるが、やはり、この電動モータを駆動するための電力をどのようにして発電するかとという問題が解決できない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
即ち、走行装置(2)の上側に機台(3)を設け、該機台(3)の左右一側部に脱穀装置(4)を設け、該機台(3)の左右他側部に穀粒排出装置(5a)を備えた穀粒貯留装置(5)を設け、該穀粒貯留装置(5)の前側にエンジン(68)を備えた原動部(6)を設け、該原動部(6)の前側に操縦部(7)を設け、該操縦部(7)及び脱穀装置(4)の前側に刈取装置(8)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記エンジン(68)の駆動力で発電する発電機(101)と、該発電機(101)から供給される電力で刈取装置(8)を上昇駆動すると共に該上昇後の刈取装置(8)の有する位置エネルギーで発電を行なう発電機モータ(207)と、該発電機モータ(207)で発電された電力を蓄電するキャパシタ(109)と、該キャパシタ(109)から供給される電力によって前記脱穀装置(4)を駆動する電動モータ(83)を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、例えば圃場の一辺を刈り終えた場合には、エンジン(68)で駆動される発電機(101)からの電力で発電機モータ(207)を駆動し、刈取装置(8)を上昇させて旋回するが、この上昇位置にある刈取装置(8)の位置エネルギーを発電機モータ(207)によって電力に変換してキャパシタ(109)に蓄電することができる。これによって、刈取脱穀作業時に、キャパシタ(109)から供給される電力で電動モータ(83)を作動させて脱穀装置(4)を駆動することができる。従って、脱穀負荷等によってエンジン(68)の出力回転速度が低下しても、脱穀装置(4)を適正な回転速度で駆動し、処理能力を適正に維持しながら、脱穀装置(4)の脱穀選別性能の低下や収量低減や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止しながら、コンバインの燃料消費量を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの要部説明用の側面図である。
【図4】コンバインの要部説明用の背面図である。
【図5】コンバインの要部説明用の側面図である。
【図6】コンバインの要部説明用の平面図である。
【図7】伝動ギヤケースを断面して示す平面図である。
【図8】穀粒貯溜装置付近の説明用正面図である。
【図9】ブロック回路図である。
【図10】脱穀装置の切断側面図である。
【図11】伝動切換装置の切断平面図である。
【図12】脱穀装置の切断側面図である。
【図13】脱穀装置の一部を切断した正面図である。
【図14】脱穀装置、排稾カッターの側面図平面図である。
【図15】脱穀装置の側面図である。
【図16】脱穀装置の側面図である。
【図17】コンバインの側面図である。
【図18】脱穀装置の切断側面図である。
【図19】脱穀装置の切断背面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、コンバインの機体構成について説明する。
図1、図2に示すように、コンバインの機体1は、左右のクローラ式の走行装置2の上側に枠組みされた機台3を設け、該機台3の左側部に脱穀装置4を搭載し、該脱穀装置4の右側に穀粒貯留装置5を搭載し、該穀粒貯留装置5の前側に原動部6を搭載し、該原動部6の上部から前方に亘って操縦部7を設け、該操縦部7と前記脱穀装置4との前側に刈取装置8を設けて構成する。
【0015】
前記走行装置2の構成について説明する。
機台3の前後左右の4箇所から下側へ支持脚(図示省略)を延出して設け、この支持脚の下端部に左右の転輪フレーム9,9を取り付ける。該転輪フレーム9,9には、多数の転輪10,10と後端部の緊張輪11,11とを軸支する。そして、機台3の前部に取り付けたミッションケース12によって駆動される左右の駆動スプロケット13,13と、前記転輪10,10と、緊張輪11,11とに亘ってクローラ14,14を巻き掛けて、走行装置2を構成する。尚、前記ミッションケース12には、後述するエンジンの駆動力が、静油圧式無段変速装置を介して入力される構成である。
【0016】
前記脱穀装置4の構成について説明する。
脱穀装置4は、側部にフィードチェン15を備え、内部に扱胴(図示省略)を回転自在に備えた上側の扱室と、揺動選別棚、唐箕、一番移送螺旋、二番移送螺旋等を備えた下側の選別室とから構成する。該脱穀装置4は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。
【0017】
尚、該脱穀装置4の後側には、脱穀後の排藁を切断して圃場に排出する排藁カッター16を搭載する。
前記刈取装置8の構成について説明する。
【0018】
刈取装置8は、機台3の前部に取り付けた懸架台(図示省略)の上部に縦支持フレーム17の上端部を、刈取入力プーリ200の回転軸201と同軸芯で上下回動自在に軸支し、該縦支持フレーム17の下端部に左右方向の刈取ギヤケース18の中間部を取り付ける。該刈取ギヤケース18の前部から前方に向けて分草パイプ19を延出させ、この分草パイプ19の前端部に植立穀稈を分草する分草板20を取り付ける。該分草板20の後側から後上がり傾斜姿勢に引起装置21を設け、該引起装置21の後側下部から後方に向けて、植立穀稈を掻き込む掻込装置と、刈取穀稈の株元側を挟持して後方へ搬送する株元搬送装置と、刈取穀稈の穂先側を係止して後方へ搬送する穂先搬送装置(いずれも図示省略)とを設ける。前記株元搬送装置の始端部下方には、刈刃装置22を分草パイプ19に支持させて設ける。該刈取装置8は、後述するエンジンの駆動力によって駆動する構成である。
【0019】
前記操縦部7の構成について説明する。
そして、図1、図4に示すように、前記縦支持フレーム17を上昇回動側に駆動する駆動装置を設ける。
【0020】
