サブ波長光導波路としてのナノワイヤ及びナノリボン並びに、これらナノ構造の光学回路及び光学素子の構成要素への利用
光学回路及び素子の形成及び動作に、光の波長未満の直径を有するナノリボン及びナノワイヤが用いられる。そのようなナノ構造は、光集積用の基本ビルディングブロックを形成するサブ波長光導波路として機能する。これらの構造における、通常とは異なる長さ、柔軟性及び強度により、それらを表面上で操作することが可能となる。この操作には、ナノリボン/ナノワイヤ導波路及び他のナノリボン/ナノワイヤ素子を正確に位置設定し、両者を光学的に結合させることで、光ネットワーク及び光学素子を形成することが含まれる。それに加えて、そのような構造は、液中での導波路を提供することで、光学プローブ及びセンサのような他の応用でさらに用いられることを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、光導波路に関し、より詳細には、サブ波長光導波路並びに、光プローブ、センサ、ルータ及びナノリボン/ナノワイヤ光導波路に基づく他の素子として用いられる、ナノリボン及びナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
化学的に合成されたナノワイヤは、ナノスケールの電子及び光エレクトロニクス素子を構築する独自の種類のビルディングブロックの1つである。ナノワイヤの合成と素子の作製とは一般的には分離した工程であるため、たとえ作製それ自体が依然として大変でも、ナノワイヤにおける異なる材料のヘテロ集積における自在性は、標準的Si技術よりは高い。ナノワイヤ素子の構成部品のツールボックスは進化し、現在は、トランジスタ、発光ダイオード、レーザー及び光検出器のような様々な型を含む。リソグラフィを使用した単純ナノワイヤ回路の電気的な集積が示される一方で、高速及び多目的性素子を実現する光集積は未だに示されていない。
【特許文献1】米国特許公開第6882051号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0131537号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エレクトロニクスの光への類推であるフォトニクスでは、小型化が半導体及び通信技術の研究を進展させる要因であるという論理が共有されている。サブミクロン空間内で光パルスを操作する能力は、光コンピュータのような高集積光ベース素子実現にとって決定的に重要である。フォトニックバンドギャップ及びプラズモン現象を利用した光の制御に関する最近の進展はこの点では非常に印象的である。しかし、両方法とも一般的には、素子製造において難しくかつ高コストのリソグラフィ工程に頼るものであり、知見及び開発は初期段階にすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来よりも単純になり得かつ、同様に多目的を実現するための基本的な考え方は、光発生、光路作製及び検出のような各異なる機能を前提とする、ナノリボン/ナノワイヤ素子を集合させることでフォトニック回路を作製することである。従って、本発明は一般的に、導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤから構成されるサブ波長光導波路を有する。そのようなサブ波長導波路は、様々な型のフォトニック回路の基本素子の役割を果たすことが可能である。
【0005】
化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤは、良好なビルディングブロックとなる複数の特徴を有する。その特徴には、固有な1次元性、様々な光学的及び電気的特性、良好なサイズ制御、低表面粗さ及び、原則的には回折限界より大きな波長の光も、回折限界よりも小さな光も両方とも動作させる能力が含まれる。集積ナノリボン/ナノワイヤフォトニクスへ向けた重要な段階は、ナノリボン/ナノワイヤ素子の対を結合させ、論理操作のような複雑な処理の実行に必要となる相互接続パターンにおける自在性を提供することが可能なナノリボン/ナノワイヤ導波路の開発である。
【0006】
従って、本発明の一の態様は、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路のようなナノ構造で構成されるフォトニック回路素子の組み立てである。一の実施例では、光の波長(典型的には100nmから400nm)未満の直径を有する光アスペクト比(たとえば、>1000)のナノリボン/ナノワイヤが、それぞれのナノ構造内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)の導波路及び、隣接する、エバネッセント結合したナノリボン/ナノワイヤ又は外部のレーザーダイオードから発光する非共鳴UV/可視光の導波路として用いられる。
【0007】
本発明の別な態様に従うと、これらの単結晶構造は、その長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上での操作及び位置設定によって様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークの作製が可能である。多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器(ring-shaped directional coupler)及び、ナノリボン/ワイヤ発光体-導波路-検出器接合が含まれる。
【0008】
本発明の別な態様は、能動及び受動ナノリボン/ワイヤキャビティの形状を操作する能力が、サブ波長構造のキャビティ動特性(dynamics)を研究する新たな手法の提供である。しかも既存のナノワイヤビルディングブロックの様々な組の集積がさらに進展することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるだろう。
【0009】
本発明の別な態様は、ナノリボン/ナノワイヤがシリカを超えたサブ波長光ファイバとなることである。多数ある、ナノリボン/ワイヤ形状での作製が可能な材料には、能動、受動、非線形及び半導体無機結晶同様に、様々なポリマーが含まれる。異なる組成のナノワイヤ内部及び、当該ナノワイヤ間で、同時に光子、電荷及びスピンの操作が可能である。また、これらの材料の多くはシリカベースのガラスよりも大きな屈折率を有するため、所定波長の光を、より密に集積するための薄い構造の内部に閉じこめることが可能である。
【0010】
本発明の別な態様は、サブ波長ナノリボン/ワイヤ光導波路を用いた液中での導波路である。
【0011】
本発明の別な態様に従うと、ナノリボン/ワイヤは独立し、機械的に柔軟な素子である。その柔軟な素子は、表面上での操作、又は流体中での可動プローブとしての利用が可能である。そのようなものとして、本発明に従ったナノリボン/ワイヤは多目的性を提供する。その多目的性は、基板上に永久に取り付けられた、リソグラフィで画定された構造では実現することが困難なものである。
【0012】
本発明の別な態様は、高アスペクト比及び導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン/ワイヤ光導波路である。一の実施例では、アスペクト比は、約1000よりも大きい。他の実施例では、直径は約100nmから約400nmの範囲である。
【0013】
本発明の別な態様は、結晶酸化物ナノリボン/ワイヤで構成されるサブ波長光導波路である。一の実施例では、ナノリボン/ワイヤはSnO2を有する。他の実施例では、ナノリボン/ワイヤはZnOを有する。さらに他の実施例では、ナノリボン/ワイヤはGaNを有する。
【0014】
本発明の別な態様は、ナノリボン/ワイヤ光チャネルで結合する、ナノリボン/ワイヤレーザー及び、ナノリボン/ワイヤ検出器を提供する。
【0015】
本発明の別な態様は、SiO2又は雲母基板上に散布されたナノリボン/ワイヤを有する光導波路である。
【0016】
本発明の別な態様は、SnO2ナノリボン/ワイヤ導波路の作製方法である。
【0017】
本発明の別な態様は、ZnOナノリボン/ワイヤ導波路の作製方法である。
【0018】
本発明の別な態様は、ナノリボン又はナノワイヤ導波路を有する、液状媒体を介した導光用装置である。一の実施例では、ナノリボン導波路は、ZnOナノワイヤ導波路を有する。さらに別な実施例では、導波路は高誘電率導波路を有する。さらに別な実施例では、ナノワイヤ導波路は、GaNナノワイヤ導波路を有する。
【0019】
本発明の別な態様は、サブ波長ナノ構造導波路を有するプローブ又はセンサである。
【0020】
本発明のさらに別な態様は、少なくとも二の結合したナノリボン導波路を有する光ルータである。一の実施例では、ナノリボン導波路はSnO2ナノリボン導波路を有する。
【0021】
本発明の他の態様は、少なくとも二の結合したナノワイヤ導波路を有する光ルータである。一の実施例では、ナノワイヤ導波路はZnOナノワイヤ導波路を有する。
【0022】
本発明のさらに他の態様は、白色光を分離して、短経路フィルタリング効果(short-pass filtering effect)に基づいて各色の経路を決定するように備えられているナノリボン導波路のネットワークを有する光ルータである。一の実施例では、ナノリボン導波路は、SnO2ナノリボン導波路を有する。
【0023】
本発明の他の態様は、急峻な角度である90°で光を伝搬するように備えられている二対の直交ナノリボン導波路を有する光クロスバーグリッドである。一の実施例では、ナノリボン導波路は、SnO2ナノリボン導波路を有する。
【0024】
本発明のさらに別な態様は、以降での明細書の記載によって明らかとなる。以降での詳細な説明は、本発明を限定することなく、その好適実施例を十分に開示することを目的とする。
【実施例】
【0025】
本発明は、図示のみを目的とする以下の図を参照することで本発明は理解される。
【0026】
二成分酸化物からなるナノスケールのリボン形状結晶は、極端な機械的柔軟性、表面を介した電気伝導性及びレーザー発光特性のように広範にわたる興味深い特性を示す。しかし、我々の研究室でのSnO2ナノリボンのフォトルミネッセンス(PL)に関する最近の研究の一部として、私たちは、高アスペクト比(>1000)のナノリボンが、優れた可視PL発光での導波路として機能することを発見した。SnO2は、2.5eV(緑色)及び2.1eV(オレンジ色)でのPLバンド間発光によって特徴づけられるワイドバンドギャップ(3.6eV)半導体で、ガスセンサ及び透明電極での用途が見いだされている。我々の研究では、従来の熱輸送技術で、最大で長さ5000μmの単結晶SnO2ナノリボンを合成してきた。合成された構造は、かなり均一な(±10%)長方形の断面を有する。断面の大きさは、大きいもので2μm×1μm、小さいもので15nm×5nmである。我々が合成してきたナノリボンの多くは、100nmから400nmの幅及び厚さである。これらの値が、サブ波長キャビティでの可視光及び紫外光を有効に操作するのに最適なサイズ幅であることを我々は突き止めた。
【0027】
それに加えて、フォトニック回路素子はたとえば、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路から構成することが可能であることを我々は突き止めた。光の波長未満(典型的には100nmから400nm)の直径を有する高アスペクト比ナノリボン/ワイヤは、それぞれの内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)だけでなく、隣接する、エバネッセント結合するナノワイヤ又は外部レーザーダイオードから放出される非共鳴のUV/可視光に対しても優れた導波路として振る舞う。さらに、これらの単結晶構造は、その長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上での操作及び位置設定することで様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークを作製することが可能である。多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器(ring-shaped directional coupler)及び、ナノリボン/ワイヤ発光体-導波路-検出器接合が含まれる。能動及び受動ナノワイヤキャビティの形状を操作するこのような能力は、サブ波長構造のキャビティ動特性を研究する新たな手法を提供する。しかも既存のナノワイヤビルディングブロックの様々な組の集積がさらに進展することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるだろう。
【0028】
光導波路としてのナノリボン/ワイヤの利用は、光の波長未満の直径を有するナノリボン/ワイヤに基づいていることには留意しなくてはならない。また、ナノリボン/ワイヤが円形断面を有してはならないことにも留意しなくてはならない。たとえば、ZnOナノワイヤは一般的には六角形断面を有し、SnO2ナノリボンは一般的には長方形断面を有する。従って、円形ではない断面の場合、“直径”という語は、実効的な直径を指すものと一般には考えられる。実効的な直径とは、その構造の断面の長軸と短軸の平均で定義される。しかし“直径”という語は、前述の定義に限定されず、ナノリボン/ワイヤがサブ波長導波路として機能するようなナノリボン/ワイヤの大きさをも含むことが意図されている。
[ナノリボン導波路]
当初、我々は、遠赤外顕微鏡及び分光を用いて、SiO2及び雲母基板上に散布された個々のナノリボンの導波路としての振る舞いを研究した。図1は、長さ715μmの単一ナノリボンから収集された代表的データを図示し、図2は、長さ425μmの単一ナノリボンから収集された代表的データを図示している。
【0029】
より詳細には、図1は我々が合成した長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。図1Aは、(幅350nmで厚さ245nmの)曲がりくねったナノリボン10及びその周囲の暗視野像である。図のスケールバーは50μmである。図1Bは、レーザー励起された状態でのPL像である。ここでレーザーは、ナノリボン上端部において入射角30°でスポットサイズ〜50μmに集光された。図1Cは、室温及び5[K]で収集された、導波路底端部からの発光スペクトルを図示している。高解像度の発光プロファイル(挿入図)は、三の中心的ピークで微細構造を示している。この微細構造はどのピークにも存在することが分かった。
【0030】
図2は長さ425μmのナノリボンの全色感色性導波路を図示している。図2Aは、断面の大きさが520nm×275nmのナノリボン12の暗視野像である。スケールバーは50μmである。図2Bは、ナノリボン真ん中付近に中心をとるUV励起スポットを有するPL像である。図2Cは、ナノリボンの右側端部での拡大された暗視野PL図である。ただしレーザーは左側端部で集光されている。幅広(〜1μm)ナノリボン14は関心対象のナノリボンを横切るように存在する。図2Cの拡大図は、ナノリボンの右側終端部での走査電子顕微鏡像で、長方形の断面を示している。スケールバーは500nmである。図2Dは波長652nm(赤色)の単色光によってナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16aのデジタル像で、図2Eは波長532nm(緑色)の単色光によってナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16bのデジタル像、そして図2Fは、波長442nm(青色)の単色光でナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16cのデジタル像である。最も左側の発光スポットである、図2Dでの18a、図2Eでの18b及び図2Fでの18cは、ナノリボン-ナノリボン接合での散乱に起因し、マイクロマニピュレータによって幅広ナノリボン14を選択的に除去することで抑制された。
【0031】
明らかなように、連続波レーザー光(3.8eV)をナノリボンの一の端部に集光させたとき、発生したPLの大部分はナノリボンキャビティによって、高強度で発光する反対側端部へ導光された。かなり驚くべきことに、ナノリボンが従来の光ファイバと同様な性質を示すことが分かった。また、散布中に内部が損傷した、又はかなり大きな3D表面欠陥を有するナノリボンがその長さ方向に沿った一連の明るい点で導波された光を散乱することも分かった。図2Cを参照すると、たとえ存在するナノリボンが、厚い場合でも、ときとして散乱中心として振る舞うとしても、ナノリボン間の接点は大抵の場合暗い。
【0032】
再度図1Cを参照すると、また、ナノリボン端部を励起しながら、その反対側端部から収集される発光スペクトルは大抵の場合、複雑で、疑似周期的な変調を特徴として有する。これは平面導波路内で許容される、長方形キャビティ内部で共鳴する電磁波の干渉によって生じる縦型モードのためである(つまり光学モード構造)。この変調は一般的に、緑色とオレンジ色の同時発光の場合であれば緑色PL成分に閉じこめられ、このことは、PL発光の空間的位置(つまりバルク又は表面)の差異、又はナノリボンキャビティにおける二色閉じこめの差異のいずれかを示唆することが分かった。短いナノワイヤ導波路では、そのような変調は、λを波長、Lをキャビティ長そして、nを屈折率(SnO2の場合2.1)としたときに、モード間隔Δλが、Δλ=λ2/{2L[n-λ(dn/dλ)]}で表される縦型ファブリ-ペロー型モードに起因する。しかしナノリボンが長すぎたため、Δλは我々の装置の分解能限界である0.01nmを下回ってしまった。それに加え、SnO2キャビティは縦型モードを示しにくい。その理由は、SnO2キャビティ端部での反射率が低く(≦13%)、散乱及び出力結合損失を補償する利得が生じないためである。スペクトル構造についての系統的な研究は、モードが、(曲がり損失、基板結合及び屈折率変化を介した)ナノリボンの断面サイズ及び配向のみならず、光強度及び終端部ファセットの粗さに対して複雑な依存性を示すために困難になっている。モード構造の存在は、ナノリボンキャビティが高いフィネス(finesse)を有することが可能であることを示唆することを我々は指摘している。それに加えて後述のように、所与の波長での損失は、キャビティ形状を変形させることで調節可能である。
【0033】
一般的には、サブ波長共振器は、短波長放射線の良好な閉じこめにより、波長に強く依存する大きな光学損失を示すことが予想される。光閉じこめの波長依存性を調べるため、入射角が30°の赤色、緑色及び青色の単色光を単一ナノリボンへ照射し、ナノリボン端部での発光を観測した。赤色導波はまれで、緑色導波は普通でかつ、青色導波は当たり前に存在することが分かった。また、所与の誘電材料、キャビティの幾何学的形状及び波長については、臨界直径が存在する。その臨界直径未満では、すべての高次光学モードが遮断され、導波を維持するのが急激に困難になる。より詳細には、大気中に組み込まれた円柱状SnO2をナノリボン導波路として取り扱うことで、光の波長が652nmで約270nm、光の波長が532nmで220nm及び、光の波長が442nmで180nmの高次縦型モードのカットオフ直径を発見した。各光の波長は我々の実験で用いられた値である。この近似はキャビティ形状を単純化し、基板結合及び他の効果を無視しているとしても、これらの値は、青色及び緑色導波路のサイズの走査電子顕微鏡測定結果と良く一致する。我々の試料のナノリボンのほとんどは、赤色光が約100μmより長い距離を伝搬するには薄すぎる。しかし、上述のような、十分大きな断面を有するナノリボンは、可視光スペクトルでの波長の光を有効に導波することで、図2Dから図2Fで図示されるようなサブ波長の赤-緑-青(RGB)光ファイバ(たとえば光伝送器)として機能する。
[波長依存損失]
近接場走査光学顕微鏡(NSOM)を使用することで、まっすぐなナノリボンの波長依存損失を定量化した。上記を実行するため、ナノリボンは、固定された収集プローブに対し、ナノリボンの長さ方向に沿った各異なる位置で励起された(3.8eV)。波長が450nmから550nmの範囲での損失は、1dBmm-1から8dBmm-1の範囲で、ナノリボンの断面積及び表面散乱中心の密度に依存することが分かった。これらの値は、サブ波長シリカ導波路について最近報告された値よりも大きく、その理由は、ナノリボン表面が比較的粗いこと及び、基板結合による余計な損失があるためだと考えられる。しかし、ここでの損失は、導波路素子が非常に短い距離しか光を伝送しない集積平面フォトニック応用で要求される損失よりも良好であることを我々は指摘する。
[形状操作]
また光学顕微鏡を使用しながら商用販売されているマイクロマニピュレータを使用することで、ナノリボンは押され、曲げられ、そして形状を変化させるのに十分な長さ及び強度を有することが分かった。SnO2ナノリボンが高アスペクト比及び弾性を有することで、光学顕微鏡を使用しながら、鋭いタングステンプローブが備えられている、商用販売されたマイクロマニピュレータを用いて個々のナノリボンの位置及び形状を操作することが可能となる。大気中で一の端部が自由端となっている導波ナノリボンは、キンクの発生及び破壊を起こすことなく、弾性を保持したまま広角(たとえば180°まで)に曲がることができる。この性質は、バルク状態で脆性である酸化物にとっては注目に値すべき事である。我々は、弾性反跳を防ぐナノリボン-基板に生じる力を利用して、まっすぐなナノリボンを、波状、円形及び他の形状にすることができた。
【0034】
単一ナノリボンを引っ張ること、整合させること及び切断することは、通常の工程である。ここで我々は、マイクロマニピュレータを使用することで図2Cに存在するナノリボンを選択的に除去し、ナノリボン-ナノリボン界面からの散乱を抑制する。その後、長いナノリボンを三の部位に均等に切断し、三の優れた導波路を作製した。
【0035】
図3から図5は、ナノリボン導波路の形状を操作した実験結果を図示している。これらの結晶ナノリボン導波路が光学回路における相互接続として有用である場合、これらの導波路は、一のナノ物質から他のナノ物質へ光を結合させる能力を有し、一の位置から別な位置まで容易に光を伝搬させる能力を有する必要がある。後者を実現させるため、我々はマイクロマニピュレータを用いてナノリボンを曲げ、そして移動させた。
【0036】
図3Aは、単純形状20のSEM像で、マイクロマニピュレータによる高レベルな位置制御が可能であることを示している。この形状は、二の部位に切断された後に集積された、400nm×115nmの大きさを有する単一のまっすぐなナノリボンから作製された。図3B及び図3Cは、長いナノリボン(アスペクト比〜5200)の発光端部の光学像で、曲がりによる導波への影響が小さいことを示している。図3Bは、単一曲がりを作製した後に撮ったトゥルーカラー写真の白黒レンダリングである。図3Cは、S字変形完了後に撮った白黒の暗視野/PL像である。青色光は、1μmの半径周辺において低損失での導光が可能であることが分かった。図3Cの挿入図でのSEM像は、曲がった幾何学的形状を明らかにしている。図3Dから図3Fは一連の暗視野像で、図3Gは、単一ナノリボン22が図3Dから図3Fのように曲げられた状態に対応する導光PLスペクトルである。各々の場合において、スペクトル収集はナノリボンの右側端部で行われた。導光されないナノリボンのPLスペクトルが参照用に含まれている。簡明を期すため、スペクトルは規格化され、オフセットされている。
【0037】
