説明

ゴムクローラ型草刈機

【課題】
特に軟弱傾斜地盤において、機体が低い側にずれ落ちる傾向を可能な限り抑制して、等高線に沿って草木類を支障なく刈り取れる草刈機の提供である。
【解決手段】
左右一対のゴムクローラ1を備えた機体Aと、該機体Aの前部に装着された草刈ユニットUとから成る草刈機において、前記草刈ユニットUは、垂直回転軸46を中心に刈刃41が回転するロータリー式の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムクローラを備えた機体の前部にロータリー式の草刈ユニットを装着したゴムクローラ型草刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムクローラを備えた機体の前部に草刈ユニットを装着した従来のゴムクローラ型草刈機としては、例えば特許文献1に示されるように、前記草刈ユニットとして、水平回転軸に複数のハンマーナイフが取付けられた構成のものがある。ゴムクローラ型の草刈機は、機体が左右一対のゴムクローラにより走行されるために、走行安定性と直進走行性に優れている利点がある。また、ハンマーナイフ式の草刈ユニットは、刈り取るべき草木類に高速回転するハンマーナイフを衝撃的に叩き付けて、草木類を刈り取る構成であるために、背丈のある草類は勿論のこと、ある程度の太さの木類も同時に刈り取る(折り取る)ことができて、草刈作業の能力が高くて、確実に草木類を刈り取ることのできる利点がある。
【0003】
しかし、しっかりした通常の地盤においては、上記したハンマーナイフ式のゴムクローラ型草刈機は威力を発揮するが、軟弱な地盤、特に軟弱な傾斜地盤においては、ハンマーナイフ式の草刈ユニットの重量が大きいことが主因となって、等高線刈りが難しいという問題があった。即ち、ハンマーナイフ式の草刈ユニットは、その全体重量が大きいために、機体と草刈ユニットとを含めた草刈機全体の重心位置は、機体の前方(草刈ユニットの側)にずれると共に、前記草刈ユニットは、水平回転軸を中心にしてハンマーナイフが回転する構成であるために、草刈ユニットの重心位置も高くなって、草刈機全体の重心位置が高くなる。このため、軟弱傾斜地盤において等高線刈りを行うと、機体の前端部に装着された草刈ユニットが低い側にずれ落ちる傾向が大きくなって、運転者は等高線に沿って走行するように軌道修正を定期的に行いながら運転を行う必要があって、等高線刈りが難しくなると共に、運転操作も難しいという問題があった。
【0004】
一方、垂直軸を中心にしてカッターが回転するロータリー式の草刈ユニットが機体の先端部に装着された草刈機もあるが、この種の草刈機の機体は一対の車輪により走行する構成であった。このため、車輪型の草刈機によって、軟弱傾斜地盤において草木類の等高線刈りを行う場合には、草刈ユニットが傾斜地の低い側に頻繁にずれ落ちるために、運転者は等高線に沿って走行するように頻繁に軌道修正を行いながら草刈作業を行う必要があって、等高線刈りが難しいと共に、運転作業も難しかった。
【特許文献1】特公平8−18572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特に軟弱傾斜地盤において、機体が低い側にずれ落ちる傾向を可能な限り抑制して、等高線に沿って草木類を支障なく刈り取れる草刈機の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、左右一対のゴムクローラを備えた機体と、該機体の前部に装着された草刈ユニットとから成る草刈機において、前記草刈ユニットは、垂直軸を中心に刈刃が回転するロータリー式であることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明によれば、ゴムクローラ構造の機体と、ロータリー式の草刈ユニットとの組み合わせによって、ゴムクローラを備えた機体とハンマーナイフ式の草刈ユニットとの組み合わせに係る草刈機に比較して、草刈機全体の前後方向に沿った重心を機体の手前側(運転者の位置する側)にずらすことができると共に、上下方向に沿った重心を下げることもできる。また、ハンマーナイフ式の草刈機に比較して、草刈機全体を大幅に軽量化できる。このため、上記した草刈機全体の重心位置の移動(ずれ)と、草刈機の軽量化とが相俟って、傾斜地盤、特に軟弱傾斜地盤で草刈作業を行う場合において、草刈機全体が低い側にずれ落ちる傾向が抑制されて(少なくなって)、ゴムクローラ構造の機体の直進走行性と走行安定性とが高まって、軟弱傾斜地盤において草木類の等高線刈りを安定して行うことができる。よって、機体の後方において運転作業を行う運転者の運転操作も容易となる。