コンバイン
【課題】脱穀室から排出される被処理物が揺動棚上で絡まって、揺動選別棚上の被処理物の効率および精度が低下する。
【解決手段】走行装置2の上方に脱穀装置3を設け、走行装置2の前方に刈取装置5を設け、前記脱穀装置3は、扱胴20を軸装した脱穀室14の下方に唐箕22と該唐箕22からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚24を設け、該揺動選別棚24の終端上方に前記唐箕22からの送風を吸引する吸引排塵ファン34を設け、該吸引排塵ファン34と前記脱穀室14の排出口48との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴55を設け、該拡散胴55と前記脱穀装置3の脱穀室14に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12とは走行速度に応じて回転速度を変更するようにしたコンバイン。
【解決手段】走行装置2の上方に脱穀装置3を設け、走行装置2の前方に刈取装置5を設け、前記脱穀装置3は、扱胴20を軸装した脱穀室14の下方に唐箕22と該唐箕22からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚24を設け、該揺動選別棚24の終端上方に前記唐箕22からの送風を吸引する吸引排塵ファン34を設け、該吸引排塵ファン34と前記脱穀室14の排出口48との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴55を設け、該拡散胴55と前記脱穀装置3の脱穀室14に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12とは走行速度に応じて回転速度を変更するようにしたコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置の脱穀室に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置の下方に回転体を設け、回転体は穀稈供給搬送装置の搬送速度に対して、速くあるいは遅く回転させて、刺さり粒を回収するとした構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、刺さり粒を回収するため、搬送中の穀稈をほぐすように、搬送穀稈に回転体を接触させる構成である。
そのため、回転体の回転速度と穀稈供給搬送装置の搬送速度とは、速くあるいは遅い速度差を生じる構成としている。
しかし、公知例の回転体は、刺さり粒を回収するためのものであり、脱穀室からの被処理物を拡散させるものではないので、揺動選別棚上の被処理物の均分化には効果がない。
本願は、脱穀室の下手側の風選室内に拡散胴を設けることにより、揺動選別棚上の被処理物の均分化を図り、選別効率を向上させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、走行装置(2)の上方に脱穀装置(3)を設け、走行装置(2)の前方に刈取装置(5)を設け、前記脱穀装置(3)は、扱胴(20)を軸装した脱穀室(14)の下方に唐箕(22)と該唐箕(22)からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚(24)を設け、該揺動選別棚(24)の終端上方に前記唐箕(22)からの送風を吸引する吸引排塵ファン(34)を設け、該吸引排塵ファン(34)と前記脱穀室(14)の排出口(48)との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴(55)を設け、該拡散胴(55)と前記脱穀装置(3)の脱穀室(14)に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)とは走行速度に応じて回転速度を変更するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、回転する扱胴(20)により脱穀された被処理物は扱網21より揺動選別棚(24)上に落下し、揺動選別棚(24)の揺動と唐箕(22)からの送風により揺動選別して穀粒を回収し、脱穀室(14)の排出口(48)から排出された藁屑等は拡散胴(55)により拡散させながら穀粒を揺動選別棚(24)に落下させ、藁屑は拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させる。
そして、拡散胴(55)と穀稈供給搬送装置(12)とを走行速度に応じて回転速度を変更するので、最適状態で作動する。
請求項2の発明は、前記穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度が速いときは高速回転とし、走行速度が遅いときは低速に切り替えて脱穀選別作業を行う。
請求項3の発明は、前記脱穀室(14)の排出口(48)の下方と前記揺動選別棚(24)との間に前側ラック(49)を設け、該前側ラック(49)の下手側にはシーブ(50)を設け、該シーブ(50)の下手側には後側ラック(51)を左右方向複数並設し、該後側ラック(51)と前記吸引排塵ファン(34)の間に前記拡散胴(55)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、脱穀室(14)の排出口(48)から排出された脱穀物を前側ラック(49)の揺動で風選して穀粒を揺動選別棚(24)に落下させ、藁屑はシーブ(50)に送って更に風選し、シーブ(50)から後側ラック(51)に移送された藁屑は拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込まれ、機外に排出させる。
請求項4の発明は、前記後側ラック(51)のうち、平面視で前記拡散胴(55)とオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに傾斜させ、前記後側ラック(51)のうち、平面視拡散胴(55)の下側にオーバーラップする第二後側ラック(51B)は前記第一後側ラック(51A)よりも後上がり緩傾斜させたことを特徴とするコンバインとしたものであり、後側ラック(51)のうち拡散胴(55)と平面視でオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに急傾斜しているので、吸引排塵ファン(34)への送り込みを円滑に行い、後側ラック(51)のうち拡散胴(55)と平面視でオーバーラップしない第二後側ラック(51B)は第一後側ラック(51A)よりも後上がりに緩傾斜しているので、被処理物の移送を円滑にする。
請求項5の発明では、前記第二後側ラック(51B)の下方には、ガイド板(60)を設け、該ガイド板(60)の後端は拡散胴(55)の中心下方位置に臨ませたことを特徴とするコンバインとしたものであり、後側ラック(51)から落下した藁屑はガイド板(60)により拡散胴(55)へ向けて移送され、拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、拡散胴(55)と穀稈供給搬送装置(12)との回転速度を走行速度に応じて変速するので、脱穀室(14)の排出口(48)から排出される藁屑を吸引排塵ファン(34)によって円滑に排出でき、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項2の発明では、上記請求項1記載の発明の効果に加え、穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度を高速と低速との二段切替えとしているので、簡素な構成で、脱穀室(14)の排出口(48)からの藁屑の吸引排塵ファン(34)による排出を良好にでき、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項3の発明では、上記請求項1記載または請求項2記載の発明の効果に加え、前側ラック(49)とシーブ(50)と後側ラック(51)の存在により脱穀室(14)の排出口(48)から拡散胴(55)に至る間の脱穀物の処理効率を向上させることができ、これにより、拡散胴(55)による吸引排塵ファン(34)への送り込み作用を促進させることができ、そのため、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項4の発明では、上記請求項3記載の発明の効果に加え、第一後側ラック(51A)によって拡散胴(55)の吸引排塵ファン(34)への送り込み作用の促進と、第二後側ラック(51B)によって、被処理物の移送の円滑かとを両立させることができる。
請求項5の発明では、上記請求項4記載の発明の効果に加え、後側ラック(51)から落下した藁屑をガイド板(60)により拡散胴(55)へ向けて移送して、拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させるので、揺動選別棚(24)へ落下する藁屑の落下量を減少させることができ、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の概略縦断側面図。
【図3】同平面図。
【図4】同背面図。
【図5】同概略縦断側面図。
【図6】回転伝達機構概略図。
【図7】ギヤボックスの断面図。
【図8】前側ラックと規制体の概略斜視図。
【図9】脱穀装置の概略平面図。
【図10】同側面図。
