説明

コンバイン

【課題】刈取装置の左右側方の高位置に前照灯を簡単に配置できるものでありながら、前照灯をコンパクト且つ低コストに設置することができるコンバインを提供する。
【解決手段】刈取装置3の側方を覆うサイドカバー82R、82Lの上方に、ライトカバー83R、83Lをそれぞれ取り付け、ライトカバー83R、83L内に前照灯81と方向指示灯84とを配置し、ライトカバー83R、83Lの前面上部側によって前照灯レンズ92を形成し、ライトカバー83R、83Lの下部側によって補助灯レンズ93を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置によって圃場の未刈り穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀装置によって脱穀するコンバインに係り、より詳しくは、走行機体の前方を照らす前照灯を備えるコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインは、走行機体の前側に昇降可能に配設した刈取装置によって、圃場の未刈り穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀装置によって脱穀して、穀粒を収集するように構成している(特許文献1参照)。
【0003】
このようなコンバインでは、刈取装置に前照灯を配置し、夜間等は前照灯によって走行機体の前方を照らして作業するようにしている。特許文献1では、刈取装置の左右側方をサイドカバーで覆い、サイドカバーの上下方向の中途部の角部に凹部を形成し、この凹部の内側に前照灯装置を配置している。前照灯装置は、サイドカバーに前照灯を支持するケースを固定し、このケースにリフレクタ及び前照灯(電球)を取り付け、ケースの前側をレンズで覆うように構成されている。
【特許文献1】特開2006−55093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、前照灯装置を取り付けるために、サイドカバーの上下方向の中途部に凹部を形成しているため、サイドカバーから突出させずに前照灯装置を配置することができるものの、凹部の内側に前照灯装置の多数の部品を配置しなければならない。従って、サイドカバーの上下方向に、前照灯装置を取り付けるための大きなスペースが必要となり、前照灯装置をコンパクトに配置することができないという問題があった。
【0005】
また、前照灯が、サイドカバーの上下方向の中途部に配置されているから、前照灯の明かりが、サイドカバーの前方近傍または側方近傍にある未刈り穀稈に邪魔されて、圃場の必要な箇所を十分に照射できない場合があるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、刈取装置の左右側方の高位置に前照灯を簡単に配置できるものでありながら、前照灯をコンパクト且つ低コストに設置することができるコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、エンジンによって作動する走行機体と、刈刃装置、穀稈引起装置及び穀稈搬送装置を備えた刈取装置と、前記刈取装置の側方を覆うサイドカバーとを有するコンバインにおいて、前記サイドカバーの上方にライトカバーを取り付け、前記ライトカバー内に前照灯と方向指示灯とを配置し、前記ライトカバーの前面上部側によって前照灯レンズを形成し、前記ライトカバーの下部側によって補助灯レンズを形成したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記刈取装置は、引起機構の引起ケースと前記引起ケースの上端側を支持する引起入力ケースとを備え、前記引起入力ケースの側端部側に、補助灯リフレクタを取リ付け、前記補助灯リフレクタに前記方向指示灯を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記刈取装置は、引起機構の引起ケースと前記引起ケースの上端側を支持する引起入力ケースとを備え、前記引起入力ケースの側端部側に、前照灯リフレクタを取り付け、前記前照灯リフレクタに前記前照灯を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、透光性素材で形成した前記ライトカバーによって、前記引起入力ケースの左右側方を覆う上部サイドカバーを形成していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、刈取装置の側方を覆うサイドカバーを有するコンバインにおいて、サイドカバーの上方にライトカバーを取り付け、ライトカバー内に前照灯と方向指示灯とを配置しているから、サイドカバーの上方のスペースを利用して前照灯と方向指示灯とをコンパクトに配置できる。また、前照灯がサイドカバーの上方つまり高位置に配置されているから、走行機体の近傍にある未刈り穀稈に阻害されずに、前方を照射して作業することができる。
