説明

シャーシの嵌合構造

【課題】 仕上がり寸法に影響されることなく、シャーシ本体にシャーシを安定して確実に固定することができるとともに、従来構造に比べて、製作コストの低減を図ることができるシャーシの嵌合構造を提供する。
【解決手段】 シャーシ本体13の基準位置に上蓋10の一部が規制されつつ、シャーシ本体13に対し、上蓋10を相対的にスライドさせて位置決めする構成にすることで、シャーシ本体13および上蓋10の仕上がり寸法に影響されることなく、シャーシ本体13に上蓋10を安定して確実に固定でき、従来構造に比べて、シャーシ本体などの寸法精度を高くする必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばオーディオ装置、ナビゲーション装置などに好適に適用されるシャーシの嵌合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置、ナビゲーション装置などに適用されるシャーシの嵌合構造が種々実用に供されている(たとえば特許文献1,2参照)。図26は、従来のシャーシの嵌合構造に係り、放熱板1に対する上蓋2の嵌合構造を概略示す斜視図である。図27は、従来の上蓋2を正面側から見た斜視図である。図28は、従来の上蓋2を背面側から見た斜視図である。図29は、従来の底板を構成する放熱板1の斜視図である。底板を構成する放熱板1に孔部または溝部1aが形成され、上蓋2に設けた爪2aを前記孔部または溝部1aに係合して(引っ掛けて)仮固定可能になっている。底板を構成する放熱板1には複数のねじ部1bが形成され、上蓋2の爪2aを前記孔部または溝部1aに引っ掛けて仮固定した後、複数のねじを複数のねじ部1bに螺着して固定する構造になっている。
【0003】
【特許文献1】実開平5−3613号公報
【特許文献2】実用新案登録第2522065号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱板の放熱効果を高めるため、たとえばアルミダイカストから成る放熱板を採用することがある。このようなアルミ材から成る放熱板に、前記従来のシャーシの嵌合構造を適用すると、次のような問題がある。
【0005】
(1)放熱板1の寸法精度を必要十分な程度まで高精度にすることができない。つまり放熱板1および上蓋2の仕上がり寸法の公差などに起因して、組付け時の寸法が不安定にばらつくだけでなく、放熱板1の孔部または溝部1aに上蓋2の爪2aを引っ掛けるとき、アルミ材が削れ品質劣化を生じる。(2)放熱板1に複数のねじ部1bを形成しなければならず、その分加工工数が増え製作コストの増加を招く。
【0006】
本発明の目的は、仕上がり寸法に影響されることなく、シャーシ本体にシャーシを安定して確実に固定することができるとともに、従来構造に比べて、製作コストの低減を図ることができるシャーシの嵌合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シャーシ本体にシャーシを嵌合固定する構造において、
シャーシ本体にシャーシが規制されつつ、
シャーシ本体に対し、シャーシをスライドさせて位置決め可能に構成することを特徴とするシャーシの嵌合構造である。
【0008】
また本発明は、前記シャーシ本体に位置決めされたシャーシを固着する固着手段をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記固着手段は、シャーシをシャーシ本体に当接させるねじを含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記シャーシ本体に設けられる嵌合部と、
前記シャーシに付設される嵌合爪部とを含み、
該嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、
シャーシ本体にシャーシが規制されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記嵌合部には、嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、該嵌合爪部に押圧される突起部分が付設されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記突起部分に対し、嵌合爪部の相対位置が目視確認可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、複数の嵌合部と、
前記複数の嵌合部にそれぞれ着脱可能に構成される複数の嵌合爪部とを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記シャーシ本体にシャーシを規制するための規制手段をさらに含み、
