説明

シート状プローブおよびその応用

【課題】 絶縁層の厚みが大きく、径が小さい表面電極部を有する電極構造体を備えた、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、高い耐久性を有するシート状プローブを提供すること。
【解決手段】 電極構造体の各々は、絶縁層の表面に露出し、絶縁層の表面から突出し、その基端から先端に向かうに従って小径となる形状の表面電極部と、絶縁層の裏面に露出する裏面電極部と、表面電極部の基端から連続して前記絶縁層をその厚み方向に貫通して伸び、裏面電極部に連結された短絡部とよりなり、表面電極部の基端の径が、短絡部の表面電極部と接する側の端の径よりも大きいことを特徴とするシート状プローブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集積回路などの回路の電気的検査において、回路に対する電気的接続を行うためのプローブ装置として好適なシート状プローブおよびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多数の集積回路が形成されたウエハや、半導体素子などの電子部品などの回路装置の電気的検査においては、被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置された検査電極を有する検査用プローブが用いられている。
【0003】
かかる検査用プローブとしては、従来、ピンまたはブレードよりなる検査電極が配列されてなるものが使用されている。
然るに、被検査回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハである場合において、ウエハを検査するための検査用プローブを作製する場合には、非常に多数の検査電極を配列することが必要となるので、検査用プローブは極めて高価なものとなり、また、被検査電極のピッチが小さい場合には、検査用プローブを作製すること自体が困難となる。
【0004】
更に、ウエハには、一般に反りが生じており、その反りの状態も製品(ウエハ)毎に異なるため、ウエハにおける多数の被検査電極に対して、検査用プローブの検査電極の各々を安定にかつ確実に接触させることは実際上困難である。
【0005】
以上のような理由から、近年、ウエハに形成された集積回路を検査するための検査用プローブとして、一面に被検査電極のパターンに対応するパターンに従って複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、この検査用回路基板の一面上に配置された異方導電性シートと、この異方導電性シート上に配置された、柔軟な絶縁性シートにその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体が配列されてなるシート状プローブとを備えてなるものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
図25は、検査用回路基板85、異方導電性シート80およびシート状プローブ90を備えてなる従来のプローブカードの一例における構成を示す説明用断面図である。
このプローブカードにおいては、一面に被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って形成された多数の検査電極86を有する検査用回路基板85が設けられ、この検査用回路基板85の一面上に、異方導電性シート80を介してシート状プローブ90が配置されている。
【0007】
異方導電性シート80は、厚み方向にのみ導電性を示すもの、または厚み方向に加圧されたときに厚み方向にのみ導電性を示す加圧導電性導電部を有するものであり、かかる異方導電性シートとしては、種々の構造のものが知られており、例えば特許文献2などには、金属粒子をエラストマー中に均一に分散して得られる異方導電性シート(以下、これを「分散型異方導電性シート」という。)が開示されている。
【0008】
また、特許文献3などには、導電性磁性体粒子をエラストマー中に不均一に分布させることにより、厚み方向に伸びる多数の導電部と、これらを相互に絶縁する絶縁部とが形成されてなる異方導電性シート(以下、これを「偏在型異方導電性シート」という。)が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献4などには、導電部の表面と絶縁部との間に段差が形成された偏在型異方導電性シートが開示されている。
このようなシート状プローブ90は、例えば樹脂よりなる柔軟な絶縁性シート91を有し、この絶縁性シート91に、その厚み方向に伸びる複数の電極構造体95が被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って配置されて構成されている。
【0010】
この電極構造体95の各々は、絶縁性シート91の表面に露出する突起状の表面電極部96と、絶縁性シート91の裏面に露出する板状の裏面電極部97とが、絶縁性シート91をその厚み方向に貫通して伸びる短絡部98を介して一体に連結されて構成されている。
【0011】
このようなシート状プローブ90は、一般に以下のようにして製造される。
先ず、図26(a)に示したように、絶縁性シート91の一面に金属層92が形成されてなる積層体90Aを用意し、図26(b)に示したように、絶縁性シート91にその厚み方向に貫通する貫通孔98Hを形成する。
【0012】
次いで、図26(c)に示したように、絶縁性シート91の金属層92上にレジスト膜93を形成したうえで、金属層92を共通電極として電解メッキ処理を施すことにより、絶縁性シート91の貫通孔98Hの内部に金属の堆積体が充填されて金属層92に一体に連結された短絡部98が形成されると共に、絶縁性シート91の表面に、短絡部98に一体に連結された突起状の表面電極部96が形成される。
【0013】
その後、金属層92からレジスト膜93を除去し、更に、図26(d)に示したように、表面電極部96を含む絶縁性シート91の表面にレジスト膜94Aを形成すると共に、金属層92上に、形成すべき裏面電極部のパターンに対応するパターンに従ってレジスト膜94Bを形成し、金属層92に対してエッチング処理を施すことにより、図26(e)に示すように、金属層92における露出する部分が除去されて裏面電極部97が形成され、電極構造体95が形成される。
【0014】
そして、絶縁性シート91および表面電極部96上に形成されたレジスト膜94Aを除去すると共に、裏面電極部97上に形成されたレジスト膜93を除去することにより、シート状プローブ90が得られる。
【0015】
上記の検査用プローブにおいては、被検査回路装置に、例えばウエハの表面に、シート状プローブ90における電極構造体95の表面電極部96がウエハの被検査電極上に位置するよう配置される。
【0016】
そして、この状態で、ウエハが検査用プローブによって押圧されることにより、異方導電性シート80が、シート状プローブ90における電極構造体95の裏面電極部97によって押圧される。
【0017】
これにより、異方導電性シート80には、裏面電極部97と検査用回路基板85の検査電極86との間にその厚み方向に導電路が形成され、その結果、ウエハの被検査電極と検査用回路基板85の検査電極86との電気的接続が達成される。
【0018】
そして、この状態で、ウエハについて所要の電気的検査が実行される。
そして、このような検査用プローブによれば、ウエハが検査用プローブによって押圧されたときに、ウエハの反りの大きさに応じて異方導電性シート80が変形するため、ウエハにおける多数の被検査電極の各々に対して良好な電気的接続を確実に達成することができる。
【0019】
しかしながら、上記の検査用プローブにおいては、以下のような問題がある。
上記のシート状プローブ90の製造方法における短絡部98および表面電極部96を形成する工程においては、電解メッキによるメッキ層が等方的に成長するため、図27に示すように、得られる表面電極部96においては、表面電極部96の周縁から短絡部98の周縁までの距離Wは、表面電極部96の突出高さhと同等の大きさとなる。
【0020】
従って、得られる表面電極部96の径Rは、突出高さhの2倍を超えて相当に大きいものとなる。
そのため、被検査回路装置における被検査電極が微小で極めて小さいピッチで配置されてなるものである場合には、隣接する電極構造体95間の離間距離を十分に確保することができず、その結果、得られるシート状プローブ90においては、絶縁性シート91による柔軟性が失われるため、被検査回路装置に対して安定した電気的接続を達成することが困難となる。
【0021】
また、電解メッキ処理において、金属層92の全面に対して電流密度分布が均一な電流を供給することは実際上困難であり、この電流密度分布の不均一性により、絶縁性シート91の貫通孔98H毎にメッキ層の成長速度が異なるため、形成される表面電極部96の突出高さhや、表面電極部96の周縁から短絡部98の周縁までの距離W、すなわち径Rに大きなバラツキが生じる。
【0022】
そして、表面電極部96の突出高さhに大きなバラツキがある場合には、被検査回路装置に対して安定した電気的接続が困難となり、一方、表面電極部96の径Rに大きなバラツキがある場合には、隣接する表面電極部96同士が短絡する恐れがある。
【0023】
以上において、表面電極部96の突出高さhを小さくする手段があり、この得られる表面電極部96の径Rを小さくする手段としては、短絡部98の径r(断面形状が円形でない場合には、最短の長さを示す。)、すなわち絶縁性シート91の貫通孔98Hの径を小さくする手段が考えられる。
【0024】
しかしながら、前者の手段によって得られるシート状プローブにおいては、被検査電極に対して安定な電気的接続を確実に達成することが困難となる。
一方、後者の手段では、電解メッキ処理によって短絡部98および表面電極部96を形成すること自体が困難となる。
【0025】
このような問題を解決するため、特許文献5および特許文献6において、それぞれ基端から先端に向かって小径となるテーパ状の表面電極部を有する多数の電極構造体が配置されてなるシート状プローブが提案されている。
【0026】
特許文献5に記載されたシート状プローブは、以下のようにして製造される。
図28(a)に示したように、絶縁性シート91の表面にレジスト膜93Aおよび表面側金属層92Aがこの順で形成され、絶縁性シート91の裏面に裏面側金属層92Bが積層されてなる積層体90Bを用意する。
【0027】
そして、図28(b)に示したように、この積層体90Bにおける裏面側金属層92B、絶縁性シート91およびレジスト膜93Aの各々に互いに連通する厚み方向に伸びる貫通孔を形成する。
【0028】
これによって、積層体90Bの裏面に、形成すべき電極構造体の短絡部および表面電極部に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成する。
次いで、図28(c)に示したように、この積層体90Bにおける表面側金属層92Aを電極としてメッキ処理することにより、電極構造体形成用凹所90Kに金属を充填して
表面電極部96および短絡部98を形成する。
【0029】
そして、この積層体における裏面側金属層92Bにエッチング処理を施してその一部を除去することにより、図28(d)に示したように、裏面電極部97を形成し、シート状プローブ90が得られる。
【0030】
また、特許文献6に記載されたシート状プローブは、以下のようにして製造される。
図29(a)に示したように、形成すべきシート状プローブにおける絶縁性シートより大きい厚みを有する絶縁性シート材91Aの表面に表面側金属層92Aが形成され、絶縁性シート材91Aの裏面に裏面側金属層92Bが積層されてなる積層体90Cを用意する。
【0031】
そして、図29(b)に示したように、この積層体90Cにおける裏面側金属層92Bおよび絶縁性シート材91Aの各々に互いに連通する厚み方向に伸びる貫通孔を形成することにより、積層体90Cの裏面に、形成すべき電極構造体の短絡部および表面電極部に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成する。
【0032】
次いで、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを電極としてメッキ処理することにより、図29(c)に示したように、電極構造体形成用凹所90Kに金属を充填して表面電極部96および短絡部98を形成する。
【0033】
その後、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを除去すると共に、絶縁性シート材91Aをエッチング処理して絶縁性シートの表面側部分を除去することにより、図29(d)に示したように、所要の厚みの絶縁性シート材91Aを形成すると共に、表面電極部96を露出させる。
【0034】
そして、裏面側金属層92Bをエッチング処理することにより、裏面電極部97を形成し、図29(e)に示したようにシート状プローブ90が得られる。
このようなシート状プローブ90によれば、表面電極部96がテーパ状のものであるため、径が小さくて突出高さが高い表面電極部96を、隣接する電極構造体の表面電極部96との離間距離が十分に確保された状態で形成することができる。
【0035】
また、電極構造体95の各々の表面電極部96は、積層体に形成された電極構造体形成用凹所90Kをキャビティとして成形されるため、表面電極部96の突出高さのバラツキが小さい電極構造体95が得られる。
【0036】
さらに、このようなシート状プローブ90の絶縁性シート91の周縁部には、図30に示したように、その剛性により絶縁性シート91を支持する、例えばセラミックスなどからなる平板リング状の支持板99が設けられている。
【0037】
これらは図31に示したように接着剤100により支持板99と絶縁性シート91とが接着固定されている。
【特許文献1】特開平7−231019号公報
【特許文献2】特開昭51−93393号公報
【特許文献3】特開昭53−147772号公報
【特許文献4】特開昭61−250906号公報