独立したナノリボンは、繰り返しかつ弾性を維持したまま曲げることで半径5μmという小さな輪を作製することが可能であることが分かる。このような小さな輪を作製できることは、バルク状態で脆性である結晶にとっては注目に値すべき事である。適切に選択された表面上では、単一ナノリボンは図3Aで図示されたような弾性反跳を防ぐナノリボン-基板間の力を利用することで、様々な形状に容易に変形させることができる。丁寧に操作することで通常は、ナノリボンキャビティを破壊せずに済む。実際この操作方法は、自由に動かすことが可能で、暗視野顕微鏡を使用することで観察することのできるナノ構造への適用が可能である。そのようなナノ構造には、小さなサイズの極限である、短いナノワイヤ(たとえば40nm×3μm)及び、かなり大きなナノ結晶が含まれる。一連の処理は本質的に遅いが、たとえば走査プローブ又は、その場走査電子顕微鏡操作を使用した同様の方法よりも速くかつ、より多目的である。我々は、ナノリボン導波路ネットワークを作製することが可能であり、個々のナノワイヤ要素を一度に集積することで機能性光エレクトロニクス素子を構築することができる。
【0038】
操作することで、単一ナノリボンキャビティの形状に依存する導波を調べることも可能となる。たとえば、長くて薄いナノリボン(大きさ:785μm×275nm×150nm)の一端をしっかりとS字に変形することで、図3B及び図3Cに図示されているような構造において光が確実に進行するようにする。曲がった箇所周辺での損失は小さく、ナノリボン端部からの光出力が大幅に減少することはなかった。一般的には、曲率半径が1μm程度に小さいねじれ及び曲がりであれば、これらサブ波長導波路が、光を数百μmもの距離にわたって伝搬させる能力に影響しないことが分かった。
【0039】
我々はまた、たとえわずかでもナノリボンを曲げることで、図3Dから図3Gに図示されているように、ナノリボンの出力光のモード構造を劇的に変化させることが可能であることを観測した。これはもっともなことで、なぜならキャビティの曲率及び/又は、キャビティ-基板結合の変化によって伝搬する波の干渉パターンが変化し、あるモードが増強され、別なモードが部分的に減少するからである。我々のデータはまた、典型的なナノリボンからの発光パターンが、ZnOナノワイヤで示したように空間的に不均一であることを示唆している。その結果、たとえキャビティ形状の変化に応じて見られる複雑なモード振動が十分に説明されないとしても、非近接場スペクトルは、収集角度に対してある程度変化する。
【0040】
図4は、基板上にわずかに固着した、長さ約600μmのナノリボン24を図示している。このナノリボン24は、エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される。図4A、図4C、図4D及び図4Fは、まっすぐな状態(図4A)から90°より大きな角度(図4F)で曲げる過程での暗視野像で、ナノリボンが極端に柔軟であることを示している。図4B、図4E及び図4Gは、各異なる曲がり角で撮られたPL像である。励起光源は、ナノリボン上端部で集光され、光は曲がった部分を介して導光され、底端部で発光した。図4Hは、任意の曲がり角の関数として、底端部でのスペクトルを図示している。図4Hにおいて、曲がり1、曲がり2及び曲がり3として識別される曲線は、図4C、図4D及び図4Fでの像にそれぞれ対応する。モード構造は、キャビティのサイズ及び形状に大きく依存することが分かった。
【0041】
暗視野像(図4A、図4C、図4D及び図4F)は、基板上にわずかに固着したナノリボンを曲げる過程で撮られた。この像は、これらの酸化物ナノ構造がある程度の柔軟性を有することを示唆する最初の直接的観察結果だった。対応するPL像(図4B、図4E及び図4G)は、ナノリボンが90°より大きく曲げられることによるキャビティの導波特性の変化に関する付加的情報を提供する。光学像に加え、スペクトルは、ナノリボンの導波された終端部から得られた。図4Hは、任意の曲がり角の関数として発光プロファイルを図示している。半直線のナノリボンが物理的形状をとり始め、これらナノ構造を高品質(Q)値キャビティとして利用できるようになることで、モード構造が現れる。これらのナノリボンを物理的に変化させることを制限するものをさらに追究し、明らかにするため、顕著な導波特性を依然として示す薄いナノリボンに着目した。
【0042】
図5は明らかに、ナノフォトニック回路におけるこれらの構造の可能性を示している。図5A及び図5Cは、ナノリボン26のキャビティ形状を操作する前(図5A)及び、その操作の後(図5C)で撮られた暗視野像である。ナノリボンが柔軟性を有することで、たとえタングステンプローブが除去された後であっても、ナノリボンの形状の完全性を保持することが可能となる。図5Bは図5Aの形状のPL像で、図5Dは図5Cの形状のPL像である。たとえ二箇所が鋭く曲げられても、ナノリボンは曲がった箇所での損失を最小にして、左側結合端部から右側結合端部への欠陥発光の導波に成功した。図5E及び図5Fは、マニピュレータの針によって新しいナノリボンの暗視野/PL像(図5E)及び、PL像(図5F)である。その新しいナノリボンは、マニピュレータの針によって、ナノリボンに対して底端部を固定する。励起スポットは、PL像の上部で可視であり、底端部は、タングステンプローブの上の明るい点で示されている。極端な曲率半径であっても、これらのナノリボンは、その物的構造及び導波特性を維持するということが分かった。
【0043】
暗視野像(図5A及び図5C)及び、対応するPL像(図5B及び図5D)は、これらのナノリボンが元の形状のナノリボンにおける低損失特性を維持しながら、これらのナノ構造にトルクを加えることで鋭い波状及び曲線を形成することが可能なのかについて、その前後の図を示している。図5E及び図5Fは、この物理的操作をさらに行うことが可能であることを明らかにしている。ここで、新しいナノリボンの端部は実際、マニピュレータプローブによって、ナノリボンに対して固定されているので、例外的に小さな曲率半径のキンクがナノリボン中にそのまま残ってしまう。しっかりとした曲がり及び、ナノリボンとの物理的接触により、ナノリボンは、散乱中心又はキャビティの漏れによる重大な光損失を示さなかった。従来のシリカファイバーでは、このことは主要な課題である。低誘電率材料では、光閉じこめは、臨界角を超えることで劇的に減少する。それに加えて、似たような屈折率を有する材料と物理的に接触することで、深刻なエネルギー損失を引き起こす。しかしスズ酸化物は、シリカの2倍近い高屈折率のため(2.3と1.4)、高い内部閉じこめ及び、同様な屈折率を有する界面での損失を最小限にするという明確な特性を実現することが可能である。
[ナノリボン光結合器及びフィルタ]
図6から図9を参照すると、ナノリボン導波路は共に結合することで、小型化されたフォトニック回路の基本を形成することが可能な光ネットワークを形成することが可能である。ナノリボンのおおよそのサイズは、導光されるPLの色から推測することが可能である。特に、大きなナノリボンは白色で、小さなナノリボンは青色である。平均サイズのナノリボンが一端の近くで励起されるとき、そのナノリボンは離れた端部で青色発光し、近くの端部で緑色発光する。つまり長波長側で大きな放射線損失があることを示している。また図10を参照すると、この効果はナノリボンを、光路長に基づいて調節可能なカットオフを有する優れた短経路フィルタにする。我々は、ナノリボンフィルタが465nmから580nmにまで及ぶことを明らかにした。このフィルタは、深いカットオフ端を特徴として有し、阻止された波長の光は擬似的に伝送させない。光がサブ波長アパーチャから放出されるとき、全方向に回折されるので、ナノリボンは近接していなければならず、直接物理的に接触しているのが好ましい。それにより、ナノリボン間の光は効率よく伝搬することが可能となる。我々は、様々な結合形状を試し、二のナノリボンが数μmもの距離にわたって相互作用する、交互に隣り合うような配置が、端部ファセット間の散乱に依存した直接端部同士の結合をしのぐことが分かった。薄い空気ギャップによって隔てられている交互に配置されたナノリボンは、エバネッセント波のトンネリングを介してやり取りすることが可能である。ファンデルワールス力で二のナノリボンを共に結合させることも可能である。ファンデルワールス力を利用するには大抵の場合、一のナノリボンを他のナノリボンに単純に近づけるだけで、それによって堅固な光接合が作製される。
【0044】
図6は、ナノリボン結合、光構成要素及び、素子を図示している。図6Aは、二の結合したナノリボン28、30(両ナノリボンは、750nm×250nmで、全長630μmである)の白黒暗視野/PL像である。光は右側ナノリボン30の右端部に入射し、左側ナノリボン28の左端部で収集される。矢印は接合位置を示す。図6Aの挿入図でのSEM像は、接合の配置を図示している。図6Bは、接合を形成する前(上側曲線)及び後(下側曲線)の左側ナノリボン28の生の発光スペクトルを図示している。接合に第2ナノリボンを付加したことで、変調が保持されたまま出力光が50%だけ低下した。図6Cは、導光結合器として機能する三のリボンリング構造のトゥルーカラーPL像の白黒レンダリングである。リングナノリボン32(135μm×540nm×175nm)は、二の線形ナノリボン34、36(左側:34、120μm×540nm×250nm。右側:36、275μm×420nm×235nm)の側部に位置する。部分1での光入力は部分3で出力されるのが好ましく(図示されているように)、部分2での光入力は部分3で出力されるのが好ましい。
【0045】
図6A及び図6Bは二のリボン結合例を図示していることを明記しておく。しかし、Y接合、分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計及びリング共振器のようなより機能的な形状を構築しても良い。図6Cに図示されている三のリボンのリング構造は、中心キャビティ周辺の一の分岐から出力される光を循環させることで動作する。その光は、光は部として機能する一以上の出力チャネルによって閉じこめることが可能である。さらに集積させることで、位相シフトを行うのに電気光学効果を利用するナノリボン集合体に基づく光変調器を作製が可能になるに違いない。
【0046】
基礎研究にとってもフォトニクス応用にとっても、単結晶ナノリボンは、光を操作する上では興味深い構造である。受動素子については、効率的なUV/可視光の導波路及びフィルタである。これらを集積させることで、光学部品、ネットワーク及び素子を構成することができる。半導体、又はドーピングされた透明金属若しくはナノリボン酸化物は、能動的ナノスケール構成要素で電子及び光子を同時に輸送するのに十分に適している。これらの材料を広範囲で使用する上で重要となる課題には、材料のサイズ分散を小さくすること及び、ナノワイヤを集積するため、ナノワイヤ平行に集積するためのより良い方法を開発することが含まれる。前者の課題への解決にあたっては、ナノリボンの合成で一般的に用いられているにもかかわらず、良く理解されていない気相-固相プロセスの制御にかかっている。
【0047】
図7は、ZnOナノワイヤ38とSnO2ナノリボン導波路40との光結合が成功している様子を図示している。図7Aは、光をナノリボン40(長さ265μm、像は底部である)に導光するナノワイヤ38(長さ56μm、像は上部である。3.8eVで励起)のトゥルーカラー暗視野/PL像の白黒レンダリングである。矢印は接合位置を示している。図7Bはナノワイヤ/ナノリボン接合のSEM像である。図7Cは、各異なる励起位置及び収集位置でとられた、結合構造のスペクトルを図示している。上から順に、導波されていないZnOナノワイヤのPL、ナノリボン底端部で収集されたZnOナノワイヤからの導波された発光、接合のすぐ下で励起されたSnO2ナノリボンからの導波された発光でその底端部で収集された、動作されていないSnO2ナノリボンのPLである。ZnOナノワイヤからの発光は、その光がナノリボンキャビティを介して輸送される間に変調されることを明記しておく。
【0048】
図8は、単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとの間で作製されたヘテロ接合の別な例を図示している。図8Aは、ZnOナノワイヤを、SnO2ナノリボンの端部ファセットへ押し込めた後の接合の暗視野像である。図8Aの挿入図は、短い(〜6-7μm) ZnOナノワイヤ及び、SnO2ナノリボンの上端部を示す能動結合領域の拡大図である。ナノリボンの全長は〜600μであった。図8Bは、ZnOナノワイヤ(ZnOナノワイヤ側)又は、SnO2ナノリボン(SnO2ナノリボン側)を直接励起しながら、受動端で収集されたスペクトルを図示している。ZnOナノワイヤ全体で収集されたバンドギャップ発光プロファイルも参照用として含まれている。“ZnOナノワイヤ側”での変調は、高Q値SnO2キャビティを介して伝搬するZnOからの広い発光から直接得られる結果である。
【0049】
図8Aにおける、50倍の暗視野像及び、挿入図中の100倍の暗視野像は、能動/受動ナノフォトニック素子の基本構成要素を図示している。しかし、二のナノスケール系同士の完全な接合を保証するため、我々は、ZnOナノワイヤ能動端を光学的に励起し、受動SnO2ナノリボン端部で光を収集した。図8Bから分かるように、励起光源によって発生したZnOのバンドギャップ発光は、ZnOキャビティによって構造の間に存在する大気空間を通り抜け、隣接するSnO2導波路へ導光された。ZnOナノワイヤからの光出力は、ナノリボンの離れた端部で放出され、図4で示されたPL線形状に似た変調発光プロファイルを明確に示した。この結果は、実際に光は数百μmの距離をナノリボンによって導波されたことをはっきりと示す証拠となった。同様の材料での接合を構築するため、我々は前述と同様の方法で操作手順を実行した。互いに同一線上にある二の導波ナノリボンは、物理的に大きなナノリボンをスライドさせて小さなナノリボンの離れた端部に直接隣接させることによって長軸で結合する。
【0050】
図9は、二のナノリボン導波路42、44をそれらの端部ファセットで結合させることによって作製されたSnO2/SnO2接合を図示している。図9A及び図9Bは、大きな直径(〜1μm)を有するナノリボン42と小さな直径(〜400nm)を有するナノリボン44との接合が完成する前(図9A)及び後(図9B)の暗視野像である。図9Cは、図9Bに図示されたものと同一のナノリボン接合及び終端部のPL像である。この像は、SnO2ナノリボン導波路間での多接合ネットワークが実現可能であることを示している。
【0051】
図9A及び図9Bの暗視野像は、二のナノリボンを隣接させるのに成功する前後の接合を示している。図9CのPL像は、小さなナノリボンを進行する光が直接第2の同様のキャビティと結合可能であることを立証した。我々は今、光励起よりも電子注入を介して動作するナノワイヤによる全光回路を構築している。酸化物導波路は、LEDsやレーザーのような能動的光源と光伝導ナノワイヤに基づく光検出器との間の重要な相互接続の役割を果たす。
【0052】
複数のナノリボン導波路の光損失は、近接場におけるUV励起(50μmのスポット径)とPL収集との距離を系統的に変化させることで測定された。400×150nm2の断面積を有するナノリボンでは、波長550nmで約2dBmm-1の損失と見積もった。この値は、サブ波長シリカ導波路について最近報告された損失よりも顕著に改善された値である。
【0053】
これまで見てきたように、通常とは異なる長さ、高い柔軟性及び強度のため、ナノリボン導波路は、ナノスケールキャビティの機械的特性、ミクロな構造及び光閉じこめの相互作用を研究するのに優れた材料である。ナノリボン導波路は操作及び、集積されることで、光回路及び素子におけるナノワイヤレーザーのような単一ナノ物体間のフォトニック相互接続としての役割を果たすことが可能である。
【0054】
さらにナノリボン導波路は、フィルタ素子として使用することが可能である。たとえば図10は、短経路フィルタとしてナノリボンを利用した様子を図示している。図10Aは、五の異なるナノリボンの室温PLスペクトルを図示している。各々は200μmから400μmの長さで、強度が50%になるカットオフ波長は465nmから580nmの範囲である。465nm、492nm、514nm、527nm及び580nmフィルタの断面の大きさはそれぞれ、310nm×100nm(0.031μm2)、280nm×120nm(0.037μm2)、350nm×115nm(0.04μm2)、250nm×225nm(0.056μm2)及び、375nm×140nm(0.053μm2)である。簡明を期すため、スペクトルは規格化及びオフセットされた。図10Bは、単一ナノリボン(315μm×355nm×110nm)で取られた一連の規格化発光スペクトルを図示している。一連のスペクトルは、励起スポットを収集領域から離れる方向に走査しながら得られた。導波されていないPL曲線が、ポンプ-プローブ間距離が50μmで得られた。距離が大きくなることで、長波長側の損失が改善された。
[例1]
SnO2ナノリボン導波路は、1100℃で動作する石英反応管に350TorrのAr(50sccm)を流し、SnOの粉末を化学気相輸送することで合成された。ミリグラム量のナノリボンが、反応管中心付近にあるアルミナボートに回収され、乾式移送によって清浄基板上に堆積された。長いZnOナノワイヤは、参考文献に記載されているように800℃の石英加熱炉に760TorrのO2/Arを流し、金属のZnを酸化させることで成長させた。ZnOナノワイヤもまた、乾式移送によって散布された。(Ag触媒を使用した)レーザー支援の気相-液相-固相プロセスによって作製されたInPナノワイヤは、エタノール溶液中で超音波分解され、滴下によって表面に移送された。InPへのコンタクトは、電子ビームリソグラフィ及び加熱蒸着(100nm Ti)を行い、続いて475℃、N2/H2で1分間急速アニーリングすることによって作製された。
[例2]
光学測定は、クライオスタット(Janis X-100(商標))を外付けした暗視野顕微鏡を使用して行われた。PL励起光源は、325nmで動作するHeCdレーザーである。レーザーポインタ(532nm及び652nm)及びHeCdレーザー(442nm)は非共鳴発光を与える。全測定について、レーザースポットのサイズは、〜50μmだった。スペクトルは、ファイバ結合した分光器(SpectraPro
300i、Roper
Scientific(商標))及び液化N2で冷却されたCCD検出器で取られた。像は、顕微鏡に設けられたカメラ(CoolSNAP、Roper Scientific(商標))及びハンドヘルドのデジタルカメラ(PRD-T20、東芝(商標))を使用して撮影された。損失測定は、波長325nmで励起する、データ測定モードで動作する商用販売されているNSOMセットアップで行われた。ナノリボンの操作には、商用販売されている、タングステンプローブが取り付けられている3軸ユニットを使用した(端部10μm)。
【0055】
上述のように、フォトニック回路の構成要素は、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路から構成可能である。直径が光の波長(典型的には100nmから400nm)未満である高アスペクト比のナノリボン/ワイヤは、これらの内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)及び、隣接し、エバネッセント結合するナノワイヤ又は外部のレーザーダイオードから放出される、非共鳴のUV可視光の両方に対して優れた導波路として機能することが示された。これらの単結晶構造の長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上でナノリボン/ワイヤを操作及び位置設定することで、様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークを作製することが可能である。様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器及び、ナノワイヤの発光体-導波路-検出器接合が含まれる。能動及び受動ナノワイヤキャビティの形状を操作するこの能力は、サブ波長構造のキャビティ動特性を研究する新たな手法を提供する。しかも、既存のナノワイヤによるビルディングブロックの様々な組を集積することに関してさらに進歩することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるかもしれない。
[液中での導波路]
かなり驚くべきことだが、我々は、これらの1次元(1D)ナノ構造が液体を介して導光することも分かった。光が溶液中にあるこれらのキャビティを介して伝搬することができるという事実は、高誘電率(n≧2)導波路の流体感知及び探知への独自の応用を提供する。液中での導波は、励起及び検出体積を小さくする必要のある、集積されたオンチップの化学分析及び生物学的分光にとって特に重要となる。蛍光又は吸収しているときの分子を調査するため、サブ波長のナノ構造を集積することが可能である。蛍光と吸収
は両方とも、光子の吸収を誘起するためにキャビティの外側での光電場の減衰を利用する。導波路は、キャビティ近傍で放出された光子と強く結合することで、発生した蛍光が導光されて注入点へ戻ることが可能となる。また導波路の大きさがナノスケールになることで、小さな液体体積(〜ピコリットル)の感知が可能となり、かつ分光計を小型化する方途が見いだされる可能性がある。
【0056】
ここで我々はまた、結合したナノワイヤ間の光路作製の原理を証明する図によって、ナノワイヤ/リボンフォトニック集合体を最初に示す。我々は最初に、GaN及びZnOナノワイヤのレーザー発光から得られる個々のナノ秒光パルスはナノリボン導波路を介して伝搬することが可能であり、ナノワイヤフォトニック素子が通信又はコンピュータにおいて有用であるためには光を透過しなくてはならないことを示す。SnO2ナノリボンの単純ネットワークは白色光の分離及び、短経路フィルタリング効果に基づいた個々の色の経路を決定するのに使用される。我々はまた、二対の直交するナノリボンから構成される光クロスバーグリッドについても説明する。この光クロスバーグリッドは、90°という急峻な角度で光を伝搬させ、これらサブ波長キャビティでの光閉じこめの性質を劇的に示す例を供する。我々が作製した独立の、柔軟性を有するナノワイヤ及びナノリボンの導波能力が液中でも十分その能力を示すという事実は、ナノワイヤを伝搬する光がマイクロ流体及び生物学へ応用されうることを示唆している。
[光プローブ及びセンサとしてのサブ波長導波路]
高誘電率のサブ波長導波路は、シリカベース構造のような低誘電率導波路を上回って、液中で光を閉じこめるという重要な利点を有する。溶液(クラッド)とシリカコア(nsilica≒1.45)との屈折率比が小さいため、光波が効率よく伝搬しない。図11は、Si酸化物表面(1μmの熱酸化膜)に留まるSnO2ナノリボン(大きさ:365nm×105nm×265μm)が空気(n=1)で導波される場合と、水(n=1.33)で導波される場合でのフォトルミネッセンス(PL)/暗視野像を比較している。PLは、連続波のHeCdレーザー(325nm)で発生する。図11はまた、ナノリボンが水中に侵浸するときに、どのようにして、この薄いナノリボンの導光PLスペクトルが変化するのかをも示している。
【0057】
図11Aは、乾燥した酸化物表面上のナノリボン46のPL/暗視野像を組み合わせた図である。挿入図は、青色の端部発光の拡大図を示している。図11Bは、水中で石英のカバースリップに覆われた同一のナノリボンを図示している。挿入図は結果として生じた緑色発光を示している。図11Cは、二の条件でのスペクトルを示している。経験的カットオフ波長(空気中の〜483nmから水中の〜570nmまで)の長波長側へのシフト(red shift)は、基板と被覆媒質との間の屈折率プロファイルの減少によって生じる。より均一なクラッド層の屈折率は、ナノリボンコアでの光波閉じこめを改善する。この効果は水を蒸発させることで元に戻る可逆的なものである。