該規制手段は、
シャーシまたはシャーシ本体に設けられるガイドピンと、
シャーシ本体またはシャーシに形成されるガイド孔であって、前記ガイドピンに案内されつつ挿入されるガイド孔とを有することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記固着手段は、シャーシ本体にシャーシを引っ張り当接させる態様または、シャーシ本体にシャーシを押圧して当接させる態様に構成されることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記嵌合部に付設される突起部分は、該嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、該嵌合爪部からの押圧力を高めるテーパ形状を成すことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記嵌合爪部には、嵌合部に該嵌合爪部を装着した状態で、前記嵌合部を押圧する突出部分が付設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シャーシ本体にシャーシが規制されつつ、シャーシ本体に対し、シャーシをスライドさせて位置決めする。したがってシャーシ本体およびシャーシの仕上がり寸法に影響されることなく、シャーシ本体にシャーシを安定して確実に固定することができる。従来構造に比べて、シャーシ本体などの寸法精度を高くする必要がなくなり、製作コストの低減を図ることが可能となる。従来構造に比べて、ねじなどの部品点数を低減可能となるので、その分全体の製作コストの低減を図り、組立工数の削減を図ることができる。
また本発明によれば、固着手段により、シャーシを固着することができる。
【0019】
また本発明によれば、シャーシがシャーシ本体に位置決めされた状態で、ねじでもってシャーシがシャーシ本体に当接される。つまりシャーシは最終位置に固着される。
【0020】
また本発明によれば、嵌合部に爪嵌合部を装着した状態で、シャーシ本体にシャーシが規制される。シャーシの組立自体を簡単化することができ、タクトタイムの短縮化を図ることが可能となる。
【0021】
また本発明によれば、嵌合部に付設される突起部分によって、シャーシをシャーシ本体に位置決めした感触(いわゆるクリック感)を得ることができる。嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、突起部分は嵌合爪部に押圧されるので、シャーシ本体などの寸法精度の誤差分を吸収することができる。よってシャーシ本体などの寸法精度を高める必要がなくなる。
【0022】
また本発明によれば、突起部分に対し、爪嵌合部の相対位置が目視確認可能に構成されるので、シャーシの嵌合状態を容易に判断できる。
【0023】
また本発明によれば、複数の嵌合部および複数の嵌合爪部によって、シャーシ本体に対するシャーシの位置決め精度が向上する。
【0024】
また本発明によれば、ガイドピンとガイド孔とを有する規制手段によって、シャーシ本体に対するシャーシの位置決め精度をさらに向上することができる。
【0025】
また本発明によれば、シャーシ本体にシャーシを引っ張り当接させる態様または、シャーシ本体にシャーシを押圧して当接させる態様に構成されるので、レイアウトの自由度が向上する。よって完成品の汎用性を高めることも可能となる。
【0026】
また本発明によれば、突起部分がテーパ形状を成すことで、嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、該嵌合爪部からの押圧力を徐々に高めることができる。それ故、シャーシの組立を容易にすることができるうえ、シャーシをシャーシ本体にタイトに位置決めすることが可能となる。
【0027】
また本発明によれば、嵌合爪部には、嵌合部に該嵌合爪部を装着した状態で嵌合部を押圧する突出部分が付設されるので、次のような効果を奏する。突出部分を形成するための工程を低減することが可能となり、金型費の低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。本実施形態に係るシャーシの嵌合構造は、車載用のオーディオ装置に適用される。ただし車載用のオーディオ装置だけに限定されるものではなく、据置形または携帯形の種々な電子機器に適用される場合もあり得る。以下の説明は、シャーシの嵌合方法の説明をも含む。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係るシャーシの組立途中の図であり、図1(a)は上蓋10と前板11等との関係を示す斜視図、図1(b)は要部の嵌合形状の拡大斜視図である。