説明

コンバイン

【課題】オーガレストを非作業位置にした状態で、前処理部及びリールの両方を上昇駆動させると、排出オーガと干渉する。
【解決手段】オーガレスト9が、非作業位置にあることを検出し、かつリール11が上昇位置にあることを検出した場合、前処理部4の上昇を禁止する制御部38を備える。又は、オーガレスト9が、非作業位置にあることを検出し、かつ前処理部4が上昇位置にあることを検出した場合、リール11の上昇を禁止する制御部38を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係り、詳しくは、刈取作業を行うリール及び前処理部の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機体に、リールを有する前処理部と、穀粒を排出する排出オーガと、を有し、リール及び前処理部を昇降自在に構成したコンバインにおいて、該リールが上昇位置にあっても前記機体に支持される排出オーガと干渉しないように、該排出オーガの長さを短く設定していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−245524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排出オーガの長さを短く設定した特許文献1記載のものは、穀粒排出範囲が狭く作業性に課題があった。該課題を解決するために、排出オーガを長く設定すると共に、リールが上昇してもリールが排出オーガと干渉しない非作業位置と、干渉する非作業位置と、に切替え自在に排出オーガを支え得るオーガレストを有したコンバインも考えられるが、オペレータの切替え忘れにより、オペレータが、オーガレストの位置を作業位置に切替えないままリール及び前処理部を上昇操作して、それらが排出オーガと干渉する虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、前記オーガレストが前記非作業位置にあって、排出オーガとリールが干渉するような操作をした場合に、該操作を禁止する制御部を備え、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行装置(2)に支持された機体(3)に、グレンタンク(7)を配設すると共に、リール(11)を昇降自在に連結した前処理部(4)を昇降自在に支持し、前記グレンタンク(7)に、前記前処理部(4)の上方まで延出し得る排出オーガ(8)を昇降及び旋回自在に連結してなるコンバイン(1)において、
前記排出オーガ(8)を、その下降位置にて支えるオーガレスト(9)を備え、
該オーガレスト(9)は、前記排出オーガ(8)の先端が前記前処理部(4)の上方に延びる位置にて該排出オーガ(8)を支え得る非作業位置と、該前処理部(4)の上方から外れた位置にて該排出オーガ(8)を支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレスト(9)が、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記リール(11)が上昇位置にあることを検出した場合、前記前処理部(4)の上昇を禁止する制御部(38)を備えてなる。
【0007】
本発明は、走行装置(2)に支持された機体(3)に、グレンタンク(7)を配設すると共に、リール(11)を昇降自在に連結した前処理部(4)を昇降自在に支持し、前記グレンタンク(7)に、前記前処理部(4)の上方まで延出し得る排出オーガ(8)を昇降及び旋回自在に連結してなるコンバイン(1)において、
前記排出オーガ(8)を、その下降位置にて支えるオーガレスト(9)を備え、
該オーガレスト(9)は、前記排出オーガ(8)の先端が前記前処理部(4)の上方に延びる位置にて該排出オーガ(8)を支え得る非作業位置と、該前処理部(4)の上方から外れた位置にて該排出オーガ(8)を支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレスト(9)が、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記前処理部(4)が上昇位置にあることを検出した場合、前記リール(11)の上昇を禁止する制御部(38)を備える。
【0008】