【0058】
図11Cから分かるように、導光されたPLスペクトルは、純粋で覆われているときには長波長側に広がる。そのような長波長シフトは均一な屈折率のクラッド層を有するファイバにとっては特異なことである。ここでは、空気(n=1)を水(n=1.33)に置換することで損失が増大し、モードカットオフの短波長シフトが起こることが予想される。しかし、厚い又は薄い導波路が非対称なクラッド環境(つまり、nwaveguide>nsubstrate>ncover)で存在するとき、ここで示されているように、被覆体の屈折率が上昇することで、基板との非対称性が減少し、閉じこめが改善される。
【0059】
直感的には、ナノリボンの三面について、空気を水に置換することで、特に長波長で、その光学損失は増大し、導波が阻害されるはずである。導光スペクトルが狭くなることが期待される(カットオフ波長の短波長化)。その代わりに、スペクトルは、長波長側へ広がり、端部発光は空気中での青色から水中での緑色に変化することが分かった。コアとクラッドとの間の屈折率プロファイルが小さいために良好なつまり悪くない閉じこめが実現されている結果にも見えるこの驚くべき結果は、空気とSiO2基板との屈折率差よりも、水と基板との屈折率差の方が小さいためであると考えられる。非異方的な水-シリカクラッドは、モード出力をよりナノリボンの中心へシフトさせ、それによって全体の放射損失を減少させる。PLのカットオフを示すには大きすぎるリボンは、水に侵浸させても影響を受けなかった。
【0060】
小さな体積で、基板に支持された液滴を制御して操作できることを示すため、シリカ基板上に1,5-ペンタンジオールの液滴を約5μL滴下し、エッチングされたタングステンプローブが備えられている商用販売されているマイクロマニピュレータを使用して、図12に図示されているように、大きな液滴を小さな体積に分割した。図12Aは、Si基板(1μmの熱酸化膜を有する)上にある様々なサイズの1,5-ペンタンジオールの液滴の暗視野像を図示している。半径及び対応する体積は各液滴に表示されている。図12Bは、小さな液滴(<1fL)の暗視野像の拡大図である。半径及び対応する体積は(〜20fLまで)、図12Aの暗視野像でラベルされている。たとえ小さな体積(<1fL)であっても、図12Bに図示されているように、本方法で実現可能である。小さな体積を作製する他の方法は、溶液を流し込むための流体チャネルを使用することである。
【0061】
リボン導波路はまた上述の発光又は吸収機構によって、溶液中の分子、タンパク質又は大きな生物学的物質(biological entities)の感知が可能である。前者では、ナノリボンは、その出力端で散乱される光の光錐を通過する蛍光プローブを局所的に励起し、発光はファイバ又は顕微鏡によって収集される。
【0062】
図13を参照すると、この蛍光方法を示すため、ナノリボン48のチップを、1,5-ペンタンジオール(n=1.45)中の1mMローダミン6Gレーザー色素(R6G)の液滴約3pLから5pLに埋め込んだ。図13は、ナノリボンキャビティによるR6Gの蛍光及び吸収検出を図示している。図13Aは、ナノリボン導波路48(240nm×260nm×540μm)からの青色光によって励起された1,5-ペンタンジオール中の1mMのR6G液滴の蛍光像である。ナノリボンは、左上から右下に図を交差する。励起光を阻止するためにノッチフィルタが使用された。図13Aの左側挿入図は、液滴及びナノリボンの下半分を示す暗視野像である。図13Aの右側挿入図は、光錐及び、ナノリボンの長さ方向に沿った色素のエバネッセント励起を示す液滴発光の拡大図である。図13Bは、液滴領域での蛍光(直接)スペクトル及び、ナノリボンへ戻されることで結合した蛍光(導光)スペクトルを図示している。導光された発光の長波長化はマイクロキャビティ効果である。図13Cは、ナノリボンの真ん中(吸収の幾何学的位置)付近に滴下された液滴を有するナノリボンの暗視野像である。前述したように、ナノリボンは液滴の一の面でUV励起され、他の面で調査された。図13Dは、液体が存在しない状態での導光PLスペクトル及び、純粋な1,5-ペンタンジオール及び1mMR6Gの液滴が存在した状態での導光PLスペクトルを示す。矢印は、R6Gの吸収が最大になるところを示している。
【0063】
図から分かるように、ナノリボンの離れた端部に照射された青色光(442nm)は、液滴内からの強い傾向の結果発生した。ここでR6G発光は、導波路出力の空間的強度分布を光錐として図示する(図13A及び挿入図)。この蛍光の一部は、ナノリボンキャビティによって捕獲され、その離れた端部へ導光された。このことは、これらの導波路が液体からの信号の経路も液体への信号の経路も決定する能力を有することを示している。ナノリボン両端から得られたスペクトルは図13Bに図示されている。導光された蛍光スペクトルは長波長化し、ナノリボンを介して通過することである程度整形(sculpt)される。しかし、たとえば後述する図17Fで明確になっている重要なモードがほとんど見えない。
【0064】
図13Bはまた、毛管作用を介した、液滴によって湿ったナノリボンの一部からの強い蛍光をも示す。ここでナノリボン表面近傍の色素分子は、サブ波長導波路での全内部反射蛍光(TIRF)で励起される。通常のTIRFでは、マクロスコピックな導波路(顕微鏡のカバースリップのような)での励起は、導波路表面からの距離に対して指数関数的に減衰するエバネッセント光を発生される。このことは、励起の深さを〜100nmに制限し、細胞膜のような組織の局所的調査を可能にする。サブ波長フィルタがコア外部のモード出力の大部分を運ぶことができるため、このエバネッセント場の強度を増大させ、周辺への侵入深さを増大させることで、近傍の分子を励起するのにより大きな出力を利用することが可能となる。計算によって、本実験で用いられた光の波長については、大雑把に見積もって13%から15%の電場強度がナノリボン外部に存在することが示唆された。この場合、半径方向における場の強度は、約135nmで溶液に侵入することで、導波路中心部での最大値の10%に減衰する。TIRF検出感度が導波路クラッド層に存在する一部の出力に対応するので、1次元ナノ構造は、この方法を用いた局所蛍光感知にとって有望な導波路である。
【0065】
1Dナノ構造を溶液中の光検出に使用可能とする他の方法は、ナノリボン表面上及び近傍に位置する分子の吸収スペクトルの生成に基づくことである。蛍光法と比較して本質的に感度が悪いとはいえ、吸収検出は広範にわたる分子への適用が可能で、蛍光タグの煩雑さもない。白色PLを、〜1pLの1mMのR6G(αmax=535nm)液滴が滴下された、長いナノリボン(260nm×240nm×540μm)の中間点に照射した(図13C)。液滴中の色素分子は、光を吸収した形跡を伝搬するPL波(ダブルガウスビーム)に残す。このことは、R6Gの吸収が最大となる辺りではナノリボンを介した透過は完全に消失する(図13D)。色素濃度、液滴サイズ及び、エバネッセント場の空間的な広がりを考慮すると、4×10-17モル未満の色素(〜24000000分子数)がこの実験で検査されたものと見積もられる。50μM(〜35000分子数)の感度であれば容易に到達可能であることは、我々が実験的に示してきた。同一のナノリボン及び、同程度の光路長を用いれば、1μM(24000分子数)程度の低さの色素濃度を検出することが可能である。吸収法はまた、導光された場のエバネッセント部分をも利用するので、小さなナノリボンは再度大きな感度を供するはずである。感度を改善するための他の方法には、キャビティ形状を変化させることでキャビティの長さを増大させる方法(以降で議論する)、選択的バイオセンシングのためにナノリボン表面を官能化する方法及び、各異なる電子遷移によって検体の同時検出を行うために複数の波長の光を照射する方法が含まれる。次の手順は、サブ波長1Dナノ構造をマイクロ流体素子へ集積して、その素子を生きている細胞を研究するための柔軟性プローブとして使用することである。
【0066】
サブ波長ナノリボン/ワイヤを、化学/生物学感知へ利用可能にするための第3の方法は、表面増強ラマン分光(SERS)効果に基づくことである。表面増強ラマン散乱は、検体分子が金属(大抵はCu、Ag又はAu)表面付近で検査されるときに生じる。金属表面は、金属の表面プラズモンと共鳴することで局所電磁場を顕著に増大させる役割を果たす。その結果生じた検体のラマン信号は、1014で増大されることができる。この増大のオーダーは多くの場合、単一分子感知を可能にする。ここで説明されているナノリボン/ワイヤは、表面に高密度のAgのナノ粒子を付着することで、サブ波長SERSファイバにすることができる。ナノリボン/ワイヤへ単色光を照射しながら、ナノ粒子でコーティングされたナノリボン/ワイヤを検体溶液に浸けることで、検体分子のSERS信号の検出が可能となる。この考え方は、光の導入及び閉じこめを行うためのサブ波長導波路を使用することで、SERS振動の形跡に基づいた“指紋”の特定を可能にする。図14Aはこの考え方の概略図で、図14B及び図14Cは、40nmのAgナノ粒子によってコーティングされたナノリボン(NR)像である。Agナノ粒子は、流れるナノ粒子溶液にナノリボンを浸けることでコーティングされる。粒子は、非常に有効に導波光を散乱するように見える。続いてその構造を関心検体溶液に浸けることで、SERS信号を発生させることが可能となる。単純にAgナノ粒子を酸溶液(たとえばHNO3)で溶解し、再度新しいAg粒子を再導入することで素子は、再利用可能となる。
【0067】
ここまで図示されてきた素子全ては、単一経路の形状で動作する。多経路構造はサンプリング長を増大させ、究極的にはより高感度の分光計となる。図15は、矢印1でエバネッセント結合する二のナノリボン(NR1及びNR2)のPL/暗視野像を図示している。上部挿入図は、検体がこの配置のどこにあるのかを指定するグリコール液滴を有する結合ナノリボンの拡大暗視野像である。下部挿入図は、NR2が除去されたNR1の暗視野像で、結合リング構造(接合-矢印2で示されている)を示している。この結合リング構造は、サブ波長分光計における多経路ビームとしての役割を果たす。
【0068】
図15は、我々の操作能力を用いることで容易にリング形状の作製は可能で、繰り返し検体を検査するサブ波長キャビティ形状を作製することが可能であることを図示している。グリコール液滴(上部挿入図)は、検体がこの特別な配置のどこにあるのかを特定する役割を果たす。PL/暗視野像は、エバネッセント結合した(矢印1は接合を示す)二のナノリボン素子を示し、独立した1D構造に基づく多経路分光計を設計する第1ステップを図示している。下部挿入図は、NR1の端部を操作してリング構造を形成した後に撮られた像で、多サイクル装置を作製する第2ステップを示している。これらの進化した設計から良好な感度を十分に実現するには、さらなる仕事が必要となるが、結合効率に関するこれまでの結果は、多経路構造からオーダー単位で増大していることを示唆している。
【0069】
上述の実用的なサブ波長ファイバ分光計を作製するには、感知用ナノリボン/ワイヤが溶液導入用のマイクロ流体チャネルに集積される、より制御されたフローセル型のマイクロ流体を設計するのが得策であることを我々は指摘する。検体が埋め込まれたナノリボン/ワイヤ導波路を通過するのを制御する流路がパターニングされたポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用することで、我々はそのような集積素子を構築した。このマイクロ流体設計で、我々は、明確に画定された感知用ナノリボン/ワイヤの部分を通過する多数の検体を含む溶液を一定間隔で送り込むことで、生物学的及び、他の液体でのモニタリング使用のセンサの再利用が可能となる。図16は、多重ナノリボン(NR)によって橋渡しされたPDMSをパターニングすることで作製されたマイクロ流体チャネル(MFC)を図示している。これについては図16Aで概略的に図示されている。図16Bは、マイクロ流体チャネルの詳細に示した図で、図16Cは、図16Bで図示されたマイクロ流体チャネルを橋渡しする複数のナノリボンを図示する像である。この流体の配置は、これらの構造を蛍光、吸収及びSERS感知で実用する上では重要となる。
【0070】
ここで化学的に合成された1D半導体ナノ構造について説明している考え方及び原理は、既存のリソグラフィ技術とほとんど同じであることに留意すべきである。最先端の電子ビーム及び他のリソグラフィ法は現時点で、サブ波長光プローブ及び分光計を作製するのに、これまで論じてきた一連の方法よりも、より良好なサイズ制御、再現性及びプロセス速度を提供する。今後行われる実験には、ナノスケール光学を用いたときの検出限界が認識できるような、様々な支持基板上にリソグラフィで画定された構造を含む。
【0071】
現在の産業界の努力及び小体積検出への関心から、ナノドロップテクノロジー社は、特許された液中保持技術に基づいたUV/可視分光計(ND-1000)を開発した。その装置は一般的に、1μLから2μLの分量の核酸を検出するのに使用される。試料の検出限界は2ng/μL(dsDNA)である。Xeフラッシュランプ(220nm〜750nm)の光路長は、相対的に1mmになるように固定されている。商用販売されている分光計ユニットと比較したサブ波長分光計の主要な利点は、進化した多経路形状によって、体積が小さくなること(〜106倍小さい)、光路長が短くなること(10倍短い)及び、高感度になる可能性があることである。
[ナノリボン及びナノワイヤ集合体を有する光路作製]
光の波長よりも小さな構造での光エネルギー操作は、コンピュータ、通信及び感知用集積フォトニクス素子の開発にとって重要となる。我々は、独立した、化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤの小さな群をモデル構造に集積した。このモデル構造は、三の異なる半導体で構成されるサブ波長キャビティ間でどのようにして光がやり取りされるのかを示す。ナノワイヤでコンタクトが取られるときに形成される光リンケージ強度は、相互作用体積と交差角の両方に依存する。単純な結合手順を使用することで、ナノワイヤのレーザー発光は、コヒーレントな光パルスを、長さ数mmのナノリボン導波路を介して放出することができる。また、ワイヤ間の結合損失は、光が交差したナノリボンのグリッド中を何度も直角に伝搬できるほどに小さい。ナノワイヤ/ナノリボンの外側を進行する導波された光波出力の一部は、空間を介してナノワイヤとの連結及び、多重リボンネットワーク内部での色の分離に利用される。それに加えて、ナノリボンが液中でも優れた導波路として機能し、溶液中又は導波路表面付近の分子を検査する独自の方法を提供することが分かる。我々の結果は、能動及び受動ナノワイヤ集合体に基づいたフォトニック素子の基礎となるもので、マイクロ流体及び生物学へナノワイヤ導波路が利用できる可能性を示唆している。
[例3]
SnO2ナノリボンは、1100℃でArを流しながら気相SnOを供給することで合成された。ZnOナノワイヤは、Auを触媒に用い、金属Znを800℃で酸化させることで、サファイア基板上にエピタキシャルアレイで成長させた。GaNナノワイヤは900℃で、Niを触媒に用い、NH3/H2混合気体中に気相Gaを供給することで合成された。SnO2ナノリボンは、酸化されたSi基板(SiO2の厚さは600nm、Silicon Sense社)へまとめて乾式移送された。タングステンプローブ(〜400nmのチップ径)が備えられている3軸マイクロマニピュレータは、成長基板から個々のZnO及びGaNナノワイヤ(PLスペクトルから選択される)を除去し、これらのナノワイヤをナノリボンへ堆積するのに使用された。
[例4]
ナノリボン及びナノワイヤは、暗視野顕微鏡を使用しながらプローブによって操作された。パルス励起にNd:YAGレーザーの4倍高調波(266nm、8nm、10Hz)が用いられる一方で、HeCdレーザーは、連続波(CW)共鳴発光を与えた。レーザーダイオード(652nm及び532nm)及び、HeCdレーザー(442nm)は、フィルタリング及び蛍光を示すための可視光を供給した。レーザーは約50μmのビーム径に集光され、約175W/cm2のCW出力密度及び、約10μJ/cm2のパルスエネルギー密度を与えた。スペクトルは、ファイバ結合した分光計(1mmにつき150及び1200の回折格子、SpectraPro 300i、Roper Scientific)及び、液化窒素で冷却されたCCD設備によって得られた。白黒像及びカラー像は、顕微鏡に設けられた二のCCDカメラ(CoolSnap fx及びCoolSnap cf、Photometrics社)によって記録された。
【0072】
ここで説明されてきた多くのナノリボン/ワイヤは、数種類の実験で用いられた波長に対して単一モードファイバとして動作するが、その一方で、多モードで動作するものもある。たとえば、円柱状ステップインデックスファイバの単一モードカットオフ径は大気中でだいたい、SnO2で140nm(λ=365nm)及び265nm(λ=600nm)、GaNで112nm(λ=365nm)並びに、ZnOで220nm(λ=510nm)である。
【0073】
液体実験では、水又は様々なアルコールの大きな液滴(〜5μL)がピペットによって酸化物表面に移送された。溶液の液滴はマニピュレータを用いて、より小さな体積(100fL程度の大きさ)に分割され、表面上に位置設定された。
【0074】
ナノリボン及びナノワイヤのサイズは、走査電子顕微鏡(SEM)で決定された。
【0075】
図17及び図18は、GaN及びZnOナノワイヤと様々な組み合わせがなされた単一ナノリボンで実行された複数の実験を図示している。
【0076】
図17は、GaNのPL及びレーザー発光の光路が図示されている。図17Aは、結合した、GaNナノワイヤ50及びSnO2ナノリボン52の暗視野光学像である。ラベルAは接合位置を示す。図17Bは、位置BでのSnO2ナノリボンの直接励起が、SnO2キャビティ端部へ導光される白色PLを発生することを示している。光の一部は、Cで見いだされる大きな粒子によって散乱される。図17Bの挿入図は、下部発光スポットの拡大図である。図17Cは、接合領域の拡大図である。図17Cの挿入図は、二の構造が9μmより大きくずれ、約2μm 接している様子を示すSEM像である。図17Dは、GaNナノワイヤの直接CW励起が、365nmでUVバンド端発光及び、650nmで少量の欠陥による可視光の発光を生じさせる様子を図示している。キャビティは、赤色光を閉じこめるには薄すぎるが、(挿入図において)UVカメラはUVのPLに対する強い導波を検出している。図17Eは、ナノワイヤからナノリボンへのUVレーザーパルス光路の光学像である。ここでGaNキャビティは、波長266nmのパルス光源によって(光源からの光自体は検出器で検出できない)、レーザー発光閾値より高いエネルギーで励起された。図17Fは、GaNのPLとレーザー発光、及びナノリボン通過前と後とを比較したスペクトルを図示している。幅広の擬ガウス分布を示す自然放出ピーク(上部)が、ナノリボンを通過する間に一連の鋭いモードに分割される(WG PL)。同様に、中程度の励起出力でのレーザー発光は、SnO2キャビティのモード構造によって大幅に変調される(下部)。簡明を期すため、スペクトルは規格化され、オフセットされている。
【0077】
明らかなように、図17Aは、マイクロマニピュレータによってSnO2ナノリボン(240nm×260nm×460μm)と結合したGaNナノワイヤ(130nm×65μm)を図示している。GaN-SnO2接合(図17Bの挿入図)の拡大SEM像は、二の構造が約2μmの相互作用長で、物理的に接触していることを示す。このずれて結合した配置は、キャビティ間の良好な光結合及び、ある程度のワイヤ間の架橋(静電力を介した)を供する。この架橋は、多重ワイヤネットワークの構築の助けとなる。ワイヤ先端部での結合もまた有効で、数百nmまでの空気ギャップ(図示していない)をはさんで弱く結合するナノワイヤキャビティ間での光の移動を検出することも可能である。ナノナノリボンがずれている代わりに交差している場合、結合損失は、交差角が小さくなるに従って減少する。このことは、最近の研究成果である、交差したCdSナノワイヤでも観測された。
【0078】
連続波光の光路を示すため、波長325nmで動作するHeCdレーザーの集束ビームでGaNナノワイヤを励起させた。GaNキャビティからのバンド端PLは、SnO2ナノリボンを介してその離れた端部で放出される。光の一部はまた、ナノリボンの長さに沿った欠陥(つまり、付着粒子又はマクロスコピックなステップ端)によって散乱された。ナノリボンの出力端から収集された非近接場スペクトルは、GaNの擬ガウスPLバンドが、SnO2キャビティ透過中でのモード構造に起因していることを示している。ナノワイヤは短くないため、このモード構造は事実上縦型(ファブリ・ペロー型)ではない。しかしその代わり、とりわけナノリボンの形状及び断面積の大きさに依存する複雑な干渉パターンとなる。
【0079】
しかも図18を参照すると、多数のZnO及びGaNナノワイヤを同一のナノリボンに結合させることで、二(以上の)ナノレーザーの出力を同時に導光することが可能となり、単一ナノキャビティ内部で非線形光波混合を実現できる可能性を切り開いた。図18Aは、同一のナノリボン58に結合するGaNナノワイヤ54及びZnOナノワイヤ56の暗視野像である。スケールバーは10μmである。図18Bは、二のナノリボンが、同一の光パルスによってレーザー発光閾値より大きなエネルギーで励起されたときに、ナノリボンの励起位置から離れた端部で収集された導波光スペクトルを図示している。
【0080】
連続波発光とは対称的に、欠陥に起因するバンドが利得を持たないため、ZnO及びGaNのパルス発光はほとんど可視光がない。これは、コヒーレントな光パルスがナノワイヤ間を移送され、光源から数百μm進行することが可能であることを実験的に確認したものである。高周波電気励起では、ナノワイヤレーザー/導波路の組み合わせが、将来のコンピュータ及び通信素子内部で電気光学情報のパケットを変換し、往復させるのに用いることが可能となるだろう。
【0081】
図19はGaNナノワイヤレーザー発光を図示している。図19Aは、各異なる励起フルエンスでの、直径150nm及び長さ45μmの孤立GaNナノワイヤの一連の発光スペクトルを図示している。図19Aの挿入図はPLスペクトルを図示している。図19Bは同一のナノワイヤのエネルギー曲線を図示している。GaNナノワイヤのレーザー発光の典型的な閾値は、5μJcm-2から15μJcm-2だった。図19Bの挿入図は、異なるGaNナノワイヤからのレーザー発光の像で、顕著な空間的パターンを示している。パルスUV励起で、GaNナノワイヤをレーザー発光閾値(〜5μJcm-2)より大きなエネルギーで励起することで、ナノワイヤレーザーからナノリボン導波路を介して単一光パルスを送ることができた(図17E)。数千の累積したパルスのスペクトル(図17F)は、GaNのバンド端からわずかに長波長化した、一連の急峻なモード(FWHM=0.8nm)を図示している。これらは、GaNナノワイヤ共振器のファブリ・ペロー型レーザー発光モードで、ナノリボンキャビティによって強度が変調される。我々は、ナノリボンとレーザー発光するZnOナノワイヤとの接合でも同様の結果を得た。
【0082】