駆動装置は、上面にラック部202を形成したラック扞203の先端部を、縦支持フレーム17の長手方向中間部背面に固定したステー204に上下回動自在に軸着し、該ラック扞203を摺動自在に保持する角パイプ状の保持部材205の下部を機台3側に上下回動自在に軸着し、ラック扞203のラック部202に噛み合うピニオンギヤ206を備えた発電機モータ207を前記保持部材205に一体的に取り付けて構成する。そして、前記保持部材205の上壁の一部を切り欠き、該切り欠き部からピニオンギヤ206を侵入させてラック部202に噛み合わせる。前記発電機モータ207は、電力の供給を受けると、ピニオンギヤ206を備えた入出力軸208を回転駆動し、一方、ピニオンギヤ206の側から駆動入力を受けて入出力軸208が回転駆動されることで、発電を行なう構成であり、例えば永久磁石を備えた直流モータと同様の構成とする。
【0021】
前記操縦部7の構成について説明する。
操縦部7は、機台3の前端部右側に搭載したステップフレーム23の前部から、フロント操作ポスト24を立上げ、該フロント操作ポスト24の機体中央寄りの側の端部から後方へ向けてサイド操作パネル25を設けて構成する。前記フロント操作ポスト24の上部には、中央部にモニターパネル26を備え、該モニターパネル26の右側にハンドレスト27を備え、モニターパネル26の左側にスイッチパネル28を設けて門形に形成した操作装置29を取り付ける。前記ハンドレスト27の前側に、前後方向への傾倒操作によって刈取装置8を昇降させ、左右方向への傾倒操作によってミッションケース12内の左右のサイドクラッチを遮断する操向レバー30を立設する。また、前記サイド操作パネル25には、ミッションケース12に駆動入力する静油圧式無段変速装置を変速操作する主変速レバー31と、ミッションケース12内の副変速装置を変速操作する副変速レバー32と、刈取装置8の駆動を入り切り操作する刈取クラッチレバー33と、脱穀装置4の駆動を入り切り操作する脱穀クラッチレバー34と、上述するエンジンのスロットルを開閉操作するスロットルレバー35を設ける。36は、エンジンを覆うエンジンカバー37の上部に取り付けた座席である。
【0022】
次に、前記穀粒貯留装置5部の構成について説明する。
図5、図6、図8に示すように、穀粒貯留装置5は筐体に形成し、左右の底壁38,39を傾斜させ、該傾斜の谷部に機体前後方向の軸芯回りに回転する底部移送螺旋40を配置する。該底部移送螺旋40の軸の前端部は、穀粒貯留装置5の前壁41に取り付けたベアリング42で回転自在に軸受けし、更に前壁41から前方へ突出させ、該突出端部に従動側係合爪43を備えた従動側回転体43aを固定する。また、該底部移送螺旋40の軸の後端部は、穀粒貯留装置5の後壁44に形成した孔を通して後方へ延出させ、後壁44の後側面に取り付けた前側筒体45の内部に配置する。尚、前記底部移送螺旋40の上側には、貯留された穀粒による圧力を受ける断面へ字状に形成した屋根板(図示省略)を配置する。この屋根板の左右両端部と左右の底壁38,39との隙間から、穀粒が底部移送螺旋40側に流れ込んで搬送される構成である。
【0023】
そして、機台3の右側後端部上に、下部引継筒体46を固定する。該下部引継筒体46は、L字形状に屈折した搬送通路を内部に備え、前記底部移送螺旋40と連結・分離自在な機体前後方向の軸芯を有する引継螺旋48を、ベベルギヤケースで回転自在に軸受けする。該下部引継筒体46の前端部と前記穀粒貯留装置5側の前側筒体45の後端部とを、下部縦軸47で機体外側方へ回動自在に軸支する。これによって、穀粒貯留装置5の下側の回動支点が形成される。
【0024】
また、前記下部引継筒体46の上部には、揚穀螺旋49を回転自在に内装した揚穀筒50を、該揚穀螺旋49の軸芯回りに縦軸回動自在に嵌合して設ける。前記揚穀螺旋49の下端部は、下部引継筒体46内のベベルギヤケースで軸受けし、該ベベルギヤケースを介して引継螺旋48及び底部移送螺旋40に連動させる。
【0025】
そして、機台3の後端から作業機支持フレーム51を立上げ、この作業機支持フレーム51の上端部に円筒状の内面を有する支持部52を設け、該支持部52によって揚穀筒50の上部を縦軸回転自在に姿勢保持する。前記作業機支持フレーム51には、排藁カッター16を機体外方へ回動自在に支持する縦軸53を設ける。該作業機支持フレーム51の下部には前記揚穀筒50の下端部外周に設けた従動ギヤ54と噛み合う出力ギヤ55を備えた旋回用電動モータ56を取り付ける。
【0026】
前記支持部52には、回動支持ステー57を一体的に設け、穀粒貯留装置5の後壁44の上部に固定した上部縦軸58を、該回動支持ステー57の孔に上側から挿し込む。これによって、前記下部縦軸47と上部縦軸58とが同一軸芯上に配置され、穀粒貯留装置5の上下の回動支点が形成される。
【0027】
更に、前記支持部52には、平面視L字形状に形成した補強フレーム59の後端部を連結し、該補強フレーム59を前方へ延設して脱穀装置4の機体奥側の側面に沿わせて配置する。該補強フレーム59の前部は脱穀装置4側に固定し、前記作業機支持フレーム51と共に揚穀筒50および穀粒貯留装置5の支持剛性を高める。更に、該補強フレーム59の前端部には、穀粒貯留装置5を機体側へ位置固定するロック装置のフック60が係合する被係合部61を一体で設ける。該フック60を被係合部61から離脱させることによって、穀粒貯留装置5を機体外側方へ引き出せる状態となる。
【0028】
そして、前記揚穀筒50の上端部には、排出螺旋62を回転自在に内装した排出筒63を上部引継筒体64を介して上下回動自在に連通して設ける。該排出筒63の自由端部には、穀粒排出口65を形成する。また、前記揚穀筒50の上部と排出筒63の基部との間に、電動シリンダ66を設け、該電動シリンダ66の伸縮作動によって排出筒63が昇降回動する構成とする。67は、該電動シリンダ66の作動用の昇降用電動モータである。
【0029】
上記底部移送螺旋40と揚穀螺旋49と排出螺旋62とから穀粒排出装置5aが構成される。
次に、原動部6の構成について説明する。
【0030】
機台3の前部右側にエンジン68を搭載する。該エンジン68は、開閉自在のエンジンカバー37によって覆われる。
