説明

サイドミラー制御装置

【課題】狭い路地を右左折する場合に、運転者がミラーの角度を調整する必要がなく、運転者のわずらわしい操作を軽減する。
【解決手段】車両左右側部に設けられたミラー2,3の角度を変えるミラー駆動手段5,6と、ミラー駆動手段5,6を制御する制御手段7とを備えたサイドミラー制御装置において、車両左右前後端から所定範囲内に位置する物体を検出する障害物検出手段19と、ステアリングホイールの操舵方向を検出する操舵方向検出手段20とを備え、制御手段は、障害物検出手段19により車両左前端または車両左後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、操舵方向検出手段20により右方向への操舵が検出された時には、ミラー駆動手段5により右ミラー2の角度を運転席から車両下部右側面を視認することができる角度に変えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はサイドミラー制御装置に係り、特に、車両が狭い路地を右左折する際の運転者のわずらわしい操作を軽減することができるサイドミラー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
狭い場所での右左折時に、車両が曲がろうとしている方向の障害物の直近を通らなくてはいけない場合、車両の側面の下部が最も視認しにくい部分である。このため、視認しにくい部分を視認するために車両の側部に設けられたミラーを通常の角度から下方へ動かし、また、その後直進する際にはミラーを通常の角度に戻す、というわずらわしい操作が必要であった。
【0003】
ミラーの角度を変更する従来技術として、特開2006−182160号公報には、走行状態に応じて後輪操舵を行う後輪操舵装置において、運転者が後輪の進行方向を確認できるように、ステアリングホイールの操舵角に応じて車両左右側部に設けられたミラーの表示位置を下方側へ変更する技術が開示されている。
また、特開平8−253078号公報には、運転者が接近車両等を視認できる位置に、ミラーのミラー面を回動させる技術が開示されている。
さらに、特開平8−207665号公報には、低速時に車両と障害物との角度を検出し、検出した角度に対応してミラーの角度を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182160号公報
【特許文献2】特開平8−253078号公報
【特許文献3】特開平8−207665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1〜特許文献3では、車両の後輪や後方の障害物を視認できる位置にミラーの角度を変更しているため、狭い場所での右左折時に最も視認しにくい部分である曲がろうとしている方向の車両の側面下部を見ることができるようにミラーの角度を変更できない。
このため、車両が狭い路地を右左折する場合に、運転者がミラーの角度を調整する必要があり、ミラーの角度調整の操作により運転者をわずらわせ、ステアリングホイール操作の妨げとなった。
【0006】
この発明は、車両が狭い路地を右左折する場合に、運転者がミラーの角度を調整する必要がなく、運転者のわずらわしい操作を軽減することができるサイドミラー制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両左右側部に設けられたミラーの角度を変えるミラー駆動手段と、前記ミラー駆動手段を制御する制御手段とを備えたサイドミラー制御装置において、車両左右前後端から所定範囲内に位置する物体を検出する障害物検出手段と、ステアリングホイールの操舵方向を検出する操舵方向検出手段とを備え、前記制御手段は、前記障害物検出手段により車両左前端または車両左後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、前記操舵方向検出手段により右方向への操舵が検出された時には、前記ミラー駆動手段により右ミラーの角度を運転席から車両下部右側面を視認することができる角度に変えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このサイドミラー制御装置は、車両が狭い路地を右折する場合に、運転者が右ミラーの角度を調整する必要がない。このため、運転者のわずらわしい操作を軽減することができ、ステアリングホイール操作に専念させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はサイドミラー制御装置のシステム構成図である。(実施例)
【図2】図2は狭い路地を車両が右折する場合の説明図である。(実施例)
【図3】図3はサイドミラー制御装置の制御フローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。図1において、1は車両、2は車両1の右側部に設けられた右ミラー、3は車両1の左側部に設けられた左ミラー、4はサイドミラー制御装置である。サイドミラー制御装置4は、ミラー駆動手段として、右ミラー2の角度を上下・左右に変える右ミラー駆動手段5と、左ミラー3の角度を上下・左右に変える左ミラー駆動手段6と、右ミラー駆動手段5、左ミラー駆動手段6を制御するミラー制御手段7とを備えている。