【0012】
さらに、ライトカバーの前面上部側によって前照灯レンズを形成し、ライトカバーの下部側によって補助灯レンズを形成し、前照灯レンズと補助灯レンズとを1つのライトカバーで構成しているから、部品点数を削減して、コストダウンも図ることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、引起入力ケースは、引起ケースの上端側を支持するために高剛性に構成されているから、引起入力ケースの側端部側に補助灯リフレクタを取リ付け、この補助灯リフレクタに方向指示灯を設けることによって、方向指示灯を高剛性に支持することができる。従って、走行機体の走行によって補助灯リフレクタに振動等が加わっても、補助灯リフレクタの取り付けが緩んだりする不都合を抑制できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、引起入力ケースは、引起ケースの上端側を支持するために高剛性に構成されているから、引起入力ケースの側端部側に前照灯リフレクタを取リ付け、この前照灯リフレクタに前照灯を設けることによって、前照灯を高剛性に支持することができる。従って、走行機体の走行によって前照灯リフレクタに振動等が加わっても、前照灯リフレクタの取り付けが緩んだりする不都合を抑制できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ライトカバーによって、引起入力ケースの左右側方を覆う上部サイドカバーを形成し、前照灯及び方向指示灯を、引起入力ケースの側方に配置しているから、サイドカバーの上方にライトカバーを配置しても、サイドカバーとライトカバーを合わせた上下方向の寸法をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明のコンバイン100を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0017】
図1〜図3に示されるように、本実施形態のコンバイン100は、左右一対の走行クローラ2(走行部)にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈取る4条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。脱穀装置5が走行機体1の前進方向に向かって左側に配置され、グレンタンク7が走行機体1の前進方向に向かって右側に配置されている(図3参照)。
【0018】
グレンタンク7の後方から上方にかけてグレンタンク7内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ8が配設されている。排出オーガ8の縦オーガ8aを中心として、グレンタンク8の前部を機体側方へ回動できるように構成されている。
【0019】
グレンタンク7の前方で走行機体1の右側前部には、運転部10が設けられている。運転部10には、オペレータが搭乗するステップ10a、運転座席10b、操向ハンドル10cや各種の操作レバー、前照灯81や方向指示灯84、車幅灯85のスイッチなどを備えた操作装置を配置している。運転座席10bの下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン20が配置されている。
【0020】
図1及び図2に示されるように、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン20の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持することになる。
【0021】
図1〜図3に示されるように、刈取装置3には、圃場の未刈り穀稈を引起す4条分の穀稈引起装置31と、圃場の未刈り穀稈の株元を切断するバリカン式の刈刃装置32と、刈刃装置32によって刈取られた穀稈を穀稈引起装置31からフィードチェン6の前端部(送り始端側)へ搬送する穀稈搬送装置33とが備えられている。刈取装置3の構成は、後に詳述する。
【0022】
脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴51と、扱胴51の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別機構としての揺動選別盤52と、揺動選別盤52に選別風を供給する唐箕ファン53と、扱胴51の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴54と、揺動選別盤52の後部の排塵を機外に排出する排塵ファン61とを備えている。
