説明

コンバイン

【課題】脱穀装置の後部に設けられた排塵口から排出される塵埃を飛散させることなく圃場に排出するために、塵埃を圃場面に案内落下させるカバー体を機体後部に取付けると、コンバインの全長が長くなる。
【解決手段】脱穀装置の後部に設けられた排塵口から排出される塵埃を圃場に案内落下させるカバー体11を開閉自在に設け、該カバー体11を閉じると、カバー体11の後端面11cが機体の最後端の位置よりも後方に突出しないように機体の後部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置を備えたコンバインに係り、詳しくは、脱穀装置の排塵口を覆うカバー体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、刈取った穀稈を脱穀及び選別するための脱穀装置を備えており、刈取られた穀稈は脱穀装置で脱穀されて選別される。脱穀処理された穀粒はグレンタンクに貯蔵され、排稈やワラ屑等は機外へと排出される。脱穀装置で選別されてワラ屑等の塵埃は、排出口から機外に排出されるが、特に汎用型コンバインにあっては、刈取られた穀稈が全量脱穀装置に投入されるため、大量の塵埃が排出口から排出される。
【0003】
従来から排塵口には、排塵口から排出される排稈やワラ屑等を圃場に案内落下させる排塵カバーが取付けらており(例えば、特許文献1参照)、この排塵カバーが排塵口に取付けられることによって、ワラ屑等を方々に飛散させることなく圃場に案内落下(排出)させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンバインにあっては、排塵カバーがコンバインの最後方に位置して機体に固定され、脱穀装置の後部から突出するように取付けられており、かつ排塵カバー自体もある程度の大きさであるため、排塵カバーを脱穀装置の後部に取付けるとコンバイン自体の全長が長くなってしまっていた。これにより、例えば、コンバインを納屋や車庫に入れる際にコンバインの全長に合った広い場所が必要となっていた。
【0006】
そこで本発明は、排塵口を覆うカバー体を開閉自在に設け、カバー体を閉じるとカバー体の後端面が機体最後端より突出しないようにすることで、もって上記の課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、穀稈を刈取る前処理部(5)と、該前処理部(5)で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置(7)と、該脱穀装置(7)で脱穀処理された塵埃を機外に排出する排塵口(45)と、を備えたコンバイン(1)において、
前記排塵口(45)から排出される塵埃を圃場に案内落下するカバー体(11)を機体に開閉自在に設け、
該カバー体(11)を閉じると、前記カバー体(11)の後端面(11c)が機体の最後端の位置よりも後方に突出しないように配置することを特徴とする。
【0008】
例えば、図7に示すように、前記カバー体(11)と前記機体との間に、塵埃を既刈り地側に案内するガイド板(51)を架設し、該ガイド板(51)の少なくとも一部が可撓体(51a)からなる。
【0009】
また、前記カバー体(11)は、閉じた状態で、前記カバー体(11)の後端面(11c)と前記機体の後端の他のカバー体とが略フラットな面となる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、カバー体を機体に開閉自在に設け、カバー体を閉じるとカバー体の後端面が排塵機体最後端より後方に突出しないようにカバー体を配置したので、作業時は排塵カバーを開いて排稈等を飛散させることなく圃場に排出することができ、また、排塵カバーを閉じることでコンバインの全長を短くすることができ、コンバインを車庫や納屋に保管する際の収納スペースが小さくて足りる。
【0012】
請求項2に係る発明によると、塵埃を既刈取り地側に案内するガイド板をカバー体と機体との間に架設し、カバー体の少なくとも一部を可撓体で構成したので、塵埃を未刈取り地側に排出することができ、またガイド板を取外すことなく容易に排塵カバーを閉じることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によると、排塵カバーを閉じた状態にすると、排塵カバーの後端面と機体の後端の他のカバー体とが略フラットな面となるので、コンバインの後部面の外観が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るコンバインの排塵カバーが閉じた状態を示す側面図。
