説明

コンバイン

【課題】操作スイッチ類の操作が容易で、かつ運転台の限られたスペースを有効に比較的広く使用できる操作スイッチ類を配置した運転台を備えたコンバインを提供すること。
【解決手段】車体前方の操縦席8のさらに前方に前壁部19と該前壁部19上に車体の横幅方向に掛け渡されたハンドル22を配置し、該ハンドル22の車体前進方向右側の端部と前壁部19の間に車体操作用の複数のスイッチを配置したスイッチボックス30を取り付け、スイッチボックス30内のスイッチの配線をスイッチボックス30の内部より前壁部19内に配索した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立穀稈を収穫するコンバインに関し、特にその運転台に設ける操作部に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインなどの作業車両はクローラを構成する無限履帯の接地面積を広くし、水田など軟弱な圃場でも自由に走行して刈取作業などの農作業を可能としている。
そして、一連の農作業を効率よく行うために、一台のコンバインに多くの機能を奏する装置が搭載されており、それぞれの機能を達成するための操作スイッチ類が設けられている。コンバインの操縦席のある運転台には、前記各種機能を達成するための操作スイッチ類及び作業内容、車速などを表示する表示装置等が操縦席の近傍にある操作パネルにまとめて配置されている構成(特許文献1)又は表示装置を操縦席の前方に配置し、スイッチ群を操縦席の側方に配置した構成(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開平11−18557号公報
【特許文献2】特開2001−278131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の構成によれば、操作スイッチ類及び表示装置等が一つの操作パネル部にまとめて配置されているので、各操作スイッチ類のレイアウトに制約がある。また、上記特許文献2記載の構成によれば、操作スイッチ類が表示装置とは別の箇所に配置されているので、操作スイッチ類の操作はし易いが、操作スイッチ類の設置部と表示装置の設置部を運転台の限られたスペースに二分して設けるのでオペレータが着座する操縦席の占めるスペースが小さくなる。
【0004】
本発明の課題は、操作スイッチ類の操作が容易で、かつ運転台の限られたスペースを有効に比較的広く使用できる操作スイッチ類を配置した運転台を備えたコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、車体前方に操縦席(8)を設け、該操縦席(8)の前方に前壁部(19)を設け、該前壁部(19)上に車体の横幅方向に掛け渡されたハンドル(22)を配置し、該ハンドル(22)の車体前進方向右側の端部と前壁部(19)の間に車体操作用の複数のスイッチを配置したスイッチボックス(30)を取り付けたことを特徴とするコンバインである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記スイッチボックス(30)内のスイッチ(30a,30b,30c)の配線をスイッチボックス(30)の内部から前壁部(19)内に配索することを特徴とする請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、車体の横幅方向に掛け渡されたハンドル22の右側の端部と前壁部19の間にスイッチボックス30を設けたのでスイッチボックス30がオペレータの乗車時や降車時に邪魔になりにくく、またスイッチ群がまとめてスイッチボックス30に配置できるので操作性が良く、運転台10における操縦用の部材のレイアウトにゆとりができ、また、操作席8に着座する操縦者の膝前の空間が広くなり、またハンドル22のサイズを大きくでき、剛性を従来より大きくできる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えてスイッチボックス30内のスイッチの配線をスイッチボックス30の内部より前壁部19内へ配策するので、前記配線が外部より見えず、運転台の外観性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
本発明の一実施形態の制御装置を設けたコンバインの運転台付近の右側面図を図1に、その正面図を図2に示す。なお、本明細書では、幅方向又は左側及び右側とはコンバインが前進方向に向いたときの方向を言う。
【0010】
