説明

コンバイン

【課題】運転席で警報音を聞き取り易くする。
【解決手段】走行機体2上に左右に並列状態で搭載支持された脱穀装置5と、穀粒回収部6と、穀粒回収部6の前方に備えられた運転席4aと、脱穀装置5の前端近傍における運転席4a側の位置に前方を向けて設置された警報器Kとを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体上に左右に並列状態で搭載支持された脱穀装置と、穀粒回収部と、前記穀粒回収部の前方に備えられた運転席と、警報器とを設けてあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンバインとしては、運転席における搭乗口とは反対側の横側部にサイドパネルが設置してあり、そのサイドパネルの後方側に、上面に計器類を備えた取付台が設けてあり、その取付台の後壁部に、警報器を後ろ向きにして取り付けてあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−67112号公報(図5、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコンバインによれば、運転席付近は、脱穀装置等によって騒音に曝されているから、警報音を聞き取り難い環境となっていることに加えて、警報器は後ろ向きに取り付けてあるから、運転者や、前方側に警報音が聞こえ難い問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、運転席で警報音を聞き取り易いコンバインを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、走行機体上に左右に並列状態で搭載支持された脱穀装置と、穀粒回収部と、前記穀粒回収部の前方に備えられた運転席と、前記脱穀装置の前端近傍における前記運転席側の位置に前方を向けて設置された警報器とを設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、警報器を、脱穀装置の前端近傍における運転席側の位置に設置してあるから、各種機器から発せられる騒音が大きい場合でも、運転席に近い位置で警報音を聞き取ることができる。その結果、運転者が警報音を聞き取って、正確で迅速な対応をとることができるようになる。
更には、警報器は、前記脱穀装置の前端近傍における前記運転席側の位置に前方を向けて設置してあるから、警報器の前方側には音を遮るような背の高い装置が少なく、コンバインの前方や周囲にも警報音を伝えやすくなる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記警報器は、前記運転席の背もたれの上端と座面との間の高さ範囲内に設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、警報器が運転席の運転者の耳の高さに近いから、より警告音を聞き取り易くなることに加えて、警報器がコンバイン周囲に立っている人の耳の高さに相当するから、周りの人も警報音が聞き取り易くなる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記警報器は、前記走行機体に備えられた穀粒排出オーガの受け支柱に取り付けてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、受け支柱は、強度的な信頼性が高い上、頻繁に取り外すことがないから、その受け支柱に取り付けた警報器も、安定した取付状態を維持できるようになる。
また、受け支柱が警報器の支持部材を兼用していることによって部品の削減や構造の簡素化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの左側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】運転部の平面図
【図4】警報器の取付状態を示す要部分解斜視図
【図5】別実施形態のコンバインの正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、図2に基づいて、本発明に係る自脱型コンバインの全体構成について説明する。
コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の左側前部に、刈取り前処理部3が揺動昇降自在に連結されており、走行機体2の右側前部に運転部4が設けられている。走行機体2の左側後部に脱穀装置5が搭載され、走行機体2の右側後部に穀粒排出オーガ7を備えたグレンタンク(穀粒回収部に相当)6が搭載されている。走行機体2の後部には、排ワラ処理装置8が搭載されており、脱穀装置5による脱穀処理により発生した排ワラの処理ができるように構成されている。
【0014】
穀粒排出オーガ7は、長手方向の前後中間部で折り畳み可能に構成されており、コンバインを移動させる場合や保管する場合には、この穀粒排出オーガ7を折り畳んで、走行機体2から穀粒排出オーガ7が突出することがないように構成されている。
【0015】
グレンタンク6の左側前部には、穀粒排出オーガ7を支持するオーガ受け台44が設けられている。このオーガ受け台44の支柱(受け支柱に相当)44aにはフォーンK1と、バックブザーK2とからなる警報器Kが取り付けてある。
警報器Kは、支柱44aの周面に表裏面が前後方向を向く状態に溶接で取り付けられたブラケット44bに対して、ボルト連結によって固定してある(図3、図4参照)。
【0016】
刈取り前処理部3には、植立作物を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の右側引起し装置9R及び左側引起し装置9Lと、引起し装置9R,9Lにより引起した植立作物を切断するバリカン型の刈取装置10と、刈取り作物を後方上方に向けて挟持搬送する供給搬送装置13とを備えて構成されており、油圧シリンダ14を操作することにより刈取り前処理部3全体が刈取り前処理部3後部上部の横向きの支点P周りに上下に揺動して、刈取り前処理部3を昇降できるように構成されている。
【0017】
供給搬送装置13は、作物の株元側を挟持して搬送する株元挟持搬送機構13aと作物の穂先側を係止して搬送する穂先係止搬送機構13bとを備えて構成されており、この供給搬送装置13全体を支点P中心に上下に揺動調節することで、搬送される作物の挟持位置を変更して、脱穀装置5に備えられたフィードチェーン15への作物の受け渡し位置を作物の稈長方向に変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。
【0018】
刈取り前処理部3から供給された作物は、脱穀装置5において脱穀処理された穀粒がグレンタンク6に貯留され、脱穀処理によって発生した排ワラが排ワラ処理装置8によって処理されて、走行機体2の後方に処理されたワラ屑が排出されるように構成されている。
【0019】