図5、図6に示すように、該エンジンカバー37の内部における前記エンジン68と穀粒貯留装置5との間の空間部に、伝動ギヤケース(伝動切換装置)69を配置する。
図7に示すように、該伝動ギヤケース69の外側面部には、入力プーリ70が固定された機体左右方向姿勢の第1入力軸(入力軸)71をベアリング72で回転自在に軸受けする。そして、該第1入力軸71と同一軸芯上に、該第1入力軸71から第1ワンウェイクラッチ73を介して駆動される第1出力軸75を設け、該第1出力軸75の端部に傘歯車状の第1出力ギヤ74を固定する。
【0031】
また、伝動ギヤケース69の機体奥側の内側面部には、機体左右方向姿勢の第2入力軸77をベアリング78で回転自在に軸受けする。そして、該第2入力軸77と同一軸芯上に、該第2入力軸77から第2ワンウェイクラッチ79を介して駆動される第2出力軸81を設け、該第2出力軸81の端部に傘歯車状の第2出力ギヤ80を固定する。そして、伝動ギヤケース69の機体奥側の内側面部に変速装置(増速伝動装置または減速伝動装置)82を備えた駆動用電動モータ(電動モータ)83を横向き姿勢にして取り付け、該駆動用電動モータ83によって駆動される変速装置82の出力軸を前記第2入力軸77にスプライン嵌合させて取り付ける。尚、底部搬送移送螺旋40の駆動に要する馬力は、一般的に10馬力程度であり、前記駆動用電動モータ83の出力も10馬力程度あるいはそれ以上のものを用いる。
【0032】
そして、前記伝動ギヤケース69の後側面部には、機体前後方向姿勢の出力軸84の後部をベアリング85で回転自在に軸受けし、該出力軸84の前端部を伝動ギヤケース69の前側面部にベアリング86で回転自在に軸受けする。該出力軸84の中間部には傘歯車状の入力ギヤ87を固定し、該出力軸84の伝動ギヤケース69から後方に突出する後端部には、放射方向の2箇所に駆動側係合爪88を備えた駆動側回転体89を固定する。これにより、上記出力軸84に設けた入力ギヤ87に対して、第1出力軸75に固定した第1出力ギヤ74と第2出力軸81に固定した第2出力ギヤ80との両方が噛み合う。以上の構成により、第1ワンウェイクラッチ73および第2ワンウェイクラッチ79の作動により、エンジン68からの駆動回転速度と駆動用電動モータ83からの駆動回転速度とのうちの、他側よりも高速回転となった側の回転によって、駆動側回転体89が駆動される。
【0033】
また、図5、図6に示すように、前記第1入力軸71に固定した入力プーリ70と、エンジン68の機体外側向きの出力軸90に固定した出力プーリ91とに亘って伝動ベルト92を巻き掛け、該伝動ベルト92に張力を付与するテンションプーリ93を設けて、テンション式の排出クラッチ95を構成する。該排出クラッチ95は、排出クラッチ作動用の電動モータ96(実体図省略)により入り切りするよう連繋する。
【0034】
また、図6に示すように、エンジン68の機体内側向きの出力軸97に第1出力プーリ98と第2出力プーリ99と第3出力プーリ100を固定する。そして、前記第1出力プーリ98と、エンジン68の機体奥側の後部に取り付けた発電機101の入力プーリ102と、エンジン68の機体奥側の上部に取り付けたセルモータ124の入力プーリ125とに亘って伝動ベルト103を巻き掛ける。また、前記第2出力プーリ99と脱穀装置4側の入力プーリとに亘ってテンション式の脱穀クラッチを備えた伝動ベルト(図示省略)を巻き掛け、前記第3出力プーリ100と前記ミッションケース12に駆動入力する静油圧式無段変速装置104の入力軸に設けた入力プーリ105とに亘って常時張りの伝動ベルト106を巻き掛ける。
【0035】
尚、前記伝動ギヤケース69と発電機101は、エンジンカバー37の内部、即ちエンジンルーム内において、エンジン68の冷却風通路内に配置される。また、図7に示すように、前記伝動ギヤケース69に取り付けた駆動用電動モータ83の熱を放熱するために、該駆動用電動モータ83の外周部に多数のフィン83aを設けるとよい。エンジン68には、図6に示すように、外側の防塵網120の内側に配置したラジエータ119と、エンジン68によって駆動される冷却ファン118が備えられている。この冷却ファン118の直径はエンジン68本体よりも小さいが、この冷却ファン118によってエンジンカバー37内に吸い込まれた風が、エンジンカバー37の内部において、エンジン68と伝動ギヤケース69および駆動用電動モータ83の周囲を吹き抜ける際に、これら伝動ギヤケース69および駆動用電動モータ83を冷却することとなる。
【0036】
上記の構成により、図5、図6に示すように、前記穀粒貯留装置5を機台3上の収穫作業位置に配置し、穀粒貯留装置5側のフック60を脱穀装置4側の被係合部61に係合させた状態で、前記底部移送螺旋40の軸芯と伝動ギヤケー69の出力軸84の軸芯とが一致し、前記従動側回転体43aの従動側係合爪43が駆動側回転体89の駆動側係合爪88に噛み合う。
【0037】
また、図6、図8に示すように、前記機台3上における穀粒貯留装置5の右側の底壁39の下側の空間部107に受け台108を設け、該受け台108に、前記発電機101によって発電された電力を蓄電すると共に前記駆動用電動モータ83へ駆動用の電力を供給するキャパシタ109を搭載する。該キャパシタ109は、コンデンサーのように、高圧の電力を短時間で充電及び放電できる特性を有している。該キャパシタ109は3個搭載し、後部の1個を燃料タンク110の後側に搭載し、中間部および前部の2個を燃料タンク110の前側に搭載する。
【0038】
次に、図9に示すブロック回路について説明する。
コントローラ(制御装置)111に対して、その入力側に、操向レバー30の前後傾動角度を検出する刈取昇降操作量検出用ポテンショメータ212と、エンジン駆動式排出スイッチ112と、モータ駆動式排出スイッチ113と、駆動源自動切換式排出スイッチ114と、発電機101で発電された電力を発電機モータ207側へ安定化して供給する発電調整機116と、発電機モータ207で発電された電力が発電調整機209と充電器210を介して充電されるキャパシタ109と、出力軸84の回転速度を検出する出力回転数検出センサ122と、エンジン68の出力軸97又は出力軸90の回転速度を検出するエンジン回転センサ127と、エンジン回転速度設定ダイヤル129を接続する。