本発明は、走行装置(2)に支持された機体(3)に、グレンタンク(7)を配設すると共に、リール(11)を昇降自在に連結した前処理部(4)を昇降自在に支持し、前記グレンタンク(7)に、前記前処理部(4)の上方まで延出し得る排出オーガ(8)を昇降及び旋回自在に連結してなるコンバイン(1)において、
前記排出オーガ(8)を、その下降位置にて支えるオーガレスト(9)を備え、
該オーガレスト(9)は、前記排出オーガ(8)の先端が前記前処理部(4)の上方に延びる位置にて該排出オーガ(8)を支え得る非作業位置と、該前処理部(4)の上方から外れた位置にて該排出オーガ(8)を支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレスト(9)が、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記リール(11)が所定高さ以上になるように前記前処理部(4)及びリール(11)を上昇操作した場合、前記排出オーガ(8)を連動して上昇制御する制御部(38)を備える。
【0009】
前記前処理部(4)への動力伝達を断接する刈取クラッチ(49)を備え、
前記制御部(38)は、前記オーガレスト(9)が、前記非作業位置にあることを検出した場合、前記刈取クラッチ(49)のオン操作を禁止する。
【0010】
前記制御部(38)は、前記排出オーガ(8)が、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、
前記前処理部上昇の禁止制御を解除する。
【0011】
前記制御部(38)は、前記排出オーガ(8)が、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、
前記リール上昇の禁止制御を解除する。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、制御部は、前記オーガレストが非作業位置にあり、前記リールが上昇位置にあることを検出した場合、前記前処理部の上昇を禁止するので、オペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、前記リールと前記排出オーガが干渉することはなく、安全性及び作業性を向上できる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、制御部は、前記オーガレストが非作業位置にあり、前記前処理部が上昇位置にあることを検出した場合、前記リールの上昇を禁止するのでオペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、前記リールと前記排出オーガが干渉することはなく、安全性及び作業性を向上できる。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、制御部は、前記オーガレストが非作業位置にあり、前記リールが所定高さ以上になるように前記前処理部及びリールを上昇操作した場合、前記排出オーガを連動して上昇制御するので、オペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、排出オーガがリールと干渉することなく、安全性及び作業性を向上できる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、制御部は、前記オーガレストが、前記非作業位置にあることを検出すると、前記刈取クラッチのオン操作を禁止するので、リールの回転及び前処理部に配設された刈刃等にエンジンの出力が伝達することがなく、オペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、安全性及び作業性を向上できる。
【0017】
請求項5に係る本発明によると、前記排出オーガが、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、制御部は、前記前処理部の禁止制御を解除するので、オペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、不必要な前処理部の上昇禁止制御を受けず、滞りなく作業ができ作業性が向上する。
【0018】
請求項6に係る本発明によると、前記排出オーガが、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、制御部は、前記リールの禁止制御を解除するので、オペレータがオーガレストを作業位置に切替えることを忘れたとしても、不必要なリールの上昇禁止制御を受けず、滞りなく作業ができ作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したコンバインを示す平面図。