【図11】排塵処理装置の下方に送風ファンを設けた脱穀装置の背面図。
【図12】同平面図。
【図13】同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1は機体フレームであり、機体フレーム1の下方には走行装置2を設け、機体フレーム1の上方には脱穀装置3を設ける。4は刈取装置、5はグレンタンク、6は操縦部である。
前記刈取装置4には、最先端位置に分草装置8を左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設け、刈刃10の上方の後側には刈刃10によって刈り取った穀稈を搬送する穀稈搬送装置11を設ける。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
前記脱穀装置3の脱穀室14の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12を設ける。穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13は、車速走行速度に応じて回転速度を変更するように構成する。
【0009】
前記穀稈供給搬送装置12の搬送速度は、走行速度に応じて回転速度を変更するように構成する。穀稈供給搬送装置12の搬送速度を変更する構成は任意であるが、一例を示すと、穀稈供給搬送装置12に伝達する回転を出力するギアボックス15内に高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17を設け、シフタ18により伝達を切り替えて、変速する構成としている(図7)。
前記脱穀装置3の一例を示すと、脱穀室14に扱胴20を軸装し、扱胴20の主として下方側は扱網21により包囲し、扱網21の下方には唐箕22を設け、前記脱穀室14の下方には前記唐箕22の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室23を形成する。
風選室23内には、唐箕22の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚24により構成した揺動選別装置25を設ける。
揺動選別装置25の揺動選別棚24の始端部(前端部)は唐箕ケーシング26の上方に位置させて移送棚部27に形成する。移送棚部27の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部27の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置25の移送方向下手側のシーブ30に向けて扱網21からの落下物を移送できればよい。
【0010】
31はシーブ30の下手側に設けたストローラック31、32は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア32、33は一番コンベア32の後側に設けた二番コンベア33、34は吸引排塵ファン34、35は吸引排塵ファン34のケーシング35、40は脱穀室14の後部の連通口41で連通する排塵処理装置、42は排塵処理胴42、43は排塵処理歯43、44は二番処理装置44、45は二番処理胴45、46は二番処理歯46である。
前記脱穀室14の排出口48の下方と前記揺動選別棚24のシーブ30との間には前側ラック49を設ける。前側ラック49の下手側にはシーブ50を設け、シーブ50の下手側には後側ラック51を設ける。
前側ラック49とシーブ50と後側ラック51は取付部材52を介して揺動選別棚24に取付け、揺動選別棚24と一体的に往復揺動する。
【0011】
前記吸引排塵ファン34は、軸心方向を左右方向とし、所謂横断流ファンにより形成し、吸引排塵ファン34のケーシング35の吸引口54と前記後側ラック51との間に軸心方向を左右方向とする拡散胴55を設ける。拡散胴55は、その外周に被処理物を拡散させる処理歯56を有して構成する。
前記排出口48からは、脱穀室14内で発生して扱網21から落下しない大きめの藁屑が排出されるので、拡散胴55により、藁屑の拡散処理を行って、藁屑中の穀粒の回収効率を向上させ、また、排出口48から排出された藁屑を吸引排塵ファン34により吸引排出して揺動選別棚24への落下を抑制して揺動選別装置25の選別負荷を軽減させて、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
この拡散胴55は、走行速度に応じて回転速度を変更する構成とする。
そのため、車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を速く回転させることにより、拡散能力を向上させる。
【0012】
また、車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を遅く回転させることにより、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
前記拡散胴55の回転速度は、走行速度に応じて、無段階に変速する構成としてもよいが、高速と低速との二段階に変速する構成とすると、構成が簡素で、安価となる。
また、高速と低速との二段階に変速するので、車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を高速回転させることにより、拡散能力を向上させる。
また、車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を低速回転させることにより、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
前記拡散胴55の回転速度は、前記ギアボックス15内の高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17との伝達経路をシフタ18により切り替えて変速する(図7)。
67Aはギヤボックス15の入力プーリ、67Bはギヤボックス15の出力歯車、67Cは高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17との伝達を切り替えるクラッチである。
【0013】
拡散胴55の回転軸57に歯車55Aを設け、穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13に噛み合わせる。
したがって、車速走行速度に応じて穀稈供給搬送装置12の搬送速度と拡散胴55の回転速度が変速される。
前記後側ラック51のうち、平面視で前記拡散胴55とオーバーラップしない第一後側ラック51Aは後上がりに傾斜させ、前記後側ラック51のうち、平面視拡散胴55の下側にオーバーラップする第二後側ラック51Bは前端から後端にかけて終始略水平に形成する。
そのため、拡散胴55の下側では後側ラック51により拡散胴55に排塵物を送り、拡散胴55による拡散作用の向上を図る。
また、拡散胴55のないところではスムーズな後方への排出を促進する。
即ち、拡散胴55の上手側では上向きにした後側ラック51により拡散胴55に排塵物を送って引継の良好化を図るが、拡散胴55のないところで後側ラック51の後端を上向きにすると、排塵物の送りの抵抗となるので、後側ラック51を略水平にすることでスムーズな後方への排出を促進させる。
前記後側ラック51の下方には、ガイド板60を設ける。ガイド板60の後端は拡散胴55の中心下方位置に臨ませる。
【0014】
そのため、ガイド板60により排塵物の送り作用が向上し、拡散胴55による排出効果が向上する。
前記前側ラック49の上面には、規制体61を設ける。規制体61は縦板状に形成し、その上面に下手側に移送する突起部62を形成する。
前記排塵処理装置40は穀稈供給搬送装置12と反対側に設けられ、排塵処理装置40から落下する落下物には排塵処理装置40により処理されているので藁屑があまり含まれていないから、排塵処理装置40側の揺動選別棚24上を吸引する必要がなく、吸引排塵ファン34は揺動選別棚24の左右幅より狭く構成している。
そのため、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55により拡散された拡散物が排塵処理装置40側の揺動選別棚24上に落下することは、好ましくないので、シーブ50に規制体61を設け、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55からの拡散物と排塵処理装置40からの被処理物とが混じるのを規制する。
その結果、揺動選別棚24の選別負荷を減少させ、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
【0015】
なお、図8では、規制体61を、揺動選別棚24の揺動方向と平行に配置しているが、後部に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に近づくように傾斜させてもよい。
しかして、図6は、拡散胴55への回転伝達経路の概略を示したものであり、63はエンジンの回転を伝達する中間伝達軸、64A、64Bはプーリ、65はセカンドファンであり、中間伝達軸63の回転が唐箕22とセカンドファン65および一番コンベア32と二番コンベア33に伝達される。
前記一番コンベア32の回転軸66には中間プーリ67を設け、中間プーリ67の回転を前記ギヤボックス15に入力する。