また、同じくロータリー式の草刈ユニットを備えた草刈機であっても、車輪構造の機体を備えた草刈機においては、草刈機が地盤の低い側にずれ落ちて、運転者は等高線に沿うように頻繁に軌道修正を行う必要があるのに比較して、軟弱傾斜地盤における直進走行性と走行安定性が大幅に高められて、機体が低い側にずれ落ちる傾向が大幅に抑制されることにより、等高線刈りを実施し易くなる。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記草刈ユニットは、左右方向に所定間隔をおいて配置された2本の刈刃と、該2本の刈刃の後方であって、しかも左右方向に沿って前記2本の刈刃の中間位置に配置された1本の刈刃との計3本の刈刃を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明によれば、草刈ユニットを構成する3本の刈刃を上記のように配置することにより、左右方向に所定間隔をおいて配置された2本の刈刃の前方であって、しかも前記2本の刈刃の左右方向の中間位置に1本の刈刃を配置する場合に比較して、機体の前部にロータリー式の草刈ユニットが装着された草刈機の全長を短くできて、草刈機全体の前後方向の重心位置を機体の手前側(運転者の位置する側)に更に付けられる。この結果、傾斜地における等高線方向に沿った走行性が一層に良好となって、機体の運転操作も容易となる。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のいずれかの発明において、前記草刈ユニットは、機体のフレームに対して通常時には重力作用によって水平に支持されていて、先端部が障害物等に当たった場合には、該障害物を回避すべく水平状態から上方にのみ回動し得るように支持されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明によれば、草刈ユニットは、作業位置である水平位置から上方にのみ回動する構成になっているため、草刈作業時に等高線方向に沿って存在する大きな山部等の障害物に草刈ユニットが当たったり、或いは傾斜面を登坂又は降坂する際に、機体と草刈ユニットの部分との傾斜角の相違によって草刈ユニットが傾斜面に当たったりした場合には、障害物等を回避すべく草刈ユニットが機体に対して上方に回動するため、支障なく草刈作業を行ったり、傾斜面を登坂又は降坂できる。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記草刈ユニットの先端部には、最も刈高が低い草刈状態においても接地せず、機体の接地部に対して傾斜した面に対してのみ接地可能な接地輪が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明によれば、草刈ユニットの先端部の接地輪は、最も刈高が低い通常の草刈状態においても接地していないため、堤防法面等の傾斜地で等高線刈りを行う際に、その刈取端で旋回を行う場合において、接地輪が地面に当たって引っ掻くことがない。一方、等高線方向に沿って山部が存在する場合、傾斜地を登坂又は降坂する際において、機体の接地部に対して傾斜した面が存在すると、草刈ユニットの先端部の接地輪は前記山部、或いは傾斜面に当たって、機体に対して草刈ユニットが上方に回動されて、草刈機が走行可能な状態となる。また、草刈ユニットの全荷重が機体の前部に片持ち状となって作用して、機体の実質重量が増加するため、ゴムクローラを備えた機体の直進走行性が高められる。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記草刈ユニットは、機体に対して平行リンク機構を介して連結されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明によれば、簡単な機構によって、水平状態を維持したままで、機体に対して草刈ユニットを昇降させられる。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記機体に搭載されたエンジンの動力を草刈ユニットに伝動するために、草刈ユニットのカバー本体に搭載されたギアボックスの入力軸と、前記平行リンク機構を構成する先端垂直リンクに回動可能に支持される草刈ユニットの回動支点とは、同一軸線上に配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項6の発明によれば、草刈ユニットのカバー本体に搭載されたギアボックスの入力軸と、前記平行リンク機構を構成する先端の可動垂直リンクに支持されている草刈ユニットの回動支点とは、同一軸線上に配置されているために、機体に対して草刈ユニットが回動しても、エンジンの出力軸のプーリーとギアボックスの入力軸のプーリーとの間に掛装された無端ベルトは全く緩まない。