図1および図2に示すように、コンバインの車体2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ(図示せず)を備え、車体2の前端側に刈取装置50(図7)が設けられている。刈取装置50の後方には操縦席8を備えた運転台10があり、また車体2の上方には刈取装置50から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送して脱穀、選別する脱穀装置49(図7)が運転台10の左後方に設けられ、該脱穀装置49で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク(図示せず)が脱穀装置49の右側に配置されている。
【0011】
上記コンバインはオペレータが操縦席8に着座してHST主変速レバー14を操作し、エンジン(図示せず)の動力を走行トランスミッションケース15内の主変速機を介して変速し、該変速機から走行トランスミッションケース15の左右外側に伸びる伝動シャフト17を経由して走行クローラに伝動して任意の速度で走行する。また、オペレータが操向レバー16を左右に傾倒操作することにより各種旋回走行をすることができる。すなわち、操向レバー16をコンバインを旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、左右の走行クローラに速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
上記コンバインの運転台10の平面図を図3に示し、運転台10の正面から見た左側部分の拡大図を図4に示す。
【0012】
図3に示すステップ18と操縦席8を備えた運転台10は、フロント側壁面である前壁部19と左サイド側壁部20を備え、運転台10の右側面はオペレータの乗降用の空間が設けられ、前壁部19の右寄り部分には操向レバー16と、その後方に近接する位置に操向レバー16を操作する時に操作腕や操作手を置くための受台(ハンドレスト)21と該受台21を支持し、かつオペレータが乗降する時の支えバーとなる第1アーム22aが車体2上に設けられている。また受台21の左側には走行速度、グレンタンク内の穀粒の貯留量などを表示するモニタパネル部24が設けられ、受台21とモニタパネル部24は車体2と一体化した前記第1アーム22aと該第1アーム22aの端部に接続して左サイド側壁部20の手前まで掛け渡された第2アーム22bと一体的に合成樹脂で成形されている。以後、第1アーム22aと第2アーム22bは一体としてハンドル22と言うことがある。
【0013】
また、モニタパネル部24の左側であってフロント側の前壁部19の左側にある左サイド側壁部20の上部には主変速レバー14、副変速レバー(図示せず)とこれらのレバーを前後左右に操作するためのレバーガイドを備えた前方クラッチパネル25が設けられ、該前方クラッチパネル25の後方には、刈取レバー、脱穀レバー及びアクセルレバー(図示せず)などのレバーガイドを備えた後方クラッチパネル29が設けられている。これら受台21、第1アーム22a、第2アーム22b、モニタパネル部24、前方クラッチパネル25及び後方クラッチパネル29は一体成形した合成樹脂で成形しても良い。
【0014】
また、運転台10の後方部分には操縦席8が設けられている。前記操縦席8はオペレータの乗降用の空間より後部側に位置し、かつ操縦席8の右側部位には取っ手23(図1)が設けられていて、取っ手23は前記受台支えアーム22aと共にオペレータがコンバインに乗降する際の把持部となる。
また、図3に示すように、操向レバー16の左側にモニタパネル部24を配置しており、モニタパネル部24の中央部に液晶表示画面24aを配している。
【0015】
車体2の進行方向右側の第1アーム22aの下端部にスイッチボックス30を設け、スイッチボックス30の底部を運転台10の前壁部19に取り付けている。スイッチボックス30には、メインスイッチ、ホーン・ウィンカスイッチ、ターンスイッチ等の主要なスイッチ群をまとめて配置した。
【0016】
このようにスイッチボックス30を第1アーム22aと前壁部19の間に配置しているのでスイッチボックス30がオペレータの乗車時や降車時に邪魔にならず、またスイッチ群がまとめてスイッチボックス30に配置されているので操作性が良く、また操向レバー16など、モニタパネル部24に配置されるスイッチ数を減少させることができ、操縦用の部材のレイアウトにゆとりができ、また、操作席8に着座する操縦者の膝前の空間が広くなり、またハンドル22の第1アーム22aもサイズを大きくできるので、第1アーム22aには大きな剛性のものを使用できる。
【0017】
また、スイッチボックス30の下方に駐車ブレーキレバー32を設けているので、スイッチボックス30が駐車ブレーキ32(図1)の操作に支障を来さない。また図示していないが、スイッチボックス30内のスイッチ群の配線をスイッチボックス30の内部より前壁部19内へ配策するので、前記配線が外部より見えなく、運転台の外観性が良い。
【0018】