【図2】その右側面図。
【図3】その左側面図。
【図4】オーガレストが非作業位置にあることを示す左前斜視図。
【図5】オーガレストが作業位置にあることを示す左前斜視図。
【図6】オーガレストが非作業位置にあることを示す右後斜視図。
【図7】オーガレストが作業位置にあることを示す右後斜視図。
【図8】運転操作部の平面図。
【図9】マルチステアリングレバーの正面図。
【図10】排出オーガリモコンの正面図。
【図11】コンバインの制御を示す制御ブロック図。
【図12】リールが上限位置の状態を示すコンバインの左側面図。
【図13】前処理部が上限位置の状態を示すコンバインの左側面図。
【図14】前処理部及びリールが上限位置の状態を示すコンバインの左側面図。
【図15】前処理部、リール、及び排出オーガが上限位置の状態を示すコンバインの左側面図。
【図16】排出オーガの旋回範囲の規制領域を示す模式図。
【図17】前処理上昇駆動の制御を示すフローチャート。
【図18】リール上昇駆動の制御を示すフローチャート。
【図19】刈取クラッチ接続駆動の制御を示すフローチャート。
【図20】外の実施の形態による前処理上昇駆動の制御を示すフローチャート。
【図21】外の実施の形態によるリール上昇駆動の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、図1ないし図3に示すように、クローラ走行装置2により支持される機体3を有しており、該機体3の前方には穀稈の刈取と搬送を行う前処理部4が配置されている。また、機体3は、その一側(左側)に刈取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部5が配置され、他側(右側)に運転操作部6及びエンジンが配置されており、その後方に脱穀された穀粒を一時貯蔵するグレンタンク7及び該グレンタンク7内の穀粒を排出する排出オーガ8が配置されている。該排出オーガ8は、運転操作部6の後側部に配設されるオーガレスト9に載置支持される。
【0021】
上記前処理部4は、穀稈を分草するデバイダ10、穀稈を掻込むリール11、穀稈の株元を切断する刈刃12、刈取った穀稈を脱穀部5に向けて搬送するフィーダ13、などを備えて構成されている。更に、前処理部4は前処理昇降シリンダ14の伸縮作用により昇降自在に、前処理部4に対してリール11は、リール昇降シリンダ15の伸縮作用により昇降自在に、それぞれ構成されている。
【0022】
また、上記グレンタンク7の底部には横ラセンが配置され、該横ラセンに接続して、縦オーガ16が立設されている。更に、該縦オーガ16の先端に横オーガ17を連接して、排出オーガ8を構成している。縦オーガ16はその基部が回転自在に支持されており、オーガモータ18によりその筒状部が回転駆動される。横オーガ17の基部は縦オーガ16の先端部に上下方向に揺動自在に連結されており、オーガ昇降シリンダ19により上下方向に昇降駆動される。
【0023】
図4及び図5は、オーガレスト9の左前方斜視図であり、オーガレスト9は、機体3から立設される支柱部9aと、支柱部9aの先端部と支柱部9aから斜め上方に延びる補強部材20で支持され、水平方向に延設されるスライド部9bと、スライド部に摺動自在に支持される受部9cと、を有している。該受部9cは、上方に向けて略V字型で、上記排出オーガ8の横オーガ17(図4ないし図7の鎖線で表される部分)が載置可能に構成される。また、該受部9cの上面(V字型に形成された内面)にはゴムや樹脂等の弾性部材が取り付けられており、横オーガ17が載置されていても走行中に振動音を発生することが防止される。
【0024】
該受部9cは、ピン21及び抜止め部材22でスライド部9bに固定され、スライド部9b上の、図4で示される非作業位置と、図5で示される作業位置に切替え自在に支持される。該非作業位置又は作業位置のオーガレスト9に上記排出オーガ8が載置された時には、該排出オーガ8の先端が、それぞれ非作業位置ではリール11の上方に延出し(図1及び図2の鎖線で描かれる排出オーガ8参照)、作業位置ではリール11の上方に延出せず、例えリール11及び前処理部4が上昇しても干渉しない(図1及び図2の実線で描かれる排出オーガ8参照)。また、上記受部9cには、把手23が固定され上記受部9cの非作業位置と作業位置の切替えを簡便にすると共に、アーム24の一端が支持され、かつ他端は前記補強部材20上の一点を揺動支点として揺動自在に構成され、受部9cがスライドしても上方に抜け落ちないようになっている。
