説明

コンバーターおよび本コンバーターを用いた空気調和機

【課題】リアクターのインダクタンスを調節することで効率の良いコンバーターおよび本コンバーターを用いた空気調和機を提供する。
【解決手段】昇圧チョッパ回路40を有するコンバーター20において、前記昇圧チョッパ回路40は、中間タップ3aを備えたリアクター3と、前記中間タップ3aと前記リアクター3の一方の端子との間に、前記リアクター3の一部と並列に設けられた第一のスイッチ4と、前記リアクター3に直列に接続されたコンデンサー8と、前記コンデンサー8に並列接続されたスイッチング手段30とを備え、前記第一のスイッチ4は、昇圧時に閉から開に制御され、前記スイッチング手段30は、昇圧時に周期的に開閉制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクターを備えたコンバーター、およびそのコンバーターにより駆動される圧縮機を用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の圧縮機等に用いられ、リアクターを用いて昇圧を行う従来のコンバーターとして、「入力電源1を直流電圧に変換して昇圧チョッパ回路3で負荷4の電圧を得る際、昇圧チョッパ回路3のスイッチング素子3cをスイッチングし、リアクター(昇圧チョークコイル)3aを介して短絡して力率を改善する。・・・・そのスイッチング素子3cをオン、オフする。」というものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−129849号公報(要約、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンバーターは、接続された負荷装置の駆動範囲を広げる場合、容量の大きいリアクターを用いて高い直流電圧を生成していた。しかし、リアクター容量が大きいとインダクタンスが大きいため、コンバーターの変換効率が悪くなるという問題点があった。また、リアクター容量が大きいと圧縮機起動から昇圧用スイッチング素子を始動するまでの間の電圧降下が大きくなり、コンバーターの変換効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、コンバーターに容量の大きいリアクターを用いた場合、軽負荷のとき又は負荷起動時には、そのリアクターのインダクタンスを小さくすることができるコンバーターおよび本コンバーターを用いた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるコンバーターは、昇圧チョッパ回路を有するコンバーターにおいて、前記昇圧チョッパ回路は、中間タップを備えたリアクターと、前記中間タップと前記リアクターの一方の端子との間に、前記リアクターの一部と並列に設けられた第一のスイッチと、前記リアクターに直列に接続されたコンデンサーと、前記コンデンサーに並列接続されたスイッチング手段とを備え、前記第一のスイッチは、昇圧時に閉から開に制御され、前記スイッチング手段は、昇圧時に周期的に開閉制御されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、リアクターに中間タップを設け、そのリアクターの一部と並列に設けられたスイッチの開閉によりインダクタンスが調整できる。そのため、大きい容量のリアクターを用いても軽負荷のとき又は負荷起動時にはインダクタンスを小さくできるので、効率の良いコンバーターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における空気調和機の、コンバーターおよびコンバーターにより駆動される圧縮機の周辺を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1における制御動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1におけるコンバーターの、圧縮機起動時の直流電圧検出値と負荷状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるコンバーターの、圧縮機停止時の直流電圧検出値と負荷状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明におけるコンバーター、および本コンバーターにより駆動される圧縮機を用いた空気調和機について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1における空気調和機100の、コンバーター20およびコンバーター20により駆動される圧縮機の周辺を示した図である。