【特許文献5】特開平11−326378号公報
【特許文献6】特開2002−196018号公報
【特許文献7】特開2004−172589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
しかしながら、これらのシート状プローブにおいては、電極構造体における表面電極部の径が短絡部の径すなわち絶縁性シートに形成された貫通孔の径と同等またはそれより小さいものであるため、電極構造体が絶縁性シートの裏面から脱落してしまい、シート状プローブを実際上使用することは困難である。
【0039】
この問題点を解決するために、例えば、特許文献7に示される径が小さいテーパ状の電極構造体における表面電極部側に保持部を有し、電極構造体が絶縁性シートの裏面から脱落することを防止したシート状プローブが提案されている。
【0040】
特許文献7に記載されたシート状プローブは、以下のようにして製造される。
図32(a)に示したように、表面側金属層92A、絶縁性シート11、第1の裏面側金属層92C、絶縁層18B、第2の裏面側金属層92Bからなる5層の積層材料を用意する。
【0041】
さらに図32(b)に示したように、この積層体90Cにおける第2の裏面側金属層92Bに開口部92Hを設け、この開口部92Hより絶縁層18Bにエッチングを行い絶縁層18Bに貫通孔を設ける。
【0042】
次に絶縁層18Bの貫通孔の底部に露出した第1の裏面側金属層92Cにエッチングを行って絶縁性シート11をその貫通孔の底部に露出させる。
そして第1の裏面側金属層92Cの貫通孔を通じて絶縁性シート11にエッチングを行い貫通孔の底部に表面側金属層92Aを露出させる。
【0043】
このように金属層と樹脂層(絶縁層18B、絶縁性シート11)を交互にエッチングを行うことによって、第2の裏面側金属層92B、絶縁層18B、第1の裏面側金属層92C、絶縁性シート11の各々に互いに連通する厚み方向に伸びる貫通孔を形成する。
【0044】
さらに積層体90Cの裏面に、形成すべき電極構造体95の短絡部98および表面電極部96に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成する。
次いで、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを電極としてメッキ処理することにより、図32(c)に示すように、電極構造体形成用凹所90Kに金属を充填して表面電極部96および短絡部98を形成する。
【0045】
その後、この積層体90Cにおける表面側金属層92Aを除去すると共に、絶縁性シート11をエッチング処理して絶縁性シート11を除去して第1の裏面側金属層92Cを露出させる(図32(d))。
【0046】
そして、第1の裏面側金属層92Cをエッチング処理して保持部92Dを形成するとともに、第2の裏面側金属層92Bをエッチング処理してその一部を除去することにより、裏面電極部97および支持部92Eを形成し、図32(e)に示したようにシート状プローブ90が得られる。
【0047】
しかし、この製造方法により得られるシート状プローブにおいては、積層体90Cの裏面に、形成すべき電極構造体の短絡部および表面電極部に適合するテーパ状の形態を有する電極構造体形成用凹所90Kを形成するので、電極構造体形成用凹所の先端径92Tは積層体90Cの裏面に形成した開口部92Hの径より小さなものとなる。
【0048】
そして、特許文献7のシート状プローブの作製工程では、ポリイミド等の絶縁層に対し
て電極構造体を形成するための貫通孔を形成している。
この貫通孔は、図33に示したように、第2の裏面側金属層92Bの片面に、貫通孔を形成する部分に開口部92Hを有するフォトレジスト膜83のパターンを形成し、シート全体をエッチング液に浸漬してエッチングを行うことにより、ポリイミドから構成される絶縁層18B、絶縁性シート11に貫通孔を形成することにより得ることができる。
【0049】
この方法では、絶縁性シート11に積層された表面側金属層92Aが底面に露出した貫通孔81aが形成され、この表面側金属層92Aを共通電極として電解メッキを行う工程を経て、電極構造体が形成される。
【0050】
しかし、ポリイミドから構成される絶縁層18B、絶縁性シート11に対してエッチングにより貫通孔を形成する場合、図33に示したように貫通孔81aはテーパ状となり、奥に行くほどその径が次第に小さくなる。
【0051】
このため、膜厚の厚いポリイミド膜を用いると、表面側金属層92Aまで到達する前に孔が閉じてしまい、貫通孔81aが形成できない。
すなわち、従来のように、電極構造体を形成するための貫通孔を、ポリイミドの絶縁層にエッチング加工により形成しようとすると、フォトレジスト膜83により表面が覆われた絶縁層18Bの膜厚t1と絶縁性シート11の膜厚t2が厚くなると、表面側金属層92Aまでの間に貫通孔81aが形成されないという問題があった。
【0052】
すなわち、エッチング処理でのエッチング処理角度θは、加工条件により異なるとされているが、一般的に45°〜55°と言われている。
このため絶縁層18Bと絶縁性シート11の膜厚t1とt2の合計の膜厚は、開口径φ1の1/2程度以下でなければ、絶縁層に確実に貫通孔81aを開けることができない。
【0053】
そのため、確実に貫通孔81aを形成するためには、絶縁層18Bの膜厚t1、または絶縁性シート11の膜厚t2を小さくする必要があり、そのため突起高さの大きい表面電極部を形成することが困難な場合があった。
【0054】
被検査対象であるウエハの電極ピッチの狭小化に伴いシート状プローブの電極構造体の配置ピッチも短くなり、現状では通常100〜120μmであるが、将来的には例えば100μm未満、さらには80μm以下まで短くする必要があると考えられる。
【0055】
一方で、隣接する電極構造体間の絶縁性を確保するためには、これらの間の絶縁部の幅(電極構造体の配置ピッチと開口径φ1との差)として、例えば40〜50μmが必要とされる。
【0056】
ポリイミド膜の強度を確保するために幅の大きなポリイミド膜を使用する場合、エッチングにより貫通孔を形成するためには、上記したように開口径φ1を大きくする必要があるが、電極構造体の配置ピッチを一定として開口径φ1を大きくしていくと、隣接する電極構造体間の絶縁性が確保できなくなる。
【0057】
このため、電極構造体の配置ピッチを小さくすると、ポリイミド膜の膜厚が制限され、例えば電極構造体の配置ピッチを120μm、貫通孔81aの開口径φ1を70μmとする場合、使用するポリイミド膜の膜厚tを35μm以下とする必要があり、底面側の開口径φ2をある程度以上とするためには膜厚tをさらに小さくしなければならない。
【0058】
また、仮にポリイミド膜の強度を上げるため50μm厚のポリイミド膜を使用したいとすると、貫通孔81aの開口径φ1を100μm以上にしなければならず、製造される電
極構造体の隣接するポリイミド膜間の絶縁性の確立が困難となるため、ポリイミド膜の膜厚にあわせて、開口径φ1を大きくすることは不可能である。
【0059】
図33のようなテーパ状の貫通孔81aに電極構造体を形成した場合、エッチング方向奥側の開口径φ2が小さいと電気抵抗値が増加するため、この小径部分の開口径φ2はできるだけ大きいことが望ましい。
【0060】
さらに、この小径部分の開口径φ2が小さいと、この小径部分が電気抵抗値へ影響するため、シート状プローブに設けられた各電極構造体間での電気的抵抗値のバラツキが大きくなることも懸念される。
【0061】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、
本発明の目的は、径が小さい表面電極部を有する電極構造体を形成することが可能で、160μm以下、更に120μm以下、特に100μm以下の小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、電極構造体が絶縁層から脱落することがなくて高い耐久性が得られるシート状プローブを提供することにある。
【0062】
本発明の目的は、絶縁層の厚みが大きく、径が小さい表面電極部を有する電極構造体を備えた、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、高い耐久性を有するシート状プローブを提供することにある。
【0063】
本発明の目的は、突出高さのバラツキが小さい表面電極部を有する電極構造体を形成することができ、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、電極構造体が絶縁層から脱落することのなくて高い耐久性が得られるシート状プローブを提供することにある。
【0064】
また、本発明は、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハや被検査電極のピッチが100μm以下の極めて小さい回路装置であっても、バーンイン試験において、温度変化による電極構造体と被検査電極との位置ずれを確実に防止し、これにより良好な電気的接続状態を安定に維持することができるシート状プローブを提供することを目的としている。
【0065】
本発明の目的は、厚みの大きい絶縁層よりなるシート状プローブにおいて表面電極部の先端径や基端径を所望の径に調整できるシート状プローブを提供することにある。
【0066】
本発明の目的は、上記のシート状プローブを備えたプローブカードを提供することにある。
本発明の目的は、上記のプローブカードを備えた回路装置の検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0067】
本発明のシート状プローブは、
絶縁層と、
この絶縁層にその面方向に互いに離間して配置された、前記絶縁層の厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体を備えた接点膜を有するシート状プローブであって、
前記電極構造体の各々は、
前記絶縁層の表面に露出し、前記絶縁層の表面から突出し、その基端から先端に向かうに従って小径となる形状の表面電極部と、
前記絶縁層の裏面に露出する裏面電極部と、
前記表面電極部の基端から連続して前記絶縁層をその厚み方向に貫通して伸び、前記裏面電極部に連結された短絡部とよりなり、
前記表面電極部の基端の径が、前記短絡部の表面電極部と接する側の端の径よりも大きいことを特徴とする。
【0068】
本発明のシート状プローブは、
前記表面電極部は先端部分と基端部分とにより形成され、前記先端部分の側面の傾斜角と基端部分の側面の傾斜角度が異なることを特徴とする。
【0069】
本発明のシート状プローブは、
前記表面電極部の先端部分と基端部分が異なる金属により形成されていることを特徴とする。
【0070】
本発明のプローブカードは、
検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、
この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、
この異方導電性コネクター上に配置された上記のいずれかに記載のシート状プローブと、 を備えてなることを特徴とする。
【0071】
本発明のプローブカードは、
検査対象である回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハであり、
異方導電性コネクターは、
検査対象であるウエハに形成された全ての集積回路または一部の集積回路における被検査電極が配置された電極領域に対応して複数の開口が形成されたフレーム板と、
このフレーム板の各開口を塞ぐよう配置された異方導電性シートと、
を有してなることを特徴とする。
【0072】
本発明の回路装置の検査装置は、
上記のプローブカードを備えてなることを特徴とする。
本発明のウエハ検査方法は、
複数の集積回路が形成されたウエハの各集積回路を、
上記のいずれかに記載のプローブカードを介してテスターに電気的に接続し、
前記各集積回路の電気検査を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0073】
本発明のシート状プローブによれば、電極構造体の表面電極部の基端の径が、短絡部の表面電極部と接する側の端の径よりも大きい構造となっているため、表面電極部の径が小さいものであっても、電極構造体が絶縁層から脱落することがなくて高い耐久性が得られる。
【0074】
本発明のシート状プローブによれば、電極構造体の表面電極部は、先端部分と基端部分とにより形成され、前記先端部分と基端部分の側面の傾斜角度が異なるため、先端部分の側面の傾斜角度を大きくすることにより先端部分の突出高さを大きくしつつその先端の径を適度な大きくすることができ、基端部分の側面の傾斜角度を小さくすることにより基端部分の絶縁層との接触部分の径すなわち基端の径を大きくすることができる。
【0075】
これにより表面電極部の基端の径が、短絡部の表面電極部と接する側の端の径よりも大
きい構造を容易に形成できるとともに、表面電極部の突出高さが大きいものとなるため、シート状プローブは表面電極部の径が小さいものであっても、電極構造体が絶縁層から脱落することがなくて高い耐久性が得られる。
【0076】
そして、表面電極部の径が小さく突出高さが大きいので、例えば被検査物の被検査電極の周囲が厚い保護膜で覆われて被検査電極が接触しにくい構造のものであっても、電気的な接続が容易に行われる。
【0077】
本発明のシート状プローブによれば、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハで、被検査電極のピッチが120μm以下の小さい回路装置であっても、表面電極部の先端の径を適度な大きさで突出高さの大きく、表面電極部の径が短絡部の径より大きくても隣接する電極構造体間の絶縁性が確保され、そして絶縁層の厚みの大きいものとなるので、電極構造体が絶縁層から脱落することがなく、絶縁層の強度が大きいので高い耐久性が得られる。
【0078】