【0039】
また、コントローラ111に対して、その出力側には、前記排出クラッチ95の作動用の電動モータ96と、モータ駆動回路117と、セルモータ駆動回路123と、モニター121と、エンジン停止回路126と、スロットル開閉調節モータ128と、発電機モータ駆動回路211を接続する。前記モータ駆動回路117に駆動用電動モータ83を接続し、モータ駆動回路117を介して駆動用電動モータ83を駆動する構成とする。また、前記セルモータ駆動回路123にセルモータ124を接続し、セルモータ駆動回路123を介してセルモータ124を駆動する構成とする。この構成により、エンジン68によって発電機101を駆動すると、発電機101によって発電される発電電力の電圧と電流量と周波数とがエンジン回転数の変動によって変化するが、これらを発電調整機116によって安定した直流電流に変換してから、コントローラ111を介して発電機モータ駆動回路211に送ることができる。また、発電機207で発電された電力は、発電調整機209で安定した直流電流に整流された後、充電器210によってキャパシタ109に充電される。該キャパシタ109に蓄電された電力によって、コントローラ111からモータ駆動回路117を介して駆動用電動モータ83が駆動される。
【0040】
また、コントローラ111には、その入力側に接続されたキャパシタ109の電圧を検出する電圧検出手段を備えている。
以上の構成により、エンジン68を始動すると、該エンジン68の駆動力によって発電機101が駆動され、該発電機101によって発電された電力が発電調整機116によって調整された後、発電機モータ207へ送られる状態となる。
【0041】
そして、例えば圃場の一辺を刈り終えた場合には、操向レバー30を上昇側へ操作すると、刈取昇降操作量検出用ポテンショメータ212によってこの操向レバー30の上昇側への操作角度が検出され、コントローラ111から発電機モータ駆動回路211を介して発電機モータ207へ電力が供給される。これによって、発電機モータ207の入出力軸208が回転駆動し、該入出力軸208にピニオンギヤ206の回転によってラック扞203が上方へ摺動し、縦支持フレーム17を上方へ回動させ、刈取装置8が上昇する。また、この操向レバー30の上昇側への操作角度が増大するほど発電機モータ207への電力供給量が増加し、刈取装置8の上昇速度が高速化する。
【0042】
操向レバー30を中立位置に保持している状態では、コントローラ111から発電機モータ駆動回路211を介して発電機モータ207へ刈取装置8の下降阻止用の保持電力が供給され、刈取装置8の昇降位置は固定される。また、発電機モータ207の入出力軸208を制動するブレーキ装置を設け、このブレーキ装置の作動によって刈取装置8の自重による下降を阻止する構成としてもよい。
【0043】
そして、旋回が終了し、操向レバー30を下降側へ操作すると、刈取昇降操作量検出用ポテンショメータ212によってこの操向レバー30の下降側への操作角度が検出され、コントローラ111から発電機モータ207への下降阻止用の保持電力の供給が絶たれる。また、前記ブレーキ装置の作動が解除される。これによって、刈取装置8は、その自重によってラック扞203を押し下げながら下降する。この際、ラック扞203の押し下げ摺動により、ラック扞203のラック部202に噛み合うピニオンギヤ206が回転駆動され、入出力軸208が強制的に回転駆動されて、発電機モータ207による発電が行われる。このようにして発電された電力は、発電調整機209で整流された後、充電器210によってキャパシタ109に充電される。
【0044】
そして、エンジン68の駆動力によって走行装置2と刈取装置8と脱穀装置4と排藁カッター16を駆動しながら圃場での刈取脱穀作業を行うと、収穫された穀粒が穀粒貯留装置5に貯留される。これによって穀粒貯留装置5が満杯になると、機体1を圃場脇に待機中の運搬車に近付けて停車させ、この運搬車の荷台上への穀粒排出作業を行う。
【0045】
この穀粒排出作業は、キャパシタ109の充電量が不十分な場合や、駆動用電動モータ83の駆動回路が故障した場合等には、操縦者の判断によってエンジン駆動式排出スイッチ112を入り操作し、電動モータ96の作動によって排出クラッチ95を入り作動させて行う。即ち、この場合には、排出クラッチ95の入り作動によって入力プーリ70が回転し、第1入力軸71から第1ワンウェイクラッチ73を介して第1出力ギヤ74が駆動され、これに噛み合う入力ギヤ87が駆動される。駆動用電動モータ83は停止したままである。この際、入力ギヤ87を介して第2出力ギヤ80が駆動されてしまうが、第2ワンウェイクラッチ79が空転するため、駆動用電動モータ83側の第2入力軸77が強制的に回転させられることはない。これによって、駆動用電動モータ83および変速装置82の破損や故障の防止、および耐久性の向上を図ることができる。そして、上記入力ギヤ87の駆動によって出力軸84が回転し、駆動側回転体89の駆動側係合爪88からこれに係合する従動側係合爪43を介して従動側回転体43aが駆動され、底部移送螺旋40が駆動されて、穀粒貯留装置5内の貯留穀粒が排出される。
【0046】