【0025】
図6及び図7は、オーガレスト9の右後方斜視図であり、それぞれ図6は非作業位置、図7は作業位置、のオーガレスト9を示している。受部9cには、オーガレスト9の該非作業位置又は作業位置を検出するオーガレストスイッチ25が固設され、図7に示されるように、該オーガレストスイッチ25が、上記スライド部9bの先端に設けられたプレート9dと干渉することで、オーガレストスイッチ25のオン信号が入力される。
【0026】
図8は、上記運転操作部6の平面図であり、運転操作部6は、該運転操作部6の中央に設けられた運転席の左側方に主変速レバー26、副変速レバー27、及び脱穀・刈取クラッチスイッチ28等を、前方にマルチステアリングレバー29等を、後方にオーガリモコン30を、それぞれ有している。該主変速レバー26は、中立位置から前方又は後方に操作することにより、コンバイン1を前進又は後進させることができ、走行速度を無段階に変速する。上記副変速レバー27は、前方に操作することにより高速(路上)走行位置に変速すると共に、後方に操作することにより低速(作業)走行位置に変速する。
【0027】
図9は、上記マルチステアリングレバー29の正面図であり、該マルチステアリングレバー29を中立位置から左右方向に操作することによりコンバイン1を左右旋回させると共に、前後方向に操作することにより前処理部4を下降・上昇駆動させることができる。また、マルチステアリングレバー29には、少なくともリール上昇スイッチ31と、リール下降スイッチ32と、が配設され、一方の手(通常右手)でコンバイン1の操舵、前処理部4の昇降操作、リール11の昇降操作等を行うことができる。
【0028】
図10は、排出オーガ8を遠隔操作するオーガリモコン30の正面図であり、該オーガリモコン30は、排出オーガ8の昇降及び旋回操作を手動で行うオーガ手動スイッチ33と、該旋回操作を自動で行うオーガ自動スイッチ34と、該オーガ自動スイッチ34で旋回駆動される旋回位置の設定をするオーガ旋回位置選択スイッチ35と、排出オーガ8が、上記グレンタンク7に貯蔵された穀粒を排出する排出スイッチ36と、排出オーガ8の先端に配設され、穀粒の排出量を調整する開閉板(フラップ)を開閉作動するフラップ調整スイッチ37と、を有する。上記オーガ手動スイッチ33又はオーガ自動スイッチ34の操作に基づき、上記オーガモータ18を介して、排出オーガ8が、非作業位置から所定の排出位置に向け、又は所定の排出位置から非作業位置に向け、上記縦オーガ16を中心として該縦オーガ16と共に旋回駆動される。
【0029】
該オーガリモコン30は、着脱自在に運転操作部6に支持されており、無線により機体の制御部(マイコン)38に通信される。該無線式のオーガリモコン30は、例えば、トラック等の穀粒運搬車両への穀粒排出作業を行っている時に、該穀粒運搬車両の近くにいる作業者が排出オーガ8を操作する場合に機外で利用される。
【0030】
図11は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、コンバイン1は、マイコン(CPU,ROM,RAM等を含む)からなり該制御ブロック図を構成する制御部38を備えている。該制御部38の入力側には、オーガ自動スイッチ34及びオーガ手動スイッチ33を有するオーガリモコン30と、排出オーガ8の旋回位置を検出するオーガ旋回ポテンショ39と、排出オーガ8が上限位置にあることを検出するオーガ上限スイッチ40と、上記オーガレストスイッチ25と、上記マルチステアリングレバー29による前処理部4の昇降操作を検出するマルチ昇降ポテンショ41と、該前処理部4の昇降位置を検出するリフトポテンショ42と、上記リール上昇スイッチ31と、上記リール下降スイッチ32と、リール11の昇降位置を検出するリール高さポテンショ43と、上記脱穀・刈取クラッチスイッチ28と、脱穀・刈取クラッチの位置を検出する脱穀・刈取クラッチポテンショ44と、が接続されている。
【0031】
また、制御部38の出力側には、排出オーガ8の旋回駆動及び穀粒の排出を行う上記オーガモータ18と、上記オーガ昇降シリンダ19を操作するオーガバルブ45と、オペレータに注意を促す警報ホーン46と、上記前処理昇降シリンダ14を操作するリフトバルブ47と、上記リール昇降シリンダ15を操作するリールバルブ48と、エンジンからの出力を断接する脱穀クラッチ及び刈取クラッチ49を操作する脱穀・刈取クラッチモータ50と、が接続されている。
