説明

コンバイン

【課題】エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成して、走行伝動系の動力を遮断可能に構成した場合、乗り心地の悪化を防止する。
【解決手段】走行伝動系の動力を走行装置に伝達する伝動状態、及び走行伝動系の動力を遮断する遮断状態に操作自在な機体停止手段を備える。機体停止手段を伝動及び遮断状態に操作自在な人為操作具94を備える。機体の走行速度を検出する速度検出手段105を備え、機体の走行速度が事前に設定された設定速度よりも高速であると機体停止手段の遮断状態への操作を阻止する牽制手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場においてコンバインは、機体を走行させながら刈取部を作動させて、刈取部による刈り取りを行う。例えば圃場の中央側から機体が圃場の畦際に達すると、機体を停止させるのであるが、刈取部による刈り取りは続行する必要がある(刈取部を停止させずに刈り取った作物を刈取部から脱穀装置に送る必要があり、刈り取りの途中で刈取部を停止させると、刈り取った作物が刈取部から落ちる可能性がある)。
【0003】
特許文献1では、エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成した場合、走行伝動系に備えられた右及び左のサイドクラッチ(特許文献1の図1及び図2のFC)を、両方同時に遮断状態に操作できるように構成している。
これにより、エンジン(特許文献1の図1のE)の動力を刈取部(特許文献1の図1の43)に伝達した状態で、右及び左のサイドクラッチを両方同時に遮断状態に操作することにより右及び左の走行装置を停止させて、刈取部を作動させた状態で機体を停止させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−54314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインの多くが装備するクローラ式の走行装置は駆動抵抗が大きいものである点、コンバインが走行する圃場は走行抵抗が大きいものである点により、走行伝動系の動力を遮断すると(特許文献1では右及び左のサイドクラッチを両方同時に遮断状態に操作している)、機体が直ぐに停止することが多い。
【0006】
これにより、機体の高速走行状態において、運転者が誤って走行伝動系の動力を遮断する操作を行ってしまうと、機体が急停止する状態となり、運転者にとって乗り心地の悪いものになることが考えられる。
本発明は、エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成して、走行伝動系の動力を遮断可能に構成した場合、乗り心地の悪化を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、コンバインにおいて次のように構成することにある。
エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成する。走行伝動系の動力を走行装置に伝達する伝動状態及び走行伝動系の動力を遮断する遮断状態に操作自在な機体停止手段と、機体停止手段を伝動及び遮断状態に操作自在な人為操作具とを備える。機体の走行速度を検出する速度検出手段を備える。機体の走行速度が事前に設定された設定速度よりも高速であると、機体停止手段の遮断状態への操作を阻止する牽制手段を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によれば、機体の走行速度が設定速度よりも低速の状態(機体の低速走行状態)において、運転者が人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作すると、エンジンの動力を刈取伝動系及び刈取部に伝達した状態で、走行伝動系の動力が遮断されて走行装置が停止するのであり、刈取部を作動させた状態で機体を停止させることができる。
【0009】
本発明の第1特徴によれば、機体の走行速度が設定速度よりも高速の状態(機体の高速走行状態)において、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしても、機体停止手段は遮断状態に操作されず、機体停止手段が伝動状態に維持されて、走行伝動系及び走行装置に動力が伝達された状態が維持される(機体の高速走行状態が維持される)。これにより、機体が急停止する状態が回避される。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、コンバインにおいて走行伝動系の動力を遮断可能な機体停止手段を備えた場合、機体の高速走行状態において、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしても、走行伝動系及び走行装置に動力が伝達された状態が維持されるように構成することにより、機体が急停止する状態を回避して、乗り心地の悪化を防止することができた。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のコンバインにおいて次のように構成することにある。
機体が直進状態であるか旋回状態であるかを判別する判別手段を備える。機体が旋回状態であると機体停止手段の遮断状態への操作を阻止するように、牽制手段を構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
機体の旋回状態では、旋回外方への遠心力が発生している。従って、機体の旋回状態において、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作して機体が停止すると、旋回外方への遠心力が急に消失する状態となり、運転者にとって乗り心地の悪いものになることが考えられる。
【0013】
本発明の第2特徴によれば、機体の直進状態において運転者が人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作すると、エンジンの動力を刈取伝動系及び刈取部に伝達した状態で、走行伝動系の動力が遮断されて走行装置が停止するのであり、刈取部を作動させた状態で機体を停止させることができる。
【0014】
本発明の第2特徴によれば、機体の旋回状態において運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしても、機体停止手段は遮断状態に操作されず、機体停止手段が伝動状態に維持されて、走行伝動系及び走行装置に動力が伝達された状態が維持される(機体の旋回状態が維持される)。これにより、旋回外方への遠心力が急に消失する状態が回避される。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、機体の旋回状態において運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしても、走行伝動系及び走行装置に動力が伝達された状態が維持されるように構成することにより、旋回外方への遠心力が急に消失する状態を回避して、乗り心地の悪化を防止することができた。
【0016】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴のコンバインにおいて次のように構成することにある。
牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となっても、人為操作具の機体停止手段の遮断状態への操作が行われていると、牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態が維持されるように構成する。
牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となって、人為操作具の機体停止手段の伝動状態への操作が行われると、牽制手段の作動が解除されるように構成する。
【0017】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