図1の空気調和機100において、コンバーター20の入力端子には、交流電源1と、交流電源1による電源供給をON,OFFするためのブレーカー2とが直列に接続されている。コンバーター20の出力端子には、直流電圧を交流電圧に変換するインバーター11が接続されており、その交流電圧により駆動される圧縮機12がインバーター11に接続されている。また、制御部13は、空気調和機100内の任意の場所にあり、電流検出手段9と電圧検出手段10からの検出値が入力され、スイッチ4、スイッチング素子6、ブレーカー2およびインバーター11を制御する。なお、コンバーター20に接続する負荷装置は空気調和機100に用いられる圧縮機12に限られるものではなく、他の負荷装置でもよい。例えば、負荷装置が直流負荷であればインバーター11を使用しなくてもよい。また、コンバーター20は、昇圧チョッパ回路40と、スイッチング手段30に並列に接続された整流器7(本発明における第二の整流器に相当)とで構成される。
【0011】
次に、昇圧回路チョッパ40の構成について説明する。
昇圧チョッパ回路40は、交流電源1とブレーカー2に直列に接続されたリアクター3は、中間タップ3aを備えている。また、中間タップ3aとリアクター3の一方の端子との間に、リアクター3のインダクタンスを変更できるスイッチ4(本発明における第一のスイッチに相当)が接続されている。また、交流電源1にリアクター3を介して接続されるスイッチング手段30がある。スイッチング手段30は、整流器5(本発明における第一の整流器に相当)と、整流器5の出力端子間に並列接続された昇圧用のスイッチング素子6(本発明における第二のスイッチに相当)とで構成される。また、整流器7の出力端子間に並列接続された平滑用のコンデンサー8がある。
【0012】
次に、コンバーター20に接続する電流検出手段9と電圧検出手段10について説明する。
コンバーター20の整流器5の入力端子に電流を検出するための電流検出手段9が接続されている。また、整流器7の出力端子に、整流された電圧を検出するための電圧検出手段10が接続されている。電圧検出手段10は、ダイオード10aと抵抗10bとで構成されている。
なお、電流検出手段9は、コンバーター20に接続する負荷を算出できればよく、上記の位置でなくても例えば整流器7の出力端子に接続し、整流された後の電流を検出してもよい。電圧検出手段10は、整流された電圧を検出できればよく、上記の位置および上記の構成でなくてもよい。
【0013】
次に、本実施の形態1におけるコンバーター20と圧縮機12の動作について、図2、図3、および図4を用いて説明する。
図2は、本実施の形態1におけるコンバーター20の制御動作を説明するフローチャートである。また、図3は、本実施の形態1におけるコンバーター20の、圧縮機12起動時の電圧検出値(電圧検出手段10による検出値)と負荷状態を示す図である。図4は、本実施の形態1におけるコンバーター20の、圧縮機12停止時の電圧検出値(電圧検出手段10による検出値)と負荷状態を示す図である。
【0014】
以下、図2のフローチャートの開始から順に説明する。
STEP1は本制御動作の初期状態であり、制御部13は、ブレーカー2をOFFにし、スイッチ4を閉、スイッチング素子6を開にする。また、STEP1では、図3の区間1に示すように、圧縮機12の負荷は無い状態で、電圧検出値は0である。
【0015】
STEP2において、制御部13は、ブレーカー2をONにし、交流電源1による交流電源がコンバーター20に供給されると、図3の区間2に示すように、電圧検出値は上昇する。そして、交流電源1により出力された交流電圧は、整流器7により整流されて直流電圧となり、コンデンサー8により平滑される。
【0016】
STEP3において、その直流電圧は、インバーター11により交流電圧に変換されて圧縮機12に送られ、圧縮機12が起動する。
【0017】
STEP4において、制御部13は、電源OFF指令が無いか確認する。
【0018】
STEP4で電源OFF指令が無い場合、制御部13は、電圧検出手段10にて検出した電圧検出値と閾値とを比較する。ここで、電圧検出値が閾値(例えば250V)より大きい場合は、STEP4に戻る。(STEP5)
【0019】
STEP5において、制御部13は、電圧検出手段10にて検出した電圧検出値と閾値とを比較する。そして、電圧検出値が閾値以下の場合、図3の区間3に示すように圧縮機12の負荷が重くなったことにより直流電圧が降下したと考えられる。そのため、制御部13からスイッチング素子6に動作指令を出し、昇圧のためにスイッチング素子6を開閉動作させる。(STEP6)
【0020】
スイッチング素子6が開閉動作をすると図3の区間4に示すように、直流電圧が上昇する。ここで、制御部13がスイッチ4に開指令を出し、リアクター3のインダクタンスを大きくすると、図3の区間5に示すように直流電圧の上昇速度が増加する。(STEP7)
【0021】
STEP8において、制御部13は、電源OFF指令が無いかどうか確認する。
【0022】
電源OFF指令が無い場合、制御部13は、電流検出手段9にて検出した電流値から圧縮機12の負荷を算出し閾値(例えば500W)と比較する。(STEP9)
【0023】
算出された負荷が閾値以下の場合、制御部13は、スイッチング素子6に動作停止指令を出す。スイッチング素子6の開閉動作が停止すると図4の区間6のように電圧検出値は降下し始める。(STEP10)