図2は、シャーシの組立途中の図であり、図2(a)は上蓋10とヒートシンク12等との関係を示す斜視図、図2(b)は要部の嵌合形状の拡大斜視図である。本実施形態に係るオーディオ装置は、主に、シャーシ本体13と、シャーシとしての上蓋10とを含む。シャーシ本体13は、前板11、ヒートシンク12、左板14、後板15および図示外の底板を含む。これら複数の部品11,12,14,15が一体的に組立てられたシャーシ本体13に、上蓋10が嵌合固定されるように構成されている。前記シャーシ本体13のうち、前板11の長手方向をx方向と定義し、ヒートシンク12および左板14の長手方向をy方向と定義する。xおよびy方向に直交する方向をz方向と定義する。図1および2において、x方向を矢符xにて表記し、y方向を矢符yにて表記し、z方向を矢符zにて表記する。
【0030】
前板11について説明する。図3は、前板11を正面側から見た斜視図である。図4は、前板11を背面側から見た斜視図である。図1および図2も参照しつつ説明する。前板11は、たとえば板厚1mmの電気亜鉛メッキ処理鋼板(日本工業規格「SECC」)から形成される。ただし板厚1mmに限定されるものではない。前板11は、主面部16、フランジ部17およびブラケット部18を有し、主面部16の一部に、後述する嵌合部19が形成されている。主面部16は、xz平面に平行な仮想平面に沿って形成され、該主面部16に複数の開口部が形成されている。主面部16の外縁部には、フランジ部17が一体に形成されている。フランジ部17は、yz平面に平行な仮想平面に沿って、主面部16からy方向一方に所定小距離突出するように形成されている。シャーシ本体13に上蓋10が嵌合固定された状態で、車両のコンソールなどに収納される。主面部16には、該主面部16からy方向他方に所定小距離突出する一対のブラケット部18が付設されている。これら一対のブラケット部18は、x方向に離隔して配設されている。
【0031】
図5は前板11の平面図であり、図6は前板11の正面図であり、図7は前板11の側面図である。図8は、嵌合部19の要部の厚み形状を詳細に示す図であり、図9は、嵌合部19を部分的に拡大して示す正面図である。図10は、嵌合部19の突起部分19aを拡大して示す正面図であり、図11は、突起部分19aの断面図である。主面部16のz方向一端部には、一対の嵌合部19が形成されている。図1(b)および図2(b)に示すように、前記一対の嵌合部19に、上蓋10に付設される一対の嵌合爪部20がそれぞれ着脱可能に構成される。一対の嵌合部19は、x方向一方および他方に離隔して配設されるうえ同一形状に形成される。
【0032】
図6および図9に示すように、主面部16には、各嵌合部19を形成するスリットおよび、該嵌合部19に嵌合爪部20を装着するための開口部16aが形成されている。開口部16aは、少なくとも嵌合爪部20の表面部の面積よりもやや大きくなるような孔部を成している。主面部16に形成される開口部16aによって、突起部分19aに対し、上蓋10の嵌合爪部20の相対位置が目視確認可能に構成される。各嵌合部19は、y方向から見て矩形状の板片を成し、y方向他方にやや反るように形成されている(図8参照)。つまり嵌合部19に嵌合爪部20をスムースかつ容易に装着すべく、各嵌合部19の基端部19bに対し、その先端部19cがy方向他方に傾斜するように形成されている。各嵌合部19がy方向他方にやや反るように形成されていることで、前板11の基準位置P1に、上蓋10の上蓋本体21のy方向一端部21aが規制されつつ、シャーシ本体13に対し、上蓋10を相対的にスライドさせて位置決め可能になっている。前記基準位置P1とは、上蓋10のy方向一端部21aを位置決めするための前板11の基準面と同義である。
【0033】
前記スリットは、第1、第2および第3スリット16b,16c,16dを含む。主に第1および第2スリット16b,16cによって各嵌合部19の先端部19cが形成され、主に第3スリット16dによって各嵌合部19の基端部19bが形成されている。第1スリット16bは屈曲部22を介して第3スリット16dに連なり、これら第1スリット16bの延在方向と第3スリット16dの延在方向とが、x方向に平行となるように形成されている。前記屈曲部22はいわゆる段差であり該屈曲部22に、嵌合爪部20の一部がタイトに支持されるようになっている。各嵌合部19の基端部19bには、y方向一方に所定小距離突出する突起部分19aいわゆる「ダボ」が付設されている。前記突起部分19aは、嵌合部19に嵌合爪部20を装着するとき、該嵌合爪部20に押圧されるものであり、たとえば直径約2mm、前記基端部19bからの高さ約0.2mmに規定されている。突起部分19aは、前記直径約2mmの基端部19bから先端部に向かうに従って小径化するようなテーパ円形状に形成されている。