本発明のシート状プローブによれば、絶縁層が開口径の1/2以上の厚さであっても開口径を広げる必要がなく、さらに、開口径を広げることができない場合においても電極構造体の裏面電極形成用金属シート部材上に立設するように短絡部を形成し、この高さを絶縁層の開口径の1/2以上の高さに設定することにより、エッチング処理をする必要の有る厚さを、絶縁層の1/2以下の厚さとすることにより、良好な電気的接続状態を安定に維持することができるシート状プローブを提供することができる。
【0079】
本発明のプローブカードによれば、上記のシート状プローブを具えてなるため、小さいピッチで電極が形成された回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、シート状プローブにおける電極構造体が脱落することがなく、検査対象が、直径が8インチ以上の大面積のウエハで、被検査電極のピッチが極めて小さく、絶縁層により周囲を囲まれた接触しにくい被検査電極を有する回路装置であっても、良好な電気的接続状態を安定に維持することができるので、高い耐久性が得られる。
【0080】
本発明の回路装置の検査装置によれば、上記のプローブカードを備えてなるため、小さいピッチで被検査電極が形成され、被検査電極が絶縁層により周囲を囲まれた回路装置に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、多数の回路装置の検査を行う場合でも、長期間にわたって信頼性の高い検査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0081】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<シート状プローブ>
図1は、本発明のシート状プローブの他の実施形態を示した図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はX−X線による断面図、図2は、図1のシート状プローブにおける接点膜を拡大して示した平面図、図3は、本発明に係るシート状プローブにおける構造を示す説明用断面図、図4は、本発明に係るシート状プローブの電極構造体を拡大して示す説明用断面図である。
【0082】
本実施形態のシート状プローブ10は、複数の集積回路が形成された8インチなどのウエハについて、各集積回路の電気検査をウエハの状態で行うために用いられる。
このシート状プローブ10は、図1(a)に示したように、被検査対象であるウエハ上の各集積回路に対応する各位置に貫通孔が形成された支持体25を有し、この貫通孔内には接点膜9が配置されている。
【0083】
接点膜9は、支持体25の貫通孔周辺の支持部27で、支持体25に支持されている。
この支持部27は、図1(b)に示したように支持体25の上に絶縁膜からなる接点膜9が形成され、この支持体25によって接点膜9が支持されている。
【0084】
接点膜9は、図2に示したように、柔軟な絶縁層18Bに電極構造体15が貫通形成された構造になっている。
また、図3に示したシート状プローブ10は、回路装置の電気的検査を行うためのプローブに用いられるものであって、柔軟な絶縁層18Bと支持体25を有し、この絶縁層18Bには、前記絶縁層18Bの厚み方向に伸びる金属よりなる複数の電極構造体15が、検査対象である回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、前記絶縁層18Bの面方向に互いに離間して配置されている。
【0085】
電極構造体15の各々は、絶縁層18Bの表面に露出し、前記絶縁層18Bの表面から突出する突起状の表面電極部16と、絶縁層18Bの裏面に露出する矩形の平板状の裏面電極部17と、表面電極部16の基端から連続して前記絶縁層18Bをその厚み方向に貫通して伸びて裏面電極部17に連結された短絡部18とにより構成されている。
【0086】
この例の電極構造体15においては、図4に示したように表面電極部16は、短絡部18に連続して絶縁層18Bに接する基端から先端に向かうに従って小径となる円錐台状の基端部16Cと、この基端部16Cに連続して先端に向かうに従って小径となる円錐台状の先端部16Bとにより構成されている。
【0087】
そして、表面電極部16の基端に連続する短絡部18が、絶縁層18Bの他面から一面に向かうに従って小径となるテーパ状とされており、表面電極部16の基端部16Cの基端の径R6が、基端に連続する短絡部18の一端の径R2より大きくなっている。
【0088】
また、表面電極部16の基端部16Cは、絶縁層18Bに接する基端から先端に向かうに従って小径となり、その側面の傾斜角度cとする。
そして、表面電極部の先端部16Bは基端部16Cに連続し、先端に向かうに従って小径となり、その側面の傾斜角度bとする。
【0089】
この基端部16Cの側面の傾斜角度cと、先端部16Bの傾斜角度bとは、角度が異なっており、本実施例においては先端部16Bの側面の傾斜角度bは、基端部16Cの側面の傾斜角度cより小さくなっている。
【0090】
また、絶縁層18Bとしては、絶縁性を有する柔軟なものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエステルなどを用いることができるが、短絡部18を形成するための貫通孔をエッチングにより容易に形成することができる点で、エッチング可能な材料よりなることが好ましく、特にポリイミドが好ましい。
【0091】
また、絶縁層18Bの厚みdは、前記絶縁層18Bが柔軟なものであれば特に限定されないが、5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。
さらに、支持体25は絶縁層18Bと一体的に設けられるもので、絶縁層18Bと積層された状態で絶縁性シートの表面に設けられてもよく、絶縁性シートに中間層として含まれてもよい。
【0092】
そして支持体25は、電極構造体15とは離間して配置され、電極構造体15と支持体25は絶縁性シート11により連結されるので、電極構造体15と支持体25は電気的には絶縁されている。
【0093】
また、後述するシート状プローブの製造方法によれば、支持体25は第2の裏面側金属
層17Aの一部を除去することにより形成されるものである。
支持体25を構成する金属としては、鉄、銅、ニッケル、チタンまたはこれらの合金若しくは合金鋼を用いることができるが、エッチング処理によって容易に開口部を形成できる点で、42合金、インバー、コバールなどの鉄−ニッケル合金鋼や銅、ニッケルおよびこれらの合金が好ましい。
【0094】
また、支持体25としては、その線熱膨張係数が3×0-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは−1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは−1×10-6〜8×10-6/Kである。
【0095】
このような支持体25を構成する材料の具体例としては、インバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、スーパーインバー、コバール、42合金などの合金または合金鋼が挙げられる。
【0096】
支持体25の厚みは、3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜50μmである。
この厚みが過小である場合には、シート状プローブを支持する支持体として必要な強度が得られないことがある。
【0097】
一方、この厚みが過大である場合には、支持体を絶縁層の内部に有する構造とする場合に絶縁層の厚みも大きいものとなり、その結果、絶縁層の貫通孔の形成が困難となることがある。
【0098】
また、絶縁性シートをエッチングなどにより、図5(a)、(b)示したように、多数の接点膜9に分離して支持体25に支持させてもよい。
この場合、支持体25の各々の開口部26に電極構造体15を保持する柔軟な接点膜9が互いに独立した状態(図5(a))、部分的に独立した状態(図5(b))で配置される。
【0099】
接点膜9の各々は、図5(a)、(b)に示すように、柔軟な絶縁層18Bを有し、この絶縁層18Bには、当絶縁層18Bの厚み方向に伸びる金属よりなる複数の電極構造体15が、検査対象であるウエハの電極領域における被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、絶縁層18Bの面方向に互いに離間して配置されており、接点膜9は、支持体25の開口部内に位置するよう配置されている。
【0100】
電極構造体15を構成する金属としては、ニッケル、銅、金、銀、パラジウム、鉄などを用いることができ、電極構造体15としては、全体が単一の金属よりなるものであっても、2種以上の金属の合金よりなるものまたは2種以上の金属が積層されてなるものであってもよく、表面電極部16と短絡部18が異なる金属により構成されてもよい。
【0101】
そして、表面電極部の先端部16Bと基端部16Cが異なる金属により構成されてもよい。
先端部16Bを構成する金属を、耐拡散性金属であるロジウム、パラジウム、銀、タングステン、白金およびこれらを含有する合金とすることで、被検査電極が例えば易拡散性金属のスズなどにより構成されている場合に、電極構造体に対する前記易拡散性金属による金属拡散を確実に抑止することができ、これにより、長期間にわたって高い接触信頼性を保持することができる。
【0102】
先端部16Bにビッカース硬度(Hv)が40以上の高導電性金属を用いることで、繰り返し検査使用時における電極構造体の表面電極部の変形を抑制することができ、これに
より、長期間にわたって高い接触信頼性を保持することができる。
【0103】
ビッカース硬度(Hv)が40以上の高導電性金属としては、パラジュウム、ロジウム、ルテニウム、イリジュウム、白金、タングステン、ニッケル、コバルト、クロムまたはこれらの合金などを用いることができ、これらの中では、化学的に安定でかつ高い導電率を有する点でパラジュウム、ロジウム、ルテニウム、イリジュウム、白金を用いるが好ましい。
【0104】
また、ビッカース硬度(Hv)が40以上の金属と金との合金としては、金・パラジュウム合金、金・銅合金、白金・金合金、ニッケルやコバルトを0.1〜1.0%含有する硬質金などを用いることができ、これらの中では、化学的に安定でかつ高い導電率を有する点で、金・パラジュウム合金、ニッケルやコバルトを0.1〜1.0%含有する硬質金を用いることが好ましい。
【0105】
電極構造体15において、表面電極部16の基端における径R1に対する先端における径R2の比(R2/R1)は、0.11〜1であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.9である。
【0106】
電極構造体15の配置ピッチは、接続すべき回路装置の被検査電極のピッチと同一のものとされるが、40〜160μmピッチであることが好ましく、40〜120μmであることがより好ましく、特に40〜100μmでることが好ましい。
【0107】
このような条件を満足することにより接続すべき回路装置は、ピッチが120μm以下の小さくて微小な電極を有するものや、ピッチが100μm以下の極めて小さい微小な電極を有するものであっても、回路装置に対して安定な電気的接続状態が確実に得られる。
【0108】
また、表面電極部の基端部16Cの基端の径R6は、電極構造体15のピッチの30〜70%であることが好ましく、より好ましくは35〜60%である。
また、表面電極部の基端部16Cの基端の径R6に対する突出高さh(H1+H2)の比h/R6は、0.4〜1.5であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2である。
【0109】
このような条件を満足することにより接続すべき回路装置は、ピッチが120μm以下の小さくて微小な電極を有するものや、ピッチが100μm以下の極めて小さい微小な電極を有するものであっても、電極のパターンに対応するパターンの電極構造体15を容易に形成することができ、回路装置に対して安定な電気的接続状態が一層確実に得られる。
【0110】
表面電極部の先端部16Bの径R2は、上記の条件や接続すべき電極の直径などを勘案して設定されるが、例えば5〜80μmであり、好ましくは20〜60μmである。
表面電極部16の突出高さh(H1+H2)の高さは、接続すべき電極に対して安定な電気的接続を達成することができる点で、15〜80μmであることが好ましく、より好ましくは20〜60μmである。
【0111】
表面電極部の基端部16Cの突出高さH2は、表面電極部が接続すべき電極に対して安定な電気的接続を達成することができる点、および電極構造体15が絶縁層18Bからの脱落を防止できる点で、4〜30μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
【0112】
表面電極部の先端部16Bの突出高さH1は、表面電極部が接続すべき電極に対して安定な電気的接続を達成することができる点、および表面電極部の先端の強度を保持し、繰
り返し使用時の変形を抑制できる点で、10〜50μmであることが好ましく、より好ましくは15〜40μmである。
【0113】
表面電極部の基端部16Cの側面の傾斜角度cは、30°〜60°が好ましく、より好ましくは40°〜55°である。
この角度は、例えばポリイミド層にエッチング液を用いてエッチング孔を形成し、これに金属をメッキなどの手段で充填することにより容易に形成することができる。
【0114】
表面電極部の先端部16Bの側面の傾斜角度bは、70°〜90°が好ましく、より好ましくは80°〜85°である。
この角度は、例えばポリイミド層にレーザー加工を行って貫通孔を形成したり、あるいはレジスト層に露光を行ってパターン孔を形成し、これに金属をメッキなどの手段で充填することにより容易に達成することができる。
【0115】
また、裏面電極部17の外径R5は、裏面電極部17に連結された短絡部18の絶縁層18Bの裏面側の径R4より大きく、かつ、電極構造体15のピッチより小さいものであればよいが、可能な限り大きいものであることが好ましく、これにより、例えば異方導電性シートに対しても安定な電気的接続を確実に達成することができる。