前記右ミラー駆動手段5は、右ミラー2を上下に回動する右ミラー上下調整用モータ8と、右ミラー2を左右に回動する右ミラー左右調整用モータ9とを備えている。前記左ミラー駆動手段6は、左ミラー3を上下に回動する左ミラー上下調整用モータ10と、左ミラー3を左右に回動する左ミラー左右調整用モータ11とを備えている。
前記ミラー制御手段7には、ミラー調整手段として、ミラー上下調整用スイッチ12と、ミラー左右調整用スイッチ13と、ミラー選択スイッチ14とを接続している。ミラー上下調整用スイッチ12は、右ミラー2及び左ミラー3の上下の角度を設定する。ミラー左右調整用スイッチ13は、右ミラー2及び左ミラー3の左右の角度を設定する。ミラー選択スイッチ14は、角度の調整が右ミラー2及び左ミラー3のいずれであるかを選択する。
ミラー制御手段7は、ミラー選択スイッチ14で選択された右ミラー2の右ミラー駆動手段5、あるいは左ミラー3の左ミラー駆動手段6に、ミラー上下調整用スイッチ12および/またはミラー左右調整用スイッチ13で設定された角度に応じた駆動信号を出力する。右ミラー駆動手段5は、駆動信号により右ミラー上下調整用モータ8、あるいは右ミラー左右調整用モータ9を駆動し、右ミラー2の角度を上下・左右に変える。左ミラー駆動手段6は、駆動信号により左ミラー上下調整用モータ10、あるいはミラー左右調整用モータ11を駆動し、左ミラー3の角度を上下・左右に変える。
【0012】
前記ミラー制御手段7は、CAN通信ライン15によりシステム制御手段16に接続されている。ミラー制御手段7とシステム制御手段16とは、サイドミラー制御装置4の制御手段を構成する。
システム制御手段16には、駐車時に車両後方の状況を通知して運転操作を支援するパーキング制御装置17と、ステアリングホイールの操舵をモータで支援する電動パワーステアリング制御装置18とを、CAN通信ライン15により接続している。パーキング制御装置17は、車両1の左右前後端から所定範囲内に位置する物体を検出する障害物検出手段19を備え、障害物情報をシステム制御手段16に入力する。電動パワーステアリング制御装置18は、ステアリングホイールの操舵方向を検出する操舵方向検出手段20を備え、操舵方向情報をシステム制御手段16に入力する。
システム制御手段16は、障害物検出手段19から入力する障害物情報により車両1の左前端または左後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、操舵方向検出手段20から入力する操舵方向情報によりステアリングホイールの右方向への操舵が検出された時には、ミラー制御手段7に右ミラー2の角度を変えるように駆動要求を出力する。ミラー制御手段7は、右ミラー駆動手段5を駆動することにより右ミラー2の角度を運転席から車両1の下部右側面を視認することができる角度に変える。
また、システム制御手段16は、障害物検出手段19から入力する障害物情報により車両1の右前端または右後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、操舵方向検出手段20から入力する操舵方向情報によりステアリングホイールの左方向への操舵が検出された時には、ミラー制御手段7に左ミラー3の角度を変えるように駆動要求を出力する。ミラー制御手段7は、左ミラー駆動手段6を駆動することにより左ミラー3の角度を運転席から車両1の下部左側面を視認することができる角度に変える。
【0013】
次に、サイドミラー制御装置4の作用を説明する。
狭い場所での右左折時には、車両1が障害物と接触しないようにステアリングホイールを操作する必要がある。例えば、図2に示すように、狭い路地Lを右折する場合には、車両1の左前端及び左後端から所定範囲内にそれぞれ位置する障害物A及び障害物Bとの接触に注意しながら、車両1の右側面に位置する障害物Cと接触しないようにステアリングホイールを操作する必要がある。
サイドミラー制御装置4は、図3に示すように、車両1が狭い路地を前進走行で右左折する場合に、制御のプログラムがスタートすると(100)、障害物情報、操舵方向情報を入力し(101)、車両1の左前端から所定範囲内に障害物が検出されたかを判断する(102)。この判断(102)がNOの場合は、車両1の右前端から所定範囲内に障害物が検出されたかを判断する(103)。この判断(103)がNOの場合は、車両1の左後端から所定範囲内に障害物が検出されたかを判断する(104)。この判断(104)がNOの場合は、車両1の右後端から所定範囲内に障害物が検出されたかを判断する(105)。
前記判断(102)がYESの場合、また、前記判断(104)がYESの場合は、右折中であるかを判断する(106)。この判断(106)がYESの場合は、右ミラー2の角度を運転席から車両1の下部右側面を視認することができる角度に変え(107)、リターンする(112)。
前記判断(103)がYESの場合、また、前記判断(105)がYESの場合は、左折中であるかを判断する(108)。この判断(108)がYESの場合は、左ミラー2の角度を運転席から車両1の下部左側面を視認することができる角度に変え(109)、リターンする(112)。
一方、前記判断(105)がNOの場合、また、前記判断(106)がNOの場合、さらに、前記判断(108)がNOの場合は、一定時間車両1が直進したかを判断する(110)。この判断(110)がNOの場合は、リターンする(112)。この判断(110)がYESの場合は、右ミラー2、あるいは左ミラー3を通常の角度に調整し(111)、リターンする(112)。
【0014】