【0032】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、コンバイン1の作業時においては、上記排出オーガ8が上記リール11と干渉し得ないように、上記オーガレスト9を上記作業位置に設定する。その上で、上記脱穀・刈取クラッチスイッチ28を操作し、上記前処理部4及びリール11にエンジンの出力を伝達して、刈取及び脱穀作業を行う。
【0033】
また、上記マルチステアリングレバー29を前後方向に操作することにより前処理部4を昇降駆動させ、上記マルチステアリングレバー29にあるリール上昇スイッチ31及びリール下降スイッチ32を押操作することによりリール11を昇降駆動して、収穫する作物の種類に応じて適当な刈取及び掻き込み高さに調節する。
【0034】
上記前処理部4、リール11、及び排出オーガ8の上限位置におけるそれぞれの位置関係は、図12及び13に示すように、該リール11又は前処理部4が単体で上限位置にある場合には、該リール11は、上記オーガレスト9に載置された上記排出オーガ8の高さには至らない。図14に示すように、該リール11及び前処理部4が共に上限位置にある場合には、該リール11は、該排出オーガ8の高さに至り、該排出オーガ8が作業位置にある場合には干渉しないが、非作業位置にある場合には干渉する。ただし、図15に示すように、上記前処理部4、リール11、及び排出オーガ8が共に上限位置にある場合には、それぞれ干渉することはない。上記制御部38は、排出オーガ8とリール11が干渉しないように、後述する所定の条件の下、前処理部4、リール11、及び排出オーガ8の制御を行う。
【0035】
また、図16は、手動制御による上記排出オーガ8の旋回範囲を示している。同図において、排出オーガ8の左旋回動作は、図のAの位置(上記作業位置)で機械的に規制されており、右旋回動作は、上記機体3に対して真左に位置する図のF(オーガ真左位置)の位置で機械的に規制されている。図のBの位置は排出オーガ8の上記非作業位置を示している。作業位置Aと、機体3に対して真右に位置する図のD(オーガ真右位置)との間(A,B,D除く)においては、上記排出オーガ8が上記グレンタンク7やオペレータに接触するのを回避するために、作業位置Aにおいて排出オーガを上限まで上昇(オーガ上限スイッチ40オン)させなければ旋回できず、排出オーガ8の下降規制が行われている。なお、オーガ上限スイッチはオーガの昇降位置を検出するオーガ昇降ポテンショでもよく、その場合には、該排出オーガ8の旋回及び下降規制は、所定高さ以下への下降操作を禁止する下降規制のみとなる。
【0036】
一方、真右位置Dと真左位置Fとの間は、上記排出オーガ8の旋回および下降規制は行われず、該排出オーガ8がグレンタンク7に貯蔵された穀粒を排出する、穀粒排出範囲である。オーガ自動スイッチ34に基づくオーガ自動制御では、上記のような動作規制は行われておらず、例えば、排出オーガ8が作業位置Aにある場合にオーガ自動スイッチ34を押操作すると、排出オーガ8は上限位置まで上昇した後、予め上記オーガ旋回位置選択スイッチ35にて設定された所定の3箇所の排出位置(D,E,F)のいずれか一つまで自動的に旋回し、また、排出オーガ8が作業位置Aにない場合にオーガ自動スイッチ34を押操作すると、排出オーガ8が自動的に作業位置Aまで旋回し、その位置で下降して作業位置Aに載置される。
【0037】
作業位置Aと図のCの位置との間(A,C除く)は、上記リール11の上方に排出オーガ8が延出する範囲であり、前処理部4及びリール11が例えば上限位置にある場合には、リール11と排出オーガ8が干渉するため(図14参照)、後述する所定の条件の下、制御部38は、前処理部4及びリール11を排出オーガ8と干渉しないように制御する。なお、排出オーガ8が該BとCとの間の範囲にある場合を、リール上昇規制範囲にあると定義する。
【0038】
次いで、本実施の形態における、コンバインの前処理部、リール、及び刈取クラッチの制御を説明する。
【0039】