機体の走行速度が設定速度よりも高速の状態(機体の高速走行状態)又は機体の旋回状態において、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとして、機体停止手段の遮断状態への操作が阻止されたとする。
この場合、誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしていることを運転者が認識しなければ、運転者は人為操作具を機体停止手段の遮断状態に操作し続けていると考えられる。誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしていることを運転者が認識すれば、運転者は人為操作具を機体停止手段の伝動状態に操作すると考えられる。
【0018】
本発明の第3特徴によれば、機体の走行速度が設定速度よりも高速の状態(機体の高速走行状態)又は機体の旋回状態で、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとして、機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となっても(機体停止手段の遮断状態への操作が許容されても不都合がない状態となっても)、運転者が人為操作具を機体停止手段の遮断状態に操作し続けていると、誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしていることを運転者がまだ認識していないと判断されて、機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態が維持される。
【0019】
本発明の第3特徴によれば、機体の走行速度が設定速度よりも高速の状態(機体の高速走行状態)又は機体の旋回状態で、運転者が誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとして、機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となった場合(機体停止手段の遮断状態への操作が許容されても不都合がない状態となった場合)、運転者が人為操作具を機体停止手段の伝動状態に操作すると、誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしていることを運転者が認識したと判断されて、機体停止手段の遮断状態への操作が可能となる(牽制手段の作動が解除される)。
このように、運転者が意識して人為操作具を機体停止手段の伝動状態に操作した後において、意識して人為操作具を機体停止手段の遮断状態に操作すると、機体停止手段が遮断状態に操作されて、エンジンの動力を刈取伝動系及び刈取部に伝達した状態で、走行伝動系の動力が遮断されて走行装置が停止するのであり、刈取部を作動させた状態で機体を停止させることができる。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体停止手段の遮断状態への操作が許容されても不都合がない状態となっても、誤って人為操作具により機体停止手段を遮断状態に操作しようとしていることを運転者が認識したと判断されない限り、機体停止手段の遮断状態への操作が可能とならないように構成することによって、運転者の注意を喚起することができ、運転者の誤解に基づく誤操作を少なくすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[1]
図1に示すように、右及び左のクローラ式の走行装置1で支持された機体の前部に刈取部2が昇降自在に支持され、機体の前部の右側に運転部3が備えられて、機体の後部の左側に脱穀装置4が備えられ、機体の後部の右側にグレンタンク5が備えられて、自脱型のコンバインが構成されている。
【0022】
図2に示すように、運転部3の下側にエンジン6が備えられ、機体の前部の左右中央付近にミッションケース8が備えられて、静油圧式無段変速装置7がミッションケース8の右側部の上部に連結されており、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aとエンジン6の出力軸6aとに亘って、テンションクラッチ機能を備えたベルト伝動機構9が接続されている。
【0023】
図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bがミッションケース8に挿入され、スプライン構造により低速ギヤ10(伝動軸12)に連結されており、伝動軸12に高速ギヤ11が固定されている。出力軸13に低速ギヤ14及び高速ギヤ15が相対回転自在に外嵌されて、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15が咬合しており、シフト部材16がスプライン構造により出力軸13にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。出力軸13と刈取部2の入力軸2aとに亘って、伝動ベルトによりテンションクラッチ型式の刈取クラッチ17が備えられている。エンジン6の出力軸6aの動力が、テンションクラッチ型式の脱穀クラッチ54(図4参照)を介して脱穀装置4に伝達されるように構成されている。
【0024】
図2に示すように、シフト部材16を低速ギヤ14に咬合させると(低速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10,14及びシフト部材16を介して低速状態で刈取部2に伝達され、シフト部材16を高速ギヤ15に咬合させると(高速位置)、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が高速ギヤ11,15及びシフト部材16を介して高速状態で刈取部2に伝達される。以上のように、低速ギヤ10,14及び高速ギヤ11,15、シフト部材16等により、高低2段に変速自在な刈取変速装置18が構成されている。
【0025】
[2]
次に、ミッションケース8の伝動系(直進系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸20に伝動ギヤ19が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ19が低速ギヤ10に咬合しており、シフト部材21がスプライン構造により伝動軸20にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。伝動軸20に伝動ギヤ22,23が固定されており、伝動軸20の端部に多板摩擦式の駐車ブレーキ24が備えられている。
【0026】
図2に示すように、通常はシフト部材21は伝動ギヤ19に咬合しており、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が低速ギヤ10及び伝動ギヤ19を介して、伝動軸20に伝達されている。故障等による機体の牽引時において、シフト部材21を伝動ギヤ19から離間させることにより、右及び左の走行装置1と静油圧式無段変速装置7とをシフト部材21の位置で遮断することができるのであり、静油圧式無段変速装置7の抵抗を受けることなく機体を牽引することができる。
【0027】
図2に示すように、伝動軸26に伝動ギヤ25が固定されて、伝動ギヤ22,25が咬合している。伝動軸26に右及び左の出力ギヤ27が相対回転自在に外嵌され、右及び左の出力ギヤ27の右及び左側に、右及び左の咬合部28がスプライン構造により伝動軸26にスライド及び一体回転自在に外嵌されている。右及び左の車軸29が備えられ、右及び左の車軸29に固定された右及び左の伝動ギヤ30が、右及び左の出力ギヤ27に咬合しており、右及び左の車軸29の端部に右及び左の走行装置1のスプロケット1a(図1参照)が連結されている。
【0028】