【0034】
図5〜図7に示すように、前記主面部16には、上蓋本体21の一部を支持するための支持部23が付設されている。主面部16のうち、x方向一方側の嵌合部19に近接して前記支持部23が付設される。この支持部23は、主面部16からy方向他方に突出するように形成されている。図1および図2に示すように、上蓋10の嵌合爪部20を嵌合部19に装着するとき、上蓋本体21の一部を当該支持部23に支持するとともに、上蓋本体21の第2ブラケット付近部を左板14に支持し、上蓋本体21の第3ブラケット付近部を後板15に支持する。これら三箇所で上蓋10をxy平面に沿って支持し得る。
【0035】
ヒートシンク12について説明する。図12は、ヒートシンク12を背面側から見た斜視図である。図13は、ヒートシンク12を正面側から見た斜視図である。前板11の一方のブラケット部17等にヒートシンク12が連結され、ヒートシンク12はyz平面に平行な仮想平面に沿って配設される。ヒートシンク12はたとえばアルミダイカストから成る。このヒートシンク12の外表面部12aは、放熱効果を高めるべく凹凸形状に形成されている。ヒートシンク12のz方向一端部には、ガイド孔としての一対の切円孔12bが形成されている。一対の切円孔12bは、y方向一方および他方に離隔して配設されるうえ、同一寸法に形成される。嵌合部19に嵌合爪部20を装着するとき、上蓋10に設けられる一対のガイドピン24が一対の切円孔12bにそれぞれ案内されつつ挿入されるようになっている。各切円孔12bは、y方向に所定小距離延びる長孔に形成されている。ヒートシンク12のz方向一端部において、y方向中間付近部には、ざぐり孔12cが形成されている。一対のガイドピン24および一対の切円孔12bが規制手段に相当する。
【0036】
左板14について説明する。図14は左板14を背面側から見た斜視図であり、図15は左板14を正面側から見た斜視図である。前板11の他方のブラケット部17等に左板14が連結され、左板14はyz平面に平行な仮想平面に沿って配設される。左板14は、たとえば板厚1mmの電気亜鉛メッキ処理鋼板(日本工業規格「SECC」)から形成される。左板14のy方向一端部には、ブラケット25が一体形成されている。左板14のz方向一端部には、一対のガイドピン26が形成されている。一対のガイドピン26はy方向に離隔して配設され、各ガイドピン26は、x方向外方側に突出するように形成されている。嵌合部19に嵌合爪部20を装着するとき、一対のガイドピン26が上蓋10に形成される一対の切円孔27にそれぞれ案内されつつ挿入されるようになっている。
【0037】
後板15について説明する。図16は後板15を背面側から見た斜視図であり、図17は後板15を正面側から見た斜視図である。ヒートシンク12のy方向一端部および左板14のy方向一端部に、後板15が連結され、後板15はxz平面に平行な仮想平面に沿って配設される。後板15は、たとえば板厚1mmの電気亜鉛メッキ処理鋼板(日本工業規格「SECC」)から形成される。前記前板11、ヒートシンク12、左板、後板15および図示外の底板によって、有底の矩形枠状体を成している。
【0038】
上蓋10について説明する。図18は上蓋10を正面側から見た斜視図であり、図19は上蓋10を背面側から見た斜視図である。図20は上蓋10の平面図であり、図21は上蓋10の正面図であり、図22は上蓋10の背面図である。図23は上蓋10の一方側の側面図であり、図24は上蓋10の他方側の側面図である。図25は、図24の要部(ガイドピン)を示す図であり、図25(a)はガイドピンを拡大して示す図、図25(b)はガイドピンの断面図である。
【0039】
上蓋10は、たとえば板厚1mmの電気亜鉛メッキ処理鋼板(日本工業規格「SECC」)から形成される。上蓋10は、上蓋本体21、第1〜第3ブラケット28,29,30および一対の嵌合爪部20を有する。上蓋本体21は、xy平面に沿って形成される矩形板状に形成される。この上蓋本体21のy方向一端部21aに、一対の嵌合爪部20が一体に付設されている。前記y方向一端部21aを基準として、嵌合爪部20の表面部の位置が規定される。具体的には、前記y方向一端部21aと、嵌合爪部20の表面部との間には、たとえば前板11の厚み寸法より所定小距離大きい間隙δが形成されている。一対の嵌合爪部20は、x方向一方および他方に離隔して配設されるうえ同一形状に形成される。各嵌合爪部20は、xz平面に平行な仮想平面に沿って配設される。各嵌合爪部20はy方向に見て矩形状に形成され、各嵌合爪部20の角部は丸面取りまたは角面取りされている。