この結果、機体に対する草刈ユニットの傾斜角度とは無関係に、エンジンの動力が常に草刈ユニットに支障なく伝達される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、左右一対のゴムクローラを備えた機体と、該機体の前部に装着された草刈ユニットとから成る草刈機において、前記草刈ユニットは、垂直軸を中心に刈刃が回転するロータリー式であるため、ハンマーナイフ式の草刈ユニットに比較して、草刈機全体の重心を機体の前後方向に沿って手前側にずらすことができると共に、下げることもできるので、特に軟弱傾斜地盤の草木類を等高線に沿って刈り取る場合には、機体の走行安定性と直進性とが高まって機体が低い側にずれ落ちる傾向が大幅に抑制される。このため、上記した軟弱傾斜地盤の草木類を等高線に沿って能率よく刈り取ることができると共に、運転者が機体の後方において追随して行う運転操作も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明に係るゴムクローラ型草刈機の全体の概略斜視図であり、図2及び図3は、それぞれゴムクローラ型草刈機の側面図及び平面図であり、図4は、同じく主要部分の斜視図であり、図5は、動力伝達系統を示す平面図である。図1ないし図4において、本発明に係るゴムクローラ型草刈機は、左右両側に一対のゴムクローラ1を備えた機体Aと、該機体Aの前部に平行リンク機構Kを介して水平を維持して昇降可能に装着されたロータリー式の草刈ユニットUとで構成される。ロータリー式の草刈ユニットUは、複数本(実施例では3本)の刈刃41を備えていて、各刈刃41は、垂直回転軸46の下端部に取付けられて垂直回転軸46の軸心に対して垂直な面内で回転して、草木類を切断する構成である。
【0020】
また、機体Aの前後方向及び幅方向の双方の中央部には、エンジンEが搭載され、該エンジンEの出力は、それぞれ伝動機構によって各ゴムクローラ1と、草刈ユニットUに伝達されて、各ゴムクローラ1は、所定方向に周回走行して機体Aを前進又は後進させると共に、草刈ユニットUの各刈刃41を所定方向(上方から見て時計方向)に回転させる。機体Aの後部には、後部フレーム2が設けられていて、該後部フレーム2の後上端部にはハンドル3が取付けられている。機体AにおけるエンジンEの後方にはトランスミッション4が配置され、エンジンEの駆動軸5に取付けられた二重プーリー6の一方6aと、前記トランスミッション4の入力軸7に取付けられたプーリー8との間に無端ベルト9が掛装されて、エンジンEの動力はトランスミッション4の入力軸7に伝達されて、該トランスミッション4内で大きく減速されて、出力軸11から出力される。トランスミッション4の入力軸7の下方には、機体Aの全幅よりも長い出力軸11が配置されていて、該出力軸11の両端に取付けられた各スプロケット12によって無端状のゴムクローラ1が周回走行される。
【0021】
また、機体Aの前部には平行リンク機構Kを介して草刈ユニットUが昇降可能に装着されている。変更リンク機構Kは、機体Aの前部の幅方向の両端部に配置された同一構造の一対の平行リンク機構単体K’で構成されている。平行リンク機構単体K’は、機体Aの前部の幅方向の両端に垂直に固定された固定垂直リンク13と、該固定垂直リンク13の前方に所定間隔をおいて配置される可動垂直リンク14と、前記固定垂直リンク13と前記可動垂直リンク14とを連結する上下一対の等長の連結リンク15とで構成される。草刈ユニットUのカバー本体42の後方には、機体Aの幅方向に沿って一対の連結アーム43が垂直上方に向けて一体に取付けられ、各連結アーム43の上端部の背面側にブラケット44が固着されている。草刈ユニットUは、平行リンク機構Kを構成する一対の可動垂直リンク14に対して前記ブラケット44の外側に水平に取付けられた支点ピン45を介して回動可能に連結されている。一方、一対の可動垂直リンク14の下端部の内方には、クッション材ブラケット16が取付けられていて、該ブラケット16の前面には、草刈ユニットUの連結アーム43の下端部の背面側を当接させて草刈ユニットUの全体を水平に維持するためのクッション材17が取付けられている。
【0022】