【0116】
また、裏面電極部17の厚みd2は、強度が十分に高くて優れた繰り返し耐久性が得られる点で、10〜80μmであることが好ましく、より好ましくは12〜60μmである。
【0117】
また、短絡部18の絶縁層18Bの裏面側の径R4に対する絶縁層18Bの表面側の径R3の比R3/R4は、0.2〜1であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.9である。
【0118】
また、短絡部18の絶縁層18Bの表面側の径R3は、電極構造体15のピッチの10〜50%であることが好ましく、より好ましくは15〜45%である。
また、本発明のシート状プローブ10においては、図6(a)に示したように、支持体25によって絶縁層18Bを支持する構造の他、図6(b)に示したように絶縁層18B中に多孔膜24を有する構造も可能である。
【0119】
なお、図6(b)に示したシート状プローブ10の構造は、図7に示した通りである。
図7に示した本発明のシート状プローブ10の製造方法については、絶縁層18Bを支持体25で支持するか、多孔膜24で支持するかの違い以外は、基本的に同じ構成である。
【0120】
また、図7に示した、絶縁層18Bを多孔膜24で支持するタイプのシート状プローブの多孔膜24としては、柔軟性を有する多孔膜、例えば有機繊維からなるメッシュもしくは不織布を用いることができる。
【0121】
メッシュもしくは不織布を形成する有機繊維としては、例えばアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、ナイロン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維などのフッ素樹脂繊維、ポリエステル繊維が挙げられる。
【0122】
合成繊維からなるメッシュでは、例えば繊維径が15〜100μm、メッシュ開口径が20〜200μmのものを使用できる。
また、ポリテトラフルオロエチレンからなる開口径が1〜5μm程度のメンブレンフィルターを用いてもよい。
【0123】
また、多孔膜24として金属からなるメッシュを用いてもよく、メッシュを形成する金属としては、例えばステンレス、アルミニウムが挙げられる。
また、多孔膜24を用いたシート状プローブ10は、接点膜9の支持部27が、多孔膜24と絶縁層18Bとが一体化した構造となっているので固定強度が高く、このシート状プローブ10を用いた検査装置による電気検査において高い繰り返し耐久性が得られる。
【0124】
このため、絶縁層18Bの支持方法については、製造コストなどを勘案して、適宜選択すると良い。
<シート状プローブの製造方法>
以下、シート状プローブ10の製造方法について説明する。
【0125】
まず、図8(a)に示したように、表面電極形成用金属シート16Aの保護フィルム40Aを設けていない側の表面にレジスト層22を形成する。
このレジスト層22に露光および現像により、表面電極の先端部16Bを形成するための所定位置に開口23を形成したパターンを得る(図8(b))。
【0126】
次に、表面電極形成用金属シート16Aを共通電極として電解メッキなどのメッキを行い、それぞれの開口23に金属を充填して表面電極の先端部16Bを形成する(図8(c))。
【0127】
そして、レジスト層22を除去して、表面電極部の先端部16Bが所定の位置に立設された表面電極形成用金属シート16Aを得た(図9(a))。
次に、表面電極部の先端部16Bが所定の位置に立設された表面電極形成用金属シート16Aの先端部16Bが形成された側の面に、先端部16Bをその開口内に位置するようにスペーサー39を積層する(図9(b))。
【0128】
ここでスペーサー39の厚みは、形成する表面電極部の厚みh、すなわち先端部分の16Bの厚みH2と基端部分の厚みH1との合計と同様の厚みのもので、先端部16Bの厚みより大きいものである。
【0129】
スペーサー39は、形成するべき電極構造体に対応する位置に開口を有するものであり、金属、樹脂などで形成され、後にシート状プローブより脱離させるために、表面が平坦でテフロン(登録商標)コーティングなどの被覆がされたものが好ましい。
【0130】
次に、スペーサー39の開口内部に液状の樹脂材料を塗布、硬化させて表面電極部の先端部16Bを覆うように樹脂層55を形成する(図9(c))。
樹脂層55を形成する樹脂材料としては、エッチングが容易であるポリイミドが好ましい。
【0131】
ポリイミドにより樹脂層55を形成する場合は、熱硬化性のポリイミド、感光性のポリイミド、ポリイミド前駆体を溶媒に希釈したポリイミドのワニス、溶液などを用いて樹脂層55を形成することが好ましい。
【0132】
樹脂層55の形成においては、液状の樹脂材料の塗布、硬化を複数回繰り返して行い、スペーサー39の開口内に樹脂層55を形成することにより、表面電極部の先端部16Bを覆うように樹脂層55を形成することが好ましい。
【0133】
また、形成した各々の樹脂層55は厚みにバラツキが生じることがあるので、樹脂層55を形成後に、スペーサー39の高さに合わせて、形成された樹脂層55を研磨、平坦化
することにより一様の厚みをもつ樹脂層55とすることが、高さの揃った電極構造体を形成するうえで好ましい。
【0134】
次いで、表面電極形成用金属シート16Aの樹脂層側の表面に、形成すべき電極構造体15における基端部16Cのパターンに対応するパターンに従って複数のパターン孔が形成されたエッチング用のレジスト膜28Aを形成する(図10(a))。
【0135】
エッチング用のレジスト膜28Aのパターン孔34Hの径は、形成する表面電極の基端部16Cの基端の径R6と同様のものとする。
そして、レジスト膜28Aのパターン孔34Hを介して、樹脂層55にエッチングを行って開口52を形成し、その底部に表面電極部の先端部16Bを露出させる(図10(b
))。
【0136】
樹脂層55をエッチング処理するためのエッチング液としては、アミン系エッチング液、ヒドラジン系水溶液や水酸化カリウム水溶液などを用いることができる。
さらに、エッチング処理条件を選択することにより、樹脂層55に、裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状の開口52を形成することができる。
【0137】
その後、レジスト膜28Aを除去する(図10(c))。
次いで、表面電極形成用金属シート16Aを共通電極として電解メッキ処理を施して、それぞれの開口52に金属を充填して表面電極の基端部16Cを形成する。
【0138】
こうして、先端部16Bおよび基端部16Cからなる表面電極部16が、表面電極形成用金属シート16Aに立設された積層体シートを得た。
これを積層体10Aとする(図11(a))。
【0139】
このようにして先端部16Bおよび基端部16Cからなる表面電極部16が形成された積層体10Aに、図11(b)に示すように表面電極部16を覆うように絶縁層18Bを形成し、この絶縁層18Bの表面に裏面側金属層17Aを形成し積層体10Bとする。
【0140】
また、絶縁層18Bを構成する材料としては、エッチング可能な高分子材料を用いることが好ましく、より好ましくはポリイミドである。
ポリイミドとしては、
(1)感光性ポリイミドの溶液、ポリイミド前駆体の溶液、ポリイミド前駆体や低分子のポリイミドを溶媒で希釈した液状ポリイミドまたはワニス
(2)熱可塑性ポリイミド
(3)ポリイミドフィルム
が用いられる。
【0141】
このうち、感光性ポリイミドの溶液、ポリイミド前駆体の溶液、ポリイミド前駆体や低分子のポリイミドを溶媒で希釈した液状ポリイミドまたはワニスは、粘性が低いため溶液塗布することができ、塗布後に硬化(重合)するので溶媒の蒸発、重合により体積収縮を伴うものである。
【0142】
このような感光性ポリイミドの溶液、ポリイミド前駆体の溶液、ポリイミド前駆体や低分子のポリイミドを溶媒で希釈した液状ポリイミドまたはワニスを用いる場合には、これらを積層体10Aに塗布して硬化することにより絶縁層18Aを形成することが好ましい。
【0143】
熱可塑性ポリイミドにおいては、溶媒に溶解させてポリイミド溶液として積層体10A
に塗布した後、溶媒を蒸発させて絶縁層18Bとすることや、熱可塑性ポリイミドのフィルムを積層体10Aに積層し加熱プレスすることにより積層体10Aに一体化させて絶縁層18Bとすることができる。
【0144】
ポリイミドフィルムは熱にも溶媒にも溶けず安定なため、このようなポリイミドフィルムを用いる場合には、ポリイミドフィルムに熱可塑性ポリイミドフィルムを介して積層体10Aに積層して加熱プレスして一体化する方法や、ポリイミドフィルムの表面に感光性ポリイミドの溶液、ポリイミド前駆体の溶液、ポリイミド前駆体や低分子のポリイミドを溶媒で希釈した液状ポリイミドまたはワニスにより半硬化状態のポリイミド層を形成した後に積層体10Aに積層して硬化して一体化する方法等により絶縁層18Bを形成することができる。
【0145】
また、片面に例えば42アロイよりなる金属層が積層された積層ポリイミドシートを、接着層を介して積層体10Aに積層することにより絶縁層18Bと裏面側金属層17Aを形成することもできる。
【0146】
裏面側金属層17Aは、形成すべき支持体25の厚みと同等の厚みを有するものとされる。
その後、図11(c)に示したように積層体10Bに対し、裏面側金属層17Aの表面に、形成すべき電極構造体15のパターンに対応するパターンに従って複数のパターン孔28Hが形成されたエッチング用のレジスト膜28Aを形成する。
【0147】
ここで、レジスト膜28Aを形成する材料としては、エッチング用のフォトレジストとして使用されている種々のものを用いることができる。
次いで、裏面側金属層17Aに対し、レジスト膜28Aのパターン孔28Hを介して露出した部分にエッチング処理を施して部分を除去することにより、図12(a)に示したように、裏面側金属層17Aに、それぞれレジスト膜28Aのパターン孔28Hに連通する複数のパターン孔17Hが形成される。
【0148】
その後、絶縁層18Bに対し、レジスト膜28Aの各パターン孔28Hおよび裏面側金属層17Aの各パターン孔17Hを介して露出した部分に、エッチング処理を施して絶縁層の一部を除去する。
【0149】
これにより、図12(b)に示したように、絶縁層18Bの裏面から表面に向かうに従って小径となり、底面に表面電極部16が露出したテーパ状の複数の貫通孔18Hが形成される。
【0150】
さらに、保護フィルム40Aを除去し、積層体10Bの裏面にそれぞれ裏面側金属層17Aのパターン孔17H、絶縁層18Bの貫通孔18Hが連通されてなる複数の短絡部形成用凹所18Kが形成される。
【0151】
以上において、裏面側金属層17Aをエッチング処理するためのエッチング剤としては、これらの金属層を構成する材料に応じて適宜選択される。
絶縁層18Bをエッチング処理するためのエッチング液としては、アミン系エッチング液、ヒドラジン系水溶液や水酸化カリウム水溶液などを用いることができ、エッチング処理条件を選択することにより、絶縁層18Bに裏面から表面に向かうに従って小径となるテーパ状の貫通孔18Hを形成することができる。
【0152】
このようにして短絡部形成用凹所18Kが形成された積層体10Bからレジスト膜28Aを除去する。
さらに図12(c)に示したように、積層体10Bの裏面側金属層17Aの表面に形成すべき電極構造体15における裏面電極部17のパターンに対応するパターンに従って、複数のパターン孔29Hが形成されたメッキ用のレジスト膜29Aを形成する。
【0153】
ここで、レジスト膜29Aを形成する材料としては、メッキ用のフォトレジストとして使用されている種々のものを用いることができるがドライフィルムレジストが好ましい。
そして、表面電極形成用金属シート16Aを保護フィルム40Cで覆う。
【0154】
次いで、積層体10Bに対し、表面電極形成用金属シート16Aを電極として、電解メッキ処理を施して各短絡部形成用凹所18Kおよびレジスト膜29Aの各パターン孔29H内に金属を充填する。
【0155】
このようにして図13(a)に示すように、表面電極部16の各々の基端に連続してその厚み方向に貫通して伸びる短絡部18および短絡部18の各々の絶縁層18Bの裏面側に連結された裏面電極部17が形成される。
【0156】
ここで、裏面電極部17の各々は、裏面側金属層17Aを介して互いに連結された状態である。
さらに、表面電極部16、短絡部18および裏面電極部17が形成された積層体10Bからレジスト膜29Aを除去する。
【0157】
その後に、図13(b)に示したように裏面側金属層17Aの、裏面電極部17と支持体25とする部分に、パターン孔29Kを有するパターニングされたエッチング用のレジスト膜29Bを形成する。
【0158】
ここで、レジスト膜29Bの材料としては、エッチング用のフォトレジストとして使用されている種々のものを用いることができる。
その後、表面電極形成用金属シート16Aの上に設けられた保護フィルム40Cを除去し、表面電極形成用金属シート16Aおよび裏面側金属層17Aにエッチング処理を施す。
【0159】
さらに、図13(c)に示したように、表面電極形成用金属シート16Aを除去すると共に、裏面側金属層17Aにおけるパターン孔29Kにより露出した部分を除去して開口部26を形成し、これにより、互いに分離した複数の裏面電極部17および支持体25が形成される。
【0160】
また、図14(a)に示したように、裏面側のエッチング用のレジスト膜29Bを除去した後、裏面電極部17、支持体25、開口部26を覆うように、レジスト膜17Eを形成する。
【0161】
ここで、レジスト膜17Eを形成する材料としては、エッチング用のフォトレジストとして使用されている種々のものを用いることができる。
そしてレジスト膜17Eの表面全体に保護フィルム40Bを積層する。
【0162】
次いで、樹脂層55に対してエッチング処理を施してその全部を除去し、図14(b)に示したように、表面電極部16、絶縁層18Bを露出した積層体10Cを得た。
その後、積層体10Cよりスペーサー39を除去した(図14(c))。
【0163】
