コンバイン
【課題】エンジンのクランク軸から出力される動力により伝動ベルトを介して回転駆動する冷却ファンを備えると共に、前記伝動ベルトによる動力伝達の断接操作を電動モータを介して行なうテンションクラッチ機構を設けたコンバインにおいて、急激なエンジンの負荷変動に伴う伝動ベルトの脈動によって電動モータの出力軸に過負荷が掛かるといった問題点を解消する。
【解決手段】テンションクラッチ機構41を、揺動アーム45bを一体的に備える電動モータ45と、テンションアーム43と揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45を連係作動させる連係部材46とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構41を介して駆動プーリ23から従動プーリ29への動力伝達を断接させる際、前記テンションアーム43と揺動アーム45bに対する連係部材46の連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持する融通機構Fを設けた。
【解決手段】テンションクラッチ機構41を、揺動アーム45bを一体的に備える電動モータ45と、テンションアーム43と揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45を連係作動させる連係部材46とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構41を介して駆動プーリ23から従動プーリ29への動力伝達を断接させる際、前記テンションアーム43と揺動アーム45bに対する連係部材46の連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持する融通機構Fを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸から出力される動力により伝動ベルトを介して回転駆動する冷却ファンを備えると共に、この冷却ファンへの伝動ベルトによる動力伝達を断接するテンションクラッチ機構が設けられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインでは、機体の前部に設けられた運転席の下方にエンジンを収容するエンジンルームが形成されており、エンジンのクランク軸を機体の内側に突出させてクローラ式走行装置の駆動部や、穀稈を刈取る前処理部、該前処理部で刈取った穀稈から穀粒を脱穀して選別処理する脱穀部等の作業機に動力を伝達すると共に、機体の外側方向にもクランク軸を突出させてオルタネータ、ウォータポンプ等の駆動系補機や、エンジンルーム内に外気を吸い込む冷却ファン(吸引ファン)等に動力を伝達している。
【0003】
そして、エンジンルームの外側には、防塵網を張設してなるエンジンカバーが装着してあり、この防塵網に付着した藁屑等の塵埃を除去するために、上述した駆動系補機には、エンジンのクランク軸から出力される動力を伝達したまま冷却ファンを駆動または停止できるように構成すると共に、冷却ファンを停止させた状態で機体の内側から防塵網に向けて送風する電動ファンを設けたコンバインが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このものでは、ウォータポンプ及びオルタネータの駆動軸に設けたプーリと、エンジンのクランク軸に設けたプーリとの間に伝動ベルトを巻回すると共に、該伝動ベルトに内側から転接するインテンションローラと外側から転接するアウトテンションローラを有している。そして、このインテンションローラを介して冷却ファンに動力を伝達すると共に、伝動ベルトに対してインテンションローラを接離自在になすベルトテンションクラッチを設けることによって、伝動ベルトによる冷却ファンへの動力伝達を断接できるように構成している。
【0005】
そして、上述したベルトテンションクラッチは、電動モータと、該電動モータの出力ギヤに歯合する扇形ギヤと、該扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームと、インテンションローラを軸支して揺動自在なインテンションアームと、該インテンションアームと揺動アームとを連結するワイヤと、インテンションローラを常時伝動ベルトに転接させる方向に付勢するインテンションスプリングとから構成されており、電動モータによって回動する扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームの揺動によって、ワイヤを介してインテンションアームが揺動され、該インテンションアームの揺動位置(揺動角度)が設定される。
【0006】
更に、インテンションローラには、このインテンションローラと同心(同軸)でファン出力プーリを一体的に設けると共に、該ファン出力プーリとファンプーリとの間にファン駆動ベルトを巻回してあり、インテンションローラが伝動ベルトに転接した状態にあればインテンションローラが回転し、それに伴ってファン出力プーリとファン駆動ベルトを介してファンプーリの回転がなされ、冷却ファンは回転駆動する。一方、電動モータを駆動してインテンションローラを伝動ベルトから離反させると、インテンションローラの回転が停止され、冷却ファンの回転駆動が停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−153643号公報(第4−6頁、図2−図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来のコンバインでは、クローラ式走行装置の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジンの負荷変動が生じると、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを回転駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する。この時、ベルトテンションクラッチを構成する電動モータの出力ギヤに歯合する扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームと、インテンションローラを軸支して揺動自在なインテンションアームとを連結するワイヤが常時緊張状態にあり、前記伝動ベルトの脈動に伴うインテンションアームの振動が電動モータの出力軸に直接的に伝播して、該出力軸に過負荷が掛かり破損に繋がるといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として創案したものであって、エンジンのクランク軸に設けた駆動プーリと、冷却ファンの回転軸に設けた従動プーリとの間に伝動ベルトを巻回し、且つ該伝動ベルトに転接するテンションローラと、該テンションローラを軸支して前記伝動ベルトを緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアームと、該テンションアームを常時冷却ファンを駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリングと、該テンションスプリングの付勢力に抗して冷却ファンの駆動を停止させる方向にテンションアームを揺動操作するテンションクラッチ機構を設け、該テンションクラッチ機構を介して前記駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接可能に構成したコンバインにおいて、前記テンションクラッチ機構を、揺動アームを一体的に備える電動モータと、前記テンションアームと揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構を介して駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接させる際、前記テンションアームと揺動アームに対する連係部材の連結間隔の変化を融通して両アームの連係作動を維持する融通機構を設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記連係部材としてワイヤを採用し、冷却ファンを駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファンの駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構を構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、伝動ベルトに転接するテンションローラを軸支して伝動ベルトを緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアームと、該テンションアームを常時冷却ファンを駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリングと、該テンションスプリングの付勢力に抗して冷却ファンの駆動を停止させる方向にテンションアームを揺動操作するテンションクラッチ機構を設け、該テンションクラッチ機構を介して駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接可能に構成し、前記テンションクラッチ機構を、揺動アームを一体的に備える電動モータと、前記テンションアームと揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構を介して前記駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接させる際、前記テンションアームと揺動アームに対する連係部材の連結間隔の変化を融通して両アームの連係作動を維持する融通機構を設けたことによって、例えば左右一対のクローラ式走行装置の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジンの負荷変動が生じ、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する時、該伝動ベルトに転接するテンションローラを軸支してなるテンションアームが振動しても、該テンションアームと、電動モータに一体的に備える揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材は、前記揺動アームの揺動に伴う該揺動アームに対するテンションアームの連結間隔の変化を融通して、両アームの連係作動をスムーズに維持するので、前記伝動ベルトの脈動が電動モータの出力軸に直接的に伝播して該出力軸に過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