走行機体2の右側部には、前後に長い平面視での形状が縦長の長方形状のデッキ部2aが形成されており、このデッキ部2aの上面側の前後中央部に運転席4aを支持する座席支持部材4b(図3参照)が載置されており、デッキ部2aの上面側の後部にグレンタンク6が載置固定されている。デッキ部2aの前端には、斜め後方上方に傾斜した倒立「L」字状の補助具16が装着されており、この補助具16と座席支持部材4bとの間に作業者が搭乗する搭乗空間が形成されている。
【0020】
補助具16は、運転席4aの刈取り前処理部3の引起し装置9Rに沿って斜め後方上方に傾斜する形状に構成されており、搭乗空間の前部に位置する操縦パネル50に設けられている。操縦パネル50には、図3に示すように、操作レバー68や、フォーンK1のスイッチ17が設けられている。
【0021】
操作レバー68は、走行機体2の横方向に揺動操作されることにより、操向クラッチ (図示せず)を操作して左右一対の走行装置1,1を各別に駆動、停止操作して走行機体2の操向操作を行う。また、操作レバー68を、後に揺動操作すると刈取り前処理部3が上昇し、前に揺動操作すると刈取り前処理部3が下降する。スイッチ17は、押圧することで、フォーンK1が鳴るように構成してある。
【0022】
運転部4における搭乗口45とは反対側の横側部(運転席4aの左側)に位置するサイドパネル51には、エンジン(図示せず)の回転数を調節するアクセルレバー52や、走行用の静油圧式無段変速装置(図示せず)を変速操作する主操作レバー53等の各種レバーが設けられている。尚、主操作レバー53を後進側に操作すると、バックブザーK2が連動して鳴るように構成されている。
【0023】
サイドパネル51の後部における左側に、オーガ受け台44の支柱44aが立設されている。支柱44aは、図2に示すように、運転席4aの背もたれ4cの上下中間部に相当する高さ位置から、背もたれ4cの上端部に相当する高さ位置の間で、サイドパネル51上に屈曲させてある。
【0024】
また、ブラケット44bは、支柱44aの、運転席4aの背もたれ4cの上端と座面4eとの間の高さ範囲内に取り付けられている。特に、本実施形態においては、ブラケット44bは、支柱44aの屈曲部分を避けて、その下方位置(背もたれ4cの上下中間部と座面4eとの間の高さ範囲)に取り付けられている。このブラケット44bの前面側に、警報器Kが前を向く状態にボルト固定してある。
従って、警報器Kから発せられる警報音は、運転席4aに座った運転者の左側の近い位置で、且つ、耳より下方の位置で鳴るから、耳を直撃することがなく、適度な音量で聞き取り易い。
更には、この警報器Kの設置位置の前方には、図2に示すように警報音を遮る障害物が無いから、コンバイン前方や周囲にも警報音を良好に伝えることができる。
【0025】
支柱44aの前方に近接する位置には、走行機体2の左側面に設けられている分草杆38(図1参照)を切替操作する分草杆操作レバー39が設けられている。
分草杆操作レバー39は、直立姿勢と前方に倒れる姿勢とに揺動させて分草杆38の状態を切り替えるように構成してあり、走行機体2の正面視の形状は、支柱44aと同様に、上端部がサイドパネル51の上方に屈曲する形状に構成してある。
分草杆38は、図1に示すように、左側のデバイダ36Lを支持する分草フレーム73の先端部近くから後方やや斜め上方に向けて設けられた棒状部材で構成してあり、走行機体2の左側に突出する作用状態と走行機体2に沿って収納された非作用状態とに上下揺動切替できるように構成されている。
分草杆操作レバー39を前方に倒すことで、分草杆38は作用状態となり、直立姿勢にすることで非作用状態に戻すことができる。また、分草杆操作レバー39は、その動作範囲が前記警報器Kと干渉しないように、正面視で警報器Kよりも運転席4a側に設置されている。
【0026】
本実施形態のコンバインによれば、各種機器から発せられる騒音が大きい場合でも、運転席4aに近い位置で警報音を聞き取ることができ、正確で迅速な対応をとることができるようになる。
また、警報器Kの前方側には音を遮るような背の高い装置が少なく、コンバインの前方や周囲にも警報音を伝えやすくなる。特に、警報器Kの近くに位置する運転者に対しては、耳の位置よいも僅かに低い位置に警報器Kがあるから、警報音が耳を直撃することなく適度な大きさで聞くことができる一方、コンバインの周りに対しては、立っている人の耳の高さに相当するから、周りの人も警報音が聞き取り易くなる。
更には、警報器Kは、強度的に信頼性の高い支柱44aに取り付けてあるから、安定した取付状態を維持することができる。
【0027】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0028】
〈1〉 警報器Kは、先の実施形態で説明した支柱44aに取り付けることに限るものではなく、例えば、図5に示すように、脱穀装置5の前面に取り付けてあってもよい。
この例では、脱穀装置5のカバー20の内、作物受入口に位置する可動カバー20aの運転席4a側に隣接する固定カバー20bにボルト固定してある。
また、警報器Kそのものは、先の実施形態で説明したフォーンK1とバックブザーK2とに限るものではなく、他に、各部の詰まり等を報知する警報音や、グレンタンク6の満杯状態を報知する警報音を発するものであってもよい。
【0029】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
当該コンバインは、グレンタンクに替えて袋詰めタンクを搭載した自脱型のものにも利用することができ、自脱型のコンバインに加えて普通型のコンバインにも利用できる。
【符号の説明】
【0031】
2 走行機体
4a 運転席
4c 背もたれ
4e 座面
5 脱穀装置
6 グレンタンク(穀粒回収部に相当)
7 穀粒排出オーガ
44a 支柱(受け支柱に相当)
K 警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体上に左右に並列状態で搭載支持された脱穀装置と、穀粒回収部と、
前記穀粒回収部の前方に備えられた運転席と、
前記脱穀装置の前端近傍における前記運転席側の位置に前方を向けて設置された警報器とを設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記警報器は、前記運転席の背もたれの上端と座面との高さ範囲内に設けてある請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記警報器は、前記走行機体に備えられた穀粒排出オーガの受け支柱に取り付けてある請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74806(P2013−74806A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215360(P2011−215360)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】