また、キャパシタ109の充電量が十分な場合には、操縦者の判断によってモータ駆動式排出スイッチ113を入り操作し、駆動用電動モータ83を駆動して行う。即ち、この場合には、コントローラ111からスロットル開閉調節モータ128へ減速出力がなされ、エンジン68の回転速度がアイドリング状態(通常700rpm〜100rpm前後に設定される)まで自動的に減速し、このアイドリング状態が維持される。エンジン回転速度設定ダイヤル129で減速目標回転速度を任意に設定した場合には、この設定された回転速度まで自動的に減速し、この設定された回転速度に維持される。そして、駆動用電動モータ83の回転によって変速装置82から第2入力軸77が駆動され、該第2入力軸77から第2ワンウェイクラッチ79を介して第2出力軸81及び第2出力ギヤ80が駆動され、これに噛み合う入力ギヤ87が駆動される。排出クラッチ95は切り操作されたままであり、エンジン駆動力は入力されない。この際、入力ギヤ87を介して第1出力ギヤ74が駆動されてしまうが、第1ワンウェイクラッチ73が空転するため、入力プーリ70側の第1入力軸71が強制的に回転させられることはない。これによって、入力プーリ70に巻き掛けた伝動ベルト92の摩耗を防止して耐久性を向上させることができる。そして、上記入力ギヤ87の駆動によって出力軸84が回転し、駆動側回転体89の駆動側係合爪88からこれに係合する従動側係合爪43を介して従動側回転体43aが駆動され、底部移送螺旋40が駆動されて、穀粒貯留装置5内の貯留穀粒が排出される。これによって、収穫作業を行う圃場が住宅地の近くにあっても、少なくとも穀粒排出作業時には、エンジン68をアイドリング状態として排出作業を行うことができ、排気ガス量の低減およびエンジン騒音の低減によって、作業環境および周辺の住環境を保全することができる。
【0047】
なお、このような駆動用電動モータ83の駆動力によって穀粒排出作業が行われる場合、伝動ギヤケース69の出力軸84の回転数が設定された回転数域に維持されるように、出力回転数センサ122の検出結果に応じてコントローラ111からモータ駆動回路117への出力が制御される。なお、この出力軸84の設定された回転数域とは、エンジン68が定格回転で駆動している状態で排出クラッチ95を接続した場合に駆動される出力軸84の回転数に略等しく設定する。
【0048】
そして、排出作業終了又は中断によってモータ駆動式排出スイッチ113を切り操作すると、駆動用電動モータ83が停止すると共に、コントローラ111からスロットル開閉調節モータ128へ増速出力がなされ、エンジン68の回転速度が定格回転数(通常2500rpm〜2700rpm前後に設定される)の上下に設定される定格回転速度域まで増速し、この定格回転状態が維持される。即ち、エンジン回転数センサ127によって検出されるエンジン68の回転速度が定格回転速度域に収まるようにスロットル開閉調節モータ128への出力が制御される。これによって、操縦者がエンジン68をわざわざ増速操作する必要がなく、以後の走行や刈取作業に迅速に移行することができて、収穫作業の能率を高めることができる。エンジン回転速度設定ダイヤル129で増速目標回転速度を任意に設定した場合には、この設定された回転速度まで自動的に増速し、この設定された回転速度に維持される。
【0049】
また、駆動源自動切換式排出スイッチ114を入り操作すると、コントローラ111によりキャパシタ109の電圧チエックにより、キャパシタ109の電圧が設定電圧よりも高いと判定された場合には、上述のモータ駆動式排出スイッチ113が入り操作した場合と同様に、エンジン68の回転速度がアイドリング状態に減速され、電動モータ96は作動せず排出クラッチ95が遮断状態に維持されたまま、駆動用電動モータ83が駆動されて穀粒排出作業が行われる。
【0050】
一方、キャパシタ109の電圧が設定電圧よりも低いと判定された場合には、上述のエンジン駆動式排出スイッチ112を入り操作した場合と同様に、駆動用電動モータ83が停止したまま、電動モータ96の作動によって排出クラッチ95が接続作動して穀粒排出作業が行われる。この場合には、エンジン68の回転速度は定格回転速度に維持される。これによって、操縦者がキャパシタ109の充電状態を気にすることなく排出作業を行うことができ、作業能率が高まる。
【0051】
そして、駆動用電動モータ83の駆動力によって排出作業が行われている際に、キャパシタ109の電圧が設定電圧よりも低下したことが電圧検出手段によって検出されると、スロットル開閉調節モータ128への出力によって、エンジン68の回転速度が定格回転速度まで増速し、駆動用電動モータ83の駆動状態を維持したまま、又はこの駆動用電動モータ83を停止させてから、電動モータ96が作動して排出クラッチ95を接続し、エンジン68の駆動力によって穀粒排出装置5aが駆動される。これによって、穀粒排出作業中にキャパシタ109の電圧が低下した場合でも、この穀粒排出作業を中断することなく継続でき、作業能率を向上させることができる。また、穀粒排出装置5aが、駆動用モータ83とエンジン68とのいずれの駆動力によって駆動されているかが、モニター121に、バーグラフ又は円グラフ等によってグラフィック表示される。
【0052】
また、駆動用電動モータ83の駆動力によって穀粒排出作業が行われている際に、出力回転数センサ122によって、伝動ギヤケース69の出力軸84の回転数が設定された回転数域から外れて低下したことが検出された場合には、コントローラ111から電動モータ96へ出力がなされ、排出クラッチ95が入り作動すると共に、この排出クラッチ95の入り作動がモニター121にグラフィック表示される。これによって、エンジン68の駆動力で入力プーリ70が回転し、第1入力軸71から第1ワンウェイクラッチ73を介して第1出力ギヤ74が駆動され、これに噛み合う入力ギヤ87が駆動される。駆動用電動モータ83は駆動を続けており、駆動用電動モータ83によって駆動される第2出力ギヤ80の回転数と、エンジン68の駆動力で駆動される第1出力ギヤ74とが一致しなくても、第1ワンウェイクラッチ73または第2ワンウェイクラッチ79が空転するため、駆動用電動モータ83の駆動力とエンジン68の駆動力とがぶつかるようなことはない。従って、穀粒排出作業開始時の多大な駆動負荷またはキャパシタ109の電圧低下によって駆動用電動モータ83の出力回転が低下した場合に、エンジン68の駆動力によって伝動ギヤケース69の出力軸84の駆動をアシストすることになる。このアシストにより、出力軸84の回転数が設定された回転数域内に維持されるように、電動モータ96への出力によって排出クラッチ95の接続作動または遮断作動を制御する構成とする。なお、上記モニター121の表示により、排出クラッチ95が自動的に接続されることを操縦者が認識でき、キャパシタ109のチエック等の対策を早期に行なうことにより、穀粒排出作業の能率を維持し、収穫作業全体の能率を高めることができる。