図8に示すように、ミッションケース8に連結された車軸ケース65に右及び左の車軸29が内装されており、右及び左の車軸29の端部のスプライン部29aに、右及び左の走行装置1のスプロケット1aが外嵌されて連結されている。右及び左の車軸29の内側において、右及び左の車軸29と車軸ケース65との間に、ベアリング55及びカラー88が取り付けられており、右及び左の走行装置1のスプロケット1aの内面と車軸ケース65とカラー88との間に、シール部材89及びワッシャ108が取り付けられ、右及び左の車軸29とカラー88との間にOリング90が取り付けられている。
【0029】
図8に示すように、右及び左の走行装置1のスプロケット1aの外面にシール部材91が取り付けられ、リング状の凸部92aを備えたカラー92がシール部材91の外側に取り付けられており、右及び左の車軸29の外側のネジ部29bに2個のナット93が取り付けられている。
Oリング90及びシール部材91によって、右及び左の車軸29のスプライン部29aに泥や水が入り込むのを防止している。カラー92に凸部92aを備えて、カラー92の断面を段付き形状に構成することにより、ナット93の締め込み過ぎが防止されるのであり、ナット93の締め込み過ぎによるシール部材91の破損が防止される。
【0030】
図2に示すように、伝動軸26に固定された受け部材31と右の咬合部28との間にバネ32が備えられ、伝動ギヤ25と左の咬合部28との間にバネ32が備えられて、右及び左の咬合部28がバネ32により右及び左の出力ギヤ27の咬合側に付勢されている。右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間に右の油室が形成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間に左の油室が形成されており、右及び左の油室に作動油を供給することにより、バネ32に抗して右及び左の咬合部28を右及び左の出力ギヤ27から離間させることができる。
【0031】
図2に示すように、右の出力ギヤ27と右の咬合部28との間で咬合式の右のサイドクラッチ33(機体停止手段に相当)が構成され、左の出力ギヤ27と左の咬合部28との間で咬合式の左のサイドクラッチ33(機体停止手段に相当)が構成されている。右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27に咬合することにより、右(左)のサイドクラッチ33が伝動状態となり、右(左)の咬合部28が右(左)の出力ギヤ27から離間することにより、右(左)のサイドクラッチ33が遮断状態となる。
【0032】
以上の構造により図2に示すように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0033】
[3]
次に、ミッションケース8の伝動系(旋回系)の構造について説明する。
図2に示すように、伝動軸34に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ35が、右の咬合部28の外周部のギヤ部に咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ35との間に緩旋回クラッチ36が備えられている。緩旋回クラッチ36は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0034】
図2に示すように、伝動軸26に旋回クラッチケース37が相対回転自在に外嵌されており、伝動軸34に固定された伝動ギヤ38と旋回クラッチケース37の外周部のギヤ部とが咬合している。旋回クラッチケース37は左右対称に構成されており、旋回クラッチケース37と右の出力ギヤ27との間に右の旋回クラッチ39が備えられ、旋回クラッチケース37と左の出力ギヤ27との間に左の旋回クラッチ39が備えられている。右及び左の旋回クラッチ39は摩擦多板式に構成されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作される。この場合、右及び左の旋回クラッチ39において、摩擦板が互いに密になるように配置されており、作動油が排出されても右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態となるように構成されている。
【0035】
これにより、図2に示すように、緩旋回クラッチ36が伝動状態に操作されると、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。緩旋回クラッチ36の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0036】
図2に示すように、伝動軸34の左側にブレーキ40が備えられている。ブレーキ40は摩擦多板式に構成されて、作動油が供給されることで制動状態に操作され、作動油が排出されることで解除状態に操作される。
これにより図2に示すように、ブレーキ40が制動状態に操作されると、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、旋回クラッチケース37が制動状態となる。ブレーキ40の制動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、右又は左の出力ギヤ27が制動状態となる。
【0037】
図2に示すように、伝動軸34に伝動ギヤ41が相対回転自在に外嵌されて、伝動ギヤ23,41が咬合しており、伝動軸34と伝動ギヤ41との間に、逆転クラッチ42が備えられている。逆転クラッチ42は摩擦多板式に構成されて遮断状態に付勢されており、作動油が供給されることで伝動状態に操作され、作動油が排出されることで遮断状態に操作される。
【0038】
これにより、図2に示すように、逆転クラッチ42が伝動状態に操作されると、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34及び伝動ギヤ38を介して、伝動軸26と逆方向の動力として、旋回クラッチケース37に伝達される。逆転クラッチ42の伝動状態において、右又は左のサイドクラッチ33が遮断状態に操作され、右又は左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作されると、伝動軸26と逆方向の動力が右又は左の出力ギヤ27に伝達される。
【0039】
[4]
次に、静油圧式無段変速装置7の油圧回路構造について説明する。
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7はアキシャルプランジャ型式の油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを備え、油圧ポンプ7P及び油圧モータ7Mを一対の油路7cで接続して構成されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにチャージポンプ44が接続されて、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aによりチャージポンプ44が駆動される。
【0040】
図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油路7cに亘ってバイパス油路83が接続され、チャージポンプ44から延出されたチャージ油路45がバイパス油路83に接続されており、チャージ油路45にフィルタ49が備えられている。バイパス油路83においてチャージ油路45が接続される部分と静油圧式無段変速装置7の油路7cとの間に、逆止弁84及び絞り部85、リリーフ弁86が備えられており、リリーフ弁86のリリーフ圧が、静油圧式無段変速装置7の全体として許容される最高圧力に設定されている。ミッションケース8とは別に備えられたオイルタンク46と、チャージポンプ44とに亘って、供給油路47が接続されており、供給油路47にフィルタ48が備えられている。
【0041】
図5に示すように、チャージ油路45にリリーフ弁50が接続されて、リリーフ弁50が静油圧式無段変速装置7を収容するケース51に接続されている。ケース51とオイルタンク46とに亘って油路52が接続され、油路52にオイルクーラー53が備えられている。以上の構造により、オイルタンク46の作動油が、フィルタ48、供給油路47、チャージポンプ44、チャージ油路45を介して静油圧式無段変速装置7の油路7cに供給されて、余剰の作動油がリリーフ弁50を介してケース51に排出される。静油圧式無段変速装置7の各部からの作動油がケース51に排出されるのであり、ケース51の作動油が油路52及びオイルクーラー53を通過してオイルタンク46に戻される。