【0023】
フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン62が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン62に受け継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方側に設けた排藁カッタ63にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出されることになる。
【0024】
揺動選別盤52の下方側には、揺動選別盤52にて選別された穀粒(一番選別物)を取出す一番コンベヤ55と、枝梗付き穀粒等の二番選別物を取出す二番コンベヤ56とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ55,56は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ55、二番コンベヤ56の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0025】
揺動選別盤52は、扱胴51の下方に落下した脱穀物を、揺動選別(比重選別)するように構成している。揺動選別盤52から落下した穀粒(一番選別物)は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン53からの選別風によって除去され、一番コンベヤ55に落下することになる。一番コンベヤ55のうち脱穀装置5におけるグレンタンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる一番揚穀筒57が連通接続されている。一番コンベヤ55から取出された穀粒は、一番揚穀筒57に内設された一番揚穀コンベヤ(図示せず)によってグレンタンク7に搬入され、グレンタンク7に収集されることになる。
【0026】
揺動選別盤52は、揺動選別(比重選別)によって、枝梗付き穀粒等の二番選別物(穀粒と藁屑等が混在した再選別用の還元再処理物)を二番コンベヤ56に落下させるように構成されている。二番コンベヤ56によって取出された二番選別物は、二番還元筒58及び二番処理部59を介して揺動選別盤52の上面側に戻されて再選別されることになる。また、扱胴51からの脱粒物中の藁屑及び粉塵等は、唐箕ファン53からの選別風によって、走行機体1の後部から圃場に向けて排出されることになる。
【0027】
次に刈取装置3の構造について、図4〜図6を用いて説明する。刈取装置3には、走行機体1の前部に立設した刈取支持体34(図1参照)に回動可能に支持され左右方向に向けて延長する刈取入力フレーム35と、刈取入力フレーム35から前方に向けて延長する縦伝動フレーム36と、縦伝動フレーム36の前端側に連結されて左右方向に向けて延長する横伝動フレーム37とを有している。
【0028】
刈取入力フレーム35には、エンジン20からの動力が伝達される刈取入力軸35aが組み込まれていて、刈取入力軸35aは、左右方向の軸線(刈取回動支点軸4a)を中心に回転する。縦伝動フレーム36と走行機体1との間には、前述した油圧シリンダ4が配置されており、油圧シリンダ4を制御装置(図示せず)で制御して伸縮作動させることにより、縦伝動フレーム36(刈取装置3)を刈取回動支点軸4a回りに回動させて、任意の高さに昇降させる。
【0029】
横伝動フレーム37には、前方に向けて分草フレーム38が延長されている。分草フレーム38の前端側に4条分の分草体38aが設けられている。横伝動フレーム37の左端部に、1本の引起入力縦ケース39を前方斜め上向きに延びるように立設している。引起入力縦ケース39は、横伝動フレーム37の左端部に取り付けられた後述する刈刃駆動ユニット49の内側に配置されている。
【0030】
引起入力縦ケース39の上端側は、左右方向に長く設けられた引起入力横ケース40に接続している。引起入力縦ケース39には、引起入力横ケース40に近い位置に変速ケース39bが設けられている。引起入力横ケース40には、刈り取り条数に合わせた数(本実施形態では4本)の引起駆動ケース41が、引起入力横ケース40の長手方向(走行機体2の幅方向)に沿って適宜間隔で下向きに並んでいる。つまり、後述する引起ケース42の上端側に引起入力ケースとして、引起入力縦ケース39の上端側と、引起入力横ケース40とが配置されている。
【0031】
穀稈引起装置31には、図7に示すように、引起機構としての4条分の引起ケース42が備えられている。各引起ケース42には、分草体38aによって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン42aを備えた引起タインチェン42bが配置されている。引起ケース42は分草体38aの後方に配置されており、上下方向に長く後傾姿勢に設けられている。引起ケース42の上端側は引起駆動ケース41に連結され、引起ケース42の下端側は分草フレーム38に立設した引起支持フレーム38bに連結されている。