したがって、前記したように、拡散胴55の回転軸57の歯車55Aを稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13に噛み合わせているので、ギヤボックス15からの出力回転は穀稈供給搬送装置12の搬送チエン13に伝達され、搬送チエン13の回転が歯車55Aを介して拡散胴55に伝達され、それゆえ、穀稈供給搬送装置12と拡散胴55とは、走行速度に応じて同期しながら変速させられる。
また、中間プーリ67の回転は、機体後部に設けたカッター70に伝達する構成とする。カッター70のカッタ軸71の機体左側には中間入力プーリ72Aを設け、右側には中間出力プーリ72Bを設け、中間出力プーリ72Bの回転を穀稈供給搬送装置12の終端に設けた排藁搬送装置75に伝達させる構成とする。
【0016】
そのため、扱胴20の後方の脱穀装置3内に排藁搬送装置75への伝動機構を設けなくて済み、藁溜まり現象の発生を防止でき、また、製造組立が容易になって安価に提供でき、また、メンテナンスも容易になる。
前記グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の脱穀装置3の側面77に伝動ケース78を固定し、伝動ケース78には前記カッタ軸71と略平行に中間軸79を軸装し、中間軸79のプーリ80と中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回す。
伝動ケース78には排藁出力軸82を軸装し、排藁出力軸82には駆動歯車83を一対設け、各駆動歯車83に排藁搬送装置75の穂先排藁搬送ラグ84Aを取り付けたチエン84Bと株元排藁チエン85を夫々掛け回す。
前記排藁搬送装置75は、伝動ケース78を回動支点として、穂先排藁チエン84Bおよび株元排藁チエン85の先端がオープン回動するように構成する。
【0017】
即ち、前記排藁出力軸82に穂先排藁チエン84Bと株元排藁チエン85のチエンフレーム86を取付け、チエンフレーム86の先端を排藁出力軸82中心に上方回動する構成とする。
そのため、排藁搬送装置75のオープン構成を簡素にでき、安価に提供できる。
また、塵埃の溜まりや吹き出しもなくせる。
即ち、脱穀室14の終端と排藁搬送装置75との間に、排藁搬送装置75への回転伝達機構を設ける必要がなくなり、伝動機構への塵埃の溜まりを防止でき、その結果、塵埃が選別風によって四番口から引き出されるのを防止する。
87は排藁搬送装置75のチエンフレーム86を固定する取付部である。
しかして、図11〜図13は、排塵処理装置40の下方に送風ファン88を設けた実施例を示し、送風ファン88は所謂横断流ファンにより構成し、軸心方向を排塵処理装置40の排塵処理胴42と平行の前後方向とする。送風ファン88の外周はファンケーシング89により包囲し、ファンケーシング89の右側に吸引口90を開口させる。ファンケーシング89の左側には送風口91を開口させる。送風口91は排塵処理装置40と揺動選別棚24の上面との間に開口させる。
【0018】
送風ファン88は、揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に送風する。
そのため、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物は穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
送風ファン88の送風口91は、背面視において、排塵処理装置40の排出口92の下方か、排出口92よりも右側に配置する。
即ち、排塵処理装置40からの被処理物の落下軌跡よりも右側に配置する。
そのため、排塵処理装置40から落下する被処理物は、落下直後から送風ファン88の送風を受け、揺動選別棚24の穀稈供給搬送装置12側に拡散させられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
前記送風ファン88は、前記脱穀室14の終端から排塵処理装置40の排塵処理胴42の終端の間に亘って設ける。
そのため、脱穀室14の終端から送風ファン88の送風が作用するので、被処理物の均分化および風選が広範囲で行われ、選別性能および脱穀ロスの抑制の性能を向上させられる。
【0019】
そして、図3および図4に示すように、前記排塵処理装置40と前記二番処理装置44は、前記二番処理装置44の二番処理胴45を最も小径に形成し、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうち前記脱穀室14との連通口41に臨む前側排塵処理胴42Aを二番処理胴45よりも大径に形成し、更に、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうちの前側排塵処理胴42Aよりも後側の後側排塵処理胴42Bを最も大径に形成する構成とする。
そのため、脱穀室14と排塵処理装置40との引継部の前側排塵処理胴42Aを小径とすることにより。排塵処理装置40への取込性能を向上させられる。
また、後側の後側排塵処理胴42Bを大径に形成することにより、排塵処理能率を向上させられる。
また、二番処理装置44の二番処理胴45は、被処理物の充填率を高くすると、枝梗除去能率を向上させられるので、二番処理胴45を小径に形成することで、空間部を小さくして充填率を高くしている。
【0020】
前記排塵処理装置40のうち、後側排塵処理胴42Bの排塵処理歯43の移動軌跡を、前記扱胴20の扱歯93の移動軌跡と背面視において重なるように配置する。
その結果、排塵処理胴42の外径を大きくしつつ、脱穀装置3の機体幅を小さくすることができる。
【0021】
(実施例の作用)
走行装置2により走行して刈取装置4により圃場の穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀装置3に供給する。
脱穀装置3では、回転する扱胴20により穀稈を脱穀した被処理物は扱網21より揺動選別棚24上に落下し、揺動選別棚24の揺動と唐箕22からの送風により揺動選別し、揺動選別棚24のシーブ22の隙間から穀粒を落下させて一番コンベア32により回収し、藁屑等はシーブ22の隙間から落下させずに後方に送って選別する。
脱穀室14内で脱穀処理されて扱網21より落下しなかった被処理物のうちの一部は排塵処理装置40に入って、排塵処理胴42により排塵処理され、穀粒は揺動選別棚24上に落下する。
【0022】
また、脱穀室14内で脱穀処理されて扱網21より落下せず、しかも、排塵処理装置40に入らなかった被処理物は、排出口48から前側ラック49上に落下して、被処理物中から穀粒を揺動選別棚24上に落下させる。
そして、前側ラック49上に落下した被処理物中はシーブ50上に落下する。
シーブ50は揺動選別棚24に設けられて、揺動選別棚24と共に往復揺動するので、シーブ50の揺動と唐箕22に送風により被処理物から穀粒を風選して、揺動選別棚24上に落下させる。
シーブ50上の被処理物は、シーブ50の揺動により下手側に移送され、移送中に風選される。
【0023】
シーブ50により下手側に移送された被処理物は後側ラック51上にいたり、後側ラック51の揺動と唐箕22の送風により被処理物から穀粒を風選して、揺動選別棚24上に落下させる。
後側ラック51の終端および揺動選別棚24の終端まで移送された藁屑等は吸引排塵ファン34により機外に吸引排出される。
吸引排塵ファン34のケーシング35の吸引口54と後側ラック51の終端との間に軸心方向を左右方向とする拡散胴55を設けているから、後側ラック51の終端まで移送された藁屑等の被処理物は、駆動回転する拡散胴55により拡散し、唐箕22の送風により風選される。
【0024】
即ち、脱穀室14の排出口48からは、脱穀室14内で発生した大きめの藁屑が排出されるので、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55により、藁屑の拡散処理を行って、藁屑中の穀粒の回収効率を向上させ、また、排出口48から排出された藁屑を吸引排塵ファン34により吸引排出して揺動選別棚24への落下を抑制して揺動選別装置25の選別負荷を軽減させて、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
この拡散胴55は、走行速度に応じて回転速度を変更する構成とし、走行車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を速く回転させるので、拡散能力を向上させると共に、吸引排塵ファン34への藁屑の引継を促進させて吸引排出し、揺動選別棚24への落下を抑制することにより揺動選別装置25の選別負荷を軽減させる。
反対に、走行車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を遅く回転させるので、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
【0025】
拡散胴55の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成とすると、作業状態に応じて、拡散胴55を適切に回転させると共に、構成を簡素にできて、選別能率を向上させる拡散胴55を安価に提供できる。
後側ラック51のうち、拡散胴55の処理歯56とオーバーラップしない第一後側ラック51Aは後上がり傾斜させ、前記後側ラック51のうち、拡散胴55の処理歯56から外れた第二後側ラック51Bは前端から後端にかけて終始略水平に形成しているので、拡散胴55の前側では上向きの第一後側ラック51Aにより排塵物を効率的に拡散胴55に送ることができ、拡散胴55による拡散作用の向上が図れる。