そして、請求項2の発明によれば、前記連係部材としてワイヤを採用し、冷却ファンを駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファンの駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構を構成したことによって、急激なエンジンの負荷変動に伴い、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する時、該伝動ベルトに内側から転接するテンションローラを軸支してなるテンションアームが振動しても、該テンションアームと電動モータに一体的に備える揺動アームとを連結して両アームを連係作動させるワイヤは、冷却ファンを駆動させる時は弛緩状態にあり、当該ワイヤを介して伝動ベルトの脈動が電動モータの出力軸に直接的に伝播されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】一部を省略したエンジンルームの正面図。
【図3】一部を省略したエンジンルームの平面図。
【図4】ベルトテンションクラッチが入り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例1)。
【図5】コンバインの動力伝達図。
【図6】冷却装置の取り付け状態を示す斜視図。
【図7】冷却装置の取り付け状態を示す分解斜視図。
【図8】ベルトテンションクラッチが切り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例1)。
【図9】電動モータによって冷却ファンの駆動を可能にしたコンバインの動力伝達図。
【図10】ベルトテンションクラッチが入り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例2)。
【図11】ベルトテンションクラッチが切り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、コンバイン1の側面図であって、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2に機体フレーム3を支持し、該機体フレーム3の左右一側前部に穀稈を刈取る前処理部4を昇降自在に架設している。そして、前処理部4の側方には、オペレータが搭乗して運転操作を行なうキャビン5を備えており、このキャビン5内においてオペレータが着座する図示しない運転席の下方にエンジン6を収容したエンジンルーム7を設けると共に、該エンジンルーム7の外側方に開閉自在なエンジンカバー8を取り付けている。
【0014】
また、図2及び図3は、一部を省略したエンジンルームの正面図と平面図であって、エンジンルーム7には、エンジン6の他にラジエータ9、オイルクーラ11、及びコンデンサ12等の冷却装置を配設してあり、エンジンカバー8を構成する外枠の内側には、これら冷却装置9,11,12の冷却媒体(クーラント、エンジンオイル、フロンガス)を冷却するために外気をエンジンルーム7内に導入する吸気口13を設けている。尚、吸気口13には、藁屑等の塵埃を付着させる防塵網を張設している。
【0015】
次に、エンジンルーム7内の構成について説明する。機体フレーム3の前部には、図2に示すように、横フレーム3a,3aが並設(横設)してあり、この横フレーム3a,3aにエンジン6を取り付けるための左右一対のブラケット14,14を固設している。そして、図4は、詳細は後述するテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41入り作用状態にある時のエンジン6の右側面図であって、前記ブラケット14,14に防振ゴム15,15を取り付け、更に該防振ゴム15,15上に装着されるエンジンサポート16を介してエンジン6を機体フレーム3に搭載している。
【0016】
また、図5は、コンバイン1の動力伝達図であって、エンジン6の左右両側面からはエンジン6の出力軸であるクランク軸21が突出しており、機体の外側方向であるエンジン6の右側面から突出するクランク軸21には、第1駆動プーリ22と第2駆動プーリ23とからなる2つの駆動プーリを設けている。一方、エンジン6には、ウォータポンプ24やオルタネータ25等の駆動系補機を取り付けている。そして、ウォータポンプ24の駆動軸(以下ウォータポンプ軸とする)26には、図示しないボルトを用いてウォータポンププーリ28を固設している。
【0017】
更に詳しく説明すると、ウォータポンププーリ28は、図示しない片ボス構造を有しており、このボス部にボールベアリングを介してファンプーリ(従動プーリ)29を遊嵌支持している。即ち、ウォータポンププーリ28のボス部の中心には、冷却ファン(吸引ファン)31の回転軸に相当する図示しない軸部が突設してあり、該軸部にファンプーリ29の中心部を嵌合せしめると共にボールベアリングを装着している。そして、ファンプーリ29の外側面に冷却ファン31の中心部を装着すると共に、その外側から4本のボルト32を用いてボス33を取り付けている。これら冷却ファン31の中心部及びボス33は、上述のボールベアリングによりウォータポンププーリ28に対して回転自在に支承されており、それによって冷却ファン31の中心部から延設されている該冷却ファン31の羽部を、ウォータポンププーリ28とは関係なく独立して回転させることができるように構成している。
【0018】
また、オルタネータ25の駆動軸36にもオルタネータプーリ37が固設してあり、これらオルタネータプーリ37とウォータポンププーリ28と、エンジン6側に設けられた第1駆動プーリ22との間には、補機駆動ベルト(伝動ベルト)38を巻回している。更に、第1駆動プーリ22の外側に設けられた第2駆動プーリ23と、ファンプーリ29との間には冷却ファン駆動ベルト(伝動ベルト)39を巻回してあり、それによって第1駆動プーリ22、補機駆動ベルト38を介して駆動系補機であるウォータポンプ24とオルタネータ25に動力を伝達する補機伝動系Aと、第2駆動プーリ23、冷却ファン駆動ベルト39を介して冷却ファン31に動力を伝達する冷却ファン伝動系Bとを独立して構成している。そして、ウォータポンプ24及びオルタネータ25からなる駆動系補機には、上述の補機伝動系Aにより常時エンジン6からの動力が伝達される。
【0019】
一方、冷却ファン伝動系Bを構成する冷却ファン駆動ベルト39には、テンションクラッチ機構41を設けてあり、該テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を介して冷却ファン伝動系Bの動力伝達の断接がなされる。このテンションクラッチ機構41は、図4及び図8に示すように、冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42と、該テンションローラ42を軸支して冷却ファン駆動ベルト39を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム43と、該テンションアーム43を常時冷却ファン31を駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリング(引張スプリング)44と、該テンションスプリング44の付勢力に抗して冷却ファン31を停止させる方向にテンションアーム43を揺動(回動)操作可能な揺動アーム45bを一体的に備える電動モータ45と、前記テンションアーム43と揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるワイヤ46等によって構成されている。尚、図中符号47,48,49は、冷却ファン駆動ベルト39を案内するベルトガイドである。
【0020】
更に詳しく説明すると、上述したテンションアーム43は、略L字状のプレート部材からなり、その角部がエンジン6のクランク軸21と同軸上に設けた回動軸51に回動自在に支持されている。そして、テンションアーム43の長手側アームの先端部にテンションローラ42を取り付けると共に、このテンションローラ42を冷却ファン駆動ベルト39の内周(面)に転接せしめている。更に、テンションアーム43の長手側アームの先端部には、テンションローラ42の他に略U字状に曲げ形成した棒状部材からなるベルトガイド43aを固設してあり、このベルトガイド43aは、冷却ファン駆動ベルト39を挟んでテンションローラ42とは反対側の冷却ファン駆動ベルト39の外周(面)側から当接して当該冷却ファン駆動ベルト39を案内している。
【0021】