図5に右側面図で示すスイッチボックス30に配置する各スイッチ30a,30b,30c,・・・は操縦席8側からカプラー部31a,31b,31c,・・・の長さが長い順に配置する。これはスイッチボックス30の筐体を、その上面が前方ほど前上がりになるよう傾斜配置しているので、操縦席8側に寄った位置となる後部側ほどスイッチボックス30の高さが低くなり、操縦席8側から順に各スイッチ30a,30b,30c,・・・のそれぞれ裏側にカプラー部31a,31b,31c,・・・を長さの長い順に配置でき、スイッチボックス30内のスペースを有効利用できる。
【0019】
また、図2に例示するようにスイッチボックス30に右側にバックミラー33を取り付け、さらにスイッチボックス30の前側壁に方向指示器35を取り付けることができるので、バックミラー33と方向指示器35の専用の取付ステーが不要となりコストダウンになる。
【0020】
また、図3の平面図に示すように、運転台10の左側に配置した操向レバー16などのレバーガイドを設けたクラッチパネルを前方クラッチパネル25と後方クラッチパネル29に分け、前方クラッチパネル25は車体に固定し、後方クラッチパネル29は車体に着脱自在に取り付ける。そして着脱自在な後方クラッチパネル29に一体的に副ハンドル36を設ける。
【0021】
上記構成により副ハンドル36を握ることで後方クラッチパネル29が容易に着脱でき、後方クラッチパネル29を外したときに副ハンドル36も外れるため、これら副ハンドル36と後方クラッチパネル29及び後方クラッチパネル9を取り外した後の操作部内のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0022】
図2に示すように、後方クラッチパネル29に取り付ける副ハンドル36は機体左側にオフセットし、前方視で斜め左上方に傾斜させるように構成しているので、脱穀装置49の穀稈入口の搬送部を覆うような形状になり、ほこりが操作席8に舞い上がるのを防止できる。
【0023】
図2と図3に示す機体左側壁面からの前記副ハンドル36のオフセット幅Lにより、後方クラッチパネル29の面積を有効に利用でき、また、後方クラッチパネル29上で操作される各操作レバーが副ハンドル36に邪魔されることがない。
【0024】
従来のようにリモコン式の分草杆37(図7)の操作レバーを刈取装置50(図7)に配置すると、操作席8の高さが高いために操縦席8からの操作が易しくはなかった。また、リモコン分草杆レバー38を後方クラッチパネル29上に配置するには副ハンドル36があったため、配置スペースがなかった。
【0025】
そこで、本実施例では、図6の平面図と図7の正面図に示すように、副ハンドル36を機体左側にオフセットすることで出来たオフセット空間にリモコン分草杆レバー38を配置することができる。
【0026】
なお、分草杆37とは刈取装置50の穀稈引起装置40で圃場上に倒れた穀稈を引き起こす前に穀稈引起装置40のラグ40aに向けて穀稈を引き寄せるために刈取装置50に取り付けられた部材である。
【0027】
また、図8の右側面図に示すように、リモコン分草杆レバー38のストローク範囲を副ハンドル36の握り部をまたぐように構成して、リモコン分草杆レバー38の操作のストローク幅を副ハンドル36の握り部の長さより大きくすることで、リモコン分草杆レバー38の操作位置にかかわらず、副ハンドル36自体の機能(ハンドル36をいつでも把持出来ること)を果たすことができる。
また図6に示すように、リモコン分草杆レバー38のネーマを副ハンドル36の上面に添付することで、リモコン分草杆レバー38を誤操作することが無くなる。
【0028】
次に本実施例のコンバインのギヤボックス(トランスミッションケース)15内の動力伝動系の一部の構成について図9のギヤボックス15の側面図と図10に図9のA−A線断面図を示す。
【0029】
エンジンE側からの動力が伝達される第1軸51には、外周部にシフタ溝52aとギヤ52bを有する第1軸側スライドギヤ52の内周側がスプライン係合した部分がある。第1軸側スライドギヤ52の内周側がスプライン係合していない部分と第1軸51の外周部との間にはスリーブ53が配置されている。該スリーブ53は、第1軸51上に第1軸側スライドギヤ52を回転自在に軸受する機能がある。
【0030】
また、第1軸51と平行する位置に刈取装置50への動力伝達用のプーリ55を固着した第2軸57が配置されている。該第2軸57には第2軸側副変速シフトギヤ58が遊嵌状に取り付けられている。該第2軸側副変速シフトギヤ58は3つの異なる径を有するギヤ、すなわち大ギヤ58a、中ギヤ58b及び小ギヤ58cを一体的に有するギアである。そして第1軸側スライドギヤ52に大ギヤ58aが常に係合している。また第2軸57に平行する位置に走行系の伝動軸60が設けられており、前記第2軸側副変速シフトギヤ58の3つの異なる径を有するギヤ58a〜58cの対応するいずれかのギヤが係合する3つの異なる径の小ギヤ61a,中ギヤ61b及び大ギヤ61cが走行系の伝動軸60に固着している。