【0032】
なお、引起ケース42の前面に、倒状穀稈を起立させるための補助引起タイン71aを設けてもよい。補助引起タイン71aは、補助引起ケース71に備えられていて、必要に応じて、補助引起ケース71が引起ケース42の前面に連結され、引起駆動ケース41から駆動力が伝達される。図7では、最も左側に位置する引起ケース42のみに補助引起ケース71を連結した状態を図示している。
【0033】
穀稈搬送装置33は、引起ケース42の後方に配置されている。穀稈搬送装置33には、スターホイルとこれに巻回される掻込ベルトとの組が、左右に4組並んで配置されており、右側の2条分の引起ケース42から導入される穀稈の株元側は、右側に位置する2組のスターホイル43Rと掻込ベルト44Rの組で掻き込まれ、左側の2条分の引起ケース42から導入される穀稈の株元側は、左側に位置する2組のスターホイル43Lと掻込ベルト44Lの組で掻き込まれる。
【0034】
また、穀稈搬送装置33は、右側2条分の刈り取り穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン45Rと、左側2条分の刈り取り穀稈の株元側を右株元搬送チェン45Rの搬送終端側に合流させる左株元搬送チェン45Lとを備えている。また、穀稈搬送装置33は、右株元搬送チェン45Rから4条分の刈取穀稈の株元側を受け継ぐ縦搬送チェン46と、縦搬送チェン46の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に4条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助搬送手段としての補助株元搬送チェン74とを有している。
【0035】
さらに、穀稈搬送装置33は、右株元搬送チェン45R及び縦搬送チェン46で搬送される刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン47Rと、左株元搬送チェン45Lで搬送される刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン47L、縦搬送チェン46で搬送される4条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する後穂先搬送タイン75とを有している。左右の穂先搬送タイン47R,47L、後穂先搬送タイン75によって、刈取装置3で刈り取った4条分の刈取穀稈の穂先側が、脱穀装置5の扱胴51室内に搬送される。
【0036】
刈刃装置32は、図4及び図5に示されるように、分草フレーム38の下方には、刈刃装置32の幅方向に沿ってバリカン式の刈刃48R,48Lが左右に並んで設けられている。刈刃48Rは、右側のスターホイル43Rと掻込ベルト44Rとによって掻き込まれた2条分の穀稈の株元を切断する。刈刃48Lは、左側のスターホイル43Lと掻込ベルト44Lとによって掻き込まれた2条分の穀稈の株元を切断する。
【0037】
図6及び図7に示されるように、左右の刈刃48R,48Lには、これらを独立して駆動するための刈刃駆動ユニット49が取り付けられている。2つの刈刃駆動ユニット49は、横伝動ケース37の左右の側端部の上面側にそれぞれ配置されている。各刈刃駆動ユニット49には、横伝動ケース37を基端として回動するクランクロッド49aが備えられ、クランクロッド49aがクランクアーム体49bを介して、刈刃48R,48Lにそれぞれ連結されている。クランクロッド49aが揺動することで、刈刃48が左右に往復移動するが、2つの刈刃駆動ユニット49によって、左側の刈刃48Lと右側の刈刃48Rは左右相反する方向に同期して往復移動し、往復移動によって発生する左右の刈刃48の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0038】
刈刃駆動ユニット49及び引起入力縦ケース39は、穀稈引起装置31から穀稈搬送装置33への穀稈の搬送を阻害しないことを考慮して配置されている。横伝動ケース37の左右の端部にそれぞれクランクロッド49aの基端部を配置し、左側のクランクロッド49aの基端部の内方側に近接して引起入力縦ケース39を立設している。つまり、刈刃駆動ユニット49よりも機体内方側の横伝動ケース37に、引起入力縦ケース39の基端側を連結している。
【0039】
次に、刈取装置3の駆動構造を、図7を用いて説明する。刈取装置3の刈取入力フレーム35に組み込まれている刈取入力軸35aに、縦伝動ケース36内に配置された縦伝動軸36aの一端側を連結し、縦伝動軸36aの他端側を横伝動ケース37内に配置された横伝動軸37aに連結している。エンジン20から動力が伝達された刈取入力軸35aの回転力は、縦伝動軸36aを介して横伝動軸37aに伝わる。