また、拡散胴55のないところでは終始略水平の第二後側ラック51Bによりスムーズな後方への排出を促進する。
【0026】
後側ラック51の下方には、ガイド板60を設けているので、ガイド板60により排塵物の送り作用が向上し、拡散胴55による排出効果が向上する。
また、シーブ50の上面所定位置には、上方に起立する規制体61を設けているので、排塵処理装置40から落下する被処理物が排出口48から揺動選別棚24上に落下した被処理物に混合しないように、規制する。
そのため、排塵処理装置40から落下する被処理物が吸引排塵ファン34により吸引排出されるのを抑制し、選別ロスの発生を抑制する。
即ち、排塵処理装置40から落下する被処理物は排塵処理装置40により処理されているので藁屑があまり含まれず、排塵処理装置40側の揺動選別棚24上を吸引排塵ファン34により吸引する必要があまりないので、吸引排塵ファン34は揺動選別棚24の左右幅より幾分狭く構成して排塵処理装置40側から離しており、拡散胴55により拡散された拡散物が排塵処理装置40から落下した被処理物に混じるのは好ましくないので、シーブ50に規制体61を設け、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55からの拡散物と排塵処理装置40からの被処理物とが混じるのを規制する。
【0027】
その結果、揺動選別棚24の選別負荷を減少させ、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
なお、規制体61を、後部に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に近づくように平面視において、傾斜させると、揺動選別棚24上の被処理物を均等にする作用も期待でき、好適である。
しかして、穀稈供給搬送装置12に続いて排藁を搬送する排藁搬送装置75には、脱穀装置3の機体後部に設けたカッター70に伝達した回転を機体外側に設けた伝動機構Pにより駆動する構成としているので、扱胴20の後方の脱穀装置3内に排藁搬送装置75への伝動機構を設けなくて済み、藁溜まり現象の発生を防止でき、また、製造組立が容易になって安価に提供でき、また、メンテナンスも容易になる。
即ち、エンジンからの回転をカッター70のカッタ軸71の機体左側に入力し、カッタ軸71の右側には中間出力プーリ72Bを設け、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の脱穀装置3の側面77に伝動ケース78を固定し、伝動ケース78には前記カッタ軸71と略平行に中間軸79を軸装し、中間軸79のプーリ80と前記中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回しているので、中間出力プーリ72Bの回転を穀稈供給搬送装置12の終端に設けた排藁搬送装置75に伝達させる。
【0028】
そのため、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の空間に伝動ケース78を設けているので、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の空間を有効利用できる。
伝動ケース78にはカッタ軸71と略平行の中間軸79を設け、中間軸79のプーリ80と中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回しているので、伝動機構を最短にしてコンパクトに構成できる。
排藁搬送装置75は、伝動ケース78を回動支点として、穂先排藁チエン84Bおよび株元排藁チエン85の先端がオープン回動するように構成しているので、排藁搬送装置75のオープン構成を簡素にでき、安価に提供できる。
しかして、図11〜図13の送風ファン88を設けた実施例では、排塵処理装置40の下方に風選室23に向けて外気を吸引して送風する送風ファン88を設けているので、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物は穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
【0029】
送風ファン88は、ファンケーシング89の吸引口90から外気を吸引して、送風口91から揺動選別棚24に向けて送風する。
送風口91は揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に開口しているので、送風ファン88の送風は揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に流れ、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物を穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せる。
この送風口91は、排塵処理装置40と揺動選別棚24の上面との間に開口させているので、排塵処理装置40から落下する被処理物は、落下直後から送風ファン88の送風を受け、揺動選別棚24の穀稈供給搬送装置12側に拡散させられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
送風ファン88は、前記脱穀室14の終端から排塵処理装置40の排塵処理胴42の終端の間に亘って設けているので、脱穀室14の終端から送風ファン88の送風が作用するので、被処理物の均分化および風選が広範囲で行われ、選別性能および脱穀ロスの抑制の性能を向上させられる。
【0030】
排塵処理装置40と二番処理装置44とは、二番処理装置44の二番処理胴45を最も小径に形成し、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうち脱穀室14との連通口41に臨む前側排塵処理胴42Aを二番処理胴45よりも大径に形成し、更に、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうちの前側排塵処理胴42Aよりも後側の後側排塵処理胴42Bを最も大径に形成する構成しているので(図3)、脱穀室14と排塵処理装置40との引継部の前側排塵処理胴42Aを小径とすることにより。排塵処理装置40への取込性能を向上させられる。
また、後側の後側排塵処理胴42Bを大径に形成することにより、排塵処理能率を向上させられる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0031】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…分草装置、9…引起装置、10…刈刃、11…穀稈搬送装置、12…穀稈供給搬送装置、14…脱穀室、20…扱胴、14…脱穀室、21…扱網、22…唐箕、23…風選室、24…揺動選別棚、25…揺動選別装置、26…唐箕ケーシング、27…移送棚部、30…シーブ、31…ストローラック、32…一番コンベア、33…二番コンベア、34…吸引排塵ファン、35…ケーシング、40…排塵処理装置、41…連通口、42…排塵処理胴、43…排塵処理歯、44…二番処理装置、45…二番処理胴、46…二番処理歯、48…排出口、49…前側ラック、50…シーブ、51…後側ラック、54…吸引口、55…拡散胴、56…処理歯、60…ガイド板、61…規制体、63…中間伝達軸、64…プーリ、65…セカンドファン、66…回転軸、67…中間プーリ、70…カッター、71…カッタ軸、72B…中間出力プーリ、75…排藁搬送装置、76…カッターカバー、77…側面、78…伝動ケース、79…中間軸、80…プーリ、81…ベルト、82…排藁出力軸、83…駆動歯車、84B…穂先排藁搬送ラグ取付チエン、85…株元排藁チエン、86…チエンフレーム、88…送風ファン、89…ファンケーシング、90…吸引口、91…送風口、92…排出口、93…扱歯。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置の脱穀室に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置の下方に回転体を設け、回転体は穀稈供給搬送装置の搬送速度に対して、速くあるいは遅く回転させて、刺さり粒を回収するとした構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、刺さり粒を回収するため、搬送中の穀稈をほぐすように、搬送穀稈に回転体を接触させる構成である。
そのため、回転体の回転速度と穀稈供給搬送装置の搬送速度とは、速くあるいは遅い速度差を生じる構成としている。
しかし、公知例の回転体は、刺さり粒を回収するためのものであり、脱穀室からの被処理物を拡散させるものではないので、揺動選別棚上の被処理物の均分化には効果がない。