【0053】
また、モータ駆動式排出スイッチ113を入り操作した場合、またはキャパシタ109の電圧が十分な状態において駆動源自動切換式スイッチ114を入り操作した場合に、上述のようにして、エンジン68の駆動力によって駆動用電動モータ83による出力軸84の駆動をアシストするように構成してもよい。
【0054】
また、エンジン68が駆動している状態で、モータ駆動式排出スイッチ113を入り操作した場合に、コントローラ111からエンジン停止回路126に出力がなされ、エンジン68が自動的に停止する構成としてもよい。このように、モータ駆動式排出スイッチ113を入り操作すると、エンジン68が自動的に停止すると共に、駆動用電動モータ83が作動して穀粒排出装置5aが駆動される。このように、穀粒排出装置5aの駆動を起動操作した場合にエンジン68が自動的に停止するので、操縦者がわざわざエンジン68を停止操作する必要がなく、操作性が向上すると共に、収穫作業全体の能率を高めることができる。
【0055】
また、モータ駆動式排出スイッチ113を切り操作することによって、電動モータ83の駆動力による穀粒排出装置5aの駆動を停止操作した場合に、コントローラ111からエンジン停止回路126に停止出力カット信号が出力されると共に、セルモータ駆動回路123へ駆動出力がなされ、セルモータ124が作動してエンジン68が始動する。即ち、穀粒排出作業が終了した場合、または穀粒排出作業を中断した場合に、エンジン68が自動的に始動するので、操縦者がエンジン68をわざわざ始動操作する必要がなく、以後の走行や刈取作業に迅速に移行することができ、収穫作業の能率を高めることができる。
【0056】
以上のように、例えば圃場の一辺を刈り終えた場合には、エンジン68で駆動される発電機101からの電力で発電機モータ207を駆動し、刈取装置8を上昇させて旋回するが、この上昇位置にある刈取装置8の位置エネルギーを発電機モータ207によって電力に変換してキャパシタ109に蓄電することができる。これによって、キャパシタ109からの電力で電動モータ83を作動させて穀粒排出装置5aを駆動することができ、例えば住宅地の狭間の圃場での収穫作業において、エンジン68の出力を消費することなく、電動モータ83によって穀粒排出装置5aを駆動して穀粒排出作業を行なえるため、エンジン68の燃料消費量を節減できるうえに、エンジン68による騒音の低減及び排気ガスの減少による雰囲気の清浄化によって、住環境の保全に寄与することができる。
【0057】
また、圃場での旋回が終了し、上昇位置にある刈取装置8を自重で下降させる際に、この刈取装置8の下降作動によって発電機モータ207を駆動して発電を行なうため、刈取装置8の有する位置エネルギーを有効に利用でき、エンジン68の燃料消費量を節減することができる。
【0058】
次に、図10に基づき脱穀装置4への伝動アシスト構成について説明する。
エンジン68の前記プーリ99から脱穀伝動ベルト132を介して脱穀装置4の脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133に動力を伝達し、脱穀クラッチ…134により脱穀動力を入切するように構成している。
【0059】
脱穀入力軸133には、脱穀装置4用の伝動切換装置139を設けている。この伝動切換装置139は、図11に示すように、伝動ギヤケース135に脱穀入力軸133を左右方向に沿わせて軸架し、脱穀入力軸133に第1ベベルギヤ136を固着している。そして、伝動ギヤケース135の外側面に脱穀装置駆動用の電動モータ83を後側に突出する横向き姿勢に取り付け、脱穀装置駆動用の電動モータ83の出力軸には、ワンウェイクラッチ138を介して第2ベベルギヤ137を取り付け、第2ベベルギヤ137を第1ベベルギヤ136に噛み合うように構成している。
【0060】
しかして、ワンウェイクラッチ138を介装しているので、脱穀入力プーリ131が高速回転の場合には、エンジン動力で回転する脱穀入力プーリ131により脱穀入力軸132が駆動されて脱穀装置4が駆動される。また、前記電動モータ83の出力軸が高速の場合には、電動モータ83の動力により脱穀入力軸132が駆動され、脱穀装置4が駆動される。また、前記コントローラ111により、前記穀粒排出装置5aに対してなされる種々の制御が脱穀装置4に対してもなされる構成である。
【0061】
前記構成によると、前記電動モータ83の出力軸よりも脱穀入力プーリ131の回転速度が速い場合には、脱穀入力プーリ131のエンジン動力で脱穀入力軸133、脱穀装置4が駆動され、また、前記電動モータ83の出力軸が脱穀入力プーリ131の回転速度より速い場合には、前記電動モータ83の動力で脱穀入力軸133、脱穀装置4が駆動される。
【0062】
従って、エンジン68によるCO2の削減燃費向上による省エネ運転をすることができる。また、エンジン68の出力低下時における脱穀装置4の収量低減や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止することができる。
【0063】
次に、図12について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、処理胴伝動ベルト146を経由して処理胴入力プーリ147に伝達している。処理胴入力プーリ147と一体回転する処理胴入力軸148には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、処理胴入力軸148、処理胴伝動装置(図示省略)を経由して、脱穀装置4の排塵処理胴149及び二番処理胴150を駆動している。なお、処理胴伝動ベルト146は処理胴クラッチ151により入切できる。
【0064】
前記構成によると、処理胴入力プーリ147が高速回転の場合には、エンジン68の動力により処理胴入力軸148を経由して脱穀装置4の排塵処理胴149及び二番処理胴150を駆動することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、処理胴入力軸148を経由してモータ出力で脱穀装置4の排塵処理胴149及び二番処理胴150を駆動することができる。