【0042】
[5]
次に、静油圧式無段変速装置7の操作構造について説明する。
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pは中立位置N、前進側F及び後進側Rに無段階に変速自在に構成されている。運転部3に備えられた変速レバー43と静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板とが、連係リンク80を介して機械的に連係されており、変速レバー43により静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板を操作して、静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pを中立位置N、前進側F及び後進側Rに操作する。
【0043】
図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mは、最低速位置L及び最高速位置Hの範囲で無段階に変速自在に構成されて、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板を操作する操作シリンダ56が備えられている。チャージ油路45から油路57が分岐して、操作シリンダ56を高速側に作動させる油室56aに油路57が接続されており、操作シリンダ56を低速側に付勢するバネ56bが備えられている。電磁操作型式の圧力制御弁58が油路57に備えられており、操作シリンダ56の油室56aの圧力が上昇すると、操作シリンダ56のバネ56bに抗して操作シリンダ56が高速側に作動するのであり、操作シリンダ56の油室56aの圧力が下降すると、操作シリンダ56のバネ56bにより操作シリンダ56が低速側に作動する。
【0044】
図4に示すように、変速レバー43の上部の握り部43aにおいて、変速レバー43の握り部43aの横面部の下部に、走行変速スイッチ81か備えられている。走行変速スイッチ81は、中立位置、上方の高速位置及び下方の低速位置に操作自在に構成されたレバースイッチ型式やシーソースイッチ型式に構成されて、中立位置に付勢されており、走行変速スイッチ81の操作信号が制御装置79に入力されている。静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の位置を検出するポテンショメータ82が備えられて、ポテンショメータ82の検出値が制御装置79に入力されており、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の位置を表示する表示部87が運転部3に備えられている。
これにより、走行変速スイッチ81の操作に基づいて、制御装置79により圧力制御弁58が操作され、操作シリンダ56が作動する。
【0045】
図4に示すように、走行変速スイッチ81が高速位置に操作されると、圧力制御弁58により操作シリンダ56に油室56aに作動油が供給されて、操作シリンダ56が高速側に作動し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが高速側に操作される。走行変速スイッチ81が中立位置に操作されると、その時点で圧力制御弁58により操作シリンダ56が停止し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの操作が停止して、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の位置が表示部87に表示される。
【0046】
図4に示すように、走行変速スイッチ81が低速位置に操作されると、圧力制御弁58により操作シリンダ56に油室56aの作動油が排出されて、操作シリンダ56が低速側に作動し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが低速側に操作される。走行変速スイッチ81が中立位置に操作されると、その時点で圧力制御弁58により操作シリンダ56が停止し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの操作が停止して、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板の位置が表示部87に表示される。
【0047】
これにより、図7の実線A1に示すように、変速レバー43を中立位置Nから前進側F(後進側R)に操作するとにより(静油圧式無段変速装置7の油圧ポンプ7Pの斜板を操作することにより)、機体の走行速度を停止状態から最高速度MAXに操作することができる。
この場合、圃場(地面)の状態や圃場の作物の種類や生育状態に応じて、走行変速スイッチ81を操作し、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを高速側及び低速側に操作しておくことにより、変速レバー43を前進側F(後進側R)に操作する際の機体の走行速度や、変速レバー43を前進側F(後進側R)の最高速位置に操作した場合の最高速度MAXを、高低に変更することができる(図7の一点鎖線A2,A3参照)。
【0048】
[6]
次に、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39、緩旋回クラッチ36、ブレーキ40、逆転クラッチ42に作動油を給排操作する油圧ユニット59について説明する。
図2及び図3に示すように、油圧ユニット59がミッションケース8の左側部の下部に連結されている。静油圧式無段変速装置7の入力軸7aに油圧ポンプ60が接続され、静油圧式無段変速装置7の入力軸7aにより油圧ポンプ60が駆動されるように構成されており、油圧ポンプ60から延出された油路61が油圧ユニット59に接続されている。
【0049】
図3に示すように、ミッションケース8と油圧ポンプ60とに亘って供給油路62が接続されて、供給油路62にオイルクーラー63が備えられており、供給油路62における油圧ポンプ60とオイルクーラー63との間の部分にフィルタ64が備えられている。ミッションケース8に貯留された潤滑油が作動油として、オイルクーラー63及びフィルタ64を通過して油圧ポンプ60に供給される。油圧ポンプ60の作動油が油路61を介して油圧ユニット59に供給されるのであり、後述するように油圧ユニット59の各部から排出された作動油がミッションケース8に戻される。
【0050】
図3に示すように、油圧ユニット59の内部に右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74が備えられている。油圧ポンプ60の油路61が油圧ユニット59に接続され、油路61に接続された油路66に右及び左旋回制御弁67,68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70が並列的に接続されている。
【0051】
図3に示すように、右旋回制御弁67が右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に接続されており、左旋回制御弁68が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に接続されている。右及び左旋回制御弁67,68は供給位置67a,68a及び排出位置67b,68bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、排出位置67b,68bに付勢されている。アンロード弁70は遮断位置70a及び排出位置70bに操作自在な電磁操作型式に構成されて、遮断位置70aに付勢されている。
【0052】