本願は、脱穀室の下手側の風選室内に拡散胴を設けることにより、揺動選別棚上の被処理物の均分化を図り、選別効率を向上させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、走行装置(2)の上方に脱穀装置(3)を設け、走行装置(2)の前方に刈取装置(5)を設け、前記脱穀装置(3)は、扱胴(20)を軸装した脱穀室(14)の下方に唐箕(22)と該唐箕(22)からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚(24)を設け、該揺動選別棚(24)の終端上方に前記唐箕(22)からの送風を吸引する吸引排塵ファン(34)を設け、該吸引排塵ファン(34)と前記脱穀室(14)の排出口(48)との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴(55)を設け、該拡散胴(55)と前記脱穀装置(3)の脱穀室(14)に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)とは走行速度に応じて回転速度を変更するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、回転する扱胴(20)により脱穀された被処理物は扱網21より揺動選別棚(24)上に落下し、揺動選別棚(24)の揺動と唐箕(22)からの送風により揺動選別して穀粒を回収し、脱穀室(14)の排出口(48)から排出された藁屑等は拡散胴(55)により拡散させながら穀粒を揺動選別棚(24)に落下させ、藁屑は拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させる。
そして、拡散胴(55)と穀稈供給搬送装置(12)とを走行速度に応じて回転速度を変更するので、最適状態で作動する。
請求項2の発明は、前記穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成としたことを特徴とするコンバインとしたものであり、穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度が速いときは高速回転とし、走行速度が遅いときは低速に切り替えて脱穀選別作業を行う。
請求項3の発明は、前記脱穀室(14)の排出口(48)の下方と前記揺動選別棚(24)との間に前側ラック(49)を設け、該前側ラック(49)の下手側にはシーブ(50)を設け、該シーブ(50)の下手側には後側ラック(51)を左右方向複数並設し、該後側ラック(51)と前記吸引排塵ファン(34)の間に前記拡散胴(55)を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、脱穀室(14)の排出口(48)から排出された脱穀物を前側ラック(49)の揺動で風選して穀粒を揺動選別棚(24)に落下させ、藁屑はシーブ(50)に送って更に風選し、シーブ(50)から後側ラック(51)に移送された藁屑は拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込まれ、機外に排出させる。
請求項4の発明は、前記後側ラック(51)のうち、平面視で前記拡散胴(55)とオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに傾斜させ、前記後側ラック(51)のうち、平面視拡散胴(55)の下側にオーバーラップする第二後側ラック(51B)は前記第一後側ラック(51A)よりも後上がり緩傾斜させたことを特徴とするコンバインとしたものであり、後側ラック(51)のうち拡散胴(55)と平面視でオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに急傾斜しているので、吸引排塵ファン(34)への送り込みを円滑に行い、後側ラック(51)のうち拡散胴(55)と平面視でオーバーラップしない第二後側ラック(51B)は第一後側ラック(51A)よりも後上がりに緩傾斜しているので、被処理物の移送を円滑にする。
請求項5の発明では、前記第二後側ラック(51B)の下方には、ガイド板(60)を設け、該ガイド板(60)の後端は拡散胴(55)の中心下方位置に臨ませたことを特徴とするコンバインとしたものであり、後側ラック(51)から落下した藁屑はガイド板(60)により拡散胴(55)へ向けて移送され、拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、拡散胴(55)と穀稈供給搬送装置(12)との回転速度を走行速度に応じて変速するので、脱穀室(14)の排出口(48)から排出される藁屑を吸引排塵ファン(34)によって円滑に排出でき、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項2の発明では、上記請求項1記載の発明の効果に加え、穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度を高速と低速との二段切替えとしているので、簡素な構成で、脱穀室(14)の排出口(48)からの藁屑の吸引排塵ファン(34)による排出を良好にでき、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項3の発明では、上記請求項1記載または請求項2記載の発明の効果に加え、前側ラック(49)とシーブ(50)と後側ラック(51)の存在により脱穀室(14)の排出口(48)から拡散胴(55)に至る間の脱穀物の処理効率を向上させることができ、これにより、拡散胴(55)による吸引排塵ファン(34)への送り込み作用を促進させることができ、そのため、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項4の発明では、上記請求項3記載の発明の効果に加え、第一後側ラック(51A)によって拡散胴(55)の吸引排塵ファン(34)への送り込み作用の促進と、第二後側ラック(51B)によって、被処理物の移送の円滑かとを両立させることができる。
請求項5の発明では、上記請求項4記載の発明の効果に加え、後側ラック(51)から落下した藁屑をガイド板(60)により拡散胴(55)へ向けて移送して、拡散胴(55)により吸引排塵ファン(34)に送り込んで機外に排出させるので、揺動選別棚(24)へ落下する藁屑の落下量を減少させることができ、揺動選別装置(25)の選別負荷を軽減でき、選別精度および選別効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の概略縦断側面図。
【図3】同平面図。
【図4】同背面図。
【図5】同概略縦断側面図。
【図6】回転伝達機構概略図。
【図7】ギヤボックスの断面図。
【図8】前側ラックと規制体の概略斜視図。
【図9】脱穀装置の概略平面図。
【図10】同側面図。
【図11】排塵処理装置の下方に送風ファンを設けた脱穀装置の背面図。
【図12】同平面図。
【図13】同側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1は機体フレームであり、機体フレーム1の下方には走行装置2を設け、機体フレーム1の上方には脱穀装置3を設ける。4は刈取装置、5はグレンタンク、6は操縦部である。
前記刈取装置4には、最先端位置に分草装置8を左右に並設し、各分草装置8の後側に分草装置8が分草した穀稈を引起す引起装置9を設け、引起装置9の後側には刈刃10を設け、刈刃10の上方の後側には刈刃10によって刈り取った穀稈を搬送する穀稈搬送装置11を設ける。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
前記脱穀装置3の脱穀室14の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12を設ける。穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13は、車速走行速度に応じて回転速度を変更するように構成する。
【0009】
前記穀稈供給搬送装置12の搬送速度は、走行速度に応じて回転速度を変更するように構成する。穀稈供給搬送装置12の搬送速度を変更する構成は任意であるが、一例を示すと、穀稈供給搬送装置12に伝達する回転を出力するギアボックス15内に高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17を設け、シフタ18により伝達を切り替えて、変速する構成としている(図7)。
前記脱穀装置3の一例を示すと、脱穀室14に扱胴20を軸装し、扱胴20の主として下方側は扱網21により包囲し、扱網21の下方には唐箕22を設け、前記脱穀室14の下方には前記唐箕22の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室23を形成する。
風選室23内には、唐箕22の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚24により構成した揺動選別装置25を設ける。
揺動選別装置25の揺動選別棚24の始端部(前端部)は唐箕ケーシング26の上方に位置させて移送棚部27に形成する。移送棚部27の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部27の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置25の移送方向下手側のシーブ30に向けて扱網21からの落下物を移送できればよい。
【0010】
31はシーブ30の下手側に設けたストローラック31、32は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア32、33は一番コンベア32の後側に設けた二番コンベア33、34は吸引排塵ファン34、35は吸引排塵ファン34のケーシング35、40は脱穀室14の後部の連通口41で連通する排塵処理装置、42は排塵処理胴42、43は排塵処理歯43、44は二番処理装置44、45は二番処理胴45、46は二番処理歯46である。