【0065】
従って、エンジン68の出力低下時において排塵処理胴149及び二番処理胴150の処理能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の収量低減や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止し、省エネ運転をすることができる。
【0066】
次に、図13について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、第1扱胴ベルト伝動装置153a、第2扱胴ベルト伝動装置153bを経由して扱胴入力プーリ154に伝達している。扱胴入力プーリ154と一体回転する扱胴入力軸155には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、扱胴入力軸155により脱穀装置4の扱胴156を駆動するするように構成している。
【0067】
前記構成によると、扱胴入力プーリ154が高速回転の場合には、扱胴入力軸155を経由して脱穀装置4の扱胴156をエンジン68の動力により駆動することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、扱胴入力軸155を経由して脱穀装置4の扱胴156を電動モータ83の動力で駆動することができる。
【0068】
従って、エンジン68の出力低下時において扱胴156の処理能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の収量低減や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止し、省エネ運転をすることができる。
【0069】
次に、図14について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、第1カッタベルト伝動装置158a、第2カッタベルト伝動装置158bを経由してカッタ入力プーリ159に伝達している。カッタ入力プーリ159と一体回転するカッタ入力軸160には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、カッタ入力軸160から排藁カッター16に動力を伝達している。
【0070】
前記構成によると、カッタ入力プーリ159が高速回転の場合には、カッタ入力軸160を経由して排稾カッタ16にエンジン動力を伝達することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、カッタ入力軸160から排稾カッタ16に電動モータ83の動力を伝達することができる。 従って、エンジン68の出力低下時において排稾カッタ16の処理能力を適正に維持しながら、走行性能の低下を防止し、省エネ運転をすることができる。
【0071】
次に、図15について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、第1排塵ファンベルト伝動装置162a、第2排塵ファンベルト伝動装置162bを経由して排塵ファン入力プーリ163に伝達している。排塵ファン入力プーリ163と一体回転する排塵ファン入力軸164には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、排塵ファン入力軸164から排塵ファン165にモータ動力を伝達している。
【0072】
前記構成によると、排塵ファン入力プーリ163が高速回転の場合には、排塵ファン入力軸164から排塵ファン165にエンジン動力を伝達することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、排塵ファン入力軸164から排塵ファン165にモータ動力を伝達することができる。
【0073】
従って、エンジン68の出力低下時において排塵ファン165の処理能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の選別性能の低下や収量低減や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止しながら、省エネ運転をすることができる。
【0074】
次に、図16について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、螺旋ベルト伝動装置167を経由して、1番螺旋入力プーリ168、2番螺旋入力プーリ169に伝達している。1番螺旋入力プーリ168と一体回転する1番螺旋入力軸168aには、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、1番螺旋入力軸168aから1番螺旋168bに動力を伝達している。また、2番螺旋入力プーリ169と一体回転する2番螺旋入力軸169aから2番螺旋169bに動力を伝達している。
【0075】
前記構成によると、1番螺旋入力プーリ168が高速回転の場合には、1番螺旋入力軸168aから1番螺旋168bに動力を伝達すると共に、2番螺旋入力プーリ169、2番螺旋入力軸169aを経由して2番螺旋169bにエンジン動力を伝達することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、モータ動力を1番螺旋入力軸168aを経由して1番螺旋168bに伝達すると共に、1番螺旋入力軸168a、1番螺旋入力プーリ168、螺旋ベルト伝動装置167、2番螺旋入力プーリ169、2番螺旋入力軸169aを経由して2番螺旋169bに伝達することができる。
【0076】
従って、エンジン68の出力低下時において1番螺旋168b及び2番螺旋169bの搬送能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の穀粒の詰まりや選別性能の低下や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止しながら、省エネ運転をすることができる。