次いで、図15(a)に示すように、支持体25の一部を露出させるため、レジスト膜17Fを積層体10Cの上面に形成する。
この状態で、絶縁層18Bをエッチング処理することにより、図15(b)に示したように、支持体25の一部が露出される。
【0164】
そして、絶縁層18Bの表面よりレジスト膜17Fを除去し、絶縁層18Bの裏面および裏面電極部17から、保護フィルム40Bおよびレジスト膜17Eを除去することにより、図15(c)に示したシート状プローブ10が得られる。
【0165】
このように、絶縁層18Bの表面に沿って外方に伸びる表面電極部16を確実に形成することにより、電極構造体15が絶縁層18Bの裏面から脱落することがなく高い耐久性を有するシート状プローブ10を製造することができる。
【0166】
また、本発明のシート状プローブ10の製造方法によれば、膜厚の大きい絶縁層18Bに対しても確実に表面電極部16に連通する短絡部形成用凹所18Kが形成でき、短絡部18の厚みの大きい電極構造体15を形成できる。
【0167】
そのため、厚みの大きな絶縁層18Bよりなるシート状プローブ10を確実に製造することができる。
さらに、積層体10Bを構成する裏面側金属層17Aをエッチング処理して、開口部26を形成することにより裏面側金属層17Aを分割分離して裏面電極部17と支持体25を形成するので、絶縁層18Bに一体化され、電極構造体15とは電気的に絶縁した金属よりなる支持体25を確実に製造することができる。
【0168】
また、上述した以外の方法でもシート状プローブ10を得ることができ、例えば、電極構造体15が配置される貫通孔を絶縁層18Bに形成した後、貫通孔の内面から絶縁層18Bの表面に渡り無電解メッキを施し、絶縁層18Bの片面もしくは両面に、貫通孔の位置にその径と同等もしくはこれよりも大きい径の開口パターンが形成されたレジスト膜を設けた状態で、スルーホールメッキを施して電極構造体15を形成することができる。
【0169】
この場合、表面電極部16もしくは裏面電極部17の突出高さはレジスト膜の高さなどで規定される。
<プローブカードおよび回路装置の検査装置>
図16は、本発明に係る回路装置の検査装置の一例における構成を示す説明用断面図であり、この回路装置の検査装置は、ウエハに形成された複数の集積回路の各々について、集積回路の電気的検査をウエハの状態で行うためのものである。
【0170】
また、このような回路装置の検査装置は、図16に示したように、シート状プローブ10が、絶縁層18Bを多孔膜24で支持するシート状プローブである場合には、多孔膜24の外縁部に支持板2が接着剤により接着された状態で使用される。
【0171】
この回路装置の検査装置は、被検査回路装置であるウエハ6の被検査電極7の各々とテスターとの電気的接続を行うプローブカード1(絶縁層18Bを支持体25で支持するシート状プローブ)を有する。
【0172】
このプローブカード1においては、図18にも拡大して示すように、ウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って複数の検査電極21が表面(図において下面)に形成された検査用回路基板20を有している。
【0173】
さらに、この検査用回路基板20の表面には、異方導電性コネクター30が配置され、この異方導電性コネクター30の表面(図において下面)には、ウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って複数の電極構
造体15が配置された、図1に示す構成のシート状プローブ10が配置されている。
【0174】
そして、シート状プローブ10はガイドピン50により異方導電性コネクター30と、電極構造体15と導電部36が一致するように固定された状態で保持されている。
また、プローブカード1における検査用回路基板20の裏面(図において上面)には、プローブカード1を下方に加圧する加圧板3が設けられ、プローブカード1の下方には、ウエハ6が載置されるウエハ載置台4が設けられており、加圧板3およびウエハ載置台4の各々には、加熱器5が接続されている。
【0175】
さらに、このような回路装置の検査装置は、分解すると図17(a)、図17(b)に示したような構成であり、異方導電性コネクター30のフレーム板31に形成された貫通孔と、ガイドピン50とが嵌合することによって、位置決めを行っている。
【0176】
また、シート状プローブ10は、多孔膜24の外縁部に接着した支持板2と、加圧板3の凹部とが嵌合することによって、位置決めを行うことができるようになっている。
さらに、検査用回路基板20を構成する基板材料としては、従来公知の種々の基板材料を用いることができ、その具体例としては、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型フェノール樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂、ガラス繊維補強型ビスマレイミドトリアジン樹脂などの複合樹脂材料、ガラス、二酸化珪素、アルミナなどのセラミックス材料などが挙げられる。
【0177】
また、WLBI試験を行うための検査装置を構成する場合には、線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは1×10-6〜6×10-6/Kである。
【0178】
このような基板材料の具体例としては、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、アルミナ、ベリリア、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。
異方導電性コネクター30は、図19に示すように、被検査回路装置であるウエハ6に形成された全ての集積回路における被検査電極7が配置された電極領域に対応して複数の開口32が形成されたフレーム板31と、このフレーム板31に、それぞれ一の開口32を塞ぐよう配置され、フレーム板31の開口縁部に固定されて支持された複数の異方導電性シート35とにより構成されている。
【0179】
フレーム板31を構成する材料としては、フレーム板31が容易に変形せず、その形状が安定に維持される程度の剛性を有するものであれば特に限定されず、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料などの種々の材料を用いることができ、フレーム板31を例えば金属材料により構成する場合には、フレーム板31の表面に絶縁性被膜が形成されていてもよい。
【0180】
フレーム板31を構成する金属材料の具体例としては、鉄、銅、ニッケル、チタン、アルミニウムなどの金属またはこれらを2種以上組み合わせた合金若しくは合金鋼などが挙げられる。
【0181】
フレーム板31を構成する樹脂材料の具体例としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、この検査装置がWLBI(Wafer Level Burn−in)試験を行うためのものである場合には、フレーム板31を構成する材料としては、線熱膨張係数が3×10-5/K以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは−1×10-7〜1×10-5/K、特に好ましくは1×10-6〜8×10-6/Kである。
【0182】
このような材料の具体例としては、インバーなどのインバー型合金、エリンバーなどのエリンバー型合金、スーパーインバー、コバール、42アロイなどの磁性金属の合金または合金鋼などが挙げられる。
【0183】
フレーム板31の厚みは、その形状が維持されると共に、異方導電性シート35を支持することが可能であれば、特に限定されるものではなく、具体的な厚みは材質によって異なるが、例えば25〜600μmであることが好ましく、より好ましくは40〜400μmである。
【0184】
異方導電性シート35の各々は、弾性高分子物質によって形成されており、被検査回路装置であるウエハ6に形成された一の電極領域の被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って形成された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電部36と、これらの導電部36の各々を相互に絶縁する絶縁部37とにより構成されている。
【0185】
また、図示の例では、異方導電性シート35の両面には、導電部36およびその周辺部分が位置する個所に、それ以外の表面から突出する突出部38が形成されている。
異方導電性シート35における導電部36の各々には、磁性を示す導電性粒子Pが厚み方向に並ぶよう配向した状態で密に含有されている。
【0186】
これに対して、絶縁部37は、導電性粒子Pが全く或いは殆ど含有されていないものである。
異方導電性シート35の全厚(図示の例では導電部36における厚み)は、50〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは70〜1000μm、特に好ましくは80〜500μmである。
【0187】
この厚みが50μm以上であれば、異方導電性シート35には十分な強度が得られる。
一方、この厚みが2000μm以下であれば、所要の導電性特性を有する導電部36が確実に得られる。
【0188】
突出部38の突出高さは、その合計が突出部38における厚みの10%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上である。
このような突出高さを有する突出部38を形成することにより、小さい加圧力で導電部36が十分に圧縮されるため、良好な導電性が確実に得られる。
【0189】
また、突出部38の突出高さは、突出部38の最短幅または直径の100%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以下である。
このような突出高さを有する突出部38を形成することにより、突出部38が加圧されたときに座屈することがないため、所期の導電性が確実に得られる。
【0190】
異方導電性シート35を形成する弾性高分子物質としては、架橋構造を有する耐熱性の高分子物質が好ましい。
かかる架橋高分子物質を得るために用いることができる硬化性の高分子物質形成材料としては、種々のものを用いることができるが、液状シリコンゴムが好ましい。
【0191】
導電性粒子Pを得るための磁性芯粒子は、その数平均粒子径が3〜40μmのものであることが好ましい。
ここで、磁性芯粒子の数平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定されたものをいう。
【0192】
上記数平均粒子径が3μm以上であれば、加圧変形が容易で、抵抗値が低くて接続信頼
性の高い導電部36が得られやすい。
一方、上記数平均粒子径が40μm以下であれば、微細な導電部36を容易に形成することができ、また、得られる導電部36は、安定な導電性を有するものとなりやすい。
【0193】
磁性芯粒子を構成する材料としては、鉄、ニッケル、コバルト、これらの金属を銅、樹脂によってコーティングしたものなどを用いことができるが、その飽和磁化が0.1Wb/m2以上のものを好ましく用いることができ、より好ましくは0.3Wb/m2以上、特に好ましくは0.5Wb/m2以上のものであり、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト
またはそれらの合金などが挙げられる。
【0194】
磁性芯粒子の表面に被覆される高導電性金属としては、金、銀、ロジウム、白金、クロムなどを用いることができ、これらの中では、化学的に安定でかつ高い導電率を有する点で金を用いるが好ましい。
【0195】
導電性粒子Pは、芯粒子に対する高導電性金属の割合〔(高導電性金属の質量/芯粒子の質量)×100〕が15質量%以上とされ、好ましくは25〜35質量%とされる。
高導電性金属の割合が15質量%未満である場合には、得られる異方導電性コネクター30を高温環境下に繰り返し使用したとき、導電性粒子Pの導電性が著しく低下する結果、所要の導電性を維持することができない。
【0196】
また、導電性粒子Pの数平均粒子径は、3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは6〜25μmである。
このような導電性粒子Pを用いることにより、得られる異方導電性シート35は、加圧変形が容易なものとなり、また、導電部36において導電性粒子P間に十分な電気的接触が得られる。
【0197】
また、導電性粒子Pの形状は、特に限定されるものではないが、高分子物質形成材料中に容易に分散させることができる点で、球状のもの、星形状のものあるいはこれらが凝集した2次粒子による塊状のものであることが好ましい。
【0198】
導電部36における導電性粒子Pの含有割合は、体積分率で10〜60%、好ましくは15〜50%となる割合で用いられることが好ましい。
この割合が10%未満の場合には、十分に電気抵抗値の小さい導電部36が得られないことがある。
【0199】
一方、この割合が60%を超える場合には、得られる導電部36は脆弱なものとなりやすく、導電部36として必要な弾性が得られないことがある。
以上のような異方導電性コネクター30は、例えば特開2002−324600号公報に記載された方法によって製造することができる。
【0200】
上記の検査装置においては、ウエハ載置台4上に検査対象であるウエハ6が載置され、次いで、加圧板3によってプローブカード1が下方に加圧されることにより、そのシート状プローブ10の電極構造体15における表面電極部16の各々が、ウエハ6の被検査電極7の各々に接触し、更に、表面電極部16の各々によって、ウエハ6の被検査電極7の各々が加圧される。
【0201】
この状態においては、異方導電性コネクター30の異方導電性シート35における導電部36の各々は、検査用回路基板20の検査電極21とシート状プローブ10の電極構造体15の裏面電極部17とによって挟圧されて厚み方向に圧縮されている。
【0202】