前記脱穀室14の排出口48の下方と前記揺動選別棚24のシーブ30との間には前側ラック49を設ける。前側ラック49の下手側にはシーブ50を設け、シーブ50の下手側には後側ラック51を設ける。
前側ラック49とシーブ50と後側ラック51は取付部材52を介して揺動選別棚24に取付け、揺動選別棚24と一体的に往復揺動する。
【0011】
前記吸引排塵ファン34は、軸心方向を左右方向とし、所謂横断流ファンにより形成し、吸引排塵ファン34のケーシング35の吸引口54と前記後側ラック51との間に軸心方向を左右方向とする拡散胴55を設ける。拡散胴55は、その外周に被処理物を拡散させる処理歯56を有して構成する。
前記排出口48からは、脱穀室14内で発生して扱網21から落下しない大きめの藁屑が排出されるので、拡散胴55により、藁屑の拡散処理を行って、藁屑中の穀粒の回収効率を向上させ、また、排出口48から排出された藁屑を吸引排塵ファン34により吸引排出して揺動選別棚24への落下を抑制して揺動選別装置25の選別負荷を軽減させて、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
この拡散胴55は、走行速度に応じて回転速度を変更する構成とする。
そのため、車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を速く回転させることにより、拡散能力を向上させる。
【0012】
また、車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を遅く回転させることにより、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
前記拡散胴55の回転速度は、走行速度に応じて、無段階に変速する構成としてもよいが、高速と低速との二段階に変速する構成とすると、構成が簡素で、安価となる。
また、高速と低速との二段階に変速するので、車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を高速回転させることにより、拡散能力を向上させる。
また、車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を低速回転させることにより、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
前記拡散胴55の回転速度は、前記ギアボックス15内の高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17との伝達経路をシフタ18により切り替えて変速する(図7)。
67Aはギヤボックス15の入力プーリ、67Bはギヤボックス15の出力歯車、67Cは高速伝達用歯車16と低速伝達用歯車17との伝達を切り替えるクラッチである。
【0013】
拡散胴55の回転軸57に歯車55Aを設け、穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13に噛み合わせる。
したがって、車速走行速度に応じて穀稈供給搬送装置12の搬送速度と拡散胴55の回転速度が変速される。
前記後側ラック51のうち、平面視で前記拡散胴55とオーバーラップしない第一後側ラック51Aは後上がりに傾斜させ、前記後側ラック51のうち、平面視拡散胴55の下側にオーバーラップする第二後側ラック51Bは前端から後端にかけて終始略水平に形成する。
そのため、拡散胴55の下側では後側ラック51により拡散胴55に排塵物を送り、拡散胴55による拡散作用の向上を図る。
また、拡散胴55のないところではスムーズな後方への排出を促進する。
即ち、拡散胴55の上手側では上向きにした後側ラック51により拡散胴55に排塵物を送って引継の良好化を図るが、拡散胴55のないところで後側ラック51の後端を上向きにすると、排塵物の送りの抵抗となるので、後側ラック51を略水平にすることでスムーズな後方への排出を促進させる。
前記後側ラック51の下方には、ガイド板60を設ける。ガイド板60の後端は拡散胴55の中心下方位置に臨ませる。
【0014】
そのため、ガイド板60により排塵物の送り作用が向上し、拡散胴55による排出効果が向上する。
前記前側ラック49の上面には、規制体61を設ける。規制体61は縦板状に形成し、その上面に下手側に移送する突起部62を形成する。
前記排塵処理装置40は穀稈供給搬送装置12と反対側に設けられ、排塵処理装置40から落下する落下物には排塵処理装置40により処理されているので藁屑があまり含まれていないから、排塵処理装置40側の揺動選別棚24上を吸引する必要がなく、吸引排塵ファン34は揺動選別棚24の左右幅より狭く構成している。
そのため、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55により拡散された拡散物が排塵処理装置40側の揺動選別棚24上に落下することは、好ましくないので、シーブ50に規制体61を設け、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55からの拡散物と排塵処理装置40からの被処理物とが混じるのを規制する。
その結果、揺動選別棚24の選別負荷を減少させ、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
【0015】
なお、図8では、規制体61を、揺動選別棚24の揺動方向と平行に配置しているが、後部に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に近づくように傾斜させてもよい。
しかして、図6は、拡散胴55への回転伝達経路の概略を示したものであり、63はエンジンの回転を伝達する中間伝達軸、64A、64Bはプーリ、65はセカンドファンであり、中間伝達軸63の回転が唐箕22とセカンドファン65および一番コンベア32と二番コンベア33に伝達される。
前記一番コンベア32の回転軸66には中間プーリ67を設け、中間プーリ67の回転を前記ギヤボックス15に入力する。
したがって、前記したように、拡散胴55の回転軸57の歯車55Aを稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13に噛み合わせているので、ギヤボックス15からの出力回転は穀稈供給搬送装置12の搬送チエン13に伝達され、搬送チエン13の回転が歯車55Aを介して拡散胴55に伝達され、それゆえ、穀稈供給搬送装置12と拡散胴55とは、走行速度に応じて同期しながら変速させられる。
また、中間プーリ67の回転は、機体後部に設けたカッター70に伝達する構成とする。カッター70のカッタ軸71の機体左側には中間入力プーリ72Aを設け、右側には中間出力プーリ72Bを設け、中間出力プーリ72Bの回転を穀稈供給搬送装置12の終端に設けた排藁搬送装置75に伝達させる構成とする。
【0016】
そのため、扱胴20の後方の脱穀装置3内に排藁搬送装置75への伝動機構を設けなくて済み、藁溜まり現象の発生を防止でき、また、製造組立が容易になって安価に提供でき、また、メンテナンスも容易になる。
前記グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の脱穀装置3の側面77に伝動ケース78を固定し、伝動ケース78には前記カッタ軸71と略平行に中間軸79を軸装し、中間軸79のプーリ80と中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回す。
伝動ケース78には排藁出力軸82を軸装し、排藁出力軸82には駆動歯車83を一対設け、各駆動歯車83に排藁搬送装置75の穂先排藁搬送ラグ84Aを取り付けたチエン84Bと株元排藁チエン85を夫々掛け回す。
前記排藁搬送装置75は、伝動ケース78を回動支点として、穂先排藁チエン84Bおよび株元排藁チエン85の先端がオープン回動するように構成する。
【0017】
即ち、前記排藁出力軸82に穂先排藁チエン84Bと株元排藁チエン85のチエンフレーム86を取付け、チエンフレーム86の先端を排藁出力軸82中心に上方回動する構成とする。
そのため、排藁搬送装置75のオープン構成を簡素にでき、安価に提供できる。
また、塵埃の溜まりや吹き出しもなくせる。
即ち、脱穀室14の終端と排藁搬送装置75との間に、排藁搬送装置75への回転伝達機構を設ける必要がなくなり、伝動機構への塵埃の溜まりを防止でき、その結果、塵埃が選別風によって四番口から引き出されるのを防止する。
87は排藁搬送装置75のチエンフレーム86を固定する取付部である。
しかして、図11〜図13は、排塵処理装置40の下方に送風ファン88を設けた実施例を示し、送風ファン88は所謂横断流ファンにより構成し、軸心方向を排塵処理装置40の排塵処理胴42と平行の前後方向とする。送風ファン88の外周はファンケーシング89により包囲し、ファンケーシング89の右側に吸引口90を開口させる。ファンケーシング89の左側には送風口91を開口させる。送風口91は排塵処理装置40と揺動選別棚24の上面との間に開口させる。
【0018】
送風ファン88は、揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に送風する。