【0040】
横伝動軸37aに、引起入力縦ケース39内に配置された引起入力縦軸39aの一端側を連結し、引起入力縦軸39aの他端側を、変速ケース39bを介して引起入力横ケース40内に配置された引起入力横軸40aに連結する。引起入力横軸40aは、4条分の引起駆動ケース41内にそれぞれ配置された引起タイン駆動軸41aに連結している。従って、横伝動軸37aの回転力は、引起入力縦軸39a、変速ケース39b、引起入力横軸40a、引起タイン駆動軸41aを介して、引起タインチェン42bに伝わり、複数の引起タイン42aが駆動される。なお、補助引起ケース71を設ける場合には、補助引起タイン71aが引起タイン駆動軸41aによって駆動されるように、補助引起ケース71が引起ケース42に連結される。
【0041】
右株元搬送チェン45Rと、右穂先搬送タイン47Rと、右側に位置する2組のスターホイル43Rと掻込ベルト44Rの組とを駆動するための右搬送駆動軸72は、縦伝動軸36aに連結されている。縦搬送チェン46を駆動する縦搬送伝動軸46aは、右搬送駆動軸72を介して縦伝動軸36aに連結されている。左株元搬送チェン45Lと、左穂先搬送タイン47Lと、左側に位置する2組のスターホイル43Lと掻込ベルト44Lの組とは、引起入力縦軸39aで駆動される。また、縦伝動軸36aに連結された後搬送駆動軸76を介して、補助株元搬送チェン74と後穂先搬送タイン75が駆動される。
【0042】
次に、走行機体1の前方を照らす前照灯81の取付構造について、図4、図5及び図8を用いて説明する。刈取装置3の左右側方は、サイドカバー82R,82Lで覆われ、サイドカバー82R,82Lの上方にはそれぞれライトカバー83R、83Lが配置されている。
【0043】
左右のサイドカバー82R,82Lは、側面視において下方ほど機体外方に向かう傾斜姿勢に配置されている。図4及び図5に示すように、分草フレーム38と引起支持フレーム38bとにカバー下部支持フレーム94の両端側を連結する。サイドカバー82R、82Lの下端側の内面に固定フック95を固着する。固定フック95はカバー下部支持フレーム94の中間部に係脱可能に係止する。
【0044】
左右のサイドカバー82R、82Lの上端側に、可動フック96及びフックレバー97を配置する。引起駆動ケース41に図示しないブラケットを介して上部支持フレーム98を連結する。可動フック96は上部支持フレーム98に係脱可能に係止する。可動フック96は、図示しないバネの弾圧によって、上部支持フレーム98に係止維持される。
【0045】
左右のサイドカバー82R、82Lの上下方向の中途部に、可動フック96a及びフックレバー97aを配置する。引起ケース42の上下方向の中途部に、ブラケット99を介して上部支持フレーム98aを連結する。上部支持フレーム98aに可動フック96aを係脱可能に係止している。左右のサイドカバー82R、82Lは、その外面のフックレバー97、97aを操作して、上部支持フレーム98、98aから可動フック96、96aを離脱させ、且つカバー下部支持フレーム94から固定フック95を離脱させることによって、刈取装置3から取り外される。
【0046】
サイドカバー82R、82Lが刈取装置3に取り付けられた状態では、サイドカバー82R、82Lの上端縁は、引起入力横ケース40よりも低位置に形成されている。サイドカバー82R、82Lの上方に設けられたライトカバー83R、83Lは、引起入力横ケース40の左右側方を覆うように配置される。詳細には、ライトカバー83R、83Lは、引起入力横ケース40の左右側方だけでなく、サイドカバー82R、82Lの上端側の開口も覆っている。
【0047】
ライトカバー83R、83Lは、サイドカバー82R、82Lの前面及び側面から突出しないように、その外観形状はサイドカバー82の外観形状に沿って連続して形成されている。また、ライトカバー83R、83Lが刈取装置3の上端よりも高位置に突出しないように、ライトカバー83R、83Lの上端縁を刈取装置3(引起ケース42)の上端縁とほぼ同じ高さに揃えるように設けている。
【0048】
ライトカバー83R、83Lの内側にはそれぞれ、前照灯81と、補助灯としての方向指示灯84及び車幅灯85とが配置されている。ライトカバー83R、83Lは全体が透光性素材(ポリカーボネート樹脂等)で形成されており、後述するように、ライトカバー83R、83Lによって前照灯レンズ92と補助灯レンズ93とを形成している。
【0049】