また、電動モータ45は、後側のエンジンサポート16に一体的に取り付けられた図示しないベースプレートと、該ベースプレートに対向するモータブラケット52とに挟まれた状態で図示しないカラーを介してボルト53を用いて固定されている。そして、電動モータ45の出力軸45aに一体的に固設した揺動アーム45bの先端部に、連係部材であるワイヤ46の一端(アウターケース側)46aを連結する一方、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bにワイヤ46の他端部(策端金具側)46bを連結している。尚、モータブラケット52には、揺動アーム45bの先端部にワイヤ46の一端46aを連結した状態で、当該揺動アーム45bを揺動自在に案内する半円弧状のガイド孔Hを設けている。
【0022】
また、前側のエンジンサポート16には、側面視で略三角形のプレート部材からなるブラケット54がボルト55を用いて取り付けてあり、このブラケット54の下部にテンションスプリング44の取付け座となる断面がL字状のプレート54aを固設している。そして、L字状のプレート54aの長辺には、テンションスプリング44の一端を係止可能なロッド56をロックナット57を用いて前後方向に位置調節自在に螺設する一方、テンションスプリング44の他端は、テンションアーム43の短手側アームに備えるピン43cに係止せしめている。
【0023】
つまり、上述したテンションスプリング44と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとテンションアーム43とを連結して両アーム43,45bを連係作動させるワイヤ46とは、その引っ張り方向が略平行且つ反対方向となるように対向させて配置している。また、テンションアーム43に対するテンションスプリング44の係止部であるピン43cと、同じくテンションアーム43の短手側アームの先端部に連結するワイヤ46の策端金具側46bの連結部である連結ピン43bは、テンションアーム43の回動軸51に対する前後方向の位置が略同一となるように上下に一列状に配置している。
【0024】
更に、テンションアーム43の短手側アームの先端部に連結するワイヤ46の策端金具側46bの連結部である連結ピン43bの位置を、テンションスプリング44の係止部であるピン43cよりも先端側に配置することにより、テンションアーム43の回動軸51からの距離を図4に示す如くS<Lとなし、それによってテンションスプリング44の付勢力に抗してテンションアーム43を揺動操作する電動モータ45の負荷を軽減させている。
【0025】
尚、前側のエンジンサポート16に取り付けた側面視で略三角形のブラケット54には、ベルトガイド47が螺設してあり、このベルトガイド47は、ファンプーリ29の前方側から第2駆動プーリ23の前方側及び下方側にかけて冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内しており、該冷却ファン駆動ベルト39が前方及び下方に緩まないように案内している。更に、冷却ファン駆動ベルト39の後方側には、テンションアーム43の長手側アームの先端部に設けた棒状部材からなるベルトガイド43aの他に、テンションアーム43の短手側アームには、第2駆動プーリ23の下方側で冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内する棒状のベルトガイド48を設けると共に、ファンプーリ29の略中心の高さ位置において冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内する曲げプレートからなるベルトガイド49を設けている。
【0026】
次に、エンジンルーム7内に設けられるラジエータ9、オイルクーラ11、及びコンデンサ12等の冷却装置について説明する。これらの冷却装置9,11,12は、図2及び図3に示すように、冷却ファン31(エンジン6側)からエンジンカバー8(吸気口13)に向かって、ラジエータ9、オイルクーラ11、コンデンサ12の順に並設してあり、それぞれ冷却媒体(クーラント、エンジンオイル、フロンガス)を冷却するために図示しない多数の冷却フィンを有している。
【0027】
また、ラジエータ9とオイルクーラ11の間には、冷却ファン31とは反対方向、即ちエンジン6側から吸気口13側へと送風する電動ファン61を設けると共に、コンデンサ12の右側後方には、液化した冷却媒体の汚れや水分を取り除くと共に、この冷却媒体を一時的に蓄えるレシーバドライヤ62を配設している。
【0028】
そして、図6及び図7は、上述した各冷却装置9,11,12の取り付け状態を示す斜視図と分解斜視図であって、ラジエータ9を装着するシュラウド(ファンシュラウド)63の前面側(エンジンカバー8側)に、パイプ材を外枠とするオイルクーラ支持部材64を螺設してあり、このオイルクーラ支持部材64の背面側(エンジン6側)に電動ファン61を取り付ける一方、オイルクーラ支持部材64の前面側(エンジンカバー8側)にオイルクーラ11を装着している。更に、オイルクーラ11の外側(エンジンカバー8側)には、前記シュラウド63の前面側に螺設したコンデンサ支持部材65を介してコンデンサ12及びレシーバドライヤ62を装着している。
【0029】
そして、電動ファン61、オイルクーラ11、及びコンデンサ12は、エンジンカバー8に設けた吸気口(防塵網)13に向けて均一に送風できるように、電動ファン61、オイルクーラ11、及びコンデンサ12の中心と、前記吸気口13の有効面積部分の中心が略一致するように、ラジエータ9を装着するシュラウド63にオイルクーラ支持部材64とコンデンサ支持部材65を介して取り付けてあり、エンジンルーム7の略中心に設けられている冷却ファン31の中心に対して、機体の前後方向または上下方向に中心位置がオフセットしている。
【0030】
以上説明した構成により、エンジン6が始動して出力軸であるクランク軸21が回転すると、このクランク軸21に設けた第1駆動プーリ22が回転し、補機駆動ベルト38を介してウォータポンププーリ28とオルタネータプーリ37に動力が伝達される。そして、これらウォータポンププーリ28とオルタネータプーリ37によって、駆動系補機であるウォータポンプ24とオルタネータ25の駆動軸26,36が回転し、ウォータポンプ24とオルタネータ25は常時駆動する。
【0031】
また、クランク軸21が回転すると、このクランク軸21に設けたもう一つの第2駆動プーリ23も回転し、冷却ファン駆動ベルト39を介してファンプーリ29に動力が伝達される。即ち、ウォータポンププーリ28に遊嵌支持されているファンプーリ29の回転に伴って冷却ファン31が回転し、エンジンカバー8に設けた吸気口13からエンジンルーム7内へ外気が吸引される。そして、この吸引された外気が冷却装置であるコンデンサ12、オイルクーラ11、及びラジエータ9の冷却フィンの間を通過することにより、各冷却装置9,11,12の冷却媒体が冷却される。
【0032】
そして、冷却ファン31が回転した状態で一定時間の収穫作業を行なっていると、コンバイン1に備える図示しないマイクロコンピュータ等を用いて構成される制御部が除塵モードとなり、電動モータ45に制御信号が出力される。このように制御信号が出力されると、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部が、モータブラケット52に設けた半円弧状のガイド孔Hに沿って上方に揺動し、それに伴って揺動アーム45bの先端部に一端が連結されているワイヤ46がテンションスプリング44の付勢力に抗して引っ張られ、該ワイヤ46の他端を短手側アームに連結してなるテンションアーム43の長手側アームが機体前方側に揺動(回動)操作される。即ち、図4に示すテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態から、図8に示すテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が切り作用状態に切り換えられる。
【0033】
更に詳しく説明すると、図8に示すように、テンションアーム43の長手側アームが機体前方側に揺動(回動)操作されると、テンションアーム43の長手側アームの先端部に設けたベルトガイド43aによって、冷却ファン駆動ベルト39の外周が内周側に向かって押圧される。このように冷却ファン駆動ベルト39の外周が内周側に向かって押圧されると、ベルトガイド47,49によってファンプーリ29の前方側と後方側が押えられているので、冷却ファン駆動ベルト39は、ファンプーリ29の上方側へ緩み、第2駆動プーリ23からファンプーリ29への動力伝達(冷却ファン伝動系Bの動力伝達)が切断される。
【0034】
この時、冷却ファン駆動ベルト39の内周に転接していたテンションローラ42を離反させるだけでなく、ベルトガイド43aによって冷却ファン駆動ベルト39を内周側に押圧するので、該冷却ファン駆動ベルト39は外れることなく内側に案内され、確実にベルトテンションクラッチが切断される。また、冷却ファン駆動ベルト39は、その下方をベルトガイド47とベルトガイド48によって案内(支持)されているので、当該冷却ファン駆動ベルト39が下方に移動することがない。
【0035】
上述の如く冷却ファン伝動系Bの動力伝達が切断されるとファンプーリ29の回転が停止する。また、電動モータ45と同時に電動ファン61にも制御部から制御信号が出力されており、冷却ファン31が停止すると同時に電動ファン61の回転が開始される。電動ファン61の回転が始まると、エンジンルーム7内のオイルクーラ11とコンデンサ12の冷却フィンの間を通過した防塵風が、エンジンカバー8に設けた吸気口13に向けて送風され、該吸気口13の防塵網に付着した藁屑等の塵埃が除去される(吹き飛ばされる)。
【0036】
そして、予め設定した時間、電動ファン61を回転駆動させると、制御部から制御信号が出力されて電動ファン61が停止すると共に、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部がモータブラケット52に設けた半円弧状のガイド孔Hに沿って下方に揺動する。それに伴って揺動アーム45bの先端部に一端を連結すると共に他端をテンションアーム43の短手側アームに連結してなるワイヤ46は、図4に示すように緩みが生じる。この時テンションアーム43の長手側アームは、テンションスプリング44の付勢力によって機体後方側に揺動(回動)操作されて、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態となる。