【0040】
上蓋本体21のx方向一端部には、第1ブラケット28が形成されている。この第1ブラケット28に、一対のガイドピン24が付設されている。一対のガイドピン24はy方向一方および他方に離隔して配設されるうえ、同一形状に形成される。図25に示すように、各ガイドピン24は、たとえば直径約3mm、第1ブラケット28からの高さ約2.2mmに規定されている。各ガイドピン24は、前記直径約3mmの基端部から先端部に向かうに従って小径化するようなテーパ円形状に形成されている。第1ブラケット28の長手方向中間付近部には、バーリング加工によってねじ部31が形成されている。図2に示すように、シャーシ本体13に対し、上蓋10をxy平面に沿って相対的にスライドさせ、シャーシ本体13に位置決めされた上蓋10のねじ部31に、ヒートシンク12のざぐり孔12cからねじ32を螺着可能になっている。固着手段である前記ねじ32は、シャーシ本体13に位置決めされた上蓋10を最終位置に固着するものである。つまり前記ねじ32によって、第1ブラケット28の表面部をヒートシンク12の裏面部に引っ張り当接させる態様になっている。
【0041】
上蓋本体21のx方向他端部には、第2ブラケット29が形成されている。この第2ブラケット29に、一対の切円孔27が形成されている。一対の切円孔27はy方向一方および他方に離隔して配設されるうえ、同一寸法に形成される。ガイド孔である各切円孔27は、y方向に所定小距離延びる長孔に形成されている。シャーシ本体13に対し、上蓋10をxy平面に沿って相対的にスライドさせることで、左板14のガイドピン26が前記切円孔27に案内されつつ挿入される。これとともに上蓋10のガイドピン24がヒートシンク12の切円孔12bに案内されつつ挿入されるようになっている。
【0042】
上蓋本体21のy方向他端部には、第3ブラケット30が形成されている。シャーシ本体13に上蓋10が少なくとも位置決めされ最終位置に配設された状態で、第3ブラケット30の裏面部30aが後板15の凹部15a(図17参照)に嵌まり込む。よって後板15の表面部15bと第3ブラケット30の表面部30bとは、面一状となるように構成される。なお上蓋10が最終位置に固着された状態で、必要に応じて第3ブラケット30に形成される孔部から、後板15に予め形成されるねじ部に図示外のねじを螺着可能に構成されている。前記ねじ部は、たとえばバーリング加工によって実現される。このように上蓋10をシャーシ本体13の最終位置に位置決めした状態でねじ固定することにより、容易に上蓋10をシャーシ本体13に固定することができる。
【0043】
以上説明したシャーシの嵌合構造によれば、シャーシ本体13の基準位置P1に、上蓋10の上蓋本体21のy方向一端部21aが規制されつつ、シャーシ本体13に対し、上蓋10を相対的にスライドさせて位置決めする。したがってシャーシ本体13および上蓋10の仕上がり寸法に影響されることなく、シャーシ本体13に上蓋10を安定して確実に固定することができる。従来構造に比べて、シャーシ本体13などの寸法精度を高くする必要がなくなり、製作コストの低減を図ることが可能となる。従来構造に比べて、ねじなどの部品点数を低減可能となるので、その分装置全体の製作コストの低減を図り、組立工数の削減を図ることができる。シャーシ本体13に位置決めされた上蓋10の第1ブラケット28の表面部を、ヒートシンク12の裏面部に固着手段であるねじ32によって引っ張り当接させる、つまり最終位置に固着することができる。
【0044】
本シャーシの嵌合構造によれば、嵌合部19に爪嵌合部20を装着するとき、シャーシ本体13の基準位置P1に上蓋本体21のy方向一端部21aが規制されつつ、シャーシ本体13に上蓋10が位置決めされるので、上蓋10の組立自体を簡単化することができ、タクトタイムの短縮化を図ることが可能となる。嵌合部19に嵌合爪部20を装着するとき、該嵌合爪部20に押圧される突起部分19aが、嵌合部19に付設されるので、上蓋10をシャーシ本体13に位置決めした感触(いわゆるクリック感)を得ることができる。嵌合部19に嵌合爪部20を装着するとき、突起部分19aは嵌合爪部20に押圧されるので、シャーシ本体13の各部品の寸法精度の誤差分を吸収することができる。よってシャーシ本体13の各部品の寸法精度を高める必要がなくなる。それ故、加工工数の低減を図ることが可能となり、製作コストの低減を図ることができる。
【0045】