【図2】その平面図。
【図3】その後方を示す斜視図。
【図4】コンバインの排塵カバーが開いた状態を示す側面図。
【図5】その平面図。
【図6】その後方を示す斜視図。
【図7】コンバインが備える脱穀装置の内部構造を示す模式図。
【図8】ガイド板及び補助ガイド板を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るコンバインについて図面に沿って説明する。コンバイン1は、図1、図2及び図3に示すように、汎用型コンバイン1(以下、単にコンバインという)であり、左右一対の走行装置であるクローラ2に支持された機体3を有している。該機体3の前方には、穀稈を刈取る前処理部5が昇降自在に設けられており、該前処理部5の後方には、コンバイン1を操作するための運転操作部6が設けられている。運転操作部6の後方には、前処理部5で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置7が設けられており、該脱穀装置7の隣には、図2に示すように、脱穀した穀粒を貯蔵するグレンタンク9が設けられている。該グレンタンク9の上方には、グレンタンク9内の穀粒を排出する排出オーガ10が設けられている。また、脱穀装置7の後部には、脱穀処理された排稈を機外へと排出する排塵口42(図7参照)が設けられており、該排塵口42は、排稈を圃場に案内するカバー体である排塵カバー11に覆われている。
【0016】
前処理部5は、刈取作物と未刈取作物とに分けるデバイダ12を前方に有しており、該デバイダ12の上方には、複数のタインが取付けられた掻き込みリール13が設けられている。該掻き込みリール13の後方には、穀稈を搬送するプラットホームオーガ15が進行方向と直交する横向きの状態で配設されており、該プラットホームオーガ15の後方には、プラットホームオーガ15によって搬送された穀稈を脱穀装置7まで搬送する搬送フィーダ16が設けられている。
【0017】
運転操作部6には、運転者が着座するための運転席17が設けられており、該運転席17の前方には操作パネル19が設けられている。該操作パネル19の右側には、コンバイン1を操舵するための操作レバー20が設けられており、該操作レバー20の隣には、様々な計器類を表示するための表示パネル21が設けられている。また、運転席17の左側には、サイドパネル22が設けられており、該サイドパネル22には、コンバイン1の変速を行う主変速レバー23が設けられている。
【0018】
脱穀装置7は、図4に示すように、扱室25を有しており、該扱室25の上方は、図5に示すように、天板45で覆われている。また、扱室25の後部はリヤカバー46で覆われており、扱室25の左側側方は、略矩形形状したサイドカバー47で覆われている。
【0019】
また、扱室25には、刈取られた穀稈を脱穀する扱胴26が回転自在で内装されており、該扱胴26には、ラセン形状した扱歯27が巻回されている。該扱歯27には、搬送された穀稈の籾等を扱ぎ落す歯部27aが等間隔で設けられており、該扱胴26の下方には、脱穀された穀類を網目から選別部へ漏下させる受網が設けられている(図7参照)。
【0020】
受網28に下方には、唐箕ファン30や揺動移動板31、チャフシーブ32、ラック33、ストローラック35、及びグレンシーブ36等で構成される揺動選別体37等を内装する選別室39が設けられており、該選別室39には、一番ラセン40及び二番ラセン41がターボファン44の前後に、進行方向に直交する横向きにそれぞれ配設されている。また、脱穀装置7の後方には、脱穀装置7で脱穀処理された排稈やワラ屑等の塵埃を機外へと排出する排塵口42が設けられている(図7参照)。該排塵口は、門構え形状に形成された排塵ケース49に囲われており(図6及び図8参照)、該排塵ケース49には、排出される塵埃を圃場面に案内落下させる排塵カバー11が取付けられている。また、排塵ケース49の側方には、排塵カバー11を固定するノブボルト48が左右それぞれ設けられている(図4及び図6参照)。排塵ケース49は、4つのノブボルト48で脱穀装置7の後部に取付けられており、そして、排塵ケース49は、排塵ケース49を脱穀装置7に取付ける4つのノブボルト48を取り外し、後述するガイド板51のブラケット51bを背面板11aに取付ける2つのノブボルト48を取外すことで(図8参照)、排塵ケース49及び、それに枢着される排塵カバー11を脱穀装置7の後部から取り外すことができるように設けられている。
【0021】