左右のライトカバー83R、83Lは左右対称形に形成されており、その内部の前照灯81、方向指示灯84、及び車幅灯85も左右対称形に配置されている。前照灯81は機体前方の作業領域を照らすように、前方やや下向きに取り付けられ、方向指示灯84及び車幅灯85は、前方からだけでなく、側方及び後方からも視認できるように、機体の側方に向かう斜め前向きに取り付けられている。方向指示灯84と車幅灯85はいずれも、前照灯81の下方に配置され、方向指示灯84は車幅灯85よりも前方に位置している。
【0050】
次に、ライトカバー83R、83Lの内側の構成を、左側のライトカバー83Lを例示して説明する。図8に示すように、ライトカバー83Lの内側では、フランジ86が引起入力横ケース40の左端面にボルト86aで固定されている。フランジ86の後端側には、左側方に向かって突出するよう第1支持プレート87が取り付けられている。第1支持プレート87の前面側に前照灯リフレクタ(前照灯81用の反射鏡)88が固定され、前照灯リフレクタ88の中央に前照灯81が取り付けられている。
【0051】
フランジ86には、前後方向に延びる部位を有するL字状の第2支持プレート89が取り付けられている。第2支持プレート89の前後方向に延びる部位は、第1支持プレート87の下方に位置している。第2支持プレート89の前後方向に延びる部位の前寄りの位置に、斜め前向きに方向指示灯リフレクタ(方向指示灯84用の反射鏡)90が、後寄りの位置に、斜め前向きに車幅灯リフレクタ(車幅灯85用の反射鏡)91が取り付けられている。方向指示灯リフレクタ90の中央には方向指示灯84が取り付けられ、車幅灯リフレクタ91の中央には車幅灯85が取り付けられている。
【0052】
支持プレート87の下面から、ブラケット87aが下向きに延設されている。ライトカバー83Lの後面が、ブラケット87aにビス87bで固定されている。これにより、ライトカバー83Lが、引起入力横ケース40に取り付けられ、引起入力横ケース40の側方を覆う。
【0053】
前照灯81の照射方向に対応する、ライトカバー83R、83Lの前面上部側は、前照灯レンズ92として機能するように加工されている。方向指示灯84及び車幅灯85の照射方向に対応する、ライトカバー83R、83Lの下部側が、補助灯レンズ93として機能するように加工されている。つまり、前照灯81及び補助灯(方向指示灯84、車幅灯85)を覆うライトカバー83R、83Lを、前照灯レンズ92及び補助灯レンズ93として利用している。
【0054】
なお、前照灯レンズ92と補助灯レンズ93とは連続していてもよいし、それぞれ独立していてもよい。また、ライトカバー83R、83Lの内側に、補助灯として方向指示灯84及び車幅灯85を設けたが、車幅灯85を省略してもよい。
【0055】
上述したように本実施形態では、エンジン20によって作動する走行機体1と、刈刃装置32及び穀稈搬送装置33を備えた刈取装置3と、前記刈取装置3の側方を覆うサイドカバー82R、82Lとを有するコンバイン1において、サイドカバー82R、82Lの上方にライトカバー83R、83Lを取り付け、ライトカバー83R、83L内に、前照灯81と、補助灯として方向指示灯84及び車幅灯85とを配置している。従って、前照灯81、方向指示灯84、車幅灯85をサイドカバー82の上方にコンパクトに配置することができる。
【0056】
また、前照灯81と方向指示灯84、車幅灯85はサイドカバー82R、82Lの上方つまり刈取装置3における高位置に配置されているから、走行機体1の近傍にある未刈り穀稈に阻害されずに、前照灯81で作業領域を照射することができる。ライトカバー83R、83Lによって、前照灯レンズ92と補助灯レンズ93の両方を形成しているから、部品点数が削減でき、コストダウンも図ることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、刈刃駆動ユニット49が、横伝動フレーム37の左右両端部の上面側にそれぞれ配置され、引起入力縦ケース39が、横伝動フレーム37の左側に設けられた刈刃駆動ユニット49の内側に近接して配置されているから、引起入力縦ケース39(引起入力縦軸39a)は、引起入力横ケース40(引起入力横軸40a)の左端部よりも内側寄りの位置に接続される。従って、引起入力縦ケース39に設けられた変速ケース39bも、引起入力横ケース40(引起入力横軸40a)の左端部よりも内側位置に配置されることになる。その結果、引起入力横ケース40の左端部近傍に、変速ケース39b等に阻害されずに、ライトカバー83を配置するスペースを確保することができる。もちろん、引起入力横ケース40の右端部近傍は、引起入力縦ケース39の連結箇所から離れているので、ライトカバー83を配置するスペースを確保することができる。
【0058】