ここで図20及び図21を参照すると、サブ波長キャビティでの回折損失が波長に対して顕著に増大するので、ナノリボン導波路は非単色ビームのうちの青色に近い成分を選択的に閉じこめる。その結果、ナノリボンは、その断面積の大きさ及び全長によって決定されるカットオフ波長を有する短経路フィルタとして機能する。
【0083】
図20は、ナノリボンネットワーク60での色フィルタリングを図示している。図20Aは、励起スポットで発生した白色PLを導光し(左図)、白色光を各ナノリボン端部で各色に分離する(右図)四のリボン集合体の暗視野像である。スケールバーは50μmである。図20Bは、発光領域の拡大図である。図20Bの分岐ナノリボン1-3は、緑色、水色及び青色光を放出する。その理由は、段階的に断面積が小さくなるためである(それぞれ、350nm×140nm、260nm×175nm及び210nm×135nmである)。これらの50%カットオフ波長は、近接場走査光学顕微鏡(NSOM)によって、それぞれ543nm、502nm及び478nmと決定された。細長いナノリボンは、260nm×175nm×390μmである。図20Cは、非共鳴の青色光が全四のナノリボン端部へ伝送される様子を図示する一方で、図20Dは、緑色光がナノリボン3よりもナノリボン1によってより強く導光される様子を図示し、図20Eは、赤色光が全三の分岐によって除去されている様子を図示している。スケールバーは20μmである。
【0084】
図20から分かるように、我々はそれぞれサイズが異なる四のナノリボンを有する単純なネットワークを集積し、そのような構造がどのようにして色を分離するのに用いることができるのかを示した。波長325nmで励起されるとき、ネットワーク60の細長い部分を形成する大きなナノリボンは、495nm及び590nmを中心とする、二の広いSnO2のPLバンドからなる白色光を放出する。図21から分かるように、これは典型的なSnO2ナノリボンのPLスペクトルで、二の欠陥バンドを示す。細長い部分を変化させることで、発光は、三の短く、連続的に薄い分岐ナノリボンへ進行し、白色光は、緑色、水色及び青色成分に分離する(リボン1-3)。あるいはその代わりに、単色の赤色光が細長い部分に照射されたとき、細長いナノリボンのみが発光し、その一方で緑色光は、最大(最小)の分岐によって強く(弱く)導光され、青色光は細長いナノリボンのみならず全三の分岐を通過した(図20B-図20D)。たとえこの色除去効果が短経路モードでのみ機能する、つまり白色ビームの純粋な赤色成分光を取り出すことができないとしても、UVパルスから可視の余分な成分を除去する又は、量子ドットのような狭い吸収端を蛍光プローブの局所励起に供するような課題には有用と認められるだろう。
【0085】
図22を参照すると、キャビティ間の光結合の限界をテストするため、我々は四のナノリボンを、小さな接触領域(<〜0.15μm2)の頂部を有するX接合を特徴とする、長方形グリッド(長さ46μm×幅〜25μm)に集積した(図22A及び挿入図)。図22Aは、四のリボン構造の暗視野像で、入力チャネルは像の右外側へ延在し、出力チャネルは1-7のラベルがされている。ナノリボンのサイズは、300-400nmで変化する。図22A及び挿入図は、右下頂部での接合のSEM像である。図22Bは、入力チャネルが325nmで励起されるときのPL像である。後述するように、光はそれぞれ異なる強度及び色で、七の出力端へ導光される。
【0086】
構造は、光入力用の一の長いチャネル及び、同時観察可能な七の短い出力チャネルで設計された。図22Bで図示されているように、入力チャネルの直接励起は、全七のナノリボン出力からの発光の引き金となった。その際の強度分布は、1>>6>4≒7>3>5>2である。これはまさに、入射光の光路及び、四のナノリボン-リボン接合での散乱強度を考慮した後に予想される結果である。端部ファセットの反射率が低いことでナノリボンが共振器として不十分な性能を示すため(理想的なフィネスは〜1.3である)、光路はここでは重要である。そのようなものとして、ほとんどの光子は多数の光路を作らず、光は非常に直進性が高い。直角で交差することで、全内部反射によるキャビティ間の導波に重大な障害を与えることになる。それと同時に、ナノリボン間に光を供給する擬等方的散乱体として機能する。ナノリボン-リボンでの損失がたとえこの配置で最大となっても、チャネル2及びチャネル3の活性化には依然として十分低いものである。チャネル2及びチャネル3は光子を、二の直角接合で一緒にさせ、三の分離したキャビティへ伝送するのに必要である。ZnOナノワイヤレーザーを入力チャネルに加え、それで光をグリッドへ照射するとき、発光はチャネル2及びチャネル3からしか検出されなかった。注入した光子数が少なすぎて、平行ナノリボンを発光させることができなかったためである。ナノワイヤグリッドはすでに基本的な電子回路論理を実装するのに使用されている。集積光学論理回路及び全光スイッチは、非常に興味深い特性を与え、我々が得た今回の結果は、ナノワイヤグリッドがそのような作業の信号経路を与える能力を有しているはずであることを示した。
【0087】
これらの屈折率が大きいため(n≧2)、ここで論じられているナノリボン及びナノワイヤは、水中及び他の液中でも導波路として機能する。これはサブ波長シリカに対する重大な利点である。サブ波長シリカ導波路は、比誘電率が小さいため(nsilica≒1.45)、液中で可視光を有効に閉じこめることができない。液中での導波は、小さな励起及び検出体積を必要とする集積オンチップ化学分析及び生物学的分光にとって特に重要である。
【0088】
明らかに、化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤ導波路は、サブ波長フォトニクス応用において、二の特徴的でかつ有用と思われる特徴を有する。第1に、ナノワイヤはシリカを超えたサブ波長光ファイバとなる。ナノワイヤ形状での作製が可能な材料は数多くあり、能動、受動及び半導体的無機材料や、広範囲にわたるポリマーが含まれる。異なる組成のナノワイヤ内及びナノワイヤ間では、同時に光子、キャリア及びスピンの操作が可能である。また、これらの材料の多くは、シリカベースのガラスよりも大きな屈折率を有するので、所定波長の光を、高密度集積のための薄い構造内に閉じこめることが可能となる。これにより液中での導波が可能となり、たとえば直径約300nmのSi又はGaPナノワイヤを使用することで、サブ波長導光を通信での導波へ拡張することが可能となる。第2に、ナノワイヤは独立で、表面上での操作が可能な、機械的に柔軟性のある構成要素で、又流体中での可動プローブとして使用することも可能である。そのようなものとして、これらは、基板に永久に固定する、リソグラフィで画定された構造では実現が困難であった多目的型を提供する。
【0089】
ナノワイヤフォトニクスの欠点には、(i)大きな群をなすナノワイヤを有用な構造に正確に調製する集積方法が少ないこと、(ii)リソグラフィで形成したモノリシック導波路と比較してワイヤ間損失が比較的大きいこと(ただし、分岐した、多コンポーネントナノワイヤが開発され、ここで使用されているような、ずれた、又は交差したナノワイヤキャビティに置き換わるのであれば、結合損失は大きく減少するだろう)、(iii)リソグラフィで画定可能な精密な形状及びサイズに対してナノワイヤ集合体の幾何学的完全さが小さいことがある。幾何学的不完全さにより、生じた光の伝播にある程度の不確実が導入され、ナノワイヤの実験/理論の比較が複雑になってしまう。しかし、これらの制限はあるにせよ、ナノワイヤ及びその集合体は、まだ始まったばかりである、フォトニクス研究及びその応用に重要で新たな環境を提供する。
【0090】
ここで説明してきたサブ波長導波路が、光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドのようなフォトニック回路での機能的構成要素としての使用が可能であることが分かる。当業者にはまた、ここで説明したナノ構造が、製造可能で、かつ、当技術分野で既知の方法を用いることで、素子、システム及び構造への組み込みが可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1A】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図1B】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図1C】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図2A】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2B】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2C】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2D】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2E】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2F】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図3A】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3B】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3C】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3D】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3E】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3F】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3G】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図4A】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4B】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4C】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4D】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4E】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4F】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4G】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4H】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図5A】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5B】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5C】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5D】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5E】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5F】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図6A】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図6B】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図6C】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図7A】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図7B】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図7C】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図8A】単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとで作製されるヘテロ接合を図示している。
【図8B】単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとで作製されるヘテロ接合を図示している。
【図9A】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図9B】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図9C】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図10A】ナノリボン短経路フィルタを図示している。
【図10B】ナノリボン短経路フィルタを図示している。
【図11A】水中の導波路を図示している。
【図11B】水中の導波路を図示している。
【図11C】水中の導波路を図示している。
【図12A】水中の導波路の暗視野像を図示している。
【図12B】水中の導波路の暗視野像を図示している。
【図13A】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13B】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13C】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13D】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図14A】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図14B】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図14C】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図15】矢印1でエバネッセント結合する二のナノリボン(NR1及びNR2)のPL/暗視野像を図示している。
【図16A】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図16B】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図16C】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図17A】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17B】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17C】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17D】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17E】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17F】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図18A】多レーザー導波路を図示している。
【図18B】多レーザー導波路を図示している。
【図19A】GaNナノワイヤレーザー発光を図示している。
【図19B】GaNナノワイヤレーザー発光を図示している。
【図20A】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20B】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20C】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20D】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20E】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図21】SnO2ナノリボンの典型的なPLスペクトルである。SnO2ナノリボンが有する二の欠陥に起因するバンド間発光が示されている。
【図22A】長方形のナノリボングリッドの光路を図示している。
【図22B】長方形のナノリボングリッドの光路を図示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、光導波路に関し、より詳細には、サブ波長光導波路並びに、光プローブ、センサ、ルータ及びナノリボン/ナノワイヤ光導波路に基づく他の素子として用いられる、ナノリボン及びナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
化学的に合成されたナノワイヤは、ナノスケールの電子及び光エレクトロニクス素子を構築する独自の種類のビルディングブロックの1つである。ナノワイヤの合成と素子の作製とは一般的には分離した工程であるため、たとえ作製それ自体が依然として大変でも、ナノワイヤにおける異なる材料のヘテロ集積における自在性は、標準的Si技術よりは高い。ナノワイヤ素子の構成部品のツールボックスは進化し、現在は、トランジスタ、発光ダイオード、レーザー及び光検出器のような様々な型を含む。リソグラフィを使用した単純ナノワイヤ回路の電気的な集積が示される一方で、高速及び多目的性素子を実現する光集積は未だに示されていない。
【特許文献1】米国特許公開第6882051号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0131537号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エレクトロニクスの光への類推であるフォトニクスでは、小型化が半導体及び通信技術の研究を進展させる要因であるという論理が共有されている。サブミクロン空間内で光パルスを操作する能力は、光コンピュータのような高集積光ベース素子実現にとって決定的に重要である。フォトニックバンドギャップ及びプラズモン現象を利用した光の制御に関する最近の進展はこの点では非常に印象的である。しかし、両方法とも一般的には、素子製造において難しくかつ高コストのリソグラフィ工程に頼るものであり、知見及び開発は初期段階にすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来よりも単純になり得かつ、同様に多目的を実現するための基本的な考え方は、光発生、光路作製及び検出のような各異なる機能を前提とする、ナノリボン/ナノワイヤ素子を集合させることでフォトニック回路を作製することである。従って、本発明は一般的に、導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤから構成されるサブ波長光導波路を有する。そのようなサブ波長導波路は、様々な型のフォトニック回路の基本素子の役割を果たすことが可能である。
【0005】
化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤは、良好なビルディングブロックとなる複数の特徴を有する。その特徴には、固有な1次元性、様々な光学的及び電気的特性、良好なサイズ制御、低表面粗さ及び、原則的には回折限界より大きな波長の光も、回折限界よりも小さな光も両方とも動作させる能力が含まれる。集積ナノリボン/ナノワイヤフォトニクスへ向けた重要な段階は、ナノリボン/ナノワイヤ素子の対を結合させ、論理操作のような複雑な処理の実行に必要となる相互接続パターンにおける自在性を提供することが可能なナノリボン/ナノワイヤ導波路の開発である。
【0006】
従って、本発明の一の態様は、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路のようなナノ構造で構成されるフォトニック回路素子の組み立てである。一の実施例では、光の波長(典型的には100nmから400nm)未満の直径を有する光アスペクト比(たとえば、>1000)のナノリボン/ナノワイヤが、それぞれのナノ構造内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)の導波路及び、隣接する、エバネッセント結合したナノリボン/ナノワイヤ又は外部のレーザーダイオードから発光する非共鳴UV/可視光の導波路として用いられる。
【0007】
本発明の別な態様に従うと、これらの単結晶構造は、その長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上での操作及び位置設定によって様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークの作製が可能である。多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器(ring-shaped directional coupler)及び、ナノリボン/ワイヤ発光体-導波路-検出器接合が含まれる。
【0008】
本発明の別な態様は、能動及び受動ナノリボン/ワイヤキャビティの形状を操作する能力が、サブ波長構造のキャビティ動特性(dynamics)を研究する新たな手法の提供である。しかも既存のナノワイヤビルディングブロックの様々な組の集積がさらに進展することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるだろう。
【0009】
本発明の別な態様は、ナノリボン/ナノワイヤがシリカを超えたサブ波長光ファイバとなることである。多数ある、ナノリボン/ワイヤ形状での作製が可能な材料には、能動、受動、非線形及び半導体無機結晶同様に、様々なポリマーが含まれる。異なる組成のナノワイヤ内部及び、当該ナノワイヤ間で、同時に光子、電荷及びスピンの操作が可能である。また、これらの材料の多くはシリカベースのガラスよりも大きな屈折率を有するため、所定波長の光を、より密に集積するための薄い構造の内部に閉じこめることが可能である。
【0010】
本発明の別な態様は、サブ波長ナノリボン/ワイヤ光導波路を用いた液中での導波路である。
【0011】
本発明の別な態様に従うと、ナノリボン/ワイヤは独立し、機械的に柔軟な素子である。その柔軟な素子は、表面上での操作、又は流体中での可動プローブとしての利用が可能である。そのようなものとして、本発明に従ったナノリボン/ワイヤは多目的性を提供する。その多目的性は、基板上に永久に取り付けられた、リソグラフィで画定された構造では実現することが困難なものである。
【0012】
本発明の別な態様は、高アスペクト比及び導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン/ワイヤ光導波路である。一の実施例では、アスペクト比は、約1000よりも大きい。他の実施例では、直径は約100nmから約400nmの範囲である。