【0031】
従って、前記第2軸57にエンジンE側からの動力が伝達されると、該第2軸側副変速シフトギヤ58の3つの異なる径を有するギヤ58a〜58cのいずれかのギヤが走行系の伝動軸60の3つの異なる径を有するギヤ61a〜61cのいずれかに係合して、走行車輪(図示せず)にエンジン側の動力が伝達される。
【0032】
また、第1軸51の先端側には第2軸57の先端側に固着して設けられた大ギヤ63と常時係合しているギヤ64が固着されているので、第1軸51にエンジン側から動力伝達がなされると第2軸57に固着した刈取プーリ55に動力が伝達される。
【0033】
また第1軸51にスプライン係合している第1軸側スライドギヤ52がシフタ溝52aに挿入されるシフタ(図示せず)により矢印B方向に移動させられると、第1軸51の外周のスプラインがない部分(イ部分)に第1軸側スライドギヤ52の内周側のスプラインが達すると、第1軸側スライドギヤ52にはエンジン側の動力伝達が無くなり、走行系は駆動停止となる。一方、第1軸側スライドギヤ52がシフタ溝52aに挿入されるシフタにより矢印B方向に移動させられても、第1軸51の先端側の大ギヤ64が第2軸57の先端側に固着して設けられた大ギヤ63と常時係合しているので刈取装置50へエンジン側の動力伝達は行われる。
【0034】
上記ギヤ構成により、ギヤボックス15をコンパクトに構成でき、図示しないシフトアームをギヤボックス15の前後に対向配置させることでリンク構成のスペースが輻輳せず、広いスペースで構成でき、ギヤボックス15の組立性、メンテナンス性が従来より向上し、またギヤボックス15を安価に製作できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は植立穀稈を収穫するコンバインに限らず、その他の農作業機や工業用作業車両にも利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態による制御装置を設けたコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの正面図である。
【図3】図1のコンバインの運転台の平面図である。
【図4】図1のコンバインの運転台の正面から見た左側部分の拡大図である。
【図5】図1のコンバインのスイッチボックス部分を示す右側面図である。
【図6】図1のコンバインの運転台の左側部分の平面図である。
【図7】図1のコンバインの要部正面図である。
【図8】図1のコンバインの運転台の要部右側面図である。
【図9】図1のコンバインのギヤボックスの側面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0037】
2 車体 8 操縦席
10 運転台 14 HST主変速レバー
15 走行トランスミッションケース(ギヤボックス)
16 操向レバー17 伝動シャフト
18 ステップ 19 前壁部
20 左サイド側壁部 21 受台(ハンドレスト)
22 ハンドル 22a 第1アーム
22b 第2アーム 23 取っ手
24 モニタパネル部 24a 液晶表示画面
25 前方クラッチパネル 29 後方クラッチパネル
30 スイッチボックス 30a,30b,30c スイッチ
31a,31b,31c カプラー部
32 駐車ブレーキレバー 33 バックミラー
35 方向指示器 36 副ハンドル
37 分草杆 38 リモコン分草杆レバー
40 穀稈引起装置 40a ラグ
49 脱穀装置 50 刈取装置
51 第1軸 52 第1軸側スライドギヤ
52a シフタ溝 52b ギヤ
53 スリーブ 55 プーリ
57 第2軸 58 第2軸側副変速シフトギヤ
60 走行系の伝動軸 63 大ギヤ
64 ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前方に操縦席(8)を設け、該操縦席(8)の前方に前壁部(19)を設け、該前壁部(19)上に車体の横幅方向に掛け渡されたハンドル(22)を配置し、該ハンドル(22)の車体前進方向右側の端部と前壁部(19)の間に車体操作用の複数のスイッチを配置したスイッチボックス(30)を取り付けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記スイッチボックス(30)内のスイッチ(30a,30b,30c)の配線をスイッチボックス(30)の内部から前壁部(19)内に配索することを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−63369(P2010−63369A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230066(P2008−230066)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】