図3に示すように、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)から分岐した油路75に、第2リリーフ弁76が接続され、油路75に比例制御弁71及び旋回切換制御弁72が直列的に接続されており、旋回切換制御弁72が緩旋回クラッチ36、ブレーキ40及び逆転クラッチ42に接続されている。比例制御弁71は電磁操作型式に構成されて、作動油の圧力制御が可能である。旋回切換制御弁72は、緩旋回位置72a、信地旋回位置72b及び超信地旋回位置72cに操作自在なパイロット操作型式に構成されており、緩旋回位置72aに付勢されている。この場合、第1リリーフ弁69のリリーフ圧が比較的高い値に設定され、第2リリーフ弁76のリリーフ圧が比較的低い値に設定されている。
【0053】
図3に示すように、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して信地旋回位置72bに操作するように、パイロット操作弁73が構成され、油路75から分岐したパイロット作動油を旋回切換制御弁72に供給して超信地旋回位置72cに操作するように、パイロット操作弁74が構成されている。油圧ユニット59とミッションケース8との連結面(合わせ面)に、ドレン油路(図示せず)が形成されており、右旋回制御弁67、左旋回制御弁68、第1リリーフ弁69、アンロード弁70、第2リリーフ弁76、比例制御弁71、旋回切換制御弁72、パイロット操作弁73,74の作動油がドレン油路を介してミッションケース8に戻される。
右及び左旋回制御弁67,68、アンロード弁70、比例制御弁71、パイロット操作弁73,74は、後述する[7][8][9][10]に記載のように、制御装置79によって操作される。
【0054】
[7]
次に、操向レバー77による直進状態について説明する。
図1及び図4に示すように、右及び左に操作自在な操向レバー77が運転部3に備えられ、操向レバー77の操作位置が制御装置79に入力されており、操向レバー77は直進位置N、右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作自在に構成されている。ダイヤル操作型式の旋回モードスイッチ78が運転部3に備えられ、旋回モードスイッチ78の操作位置が制御装置79に入力されており、旋回モードスイッチ78は緩旋回位置、信地旋回位置及び超信地旋回位置を備えている。
【0055】
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78の操作位置に関係なく、操向レバー77が直進位置Nに操作されると、右及び左旋回制御弁67,68が排出位置67b,68bに操作され、アンロード弁70が排出位置70bに操作される。これにより、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)、右及び左の旋回クラッチ39から作動油が排出され、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が伝動状態に操作されて、右及び左の旋回クラッチ39が半伝動状態に操作される。比例制御弁71により緩旋回及び逆転クラッチ36,42が遮断状態に操作され、ブレーキ40が解除状態に操作される。
【0056】
図2及び前項[2]に記載のように、静油圧式無段変速装置7の出力軸7bの動力が、低速ギヤ10、伝動ギヤ19、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達されて、機体は直進する。
【0057】
[8]
次に、操向レバー77による緩旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が緩旋回位置72aに操作される。これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。
【0058】
図2に示すように、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)の動力が、左の出力ギヤ27及び左の旋回クラッチ39から、右の旋回クラッチ39を介して右の出力ギヤ27に伝達され、伝動軸26と同方向で伝動軸26より少し低速の動力が右の出力ギヤ27に伝達される。これにより、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0059】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(緩旋回位置72a)を介して、緩旋回クラッチ36に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作される。
【0060】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により緩旋回クラッチ36の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸26の動力が右の咬合部28、伝動ギヤ35、緩旋回クラッチ36、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と同方向で伝動軸26よりも低速の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0061】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と緩旋回クラッチ36からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が緩旋回クラッチ36からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより緩旋回クラッチ36の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0062】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、緩旋回クラッチ36の作動圧が高圧になると、図2に示すように、緩旋回クラッチ36からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動されるよりも、緩旋回クラッチ36からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される方が、右の出力ギヤ27が低速で駆動されることになり、機体は右に緩旋回する。
【0063】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に緩旋回する。
【0064】
[9]
次に、操向レバー77による信地旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように、旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が信地旋回位置72bに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、前項[8]に記載と同様に機体は緩やかに右に向きを変える。
【0065】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(信地旋回位置72b)を介して、ブレーキ40に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作される。
【0066】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71によりブレーキ40の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、右の出力ギヤ27に制動力が掛かる。