【0037】
つまり、本発明では、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を介して第2駆動プーリ23からファンプーリ(従動プーリ)29への動力伝達(冷却ファン伝動系Bの動力伝達)を断接させる際、テンションローラ42を軸支して冷却ファン駆動ベルト39を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの連係部材としてワイヤ46を採用し、前記揺動アーム45bの揺動に伴って該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔が、図4に示すD1から図8に示すD2(ここでD1<D2)に変化しても、この連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持するように融通機構Fを構成しているので、例えば左右一対のクローラ式走行装置2の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部4への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジン6の負荷変動が生じ、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を回転駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42を軸支してなるテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるワイヤ46は、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化(D1<D2)を融通して、両アーム43,45bの連係作動をスムーズに維持するので、前記冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸に直接的に伝播して該出力軸に過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
【0038】
更に詳しく説明すると、上述の如くテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてワイヤ46を採用し、冷却ファン31を駆動させる時はワイヤ46を弛緩させ、冷却ファン31の駆動を停止させる時はワイヤ46を緊張させることにより融通機構Fを構成しているので、急激なエンジン6の負荷変動に伴い、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に内側から転接するテンションローラ42を軸支したテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させるワイヤ46は、冷却ファン31を駆動させる時は弛緩状態にあり、当該ワイヤ46を介して冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播されることはない。
【0039】
ところで、図9に示すコンバイン1の動力伝達図は、図8に示す如くテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を切り作用状態に切り換えた時、冷却ファン31を電動モータ71によって駆動できるように構成したものであり、ウォータポンププーリ28のボス部に遊嵌支持されているファンプーリ29の外側に、従動プーリ72を設けると共に、該従動プーリ72と電動モータ71の出力軸73に設けた出力プーリ74との間に伝動ベルト75を巻回している。
【実施例2】
【0040】
図10及び図11は、テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結し、両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてロッド76を採用したものであって、図10は、実施例1における図4と同様にテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態にあり、図11は、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が切り作用状態に切り換えられた状態を示す。
【0041】
更に詳しく説明すると、上述したロッド76は、そのアジャスタ部76aを、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部にロックナット77を用いて位置調整自在に連結する一方、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bにロッド76の他端部を構成するプレート76bを連結している。そして、このプレート76bには、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化が、図10に示すD1から図11に示すD2(ここでD1<D2)に変化しても、この連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持する融通機構Fとして長穴H1を設けている。
【0042】
即ち、左右一対のクローラ式走行装置2の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部4への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジン6の負荷変動が生じ、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を回転駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42を軸支してなるテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるロッド76は、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bとの連結部を構成するプレート76bに長穴H1を設けてあり、この長穴H1が、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化(D1<D2)を融通して、両アーム43,45bの連係作動をスムーズに維持するので、前記冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播して該出力軸45aに過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
【0043】
そして、上述の如くテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてロッド76を採用し、冷却ファン31を駆動させる時は、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bとの連結部を構成するプレート76bに設けた長穴H1によって、該長穴H1の許容する範囲内のテンションアーム43の揺動が可能であり、急激なエンジン6の負荷変動に伴い、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に内側から転接するテンションローラ42を軸支したテンションアーム43が振動しても、前記ロッド76を介して冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、エンジンのクランク軸から出力される動力により伝動ベルトを介して作業機を駆動させると共に、該作業機への伝動ベルトによる動力伝達を断接するテンションクラッチ機構を電動モータを用いて構成する移動農機等に応用可能である。
【符号の説明】
【0045】
6 エンジン
21 クランク軸
23 駆動プーリ
29 従動プーリ
31 冷却ファン
39 伝動ベルト
41 テンションクラッチ機構
42 テンションローラ
43 テンションアーム
44 テンションスプリング
45 電動モータ
45b 揺動アーム
46 連係部材(ワイヤ)
76 連係部材(ロッド)
F 融通機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸から出力される動力により伝動ベルトを介して回転駆動する冷却ファンを備えると共に、この冷却ファンへの伝動ベルトによる動力伝達を断接するテンションクラッチ機構が設けられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインでは、機体の前部に設けられた運転席の下方にエンジンを収容するエンジンルームが形成されており、エンジンのクランク軸を機体の内側に突出させてクローラ式走行装置の駆動部や、穀稈を刈取る前処理部、該前処理部で刈取った穀稈から穀粒を脱穀して選別処理する脱穀部等の作業機に動力を伝達すると共に、機体の外側方向にもクランク軸を突出させてオルタネータ、ウォータポンプ等の駆動系補機や、エンジンルーム内に外気を吸い込む冷却ファン(吸引ファン)等に動力を伝達している。
【0003】