【0013】
本発明の別な態様は、結晶酸化物ナノリボン/ワイヤで構成されるサブ波長光導波路である。一の実施例では、ナノリボン/ワイヤはSnO2を有する。他の実施例では、ナノリボン/ワイヤはZnOを有する。さらに他の実施例では、ナノリボン/ワイヤはGaNを有する。
【0014】
本発明の別な態様は、ナノリボン/ワイヤ光チャネルで結合する、ナノリボン/ワイヤレーザー及び、ナノリボン/ワイヤ検出器を提供する。
【0015】
本発明の別な態様は、SiO2又は雲母基板上に散布されたナノリボン/ワイヤを有する光導波路である。
【0016】
本発明の別な態様は、SnO2ナノリボン/ワイヤ導波路の作製方法である。
【0017】
本発明の別な態様は、ZnOナノリボン/ワイヤ導波路の作製方法である。
【0018】
本発明の別な態様は、ナノリボン又はナノワイヤ導波路を有する、液状媒体を介した導光用装置である。一の実施例では、ナノリボン導波路は、ZnOナノワイヤ導波路を有する。さらに別な実施例では、導波路は高誘電率導波路を有する。さらに別な実施例では、ナノワイヤ導波路は、GaNナノワイヤ導波路を有する。
【0019】
本発明の別な態様は、サブ波長ナノ構造導波路を有するプローブ又はセンサである。
【0020】
本発明のさらに別な態様は、少なくとも二の結合したナノリボン導波路を有する光ルータである。一の実施例では、ナノリボン導波路はSnO2ナノリボン導波路を有する。
【0021】
本発明の他の態様は、少なくとも二の結合したナノワイヤ導波路を有する光ルータである。一の実施例では、ナノワイヤ導波路はZnOナノワイヤ導波路を有する。
【0022】
本発明のさらに他の態様は、白色光を分離して、短経路フィルタリング効果(short-pass filtering effect)に基づいて各色の経路を決定するように備えられているナノリボン導波路のネットワークを有する光ルータである。一の実施例では、ナノリボン導波路は、SnO2ナノリボン導波路を有する。
【0023】
本発明の他の態様は、急峻な角度である90°で光を伝搬するように備えられている二対の直交ナノリボン導波路を有する光クロスバーグリッドである。一の実施例では、ナノリボン導波路は、SnO2ナノリボン導波路を有する。
【0024】
本発明のさらに別な態様は、以降での明細書の記載によって明らかとなる。以降での詳細な説明は、本発明を限定することなく、その好適実施例を十分に開示することを目的とする。
【実施例】
【0025】
本発明は、図示のみを目的とする以下の図を参照することで本発明は理解される。
【0026】
二成分酸化物からなるナノスケールのリボン形状結晶は、極端な機械的柔軟性、表面を介した電気伝導性及びレーザー発光特性のように広範にわたる興味深い特性を示す。しかし、我々の研究室でのSnO2ナノリボンのフォトルミネッセンス(PL)に関する最近の研究の一部として、私たちは、高アスペクト比(>1000)のナノリボンが、優れた可視PL発光での導波路として機能することを発見した。SnO2は、2.5eV(緑色)及び2.1eV(オレンジ色)でのPLバンド間発光によって特徴づけられるワイドバンドギャップ(3.6eV)半導体で、ガスセンサ及び透明電極での用途が見いだされている。我々の研究では、従来の熱輸送技術で、最大で長さ5000μmの単結晶SnO2ナノリボンを合成してきた。合成された構造は、かなり均一な(±10%)長方形の断面を有する。断面の大きさは、大きいもので2μm×1μm、小さいもので15nm×5nmである。我々が合成してきたナノリボンの多くは、100nmから400nmの幅及び厚さである。これらの値が、サブ波長キャビティでの可視光及び紫外光を有効に操作するのに最適なサイズ幅であることを我々は突き止めた。
【0027】
それに加えて、フォトニック回路素子はたとえば、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路から構成することが可能であることを我々は突き止めた。光の波長未満(典型的には100nmから400nm)の直径を有する高アスペクト比ナノリボン/ワイヤは、それぞれの内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)だけでなく、隣接する、エバネッセント結合するナノワイヤ又は外部レーザーダイオードから放出される非共鳴のUV/可視光に対しても優れた導波路として振る舞う。さらに、これらの単結晶構造は、その長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上での操作及び位置設定することで様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークを作製することが可能である。多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器(ring-shaped directional coupler)及び、ナノリボン/ワイヤ発光体-導波路-検出器接合が含まれる。能動及び受動ナノワイヤキャビティの形状を操作するこのような能力は、サブ波長構造のキャビティ動特性を研究する新たな手法を提供する。しかも既存のナノワイヤビルディングブロックの様々な組の集積がさらに進展することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるだろう。
【0028】
光導波路としてのナノリボン/ワイヤの利用は、光の波長未満の直径を有するナノリボン/ワイヤに基づいていることには留意しなくてはならない。また、ナノリボン/ワイヤが円形断面を有してはならないことにも留意しなくてはならない。たとえば、ZnOナノワイヤは一般的には六角形断面を有し、SnO2ナノリボンは一般的には長方形断面を有する。従って、円形ではない断面の場合、“直径”という語は、実効的な直径を指すものと一般には考えられる。実効的な直径とは、その構造の断面の長軸と短軸の平均で定義される。しかし“直径”という語は、前述の定義に限定されず、ナノリボン/ワイヤがサブ波長導波路として機能するようなナノリボン/ワイヤの大きさをも含むことが意図されている。
[ナノリボン導波路]
当初、我々は、遠赤外顕微鏡及び分光を用いて、SiO2及び雲母基板上に散布された個々のナノリボンの導波路としての振る舞いを研究した。図1は、長さ715μmの単一ナノリボンから収集された代表的データを図示し、図2は、長さ425μmの単一ナノリボンから収集された代表的データを図示している。
【0029】
より詳細には、図1は我々が合成した長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。図1Aは、(幅350nmで厚さ245nmの)曲がりくねったナノリボン10及びその周囲の暗視野像である。図のスケールバーは50μmである。図1Bは、レーザー励起された状態でのPL像である。ここでレーザーは、ナノリボン上端部において入射角30°でスポットサイズ〜50μmに集光された。図1Cは、室温及び5[K]で収集された、導波路底端部からの発光スペクトルを図示している。高解像度の発光プロファイル(挿入図)は、三の中心的ピークで微細構造を示している。この微細構造はどのピークにも存在することが分かった。
【0030】
図2は長さ425μmのナノリボンの全色感色性導波路を図示している。図2Aは、断面の大きさが520nm×275nmのナノリボン12の暗視野像である。スケールバーは50μmである。図2Bは、ナノリボン真ん中付近に中心をとるUV励起スポットを有するPL像である。図2Cは、ナノリボンの右側端部での拡大された暗視野PL図である。ただしレーザーは左側端部で集光されている。幅広(〜1μm)ナノリボン14は関心対象のナノリボンを横切るように存在する。図2Cの拡大図は、ナノリボンの右側終端部での走査電子顕微鏡像で、長方形の断面を示している。スケールバーは500nmである。図2Dは波長652nm(赤色)の単色光によってナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16aのデジタル像で、図2Eは波長532nm(緑色)の単色光によってナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16bのデジタル像、そして図2Fは、波長442nm(青色)の単色光でナノリボンの入力端部を非共鳴励起する間に、ナノリボン出力端部において導波された発光16cのデジタル像である。最も左側の発光スポットである、図2Dでの18a、図2Eでの18b及び図2Fでの18cは、ナノリボン-ナノリボン接合での散乱に起因し、マイクロマニピュレータによって幅広ナノリボン14を選択的に除去することで抑制された。
【0031】
明らかなように、連続波レーザー光(3.8eV)をナノリボンの一の端部に集光させたとき、発生したPLの大部分はナノリボンキャビティによって、高強度で発光する反対側端部へ導光された。かなり驚くべきことに、ナノリボンが従来の光ファイバと同様な性質を示すことが分かった。また、散布中に内部が損傷した、又はかなり大きな3D表面欠陥を有するナノリボンがその長さ方向に沿った一連の明るい点で導波された光を散乱することも分かった。図2Cを参照すると、たとえ存在するナノリボンが、厚い場合でも、ときとして散乱中心として振る舞うとしても、ナノリボン間の接点は大抵の場合暗い。
【0032】
再度図1Cを参照すると、また、ナノリボン端部を励起しながら、その反対側端部から収集される発光スペクトルは大抵の場合、複雑で、疑似周期的な変調を特徴として有する。これは平面導波路内で許容される、長方形キャビティ内部で共鳴する電磁波の干渉によって生じる縦型モードのためである(つまり光学モード構造)。この変調は一般的に、緑色とオレンジ色の同時発光の場合であれば緑色PL成分に閉じこめられ、このことは、PL発光の空間的位置(つまりバルク又は表面)の差異、又はナノリボンキャビティにおける二色閉じこめの差異のいずれかを示唆することが分かった。短いナノワイヤ導波路では、そのような変調は、λを波長、Lをキャビティ長そして、nを屈折率(SnO2の場合2.1)としたときに、モード間隔Δλが、Δλ=λ2/{2L[n-λ(dn/dλ)]}で表される縦型ファブリ-ペロー型モードに起因する。しかしナノリボンが長すぎたため、Δλは我々の装置の分解能限界である0.01nmを下回ってしまった。それに加え、SnO2キャビティは縦型モードを示しにくい。その理由は、SnO2キャビティ端部での反射率が低く(≦13%)、散乱及び出力結合損失を補償する利得が生じないためである。スペクトル構造についての系統的な研究は、モードが、(曲がり損失、基板結合及び屈折率変化を介した)ナノリボンの断面サイズ及び配向のみならず、光強度及び終端部ファセットの粗さに対して複雑な依存性を示すために困難になっている。モード構造の存在は、ナノリボンキャビティが高いフィネス(finesse)を有することが可能であることを示唆することを我々は指摘している。それに加えて後述のように、所与の波長での損失は、キャビティ形状を変形させることで調節可能である。
【0033】
一般的には、サブ波長共振器は、短波長放射線の良好な閉じこめにより、波長に強く依存する大きな光学損失を示すことが予想される。光閉じこめの波長依存性を調べるため、入射角が30°の赤色、緑色及び青色の単色光を単一ナノリボンへ照射し、ナノリボン端部での発光を観測した。赤色導波はまれで、緑色導波は普通でかつ、青色導波は当たり前に存在することが分かった。また、所与の誘電材料、キャビティの幾何学的形状及び波長については、臨界直径が存在する。その臨界直径未満では、すべての高次光学モードが遮断され、導波を維持するのが急激に困難になる。より詳細には、大気中に組み込まれた円柱状SnO2をナノリボン導波路として取り扱うことで、光の波長が652nmで約270nm、光の波長が532nmで220nm及び、光の波長が442nmで180nmの高次縦型モードのカットオフ直径を発見した。各光の波長は我々の実験で用いられた値である。この近似はキャビティ形状を単純化し、基板結合及び他の効果を無視しているとしても、これらの値は、青色及び緑色導波路のサイズの走査電子顕微鏡測定結果と良く一致する。我々の試料のナノリボンのほとんどは、赤色光が約100μmより長い距離を伝搬するには薄すぎる。しかし、上述のような、十分大きな断面を有するナノリボンは、可視光スペクトルでの波長の光を有効に導波することで、図2Dから図2Fで図示されるようなサブ波長の赤-緑-青(RGB)光ファイバ(たとえば光伝送器)として機能する。
[波長依存損失]
近接場走査光学顕微鏡(NSOM)を使用することで、まっすぐなナノリボンの波長依存損失を定量化した。上記を実行するため、ナノリボンは、固定された収集プローブに対し、ナノリボンの長さ方向に沿った各異なる位置で励起された(3.8eV)。波長が450nmから550nmの範囲での損失は、1dBmm-1から8dBmm-1の範囲で、ナノリボンの断面積及び表面散乱中心の密度に依存することが分かった。これらの値は、サブ波長シリカ導波路について最近報告された値よりも大きく、その理由は、ナノリボン表面が比較的粗いこと及び、基板結合による余計な損失があるためだと考えられる。しかし、ここでの損失は、導波路素子が非常に短い距離しか光を伝送しない集積平面フォトニック応用で要求される損失よりも良好であることを我々は指摘する。
[形状操作]
また光学顕微鏡を使用しながら商用販売されているマイクロマニピュレータを使用することで、ナノリボンは押され、曲げられ、そして形状を変化させるのに十分な長さ及び強度を有することが分かった。SnO2ナノリボンが高アスペクト比及び弾性を有することで、光学顕微鏡を使用しながら、鋭いタングステンプローブが備えられている、商用販売されたマイクロマニピュレータを用いて個々のナノリボンの位置及び形状を操作することが可能となる。大気中で一の端部が自由端となっている導波ナノリボンは、キンクの発生及び破壊を起こすことなく、弾性を保持したまま広角(たとえば180°まで)に曲がることができる。この性質は、バルク状態で脆性である酸化物にとっては注目に値すべき事である。我々は、弾性反跳を防ぐナノリボン-基板に生じる力を利用して、まっすぐなナノリボンを、波状、円形及び他の形状にすることができた。
【0034】
単一ナノリボンを引っ張ること、整合させること及び切断することは、通常の工程である。ここで我々は、マイクロマニピュレータを使用することで図2Cに存在するナノリボンを選択的に除去し、ナノリボン-ナノリボン界面からの散乱を抑制する。その後、長いナノリボンを三の部位に均等に切断し、三の優れた導波路を作製した。
【0035】
図3から図5は、ナノリボン導波路の形状を操作した実験結果を図示している。これらの結晶ナノリボン導波路が光学回路における相互接続として有用である場合、これらの導波路は、一のナノ物質から他のナノ物質へ光を結合させる能力を有し、一の位置から別な位置まで容易に光を伝搬させる能力を有する必要がある。後者を実現させるため、我々はマイクロマニピュレータを用いてナノリボンを曲げ、そして移動させた。
【0036】
図3Aは、単純形状20のSEM像で、マイクロマニピュレータによる高レベルな位置制御が可能であることを示している。この形状は、二の部位に切断された後に集積された、400nm×115nmの大きさを有する単一のまっすぐなナノリボンから作製された。図3B及び図3Cは、長いナノリボン(アスペクト比〜5200)の発光端部の光学像で、曲がりによる導波への影響が小さいことを示している。図3Bは、単一曲がりを作製した後に撮ったトゥルーカラー写真の白黒レンダリングである。図3Cは、S字変形完了後に撮った白黒の暗視野/PL像である。青色光は、1μmの半径周辺において低損失での導光が可能であることが分かった。図3Cの挿入図でのSEM像は、曲がった幾何学的形状を明らかにしている。図3Dから図3Fは一連の暗視野像で、図3Gは、単一ナノリボン22が図3Dから図3Fのように曲げられた状態に対応する導光PLスペクトルである。各々の場合において、スペクトル収集はナノリボンの右側端部で行われた。導光されないナノリボンのPLスペクトルが参照用に含まれている。簡明を期すため、スペクトルは規格化され、オフセットされている。
【0037】
独立したナノリボンは、繰り返しかつ弾性を維持したまま曲げることで半径5μmという小さな輪を作製することが可能であることが分かる。このような小さな輪を作製できることは、バルク状態で脆性である結晶にとっては注目に値すべき事である。適切に選択された表面上では、単一ナノリボンは図3Aで図示されたような弾性反跳を防ぐナノリボン-基板間の力を利用することで、様々な形状に容易に変形させることができる。丁寧に操作することで通常は、ナノリボンキャビティを破壊せずに済む。実際この操作方法は、自由に動かすことが可能で、暗視野顕微鏡を使用することで観察することのできるナノ構造への適用が可能である。そのようなナノ構造には、小さなサイズの極限である、短いナノワイヤ(たとえば40nm×3μm)及び、かなり大きなナノ結晶が含まれる。一連の処理は本質的に遅いが、たとえば走査プローブ又は、その場走査電子顕微鏡操作を使用した同様の方法よりも速くかつ、より多目的である。我々は、ナノリボン導波路ネットワークを作製することが可能であり、個々のナノワイヤ要素を一度に集積することで機能性光エレクトロニクス素子を構築することができる。
【0038】
操作することで、単一ナノリボンキャビティの形状に依存する導波を調べることも可能となる。たとえば、長くて薄いナノリボン(大きさ:785μm×275nm×150nm)の一端をしっかりとS字に変形することで、図3B及び図3Cに図示されているような構造において光が確実に進行するようにする。曲がった箇所周辺での損失は小さく、ナノリボン端部からの光出力が大幅に減少することはなかった。一般的には、曲率半径が1μm程度に小さいねじれ及び曲がりであれば、これらサブ波長導波路が、光を数百μmもの距離にわたって伝搬させる能力に影響しないことが分かった。
【0039】
我々はまた、たとえわずかでもナノリボンを曲げることで、図3Dから図3Gに図示されているように、ナノリボンの出力光のモード構造を劇的に変化させることが可能であることを観測した。これはもっともなことで、なぜならキャビティの曲率及び/又は、キャビティ-基板結合の変化によって伝搬する波の干渉パターンが変化し、あるモードが増強され、別なモードが部分的に減少するからである。我々のデータはまた、典型的なナノリボンからの発光パターンが、ZnOナノワイヤで示したように空間的に不均一であることを示唆している。その結果、たとえキャビティ形状の変化に応じて見られる複雑なモード振動が十分に説明されないとしても、非近接場スペクトルは、収集角度に対してある程度変化する。
【0040】
図4は、基板上にわずかに固着した、長さ約600μmのナノリボン24を図示している。このナノリボン24は、エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される。図4A、図4C、図4D及び図4Fは、まっすぐな状態(図4A)から90°より大きな角度(図4F)で曲げる過程での暗視野像で、ナノリボンが極端に柔軟であることを示している。図4B、図4E及び図4Gは、各異なる曲がり角で撮られたPL像である。励起光源は、ナノリボン上端部で集光され、光は曲がった部分を介して導光され、底端部で発光した。図4Hは、任意の曲がり角の関数として、底端部でのスペクトルを図示している。図4Hにおいて、曲がり1、曲がり2及び曲がり3として識別される曲線は、図4C、図4D及び図4Fでの像にそれぞれ対応する。モード構造は、キャビティのサイズ及び形状に大きく依存することが分かった。
【0041】
暗視野像(図4A、図4C、図4D及び図4F)は、基板上にわずかに固着したナノリボンを曲げる過程で撮られた。この像は、これらの酸化物ナノ構造がある程度の柔軟性を有することを示唆する最初の直接的観察結果だった。対応するPL像(図4B、図4E及び図4G)は、ナノリボンが90°より大きく曲げられることによるキャビティの導波特性の変化に関する付加的情報を提供する。光学像に加え、スペクトルは、ナノリボンの導波された終端部から得られた。図4Hは、任意の曲がり角の関数として発光プロファイルを図示している。半直線のナノリボンが物理的形状をとり始め、これらナノ構造を高品質(Q)値キャビティとして利用できるようになることで、モード構造が現れる。これらのナノリボンを物理的に変化させることを制限するものをさらに追究し、明らかにするため、顕著な導波特性を依然として示す薄いナノリボンに着目した。
【0042】
図5は明らかに、ナノフォトニック回路におけるこれらの構造の可能性を示している。図5A及び図5Cは、ナノリボン26のキャビティ形状を操作する前(図5A)及び、その操作の後(図5C)で撮られた暗視野像である。ナノリボンが柔軟性を有することで、たとえタングステンプローブが除去された後であっても、ナノリボンの形状の完全性を保持することが可能となる。図5Bは図5Aの形状のPL像で、図5Dは図5Cの形状のPL像である。たとえ二箇所が鋭く曲げられても、ナノリボンは曲がった箇所での損失を最小にして、左側結合端部から右側結合端部への欠陥発光の導波に成功した。図5E及び図5Fは、マニピュレータの針によって新しいナノリボンの暗視野/PL像(図5E)及び、PL像(図5F)である。その新しいナノリボンは、マニピュレータの針によって、ナノリボンに対して底端部を固定する。励起スポットは、PL像の上部で可視であり、底端部は、タングステンプローブの上の明るい点で示されている。極端な曲率半径であっても、これらのナノリボンは、その物的構造及び導波特性を維持するということが分かった。
【0043】
暗視野像(図5A及び図5C)及び、対応するPL像(図5B及び図5D)は、これらのナノリボンが元の形状のナノリボンにおける低損失特性を維持しながら、これらのナノ構造にトルクを加えることで鋭い波状及び曲線を形成することが可能なのかについて、その前後の図を示している。図5E及び図5Fは、この物理的操作をさらに行うことが可能であることを明らかにしている。ここで、新しいナノリボンの端部は実際、マニピュレータプローブによって、ナノリボンに対して固定されているので、例外的に小さな曲率半径のキンクがナノリボン中にそのまま残ってしまう。しっかりとした曲がり及び、ナノリボンとの物理的接触により、ナノリボンは、散乱中心又はキャビティの漏れによる重大な光損失を示さなかった。従来のシリカファイバーでは、このことは主要な課題である。低誘電率材料では、光閉じこめは、臨界角を超えることで劇的に減少する。それに加えて、似たような屈折率を有する材料と物理的に接触することで、深刻なエネルギー損失を引き起こす。しかしスズ酸化物は、シリカの2倍近い高屈折率のため(2.3と1.4)、高い内部閉じこめ及び、同様な屈折率を有する界面での損失を最小限にするという明確な特性を実現することが可能である。
[ナノリボン光結合器及びフィルタ]