排塵カバー11は、排塵口42aに対向する背面板11aと該背面板11aの左右側方に設けられる側板11bとから構成されている。該背面板11aの上方端部には、図7に示すように、ヒンジ部50が設けられている。また、該ヒンジ部50は、排塵ケース49に取付けられている(図8参照)。排塵カバー11は、該ヒンジ部50によって回動自在(開閉自在)に支持されており、また排塵口42は、排塵カバー11によって開閉自在に設けられている。また、排塵カバー11の左右側板11bには、図6に示すように、ノブボルト48を取付けるボルト取付部であるボルト孔55が複数設けられており、排塵カバー11は、該ボルト孔にノブボルトを取付けることによって開放状態と閉鎖状態とに固定可能に設けられている。
【0022】
排塵カバー11の内側には、図7に示すように、排塵口42から排出される塵埃を既に刈取り作業を終えた既刈り地側に案内するガイド板51が設けられている。該ガイド板51は、背面板11aの内側と機体側との間に架設されており、その一部が可撓体であるゴム板51aで構成されている。該ゴム板51aの両端部は、排塵カバー11の内側面に取付けられたブラケット51b及び機体の排塵口の下方側に取付けられたブラケット51cそれぞれに取付けられており、ガイド板51の排出口側端部51dは、ガイド板51の排塵口側端部51eに対してグレンタンク9側に偏倚して取付けられており、ガイド板51は傾斜して取付けられている。
【0023】
ガイド板51の隣には、図8に示すように、排塵カバー11から排出される塵埃の拡散を調整する補助ガイド板52が設けられている。該補助ガイド板52は、排塵口42から機体下方に向かって延設されており、補助ガイド板52の高さは、ガイド板51の高さよりも低く設定されている。また、該補助ガイド板52は、機体側(流し板)に複数設けられた取付部である取付孔53に取付部材である取付けボルトが取付けられて機体側に固定さられており、補助ガイド板52は、取付孔の53を変えることで、左右方向に移動可能に設けられている。また、ブラケット51cや補助ガイド板52等が取付けられる流し板は、脱穀装置7から着脱自在に設けられている。
【0024】
次に、上記のように構成されたコンバイン1の動作について説明する。作業者は、コンバイン1を運転して圃場まで移動し、圃場内の作業開始位置から刈取り作業を開始する。
【0025】
刈取り作業開始前に、作業者は、排塵カバー11を開くため、ノブボルト48を取り外して排塵カバー11の固定を解除して、排塵カバー11の背面板11aの下端部側を手前側に引っ張る。すると排塵カバー11は、ヒンジ部50を支点として後方方向に回動し、背面板11aの後端面11cは(図6参照)、機体最後端の位置よりも後方に突出して開放状態になる。排塵カバー11が開くと、連動して撓んだ収納状態にあったガイド板51のゴム板51aが開いて作業状態となる。そして、作業者は、排塵カバー11の側板11bに設けられたボルト孔55にノブボルト48を取付けて排塵カバー11を開放状態で固定する。
【0026】
刈取作業は、掻き込みリール13を回転させながら行われ、掻き込みリール13は、回転しながら穀稈を引き起こす。引き起された穀稈は刈刃で刈取られ、刈取られた穀稈は、プラットホームオーガ15から搬送フィーダ16に搬送された後、該搬送フィーダ16よって扱室25に搬送さる。扱室25に搬送された穀稈は、回転する扱胴26の扱歯27によって籾等が扱ぎ落され、扱ぎ落された籾等は受網28を通って揺動選別体37へと落下する。
【0027】
揺動選別体37に落下した籾などの穀粒は、揺動選別体37による揺動選別及び唐箕ファン30等による風選別による選別によって、一番物と二番物とにそれぞれ選別される。ここで一番物とは、選別処理された穀粒であり、二番物とは、選別不十分でワラ屑や穂切れ粒などの夾雑物と穀粒とが混合した混合物である。一番物は、一番ラセン40から一番揚穀装置(不図示)に搬送された後、該一番揚穀装置によってグレンタンク9まで搬送され、二番物は、二番ラセン41から二番還元装置(不図示)に搬送された後、該二番還元装置によって二番還元ラセン(不図示)に搬送される。二番還元ラセンに搬送された二番物は、再選別を行うため、二番還元ラセンによって再び扱室25に還元される。
【0028】