そして、エンジンルームの外側には、防塵網を張設してなるエンジンカバーが装着してあり、この防塵網に付着した藁屑等の塵埃を除去するために、上述した駆動系補機には、エンジンのクランク軸から出力される動力を伝達したまま冷却ファンを駆動または停止できるように構成すると共に、冷却ファンを停止させた状態で機体の内側から防塵網に向けて送風する電動ファンを設けたコンバインが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このものでは、ウォータポンプ及びオルタネータの駆動軸に設けたプーリと、エンジンのクランク軸に設けたプーリとの間に伝動ベルトを巻回すると共に、該伝動ベルトに内側から転接するインテンションローラと外側から転接するアウトテンションローラを有している。そして、このインテンションローラを介して冷却ファンに動力を伝達すると共に、伝動ベルトに対してインテンションローラを接離自在になすベルトテンションクラッチを設けることによって、伝動ベルトによる冷却ファンへの動力伝達を断接できるように構成している。
【0005】
そして、上述したベルトテンションクラッチは、電動モータと、該電動モータの出力ギヤに歯合する扇形ギヤと、該扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームと、インテンションローラを軸支して揺動自在なインテンションアームと、該インテンションアームと揺動アームとを連結するワイヤと、インテンションローラを常時伝動ベルトに転接させる方向に付勢するインテンションスプリングとから構成されており、電動モータによって回動する扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームの揺動によって、ワイヤを介してインテンションアームが揺動され、該インテンションアームの揺動位置(揺動角度)が設定される。
【0006】
更に、インテンションローラには、このインテンションローラと同心(同軸)でファン出力プーリを一体的に設けると共に、該ファン出力プーリとファンプーリとの間にファン駆動ベルトを巻回してあり、インテンションローラが伝動ベルトに転接した状態にあればインテンションローラが回転し、それに伴ってファン出力プーリとファン駆動ベルトを介してファンプーリの回転がなされ、冷却ファンは回転駆動する。一方、電動モータを駆動してインテンションローラを伝動ベルトから離反させると、インテンションローラの回転が停止され、冷却ファンの回転駆動が停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−153643号公報(第4−6頁、図2−図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来のコンバインでは、クローラ式走行装置の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジンの負荷変動が生じると、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを回転駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する。この時、ベルトテンションクラッチを構成する電動モータの出力ギヤに歯合する扇形ギヤに一体的に取り付けられた揺動アームと、インテンションローラを軸支して揺動自在なインテンションアームとを連結するワイヤが常時緊張状態にあり、前記伝動ベルトの脈動に伴うインテンションアームの振動が電動モータの出力軸に直接的に伝播して、該出力軸に過負荷が掛かり破損に繋がるといった問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として創案したものであって、エンジンのクランク軸に設けた駆動プーリと、冷却ファンの回転軸に設けた従動プーリとの間に伝動ベルトを巻回し、且つ該伝動ベルトに転接するテンションローラと、該テンションローラを軸支して前記伝動ベルトを緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアームと、該テンションアームを常時冷却ファンを駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリングと、該テンションスプリングの付勢力に抗して冷却ファンの駆動を停止させる方向にテンションアームを揺動操作するテンションクラッチ機構を設け、該テンションクラッチ機構を介して前記駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接可能に構成したコンバインにおいて、前記テンションクラッチ機構を、揺動アームを一体的に備える電動モータと、前記テンションアームと揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構を介して駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接させる際、前記テンションアームと揺動アームに対する連係部材の連結間隔の変化を融通して両アームの連係作動を維持する融通機構を設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記連係部材としてワイヤを採用し、冷却ファンを駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファンの駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構を構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、伝動ベルトに転接するテンションローラを軸支して伝動ベルトを緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアームと、該テンションアームを常時冷却ファンを駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリングと、該テンションスプリングの付勢力に抗して冷却ファンの駆動を停止させる方向にテンションアームを揺動操作するテンションクラッチ機構を設け、該テンションクラッチ機構を介して駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接可能に構成し、前記テンションクラッチ機構を、揺動アームを一体的に備える電動モータと、前記テンションアームと揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構を介して前記駆動プーリから従動プーリへの動力伝達を断接させる際、前記テンションアームと揺動アームに対する連係部材の連結間隔の変化を融通して両アームの連係作動を維持する融通機構を設けたことによって、例えば左右一対のクローラ式走行装置の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジンの負荷変動が生じ、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する時、該伝動ベルトに転接するテンションローラを軸支してなるテンションアームが振動しても、該テンションアームと、電動モータに一体的に備える揺動アームとを連結して両アームを連係作動させる連係部材は、前記揺動アームの揺動に伴う該揺動アームに対するテンションアームの連結間隔の変化を融通して、両アームの連係作動をスムーズに維持するので、前記伝動ベルトの脈動が電動モータの出力軸に直接的に伝播して該出力軸に過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
そして、請求項2の発明によれば、前記連係部材としてワイヤを採用し、冷却ファンを駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファンの駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構を構成したことによって、急激なエンジンの負荷変動に伴い、該エンジンのクランク軸を介して伝播される衝撃により冷却ファンを駆動させる伝動ベルトに脈動が発生する時、該伝動ベルトに内側から転接するテンションローラを軸支してなるテンションアームが振動しても、該テンションアームと電動モータに一体的に備える揺動アームとを連結して両アームを連係作動させるワイヤは、冷却ファンを駆動させる時は弛緩状態にあり、当該ワイヤを介して伝動ベルトの脈動が電動モータの出力軸に直接的に伝播されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】一部を省略したエンジンルームの正面図。
【図3】一部を省略したエンジンルームの平面図。
【図4】ベルトテンションクラッチが入り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例1)。
【図5】コンバインの動力伝達図。
【図6】冷却装置の取り付け状態を示す斜視図。
【図7】冷却装置の取り付け状態を示す分解斜視図。
【図8】ベルトテンションクラッチが切り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例1)。
【図9】電動モータによって冷却ファンの駆動を可能にしたコンバインの動力伝達図。
【図10】ベルトテンションクラッチが入り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例2)。
【図11】ベルトテンションクラッチが切り作用状態にある時のエンジンの右側面図(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、コンバイン1の側面図であって、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2に機体フレーム3を支持し、該機体フレーム3の左右一側前部に穀稈を刈取る前処理部4を昇降自在に架設している。そして、前処理部4の側方には、オペレータが搭乗して運転操作を行なうキャビン5を備えており、このキャビン5内においてオペレータが着座する図示しない運転席の下方にエンジン6を収容したエンジンルーム7を設けると共に、該エンジンルーム7の外側方に開閉自在なエンジンカバー8を取り付けている。