また、機体Aには、平行リンク機構Kを介して草刈ユニットUが昇降可能に装着されていて、前記機体Aには、該機体Aに対して草刈ユニットUを昇降させるための昇降機構Bが装着されている。昇降機構Bは、一対の平行リンク機構単体K’を構成する上方の一対の連結リンク15に一体に取付けられた回動ブラケット21,21’と、各回動ブラケット21,21’の自由端部を互いに連結する連結ロッド22と、前記回動ブラケット21を支点ピン23を中心にして回動させて草刈ユニットUの高さ(草木類の刈高)を定めるための刈高調整ロッド24と、後部フレーム2と連結ロッド22の一端部とを連結して、当該連結ロッド22の一端部の剛性を高めるための引張バネ付ロッド25とを備えている。回動ブラケット21の外側面には、ブラケット31を介して雌ねじ体32が回動可能に装着されていて、先端部が前記雌ねじ体32に螺合された刈高調整ロッド24の基端部は、後部フレーム2に取付けられたブラケット33に対して回動可能であって、しかも進退不能に支持されている。よって、図6に示されるように、刈高調整ロッド24の基端部に取付けられたハンドル34によって、該刈高調整ロッド24を所定方向に回転させると、平行リンク機構Kを構成する上方の連結リンク15が支点ピン23を中心に所定方向に回動されて、草刈ユニットUは、水平を維持したまま昇降されて、草木類の刈高H1(H2)が定められる。
【0023】
次に、図1ないし図4を参照にして、草刈ユニットUについて詳細に説明する。カバー本体42は、横長方形状の前2箇所の各コーナー部を小さく、後2箇所の各コーナー部を大きく面取りした形状であって、本体天板47に3本の垂直回転軸46が支持されていて、各垂直回転軸46における本体天板47の下方に配置された下端部には、それぞれ刈刃41が取付けられていて、各垂直回転軸46における本体天板47の上方に突出した部分には、それぞれプーリー48が取付けられている。3本の刈刃41のうち2本は、機体Aの幅方向(左右方向)に沿って所定間隔をおいて配置され、残りの1本は、該2本の刈刃41の後方であって、しかも機体Aの幅方向に沿って前方の2本の刈刃41の中間位置に配置されている。3本の刈刃41をこのように配置したのは、図11(ロ)に示されるような配置に比較して、草刈機の全長(L0 )〔図11(イ)参照〕を短くして、草刈機全体の前後方向の重心位置を可能な限り機体Aの後部(運転者の位置する側)に近付けて、草刈機の走行安定性と直進走行性を高めるためである。なお、3本の刈刃41 のうち相隣接する2本の刈刃41の各回転軌跡は、機体Aの幅方向(横方向)に沿って所定量だけ重複させて、刈り残しが生じないようにしてある。
【0024】
また、図2ないし図5に示されるように、カバー本体42の後端部上方であって、機体Aの幅方向の中央部には、該カバー本体42と一体となって昇降、及び回動を行うギアボックス49が搭載されていて、エンジンEの駆動軸5に取付けられた別のプーリー6bと、前記ギアボックス49の入力軸52に取付けられたプーリー53との間に無端ベルト54が掛装されている。ギアボックス49の出力軸55は、該ギアボックス49の下方に垂直に突出していて、該出力軸55に取付けられたプーリー56と、後方の刈刃41を取付けている垂直回転軸46に取付けられた別のプーリー57との間に無端ベルト58が掛装されている。また、各垂直回転軸46における本体天板47から上方に突出した部分にそれぞれ取付けられた各プーリー48には、無端ベルト61が掛装されている。上記した伝動機構によって、エンジンEの動力は、ギアボックス49で伝動方向を90°変換された後に、ベルト伝動機構によって各垂直回転軸46に分配されて、カバー本体42の下方に配置された各刈刃41は、同一方向(実施例では上方から見て時計方向)に同一回転速度で回転する。なお、図3及び図4において、62は、無端ベルト61に対して2箇所でテンションを付与するテンションプーリーであり、63は、無端ベルト58にテンションを付与するテンションプーリーを示す。また、図2において、75,76は、それぞれ無端ベルト9,54にテンションを付与するテンションプーリーを示す。
【0025】
また、図2及び図4に示されるように、可動垂直リンク14に対して草刈ユニットUを連結している支点ピン45の軸心C1 と、草刈ユニットUと一体となって昇降・回動するギアボックス49の入力軸52の軸心C2 とは、同一軸線上に配置されている。この構造により、刈取作業時において草刈ユニットUが突出物81に乗り上がったり〔図8(イ)〕、或いは傾斜法面82に対して登坂又は降坂する際に、草刈ユニットUが機体Aの部分と異なる傾斜角度の部分に当たった場合〔図8(ロ)〕に、機体Aに対して草刈ユニットUが支点ピン45を中心にして回動しても、エンジンEの駆動軸5に取付けたプーリー6aと、ギアボックス49の入力軸52に取付けたプーリー53との間に掛装された無端ベルト54は緩まない。このため、刈取作業時において草刈ユニットUが突出物81に乗り上がったりした場合でも、エンジンEの動力は、草刈ユニットUの各垂直回転軸46に伝達効率が全く低下することなく(機体Aに対して草刈ユニットUが平行な状態と同一の状態で伝達されて)、刈取作業を行える。