このため、導電部36にはその厚み方向に導電路が形成され、その結果、ウエハ6の被検査電極7と検査用回路基板20の検査電極21との電気的接続が達成される。
その後、加熱器5によって、ウエハ載置台4および加圧板3を介してウエハ6が所定の温度に加熱され、この状態で、ウエハ6における複数の集積回路の各々について所要の電気的検査が実行される。
【0203】
上記のプローブカード1によれば、図1に示すシート状プローブ10を備えてなるため、小さいピッチで被検査電極7が形成されたウエハ6に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、シート状プローブ10における電極構造体15が脱落することがなく、絶縁層18Bの厚みが大きいため高い耐久性が得られる。
【0204】
そして、上記の検査装置によれば、図1に示すシート状プローブ10を有するプローブカード1を備えてなるため、小さいピッチで被検査電極7が形成されたウエハ6に対しても安定な電気的接続状態を確実に達成することができ、しかも、プローブカード1が高い耐久性を有するため、多数のウエハ6の検査を行う場合でも、長期間にわたって信頼性の高い検査を実行することができる。
【0205】
本発明の回路装置の検査装置は、上記の例に限定されず、以下のように、種々の変更を加えることが可能である。
(1)図16に示すプローブカード1は、ウエハ6に形成された全ての集積回路の被検査電極7に対して一括して電気的接続を達成するものであるが、ウエハ6に形成された全ての集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に電気的に接続されるものであってもよい。
【0206】
選択される集積回路の数は、ウエハ6のサイズ、ウエハ6に形成された集積回路の数、各集積回路における被検査電極7の数などを考慮して適宜選択され、例えば16個、32個、64個、128個である。
【0207】
このようなプローブカード1を有する検査装置においては、ウエハ6に形成された全ての集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に、プローブカード1を電気的に接続して検査を行い、その後、他の集積回路の中から選択された複数の集積回路の被検査電極7に、プローブカード1を電気的に接続して検査を行う工程を繰り返すことにより、ウエハ6に形成された全ての集積回路の電気的検査を行うことができる。
【0208】
そして、このような検査装置によれば、直径が8インチまたは12インチのウエハ6に高い集積度で形成された集積回路について電気的検査を行う場合において、全ての集積回路について一括して検査を行う方法と比較して、用いられる検査用回路基板20の検査電極数や配線数を少なくすることができ、これにより、検査装置の製造コストの低減化を図ることができる。
(2)異方導電性コネクター30における異方導電性シート35には、被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って形成された導電部36の他に、被検査電極7に電気的に接続されない非接続用の導電部36が形成されていてもよい。
(3)本発明の検査装置の検査対象である回路装置は、多数の集積回路が形成されたウエハ6に限定されるものではなく、半導体チップや、BGA、CSPなどのパッケージLSI、CMCなどの半導体集積回路装置などに形成された回路の検査装置として構成することができる。
(4)シート状プローブ10は円筒形のセラミックなどの保持体により保持された状態にて、異方導電性シート35や検査用回路基板20と、例えばガイドピン50などにて固定一体化することもできる。
(5)本発明のシート状プローブ10の製造方法において第2の裏面側金属層17Aは必
須のものでなく、これを省略し短絡部形成用凹所18Kとパターン孔17Hに金属を充填することにより短絡部18と一体化した裏面電極部17を形成してもよい。
【0209】
この場合、支持体25は、別途用意した支持体25と製造したシート状プローブ10に接着剤などを用いて積層して、一体化してもよい。
(6)本発明のシート状プローブ10においては、例えば図5(a)に示すような電極構造体15を有する絶縁層18Bよりなる複数の接点膜9が、支持体25の開口部26の各々に配置し支持体25により支持された状態のシート状プローブ10であってもよく、更に図5(b)に示すように一つの接点膜9が支持体25の複数の開口部26を覆うように配置されたものであってもよい。
【0210】
このように独立する複数の接点膜9によりシート状プローブ10を構成することにより、例えば直径8インチ以上のウエハ検査用のシート状プローブ10を構成した場合、温度変化による接点膜9の伸縮が小さくなり電極構造体15の位置ずれが小さくなり好ましい。
【0211】
このようなシート状プローブは本発明のシート状プローブ10の製造方法における図15(c))の状態で絶縁層18Bにレジストによるパターニングと、エッチングにより絶縁層18Bを任意の形状の接点膜9に分割することにより得られる。
【実施例】
【0212】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<試験用ウエハの作製>
図20に示すように、直径が8インチのシリコン(線熱膨張係数3.3×10-6/K)製のウエハ6上に、それぞれ寸法が6.85mm×6.85mmの正方形の集積回路Lを合計で483個形成した。
【0213】
このウエハ6の集積回路Lを形成した側の表面に、感光性ポリイミドをスピンコートして、樹脂膜を形成し、プリベークを行う。
次いで、被検査電極の上部以外の領域の感光性ポリイミドにより形成された樹脂膜を露光およびベークして半硬化させた後、感光性ポリイミドにより形成された樹脂膜の非露光(未硬化)部分を現像して除去することにより、被検査電極の上部に90μm×90μmの開口部K1を形成した。
【0214】
その後、高温ベーク処理を行って、半硬化の感光性ポリイミドにより形成した樹脂膜を完全硬化させて、被検査電極の上部に開口部K1が形成された厚み約10μmのポリイミドよりなる絶縁膜B2を形成した。
【0215】
ウエハ6に形成された集積回路Lの各々は、図21に示すように、その中央に被検査電極領域Aを2500μmの間隔で2列に有し、この被検査電極領域Aには、図22(a)に示すように、それぞれ縦方向(図22(a)において上下方向)の寸法が90μmで横方向(図22(a)において左右方向)の寸法が90μmの矩形の26個の被検査電極7が120μmのピッチで横方向に一列に配列されている。
【0216】
そして図22(b)に示すように、被検査電極7は厚さ約10μmの絶縁膜B2によりその表面周囲を覆われている。
このウエハ6全体の被検査電極7の総数は26116個であり、全ての被検査電極7は互いに電気的に絶縁されている。
【0217】
以下、このウエハ6を「試験用ウエハW1」という。
また、全ての被検査電極7を互いに電気的に絶縁することに代えて、集積回路Lにおける26個の被検査電極のうち最も外側の被検査電極7から数えて1個おきに2個ずつを互いに電気的に接続したこと以外は、上記試験用ウエハW1と同様の構成の483個の集積回路Lをウエハ6上に形成した。
【0218】
以下、このウエハを「試験用ウエハW2」という。
(実施例1)
直径が20cmで厚みが25μmのポリイミドシートの片面に直径が20cmで厚みが4μmの銅よりなる金属層が積層された積層ポリイミドシートを用意した。
【0219】
この積層ポリイミドシートの金属層の表面に厚みが25μmのドライフィルムレジストによって、レジスト層22を形成した(図8(a)参照)。
ここで図8(a)において、ポリイミドシートが保護フィルム40Aに相当し、銅よりなる金属層が表面電極形成用金属シート16Aに相当する。
【0220】
次に、レジスト層22に試験用ウエハW1に形成された被検査電極7のパターンに対応するパターンに従って直径が40μmの円形の26116個の開口23を形成した(図8(b)参照)。
【0221】
次に積層ポリイミドシートを、スルファミン酸ニッケルを含有するメッキ浴中に浸漬し、表面電極形成用金属シート16Aを共通電極として、電解メッキ処理を施して各開口23内に金属を充填することにより、直径40μmで厚さ25μmの円錐台の表面電極部の先端部16Bを形成した(図8(c)参照)。
【0222】
そして、レジスト層22を除去して、表面電極部の先端部16Bが所定の位置に立設された表面電極形成用金属シート16Aを得た(図9(a)参照)。
次に、表面電極部の先端部16Bが所定の位置に立設された表面電極形成用金属シート16Aの先端部16Bが形成された側の面に、先端部16Bをその開口内に位置するように、厚みが40μmで3400μm×800μmの開口がウエハ6に形成された集積回路Lの被検査電極領域Aに対応する位置に形成されたスペーサー39を積層した(図9(b)参照)。
【0223】
次に積層ポリイミドシートに積層したスペーサー39の開口内に、ポリイミドのワニスをスクリーン印刷にて塗布し硬化することを繰り返して、先端部16Bを覆うように厚み40μmのポリイミドからなる樹脂層55を形成した(図9(c)参照)。
【0224】
次いで、積層ポリイミドシートの樹脂層55側の表面に、厚みが25μmのドライフィルムレジストによって、形成すべき電極構造体15における基端部16Cのパターンに対応するパターンに従って直径55μmのパターン孔が形成されたエッチング用のレジスト膜28Aを形成した(図10(a)参照)。
【0225】
そして、レジスト膜28Aのパターン孔34Hを介して、アミン系ポリイミドエッチング液(東レエンジニアリング株式会社製、「TPE−3000」)を用い、80℃、10分間の条件でエッチング処理を施すことにより、樹脂層55にエッチングを行って開口52を形成し、その底部に表面電極部の先端部16Bを露出させた(図10(b)参照)。
【0226】
次いで、積層ポリイミドシートを、45℃の水酸化ナトリウム溶液に2分間浸漬させることにより、レジスト膜28Aを除去した(図10(c)参照)。
その後、積層ポリイミドシートを、スルファミン酸ニッケルを含有するメッキ浴中に浸
漬し、表面電極形成用金属シート16Aを電極として、電解メッキ処理を施して樹脂層55の開口52に金属を充填することにより、表面電極の基端部16Cを形成した。
【0227】
これにより、先端部16Bおよび基端部16Cからなる表面電極部16が、表面電極形成用金属シート16Aに立設された積層体シートを得た。
これを積層体10Aとする(図11(a)参照)。
【0228】
そして、直径が20.4cmで厚みが12.5μmのポリイミドシートの両面に厚さ12μmの液状ポリイミド層を形成したポリイミドシートを、積層体10Aの表面電極部16およびスペーサー39の表面に積層した。
【0229】
次いで、積層体10Aの液状ポリイミド層の表面に、直径が22cmで厚みが10μmの42アロイよりなる金属シートを積層した。
そして金属シートの周縁部分の液状ポリイミド層と接する側の面に、内径が20.4cmで外径が22cmのポリエチレンテレフタレートよりなる保護テープを配置し、この状態で熱圧着処理することにより、図11(b)に示した積層体10Bを作製した。
【0230】
積層体10Bは、表面電極部16が形成された積層体10Aの一面に厚みが36μmのポリイミドよりなる絶縁層18Bが積層され、該絶縁層18Bの表面に42アロイよりなる裏面側金属層17Aを有するものである(図11(b)参照)。
【0231】
次いで、積層体10Bに対し裏面側金属層17Aの表面全面に、試験用ウエハW1に形成された被検査電極のパターンに対応するパターンに従って直径が60μmの円形の26116個のパターン孔28Hが形成されたレジスト膜28Aを形成した(図11(c)参照)。
【0232】
ここで、レジスト膜28Aの形成において、露光処理は高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することによって行い、現像処理は1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
【0233】
次いで、裏面側金属層17Aに対し、塩化第二鉄系エッチング液を用い、50℃、30秒間の条件でエッチング処理を施すことにより、裏面側金属層17Aに、それぞれレジスト膜28Aのパターン孔28Hに連通する26116個のパターン孔17Hを形成した(図12(a)参照)。
【0234】
その後、絶縁層18Bに対し、アミン系ポリイミドエッチング液(東レエンジニアリング株式会社製、「TPE−3000」)を用い、80℃、15分間の条件でエッチング処理を施すことにより、絶縁層18Bに、それぞれ裏面側金属層17Aのパターン孔17Hに連通した26116個の貫通孔18Hを形成し、ポリイミドシートよりなる保護フィルム40Aを除去した(図12(b)参照)。
【0235】
この貫通孔18Hの各々は、絶縁層18Bの表面に向かうに従って小径となるテーパ状のものであって、その底面に裏面電極部17が露出しており、裏面側の開口径が60μm表面側の開口径が25μmのものであった。
【0236】
次いで、貫通孔18Hが形成された積層体10Bを、45℃の水酸化ナトリウム溶液に2分間浸漬させることにより、積層体10Bからレジスト膜28Aを除去した。
さらにその後、積層体10Bに対し、厚みが25μmのドライフィルムレジストによって、第2の裏面側金属層17Aの表面全面を覆うよう、レジスト膜29Aを形成すると共に、レジスト膜29Aに、絶縁層18Bの貫通孔18Hに連通する寸法が200μm×6
0μmの矩形の26116個のパターン孔29Hを形成した。
【0237】
そして、表面電極形成用金属シート16Aを厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートよりなる保護フィルム40Cによって覆った(図12(c)参照)。
ここで、レジスト膜29Aの形成において、露光処理は、高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することにより行い、現像処理は、1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
【0238】