【0014】
また、図2及び図3は、一部を省略したエンジンルームの正面図と平面図であって、エンジンルーム7には、エンジン6の他にラジエータ9、オイルクーラ11、及びコンデンサ12等の冷却装置を配設してあり、エンジンカバー8を構成する外枠の内側には、これら冷却装置9,11,12の冷却媒体(クーラント、エンジンオイル、フロンガス)を冷却するために外気をエンジンルーム7内に導入する吸気口13を設けている。尚、吸気口13には、藁屑等の塵埃を付着させる防塵網を張設している。
【0015】
次に、エンジンルーム7内の構成について説明する。機体フレーム3の前部には、図2に示すように、横フレーム3a,3aが並設(横設)してあり、この横フレーム3a,3aにエンジン6を取り付けるための左右一対のブラケット14,14を固設している。そして、図4は、詳細は後述するテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41入り作用状態にある時のエンジン6の右側面図であって、前記ブラケット14,14に防振ゴム15,15を取り付け、更に該防振ゴム15,15上に装着されるエンジンサポート16を介してエンジン6を機体フレーム3に搭載している。
【0016】
また、図5は、コンバイン1の動力伝達図であって、エンジン6の左右両側面からはエンジン6の出力軸であるクランク軸21が突出しており、機体の外側方向であるエンジン6の右側面から突出するクランク軸21には、第1駆動プーリ22と第2駆動プーリ23とからなる2つの駆動プーリを設けている。一方、エンジン6には、ウォータポンプ24やオルタネータ25等の駆動系補機を取り付けている。そして、ウォータポンプ24の駆動軸(以下ウォータポンプ軸とする)26には、図示しないボルトを用いてウォータポンププーリ28を固設している。
【0017】
更に詳しく説明すると、ウォータポンププーリ28は、図示しない片ボス構造を有しており、このボス部にボールベアリングを介してファンプーリ(従動プーリ)29を遊嵌支持している。即ち、ウォータポンププーリ28のボス部の中心には、冷却ファン(吸引ファン)31の回転軸に相当する図示しない軸部が突設してあり、該軸部にファンプーリ29の中心部を嵌合せしめると共にボールベアリングを装着している。そして、ファンプーリ29の外側面に冷却ファン31の中心部を装着すると共に、その外側から4本のボルト32を用いてボス33を取り付けている。これら冷却ファン31の中心部及びボス33は、上述のボールベアリングによりウォータポンププーリ28に対して回転自在に支承されており、それによって冷却ファン31の中心部から延設されている該冷却ファン31の羽部を、ウォータポンププーリ28とは関係なく独立して回転させることができるように構成している。
【0018】
また、オルタネータ25の駆動軸36にもオルタネータプーリ37が固設してあり、これらオルタネータプーリ37とウォータポンププーリ28と、エンジン6側に設けられた第1駆動プーリ22との間には、補機駆動ベルト(伝動ベルト)38を巻回している。更に、第1駆動プーリ22の外側に設けられた第2駆動プーリ23と、ファンプーリ29との間には冷却ファン駆動ベルト(伝動ベルト)39を巻回してあり、それによって第1駆動プーリ22、補機駆動ベルト38を介して駆動系補機であるウォータポンプ24とオルタネータ25に動力を伝達する補機伝動系Aと、第2駆動プーリ23、冷却ファン駆動ベルト39を介して冷却ファン31に動力を伝達する冷却ファン伝動系Bとを独立して構成している。そして、ウォータポンプ24及びオルタネータ25からなる駆動系補機には、上述の補機伝動系Aにより常時エンジン6からの動力が伝達される。
【0019】
一方、冷却ファン伝動系Bを構成する冷却ファン駆動ベルト39には、テンションクラッチ機構41を設けてあり、該テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を介して冷却ファン伝動系Bの動力伝達の断接がなされる。このテンションクラッチ機構41は、図4及び図8に示すように、冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42と、該テンションローラ42を軸支して冷却ファン駆動ベルト39を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム43と、該テンションアーム43を常時冷却ファン31を駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリング(引張スプリング)44と、該テンションスプリング44の付勢力に抗して冷却ファン31を停止させる方向にテンションアーム43を揺動(回動)操作可能な揺動アーム45bを一体的に備える電動モータ45と、前記テンションアーム43と揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるワイヤ46等によって構成されている。尚、図中符号47,48,49は、冷却ファン駆動ベルト39を案内するベルトガイドである。
【0020】
更に詳しく説明すると、上述したテンションアーム43は、略L字状のプレート部材からなり、その角部がエンジン6のクランク軸21と同軸上に設けた回動軸51に回動自在に支持されている。そして、テンションアーム43の長手側アームの先端部にテンションローラ42を取り付けると共に、このテンションローラ42を冷却ファン駆動ベルト39の内周(面)に転接せしめている。更に、テンションアーム43の長手側アームの先端部には、テンションローラ42の他に略U字状に曲げ形成した棒状部材からなるベルトガイド43aを固設してあり、このベルトガイド43aは、冷却ファン駆動ベルト39を挟んでテンションローラ42とは反対側の冷却ファン駆動ベルト39の外周(面)側から当接して当該冷却ファン駆動ベルト39を案内している。
【0021】
また、電動モータ45は、後側のエンジンサポート16に一体的に取り付けられた図示しないベースプレートと、該ベースプレートに対向するモータブラケット52とに挟まれた状態で図示しないカラーを介してボルト53を用いて固定されている。そして、電動モータ45の出力軸45aに一体的に固設した揺動アーム45bの先端部に、連係部材であるワイヤ46の一端(アウターケース側)46aを連結する一方、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bにワイヤ46の他端部(策端金具側)46bを連結している。尚、モータブラケット52には、揺動アーム45bの先端部にワイヤ46の一端46aを連結した状態で、当該揺動アーム45bを揺動自在に案内する半円弧状のガイド孔Hを設けている。
【0022】
また、前側のエンジンサポート16には、側面視で略三角形のプレート部材からなるブラケット54がボルト55を用いて取り付けてあり、このブラケット54の下部にテンションスプリング44の取付け座となる断面がL字状のプレート54aを固設している。そして、L字状のプレート54aの長辺には、テンションスプリング44の一端を係止可能なロッド56をロックナット57を用いて前後方向に位置調節自在に螺設する一方、テンションスプリング44の他端は、テンションアーム43の短手側アームに備えるピン43cに係止せしめている。
【0023】
つまり、上述したテンションスプリング44と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとテンションアーム43とを連結して両アーム43,45bを連係作動させるワイヤ46とは、その引っ張り方向が略平行且つ反対方向となるように対向させて配置している。また、テンションアーム43に対するテンションスプリング44の係止部であるピン43cと、同じくテンションアーム43の短手側アームの先端部に連結するワイヤ46の策端金具側46bの連結部である連結ピン43bは、テンションアーム43の回動軸51に対する前後方向の位置が略同一となるように上下に一列状に配置している。
【0024】
更に、テンションアーム43の短手側アームの先端部に連結するワイヤ46の策端金具側46bの連結部である連結ピン43bの位置を、テンションスプリング44の係止部であるピン43cよりも先端側に配置することにより、テンションアーム43の回動軸51からの距離を図4に示す如くS<Lとなし、それによってテンションスプリング44の付勢力に抗してテンションアーム43を揺動操作する電動モータ45の負荷を軽減させている。
【0025】
尚、前側のエンジンサポート16に取り付けた側面視で略三角形のブラケット54には、ベルトガイド47が螺設してあり、このベルトガイド47は、ファンプーリ29の前方側から第2駆動プーリ23の前方側及び下方側にかけて冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内しており、該冷却ファン駆動ベルト39が前方及び下方に緩まないように案内している。更に、冷却ファン駆動ベルト39の後方側には、テンションアーム43の長手側アームの先端部に設けた棒状部材からなるベルトガイド43aの他に、テンションアーム43の短手側アームには、第2駆動プーリ23の下方側で冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内する棒状のベルトガイド48を設けると共に、ファンプーリ29の略中心の高さ位置において冷却ファン駆動ベルト39の外周側を案内する曲げプレートからなるベルトガイド49を設けている。