【0026】
また、図2及び図4に示されるように、草刈ユニットUのカバー本体42の幅方向の両端部には、接地輪アーム64を介して接地輪65が取付けられている。この接地輪65は、図5に示されるように、最も短い刈高(H1)の場合においても、接地しない高さに設けられていて、図8(イ),(ロ)に示されるように、草刈機の走行線の前方に山部が存在していたり、或いは河川の堤防等の傾斜法面に対して登坂又は降坂する際に、草刈ユニットUの先端部が当たる場合に前記接地輪65が最初に当たる部分となる。このような設計にしたのは、河川の堤防等の傾斜法面を含めて草木類が繁茂している場所において両刈取端において旋回しながら刈取作業を行う際に、前記旋回時において草刈ユニットUの先端の接地輪65が地面を引っ掻くのを防止するためである〔最も短い刈高(H1)において、接地輪65は接地していないので、草刈機の旋回時において地面を引っ掻かない〕。
【0027】
また、可動垂直リンク14に一対の支点ピン45を介して回動可能に連結されている草刈ユニットUは、そのメンテナンス等を行う際には、図7に示されるように大きく上方に回動させて、この姿勢を維持させる必要がある。そこで、支点ピン45を取付けているブラケット44の上面に孔付ブラケット66を一体に設けると共に、可動垂直リンク14の内側面に後方に向けて孔付ブラケット67を一体に設けて、草刈ユニットUを大きく上方に回動させて両孔付ブラケット66,67が合致した状態で、両孔付ブラケット66,67を連結ピン68で連結することにより、草刈ユニットUが上方に大きく持ち上げられた姿勢を維持可能にしている。また、草刈ユニットUの前面及び両側面には、刈刃41の高速回転により当たった石類が草刈ユニットUのカバー本体42から外部に飛散して周辺の作業者などに当たる危険を防止するためのゴムカバー69が垂れ下げられている。草刈ユニットUの本体天板47に上方に配置されたプーリー48等は、カバー71で覆われている。なお、図2及び図4において、72は、連結アーム43の上端部と本体天板47とを連結して剛性を高めるための補強ロッドであり、73は、メンテナンス等の際に草刈ユニットUを上方に大きく回動させる際に手で持ち上げるための取っ手を示す。また、図2及び図3において、87は、草刈ユニットUの刈刃41の駆動回転及びその遮断を行う刈刃レバーであり、88は、駐車時などにおいてミッション4の出力軸11にブレーキ力を加えるブレーキレバーであり、89は、アクセルレバーである。また、図1及び図4において90は、一対の平行リンク機構単体K’を構成する上方の連結リンク15どうしを連結して、各平行リンク機構単体K’の一体性を高めるための補強用の連結ロッドを示す。
【0028】
左右一対のゴムクローラ1を備えた機体Aの前部に、ロータリー式の草刈ユニットUが装着された上記実施例の草刈機の重心位置(G0 )は、草刈ユニットUがハンマーナイフ式の場合に比較すると、機体Aの前後方向に沿って手前側(運転者の位置する側)にずれると共に、上下方向に沿った重心位置も下がる。また、ロータリー式の草刈ユニットUは、ハンマーナイフ式に比較して軽量となる。しかも、草刈ユニットUの前端部両端に配置された一対の接地輪65は、いずれも草刈ユニットUの最も低い位置(最も刈高の短い位置)においても接地しない構成になっているため、草刈ユニットUの全重量が機体Aの前端部に片持ち状となって作用する。機体Aがゴムクローラ1により走行されることを主体にして、上記各事項が相乗して、図9に示されるように、堤防等の傾斜法面82において、等高線方向に沿って草木類Jを刈り取る際には、等高線方向に沿った走行安定性が高まって、機体Aが傾斜法面82の低い側にずれ落ちる頻度が大幅に激減されると共に、仮にずれ落ちようとした場合でも、ずれ落ち量は少なくなる。このため、軟弱傾斜地盤においても、比較的安定して等高線方向に沿って草木類Jの刈取作業を行える。このため、機体Aの後方において該機体Aに運転者Mが追随しながら行う運転作業も容易となる。また、図10に示されるように、機体Aが傾斜法面82の等高線方向に沿って矢印Pの方向に移動すると、傾斜法面82に生えている草木類Jは、その根元部が草刈ユニットUの前端のゴムカバー69に当たって前倒れ状態となって、高速回転中の刈刃41により草木類Jは、根元部で切断されて刈り取られ、刈り取られた草木類は、刈刃41の回転作用によって運転者M(図9参照)から見て右方に送られる。
【0029】