【0067】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、ブレーキ40の制動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力がブレーキ40の制動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより、ブレーキ40の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0068】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、ブレーキ40の作動圧が高圧になると、図2に示すように、ブレーキ40の制動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、ブレーキ40の制動力により右の出力ギヤ27が制動状態となり、機体は右に信地旋回する。
【0069】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に信地旋回する。
【0070】
[10]
次に、操向レバー77による超信地旋回状態について説明する。
図2,3,4に示すように旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作されると、パイロット操作弁73,74により旋回切換制御弁72が超信地旋回位置72cに操作される。
これにより、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)及び右の旋回クラッチ39に作動油が供給されて、右のサイドクラッチ33(右の咬合部28)が遮断状態に操作され、右の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。この場合、左の旋回クラッチ39が半伝動状態であるので、前項[8]に記載と同様に機体は緩やかに右に向きを変える。
【0071】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が右第1旋回位置R1に操作されると、前述のように右旋回制御弁67が供給位置67aに操作されアンロード弁70が遮断位置70aに操作されるのと同時に、比例制御弁71及び旋回切換制御弁72(超信地旋回位置72c)を介して、逆転クラッチ42に作動油が供給され始めるのであり、操向レバー77が右第1旋回位置R1から右第2旋回位置R2に操作されるほど、比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作される。
【0072】
図2,3,4に示すように、操向レバー77の操作位置に基づいて比例制御弁71により逆転クラッチ42の作動圧が昇圧操作されるのに伴って、伝動軸20の動力が伝動ギヤ23,41、逆転クラッチ42、伝動軸34、伝動ギヤ38、旋回クラッチケース37及び右の旋回クラッチ39を介して、伝動軸26と逆方向の動力として右の出力ギヤ27に伝達される。
【0073】
この場合、図2に示すように、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力と、逆転クラッチ42からの動力とが、同時に右の出力ギヤ27に伝達される状態となるので、逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力が逆転クラッチ42からの動力に打ち勝って、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。これにより逆転クラッチ42の作動圧が低圧の範囲では、機体は緩やかに右に向きを変える。
【0074】
次に操向レバー77の操作位置が右第2旋回位置R2に接近し、逆転クラッチ42の作動圧が高圧になると、図2に示すように、逆転クラッチ42からの動力が左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)からの動力に打ち勝って、逆転クラッチ42からの動力により右の出力ギヤ27が駆動される。この状態において、左の出力ギヤ27に対して、右の出力ギヤ27が逆方向に駆動されて、機体は右に超信地旋回する。
【0075】
図2,3,4に示すように、操向レバー77が左第1旋回位置L1に操作されると、左旋回制御弁68が供給位置68aに操作されて、アンロード弁70が遮断位置70aに操作され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)及び左の旋回クラッチ39に作動油が供給され、左のサイドクラッチ33(左の咬合部28)が遮断状態に操作されて、左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。これと同時に前述と同様な操作が行われて、機体は緩やかに左に向きを変える。操向レバー77が左第1旋回位置L1から左第2旋回位置L2に操作されると、前述と同様な操作が行われて、機体は左に超信地旋回する。
【0076】
[11]
次に、運転部3の付近について説明する。
図1及び図6に示すように、エンジン6を覆うボンネット95、ボンネット95の上部に支持された運転席96、ボンネット95と略同じ高さに位置するフロントパネル97及びサイドパネル98、フロントパネル97及びサイドパネル98よりも低い位置のフロア99等を備えて運転部3が構成されている。
【0077】
図6に示すように、操向レバー77及び旋回モードスイッチ78、各種の表示を行う表示パネル100がフロントパネル97に備えられて、表示部87(図4参照)が表示パネル100に備えられている。変速レバー43及びクラッチレバー101がサイドパネル98に備えられて、クラッチレバー101の操作位置が制御装置79に入力されている。図4に示すように、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ54を操作する操作モータ102が備えられており、制御装置79により操作モータ102が操作される。
【0078】
図4及び図6に示すように、クラッチレバー101は遮断位置、第1及び第2伝動位置に操作自在に構成されている。クラッチレバー101が遮断位置に操作されると、操作モータ102により刈取及び脱穀クラッチ17,54が遮断状態に操作される。クラッチレバー101が第1伝動位置に操作されると、操作モータ102により刈取クラッチ17が遮断状態に操作され、脱穀クラッチ54が伝動状態に操作される。クラッチレバー101が第2伝動位置に操作されると、操作モータ102により刈取及び脱穀クラッチ17,54が伝動状態に操作される。
【0079】
図6に示すように、フロア99の前部の中央部に固定の足置き台103が備えられており、足置き台103の右横側に掻き込みペダル94(人為操作具に相当)が備えられている。足置き台103の左横側に駐車ブレーキペダル104が備えられており、駐車ブレーキペダル104と駐車ブレーキ24(図2参照)とが連係機構(図示せず)を介して機械的に連係されている。
【0080】
前項[7]及び図2に示すように、操向レバー77が直進位置Nに操作された状態(右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)の伝動状態)において、駐車ブレーキペダル104が踏み操作されて、駐車ブレーキ24が制動状態に操作されると、駐車ブレーキ24の制動力が、伝動軸20、伝動ギヤ22,25、伝動軸26、右及び左の咬合部28、右及び左の出力ギヤ27、右及び左の伝動ギヤ30、右及び左の車軸29を介して、右及び左の走行装置1に伝達される。
【0081】
[12]
次に、掻き込みペダル94について説明する。
図4に示すように、掻き込みペダル94は踏み位置及び戻し位置に踏み操作自在に構成されて、戻し位置に付勢されており、掻き込みペダル94の操作位置が制御装置79に入力されている。例えば圃場の中央側から機体が圃場の畦際に達すると機体を停止させるのであるが、刈取部2による刈り取りは続行する必要があるので、このような場合に掻き込みペダル94を踏み位置に踏み操作する。
【0082】
図9に示すように、掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作されると(ステップS1,S2)、図2及び図3に示すように、制御装置79により右及び左旋回制御弁67,68が供給位置67a,68aに操作され、アンロード弁70が遮断位置70aに操作されて、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作される(ステップS8)。これによって、エンジン6の動力を刈取部2に伝達した状態で、右及び左の走行装置1を停止させて、刈取部2を作動させた状態で機体を停止させることができる。