そのため、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物は穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
送風ファン88の送風口91は、背面視において、排塵処理装置40の排出口92の下方か、排出口92よりも右側に配置する。
即ち、排塵処理装置40からの被処理物の落下軌跡よりも右側に配置する。
そのため、排塵処理装置40から落下する被処理物は、落下直後から送風ファン88の送風を受け、揺動選別棚24の穀稈供給搬送装置12側に拡散させられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
前記送風ファン88は、前記脱穀室14の終端から排塵処理装置40の排塵処理胴42の終端の間に亘って設ける。
そのため、脱穀室14の終端から送風ファン88の送風が作用するので、被処理物の均分化および風選が広範囲で行われ、選別性能および脱穀ロスの抑制の性能を向上させられる。
【0019】
そして、図3および図4に示すように、前記排塵処理装置40と前記二番処理装置44は、前記二番処理装置44の二番処理胴45を最も小径に形成し、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうち前記脱穀室14との連通口41に臨む前側排塵処理胴42Aを二番処理胴45よりも大径に形成し、更に、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうちの前側排塵処理胴42Aよりも後側の後側排塵処理胴42Bを最も大径に形成する構成とする。
そのため、脱穀室14と排塵処理装置40との引継部の前側排塵処理胴42Aを小径とすることにより。排塵処理装置40への取込性能を向上させられる。
また、後側の後側排塵処理胴42Bを大径に形成することにより、排塵処理能率を向上させられる。
また、二番処理装置44の二番処理胴45は、被処理物の充填率を高くすると、枝梗除去能率を向上させられるので、二番処理胴45を小径に形成することで、空間部を小さくして充填率を高くしている。
【0020】
前記排塵処理装置40のうち、後側排塵処理胴42Bの排塵処理歯43の移動軌跡を、前記扱胴20の扱歯93の移動軌跡と背面視において重なるように配置する。
その結果、排塵処理胴42の外径を大きくしつつ、脱穀装置3の機体幅を小さくすることができる。
【0021】
(実施例の作用)
走行装置2により走行して刈取装置4により圃場の穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀装置3に供給する。
脱穀装置3では、回転する扱胴20により穀稈を脱穀した被処理物は扱網21より揺動選別棚24上に落下し、揺動選別棚24の揺動と唐箕22からの送風により揺動選別し、揺動選別棚24のシーブ22の隙間から穀粒を落下させて一番コンベア32により回収し、藁屑等はシーブ22の隙間から落下させずに後方に送って選別する。
脱穀室14内で脱穀処理されて扱網21より落下しなかった被処理物のうちの一部は排塵処理装置40に入って、排塵処理胴42により排塵処理され、穀粒は揺動選別棚24上に落下する。
【0022】
また、脱穀室14内で脱穀処理されて扱網21より落下せず、しかも、排塵処理装置40に入らなかった被処理物は、排出口48から前側ラック49上に落下して、被処理物中から穀粒を揺動選別棚24上に落下させる。
そして、前側ラック49上に落下した被処理物中はシーブ50上に落下する。
シーブ50は揺動選別棚24に設けられて、揺動選別棚24と共に往復揺動するので、シーブ50の揺動と唐箕22に送風により被処理物から穀粒を風選して、揺動選別棚24上に落下させる。
シーブ50上の被処理物は、シーブ50の揺動により下手側に移送され、移送中に風選される。
【0023】
シーブ50により下手側に移送された被処理物は後側ラック51上にいたり、後側ラック51の揺動と唐箕22の送風により被処理物から穀粒を風選して、揺動選別棚24上に落下させる。
後側ラック51の終端および揺動選別棚24の終端まで移送された藁屑等は吸引排塵ファン34により機外に吸引排出される。
吸引排塵ファン34のケーシング35の吸引口54と後側ラック51の終端との間に軸心方向を左右方向とする拡散胴55を設けているから、後側ラック51の終端まで移送された藁屑等の被処理物は、駆動回転する拡散胴55により拡散し、唐箕22の送風により風選される。
【0024】
即ち、脱穀室14の排出口48からは、脱穀室14内で発生した大きめの藁屑が排出されるので、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55により、藁屑の拡散処理を行って、藁屑中の穀粒の回収効率を向上させ、また、排出口48から排出された藁屑を吸引排塵ファン34により吸引排出して揺動選別棚24への落下を抑制して揺動選別装置25の選別負荷を軽減させて、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
この拡散胴55は、走行速度に応じて回転速度を変更する構成とし、走行車速が速く選別処理量が多いときは、拡散胴55を速く回転させるので、拡散能力を向上させると共に、吸引排塵ファン34への藁屑の引継を促進させて吸引排出し、揺動選別棚24への落下を抑制することにより揺動選別装置25の選別負荷を軽減させる。
反対に、走行車速が遅く選別処理量が少ないときは、拡散胴55を遅く回転させるので、吸引排塵ファン34による穀粒の排出ロスの発生を抑制する。
【0025】
拡散胴55の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成とすると、作業状態に応じて、拡散胴55を適切に回転させると共に、構成を簡素にできて、選別能率を向上させる拡散胴55を安価に提供できる。
後側ラック51のうち、拡散胴55の処理歯56とオーバーラップしない第一後側ラック51Aは後上がり傾斜させ、前記後側ラック51のうち、拡散胴55の処理歯56から外れた第二後側ラック51Bは前端から後端にかけて終始略水平に形成しているので、拡散胴55の前側では上向きの第一後側ラック51Aにより排塵物を効率的に拡散胴55に送ることができ、拡散胴55による拡散作用の向上が図れる。
また、拡散胴55のないところでは終始略水平の第二後側ラック51Bによりスムーズな後方への排出を促進する。
【0026】
後側ラック51の下方には、ガイド板60を設けているので、ガイド板60により排塵物の送り作用が向上し、拡散胴55による排出効果が向上する。
また、シーブ50の上面所定位置には、上方に起立する規制体61を設けているので、排塵処理装置40から落下する被処理物が排出口48から揺動選別棚24上に落下した被処理物に混合しないように、規制する。
そのため、排塵処理装置40から落下する被処理物が吸引排塵ファン34により吸引排出されるのを抑制し、選別ロスの発生を抑制する。
即ち、排塵処理装置40から落下する被処理物は排塵処理装置40により処理されているので藁屑があまり含まれず、排塵処理装置40側の揺動選別棚24上を吸引排塵ファン34により吸引する必要があまりないので、吸引排塵ファン34は揺動選別棚24の左右幅より幾分狭く構成して排塵処理装置40側から離しており、拡散胴55により拡散された拡散物が排塵処理装置40から落下した被処理物に混じるのは好ましくないので、シーブ50に規制体61を設け、前側ラック49とシーブ50と後側ラック51と拡散胴55からの拡散物と排塵処理装置40からの被処理物とが混じるのを規制する。
【0027】
その結果、揺動選別棚24の選別負荷を減少させ、揺動選別装置25全体の選別効率の向上を図っている。
なお、規制体61を、後部に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に近づくように平面視において、傾斜させると、揺動選別棚24上の被処理物を均等にする作用も期待でき、好適である。
しかして、穀稈供給搬送装置12に続いて排藁を搬送する排藁搬送装置75には、脱穀装置3の機体後部に設けたカッター70に伝達した回転を機体外側に設けた伝動機構Pにより駆動する構成としているので、扱胴20の後方の脱穀装置3内に排藁搬送装置75への伝動機構を設けなくて済み、藁溜まり現象の発生を防止でき、また、製造組立が容易になって安価に提供でき、また、メンテナンスも容易になる。
即ち、エンジンからの回転をカッター70のカッタ軸71の機体左側に入力し、カッタ軸71の右側には中間出力プーリ72Bを設け、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の脱穀装置3の側面77に伝動ケース78を固定し、伝動ケース78には前記カッタ軸71と略平行に中間軸79を軸装し、中間軸79のプーリ80と前記中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回しているので、中間出力プーリ72Bの回転を穀稈供給搬送装置12の終端に設けた排藁搬送装置75に伝達させる。
【0028】
そのため、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の空間に伝動ケース78を設けているので、グレンタンク5の後方とカッターカバー76との間の空間を有効利用できる。