突起部分19aに対し、嵌合爪部20の相対位置が目視確認可能に構成されるので、シャーシの嵌合状態を容易に判断できる。複数の嵌合部19および複数の嵌合爪部20によって、シャーシ本体13に対するシャーシの位置決め精度が向上する。一対のガイドピン24および一対の切円孔12bによって、シャーシ本体13に対する上蓋10の位置決め精度をさらに向上することができる。上蓋10に設けられる各ガイドピン24は、その基端部から先端部に向かうに従って小径化するようなテーパ円形状に形成されているので、嵌合部19に嵌合爪部20を装着するときの多少の位置ずれ分を、テーパ円形状のテーパ部分で吸収することが可能となる。それ故、シャーシの嵌合自体を簡単化することができる。
【0046】
本実施形態においては、アルミダイカストから成るヒートシンクを適用しているが、前記アルミダイカストだけに必ずしも限定されるものではない。たとえば鋼板から成るヒートシンクを適用する場合であっても、本実施形態と略同様の効果を奏する。シャーシ本体の鋼板には、電気亜鉛メッキ処理以外の表面処理が施されていてもよい。本実施形態においては、一対の嵌合爪部が一対の嵌合部にそれぞれ着脱可能に構成されるが、x方向適当間隔おきに配設される三つの嵌合爪部がそれぞれ対応する嵌合部に着脱可能に構成されてもよい。たとえば三つの嵌合爪部のうち、x方向中間部に配設される嵌合爪部が両側の他の嵌合爪部に対して、xz平面においてy方向にやや変位する位置に配設することで、嵌合爪部を嵌合部にタイトに嵌合し得る。
【0047】
ヒートシンクにガイドピンが設けられ、上蓋に、前記ガイドピンに案内されつつ挿入されるガイド孔が形成されてもよい。この場合にも本実施形態と同様の作用効果を奏する。本実施形態では、嵌合部の突起部分はテーパ円形状に形成されているが、このテーパ円形状に限定されるものではない。たとえば円柱形状、角錐形状および角錐台形状のいずれか1つに形成される場合もあり得る。このように突起部分の形状を変えることによって、嵌合精度または嵌合位置を容易に変更することも可能となる。その他本実施形態と同様の効果を奏する。
【0048】
嵌合部に付設される突起部分は、該嵌合部に嵌合爪部を装着するとき、該嵌合爪部からの押圧力を高めるテーパ形状に形成されてもよい。この嵌合爪部は、開口部からx方向に離隔するに従ってy方向一方(つまり手前側)に次第に突出するテーパ形状に形成される。これによって、シャーシ本体に対する上蓋の組立を容易にすることができるうえ、上蓋をシャーシ本体にタイトに位置決めすることが可能となる。
【0049】
本実施形態では、ねじによって、第1ブラケットをヒートシンクに引っ張り当接させる態様になっているが、必ずしもこの態様に限定されるものではない。前記態様に代えてたとえば、第2ブラケットの表面部をねじ等の先端部で押圧することで、ヒートシンクの裏面部に第1ブラケットの表面部を当接させる態様に構成してもよい。この構成によれば、レイアウトの自由度が向上し、よって完成品の汎用性を高めることも可能となる。本実施形態では、嵌合部に突起部分つまり嵌合爪部に押圧される「ダボ」が付設されているが、このようなダボに限定されず次のような構成に代替することも可能である。上蓋の嵌合爪部の裏面部にy方向他方(奥側)に突出する突出部分を形成し、嵌合部に当該嵌合爪部を装着するとき、この突出部分でもって該嵌合部を押圧する構成にしてもよい。このような構成によれば、突出部分を形成するための工程を低減することが可能となり、金型費の低減を図ることが可能となる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加した形態で実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係るシャーシの組立途中の図であり、図1(a)は上蓋10と前板11等との関係を示す斜視図、図1(b)は要部の嵌合形状の拡大斜視図である。
【図2】シャーシの組立途中の図であり、図2(a)は上蓋10とヒートシンク12等との関係を示す斜視図、図2(b)は要部の嵌合形状の拡大斜視図である。
【図3】前板11を正面側から見た斜視図である。
【図4】前板11を背面側から見た斜視図である。
【図5】前板11の平面図である。
【図6】前板11の正面図である。
【図7】前板11の側面図である。
【図8】嵌合部19の要部の厚み形状を詳細に示す図である。
【図9】嵌合部19を部分的に拡大して示す正面図である。
【図10】嵌合部19の突起部分19aを拡大して示す正面図である。
【図11】突起部分19aの断面図である。
【図12】ヒートシンク12を背面側から見た斜視図である。
【図13】ヒートシンク12を正面側から見た斜視図である。
【図14】左板14を背面側から見た斜視図である。
【図15】左板14を正面側から見た斜視図である。
【図16】後板15を背面側から見た斜視図である。