【0083】
図2及び図3に示すように、右及び左旋回制御弁67,68が供給位置67a,68aに操作されると、右及び左の旋回クラッチ39が伝動状態に操作される。しかし、緩旋回クラッチ36、ブレーキ40及び逆転クラッチ42が遮断状態に操作されていれば、緩旋回クラッチ36からの動力、ブレーキ40の制動力及び逆転クラッチ42からの動力が、右及び左の旋回クラッチ39を介して右及び左の走行装置1に伝達されることはなく、機体は停止している。
【0084】
[13]
次に、掻き込みペダル94の操作に制限を加える制御について、図9に基づいて説明する。
図4に示すように、伝動軸26(図2参照)の回転数から機体の走行速度を検出する速度センサー105(速度検出手段に相当)、及び水平面に対する機体の前後方向及び左右方向の傾斜角度を検出する傾斜センサー106が備えられて、速度センサー105及び傾斜センサー106の検出値が制御装置79に入力されている。
【0085】
掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、機体の走行速度が事前に設定された設定速度よりも高速であると(ステップS3)、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)は遮断状態に操作されず、現状が維持される(牽制手段に相当)。
掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1、右及び左第2旋回位置R2,L2に操作されていると(ステップS4)(判別手段に相当)、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)は遮断状態に操作されず、現状が維持される(牽制手段に相当)。
【0086】
掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、クラッチレバー101が遮断位置又は第1伝動位置に操作されていると(ステップS5)、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)は遮断状態に操作されず、現状が維持される。
掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、機体の前後方向の傾斜角度が事前に設定された設定角度を超えていると(機体が前後方向に傾斜していると)(ステップS6)、又は機体の左右方向の傾斜角度が事前に設定された設定角度を超えていると(機体が左右方向に傾斜していると)(ステップS6)、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)は遮断状態に操作されず、現状が維持される。
【0087】
これにより、掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、機体の走行速度が事前に設定された設定速度よりも低速であり(ステップS3)、且つ、操向レバー77が直進位置Nに操作され(ステップS4)、且つ、クラッチレバー101が第2伝動位置に操作され(ステップS5)、且つ、機体の前後方向の傾斜角度が事前に設定された設定角度を超えておらず(機体が前後方向に傾斜していない)(ステップS6)、且つ、機体の左右方向の傾斜角度が事前に設定された設定角度を超えていない(機体が左右方向に傾斜していない)(ステップS6)状態において、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作される(ステップS8)。
【0088】
掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合(ステップS1,S2)、ステップS3〜S6により、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作されず、現状が維持されたとする(ステップS9)。
この状態において、ステップS3〜S6の全てがクリアされて、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)を遮断状態に操作可能な状態になっても、掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作され続けていれば、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)は遮断状態に操作されず、現状が維持される(ステップS2〜S7(N=2))。
(牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となっても、人為操作具の機体停止手段の遮断状態への操作が行われていると、牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態が維持される状態に相当)。
【0089】
前述のステップS3〜S6の全てがクリアされた状態において、掻き込みペダル94が戻し位置に操作されると(ステップS2からステップS1(N=1))、まだ右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作されず(まだ現状が維持されるのであり)、この後に掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作されると(ステップS2)、ステップS8に移行して、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作される。
(牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となって、人為操作具の機体停止手段の伝動状態への操作が行われると、牽制手段の作動が解除される状態に相当)。
【0090】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、掻き込みペダル94が踏み位置に踏み操作された場合、右及び左のサイドクラッチ33(右及び左の咬合部28)が遮断状態に操作されるのではなく、図2に示すシフト部材21(機体停止手段に相当)が伝動ギヤ19から離間操作されるように構成してもよい。
【0091】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]の図9のステップS4において、操向レバー77が右及び左第2旋回位置R2,L2に操作されていると、ステップS9に移行し、操向レバー77が直進位置N又は右及び左第1旋回位置R1,L1に操作されていると、ステップS5に移行するように構成してもよい(操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作されていても、機体は旋回状態ではないと判断する(機体は直進状態であると判断する))。
【0092】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、掻き込みペダル94に代えて、操作レバー(図示せず)を使用してもよい。この場合、掻き込みペダル94自身を踏み位置に操作できないように、又は前述の操作レバー自身を操作できないように、牽制手段を構成してもよい。
【0093】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]〜[発明の実施の第3別形態]において、走行変速スイッチ81を、レバースイッチ型式やシーソースイッチ型式に構成するのではなく、走行変速スイッチ81をダイヤル操作型式に構成して、図6に示すフロントパネル97やサイドパネル98に備えるように構成してもよい。これにより、走行変速スイッチ81の操作位置に基づいて、制御装置79により圧力制御弁58が操作され、操作シリンダ56が作動して、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが高速側及び低速側に操作される(図7の実線A1及び一点鎖線A2,A3参照)。