また、ロータリー式の草刈ユニットUの構成に関しては、3本の刈刃41を上記のように配置すると、草刈機の全長(L0 )を短くできる利点があるが、3本の刈刃41を有するものにおいて、図11(ロ)のように配置することも可能である。また、図11(ハ)に示されるように、2本の刈刃41を斜方向に配置することも可能である。図11(ロ),(ハ)に示される刈刃41 の配置を有する草刈機の全長は、それぞれ(L1 ),(L2 )であって、上記実施例の草刈機の全長(L0 )よりも長いが、1本の刈刃を有する草刈機の全長(L3 )よりは短いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るゴムクローラ型草刈機の全体の概略斜視図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく平面図である。
【図4】同じく主要部分の斜視図である。
【図5】動力伝達系統を示す平面図である。
【図6】草刈ユニットUが昇降して草木類の刈高が変化することを示す側面図である。
【図7】可動垂直リンク14に対して草刈ユニットUが回動する状態を示す側面図である。
【図8】(イ),(ロ)は、それぞれ草刈作業時において草刈ユニットUが突出物81に乗り上がった状態、及び傾斜法面82に対して登坂又は降坂する際に、草刈ユニットUが機体Aの部分と異なる傾斜角度の部分に当たった状態を示す側面図である。
【図9】本発明に係る草刈機により傾斜法面82の草木類を刈り取っている状態を草刈機の背面側から見た図である。
【図10】草刈ユニットUの刈刃41により草木類Jが刈り取られる状態を示す図である。
【図11】刈刃41の本数及びその配置によって、草刈機の全長に差異が生ずることを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
A:機体
E:エンジン
K:平行リンク機構
J:草木類
U:草刈ユニット
1:ゴムクローラ
14:可動垂直リンク
41:刈刃
45:草刈ユニットの支点ピン
46:刈刃の垂直回転軸
49:ギアボックス
52:ギアボックスの入力軸
65:接地輪
81:突出物(障害物)
82:傾斜法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のゴムクローラを備えた機体と、該機体の前部に装着された草刈ユニットとから成る草刈機において、
前記草刈ユニットは、垂直回転軸を中心に刈刃が回転するロータリー式であることを特徴とするゴムクローラ型草刈機。
【請求項2】
前記草刈ユニットは、左右方向に所定間隔をおいて配置された2本の刈刃と、該2本の刈刃の後方であって、しかも左右方向に沿って前記2本の刈刃の中間位置に配置された1本の刈刃との計3本の刈刃を備えていることを特徴とする請求項1に記載のゴムクローラ型草刈機。
【請求項3】
前記草刈ユニットは、機体のフレームに対して通常時には重力作用によって水平に支持されていて、先端部が障害物等に当たった場合には、該障害物を回避すべく水平状態から上方にのみ回動し得るように支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムクローラ型草刈機。
【請求項4】
前記草刈ユニットの先端部には、最も刈高が低い草刈状態においては接地せず、機体の接地部に対して傾斜した面に対してのみ接地可能な接地輪が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のゴムクローラ型草刈機。
【請求項5】
前記草刈ユニットは、機体に対して平行リンク機構を介して連結されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のゴムクローラ型草刈機。
【請求項6】
前記機体に搭載されたエンジンの動力を草刈ユニットに伝動するために、草刈ユニットのフレームに搭載されたギアボックスの入力軸と、前記平行リンク機構を構成する可動垂直リンクに支持されている草刈ユニットの回動支点とは、同一軸線上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のゴムクローラ型草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−25676(P2006−25676A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208008(P2004−208008)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(591187841)株式会社共栄社 (13)
【Fターム(参考)】