図6から図9を参照すると、ナノリボン導波路は共に結合することで、小型化されたフォトニック回路の基本を形成することが可能な光ネットワークを形成することが可能である。ナノリボンのおおよそのサイズは、導光されるPLの色から推測することが可能である。特に、大きなナノリボンは白色で、小さなナノリボンは青色である。平均サイズのナノリボンが一端の近くで励起されるとき、そのナノリボンは離れた端部で青色発光し、近くの端部で緑色発光する。つまり長波長側で大きな放射線損失があることを示している。また図10を参照すると、この効果はナノリボンを、光路長に基づいて調節可能なカットオフを有する優れた短経路フィルタにする。我々は、ナノリボンフィルタが465nmから580nmにまで及ぶことを明らかにした。このフィルタは、深いカットオフ端を特徴として有し、阻止された波長の光は擬似的に伝送させない。光がサブ波長アパーチャから放出されるとき、全方向に回折されるので、ナノリボンは近接していなければならず、直接物理的に接触しているのが好ましい。それにより、ナノリボン間の光は効率よく伝搬することが可能となる。我々は、様々な結合形状を試し、二のナノリボンが数μmもの距離にわたって相互作用する、交互に隣り合うような配置が、端部ファセット間の散乱に依存した直接端部同士の結合をしのぐことが分かった。薄い空気ギャップによって隔てられている交互に配置されたナノリボンは、エバネッセント波のトンネリングを介してやり取りすることが可能である。ファンデルワールス力で二のナノリボンを共に結合させることも可能である。ファンデルワールス力を利用するには大抵の場合、一のナノリボンを他のナノリボンに単純に近づけるだけで、それによって堅固な光接合が作製される。
【0044】
図6は、ナノリボン結合、光構成要素及び、素子を図示している。図6Aは、二の結合したナノリボン28、30(両ナノリボンは、750nm×250nmで、全長630μmである)の白黒暗視野/PL像である。光は右側ナノリボン30の右端部に入射し、左側ナノリボン28の左端部で収集される。矢印は接合位置を示す。図6Aの挿入図でのSEM像は、接合の配置を図示している。図6Bは、接合を形成する前(上側曲線)及び後(下側曲線)の左側ナノリボン28の生の発光スペクトルを図示している。接合に第2ナノリボンを付加したことで、変調が保持されたまま出力光が50%だけ低下した。図6Cは、導光結合器として機能する三のリボンリング構造のトゥルーカラーPL像の白黒レンダリングである。リングナノリボン32(135μm×540nm×175nm)は、二の線形ナノリボン34、36(左側:34、120μm×540nm×250nm。右側:36、275μm×420nm×235nm)の側部に位置する。部分1での光入力は部分3で出力されるのが好ましく(図示されているように)、部分2での光入力は部分3で出力されるのが好ましい。
【0045】
図6A及び図6Bは二のリボン結合例を図示していることを明記しておく。しかし、Y接合、分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計及びリング共振器のようなより機能的な形状を構築しても良い。図6Cに図示されている三のリボンのリング構造は、中心キャビティ周辺の一の分岐から出力される光を循環させることで動作する。その光は、光は部として機能する一以上の出力チャネルによって閉じこめることが可能である。さらに集積させることで、位相シフトを行うのに電気光学効果を利用するナノリボン集合体に基づく光変調器を作製が可能になるに違いない。
【0046】
基礎研究にとってもフォトニクス応用にとっても、単結晶ナノリボンは、光を操作する上では興味深い構造である。受動素子については、効率的なUV/可視光の導波路及びフィルタである。これらを集積させることで、光学部品、ネットワーク及び素子を構成することができる。半導体、又はドーピングされた透明金属若しくはナノリボン酸化物は、能動的ナノスケール構成要素で電子及び光子を同時に輸送するのに十分に適している。これらの材料を広範囲で使用する上で重要となる課題には、材料のサイズ分散を小さくすること及び、ナノワイヤを集積するため、ナノワイヤ平行に集積するためのより良い方法を開発することが含まれる。前者の課題への解決にあたっては、ナノリボンの合成で一般的に用いられているにもかかわらず、良く理解されていない気相-固相プロセスの制御にかかっている。
【0047】
図7は、ZnOナノワイヤ38とSnO2ナノリボン導波路40との光結合が成功している様子を図示している。図7Aは、光をナノリボン40(長さ265μm、像は底部である)に導光するナノワイヤ38(長さ56μm、像は上部である。3.8eVで励起)のトゥルーカラー暗視野/PL像の白黒レンダリングである。矢印は接合位置を示している。図7Bはナノワイヤ/ナノリボン接合のSEM像である。図7Cは、各異なる励起位置及び収集位置でとられた、結合構造のスペクトルを図示している。上から順に、導波されていないZnOナノワイヤのPL、ナノリボン底端部で収集されたZnOナノワイヤからの導波された発光、接合のすぐ下で励起されたSnO2ナノリボンからの導波された発光でその底端部で収集された、動作されていないSnO2ナノリボンのPLである。ZnOナノワイヤからの発光は、その光がナノリボンキャビティを介して輸送される間に変調されることを明記しておく。
【0048】
図8は、単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとの間で作製されたヘテロ接合の別な例を図示している。図8Aは、ZnOナノワイヤを、SnO2ナノリボンの端部ファセットへ押し込めた後の接合の暗視野像である。図8Aの挿入図は、短い(〜6-7μm) ZnOナノワイヤ及び、SnO2ナノリボンの上端部を示す能動結合領域の拡大図である。ナノリボンの全長は〜600μであった。図8Bは、ZnOナノワイヤ(ZnOナノワイヤ側)又は、SnO2ナノリボン(SnO2ナノリボン側)を直接励起しながら、受動端で収集されたスペクトルを図示している。ZnOナノワイヤ全体で収集されたバンドギャップ発光プロファイルも参照用として含まれている。“ZnOナノワイヤ側”での変調は、高Q値SnO2キャビティを介して伝搬するZnOからの広い発光から直接得られる結果である。
【0049】
図8Aにおける、50倍の暗視野像及び、挿入図中の100倍の暗視野像は、能動/受動ナノフォトニック素子の基本構成要素を図示している。しかし、二のナノスケール系同士の完全な接合を保証するため、我々は、ZnOナノワイヤ能動端を光学的に励起し、受動SnO2ナノリボン端部で光を収集した。図8Bから分かるように、励起光源によって発生したZnOのバンドギャップ発光は、ZnOキャビティによって構造の間に存在する大気空間を通り抜け、隣接するSnO2導波路へ導光された。ZnOナノワイヤからの光出力は、ナノリボンの離れた端部で放出され、図4で示されたPL線形状に似た変調発光プロファイルを明確に示した。この結果は、実際に光は数百μmの距離をナノリボンによって導波されたことをはっきりと示す証拠となった。同様の材料での接合を構築するため、我々は前述と同様の方法で操作手順を実行した。互いに同一線上にある二の導波ナノリボンは、物理的に大きなナノリボンをスライドさせて小さなナノリボンの離れた端部に直接隣接させることによって長軸で結合する。
【0050】
図9は、二のナノリボン導波路42、44をそれらの端部ファセットで結合させることによって作製されたSnO2/SnO2接合を図示している。図9A及び図9Bは、大きな直径(〜1μm)を有するナノリボン42と小さな直径(〜400nm)を有するナノリボン44との接合が完成する前(図9A)及び後(図9B)の暗視野像である。図9Cは、図9Bに図示されたものと同一のナノリボン接合及び終端部のPL像である。この像は、SnO2ナノリボン導波路間での多接合ネットワークが実現可能であることを示している。
【0051】
図9A及び図9Bの暗視野像は、二のナノリボンを隣接させるのに成功する前後の接合を示している。図9CのPL像は、小さなナノリボンを進行する光が直接第2の同様のキャビティと結合可能であることを立証した。我々は今、光励起よりも電子注入を介して動作するナノワイヤによる全光回路を構築している。酸化物導波路は、LEDsやレーザーのような能動的光源と光伝導ナノワイヤに基づく光検出器との間の重要な相互接続の役割を果たす。
【0052】
複数のナノリボン導波路の光損失は、近接場におけるUV励起(50μmのスポット径)とPL収集との距離を系統的に変化させることで測定された。400×150nm2の断面積を有するナノリボンでは、波長550nmで約2dBmm-1の損失と見積もった。この値は、サブ波長シリカ導波路について最近報告された損失よりも顕著に改善された値である。
【0053】
これまで見てきたように、通常とは異なる長さ、高い柔軟性及び強度のため、ナノリボン導波路は、ナノスケールキャビティの機械的特性、ミクロな構造及び光閉じこめの相互作用を研究するのに優れた材料である。ナノリボン導波路は操作及び、集積されることで、光回路及び素子におけるナノワイヤレーザーのような単一ナノ物体間のフォトニック相互接続としての役割を果たすことが可能である。
【0054】
さらにナノリボン導波路は、フィルタ素子として使用することが可能である。たとえば図10は、短経路フィルタとしてナノリボンを利用した様子を図示している。図10Aは、五の異なるナノリボンの室温PLスペクトルを図示している。各々は200μmから400μmの長さで、強度が50%になるカットオフ波長は465nmから580nmの範囲である。465nm、492nm、514nm、527nm及び580nmフィルタの断面の大きさはそれぞれ、310nm×100nm(0.031μm2)、280nm×120nm(0.037μm2)、350nm×115nm(0.04μm2)、250nm×225nm(0.056μm2)及び、375nm×140nm(0.053μm2)である。簡明を期すため、スペクトルは規格化及びオフセットされた。図10Bは、単一ナノリボン(315μm×355nm×110nm)で取られた一連の規格化発光スペクトルを図示している。一連のスペクトルは、励起スポットを収集領域から離れる方向に走査しながら得られた。導波されていないPL曲線が、ポンプ-プローブ間距離が50μmで得られた。距離が大きくなることで、長波長側の損失が改善された。
[例1]
SnO2ナノリボン導波路は、1100℃で動作する石英反応管に350TorrのAr(50sccm)を流し、SnOの粉末を化学気相輸送することで合成された。ミリグラム量のナノリボンが、反応管中心付近にあるアルミナボートに回収され、乾式移送によって清浄基板上に堆積された。長いZnOナノワイヤは、参考文献に記載されているように800℃の石英加熱炉に760TorrのO2/Arを流し、金属のZnを酸化させることで成長させた。ZnOナノワイヤもまた、乾式移送によって散布された。(Ag触媒を使用した)レーザー支援の気相-液相-固相プロセスによって作製されたInPナノワイヤは、エタノール溶液中で超音波分解され、滴下によって表面に移送された。InPへのコンタクトは、電子ビームリソグラフィ及び加熱蒸着(100nm Ti)を行い、続いて475℃、N2/H2で1分間急速アニーリングすることによって作製された。
[例2]
光学測定は、クライオスタット(Janis X-100(商標))を外付けした暗視野顕微鏡を使用して行われた。PL励起光源は、325nmで動作するHeCdレーザーである。レーザーポインタ(532nm及び652nm)及びHeCdレーザー(442nm)は非共鳴発光を与える。全測定について、レーザースポットのサイズは、〜50μmだった。スペクトルは、ファイバ結合した分光器(SpectraPro
300i、Roper
Scientific(商標))及び液化N2で冷却されたCCD検出器で取られた。像は、顕微鏡に設けられたカメラ(CoolSNAP、Roper Scientific(商標))及びハンドヘルドのデジタルカメラ(PRD-T20、東芝(商標))を使用して撮影された。損失測定は、波長325nmで励起する、データ測定モードで動作する商用販売されているNSOMセットアップで行われた。ナノリボンの操作には、商用販売されている、タングステンプローブが取り付けられている3軸ユニットを使用した(端部10μm)。
【0055】
上述のように、フォトニック回路の構成要素は、SnO2ナノリボン及びZnOナノワイヤ導波路から構成可能である。直径が光の波長(典型的には100nmから400nm)未満である高アスペクト比のナノリボン/ワイヤは、これらの内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)及び、隣接し、エバネッセント結合するナノワイヤ又は外部のレーザーダイオードから放出される、非共鳴のUV可視光の両方に対して優れた導波路として機能することが示された。これらの単結晶構造の長さ、柔軟性及び強度ゆえに、表面上でナノリボン/ワイヤを操作及び位置設定することで、様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークを作製することが可能である。様々な単一リボン形状及び多重リボン光ネットワークには、リング形状の導光結合器及び、ナノワイヤの発光体-導波路-検出器接合が含まれる。能動及び受動ナノワイヤキャビティの形状を操作するこの能力は、サブ波長構造のキャビティ動特性を研究する新たな手法を提供する。しかも、既存のナノワイヤによるビルディングブロックの様々な組を集積することに関してさらに進歩することで、新規でかつ多目的のフォトニック回路が生まれるかもしれない。
[液中での導波路]
かなり驚くべきことだが、我々は、これらの1次元(1D)ナノ構造が液体を介して導光することも分かった。光が溶液中にあるこれらのキャビティを介して伝搬することができるという事実は、高誘電率(n≧2)導波路の流体感知及び探知への独自の応用を提供する。液中での導波は、励起及び検出体積を小さくする必要のある、集積されたオンチップの化学分析及び生物学的分光にとって特に重要となる。蛍光又は吸収しているときの分子を調査するため、サブ波長のナノ構造を集積することが可能である。蛍光と吸収
は両方とも、光子の吸収を誘起するためにキャビティの外側での光電場の減衰を利用する。導波路は、キャビティ近傍で放出された光子と強く結合することで、発生した蛍光が導光されて注入点へ戻ることが可能となる。また導波路の大きさがナノスケールになることで、小さな液体体積(〜ピコリットル)の感知が可能となり、かつ分光計を小型化する方途が見いだされる可能性がある。
【0056】
ここで我々はまた、結合したナノワイヤ間の光路作製の原理を証明する図によって、ナノワイヤ/リボンフォトニック集合体を最初に示す。我々は最初に、GaN及びZnOナノワイヤのレーザー発光から得られる個々のナノ秒光パルスはナノリボン導波路を介して伝搬することが可能であり、ナノワイヤフォトニック素子が通信又はコンピュータにおいて有用であるためには光を透過しなくてはならないことを示す。SnO2ナノリボンの単純ネットワークは白色光の分離及び、短経路フィルタリング効果に基づいた個々の色の経路を決定するのに使用される。我々はまた、二対の直交するナノリボンから構成される光クロスバーグリッドについても説明する。この光クロスバーグリッドは、90°という急峻な角度で光を伝搬させ、これらサブ波長キャビティでの光閉じこめの性質を劇的に示す例を供する。我々が作製した独立の、柔軟性を有するナノワイヤ及びナノリボンの導波能力が液中でも十分その能力を示すという事実は、ナノワイヤを伝搬する光がマイクロ流体及び生物学へ応用されうることを示唆している。
[光プローブ及びセンサとしてのサブ波長導波路]
高誘電率のサブ波長導波路は、シリカベース構造のような低誘電率導波路を上回って、液中で光を閉じこめるという重要な利点を有する。溶液(クラッド)とシリカコア(nsilica≒1.45)との屈折率比が小さいため、光波が効率よく伝搬しない。図11は、Si酸化物表面(1μmの熱酸化膜)に留まるSnO2ナノリボン(大きさ:365nm×105nm×265μm)が空気(n=1)で導波される場合と、水(n=1.33)で導波される場合でのフォトルミネッセンス(PL)/暗視野像を比較している。PLは、連続波のHeCdレーザー(325nm)で発生する。図11はまた、ナノリボンが水中に侵浸するときに、どのようにして、この薄いナノリボンの導光PLスペクトルが変化するのかをも示している。
【0057】
図11Aは、乾燥した酸化物表面上のナノリボン46のPL/暗視野像を組み合わせた図である。挿入図は、青色の端部発光の拡大図を示している。図11Bは、水中で石英のカバースリップに覆われた同一のナノリボンを図示している。挿入図は結果として生じた緑色発光を示している。図11Cは、二の条件でのスペクトルを示している。経験的カットオフ波長(空気中の〜483nmから水中の〜570nmまで)の長波長側へのシフト(red shift)は、基板と被覆媒質との間の屈折率プロファイルの減少によって生じる。より均一なクラッド層の屈折率は、ナノリボンコアでの光波閉じこめを改善する。この効果は水を蒸発させることで元に戻る可逆的なものである。
【0058】
図11Cから分かるように、導光されたPLスペクトルは、純粋で覆われているときには長波長側に広がる。そのような長波長シフトは均一な屈折率のクラッド層を有するファイバにとっては特異なことである。ここでは、空気(n=1)を水(n=1.33)に置換することで損失が増大し、モードカットオフの短波長シフトが起こることが予想される。しかし、厚い又は薄い導波路が非対称なクラッド環境(つまり、nwaveguide>nsubstrate>ncover)で存在するとき、ここで示されているように、被覆体の屈折率が上昇することで、基板との非対称性が減少し、閉じこめが改善される。
【0059】
直感的には、ナノリボンの三面について、空気を水に置換することで、特に長波長で、その光学損失は増大し、導波が阻害されるはずである。導光スペクトルが狭くなることが期待される(カットオフ波長の短波長化)。その代わりに、スペクトルは、長波長側へ広がり、端部発光は空気中での青色から水中での緑色に変化することが分かった。コアとクラッドとの間の屈折率プロファイルが小さいために良好なつまり悪くない閉じこめが実現されている結果にも見えるこの驚くべき結果は、空気とSiO2基板との屈折率差よりも、水と基板との屈折率差の方が小さいためであると考えられる。非異方的な水-シリカクラッドは、モード出力をよりナノリボンの中心へシフトさせ、それによって全体の放射損失を減少させる。PLのカットオフを示すには大きすぎるリボンは、水に侵浸させても影響を受けなかった。
【0060】
小さな体積で、基板に支持された液滴を制御して操作できることを示すため、シリカ基板上に1,5-ペンタンジオールの液滴を約5μL滴下し、エッチングされたタングステンプローブが備えられている商用販売されているマイクロマニピュレータを使用して、図12に図示されているように、大きな液滴を小さな体積に分割した。図12Aは、Si基板(1μmの熱酸化膜を有する)上にある様々なサイズの1,5-ペンタンジオールの液滴の暗視野像を図示している。半径及び対応する体積は各液滴に表示されている。図12Bは、小さな液滴(<1fL)の暗視野像の拡大図である。半径及び対応する体積は(〜20fLまで)、図12Aの暗視野像でラベルされている。たとえ小さな体積(<1fL)であっても、図12Bに図示されているように、本方法で実現可能である。小さな体積を作製する他の方法は、溶液を流し込むための流体チャネルを使用することである。
【0061】
リボン導波路はまた上述の発光又は吸収機構によって、溶液中の分子、タンパク質又は大きな生物学的物質(biological entities)の感知が可能である。前者では、ナノリボンは、その出力端で散乱される光の光錐を通過する蛍光プローブを局所的に励起し、発光はファイバ又は顕微鏡によって収集される。
【0062】
図13を参照すると、この蛍光方法を示すため、ナノリボン48のチップを、1,5-ペンタンジオール(n=1.45)中の1mMローダミン6Gレーザー色素(R6G)の液滴約3pLから5pLに埋め込んだ。図13は、ナノリボンキャビティによるR6Gの蛍光及び吸収検出を図示している。図13Aは、ナノリボン導波路48(240nm×260nm×540μm)からの青色光によって励起された1,5-ペンタンジオール中の1mMのR6G液滴の蛍光像である。ナノリボンは、左上から右下に図を交差する。励起光を阻止するためにノッチフィルタが使用された。図13Aの左側挿入図は、液滴及びナノリボンの下半分を示す暗視野像である。図13Aの右側挿入図は、光錐及び、ナノリボンの長さ方向に沿った色素のエバネッセント励起を示す液滴発光の拡大図である。図13Bは、液滴領域での蛍光(直接)スペクトル及び、ナノリボンへ戻されることで結合した蛍光(導光)スペクトルを図示している。導光された発光の長波長化はマイクロキャビティ効果である。図13Cは、ナノリボンの真ん中(吸収の幾何学的位置)付近に滴下された液滴を有するナノリボンの暗視野像である。前述したように、ナノリボンは液滴の一の面でUV励起され、他の面で調査された。図13Dは、液体が存在しない状態での導光PLスペクトル及び、純粋な1,5-ペンタンジオール及び1mMR6Gの液滴が存在した状態での導光PLスペクトルを示す。矢印は、R6Gの吸収が最大になるところを示している。
【0063】
図から分かるように、ナノリボンの離れた端部に照射された青色光(442nm)は、液滴内からの強い傾向の結果発生した。ここでR6G発光は、導波路出力の空間的強度分布を光錐として図示する(図13A及び挿入図)。この蛍光の一部は、ナノリボンキャビティによって捕獲され、その離れた端部へ導光された。このことは、これらの導波路が液体からの信号の経路も液体への信号の経路も決定する能力を有することを示している。ナノリボン両端から得られたスペクトルは図13Bに図示されている。導光された蛍光スペクトルは長波長化し、ナノリボンを介して通過することである程度整形(sculpt)される。しかし、たとえば後述する図17Fで明確になっている重要なモードがほとんど見えない。
【0064】
図13Bはまた、毛管作用を介した、液滴によって湿ったナノリボンの一部からの強い蛍光をも示す。ここでナノリボン表面近傍の色素分子は、サブ波長導波路での全内部反射蛍光(TIRF)で励起される。通常のTIRFでは、マクロスコピックな導波路(顕微鏡のカバースリップのような)での励起は、導波路表面からの距離に対して指数関数的に減衰するエバネッセント光を発生される。このことは、励起の深さを〜100nmに制限し、細胞膜のような組織の局所的調査を可能にする。サブ波長フィルタがコア外部のモード出力の大部分を運ぶことができるため、このエバネッセント場の強度を増大させ、周辺への侵入深さを増大させることで、近傍の分子を励起するのにより大きな出力を利用することが可能となる。計算によって、本実験で用いられた光の波長については、大雑把に見積もって13%から15%の電場強度がナノリボン外部に存在することが示唆された。この場合、半径方向における場の強度は、約135nmで溶液に侵入することで、導波路中心部での最大値の10%に減衰する。TIRF検出感度が導波路クラッド層に存在する一部の出力に対応するので、1次元ナノ構造は、この方法を用いた局所蛍光感知にとって有望な導波路である。
【0065】
1Dナノ構造を溶液中の光検出に使用可能とする他の方法は、ナノリボン表面上及び近傍に位置する分子の吸収スペクトルの生成に基づくことである。蛍光法と比較して本質的に感度が悪いとはいえ、吸収検出は広範にわたる分子への適用が可能で、蛍光タグの煩雑さもない。白色PLを、〜1pLの1mMのR6G(αmax=535nm)液滴が滴下された、長いナノリボン(260nm×240nm×540μm)の中間点に照射した(図13C)。液滴中の色素分子は、光を吸収した形跡を伝搬するPL波(ダブルガウスビーム)に残す。このことは、R6Gの吸収が最大となる辺りではナノリボンを介した透過は完全に消失する(図13D)。色素濃度、液滴サイズ及び、エバネッセント場の空間的な広がりを考慮すると、4×10-17モル未満の色素(〜24000000分子数)がこの実験で検査されたものと見積もられる。50μM(〜35000分子数)の感度であれば容易に到達可能であることは、我々が実験的に示してきた。同一のナノリボン及び、同程度の光路長を用いれば、1μM(24000分子数)程度の低さの色素濃度を検出することが可能である。吸収法はまた、導光された場のエバネッセント部分をも利用するので、小さなナノリボンは再度大きな感度を供するはずである。感度を改善するための他の方法には、キャビティ形状を変化させることでキャビティの長さを増大させる方法(以降で議論する)、選択的バイオセンシングのためにナノリボン表面を官能化する方法及び、各異なる電子遷移によって検体の同時検出を行うために複数の波長の光を照射する方法が含まれる。次の手順は、サブ波長1Dナノ構造をマイクロ流体素子へ集積して、その素子を生きている細胞を研究するための柔軟性プローブとして使用することである。