【0026】
次に、エンジンルーム7内に設けられるラジエータ9、オイルクーラ11、及びコンデンサ12等の冷却装置について説明する。これらの冷却装置9,11,12は、図2及び図3に示すように、冷却ファン31(エンジン6側)からエンジンカバー8(吸気口13)に向かって、ラジエータ9、オイルクーラ11、コンデンサ12の順に並設してあり、それぞれ冷却媒体(クーラント、エンジンオイル、フロンガス)を冷却するために図示しない多数の冷却フィンを有している。
【0027】
また、ラジエータ9とオイルクーラ11の間には、冷却ファン31とは反対方向、即ちエンジン6側から吸気口13側へと送風する電動ファン61を設けると共に、コンデンサ12の右側後方には、液化した冷却媒体の汚れや水分を取り除くと共に、この冷却媒体を一時的に蓄えるレシーバドライヤ62を配設している。
【0028】
そして、図6及び図7は、上述した各冷却装置9,11,12の取り付け状態を示す斜視図と分解斜視図であって、ラジエータ9を装着するシュラウド(ファンシュラウド)63の前面側(エンジンカバー8側)に、パイプ材を外枠とするオイルクーラ支持部材64を螺設してあり、このオイルクーラ支持部材64の背面側(エンジン6側)に電動ファン61を取り付ける一方、オイルクーラ支持部材64の前面側(エンジンカバー8側)にオイルクーラ11を装着している。更に、オイルクーラ11の外側(エンジンカバー8側)には、前記シュラウド63の前面側に螺設したコンデンサ支持部材65を介してコンデンサ12及びレシーバドライヤ62を装着している。
【0029】
そして、電動ファン61、オイルクーラ11、及びコンデンサ12は、エンジンカバー8に設けた吸気口(防塵網)13に向けて均一に送風できるように、電動ファン61、オイルクーラ11、及びコンデンサ12の中心と、前記吸気口13の有効面積部分の中心が略一致するように、ラジエータ9を装着するシュラウド63にオイルクーラ支持部材64とコンデンサ支持部材65を介して取り付けてあり、エンジンルーム7の略中心に設けられている冷却ファン31の中心に対して、機体の前後方向または上下方向に中心位置がオフセットしている。
【0030】
以上説明した構成により、エンジン6が始動して出力軸であるクランク軸21が回転すると、このクランク軸21に設けた第1駆動プーリ22が回転し、補機駆動ベルト38を介してウォータポンププーリ28とオルタネータプーリ37に動力が伝達される。そして、これらウォータポンププーリ28とオルタネータプーリ37によって、駆動系補機であるウォータポンプ24とオルタネータ25の駆動軸26,36が回転し、ウォータポンプ24とオルタネータ25は常時駆動する。
【0031】
また、クランク軸21が回転すると、このクランク軸21に設けたもう一つの第2駆動プーリ23も回転し、冷却ファン駆動ベルト39を介してファンプーリ29に動力が伝達される。即ち、ウォータポンププーリ28に遊嵌支持されているファンプーリ29の回転に伴って冷却ファン31が回転し、エンジンカバー8に設けた吸気口13からエンジンルーム7内へ外気が吸引される。そして、この吸引された外気が冷却装置であるコンデンサ12、オイルクーラ11、及びラジエータ9の冷却フィンの間を通過することにより、各冷却装置9,11,12の冷却媒体が冷却される。
【0032】
そして、冷却ファン31が回転した状態で一定時間の収穫作業を行なっていると、コンバイン1に備える図示しないマイクロコンピュータ等を用いて構成される制御部が除塵モードとなり、電動モータ45に制御信号が出力される。このように制御信号が出力されると、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部が、モータブラケット52に設けた半円弧状のガイド孔Hに沿って上方に揺動し、それに伴って揺動アーム45bの先端部に一端が連結されているワイヤ46がテンションスプリング44の付勢力に抗して引っ張られ、該ワイヤ46の他端を短手側アームに連結してなるテンションアーム43の長手側アームが機体前方側に揺動(回動)操作される。即ち、図4に示すテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態から、図8に示すテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が切り作用状態に切り換えられる。
【0033】
更に詳しく説明すると、図8に示すように、テンションアーム43の長手側アームが機体前方側に揺動(回動)操作されると、テンションアーム43の長手側アームの先端部に設けたベルトガイド43aによって、冷却ファン駆動ベルト39の外周が内周側に向かって押圧される。このように冷却ファン駆動ベルト39の外周が内周側に向かって押圧されると、ベルトガイド47,49によってファンプーリ29の前方側と後方側が押えられているので、冷却ファン駆動ベルト39は、ファンプーリ29の上方側へ緩み、第2駆動プーリ23からファンプーリ29への動力伝達(冷却ファン伝動系Bの動力伝達)が切断される。
【0034】
この時、冷却ファン駆動ベルト39の内周に転接していたテンションローラ42を離反させるだけでなく、ベルトガイド43aによって冷却ファン駆動ベルト39を内周側に押圧するので、該冷却ファン駆動ベルト39は外れることなく内側に案内され、確実にベルトテンションクラッチが切断される。また、冷却ファン駆動ベルト39は、その下方をベルトガイド47とベルトガイド48によって案内(支持)されているので、当該冷却ファン駆動ベルト39が下方に移動することがない。
【0035】
上述の如く冷却ファン伝動系Bの動力伝達が切断されるとファンプーリ29の回転が停止する。また、電動モータ45と同時に電動ファン61にも制御部から制御信号が出力されており、冷却ファン31が停止すると同時に電動ファン61の回転が開始される。電動ファン61の回転が始まると、エンジンルーム7内のオイルクーラ11とコンデンサ12の冷却フィンの間を通過した防塵風が、エンジンカバー8に設けた吸気口13に向けて送風され、該吸気口13の防塵網に付着した藁屑等の塵埃が除去される(吹き飛ばされる)。
【0036】
そして、予め設定した時間、電動ファン61を回転駆動させると、制御部から制御信号が出力されて電動ファン61が停止すると共に、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部がモータブラケット52に設けた半円弧状のガイド孔Hに沿って下方に揺動する。それに伴って揺動アーム45bの先端部に一端を連結すると共に他端をテンションアーム43の短手側アームに連結してなるワイヤ46は、図4に示すように緩みが生じる。この時テンションアーム43の長手側アームは、テンションスプリング44の付勢力によって機体後方側に揺動(回動)操作されて、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態となる。
【0037】
つまり、本発明では、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を介して第2駆動プーリ23からファンプーリ(従動プーリ)29への動力伝達(冷却ファン伝動系Bの動力伝達)を断接させる際、テンションローラ42を軸支して冷却ファン駆動ベルト39を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの連係部材としてワイヤ46を採用し、前記揺動アーム45bの揺動に伴って該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔が、図4に示すD1から図8に示すD2(ここでD1<D2)に変化しても、この連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持するように融通機構Fを構成しているので、例えば左右一対のクローラ式走行装置2の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部4への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジン6の負荷変動が生じ、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を回転駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42を軸支してなるテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるワイヤ46は、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化(D1<D2)を融通して、両アーム43,45bの連係作動をスムーズに維持するので、前記冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸に直接的に伝播して該出力軸に過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
【0038】
更に詳しく説明すると、上述の如くテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてワイヤ46を採用し、冷却ファン31を駆動させる時はワイヤ46を弛緩させ、冷却ファン31の駆動を停止させる時はワイヤ46を緊張させることにより融通機構Fを構成しているので、急激なエンジン6の負荷変動に伴い、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に内側から転接するテンションローラ42を軸支したテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させるワイヤ46は、冷却ファン31を駆動させる時は弛緩状態にあり、当該ワイヤ46を介して冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播されることはない。