伝動ケース78にはカッタ軸71と略平行の中間軸79を設け、中間軸79のプーリ80と中間出力プーリ72Bとの間にベルト81を掛け回しているので、伝動機構を最短にしてコンパクトに構成できる。
排藁搬送装置75は、伝動ケース78を回動支点として、穂先排藁チエン84Bおよび株元排藁チエン85の先端がオープン回動するように構成しているので、排藁搬送装置75のオープン構成を簡素にでき、安価に提供できる。
しかして、図11〜図13の送風ファン88を設けた実施例では、排塵処理装置40の下方に風選室23に向けて外気を吸引して送風する送風ファン88を設けているので、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物は穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
【0029】
送風ファン88は、ファンケーシング89の吸引口90から外気を吸引して、送風口91から揺動選別棚24に向けて送風する。
送風口91は揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に開口しているので、送風ファン88の送風は揺動選別棚24の揺動方向に対して交差方向に流れ、排塵処理装置40から揺動選別棚24上に落下する被処理物を穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せる。
この送風口91は、排塵処理装置40と揺動選別棚24の上面との間に開口させているので、排塵処理装置40から落下する被処理物は、落下直後から送風ファン88の送風を受け、揺動選別棚24の穀稈供給搬送装置12側に拡散させられ、揺動選別棚24上の被処理物の均分化を向上させられ、選別能率を向上させられる。
送風ファン88は、前記脱穀室14の終端から排塵処理装置40の排塵処理胴42の終端の間に亘って設けているので、脱穀室14の終端から送風ファン88の送風が作用するので、被処理物の均分化および風選が広範囲で行われ、選別性能および脱穀ロスの抑制の性能を向上させられる。
【0030】
排塵処理装置40と二番処理装置44とは、二番処理装置44の二番処理胴45を最も小径に形成し、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうち脱穀室14との連通口41に臨む前側排塵処理胴42Aを二番処理胴45よりも大径に形成し、更に、排塵処理装置40の排塵処理胴42のうちの前側排塵処理胴42Aよりも後側の後側排塵処理胴42Bを最も大径に形成する構成しているので(図3)、脱穀室14と排塵処理装置40との引継部の前側排塵処理胴42Aを小径とすることにより。排塵処理装置40への取込性能を向上させられる。
また、後側の後側排塵処理胴42Bを大径に形成することにより、排塵処理能率を向上させられる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0031】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…分草装置、9…引起装置、10…刈刃、11…穀稈搬送装置、12…穀稈供給搬送装置、14…脱穀室、20…扱胴、14…脱穀室、21…扱網、22…唐箕、23…風選室、24…揺動選別棚、25…揺動選別装置、26…唐箕ケーシング、27…移送棚部、30…シーブ、31…ストローラック、32…一番コンベア、33…二番コンベア、34…吸引排塵ファン、35…ケーシング、40…排塵処理装置、41…連通口、42…排塵処理胴、43…排塵処理歯、44…二番処理装置、45…二番処理胴、46…二番処理歯、48…排出口、49…前側ラック、50…シーブ、51…後側ラック、54…吸引口、55…拡散胴、56…処理歯、60…ガイド板、61…規制体、63…中間伝達軸、64…プーリ、65…セカンドファン、66…回転軸、67…中間プーリ、70…カッター、71…カッタ軸、72B…中間出力プーリ、75…排藁搬送装置、76…カッターカバー、77…側面、78…伝動ケース、79…中間軸、80…プーリ、81…ベルト、82…排藁出力軸、83…駆動歯車、84B…穂先排藁搬送ラグ取付チエン、85…株元排藁チエン、86…チエンフレーム、88…送風ファン、89…ファンケーシング、90…吸引口、91…送風口、92…排出口、93…扱歯。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)の上方に脱穀装置(3)を設け、走行装置(2)の前方に刈取装置(5)を設け、前記脱穀装置(3)は、扱胴(20)を軸装した脱穀室(14)の下方に唐箕(22)と該唐箕(22)からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚(24)を設け、該揺動選別棚(24)の終端上方に前記唐箕(22)からの送風を吸引する吸引排塵ファン(34)を設け、該吸引排塵ファン(34)と前記脱穀室(14)の排出口(48)との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴(55)を設け、該拡散胴(55)と前記脱穀装置(3)の脱穀室(14)に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)とは走行速度に応じて回転速度を変更するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記脱穀室(14)の排出口(48)の下方と前記揺動選別棚(24)との間に前側ラック(49)を設け、該前側ラック(49)の下手側にはシーブ(50)を設け、該シーブ(50)の下手側には後側ラック(51)を左右方向複数並設し、該後側ラック(51)と前記吸引排塵ファン(34)の間に前記拡散胴(55)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項3において、前記後側ラック(51)のうち、平面視で前記拡散胴(55)とオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに傾斜させ、前記後側ラック(51)のうち、平面視拡散胴(55)の下側にオーバーラップする第二後側ラック(51B)は前記第一後側ラック(51A)よりも後上がり緩傾斜させたことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
請求項4において、前記第二後側ラック(51B)の下方には、ガイド板(60)を設け、該ガイド板(60)の後端は拡散胴(55)の中心下方位置に臨ませたことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
走行装置(2)の上方に脱穀装置(3)を設け、走行装置(2)の前方に刈取装置(5)を設け、前記脱穀装置(3)は、扱胴(20)を軸装した脱穀室(14)の下方に唐箕(22)と該唐箕(22)からの送風により穀粒と異物とを選別する揺動選別棚(24)を設け、該揺動選別棚(24)の終端上方に前記唐箕(22)からの送風を吸引する吸引排塵ファン(34)を設け、該吸引排塵ファン(34)と前記脱穀室(14)の排出口(48)との間には左右方向の軸心を中心として駆動回転する拡散胴(55)を設け、該拡散胴(55)と前記脱穀装置(3)の脱穀室(14)に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)とは走行速度に応じて回転速度を変更するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記穀稈供給搬送装置(12)および拡散胴(55)の回転速度は、走行速度に応じて、高速と低速との二段階に変速する構成としたことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記脱穀室(14)の排出口(48)の下方と前記揺動選別棚(24)との間に前側ラック(49)を設け、該前側ラック(49)の下手側にはシーブ(50)を設け、該シーブ(50)の下手側には後側ラック(51)を左右方向複数並設し、該後側ラック(51)と前記吸引排塵ファン(34)の間に前記拡散胴(55)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項3において、前記後側ラック(51)のうち、平面視で前記拡散胴(55)とオーバーラップしない第一後側ラック(51A)は後上がりに傾斜させ、前記後側ラック(51)のうち、平面視拡散胴(55)の下側にオーバーラップする第二後側ラック(51B)は前記第一後側ラック(51A)よりも後上がり緩傾斜させたことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
請求項4において、前記第二後側ラック(51B)の下方には、ガイド板(60)を設け、該ガイド板(60)の後端は拡散胴(55)の中心下方位置に臨ませたことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−55201(P2012−55201A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199689(P2010−199689)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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