【図17】後板15を正面側から見た斜視図である。
【図18】上蓋10を正面側から見た斜視図である。
【図19】上蓋10を背面側から見た斜視図である。
【図20】上蓋10の平面図である。
【0051】
【図21】上蓋10の正面図である。
【図22】上蓋10の背面図である。
【図23】上蓋10の一方側の側面図である。
【図24】上蓋10の他方側の側面図である。
【図25】図24の要部(ガイドピン)を示す図であり、図25(a)はガイドピンを拡大して示す図、図25(b)はガイドピンの断面図である。
【図26】従来のシャーシの嵌合構造に係り、放熱板1に対する上蓋2の嵌合構造を概略示す斜視図である。
【図27】従来の上蓋2を正面側から見た斜視図である。
【図28】従来の上蓋2を背面側から見た斜視図である。
【図29】従来の底板を構成する放熱板1の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 上蓋
12b ガイド孔
13 シャーシ本体
19 嵌合部
19a 突起部分
20 嵌合爪部
24 ガイドピン
32 ねじ
P1 基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシ本体にシャーシを嵌合固定する構造において、
シャーシ本体にシャーシが規制されつつ、
シャーシ本体に対し、シャーシをスライドさせて位置決め可能に構成することを特徴とするシャーシの嵌合構造。
【請求項2】
前記シャーシ本体に位置決めされたシャーシを固着する固着手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項3】
前記固着手段は、シャーシをシャーシ本体に当接させるねじを含むことを特徴とする請求項2記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項4】
前記シャーシ本体に設けられる嵌合部と、
前記シャーシに付設される嵌合爪部とを含み、
該嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、
シャーシ本体にシャーシが規制されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項5】
前記嵌合部には、嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、該嵌合爪部に押圧される突起部分が付設されることを特徴とする請求項4記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項6】
前記突起部分に対し、嵌合爪部の相対位置が目視確認可能に構成されることを特徴とする請求項5記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項7】
複数の嵌合部と、
前記複数の嵌合部にそれぞれ着脱可能に構成される複数の嵌合爪部とを含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項8】
前記シャーシ本体にシャーシを規制するための規制手段をさらに含み、
該規制手段は、
シャーシまたはシャーシ本体に設けられるガイドピンと、
シャーシ本体またはシャーシに形成されるガイド孔であって、前記ガイドピンに案内されつつ挿入されるガイド孔とを有することを特徴とする請求項4記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項9】
前記固着手段は、シャーシ本体にシャーシを引っ張り当接させる態様または、シャーシ本体にシャーシを押圧して当接させる態様に構成されることを特徴とする請求項2または3記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項10】
前記嵌合部に付設される突起部分は、該嵌合部に嵌合爪部を装着した状態で、該嵌合爪部からの押圧力を高めるテーパ形状を成すことを特徴とする請求項5または6記載のシャーシの嵌合構造。
【請求項11】
前記嵌合爪部には、嵌合部に該嵌合爪部を装着した状態で、前記嵌合部を押圧する突出部分が付設されることを特徴とする請求項4または5記載のシャーシの嵌合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−339315(P2006−339315A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160620(P2005−160620)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】