このようにして、積層体10Bの裏面に、それぞれ絶縁層18Bの貫通孔18H、裏面側金属層17Aのパターン孔17Hおよびレジスト膜29Aのパターン孔29Hが連通されてなる26116個の短絡部形成用凹所18Kを形成した。
【0239】
次いで、積層体10Bをスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ浴中に浸漬し、積層体10Bに対し、表面電極形成用金属シート16Aを電極として、電解メッキ処理を施して各短絡部形成用凹所18K内に金属を充填することにより、表面電極部16に連結された、短絡部18および裏面側金属層17Aによって互いに連結された裏面電極部17を形成した(図13(a)参照)。
【0240】
次いで、積層体10Bを、45℃の水酸化ナトリウム溶液に2分間浸漬させることにより、積層体10Bからレジスト膜29Aを除去した。
その後、厚みが25μmのドライフィルムレジストによって、裏面側金属層17Aにおける支持体25となる部分および裏面電極部17を覆うよう、パターニングされてパターン孔29Kを有するエッチング用のレジスト膜29Bを形成した(図13(b)参照)。
【0241】
ここで、レジスト膜29Bの形成において、露光処理は、高圧水銀灯によって80mJの紫外線を照射することにより行い、現像処理は、1%水酸化ナトリウム水溶液よりなる現像剤に40秒間浸漬する操作を2回繰り返すことによって行った。
【0242】
次いで、積層体10Bから保護フィルム40Cを除去し、その後、表面電極形成用金属シート16Aおよび裏面側金属層17Aに対し、アンモニア系エッチング液を用い、50℃、30秒間の条件でエッチング処理を施すことにより、表面電極形成用金属シート16Aの全部を除去した。
【0243】
また、裏面側金属層17Aにおけるパターン孔29Kにより露出した部分を除去し、これにより、裏面電極部17の各々を互いに分離させると共に、試験用ウエハW1に形成された集積回路における電極領域のパターンに対応するパターンに従って形成された複数の開口部26を有する支持体25を形成した(図13(c)参照)。
【0244】
支持体25に設けられた開口部26の各々は、横方向3600μm×縦方向1000μmである。
次いで、積層体10Bを45℃の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬することにより、支持体25の裏面および裏面電極部17からレジスト膜29Bを除去した。
【0245】
その後、厚みが25μmのドライフィルムレジストによって、支持体25の裏面、絶縁層18Bの裏面および裏面電極部17を覆うよう、レジスト膜17Eを形成し、このレジスト膜17Eを厚みが25μmのポリエチレンテレフタレートよりなる保護フィルム40Bによって覆った(図14(a)参照)。
【0246】
その後、積層体10Bに対し、アミン系ポリイミドエッチング液(東レエンジニアリング株式会社製、「TPE−3000」)を用い、80℃、10分間の条件でエッチング処
理を施すことにより、樹脂層55を除去した積層体10Cを得た(図14(b)参照)。
【0247】
その後、積層体10Cよりスペーサー39を除去した(図14(c)参照)。
そして、積層体10Cの表面電極部16および絶縁層18Bを覆うように厚みが25μmのドライフィルムレジストによりレジスト膜を形成し、接点膜9となるべき部分を覆うように、パターニングされたレジスト膜17Fを形成した(図15(a)参照)。
【0248】
レジスト膜17Fの各々は横方向4600μmで縦方向2000μmである。
この状態で、アミン系ポリイミドエッチング液(東レエンジニアリング株式会社製、「TPE−3000」)を用い、80℃、10分間の条件でエッチング処理を施すことにより、金属フレーム板の各々の貫通孔に電極構造体15が形成された接点膜9を備えた積層体10Cを得た(図15(b)参照)。
【0249】
そして、積層体10Cから保護フィルム40Bを除去し、次に45℃の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬することにより、レジスト膜17Eおよびレジスト膜17Fを除去した(図15(c)参照)。
【0250】
その後、支持体25における周縁部分よりポリエチレンテレフタレートよりなる保護テープを除去し、支持体25における周縁部分の表面に接着剤(セメダイン(株):2液型アクリル接着剤 Y−620)を塗布して接着剤層を形成し、外径が22cm、内径が20.5cmで厚みが2mmのリング状の窒化シリコンよりなる支持板2を配置した後、支持板2と支持体25とを50kgの荷重で加圧し、25℃で8時間保持することにより、支持板2を支持体25に接合することにより、本発明に係るシート状プローブ10を製造した。
【0251】
以上においてドライフィルムレジストとして特に記載しなかった部分においては、日立化成製のH−K350を使用した。
得られたシート状プローブ10は、絶縁層18Bの厚みdが36μm、電極構造体15の表面電極部16の先端部16Bの先端の径R2が36μm、基端における径R1が40μm、表面電極部の基端部16Cの基端の径R6は55μm。
【0252】
表面電極部16の先端部16Bの突出高さH1は25μm。
表面電極部16の基端部16Cの突出高さH2は15μm。
表面電極部16の突出高さh(H1+H2)は40μm。
【0253】
表面電極部16の基端における径R1に対する先端における径R2の比(R2/R1)は0.9。
表面電極部の基端部16Cの基端の径R6に対する突出高さhの比h/R6は0.73。
【0254】
表面電極部16の先端部16Bの側面の傾斜角度bは85°で、表面電極部16の基端部16Cの側面の傾斜角度cは45°。
短絡部18の形状が円錐台状で、その表面側の一端の径R3が25μm、裏面側の他端の径R4が60μm、裏面電極部17の形状が矩形の平板状で、その横幅(径R5)が60μm、縦幅が200μm、厚みd2が20μmのものである。
(比較例1)
図32(a)に示すような表面側金属層92A、第2の裏面側金属層92B、第1の裏面側金属層92Cを有し、絶縁性シート11、絶縁層18Bよりなる積層体90Cを用意した。
【0255】
積層体90Cは、表面側金属層92Aが厚さ4μmの銅よりなり、絶縁層18Bが厚さ12.5μmのポリイミドよりなり、第1の裏面側金属層92Cが厚さ4μmの銅よりなり、絶縁性シート11が厚さ37.5μmのポリイミドよりなり、第2の裏面側金属層92Bが厚さ10μmの42アロイよりなるものである。
【0256】
この積層体90Cに対して、特開2004−172589号に記載された方法に従い、第2の裏面側金属層側92Bに直径90μmのパターン孔を形成し、順次に絶縁層18B、第1の裏面側金属層92C、絶縁性シート11に連続する貫通孔を形成し、貫通孔の底面に表面側金属層92Aを露出させ、短絡部と表面電極部を一括して形成する電極構造体形成用凹所90Kを作成した(図32(b)参照)。
【0257】
次いで、積層体90Cをスルファミン酸ニッケルを含有するメッキ浴中に浸漬し、積層体90Cに対し、表面側金属層92Aを電極として、電解メッキ処理を施して電極構造体形成用凹所90K内に金属を充填した(図32(c)参照)。
【0258】
次いで、絶縁性シート11をエッチングにより除去した(図32(d)参照)。
次いで、第1の裏面側金属層にエッチングを行い保持部を形成し、第2の裏面側金属層にエッチングを行いその一部を除去することにより裏面電極部と支持部92Eを形成し、絶縁層18Bにエッチングを行い絶縁層を各々の接点膜に分割した(図32(e)参照)。
【0259】
その後、外径が22cm、内径が20.5cmで厚みが2mmのリング状の窒化シリコンよりなる支持板2の表面に、シアノアクリレート系接着剤(東亞合成(株)製:品名 アロンアルファ 品番:♯200)を滴下して接着層を形成し、これに接点膜を形成した積層体を積層し、25℃で30分保持することにより、接着層を硬化させてシート状プローブを製造した。
【0260】
得られたシート状プローブは、絶縁層の厚みdが37.5μm、電極構造体の表面電極部の形状が円錐台状で、その基端の径が37μm、その先端の径が13μm(平均値)であり、その突出高さが12.5μm、保持部は横幅が60μm、縦幅が200μmで厚みが4μm、短絡部の形状が円錐台状で、その表面側の一端の径が37μm、裏面側の他端の径が90μm、裏面電極部の形状が矩形の平板状で、その横幅が90μm、縦幅が200μm、厚みが20μmのものである。
【0261】
このようにして、合計で4枚のシート状プローブを製造した。
これらのシート状プローブを「シート状プローブO1」〜「シート状プローブO4」とする。
〈異方導電性コネクターの作製〉
(1)磁性芯粒子の調製:
市販のニッケル粒子(Westaim社製、「FC1000」)を用い、以下のようにして磁性芯粒子を調製した。
【0262】
日清エンジニアリング株式会社製の空気分級機「ターボクラシファイア TC−15N」によって、ニッケル粒子2kgを、比重が8.9、風量が2.5m3/min、ロータ
ー回転数が2250rpm、分級点が15μm、ニッケル粒子の供給速度が60g/minの条件で分級処理し、粒子径が15μm以下のニッケル粒子0.8kgを捕集し、更に、このニッケル粒子0.8kgを、比重が8.9、風量が2.5m3/min、ローター
回転数が2930rpm、分級点が10μm、ニッケル粒子の供給速度が30g/minの条件で分級処理し、ニッケル粒子0.5kgを捕集した。
【0263】
得られたニッケル粒子は、数平均粒子径が7.4μm、粒子径の変動係数が27%、BET比表面積が0.46×1032/kg、飽和磁化が0.6Wb/m2であった。
このニッケル粒子を磁性芯粒子Qとする。
(2)導電性粒子の調製:
粉末メッキ装置の処理槽内に、磁性芯粒子Q100gを投入し、更に、0.32Nの塩酸水溶液2Lを加えて攪拌し、磁性芯粒子Qを含有するスラリーを得た。
【0264】
このスラリーを常温で30分間攪拌することにより、磁性芯粒子Qの酸処理を行い、その後、1分間静置して磁性芯粒子Qを沈殿させ、上澄み液を除去した。
次いで、酸処理が施された磁性芯粒子Qに純水2Lを加え、常温で2分間攪拌し、その後、1分間静置して磁性芯粒子Qを沈殿させ、上澄み液を除去した。
【0265】
この操作を更に2回繰り返すことにより、磁性芯粒子Qの洗浄処理を行った。
そして、酸処理および洗浄処理が施された磁性芯粒子Qに、金の含有割合が20g/Lの金メッキ液2Lを加え、処理層内の温度を90℃に昇温して攪拌することにより、スラリーを調製した。
【0266】
この状態で、スラリーを攪拌しながら、磁性芯粒子Qに対して金の置換メッキを行った。
その後、スラリーを放冷しながら静置して粒子を沈殿させ、上澄み液を除去することにより、導電性粒子Pを調製した。
【0267】
このようにして得られた導電性粒子に純水2Lを加え、常温で2分間攪拌し、その後、1分間静置して導電性粒子を沈殿させ、上澄み液を除去した。この操作を更に2回繰り返し、その後、90℃に加熱した純水2Lを加えて攪拌し、得られたスラリーを濾紙によって濾過して導電性粒子を回収した。
【0268】
そして、この導電性粒子を、90℃に設定された乾燥機によって乾燥処理した。
得られた導電性粒子は、数平均粒子径が7.3μm、BET比表面積が0.38×1032/kg、(被覆層を形成する金の質量)/(磁性芯粒子[A]の質量)の値が0.3であった。
【0269】
この導電性粒子を「導電性粒子(a)」とする。
(3)フレーム板の作製:
図23および図24に示す構成に従い、下記の条件により、上記の試験用ウエハW1における各被検査電極領域に対応して形成された966個の開口32を有する直径が8インチのフレーム板31を作製した。
【0270】
このフレーム板31の材質はコバール(線熱膨張係数5×10-6/K)で、その厚みは、60μmである。
開口32の各々は、その横方向(図23および図24において左右方向)の寸法が3600μmで縦方向(図23および図24において上下方向)の寸法が900μmである。
【0271】
フレーム板31の開口32は、図23に示すように試験用ウエハに形成された集積回路Lの1個に対して2個が形成されており、同一集積回路Lに対して設けられているフレーム板31の開口32は中心間距離(図24において上下方向)で2000μmピッチで配置されている。
【0272】
縦方向に隣接する開口32の間の中央位置には、円形の空気流入孔33が形成されており、その直径は1000μmである。
(4)異方導電性シート用成形材料の調製:
付加型液状シリコンゴム100重量部に、導電性粒子30重量部を添加して混合し、その後、減圧による脱泡処理を施すことにより、異方導電性シート用の成形材料を調製した。
【0273】
以上において、使用した付加型液状シリコンゴムは、それぞれ粘度が250Pa・sであるA液およびB液よりなる二液型のものであって、その硬化物の圧縮永久歪みが5%、デュロメーターA硬度が32、引裂強度が25kN/mのものである。
【0274】
ここで、付加型液状シリコンゴムおよびその硬化物の特性は、以下のようにして測定されたものである。
(i)付加型液状シリコンゴムの粘度は、B型粘度計により、23±2℃における値を測定した。
(ii)シリコンゴム硬化物の圧縮永久歪みは、次のようにして測定した。
【0275】
二液型の付加型液状シリコンゴムにおけるA液とB液とを等量となる割合で攪拌混合した。
次いで、この混合物を金型に流し込み、混合物に対して減圧による脱泡処理を行った後、120℃、30分間の条件で硬化処理を行うことにより、厚みが12.7mm、直径が29mmのシリコンゴム硬化物よりなる円柱体を作製し、この円柱体に対して、200℃、4時間の条件でポストキュアを行った。
【0276】
このようにして得られた円柱体を試験片として用い、JIS K 6249に準拠して150±2℃における圧縮永久歪みを測定した。
(iii)シリコンゴム硬化物の引裂強度は、次のようにして測定した。
【0277】
上記(ii)と同様の条件で付加型液状シリコンゴムの硬化処理およびポストキュアを行うことにより、厚みが2.5mmのシートを作製した。