【0066】
サブ波長ナノリボン/ワイヤを、化学/生物学感知へ利用可能にするための第3の方法は、表面増強ラマン分光(SERS)効果に基づくことである。表面増強ラマン散乱は、検体分子が金属(大抵はCu、Ag又はAu)表面付近で検査されるときに生じる。金属表面は、金属の表面プラズモンと共鳴することで局所電磁場を顕著に増大させる役割を果たす。その結果生じた検体のラマン信号は、1014で増大されることができる。この増大のオーダーは多くの場合、単一分子感知を可能にする。ここで説明されているナノリボン/ワイヤは、表面に高密度のAgのナノ粒子を付着することで、サブ波長SERSファイバにすることができる。ナノリボン/ワイヤへ単色光を照射しながら、ナノ粒子でコーティングされたナノリボン/ワイヤを検体溶液に浸けることで、検体分子のSERS信号の検出が可能となる。この考え方は、光の導入及び閉じこめを行うためのサブ波長導波路を使用することで、SERS振動の形跡に基づいた“指紋”の特定を可能にする。図14Aはこの考え方の概略図で、図14B及び図14Cは、40nmのAgナノ粒子によってコーティングされたナノリボン(NR)像である。Agナノ粒子は、流れるナノ粒子溶液にナノリボンを浸けることでコーティングされる。粒子は、非常に有効に導波光を散乱するように見える。続いてその構造を関心検体溶液に浸けることで、SERS信号を発生させることが可能となる。単純にAgナノ粒子を酸溶液(たとえばHNO3)で溶解し、再度新しいAg粒子を再導入することで素子は、再利用可能となる。
【0067】
ここまで図示されてきた素子全ては、単一経路の形状で動作する。多経路構造はサンプリング長を増大させ、究極的にはより高感度の分光計となる。図15は、矢印1でエバネッセント結合する二のナノリボン(NR1及びNR2)のPL/暗視野像を図示している。上部挿入図は、検体がこの配置のどこにあるのかを指定するグリコール液滴を有する結合ナノリボンの拡大暗視野像である。下部挿入図は、NR2が除去されたNR1の暗視野像で、結合リング構造(接合-矢印2で示されている)を示している。この結合リング構造は、サブ波長分光計における多経路ビームとしての役割を果たす。
【0068】
図15は、我々の操作能力を用いることで容易にリング形状の作製は可能で、繰り返し検体を検査するサブ波長キャビティ形状を作製することが可能であることを図示している。グリコール液滴(上部挿入図)は、検体がこの特別な配置のどこにあるのかを特定する役割を果たす。PL/暗視野像は、エバネッセント結合した(矢印1は接合を示す)二のナノリボン素子を示し、独立した1D構造に基づく多経路分光計を設計する第1ステップを図示している。下部挿入図は、NR1の端部を操作してリング構造を形成した後に撮られた像で、多サイクル装置を作製する第2ステップを示している。これらの進化した設計から良好な感度を十分に実現するには、さらなる仕事が必要となるが、結合効率に関するこれまでの結果は、多経路構造からオーダー単位で増大していることを示唆している。
【0069】
上述の実用的なサブ波長ファイバ分光計を作製するには、感知用ナノリボン/ワイヤが溶液導入用のマイクロ流体チャネルに集積される、より制御されたフローセル型のマイクロ流体を設計するのが得策であることを我々は指摘する。検体が埋め込まれたナノリボン/ワイヤ導波路を通過するのを制御する流路がパターニングされたポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用することで、我々はそのような集積素子を構築した。このマイクロ流体設計で、我々は、明確に画定された感知用ナノリボン/ワイヤの部分を通過する多数の検体を含む溶液を一定間隔で送り込むことで、生物学的及び、他の液体でのモニタリング使用のセンサの再利用が可能となる。図16は、多重ナノリボン(NR)によって橋渡しされたPDMSをパターニングすることで作製されたマイクロ流体チャネル(MFC)を図示している。これについては図16Aで概略的に図示されている。図16Bは、マイクロ流体チャネルの詳細に示した図で、図16Cは、図16Bで図示されたマイクロ流体チャネルを橋渡しする複数のナノリボンを図示する像である。この流体の配置は、これらの構造を蛍光、吸収及びSERS感知で実用する上では重要となる。
【0070】
ここで化学的に合成された1D半導体ナノ構造について説明している考え方及び原理は、既存のリソグラフィ技術とほとんど同じであることに留意すべきである。最先端の電子ビーム及び他のリソグラフィ法は現時点で、サブ波長光プローブ及び分光計を作製するのに、これまで論じてきた一連の方法よりも、より良好なサイズ制御、再現性及びプロセス速度を提供する。今後行われる実験には、ナノスケール光学を用いたときの検出限界が認識できるような、様々な支持基板上にリソグラフィで画定された構造を含む。
【0071】
現在の産業界の努力及び小体積検出への関心から、ナノドロップテクノロジー社は、特許された液中保持技術に基づいたUV/可視分光計(ND-1000)を開発した。その装置は一般的に、1μLから2μLの分量の核酸を検出するのに使用される。試料の検出限界は2ng/μL(dsDNA)である。Xeフラッシュランプ(220nm〜750nm)の光路長は、相対的に1mmになるように固定されている。商用販売されている分光計ユニットと比較したサブ波長分光計の主要な利点は、進化した多経路形状によって、体積が小さくなること(〜106倍小さい)、光路長が短くなること(10倍短い)及び、高感度になる可能性があることである。
[ナノリボン及びナノワイヤ集合体を有する光路作製]
光の波長よりも小さな構造での光エネルギー操作は、コンピュータ、通信及び感知用集積フォトニクス素子の開発にとって重要となる。我々は、独立した、化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤの小さな群をモデル構造に集積した。このモデル構造は、三の異なる半導体で構成されるサブ波長キャビティ間でどのようにして光がやり取りされるのかを示す。ナノワイヤでコンタクトが取られるときに形成される光リンケージ強度は、相互作用体積と交差角の両方に依存する。単純な結合手順を使用することで、ナノワイヤのレーザー発光は、コヒーレントな光パルスを、長さ数mmのナノリボン導波路を介して放出することができる。また、ワイヤ間の結合損失は、光が交差したナノリボンのグリッド中を何度も直角に伝搬できるほどに小さい。ナノワイヤ/ナノリボンの外側を進行する導波された光波出力の一部は、空間を介してナノワイヤとの連結及び、多重リボンネットワーク内部での色の分離に利用される。それに加えて、ナノリボンが液中でも優れた導波路として機能し、溶液中又は導波路表面付近の分子を検査する独自の方法を提供することが分かる。我々の結果は、能動及び受動ナノワイヤ集合体に基づいたフォトニック素子の基礎となるもので、マイクロ流体及び生物学へナノワイヤ導波路が利用できる可能性を示唆している。
[例3]
SnO2ナノリボンは、1100℃でArを流しながら気相SnOを供給することで合成された。ZnOナノワイヤは、Auを触媒に用い、金属Znを800℃で酸化させることで、サファイア基板上にエピタキシャルアレイで成長させた。GaNナノワイヤは900℃で、Niを触媒に用い、NH3/H2混合気体中に気相Gaを供給することで合成された。SnO2ナノリボンは、酸化されたSi基板(SiO2の厚さは600nm、Silicon Sense社)へまとめて乾式移送された。タングステンプローブ(〜400nmのチップ径)が備えられている3軸マイクロマニピュレータは、成長基板から個々のZnO及びGaNナノワイヤ(PLスペクトルから選択される)を除去し、これらのナノワイヤをナノリボンへ堆積するのに使用された。
[例4]
ナノリボン及びナノワイヤは、暗視野顕微鏡を使用しながらプローブによって操作された。パルス励起にNd:YAGレーザーの4倍高調波(266nm、8nm、10Hz)が用いられる一方で、HeCdレーザーは、連続波(CW)共鳴発光を与えた。レーザーダイオード(652nm及び532nm)及び、HeCdレーザー(442nm)は、フィルタリング及び蛍光を示すための可視光を供給した。レーザーは約50μmのビーム径に集光され、約175W/cm2のCW出力密度及び、約10μJ/cm2のパルスエネルギー密度を与えた。スペクトルは、ファイバ結合した分光計(1mmにつき150及び1200の回折格子、SpectraPro 300i、Roper Scientific)及び、液化窒素で冷却されたCCD設備によって得られた。白黒像及びカラー像は、顕微鏡に設けられた二のCCDカメラ(CoolSnap fx及びCoolSnap cf、Photometrics社)によって記録された。
【0072】
ここで説明されてきた多くのナノリボン/ワイヤは、数種類の実験で用いられた波長に対して単一モードファイバとして動作するが、その一方で、多モードで動作するものもある。たとえば、円柱状ステップインデックスファイバの単一モードカットオフ径は大気中でだいたい、SnO2で140nm(λ=365nm)及び265nm(λ=600nm)、GaNで112nm(λ=365nm)並びに、ZnOで220nm(λ=510nm)である。
【0073】
液体実験では、水又は様々なアルコールの大きな液滴(〜5μL)がピペットによって酸化物表面に移送された。溶液の液滴はマニピュレータを用いて、より小さな体積(100fL程度の大きさ)に分割され、表面上に位置設定された。
【0074】
ナノリボン及びナノワイヤのサイズは、走査電子顕微鏡(SEM)で決定された。
【0075】
図17及び図18は、GaN及びZnOナノワイヤと様々な組み合わせがなされた単一ナノリボンで実行された複数の実験を図示している。
【0076】
図17は、GaNのPL及びレーザー発光の光路が図示されている。図17Aは、結合した、GaNナノワイヤ50及びSnO2ナノリボン52の暗視野光学像である。ラベルAは接合位置を示す。図17Bは、位置BでのSnO2ナノリボンの直接励起が、SnO2キャビティ端部へ導光される白色PLを発生することを示している。光の一部は、Cで見いだされる大きな粒子によって散乱される。図17Bの挿入図は、下部発光スポットの拡大図である。図17Cは、接合領域の拡大図である。図17Cの挿入図は、二の構造が9μmより大きくずれ、約2μm 接している様子を示すSEM像である。図17Dは、GaNナノワイヤの直接CW励起が、365nmでUVバンド端発光及び、650nmで少量の欠陥による可視光の発光を生じさせる様子を図示している。キャビティは、赤色光を閉じこめるには薄すぎるが、(挿入図において)UVカメラはUVのPLに対する強い導波を検出している。図17Eは、ナノワイヤからナノリボンへのUVレーザーパルス光路の光学像である。ここでGaNキャビティは、波長266nmのパルス光源によって(光源からの光自体は検出器で検出できない)、レーザー発光閾値より高いエネルギーで励起された。図17Fは、GaNのPLとレーザー発光、及びナノリボン通過前と後とを比較したスペクトルを図示している。幅広の擬ガウス分布を示す自然放出ピーク(上部)が、ナノリボンを通過する間に一連の鋭いモードに分割される(WG PL)。同様に、中程度の励起出力でのレーザー発光は、SnO2キャビティのモード構造によって大幅に変調される(下部)。簡明を期すため、スペクトルは規格化され、オフセットされている。
【0077】
明らかなように、図17Aは、マイクロマニピュレータによってSnO2ナノリボン(240nm×260nm×460μm)と結合したGaNナノワイヤ(130nm×65μm)を図示している。GaN-SnO2接合(図17Bの挿入図)の拡大SEM像は、二の構造が約2μmの相互作用長で、物理的に接触していることを示す。このずれて結合した配置は、キャビティ間の良好な光結合及び、ある程度のワイヤ間の架橋(静電力を介した)を供する。この架橋は、多重ワイヤネットワークの構築の助けとなる。ワイヤ先端部での結合もまた有効で、数百nmまでの空気ギャップ(図示していない)をはさんで弱く結合するナノワイヤキャビティ間での光の移動を検出することも可能である。ナノナノリボンがずれている代わりに交差している場合、結合損失は、交差角が小さくなるに従って減少する。このことは、最近の研究成果である、交差したCdSナノワイヤでも観測された。
【0078】
連続波光の光路を示すため、波長325nmで動作するHeCdレーザーの集束ビームでGaNナノワイヤを励起させた。GaNキャビティからのバンド端PLは、SnO2ナノリボンを介してその離れた端部で放出される。光の一部はまた、ナノリボンの長さに沿った欠陥(つまり、付着粒子又はマクロスコピックなステップ端)によって散乱された。ナノリボンの出力端から収集された非近接場スペクトルは、GaNの擬ガウスPLバンドが、SnO2キャビティ透過中でのモード構造に起因していることを示している。ナノワイヤは短くないため、このモード構造は事実上縦型(ファブリ・ペロー型)ではない。しかしその代わり、とりわけナノリボンの形状及び断面積の大きさに依存する複雑な干渉パターンとなる。
【0079】
しかも図18を参照すると、多数のZnO及びGaNナノワイヤを同一のナノリボンに結合させることで、二(以上の)ナノレーザーの出力を同時に導光することが可能となり、単一ナノキャビティ内部で非線形光波混合を実現できる可能性を切り開いた。図18Aは、同一のナノリボン58に結合するGaNナノワイヤ54及びZnOナノワイヤ56の暗視野像である。スケールバーは10μmである。図18Bは、二のナノリボンが、同一の光パルスによってレーザー発光閾値より大きなエネルギーで励起されたときに、ナノリボンの励起位置から離れた端部で収集された導波光スペクトルを図示している。
【0080】
連続波発光とは対称的に、欠陥に起因するバンドが利得を持たないため、ZnO及びGaNのパルス発光はほとんど可視光がない。これは、コヒーレントな光パルスがナノワイヤ間を移送され、光源から数百μm進行することが可能であることを実験的に確認したものである。高周波電気励起では、ナノワイヤレーザー/導波路の組み合わせが、将来のコンピュータ及び通信素子内部で電気光学情報のパケットを変換し、往復させるのに用いることが可能となるだろう。
【0081】
図19はGaNナノワイヤレーザー発光を図示している。図19Aは、各異なる励起フルエンスでの、直径150nm及び長さ45μmの孤立GaNナノワイヤの一連の発光スペクトルを図示している。図19Aの挿入図はPLスペクトルを図示している。図19Bは同一のナノワイヤのエネルギー曲線を図示している。GaNナノワイヤのレーザー発光の典型的な閾値は、5μJcm-2から15μJcm-2だった。図19Bの挿入図は、異なるGaNナノワイヤからのレーザー発光の像で、顕著な空間的パターンを示している。パルスUV励起で、GaNナノワイヤをレーザー発光閾値(〜5μJcm-2)より大きなエネルギーで励起することで、ナノワイヤレーザーからナノリボン導波路を介して単一光パルスを送ることができた(図17E)。数千の累積したパルスのスペクトル(図17F)は、GaNのバンド端からわずかに長波長化した、一連の急峻なモード(FWHM=0.8nm)を図示している。これらは、GaNナノワイヤ共振器のファブリ・ペロー型レーザー発光モードで、ナノリボンキャビティによって強度が変調される。我々は、ナノリボンとレーザー発光するZnOナノワイヤとの接合でも同様の結果を得た。
【0082】
ここで図20及び図21を参照すると、サブ波長キャビティでの回折損失が波長に対して顕著に増大するので、ナノリボン導波路は非単色ビームのうちの青色に近い成分を選択的に閉じこめる。その結果、ナノリボンは、その断面積の大きさ及び全長によって決定されるカットオフ波長を有する短経路フィルタとして機能する。
【0083】
図20は、ナノリボンネットワーク60での色フィルタリングを図示している。図20Aは、励起スポットで発生した白色PLを導光し(左図)、白色光を各ナノリボン端部で各色に分離する(右図)四のリボン集合体の暗視野像である。スケールバーは50μmである。図20Bは、発光領域の拡大図である。図20Bの分岐ナノリボン1-3は、緑色、水色及び青色光を放出する。その理由は、段階的に断面積が小さくなるためである(それぞれ、350nm×140nm、260nm×175nm及び210nm×135nmである)。これらの50%カットオフ波長は、近接場走査光学顕微鏡(NSOM)によって、それぞれ543nm、502nm及び478nmと決定された。細長いナノリボンは、260nm×175nm×390μmである。図20Cは、非共鳴の青色光が全四のナノリボン端部へ伝送される様子を図示する一方で、図20Dは、緑色光がナノリボン3よりもナノリボン1によってより強く導光される様子を図示し、図20Eは、赤色光が全三の分岐によって除去されている様子を図示している。スケールバーは20μmである。
【0084】
図20から分かるように、我々はそれぞれサイズが異なる四のナノリボンを有する単純なネットワークを集積し、そのような構造がどのようにして色を分離するのに用いることができるのかを示した。波長325nmで励起されるとき、ネットワーク60の細長い部分を形成する大きなナノリボンは、495nm及び590nmを中心とする、二の広いSnO2のPLバンドからなる白色光を放出する。図21から分かるように、これは典型的なSnO2ナノリボンのPLスペクトルで、二の欠陥バンドを示す。細長い部分を変化させることで、発光は、三の短く、連続的に薄い分岐ナノリボンへ進行し、白色光は、緑色、水色及び青色成分に分離する(リボン1-3)。あるいはその代わりに、単色の赤色光が細長い部分に照射されたとき、細長いナノリボンのみが発光し、その一方で緑色光は、最大(最小)の分岐によって強く(弱く)導光され、青色光は細長いナノリボンのみならず全三の分岐を通過した(図20B-図20D)。たとえこの色除去効果が短経路モードでのみ機能する、つまり白色ビームの純粋な赤色成分光を取り出すことができないとしても、UVパルスから可視の余分な成分を除去する又は、量子ドットのような狭い吸収端を蛍光プローブの局所励起に供するような課題には有用と認められるだろう。
【0085】
図22を参照すると、キャビティ間の光結合の限界をテストするため、我々は四のナノリボンを、小さな接触領域(<〜0.15μm2)の頂部を有するX接合を特徴とする、長方形グリッド(長さ46μm×幅〜25μm)に集積した(図22A及び挿入図)。図22Aは、四のリボン構造の暗視野像で、入力チャネルは像の右外側へ延在し、出力チャネルは1-7のラベルがされている。ナノリボンのサイズは、300-400nmで変化する。図22A及び挿入図は、右下頂部での接合のSEM像である。図22Bは、入力チャネルが325nmで励起されるときのPL像である。後述するように、光はそれぞれ異なる強度及び色で、七の出力端へ導光される。
【0086】
構造は、光入力用の一の長いチャネル及び、同時観察可能な七の短い出力チャネルで設計された。図22Bで図示されているように、入力チャネルの直接励起は、全七のナノリボン出力からの発光の引き金となった。その際の強度分布は、1>>6>4≒7>3>5>2である。これはまさに、入射光の光路及び、四のナノリボン-リボン接合での散乱強度を考慮した後に予想される結果である。端部ファセットの反射率が低いことでナノリボンが共振器として不十分な性能を示すため(理想的なフィネスは〜1.3である)、光路はここでは重要である。そのようなものとして、ほとんどの光子は多数の光路を作らず、光は非常に直進性が高い。直角で交差することで、全内部反射によるキャビティ間の導波に重大な障害を与えることになる。それと同時に、ナノリボン間に光を供給する擬等方的散乱体として機能する。ナノリボン-リボンでの損失がたとえこの配置で最大となっても、チャネル2及びチャネル3の活性化には依然として十分低いものである。チャネル2及びチャネル3は光子を、二の直角接合で一緒にさせ、三の分離したキャビティへ伝送するのに必要である。ZnOナノワイヤレーザーを入力チャネルに加え、それで光をグリッドへ照射するとき、発光はチャネル2及びチャネル3からしか検出されなかった。注入した光子数が少なすぎて、平行ナノリボンを発光させることができなかったためである。ナノワイヤグリッドはすでに基本的な電子回路論理を実装するのに使用されている。集積光学論理回路及び全光スイッチは、非常に興味深い特性を与え、我々が得た今回の結果は、ナノワイヤグリッドがそのような作業の信号経路を与える能力を有しているはずであることを示した。
【0087】
これらの屈折率が大きいため(n≧2)、ここで論じられているナノリボン及びナノワイヤは、水中及び他の液中でも導波路として機能する。これはサブ波長シリカに対する重大な利点である。サブ波長シリカ導波路は、比誘電率が小さいため(nsilica≒1.45)、液中で可視光を有効に閉じこめることができない。液中での導波は、小さな励起及び検出体積を必要とする集積オンチップ化学分析及び生物学的分光にとって特に重要である。
【0088】
明らかに、化学的に合成されたナノリボン及びナノワイヤ導波路は、サブ波長フォトニクス応用において、二の特徴的でかつ有用と思われる特徴を有する。第1に、ナノワイヤはシリカを超えたサブ波長光ファイバとなる。ナノワイヤ形状での作製が可能な材料は数多くあり、能動、受動及び半導体的無機材料や、広範囲にわたるポリマーが含まれる。異なる組成のナノワイヤ内及びナノワイヤ間では、同時に光子、キャリア及びスピンの操作が可能である。また、これらの材料の多くは、シリカベースのガラスよりも大きな屈折率を有するので、所定波長の光を、高密度集積のための薄い構造内に閉じこめることが可能となる。これにより液中での導波が可能となり、たとえば直径約300nmのSi又はGaPナノワイヤを使用することで、サブ波長導光を通信での導波へ拡張することが可能となる。第2に、ナノワイヤは独立で、表面上での操作が可能な、機械的に柔軟性のある構成要素で、又流体中での可動プローブとして使用することも可能である。そのようなものとして、これらは、基板に永久に固定する、リソグラフィで画定された構造では実現が困難であった多目的型を提供する。
【0089】
ナノワイヤフォトニクスの欠点には、(i)大きな群をなすナノワイヤを有用な構造に正確に調製する集積方法が少ないこと、(ii)リソグラフィで形成したモノリシック導波路と比較してワイヤ間損失が比較的大きいこと(ただし、分岐した、多コンポーネントナノワイヤが開発され、ここで使用されているような、ずれた、又は交差したナノワイヤキャビティに置き換わるのであれば、結合損失は大きく減少するだろう)、(iii)リソグラフィで画定可能な精密な形状及びサイズに対してナノワイヤ集合体の幾何学的完全さが小さいことがある。幾何学的不完全さにより、生じた光の伝播にある程度の不確実が導入され、ナノワイヤの実験/理論の比較が複雑になってしまう。しかし、これらの制限はあるにせよ、ナノワイヤ及びその集合体は、まだ始まったばかりである、フォトニクス研究及びその応用に重要で新たな環境を提供する。
【0090】