【0077】
次に、図17について説明する。
脱穀装置4により脱穀選別された籾を1番揚穀機171で穀粒貯溜装置5に揚穀し、穀粒貯溜装置5内の穀粒投入部には、籾乾燥ブロワ172から熱風を吹き出し、籾を乾燥するように構成している。
【0078】
また、エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、ブロワベルト伝動装置173を経由して、ブロワ入力プーリ174に伝達している。ブロワ入力プーリ174と一体回転するブロワ入力軸175には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、ブロワ入力軸175により、籾乾燥ブロワ172を駆動している。
【0079】
なお、前記1番螺旋入力プーリ168からブロワベルト伝動装置173を経由してブロワ入力プーリ174に動力を伝達するように構成してもよい。
前記構成によると、ブロワ入力プーリ174が高速回転の場合には、ブロワ入力軸175から籾乾燥ブロワ172にエンジン動力を伝達し、また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、ブロワ入力軸175を経由して籾乾燥ブロワ172にモータ動力を伝達することができる。
【0080】
従って、エンジン68の出力低下時において籾乾燥ブロワ172の送風能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の籾品質の低下を防止し、走行性能の低下を防止しながら、省エネ運転をすることができる。
【0081】
次に、図18について説明する。
エンジン68の動力を前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、揺動伝動ベルト142を経由して揺動入力プーリ140に伝達している。揺動入力プーリ140と一体回転する揺動入力軸141には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、揺動入力軸141により揺動機構を駆動し、脱穀装置4の揺動選別棚144を揺動するように構成している。なお、145は揺動クラッチである。
【0082】
前記構成によると、揺動入力プーリ140が高速回転の場合には、揺動入力軸141、揺動機構にエンジン動力を伝達し、揺動選別棚144を揺動駆動することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、揺動入力軸141、揺動機構をモータ動力で駆動し揺動選別棚144を揺動することができる。
【0083】
従って、エンジン68の出力低下時において揺動選別棚144の選別能力を適正に維持しながら、脱穀装置4の選別性能の低下や籾の品質低下を防止し、走行性能の低下を防止しながら、省エネ運転をすることができる。
【0084】
次に、図19について説明する。
エンジン68の動力を、前記脱穀入力プーリ131、脱穀入力軸133、プーリ133a、第1扱胴ベルト伝動装置(図示省略)、第2扱胴ベルト伝動装置(図示省略)を経由して扱胴入力プーリ154に伝達し、扱胴156を駆動し、更に、扱胴入力プーリ154から排藁ベルト伝動装置177を経由して排稾入力プーリ178に動力を伝達している。排藁入力プーリ178と一体回転する排藁入力軸179には、図11に示すように、伝動切換装置139及び電動モータ83を設け、排藁入力軸179により排稾搬送装置180を駆動し、扱室から排出された排藁を排藁カッタ16に搬送するように構成している。
【0085】
前記構成によると、排藁入力プーリ178が高速回転の場合には、排藁入力軸179、排稾搬送装置180にエンジン動力を伝達し、排稾搬送装置180を駆動することができる。また、前記電動モータ83の出力軸が高速回転の場合には、排藁入力軸179をモータ動力で駆動し、排稾搬送装置180を駆動することができる。
【0086】
従って、エンジン68の出力低下時において排稾搬送装置180の搬送能力を適正に維持しながら、排藁カッタ16で排藁を適正に切断処理し、走行性能の低下を防止しながら、省エネ運転をすることができる。
【0087】
なお、同様にして、エンジン動力あるいはモータ動力で脱穀装置4の脱穀穀稈搬送用のフィードチエンを駆動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0088】
2 走行装置
3 機台
4 脱穀装置
5 穀粒貯留装置
5a 穀粒排出装置
6 原動部
7 操縦部
8 刈取装置
68 エンジン
83 駆動用電動モータ(電動モータ)
101 発電機
109 キャパシタ
207 発電機モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)の上側に機台(3)を設け、該機台(3)の左右一側部に脱穀装置(4)を設け、該機台(3)の左右他側部に穀粒排出装置(5a)を備えた穀粒貯留装置(5)を設け、該穀粒貯留装置(5)の前側にエンジン(68)を備えた原動部(6)を設け、該原動部(6)の前側に操縦部(7)を設け、該操縦部(7)及び脱穀装置(4)の前側に刈取装置(8)を昇降自在に設けたコンバインにおいて、前記エンジン(68)の駆動力で発電する発電機(101)と、該発電機(101)から供給される電力で刈取装置(8)を上昇駆動すると共に該上昇後の刈取装置(8)の有する位置エネルギーで発電を行なう発電機モータ(207)と、該発電機モータ(207)で発電された電力を蓄電するキャパシタ(109)と、該キャパシタ(109)から供給される電力によって前記脱穀装置(4)を駆動する電動モータ(83)を設けたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−193826(P2010−193826A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44162(P2009−44162)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】