【0024】
スイッチング素子6の開閉動作停止後、制御部13は、スイッチ4を閉にしてリアクター3のインダクタンスを小さくする(STEP11)。そして、STEP4に戻る。
【0025】
以上に圧縮機12の起動時の動作を説明したが、以下から圧縮機12の停止時の動作を説明する。
STEP4において、電源OFF指令があった場合、制御部13は、ブレーカー2をOFFする。(STEP12)
【0026】
ブレーカー2がOFFとなった場合、電源の供給が無くなるため、圧縮機12は停止する。(STEP13)
【0027】
また、STEP8(スイッチ4は開状態)において電源OFF指令があった場合、制御部13は、ブレーカー2をOFFする。(STEP14)
【0028】
ブレーカー2がOFFになると、電源の供給が無くなるため、圧縮機12が停止する。(STEP15)
【0029】
電源供給が無くなると、制御部13は、スイッチ4を閉にするためリアクター3のインダクタンスは小さくなる。(STEP16)
【0030】
以上に、本実施の形態1における圧縮機12の起動時および停止時の制御動作例について説明した。
なお、本実施の形態1の制御動作において、圧縮機12の起動および停止でなくても負荷上昇および負荷下降が発生した場合であっても上記と同様に制御される。例えば、空気調和機100の設定温度変更による圧縮機12の負荷上昇および負荷下降でも上記と同様に制御される。
【0031】
以上のように、圧縮機12のような負荷装置の起動時に、リアクター3のインダクタンスを小さくしておくことで、電圧降下を軽減できるため、コンバーター20の効率を改善できる。
また、負荷装置の容量が大きくリアクター3の容量が大きい場合でも、負荷が軽いときにはリアクター3のインダクタンスを小さくしておくことで、コンバーター20の効率を改善できる。そして、コンバーター20により駆動される圧縮機12を用いた空気調和機100の効率を改善できる。
【符号の説明】
【0032】
1 交流電源、2 ブレーカー、3 リアクター、3a 中間タップ、4 スイッチ、5 整流器、6 スイッチング素子、7 整流器、8 コンデンサー、9 電流検出手段、10 電圧検出手段、10a ダイオード、10b 抵抗、11 インバーター、12 圧縮機、13 制御部、30 スイッチング手段、40 昇圧チョッパ回路、100 空気調和機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧チョッパ回路を有するコンバーターにおいて、
前記昇圧チョッパ回路は、
中間タップを備えたリアクターと、
前記中間タップと前記リアクターの一方の端子との間に、前記リアクターの一部と並列に設けられた第一のスイッチと、
前記リアクターに直列に接続されたコンデンサーと、
前記コンデンサーに並列接続されたスイッチング手段と、
を備え、
前記第一のスイッチは、昇圧時に閉から開に制御され、
前記スイッチング手段は、昇圧時に周期的に開閉制御されることを特徴とするコンバーター。
【請求項2】
前記リアクターは、交流電源に直列に接続され、
前記スイッチング手段は、第一の整流器と該第一の整流器に並列接続された第二のスイッチとを備え、
前記コンデンサーは、
前記スイッチング手段に第二の整流器を介して接続されたことを特徴とする請求項1に記載のコンバーター。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンバーターと、
前記コンデンサー間の電圧を検出する電圧検出手段と、
前記第一のスイッチ及び前記第二のスイッチを制御する制御部と、
前記コンバーターから出力された直流電圧を交流電圧に変換するインバーターと、
前記交流電圧により駆動される圧縮機と、
を備え、
前記制御部は、
前記電圧検出手段により検出された前記電圧が所定値以下の場合に、前記第二のスイッチに周期的に開閉動作をさせることで昇圧を行い、前記第一のスイッチを開にすることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、
前記圧縮機の負荷電力が所定値以下の場合に、前記第二のスイッチの開閉動作を停止し前記第一のスイッチを閉にすることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記コンバーターの入力電流を検出する電流検出手段を備え、
前記制御部は、
前記入力電流に基づいて、前記負荷電力を算出することを特徴とする請求項4に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−239582(P2011−239582A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109348(P2010−109348)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】