このように、サイドミラー制御装置4は、車両1の左前端または左後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、ステアリングホイールの右方向への操舵が検出された時には、右ミラー2の角度を運転席から車両1の下部右側面を視認することができる角度に変える。
これにより、サイドミラー制御装置4は、車両が狭い路地を右折する場合に、運転者が右ミラー2の角度を調整する必要がない。このため、運転者のわずらわしい操作を軽減することができ、ステアリングホイール操作に専念させることができる。
また、サイドミラー制御装置4は、車両1の右前端または右後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、ステアリングホイールの左方向への操舵が検出された時には、左ミラー3の角度を運転席から車両1の下部左側面を視認することができる角度に変える。
これにより、サイドミラー制御装置4は、車両が狭い路地を左折する場合に、運転者が左ミラー2の角度を調整する必要がない。このため、運転者のわずらわしい操作を軽減することができ、ステアリングホイール操作に専念させることができる。
【0015】
なお、上述実施例では、車両1が狭い路地を前進走行で右左折する場合を説明したが、車両1が狭い路地を後進走行で右左折する場合にも、右ミラー2の角度(あるいは、左ミラー3の角度)を運転席から車両1の下部右側面(あるいは、下部左側面)を視認することができる角度に変え、運転者のわずらわしい操作を軽減することができる。
また、上述実施例においては、CAN通信ライン15を経由して制御手段であるミラー制御手段7、システム制御手段16に障害物情報、操舵方向情報、駆動情報の通信を行っているので、CAN通信ライン15に接続されている制御手段であれば、システム制御手段16に代替することができる。
さらに、上述実施例においては、システム制御手段16からの駆動要求でミラー制御手段7により右ミラー駆動手段5、左ミラー駆動手段6を駆動し、右ミラー2、左ミラー3の角度を変えたが、システム制御手段16に右ミラー駆動手段5、左ミラー駆動手段6を接続して、右ミラー2、左ミラー3の角度を変えこともできる。
さらにまた、上述実施例においては、障害物検出手段19の障害物情報をパーキング制御装置17を介してシステム制御手段16に入力し、操舵方向検出手段20の操舵方向情報を電動パワーステアリング制御装置18を介してシステム制御手段16に入力したが、障害物検出手段19、操舵方向検出手段20をシステム制御手段16に直接接続することもできる。また、上述実施例においては、障害物情報、操舵方向情報をCAN通信ライン15を経由して入力したが、直接入力することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この発明は、車両が狭い路地を右左折する場合に、運転者がミラーの角度を調整する必要がなく、運転者のわずらわしい操作を軽減することができるものであり、車両左右側部に設けられたミラーの角度を変えるミラー駆動手段を備えた車両に応用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 車両
2 右ミラー
3 左ミラー
4 サイドミラー制御装置
5 右ミラー駆動手段
6 左ミラー駆動手段
7 ミラー制御手段
8 右ミラー上下調整用モータ
9 右ミラー左右調整用モータ
10 左ミラー上下調整用モータ
11 左ミラー左右調整用モータ
12 ミラー上下調整用スイッチ
13 ミラー左右調整用スイッチ
14 ミラー選択スイッチ
15 CAN通信ライン
16 システム制御手段
17 パーキング制御装置
18 電動パワーステアリング制御装置
19 障害物検出手段
20 操舵方向検出手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両左右側部に設けられたミラーの角度を変えるミラー駆動手段と、前記ミラー駆動手段を制御する制御手段とを備えたサイドミラー制御装置において、車両左右前後端から所定範囲内に位置する物体を検出する障害物検出手段と、ステアリングホイールの操舵方向を検出する操舵方向検出手段とを備え、前記制御手段は、前記障害物検出手段により車両左前端または車両左後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、前記操舵方向検出手段により右方向への操舵が検出された時には、前記ミラー駆動手段により右ミラーの角度を運転席から車両下部右側面を視認することができる角度に変えることを特徴とするサイドミラー制御装置。
【請求項2】
車両左右側部に設けられたミラーの角度を変えるミラー駆動手段と、前記ミラー駆動手段を制御する制御手段とを備えたサイドミラー制御装置において、車両左右前後端から所定範囲内に位置する物体を検出する障害物検出手段と、ステアリングホイールの操舵方向を検出する操舵方向検出手段とを備え、前記制御手段は、前記障害物検出手段により車両右前端または車両右後端から所定範囲内に位置する物体が検出され、かつ、前記操舵方向検出手段により左方向への操舵が検出された時には、前記ミラー駆動手段により左ミラーの角度を運転席から車両下部左側面を視認することができる角度に変えることを特徴とするサイドミラー制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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