図17は、前処理上昇駆動の制御のフローチャートを示しており、S1において、オーガレストスイッチ25がオンかオフ、すなわちオーガレスト9が作業位置か非作業位置か判断され、オフ(非作業位置)の場合は、S2において、オーガ上限スイッチ40がオフ(排出オーガ8が上限位置にない)かつ排出オーガ8が上記リール上昇規制範囲にある場合、S3に進む。S3では、リール高さポテンショ43によってリール11の昇降位置が検出され、該リール昇降位置が予め設定された所定値以下である場合は、S4のリフトバルブ14の上昇駆動により、前処理部4は上昇する。また、S1においてオン(作業位置)、又はS2において、オーガ上限スイッチ40がオン(排出オーガ8が上限位置)又は排出オーガ8が上記リール上昇規制範囲にない場合には、前処理部4は上昇する。S3において、リール昇降位置が所定値以上である場合には、前処理部4は上昇せず、またS1に戻る。
【0040】
すなわち、オーガレストスイッチ25がオフ(オーガレスト9が非作業位置)で、オーガ上限スイッチ40がオフ(排出オーガ8が上限位置にない)かつ排出オーガ8がリール上限規制範囲にあって(図16のBとCとの間の位置)、リール11の昇降位置が所定値以上である場合は、制御部38が前処理上昇駆動を禁止する。
【0041】
図18は、リール上昇駆動の制御のフローチャートを示しており、図17の前処理上昇駆動がリール上昇駆動に、リール高さポテンショ43がリフトポテンショ42に、リフトバルブ14がリールバルブ15に、なっただけで、制御のフローは同様であるため、リール上昇駆動の禁止制御のみを説明し、外を省略する。
【0042】
すなわち、S5において、オーガレストスイッチ25がオフ(オーガレスト9が非作業位置)で、S6において、オーガ上限スイッチ40がオフ(排出オーガ8が上限位置にない)かつ排出オーガ8がリール上限規制範囲にあって(図16のBとCとの間の位置)、S7において、前処理部4の昇降位置が所定値以上である場合は、制御部38がリール上昇駆動を禁止する。
【0043】
図19は、刈取クラッチ接続駆動の制御のフローチャートを示しており、S8において、オーガレストスイッチ25がオンかオフ、すなわちオーガレスト9が作業位置か非作業位置か判断され、オフ(非作業位置)の場合は、S9において、制御部38が、刈取クラッチの接続駆動を禁止すると共に警報ホーン47によってオペレータに報知する。S8において、オーガレストスイッチ25がオン(作業位置)の場合には、S10において、刈取クラッチモータ50が駆動し、刈取クラッチ49が接続され、前処理部4にエンジンの出力が伝達し、刈取作業を行うことができる。
【0044】
ついで、図20及び図21に沿って、外の実施の形態について説明するが、図20は図17に、図21は図18にそれぞれ対応し、それ以外の上述の実施例と同一の部分は説明を省略する。
【0045】
図20は、図17における前処理上昇駆動の禁止制御の代わりに、前処理上昇駆動と共に排出オーガが連動して上昇するように制御することを示したフローチャートである。よって、S11,S12,S13,S14,S15と進むフローを説明し、上記排出オーガの連動上昇駆動の説明とする。
【0046】
S11において、オーガレスト9が作業位置か非作業位置か判断され、オフ(非作業位置)の場合は、S12において、オーガ上限スイッチ40がオフ(排出オーガ8が上限位置にない)かつ排出オーガ8が上記リール上昇規制範囲にある場合、S13に進む。S13では、リール11の昇降位置が検出され、該リール昇降位置が所定値以上である場合には、S14において、オーガバルブ19の上昇駆動によって排出オーガ8が上昇し、それと共にS15において、前処理部4が上昇する。
【0047】
図21は、図18におけるリール上昇駆動の禁止制御の代わりに、リール上昇駆動と共に排出オーガが連動して上昇するように制御することを示したフローチャートである。また、図20との対比において、前処理上昇駆動がリール上昇駆動に、リール11の昇降位置の検出(S13)が前処理部4の昇降位置の検出(S18)に、リフトバルブ上昇駆動(S15)がリールバルブ上昇駆動(S20)になる点が相違し、外の点は同じである。
【0048】
すなわち、S16において、オーガレストスイッチ25がオフ(オーガレスト9が非作業位置)で、S17において、オーガ上限スイッチ40がオフ(排出オーガ8が上限位置にない)かつ排出オーガ8がリール上限規制範囲にあって(図16のBとCとの間の位置)、S18において、前処理部4の昇降位置が所定値以上である場合は、S19において、排出オーガ8が上昇し、それと共にS20において、リール4が上昇する。
【符号の説明】
【0049】
4 前処理部
8 排出オーガ
9 オーガレスト
11 リール
18 オーガモータ
29 マルチステアリングレバー
30 オーガリモコン