脱穀装置7で穀粒が扱ぎ落されて脱穀処理された塵埃は、排塵口42から機外へと排出される。排塵口42から排出された塵埃は、排塵カバー11によって圃場面に案内落下するが、この際排塵カバー11内の塵埃は、排塵カバー11内のガイド板51によって刈取り作業を終えていない未刈取り地側から既刈取り地側へと案内誘導される。また、塵埃は、補助ガイド板52によって、排塵カバー11から排出される際の拡散量が調整される。この時作業者は、排塵口42から排出される排稈等の排出量等から、補助ガイド板52の取付け位置を左右に変更、調節して排稈等の拡散を調整しながら作業を行う。
【0029】
刈取り作業の終了後、作業者は、排塵カバー11を閉じるため、排塵カバー11を開放状態に固定していたノブボルト48を取り外し、排塵カバー11の背面板11aの下端部側を前方方向へと押し込む。すると排塵カバー11は、ヒンジ部50を支点として前方方向に回動して閉鎖状態となり、背面板11aの後端面11cは、コンバインの後部面に設けられたリヤカバー46や、グレンタンク9等を覆う他のカバー体の後端面11cと略フラットな面となる。また、ガイド板51のゴム板51aは、排塵カバー11の回動に連動して撓み収納状態になる。作業者は、排塵カバー11の側板11bに設けられたボルト取付部にノブボルト48を取付けて排塵カバー11を閉鎖状態に固定する。
【0030】
上述のように、脱穀装置7の後部に設けられた排塵口42を覆う排塵カバー11の上端側にヒンジ部50を設けて、排塵カバー11を開閉自在に構成し、排塵カバー11を閉じることで、排塵カバー11の後端面をコンバイン1の最後端よりも後方に突出させないように排塵カバーをコンバイン1の後部に配置したので、排塵カバー11を開放することで、排塵口42から排出される塵埃を飛散させることなく圃場に排出させることができると共に、排塵カバー11を閉じることでコンバイン1の全長を短くすることができる。これにより、例えば、収納スペースの小さい納屋等にコンバインを収納することができてコンバイン1の収納性の向上を図ることができる。
【0031】
また、排塵カバー11の内側に、塵埃を既刈取り地側に排出するためのガイド板51を背面板11aの内側面と機体の排塵口の下方側との間に架設し、かつガイド板51の少なくとも一部をゴム板51aで構成したので、塵埃を未刈取り地側に飛散させることなく既刈取り地側に排出することができ、また、ガイド板51を取外すことなく容易に排塵カバー11を閉じることができる。
【0032】
また、排塵カバー11を閉じた状態にすると、排塵カバー11の後端面11cとコンバインの後端に設けられた扱室25の後方を覆うリヤカバー46やグレンタンク9等を覆う他のカバーの後端面とが略フラットな面になり、コンバイン1の後方面全体が略フラットな面となるので、コンバイン1の後部面の外観が良くなる。
【0033】
また、補助ガイド板52の取付位置を左右方向に変更可能にして排出される塵埃の排出量を調整可能に設けたので、塵埃を圃場に均一に排出することができる。
【0034】
また、排塵ケース49、排塵カバー11及び、流し板等を着脱自在に設けたので、排塵ケース49、排塵カバー11及び、流し板等を取り外すことにより、脱穀装置7の後部を開放することができ、開放口から揺動選別体37を容易に引き出すことができる。これにより、メンテナンスを容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンバイン
5 前処理部
7 脱穀装置
11 カバー体(排塵カバー)
11c 後端面
51 ガイド板
51a 可撓体(ゴム板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈取る前処理部と、該前処理部で刈取った穀稈を脱穀して選別する脱穀装置と、該脱穀装置で脱穀処理された塵埃を機外に排出する排塵口と、を備えたコンバインにおいて、
前記排塵口から排出される塵埃を圃場に案内落下するカバー体を機体に開閉自在に設け、
該カバー体を閉じると、前記カバー体の後端面が機体の最後端の位置よりも後方に突出しないように配置してなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記カバー体と前記機体との間に、塵埃を既刈り地側に案内するガイド板を架設し、該ガイド板の少なくとも一部が可撓体からなる、
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記カバー体は、閉じた状態で、前記カバー体の後端面と前記機体の後端の他のカバー体とが略フラットな面となる、
請求項1又は2に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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