また、刈取装置3は、引起機構の引起ケース42と引起ケース42の上端側を支持する引起入力横ケース40とを備え、引起入力横ケース40の側端部側に、方向指示灯リフレクタ90を取り付け、方向指示灯リフレクタ90に方向指示灯84を設けている。引起入力横ケース40は、引起ケース42の上端側を支持するために高剛性に構成されているから、引起入力横ケース40の側端部側に方向指示灯リフレクタ90を取り付け、この方向指示灯リフレクタ90を設けることによって、方向指示灯84を高剛性に支持することができる。従って、走行機体の走行によって、方向指示灯リフレクタ90に振動等が加わっても、方向指示灯リフレクタ90の取り付けが緩んだりする不都合を抑制できる。なお、方向指示灯リフレクタ90を引起入力縦ケース39に取り付けるように構成してもよい。
【0059】
また、引起入力横ケース40の側端部側に、前照灯リフレクタ88を取り付け、前照灯リフレクタ88に前照灯81を設けている。引起入力横ケース40は、引起ケース42の上端側を支持するために高剛性に構成されているから、引起入力横ケース40の側端部側に前照灯リフレクタ88を取り付け、この前照灯リフレクタ88を設けることによって、前照灯81を高剛性に支持することができる。従って、走行機体の走行によって、前照灯リフレクタ88に振動等が加わっても、前照灯リフレクタ88の取り付けが緩んだりする不都合を抑制できる。なお、前照灯リフレクタ88を引起入力縦ケース39に取り付けるように構成してもよい。
【0060】
さらに、左右のライトカバー83R,83Lによって、引起入力横ケース40の左右側方を覆う上部サイドカバーを形成し、前照灯81及び方向指示灯84を、引起入力横ケース40の側方に配置しているから、左右のサイドカバー82R,82Lの上方に左右のライトカバー83R,83Lを配置しても、サイドカバーとライトカバーを合わせた上下方向の寸法をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の4条刈り用のコンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの右側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】刈取装置の左側面図である。
【図5】刈取装置の右側面図である。
【図6】刈取装置の概略平面図ある。
【図7】刈取装置の駆動系統図である。
【図8】刈取装置の左側側面の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0062】
1 走行機体
3 刈取装置
5 脱穀装置
31 穀稈引起装置
32 刈刃装置
33 穀稈搬送装置
35 刈取入力フレーム
36 縦伝動フレーム
37 横伝動フレーム
39 引起入力縦ケース
40 引起入力横ケース
41 引起駆動ケース
42 引起ケース
81 前照灯
82R,82L サイドカバー
83R,83L ライトカバー
84 方向指示灯
85 車幅灯
88 前照灯リフレクタ
90 方向指示灯リフレクタ
91 車幅灯リフレクタ
92 前照灯レンズ
93 補助灯レンズ
100 コンバイン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって作動する走行機体と、刈刃装置、穀稈引起装置及び穀稈搬送装置を備えた刈取装置と、前記刈取装置の側方を覆うサイドカバーとを有するコンバインにおいて、
前記サイドカバーの上方にライトカバーを取り付け、前記ライトカバー内に前照灯と方向指示灯とを配置し、前記ライトカバーの前面上部側によって前照灯レンズを形成し、前記ライトカバーの下部側によって補助灯レンズを形成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記刈取装置は、引起機構の引起ケースと前記引起ケースの上端側を支持する引起入力ケースとを備え、前記引起入力ケースの側端部側に、補助灯リフレクタを取リ付け、前記補助灯リフレクタに前記方向指示灯を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記刈取装置は、引起機構の引起ケースと前記引起ケースの上端側を支持する引起入力ケースとを備え、前記引起入力ケースの側端部側に、前照灯リフレクタを取り付け、前記前照灯リフレクタに前記前照灯を設けたことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
透光性素材で形成した前記ライトカバーによって、前記引起入力ケースの左右側方を覆う上部サイドカバーを形成していることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−29116(P2010−29116A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195626(P2008−195626)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】