【0039】
ところで、図9に示すコンバイン1の動力伝達図は、図8に示す如くテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41を切り作用状態に切り換えた時、冷却ファン31を電動モータ71によって駆動できるように構成したものであり、ウォータポンププーリ28のボス部に遊嵌支持されているファンプーリ29の外側に、従動プーリ72を設けると共に、該従動プーリ72と電動モータ71の出力軸73に設けた出力プーリ74との間に伝動ベルト75を巻回している。
【実施例2】
【0040】
図10及び図11は、テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結し、両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてロッド76を採用したものであって、図10は、実施例1における図4と同様にテンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が入り作用状態にあり、図11は、テンションクラッチ機構(ベルトテンションクラッチ)41が切り作用状態に切り換えられた状態を示す。
【0041】
更に詳しく説明すると、上述したロッド76は、そのアジャスタ部76aを、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bの先端部にロックナット77を用いて位置調整自在に連結する一方、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bにロッド76の他端部を構成するプレート76bを連結している。そして、このプレート76bには、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化が、図10に示すD1から図11に示すD2(ここでD1<D2)に変化しても、この連結間隔の変化を融通して両アーム43,45bの連係作動を維持する融通機構Fとして長穴H1を設けている。
【0042】
即ち、左右一対のクローラ式走行装置2の変速操作や、穀稈を刈取る前処理部4への動力伝達を断接する前処理クラッチの入/切作動等に伴って急激なエンジン6の負荷変動が生じ、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を回転駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に転接するテンションローラ42を軸支してなるテンションアーム43が振動しても、該テンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材であるロッド76は、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bとの連結部を構成するプレート76bに長穴H1を設けてあり、この長穴H1が、前記揺動アーム45bの揺動に伴う該揺動アーム45bに対するテンションアーム43の連結間隔の変化(D1<D2)を融通して、両アーム43,45bの連係作動をスムーズに維持するので、前記冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播して該出力軸45aに過負荷が掛かるといった従来の問題点を解消することができる。
【0043】
そして、上述の如くテンションアーム43と、電動モータ45に一体的に備える揺動アーム45bとを連結して両アーム43,45bを連係作動させる連係部材としてロッド76を採用し、冷却ファン31を駆動させる時は、テンションアーム43の短手側アームの先端部に備える連結ピン43bとの連結部を構成するプレート76bに設けた長穴H1によって、該長穴H1の許容する範囲内のテンションアーム43の揺動が可能であり、急激なエンジン6の負荷変動に伴い、該エンジン6のクランク軸21を介して伝播される衝撃により冷却ファン31を駆動させる冷却ファン駆動ベルト39に脈動が発生する時、該冷却ファン駆動ベルト39に内側から転接するテンションローラ42を軸支したテンションアーム43が振動しても、前記ロッド76を介して冷却ファン駆動ベルト39の脈動が電動モータ45の出力軸45aに直接的に伝播されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、エンジンのクランク軸から出力される動力により伝動ベルトを介して作業機を駆動させると共に、該作業機への伝動ベルトによる動力伝達を断接するテンションクラッチ機構を電動モータを用いて構成する移動農機等に応用可能である。
【符号の説明】
【0045】
6 エンジン
21 クランク軸
23 駆動プーリ
29 従動プーリ
31 冷却ファン
39 伝動ベルト
41 テンションクラッチ機構
42 テンションローラ
43 テンションアーム
44 テンションスプリング
45 電動モータ
45b 揺動アーム
46 連係部材(ワイヤ)
76 連係部材(ロッド)
F 融通機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)のクランク軸(21)に設けた駆動プーリ(23)と、冷却ファン(31)の回転軸に設けた従動プーリ(29)との間に伝動ベルト(39)を巻回し、且つ該伝動ベルト(39)に転接するテンションローラ(42)と、該テンションローラ(42)を軸支して前記伝動ベルト(39)を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム(43)と、該テンションアーム(43)を常時冷却ファン(31)を駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリング(44)と、該テンションスプリング(44)の付勢力に抗して冷却ファン(31)の駆動を停止させる方向にテンションアーム(43)を揺動操作するテンションクラッチ機構(41)を設け、該テンションクラッチ機構(41)を介して前記駆動プーリ(23)から従動プーリ(29)への動力伝達を断接可能に構成したコンバインにおいて、前記テンションクラッチ機構(41)を、揺動アーム(45b)を一体的に備える電動モータ(45)と、前記テンションアーム(43)と揺動アーム(45b)とを連結して両アーム(43,45)を連係作動させる連係部材(46)とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構(41)を介して駆動プーリ(23)から従動プーリ(29)への動力伝達を断接させる際、前記テンションアーム(43)と揺動アーム(45b)に対する連係部材(46,76)の連結間隔の変化を融通して両アーム(43,45b)の連係作動を維持する融通機構(F)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記連係部材(46)としてワイヤを採用し、冷却ファン(31)を駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファン(31)の駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構(F)を構成した請求項1に記載のコンバイン。
【請求項1】
エンジン(6)のクランク軸(21)に設けた駆動プーリ(23)と、冷却ファン(31)の回転軸に設けた従動プーリ(29)との間に伝動ベルト(39)を巻回し、且つ該伝動ベルト(39)に転接するテンションローラ(42)と、該テンションローラ(42)を軸支して前記伝動ベルト(39)を緊張または弛緩させる方向に揺動自在なテンションアーム(43)と、該テンションアーム(43)を常時冷却ファン(31)を駆動させる方向に揺動付勢するテンションスプリング(44)と、該テンションスプリング(44)の付勢力に抗して冷却ファン(31)の駆動を停止させる方向にテンションアーム(43)を揺動操作するテンションクラッチ機構(41)を設け、該テンションクラッチ機構(41)を介して前記駆動プーリ(23)から従動プーリ(29)への動力伝達を断接可能に構成したコンバインにおいて、前記テンションクラッチ機構(41)を、揺動アーム(45b)を一体的に備える電動モータ(45)と、前記テンションアーム(43)と揺動アーム(45b)とを連結して両アーム(43,45)を連係作動させる連係部材(46)とで構成すると共に、当該テンションクラッチ機構(41)を介して駆動プーリ(23)から従動プーリ(29)への動力伝達を断接させる際、前記テンションアーム(43)と揺動アーム(45b)に対する連係部材(46,76)の連結間隔の変化を融通して両アーム(43,45b)の連係作動を維持する融通機構(F)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記連係部材(46)としてワイヤを採用し、冷却ファン(31)を駆動させる時はワイヤを弛緩させ、冷却ファン(31)の駆動を停止させる時はワイヤを緊張させることにより融通機構(F)を構成した請求項1に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−220540(P2010−220540A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71183(P2009−71183)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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