【0094】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、以下のように構成してもよい。
1日の刈取作業の開始時等のように、キースイッチ(図示せず)により、エンジン6の始動操作が行われると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが実線A1(図7参照)に示す状態(静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mの斜板において、最高速位置及び最低速位置の中間位置)に操作され、実線A1(図7参照)に示す状態から走行変速スイッチ81により、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを高速側及び低速側に操作する。
【0095】
次に、キースイッチによりエンジン6の停止操作が行われたり、変速レバー43が中立位置Nに操作されたりすると、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mが実線A1(図7参照)に示す状態に自動的に操作される。この後、再び走行変速スイッチ81により、静油圧式無段変速装置7の油圧モータ7Mを高速側及び低速側に操作する。
【0096】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第5別形態]において、以下のように構成してもよい。
旋回モードスイッチ78(図4参照)をダイヤル操作型式に構成するのではなく、図10(a)に示すように、旋回モードスイッチ78を押しボタン型式に構成して、操向レバー77に備える。操向レバー77に対して、中立位置N、右及び左第1旋回位置R1,L1を設定し、右及び左第2旋回位置R2,L2(図4参照)を廃止する。
【0097】
これにより、図10(a)に示すように、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作されると、前項[7]〜[10]と同じ状態(右(左)のサイドクラッチ33(右(左)の咬合部28)が遮断状態に操作され、右(左)の旋回クラッチ39が伝動状態に操作された状態)が得られる。
【0098】
図10(a)に示すように、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された状態において、旋回モードスイッチ78が押し操作されると(押し操作され続けると)、先ず前項[8]に記載のように、図4に示す旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作された状態が得られる。
旋回モードスイッチ78がさらに押し操作され続けると、図4に示す旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作された状態から、前項[9]に記載のように、図4に示す旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作された状態が得られる。
旋回モードスイッチ78がさらに押し操作され続けると、図4に示す旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作された状態から、前項[10]に記載のように、図4に示す旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作された状態が得られる。
【0099】
これにより、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された状態において、旋回モードスイッチ78が押し操作される時間により、図4に示す旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作された状態、図4に示す旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作された状態、図4に示す旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作された状態が順番に得られて、機体の旋回半径が小さくなっていく。旋回モードスイッチ78から手が離れて押し操作されなくなると、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された最初の状態に復帰する。
【0100】
図10(a)に示す旋回モードスイッチ78を廃止し、図10(b)に示すように、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された際の運転者の操作力を検出する感圧センサー107を備えてもよい。
これにより、操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された際の運転者の操作力が大きくなるほど、図4に示す旋回モードスイッチ78が緩旋回位置に操作された状態、図4に示す旋回モードスイッチ78が信地旋回位置に操作された状態、図4に示す旋回モードスイッチ78が超信地旋回位置に操作された状態が順番に得られるように構成する。操向レバー77が右及び左第1旋回位置R1,L1に操作された際の運転者の操作力が小さくなると(略消失すると)、前項[7]〜[10]と同じ状態(右(左)のサイドクラッチ33(右(左)の咬合部28)が遮断状態に操作され、右(左)の旋回クラッチ39が伝動状態に操作された状態)が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】ミッションケースの縦断正面図
【図3】油圧ユニットの油圧回路構造を示す図
【図4】変速レバー、操向レバー、旋回モードスイッチ、油圧ユニット、操作シリンダ及び圧力制御弁の関係を示す図
【図5】静油圧式無段変速装置の油圧回路構造を示す図
【図6】運転部の平面図
【図7】機体の走行速度と変速レバーの操作位置との関係を示す図
【図8】右及び左の走行装置のスプロケットの付近の縦断正面図
【図9】掻き込みペダルの制御の流れを示す図
【図10】発明の実施の第6別形態において、操向レバーの付近の背面図
【符号の説明】
【0102】
1 走行装置
2 刈取部
6 エンジン
21,33 機体停止手段
94 人為操作具
105 速度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を走行伝動系と刈取伝動系とに並列的に分岐させて、前記走行伝動系の動力を走行装置に伝達し、前記刈取伝動系の動力を刈取部に伝達するように構成して、
前記走行伝動系の動力を走行装置に伝達する伝動状態、及び前記走行伝動系の動力を遮断する遮断状態に操作自在な機体停止手段と、
前記機体停止手段を伝動及び遮断状態に操作自在な人為操作具とを備え、
機体の走行速度を検出する速度検出手段を備えて、
機体の走行速度が事前に設定された設定速度よりも高速であると、前記機体停止手段の遮断状態への操作を阻止する牽制手段を備えてあるコンバイン。
【請求項2】
機体が直進状態であるか旋回状態であるかを判別する判別手段を備え、
機体が旋回状態であると、前記機体停止手段の遮断状態への操作を阻止するように、前記牽制手段を構成してある請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となっても、前記人為操作具の機体停止手段の遮断状態への操作が行われていると、前記牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態が維持され、
前記牽制手段により機体停止手段の遮断状態への操作が阻止された状態において、機体の走行速度が設定速度よりも低速となり且つ機体が直進状態となって、前記人為操作具の機体停止手段の伝動状態への操作が行われると、前記牽制手段の作動が解除されるように構成してある請求項2に記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate