説明

コンバイン

【課題】刈終り作業時に、処理物の選別精度を向上させるコンバインを提供する。
【解決手段】排藁量となる排藁センサ角度Bが設定値B1以下となると、その時点t1以前の第一設定時間T内における平均排藁量となる平均排藁センサ角度Baveを算出し、マップより該平均排藁センサ角度Baveに対応する制御時間Tを算出してカウントを開始し、カウント開始から所定時間Tのカウント終了まで、チャフフィン16の角度を保持して、前記所定時間Tのカウント終了から前記制御時間Tのカウント終了までは、チャフフィン16の角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御し、かつ、前記制御時間Tのカウント中は前記唐箕ファン17の風量が所定風量に低下するように前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、詳細には、刈終り作業時におけるチャフフィン及び唐箕ファンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀後の排藁量に応じて、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)を自動的に調節可能としたコンバインは公知となっている。
例えば、特許文献1においては、刈終り作業時には、チャフシーブの開度(チャフフィンの角度)をチャフ開度モータにより一定角度θ開側に刈終り時点から一定時間(設定時間T)の間保持するコンバインが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3607457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなコンバインにおいては、刈終り時点から一定時間経過するまでの間は、チャフシーブの開度が一定値に保持されるので、処理物の3番ロスが低減できる。しかしながら、刈終り作業時は、揺動選別装置上の処理物量は時間経過とともに変化するという観点で、処理物の選別精度を向上させる余地があった。また、チャフシーブの開度だけでなく、唐箕ファンの風量を制御することで、同様に、処理物の選別精度を向上させる余地があった。
【0005】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、刈終り作業時に、処理物の選別精度を向上させるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
請求項1においては、穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部と、を備えるコンバインであって、排藁量を検出する排藁量検出手段と、前記チャフフィンの角度を変更するチャフアクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を変更する唐箕アクチュエータと、前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを駆動制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記排藁量が設定値以下となると、その時点以前の設定時間内における平均排藁量を算出し、マップより該平均排藁量に対応する制御時間を算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間内における所定時間のカウント終了まで、チャフフィンの角度を保持して、前記所定時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、チャフフィンの角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータを駆動制御し、かつ、前記制御時間のカウント中は、前記唐箕ファンの風量が所定風量に低下するように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するものである。
【0008】
請求項2においては、穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部と、を備えるコンバインであって、排藁量を検出する排藁量検出手段と、前記刈取部に設けられ、穀稈の有無を検出する穀稈検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記チャフフィンの角度を変更するチャフアクチュエータと、前記唐箕ファンの風量を変更する唐箕アクチュエータと、前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを駆動制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記排藁量が設定値以下となると、その時点以前の第一設定時間内における平均排藁量を算出し、マップより該平均排藁量に対応する制御時間を算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間内における所定時間のカウント終了まで、チャフフィンの角度を保持して、前記所定時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、チャフフィンの角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータを駆動制御し、かつ、前記穀稈検出手段が前記穀稈の検出状態から非検出状態となると、その時点以前の第二設定時間内における平均車速を算出し、マップより該平均車速に対応する保持時間を算出してカウントを開始し、前記保持時間のカウント中は、前記唐箕ファンの風量を保持して、前記保持時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、所定風量に低下するように前記唐箕アクチュエータを駆動制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
刈終り作業時に、揺動選別装置上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンバイン1の全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀部4及び選別部5の構成を示す側面断面図。
【図3】角度調節装置13及び風量調節装置14を示す側面図。
【図4】チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御の構成を示す図。
【図5】(a)選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示す図。(b)排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示す図。(c)シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示す図。(d)第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示す図。(e)唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示す図。(f)排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示す図。(g)シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示す図。(h)唐箕風量検出手段170で検出した波形を示す図。
【図6】(a)第一実施形態における排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)第一実施形態における穀稈検出手段の状態のタイムチャート。(c)第一実施形態におけるチャフフィン角度θのタイムチャート。(d)第一実施形態における唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【図7】(a)第一実施形態における排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)平均排藁センサ角度Baveと制御時間Tとの関係を示す図。
【図8】(a)第二実施形態における排藁センサ角度Bのタイムチャート。(b)第二実施形態における穀稈検出手段の状態のタイムチャート。(c)第二実施形態におけるチャフフィン角度θのタイムチャート。(d)第二実施形態における唐箕ファン回転数Nのタイムチャート。
【図9】(a)第二実施形態における車速Vのタイムチャート。(b)平均車速Vaveと保持時間Tとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、コンバイン1においては、走行部2が機体の下部に設けられ、刈取部3が機体の前部に昇降可能に設けられる。また、脱穀部4が機体の左上側に配置され、選別部5が機体の左下側で脱穀部4の下方に配置される。さらに、穀粒貯溜部6が機体の右後側に配置され、排藁処理部7が機体の後側で脱穀部4及び選別部5の後方に配置される。そして、操縦部8が機体の右前側に配置される。
【0014】
そして、コンバイン1は、操縦部8における各種操作に応じて、動力をエンジン9から各部に適宜に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を機体外部へ排出可能に穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により処理して機体外部へ排出することができるように構成される。
【0015】
次に、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
【0016】
図2に示すように、脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備える。扱胴42は扱室44に前後方向の回転軸回りに回転可能となるように設けられる。受網45は扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように配置される。フィードチェン41は扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置される。
【0017】
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。揺動選別装置50は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置される。
【0018】
風選別装置は、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を有し、吸引ファン59を除いて揺動選別装置50の下方に配置される。穀粒搬送装置は、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、二番還元装置156を有し、揺動選別装置50の下方及び右側方に配置される。
【0019】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が受網45より漏下し、選別部5へ落下する。
【0020】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0021】
そして、チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑等が、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
【0022】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃等は、吸引ファン59により吸引されて排出される。藁屑等は、三番口から外部に排出される。
【0023】
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンクに搬送されて、グレンタンクに貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置50及び風選別装置により再選別される。
【0024】
次に、チャフシーブ53の構成について説明する。
【0025】
図2及び図3に示すように、チャフシーブ53は、選別部5の前後中途部上側に配置される。チャフシーブ53は、多数のチャフフィン16・16・・・と、左右一対の第一枢支片137・137と、左右一対の第二枢支片138・138等から構成される。多数のチャフフィン16・16・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第一枢支片137・137及び左右の第二枢支片138・138の間に横架される。左側の第一枢支片137及び第二枢支片138には、後述する角度調節装置13の調節レバー134が枢結される。
【0026】
図3に示すように、各チャフフィン16に対しては、その角度を調節するための角度調節装置13が設けられる。角度調節装置13は、多数のチャフフィン16・16・・・の角度が予め設定された初期角度φに対して増大又は減少するように構成される。角度調節装置13は、電動式モータからなるチャフアクチュエータ130と、第一ギヤアーム131と、ワイヤ132と、調節レバー134と、付勢部材136等を備える。チャフアクチュエータ130の出力軸が、第一ギヤアーム131及びワイヤ132を介して、調節レバー134と連係される。また、調節レバー134には、付勢部材136が後方から連結されて、ワイヤ132の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に付勢される。
【0027】
このようなチャフシーブ53において、チャフアクチュエータ130が駆動することによって、調節レバー134が回動し、その回動に応じてチャフフィン16の水平方向に対する角度(以下、「チャフフィン角度θ」と記す)が変化する。ここで、チャフフィン16の角度が小さくなると、隣り合うチャフフィン16・16の間隔(最短距離)が狭まり、チャフシーブ53の開度が減少することとなる。チャフフィン16の角度が大きくなると、隣り合うチャフフィン16・16の間隔(最短距離)が広がり、チャフシーブ53の開度が増大することとなる。
【0028】
次に、唐箕ファン17の構成について説明する。
【0029】
図2及び図3に示すように、唐箕ファン17は、選別部5の前部下側に配置される。唐箕ファン17は、回転軸171や複数の羽根体172・172・・・等から構成される。唐箕ファン17は左右方向の回転軸回りに回転可能に設けられる。
【0030】
唐箕ファン17には、唐箕ファン17の風量を調節するための風量調節装置14が設けられる。風量調節装置14は、唐箕ファン17の風量が予め設定された初期風量(初期回転数Y)に対して増大又は減少するように構成される。風量調節装置14は、電動式モータからなる唐箕アクチュエータ140と、第二ギヤ141と、変速ロッド142と、カム機構143と、割りプーリ144と、ベルト145と、テンションプーリ146等を備える。唐箕アクチュエータ140の出力軸は、第二ギヤ141及び変速ロッド142を介してカム機構143と連係される。
【0031】
図3に示すように、唐箕ファン17の回転軸171には、風量調節装置14の割りプーリ144が設けられ、該割りプーリ144には、テンションプーリ146及びカウンタケースの出力軸に固設された不図示の入力プーリとともに、ベルト145が巻回されて、エンジン9の動力が、ベルト145、割りプーリ144、回転軸171に順次伝達されるように構成される。
【0032】
このような唐箕ファン17において、唐箕アクチュエータ140が駆動することによって、カム機構143により割りプーリ144の溝幅が変化する。割りプーリ144の溝幅が狭まると、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン回転数Nが減少して、唐箕ファン17の風量が減少することとなる。割りプーリ144の溝幅が広くなると、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン回転数Nが増大して、唐箕ファン17の風量が増大することとなる。
【0033】
次に、チャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御構成について説明する。
【0034】
図4に示すように、コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPUや、ROM、RAM、インターフェイス、バス等を備える。制御装置12は、第一設定操作具84と、第二設定操作具85と、排藁量検出手段160と、処理物量検出手段163と、チャフ角度検出手段167と、唐箕風量検出手段170と、刈取スイッチ121と、脱穀スイッチ122と、穀稈検出手段123と、車速検出手段124と、接続される。また、制御装置12は、チャフアクチュエータ130と、唐箕アクチュエータ140と、接続される。
【0035】
第一設定操作具84は、チャフフィン16の角度を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第一設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第一設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、ダイヤル84aの角度(以下、「選別ダイヤル角度A」と記す)がセンサ部84bで検出される。センサ部84bは、選別ダイヤル角度Aを検出信号として制御装置12に送信する。
【0036】
第二設定操作具85は、唐箕ファン17の風量を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第二設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第二設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、ダイヤル85aの角度(以下、「唐箕ダイヤル角度E」と記す)がセンサ部85bで検出される。センサ部85bは、唐箕ダイヤル角度Eを検出信号として制御装置12に送信する。
【0037】
排藁量検出手段160は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される脱穀後の排藁量を検出するものである。
【0038】
ここで、排藁搬送装置71は、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76等から構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
【0039】
排藁量検出手段160は、アーム部161と、ポテンショメータ等からなるセンサ部162とを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出手段160では、アーム部161の一端部がセンサ部162の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部161の他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部161がその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部161の角度(以下、「排藁センサ角度B」と記す)が、センサ部162で検出される。センサ部162は、排藁センサ角度Bを検出信号として制御装置12に送信する。
【0040】
処理物量検出手段163は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ53上の処理物量を検出するものである。本実施形態においては処理物量検出手段163は、検出板164と、復帰板165と、ポテンショメータ等からなるセンサ部166とを有し、チャフシーブ53の上方に配置される。処理物量検出手段163では、検出板164の一端部が、センサ部166の回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板164の他端部が、検出板164が初期位置にあるとき、チャフフィン16から所定距離だけ上方に位置するように配置される。復帰板165が検出板164の後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板164に接触する場合には、検出板164が処理物量の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動される。一方、処理物が検出板164に接触しない場合には、検出板164が復帰板165の重みにより初期位置に保持される。そして、検出板164の角度(以下、「シーブセンサ角度C」と記す)がセンサ部166で検出される。センサ部166は、シーブセンサ角度Cを検出信号として制御装置12に送信する。
【0041】
チャフ角度検出手段167は、チャフフィン16の角度を検出するものである。本実施形態においては、図3に示すように、チャフ角度検出手段167は、アーム部168と、ポテンショメータ等からなるセンサ部169とを有し、第一ギヤアーム131の前方に配置される。チャフ角度検出手段167では、アーム部168の一端部がセンサ部169の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部168の他端部が第一ギヤアーム131の突出部131aから左側方へ突出する突起に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、第一ギヤアーム131の突出部131aがチャフアクチュエータ130の駆動量に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部168がその突出部131aの移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部168の角度(以下、「第一ギヤアーム角度D」と記す)がセンサ部169で検出される。センサ部169は、第一ギヤアーム角度Dを検出信号として制御装置12に送信する。
【0042】
唐箕風量検出手段170は、唐箕ファン17の風量を検出するものである。本実施形態においては、図3に示すように、唐箕風量検出手段170は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン17の回転軸171の近傍に配置される。唐箕風量検出手段170では、唐箕ファン17が回転駆動される場合、回転軸171の回転速度に応じた波形Fが検出される。唐箕風量検出手段170は、検出した波形Fを、制御装置12に送信する。
【0043】
刈取スイッチ121は、刈取部3への動力の継断を行う刈取クラッチの「入」「切」を検出するものである。刈取スイッチ121は、刈取クラッチが「入」となると、「ON」となり、刈取クラッチが「切」となると、「OFF」となる。刈取スイッチ121は、刈取クラッチの操作に応じて、それぞれに対応する信号を制御装置12に送信する。
【0044】
脱穀スイッチ122は、脱穀部4への動力の継断を行う脱穀クラッチの「入」「切」を検出するものである。脱穀スイッチ122は、脱穀クラッチが「入」となると、「ON」となり、刈取クラッチが「切」となると、「OFF」となる。脱穀スイッチ122は、脱穀クラッチの操作に応じて、それぞれに対応する信号を制御装置12に送信する。
【0045】
穀稈検出手段123は、刈取部3における穀稈の有無を検出するものである。穀稈検出手段123は、図1に示すように、縦搬送装置31の搬送始端部に設けられ、該縦搬送装置31で搬送中の穀稈の株元側を検出する構成とされる。穀稈検出手段123は、穀稈の検出状態となると、「ON」となり、穀稈の非検出状態となると、「OFF」となる。脱穀検出手段123は、穀稈の有無に応じて、それぞれに対応する信号を制御装置12に送信する。
【0046】
車速検出手段124は、コンバイン1の車速を検出するものである。車速検出手段124は、車軸の回転数を検出する構成とされる。車速検出手段124は、磁気ピックアップコイルやロータリエンコーダ等とされ、その検出信号を制御装置12に送信する。
【0047】
なお、第一設定操作具84、第二設定操作具85、排藁量検出手段160、処理物量検出手段163、チャフ角度検出手段167、唐箕風量検出手段170、刈取スイッチ121、脱穀スイッチ122、穀稈検出手段123、車速検出手段124の具体的な構成は特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
【0048】
制御装置12は、チャフフィン16の角度目標値であるチャフフィン角度目標値θを算出して、チャフフィン角度θが、チャフフィン角度目標値θと一致するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。チャフフィン角度目標値θは、数1に示すように、初期角度φと、選別ダイヤル補正角度αと、排藁補正角度βと、シーブ補正角度γと、の合計値とされる。
【0049】
【数1】

【0050】
初期角度φは、補正角度を加味しない場合のチャフフィン16の角度である。初期角度φは、予め任意の値に決定される。初期角度φは常に反映される。
【0051】
選別ダイヤル補正角度αは、第一設定操作具84で設定された選別ダイヤル角度Aに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(a)に示す選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、選別ダイヤル角度Aに基づいて、実線で示した当該マップから選別ダイヤル補正角度αを算出する。なお、図5(a)に示すマップは一例であり、選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、選別ダイヤル角度Aが小さい範囲では、選別ダイヤル補正角度αの増加率を小さくしてもよい。
【0052】
排藁補正角度βは、排藁量検出手段160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(b)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正角度βを算出する。なお、図5(b)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正角度βを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。
【0053】
シーブ補正角度γは、処理物量検出手段163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(c)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正角度γを算出する。なお、図5(c)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正角度γを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。
【0054】
チャフフィン角度θは、水平方向に対するチャフフィン16の角度である(図4参照)。チャフフィン角度θは、チャフ角度検出手段167で検出された第一ギヤアーム角度Dに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(d)に示す第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、第一ギヤアーム角度Dに基づいて、当該マップからチャフフィン角度θを決定する。なお、図5(d)に示すマップは一例であり、第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により予め導き出されるものとされる。
【0055】
制御装置12は、唐箕ファン17の回転数目標値である唐箕ファン回転数目標値Nを算出して、唐箕ファン回転数Nが、唐箕ファン回転数目標値Nと一致するように、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。唐箕ファン回転数目標値Nは、数2に示すように、初期回転数Yと、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、排藁補正回転数Qと、シーブ補正回転数R、の合計値とされる。
【0056】
【数2】

【0057】
初期回転数Yは、補正回転数を加味しない場合の唐箕ファン17の回転数である。初期回転数Yは、予め任意の値に決定される。初期回転数Yは常に反映される。
【0058】
唐箕ダイヤル補正回転数Pは、第二設定操作具85で設定された唐箕ダイヤル角度Eに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(e)に示す唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、唐箕ダイヤル角度Eに基づいて、実線で示した当該マップから唐箕ダイヤル補正回転数Pを算出する。なお、図5(e)に示すマップは一例であり、唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係はこれに限るものではなく、例えば、二点鎖線に示すように、唐箕ダイヤル角度Eが小さい範囲では、唐箕ダイヤル補正回転数Pの増加率を小さくしてもよい。
【0059】
排藁補正回転数Qは、排藁量検出手段160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(f)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、実線で示した当該マップから排藁補正回転数Qを算出する。なお、図5(f)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正回転数Qを零として、不感帯を設けるマップとしてもよい。
【0060】
シーブ補正回転数Rは、処理物量検出手段163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図5(g)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、実線で示した当該マップからシーブ補正回転数Rを算出する。なお、図5(g)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係はこれに限るものでなく、例えば、二点鎖線に示すように、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正回転数Rを一定値として、不感帯を設けるマップとしてもよい。
【0061】
唐箕ファン回転数Nは、唐箕ファン17の回転数として唐箕風量検出手段170で検出した波形Fに基づいて求められる。制御装置12には、図5(h)に示すような波形Fが送信される。制御装置12は、波形Fの周期(周波数)に応じて、唐箕ファン回転数Nを求める。
【0062】
このように、コンバイン1においては、第一設定操作具84及び第二設定操作具85により、チャフフィン角度θ及び唐箕ファン回転数Nが人為的に調節可能に構成されるとともに、検出された排藁量及び処理物量に応じて、チャフフィン角度θ及び唐箕ファン回転数Nが自動的に調節されるように構成される。しかしながら、機体回行時等の刈終り作業時において、排藁量が少なくなると、直ちにチャフフィン16の角度が小さくなり、かつ、直ちに唐箕ファン17の回転数が低下するので、再選別等で揺動選別装置50上に多くの処理物が存在するならば、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されず、3番ロスが多量に生じることとなる。
【0063】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を調節するための制御の第一実施形態を、図6及び図7を用いて説明する。
【0064】