ここで説明してきたサブ波長導波路が、光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドのようなフォトニック回路での機能的構成要素としての使用が可能であることが分かる。当業者にはまた、ここで説明したナノ構造が、製造可能で、かつ、当技術分野で既知の方法を用いることで、素子、システム及び構造への組み込みが可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1A】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図1B】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図1C】長さ715μmのSnO2ナノリボンの光導波路を図示している。
【図2A】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2B】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2C】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2D】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2E】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図2F】長さ425μmのSnO2ナノリボンの全色感色性導波路を図示している。
【図3A】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3B】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3C】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3D】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3E】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3F】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図3G】ナノリボン導波路の形状操作を図示している。
【図4A】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4B】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4C】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4D】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4E】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4F】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4G】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図4H】エッチングされたタングステンプローブによって物理的に操作される、基板上に緩やかに固着した長さ〜600μmのナノリボンを図示している。
【図5A】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5B】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5C】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5D】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5E】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図5F】ナノリボンのキャビティ形状を操作する前後で撮られた暗視野像を図示している。
【図6A】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図6B】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図6C】ナノリボン結合、光学構成要素及び、光学素子を図示している。
【図7A】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図7B】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図7C】ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボン導波路との間の光結合を図示している。
【図8A】単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとで作製されるヘテロ接合を図示している。
【図8B】単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとで作製されるヘテロ接合を図示している。
【図9A】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図9B】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図9C】二のナノリボン導波路を各端部ファセットで結合することによって作製されたSnO2/ SnO2接合を図示している。
【図10A】ナノリボン短経路フィルタを図示している。
【図10B】ナノリボン短経路フィルタを図示している。
【図11A】水中の導波路を図示している。
【図11B】水中の導波路を図示している。
【図11C】水中の導波路を図示している。
【図12A】水中の導波路の暗視野像を図示している。
【図12B】水中の導波路の暗視野像を図示している。
【図13A】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13B】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13C】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図13D】ナノリボンキャビティでのR6Gの蛍光及び吸収の検出を図示している。
【図14A】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図14B】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図14C】サブ波長導波路でのSERS感知の基本概念を図示している。
【図15】矢印1でエバネッセント結合する二のナノリボン(NR1及びNR2)のPL/暗視野像を図示している。
【図16A】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図16B】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図16C】導波路を流体素子へ集積した状態を図示している。
【図17A】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17B】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17C】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17D】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17E】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図17F】GaNのPL及びレーザー発光の光路を図示している。
【図18A】多レーザー導波路を図示している。
【図18B】多レーザー導波路を図示している。
【図19A】GaNナノワイヤレーザー発光を図示している。
【図19B】GaNナノワイヤレーザー発光を図示している。
【図20A】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20B】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20C】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20D】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図20E】ナノリボンネットワークのカラーフィルタを図示している。
【図21】SnO2ナノリボンの典型的なPLスペクトルである。SnO2ナノリボンが有する二の欠陥に起因するバンド間発光が示されている。
【図22A】長方形のナノリボングリッドの光路を図示している。
【図22B】長方形のナノリボングリッドの光路を図示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路。
【請求項2】
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記ナノリボン又はナノワイヤがSnO2を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項4】
前記ナノリボン又はナノワイヤがZnOを有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項5】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、長さが約100nmから約400nmの範囲の直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項6】
可視フォトルミネッセンス(PL)による光が前記導波路によって導波可能であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項7】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、最大で約5000μmの長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項8】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、実質的に均一な長方形断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項9】
前記ナノリボン又はナノワイヤが実質的に均一な長方形断面を有し、
その断面積は約15nm×5nmから約2μm×1μmの範囲であること、
を特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項10】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、約100nm×100nmから約400nm×400nmの範囲にある断面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項11】
サブ波長キャビティ中で可視光及び紫外光を進行させる機能を有することを特徴とする、請求項10に記載の光導波路。
【請求項12】
内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)及び、隣接し、エバネッセント結合するナノリボン、ナノワイヤ又は外部レーザーダイオードから放出される非共鳴UV/可視光の導波路として機能することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項13】
基板表面上での操作及び位置設定が可能な単結晶構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項14】
前記基板表面がSiO2及び雲母表面を有することを特徴とする、請求項13に記載の光導波路。
【請求項15】
前記ナノリボン又はナノワイヤを曲げることで出力光モードの構造が変化することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項16】
前記光が液状媒質中でも前記導波路を介して導波可能であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項17】
励起及び検出体積を小さくすることが求められる集積オンチップ化学分析又は生物学的分光用に調製されることを特徴とする、請求項15に記載の光導波路。
【請求項18】
前記導波路外側で光電場が減衰することで光子の吸収又は散乱が誘起されるのを利用した、蛍光、吸収又は表面増強ラマン散乱(SERS)法で分子を検査するために調製されることを特徴とする、請求項16に記載の光導波路。
【請求項19】
光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、光位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドで基本的には構成されるフォトニック回路での機能的素子であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項20】
前記フィルタが、光路長に基づいた調節可能なカットオフを有する短経路フィルタを有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項21】
前記光結合器が、単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとの間で作製されるヘテロ接合を有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項22】
前記光接合が、二のナノリボンを端部ファセットで結合させることによって形成されたSnO2/ SnO2接合を有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項23】
前記光クロスバーグリッドが有する請求項19に記載の二対の直交した光導波路であって、光を急峻な角度である90°で伝搬することを特徴とする光導波路。
【請求項24】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有することを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項25】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、光位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドで基本的には構成されるフォトニック回路での機能的素子であることを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項26】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有し、かつ、
前記ナノリボン又はナノワイヤが実質的に均一な長方形断面を有し、その断面積は約15nm×5nmから約2μm×1μmの範囲であることを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項27】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、約100nm×100nmから約400nm×400nmの範囲にある断面積を有することを特徴とする、請求項26に記載のサブ波長光導波路。
【請求項1】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路。
【請求項2】
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記ナノリボン又はナノワイヤがSnO2を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項4】
前記ナノリボン又はナノワイヤがZnOを有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項5】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、長さが約100nmから約400nmの範囲の直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項6】
可視フォトルミネッセンス(PL)による光が前記導波路によって導波可能であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項7】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、最大で約5000μmの長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項8】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、実質的に均一な長方形断面を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項9】
前記ナノリボン又はナノワイヤが実質的に均一な長方形断面を有し、
その断面積は約15nm×5nmから約2μm×1μmの範囲であること、
を特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項10】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、約100nm×100nmから約400nm×400nmの範囲にある断面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項11】
サブ波長キャビティ中で可視光及び紫外光を進行させる機能を有することを特徴とする、請求項10に記載の光導波路。
【請求項12】
内部で発生するフォトルミネッセンス(PL)及び、隣接し、エバネッセント結合するナノリボン、ナノワイヤ又は外部レーザーダイオードから放出される非共鳴UV/可視光の導波路として機能することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項13】
基板表面上での操作及び位置設定が可能な単結晶構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項14】
前記基板表面がSiO2及び雲母表面を有することを特徴とする、請求項13に記載の光導波路。
【請求項15】
前記ナノリボン又はナノワイヤを曲げることで出力光モードの構造が変化することを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項16】
前記光が液状媒質中でも前記導波路を介して導波可能であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項17】
励起及び検出体積を小さくすることが求められる集積オンチップ化学分析又は生物学的分光用に調製されることを特徴とする、請求項15に記載の光導波路。
【請求項18】
前記導波路外側で光電場が減衰することで光子の吸収又は散乱が誘起されるのを利用した、蛍光、吸収又は表面増強ラマン散乱(SERS)法で分子を検査するために調製されることを特徴とする、請求項16に記載の光導波路。
【請求項19】
光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、光位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドで基本的には構成されるフォトニック回路での機能的素子であることを特徴とする、請求項1に記載の光導波路。
【請求項20】
前記フィルタが、光路長に基づいた調節可能なカットオフを有する短経路フィルタを有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項21】
前記光結合器が、単一ZnOナノワイヤとSnO2ナノリボンとの間で作製されるヘテロ接合を有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項22】
前記光接合が、二のナノリボンを端部ファセットで結合させることによって形成されたSnO2/ SnO2接合を有することを特徴とする、請求項19に記載の光導波路。
【請求項23】
前記光クロスバーグリッドが有する請求項19に記載の二対の直交した光導波路であって、光を急峻な角度である90°で伝搬することを特徴とする光導波路。
【請求項24】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有することを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項25】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
光ネットワーク、光ファイバ、導光カプラ、発光体-導波路-検出器接合、光プローブ、光センサ、光ルータ、光接合、光変調器、Y接合、光分岐ネットワーク、マッハ・ツェンダー干渉計、リング共振器、ナノレーザー、光位相シフタ、流体センサ、流体プローブ、流体素子、分光計及び光クロスバーグリッドで基本的には構成されるフォトニック回路での機能的素子であることを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項26】
導波される光の波長未満の直径を有するナノリボン又はナノワイヤを有するサブ波長光導波路を有し、
前記ナノリボン又はナノワイヤが約1000より大きなアスペクト比を有し、かつ、
前記ナノリボン又はナノワイヤが実質的に均一な長方形断面を有し、その断面積は約15nm×5nmから約2μm×1μmの範囲であることを特徴とするサブ波長光導波路。
【請求項27】
前記ナノリボン又はナノワイヤが、約100nm×100nmから約400nm×400nmの範囲にある断面積を有することを特徴とする、請求項26に記載のサブ波長光導波路。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【公表番号】特表2007−538274(P2007−538274A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513453(P2007−513453)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/017029
【国際公開番号】WO2005/114282
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/017029
【国際公開番号】WO2005/114282
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501325945)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (10)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
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