31 リール上昇スイッチ
32 リール下降スイッチ
38 制御部
39 オーガ旋回ポテンショ
40 オーガ上限スイッチ
42 リフトポテンショ
43 リール高さポテンショ
45 オーガバルブ
46 警報ホーン
47 リフトバルブ
48 リールバルブ
49 刈取クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持された機体に、グレンタンクを配設すると共に、リールを昇降自在に連結した前処理部を昇降自在に支持し、前記グレンタンクに、前記前処理部の上方まで延出し得る排出オーガを昇降及び回動自在に連結してなるコンバインにおいて、
前記排出オーガを、その下降位置にて支えるオーガレストを備え、
該オーガレストは、前記排出オーガの先端が前記前処理部の上方に延びる位置にて該オーガを支え得る非作業位置と、該前処理部の上方から外れた位置にて該排出オーガを支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレストが、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記リールが上昇位置にあることを検出した場合、前記前処理部の上昇を禁止する制御部を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
走行装置に支持された機体に、グレンタンクを配設すると共に、リールを昇降自在に連結した前処理部を昇降自在に支持し、前記グレンタンクに、前記前処理部の上方まで延出し得る排出オーガを昇降及び旋回自在に連結してなるコンバインにおいて、
前記排出オーガを、その下降位置にて支えるオーガレストを備え、
該オーガレストは、前記排出オーガの先端が前記前処理部の上方に延びる位置にて該オーガを支え得る非作業位置と、該前処理部の上方から外れた位置にて該排出オーガを支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレストが、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記前処理部が上昇位置にあることを検出した場合、前記リールの上昇を禁止する制御部を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
走行装置に支持された機体に、グレンタンクを配設すると共に、リールを昇降自在に連結した前処理部を昇降自在に支持し、前記グレンタンクに、前記前処理部の上方まで延出し得る排出オーガを昇降及び旋回自在に連結してなるコンバインにおいて、
前記排出オーガを、その下降位置にて支えるオーガレストを備え、
該オーガレストは、前記排出オーガの先端が前記前処理部の上方に延びる位置にて該オーガを支え得る非作業位置と、該前処理部の上方から外れた位置にて該排出オーガを支え得る作業位置とを切替え自在に構成され、
前記オーガレストが、前記非作業位置にあることを検出し、かつ前記リールが所定高さ以上になるように前記前処理部及びリールを上昇操作した場合、前記排出オーガを連動して上昇制御する制御部を備えた、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
前記前処理部への動力伝達を断接する刈取クラッチを備え、
前記制御部は、前記オーガレストが、前記非作業位置にあることを検出した場合、前記刈取クラッチのオン操作を禁止する、
請求項1ないし3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記制御部は、前記排出オーガが、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、
前記前処理部上昇の禁止制御を解除する、
請求項1記載のコンバイン。
【請求項6】
前記制御部は、前記排出オーガが、その上昇上限位置又は旋回位置が前記リールの昇降位置範囲外にあることを検出した場合、
前記リール上昇の禁止制御を解除する、
請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−205540(P2012−205540A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73641(P2011−73641)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】