制御装置12は、刈取スイッチ121及び脱穀スイッチ122が「ON」であり、図6(a)に示すように、排藁量検出手段160の検出値である排藁センサ角度Bが、予め設定された設定値B1以下となると、チャフフィン16の刈終いモードに移行して、下記に示すチャフアクチュエータ130の駆動制御を行う。ここで、排藁センサ角度Bが、予め設定された設定値B1以下となる時をt1とする。
【0065】
すなわち、制御装置12は、チャフフィン16の刈終いモードに移行すると、その時点t1以前の第一設定時間T内における排藁センサ角度Bの平均値(以下、「平均排藁センサ角度Bave」と記す)を算出する。具体的には、図7(a)に示すように、制御装置12には、第一設定時間T内における排藁センサ角度Bが常時記憶される構成とされ、制御装置12は、t2(t1に第一設定時間Tを減じた時間)からt1までの間で検出された排藁センサ角度Bを時間積分して(斜線部の面積に相当)、この演算値に第一設定時間Tを除算して、平均排藁量となる平均排藁センサ角度Baveを算出する。
【0066】
更に、制御装置12は、図7(b)に示すマップから、算出した平均排藁センサ角度Baveに対応する制御時間Tを算出する。当該マップは、試験等により導き出されるものとされ、制御装置12に予め記憶される。ただし、当該マップは、一例であり、平均排藁センサ角度Baveと制御時間Tとの関係はこれに限るものではない。
【0067】
そして、制御装置12は、図6(c)に示すように、t1から、算出した制御時間Tのカウントを開始する。
【0068】
次に、制御時間Tのカウント開始から前記制御時間Tb内における所定時間Tのカウント終了まで、つまり、t1からt3(t1に所定時間Tを加えた時間)まで、制御装置12は、t1におけるチャフフィン角度θ1をそのまま保持するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御する。具体的には、t1からt3まで、チャフフィン角度目標値θを、t1におけるチャフフィン角度目標値θ(チャフフィン角度θ1の目標値であるチャフフィン角度目標値θ1)のまま保持して、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。前記チャフフィン角度目標値θ1は、選別ダイヤル補正角度αと、t1における排藁補正角度β1及びシーブ補正角度γ1と、初期角度φと、の合計値で表される。
【0069】
なお、前記所定時間Tは、本実施形態においては、制御時間Tに対する割合が50%となるように設定される。すなわち、T=T/2の関係となるように設定される。ただし、別途操作具を設け、該操作具の操作により、制御時間Tに対する割合を変更可能に構成してもよい。
【0070】
その後、前記所定時間Tのカウント終了から前記制御時間Tのカウント終了まで、つまり、t3からt4(t1に制御時間Tを加えた時間)まで、制御装置12は、チャフフィン角度θが徐々に減少するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御する。具体的には、t3からt4まで、チャフフィン角度目標値θを、前記排藁補正角度β1とシーブ補正角度γ1との合計値を徐々に減少させて設定し、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0071】
ここで、本実施形態においては、t3からt4まで、制御装置12は、チャフフィン角度θが徐々に一定の変化率で減少するように、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。一定の変化率とは、排藁補正角度β1とシーブ補正角度γ1の合計値から、制御時間Tbに所定時間Tを減算した値を除算したものとされる。
【0072】
そして、制御時間Tのカウント終了後、つまり、t4に、制御装置12は、チャフフィン角度θが、予め設定された基準角度θ2となるようにチャフアクチュエータ130を制御する。具体的には、t4に、チャフフィン角度目標値θを、基準角度θ2とし、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。基準角度θ2は、本実施形態においては、初期角度φと、選別ダイヤル補正角度αと、の合計値とされる。
【0073】
また、制御装置12は、刈取スイッチ121及び脱穀スイッチ122が「ON」であり、排藁量検出手段160の検出値である排藁センサ角度Bが、予め設定された設定値B1以下となると、前述のようにチャフフィン16の刈終いモードに移行するとともに、唐箕ファン17の刈終いモードに移行して、下記に示す唐箕アクチュエータ140の駆動制御を行う。ただし、図6(b)に示すように、穀稈検出手段123は、穀稈を検出して「ON」となっているものとする。
【0074】
すなわち、制御装置12は、唐箕ファン17の刈終いモードに移行すると、図6(d)に示すように、前記制御時間Tbのカウント中、つまり、t1からt4まで、前記唐箕ファン回転数Nが、予め設定された所定回転数N2に低下するように唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。具体的には、唐箕ファン回転数目標値Nを、所定回転数N2として、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。所定回転数N2は、本実施形態においては、初期回転数Yとされる。
【0075】
そして、制御装置12は、制御時間Tbのカウント終了後、つまり、t4に、唐箕ファン回転数Nが、予め設定された基準回転数N3となるように唐箕アクチュエータ140を制御する。具体的には、t4に、唐箕ファン回転数目標値Nを、基準回転数N3として、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。基準回転数N3は、本実施形態においては、初期回転数Yと、唐箕ダイヤル補正回転数Pと、の合計値とされる。
【0076】
以上のように、本発明に係るコンバイン1の、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第一実施形態では、穀稈を刈り取る刈取部3と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部4と、脱穀処理された処理物を、チャフフィン16を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部5と、を備えるコンバイン1であって、排藁量を検出する排藁量検出手段160と、前記チャフフィン16の角度を変更するチャフアクチュエータ130と、前記唐箕ファン17の風量を変更する唐箕アクチュエータ140と、前記チャフアクチュエータ130及び前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御する制御装置12と、を備え、前記制御装置12は、前記排藁量となる排藁センサ角度Bが設定値B1以下となると、その時点t1以前の第一設定時間T内における平均排藁量となる平均排藁センサ角度Baveを算出し、マップより該平均排藁センサ角度Baveに対応する制御時間Tを算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間Tb内における所定時間Tのカウント終了まで、チャフフィン16の角度を保持して、前記所定時間Tのカウント終了から前記制御時間Tのカウント終了までは、チャフフィン16の角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御し、かつ、前記制御時間Tのカウント中は、前記唐箕ファン17の風量が所定風量に低下するように、言い換えれば、唐箕ファン回転数Nが所定回転数N2に低下するように前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御するものである。
【0077】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる時であっても、チャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を適切に保つので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0078】
次に、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を調節するための制御の第二実施形態を、図8及び図9を用いて説明する。ただし、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0079】
制御装置12は、刈取スイッチ121及び脱穀スイッチ122が「ON」であり、図8(a)に示すように、排藁量検出手段160の検出値である排藁センサ角度Bが、予め設定された設定値B1以下となると、第一実施形態と同様に、チャフフィン16の刈終いモードに移行して、チャフアクチュエータ130を駆動制御する。
【0080】
また、制御装置12は、図8(b)に示すように、穀稈検出手段123が、「ON」から「OFF」(穀稈の検出状態から非検出状態)となると、唐箕ファン17の刈終いモードに移行して、以下に示す唐箕アクチュエータ140の駆動制御を行う。ここで、穀稈検出手段123が、「ON」から「OFF」となった時をt5とする。
【0081】
すなわち、制御装置12は、唐箕ファン17の刈終いモードに移行すると、その時点t5以前の第二設定時間T内における車速検出手段124の検出値の平均値(以下、「平均車速Vave」とする)を算出する。具体的には、図9(a)に示すように、制御装置12には、第二設定時間T内におけるコンバイン1の車速Vが常時記憶される構成とされ、制御装置12は、t6(t5に第二設定時間Tを減じた時間)からt5までの間で検出された車速Vを時間積分して(斜線部の面積に相当)、この演算値に第二設定時間Tを除算して、平均車速Vaveを算出する。
【0082】
更に、制御装置12は、図9(b)に示すマップから、算出した平均車速Vaveに対応する保持時間Tを算出する。当該マップは、試験等により導き出されるものとされ、制御装置12に予め記憶される。ただし、当該マップは、一例であり、平均車速Vaveと保持時間Tとの関係はこれに限るものではない。
【0083】
そして、制御装置12は、図8(d)に示すように、t5から、算出した保持時間Tのカウントを開始する。
【0084】
次に、保持時間Tのカウント終了まで、つまり、t5からt7(t5に保持時間Tを加えた時間)まで、制御装置12は、t5における唐箕ファン回転数N4をそのまま保持するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御する。具体的には、t5からt7まで、唐箕ファン回転数目標値Nを、t5における唐箕ファン回転数目標値N(唐箕ファン回転数N4の目標値である唐箕ファン回転数目標値N4)のまま保持して、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0085】
その後、保持時間Tのカウント終了から制御時間Tbのカウント終了まで、つまり、t7からt4まで、制御装置12は、前記唐箕ファン回転数Nが、前記所定回転数N2となるように駆動制御する。具体的には、唐箕ファン回転数目標値Nを、前記所定回転数N2として、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0086】
そして、制御装置12は、制御時間Tbのカウント終了後、つまり、t4に、唐箕ファン回転数Nが、前記基準回転数N3となるように唐箕アクチュエータ140を制御する。具体的には、t4に、唐箕ファン回転数目標値Nを、基準回転数N3として、唐箕アクチュエータ140を駆動制御する。
【0087】
以上のように、本発明に係るコンバイン1の、刈終り作業におけるチャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の回転数を調節するための制御の第二実施形態では、穀稈を刈り取る刈取部3と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部4と、脱穀処理された処理物を、チャフフィン16を含む揺動選別装置50及び唐箕ファン17で選別する選別部5と、を備えるコンバイン1であって、排藁量を検出する排藁量検出手段160と、前記チャフフィン16の角度を変更するチャフアクチュエータ130と、前記唐箕ファン17の風量を変更する唐箕アクチュエータ140と、前記チャフアクチュエータ130及び前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御する制御装置12と、を備え、前記制御装置12は、前記排藁量となる排藁センサ角度Bが設定値B1以下となると、その時点t1以前の第一設定時間T内における平均排藁量となる平均排藁センサ角度Baveを算出し、マップより該平均排藁センサ角度Baveに対応する制御時間Tを算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間T内における所定時間Tのカウント終了まで、チャフフィン16の角度を保持して、前記所定時間Tのカウント終了から前記制御時間Tのカウント終了までは、チャフフィン16の角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータ130を駆動制御し、かつ、前記穀稈検出手段123が前記穀稈の検出状態から非検出状態となると、その時点t5以前の第二設定時間T内における平均車速Vaveを算出し、マップより該平均車速Vaveに対応する保持時間Tを算出してカウントを開始し、前記保持時間Tのカウント中は、前記唐箕ファン17の風量を保持して、言い換えれば、唐箕ファン回転数Nをt5における唐箕ファン回転数N4に保持して、前記保持時間Tのカウント終了から前記制御時間Tのカウント終了までは、所定風量に低下するように、言い換えれば、唐箕ファン回転数Nが所定回転数N2に低下するように前記唐箕アクチュエータ140を駆動制御するものである。
【0088】
これにより、刈終り作業時に、検出する排藁量が少なくなる(零となる)時であっても、チャフフィン16の角度及び唐箕ファン17の風量を適切に保つので、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、選別精度が向上する。
【0089】
なお、穀稈検出手段123の代わりに、刈取スイッチ121が「ON」から「OFF」となった時に、制御装置12が、唐箕ファン17の刈終いモードに移行して、上記の制御を行うように構成することも可能である。また、刈取部3を設定した高さに上昇させる刈取オートリフトスイッチが操作された時に、同様に、制御装置12が、唐箕ファン17の刈終いモードに移行して、上記の制御を行うように構成することも可能である。
【0090】
なお、本実施形態においては、唐箕ファン17の回転数を変更することで唐箕ファン17の風量を変更する構成とされるが、唐箕ファン17に取り込まれる空気の量を調節するシャッターの開度を変更することで唐箕ファン17の風量を変更する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 コンバイン
3 刈取部
4 脱穀部
5 選別部
12 制御装置
16 チャフシーブ
17 唐箕ファン
50 揺動選別装置
121 刈取スイッチ
122 脱穀スイッチ
123 穀稈検出手段
124 車速検出手段
130 チャフアクチュエータ
140 唐箕アクチュエータ
167 チャフ角度検出手段
170 唐箕風量検出手段
B 排藁センサ角度(排藁量)
ave 平均排藁センサ角度(平均排藁量)
第一設定時間
制御時間
所定時間
第二設定時間
保持時間
V 車速
ave 平均車速
θ チャフフィン角度
θ2 基準角度
N 唐箕ファン回転数
N2 所定回転数
N3 基準回転数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部と、を備えるコンバインであって、
排藁量を検出する排藁量検出手段と、
前記チャフフィンの角度を変更するチャフアクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を変更する唐箕アクチュエータと、
前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記排藁量が設定値以下となると、その時点以前の設定時間内における平均排藁量を算出し、マップより該平均排藁量に対応する制御時間を算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間内における所定時間のカウント終了まで、チャフフィンの角度を保持して、前記所定時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、チャフフィンの角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータを駆動制御し、かつ、前記制御時間のカウント中は、前記唐箕ファンの風量が所定風量に低下するように前記唐箕アクチュエータを駆動制御することを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
穀稈を刈り取る刈取部と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部と、脱穀処理された処理物を、チャフフィンを含む揺動選別装置及び唐箕ファンで選別する選別部と、を備えるコンバインであって、
排藁量を検出する排藁量検出手段と、
前記刈取部に設けられ、穀稈の有無を検出する穀稈検出手段と、
車速を検出する車速検出手段と、
前記チャフフィンの角度を変更するチャフアクチュエータと、
前記唐箕ファンの風量を変更する唐箕アクチュエータと、
前記チャフアクチュエータ及び前記唐箕アクチュエータを駆動制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記排藁量が設定値以下となると、その時点以前の第一設定時間内における平均排藁量を算出し、マップより該平均排藁量に対応する制御時間を算出してカウントを開始し、カウント開始から前記制御時間内における所定時間のカウント終了まで、チャフフィンの角度を保持して、前記所定時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、チャフフィンの角度が徐々に減少するように前記チャフアクチュエータを駆動制御し、かつ、前記穀稈検出手段が前記穀稈の検出状態から非検出状態となると、その時点以前の第二設定時間内における平均車速を算出し、マップより該平均車速に対応する保持時間を算出してカウントを開始し、前記保持時間のカウント中は、前記唐箕ファンの風量を保持して、前記保持時間のカウント終了から前記制御時間のカウント終了までは、所定風量に低下するように前記唐箕アクチュエータを駆動制御することを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−80796(P2012−80796A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227909(P2010−227909)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】