このシートから打ち抜きによってクレセント形の試験片を作製し、JIS K 6249に準拠して23±2℃における引裂強度を測定した。
(iv)デュロメーターA硬度は、上記(iii)と同様にして作製されたシートを5枚重ね合わせ、得られた積重体を試験片として用い、JIS K 6249に準拠して23±2℃における値を測定した。
(5)異方導電性コネクターの作製:
上記(3)で作製したフレーム板31および上記(4)で調製した成形材料を用い、特開2002−324600号公報に記載された方法に従って、フレーム板31に、それぞれ一の開口32を塞ぐよう配置され、フレーム板31の開口縁部に固定されて支持された、図19に示す構成の966個の異方導電性シート35を形成することにより、異方導電性コネクター30を製造した。
【0278】
ここで、成形材料層の硬化処理は、電磁石によって厚み方向に2Tの磁場を作用させながら、100℃、1時間の条件で行った。
得られた異方導電性シート35について具体的に説明すると、異方導電性シート35の各々は、横方向の寸法が6000μm、縦方向の寸法が2000μmであり、26個の導電部36が120μmのピッチで横方向に一列に配列されており、導電部36の各々は、横方向の寸法が60μm、縦方向の寸法が200μm、厚みが150μm、突出部38の突出高さが25μm、絶縁部37の厚みが100μmである。
【0279】
また、横方向において最も外側に位置する導電部36とフレーム板31の開口縁との間には、非接続用の導電部36が配置されている。
非接続用の導電部36の各々は、横方向の寸法が60μm、縦方向の寸法が200μm、厚みが150μmである。
【0280】
また、各異方導電性シート35における導電部36中の導電性粒子の含有割合を調べたところ、全ての導電部36について体積分率で約25%であった。
このようにして、合計で8枚の異方導電性コネクターを製造した。
これらの異方導電性コネクターを「異方導電性コネクターC1」〜「異方導電性コネクターC8」とする。
〈検査用回路基板の作製〉
基板材料としてアルミナセラミックス(線熱膨張係数4.8×10-6/K)を用い、試験用ウエハW1における被検査電極のパターンに対応するパターンに従って検査電極21が形成された検査用回路基板20を作製した。
【0281】
この検査用回路基板20は、全体の寸法が30cm×30cmの矩形であり、その検査電極は、横方向の寸法が60μmで縦方向の寸法が200μmである。
得られた検査用回路基板を「検査用回路基板T1」とする。
〈シート状プローブの評価〉
(1)試験1(隣接する電極構造体間の絶縁性):
シート状プローブM1、M2、シート状プローブO1、O2の各々について、以下のようにして隣接する電極構造体間の絶縁性の評価を行った。
【0282】
室温(25℃)下において、試験用ウエハW1を試験台に配置し、この試験用ウエハW1の表面上に、シート状プローブをその表面電極部16の各々が試験用ウエハW1の被検査電極7上に位置するよう位置合わせして配置し、このシート状プローブ上に、異方導電性コネクター30をその導電部36の各々がシート状プローブの裏面電極部17上に位置するよう位置合わせして配置し、この異方導電性コネクター30上に、検査用回路基板T1をその検査電極21の各々が異方導電性コネクター30の導電部36上に位置するよう位置合わせして配置し、更に検査用回路基板T1を下方に200kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約8g)で加圧した。
【0283】
ここで、異方導電性コネクター30としては下記表1に示すものを使用した。
そして、検査用回路基板T1における26116個の検査電極21の各々に順次電圧を印加すると共に、電圧が印加された検査電極と他の検査電極との間の電気抵抗をシート状プローブにおける電極構造体15間の電気抵抗(以下、「絶縁抵抗」という。)として測定し、全測定点における絶縁抵抗が10MΩ以下である測定点の割合(以下、「絶縁不良割合」という。)を求めた。
【0284】
ここで、絶縁抵抗が10MΩ以下である場合には、実際上、ウエハに形成された集積回路の電気的検査に使用することが困難である。
以上の結果を下記表1に示す。
【0285】
【表1】

【0286】
(2)試験2(電極構造体の接続安定性):
シート状プローブM3、M4、シート状プローブO3、O4の各々について、以下のようにして被検査電極に対する電極構造体15の接続安定性の評価を行った。
【0287】
室温(25℃)下において、試験用ウエハW2を、電熱ヒーターを備えた試験台に配置し、この試験用ウエハW2の表面上に、シート状プローブをその表面電極部16の各々が試験用ウエハW2の被検査電極7上に位置するよう位置合わせして配置し、このシート状
プローブ上に、異方導電性コネクター30をその導電部36の各々がシート状プローブの裏面電極部17上に位置するよう位置合わせして配置し、この異方導電性コネクター30上に、検査用回路基板T1をその検査電極21の各々が異方導電性コネクター30の導電部36上に位置するよう位置合わせして配置し、更に検査用回路基板T1を下方に200kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約8g)で加圧した。
【0288】
ここで、異方導電性コネクター30としては下記表2に示すものを使用した。
そして、検査用回路基板T1における26116個の検査電極7について、シート状プローブ、異方導電性コネクター30および試験用ウエハW2を介して互いに電気的に接続された2個の検査電極21の間の電気抵抗を順次測定した。
【0289】
さらに、測定された電気抵抗値の2分の1の値を、検査用回路基板T1の検査電極21と試験用ウエハW2の被検査電極7との間の電気抵抗(以下、「導通抵抗」という。)として記録し、全測定点における導通抵抗が1Ω以上である測定点の割合(以下、「接続不良割合」という。)を求めた。
【0290】
この操作を「操作(1)」とする。
次いで、検査用回路基板T1に対する加圧を解除し、その後、試験台を125℃に昇温してその温度が安定するまで放置し、その後、検査用回路基板T1を下方に200kgの荷重(電極構造体1個当たりに加わる荷重が平均で約8g)で加圧し、上記操作(1)と同様にして接続不良割合を求めた。この操作を「操作(2)」とする。
【0291】
次いで、試験台を室温(25℃)まで冷却し、検査用回路基板T1に対する加圧を解除した。この操作を「操作(3)」とする。
そして、上記の操作(1)、操作(2)および操作(3)を1サイクルとして合計で200サイクル連続して行った。
【0292】
ここで、導通抵抗が1Ω以上である場合には、実際上、ウエハに形成された集積回路の電気的検査に使用することが困難である。
以上の結果を下記表2に示す。
【0293】
【表2】

【0294】
また、試験2が終了した後、各々のシート状プローブを観察したところ、いずれのシー
ト状プローブも電極構造体15も絶縁層18Bから脱落していなかった。
表2の結果より、比較例に関わるシート状プローブOでは、表面電極部の突出高さが小さいため、絶縁層にてその表面の周囲を覆われた被検査電極を有するウエハに対しては、その電気的接続を安定して継続できないことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1】図1は、本発明のシート状プローブの他の実施形態を示した図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はX−X線による断面図である。
【図2】図2は、図1のシート状プローブにおける接点膜を拡大して示した平面図である。
【図3】図3は、本発明に係るシート状プローブにおける構造を示す説明用断面図である。
【図4】図4は、本発明に係るシート状プローブの電極構造体を拡大して示す説明用断面図である。
【図5】図5は、本発明のシート状プローブの実施形態を示した断面図である。
【図6】図6(a)は、支持体として板状支持体を用いて絶縁層をその表面で支持した場合を示した断面図、図6(b)は、本発明のシート状プローブにおける接点膜の支持部の断面図である。
【図7】図7は、本発明に係るシート状プローブにおける構造を示す説明用断面図である。
【図8】図8は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図9】図9は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図10】図10は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図11】図11は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図12】図12は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図13】図13は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図14】図14は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図15】図15は、本発明に係るシート状プローブを製造するための積層体の構成を示す説明用断面図である。
【図16】図16は、本発明の回路装置の検査装置およびそれに用いられるプローブカードの他の実施形態を示した断面図である。
【図17】図17は、図16のプローブカードにおける組み立て前後の各状態を示した断面図である。
【図18】図18は、図16に示す検査装置におけるプローブカードを拡大して示す説明用断面図である。
【図19】図19は、図18に示すプローブカードにおける異方導電性コネクターの平面図である。
【図20】図20は、実施例で作製した試験用ウエハを示す平面図である。
【図21】図21は、図20に示す試験用ウエハに形成された集積回路の被検査電極領域の位置を示す説明図である。
【図22】図22は、図21に示す試験用ウエハに形成された集積回路の被検査電極の配置パターンを示す説明図である。
【図23】図23は、実施例で作製した異方導電性コネクターにおけるフレーム板を示す平面図である。
【図24】図24は、図23に示すフレーム板の一部を拡大して示す説明図である。
【図25】図25は、従来のプローブカードの一例における構成を示す説明用断面図である。
【図26】図26は、従来のシート状プローブの製造例を示す説明用断面図である。
【図27】図27は、図26に示すプローブカードにおけるシート状プローブを拡大して示す説明用断面図である。
【図28】図28は、従来のシート状プローブの他の製造例を示す説明用断面図である。
【図29】図29は、従来のシート状プローブの他の製造例を示す説明用断面図である。
【図30】図30は、リング状の支持板を用いた従来のシート状プローブの断面図である。
【図31】図31は、従来のシート状プローブに、リング状の支持板を接着する方法を示した概略断面図である。
【図32】図32は、従来のシート状プローブに、リング状の支持板を接着する方法を示した概略断面図である。
【図33】図33は、従来のシート状プローブの、貫通孔を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0296】
1 プローブカード
2 支持板
3 加圧板
4 ウエハ載置台
5 加熱器
6 ウエハ
7 被検査電極
8 直径
9 接点膜
10 シート状プローブ
10A 積層体
10B 積層体
10C 積層体
11 絶縁性シート
15 電極構造体
16 表面電極部
16A 表面電極形成用金属シート
16B 先端部
16C 基端部
17 裏面電極部
17A 裏面側金属層
17E レジスト膜
17F レジスト膜
17H 各パターン孔
18 短絡部
18B 絶縁層
18K 短絡部形成用凹所
18H 貫通孔
19 保持部
20 検査用回路基板
21 検査電極
22 支持部
23 開口
24 多孔膜
25 支持体
26 開口部
27 支持部
28A レジスト膜
28H パターン孔
29A レジスト膜
29B レジスト膜
29H パターン孔
29K パターン孔
30 異方導電性コネクター
31 フレーム板
32 開口
33 空気流入孔
34H パターン孔
35 異方導電性シート
36 導電部
37 絶縁部
38 突出部
39 スペーサー
40A 保護フィルム
40B 保護フィルム
40C 保護フィルム
50 ガイドピン
52 開口
55 樹脂層
80 異方導電性シート
81a 貫通孔
83 フォトレジスト膜
85 検査用回路基板
86 検査電極
90 シート状プローブ
90A 積層体
90B 積層体
90C 積層体
90K 電極構造体形成用凹所
91 絶縁性シート
91A 絶縁性シート材
91B 絶縁性シート
92 金属層
92A 表面側金属層
92B 第2の裏面側金属層
92C 第1の裏面側金属層
92D 保持部
92E 支持部
92H 開口部
92T 先端径
93 レジスト膜
94A レジスト膜
94B レジスト膜
95 電極構造体
96 表面電極部
97 裏面電極部
98 短絡部
98H 貫通孔
99 支持板
100 接着剤
b 傾斜角度
B2 絶縁膜
c 傾斜角度
K1 開口部
L 集積回路
P 導電性粒子
Q 磁性芯粒子
R 径
r 径
R1 径
R2 径
R3 径
R4 径
R5 径
R6 径
t 膜厚
t1 膜厚
t2 膜厚
W 距離
θ エッチング処理角度
φ1 開口径
φ2 開口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
この絶縁層にその面方向に互いに離間して配置された、前記絶縁層の厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体を備えた接点膜を有するシート状プローブであって、
前記電極構造体の各々は、
前記絶縁層の表面に露出し、前記絶縁層の表面から突出し、その基端から先端に向かうに従って小径となる形状の表面電極部と、
前記絶縁層の裏面に露出する裏面電極部と、
前記表面電極部の基端から連続して前記絶縁層をその厚み方向に貫通して伸び、前記裏面電極部に連結された短絡部とよりなり、
前記表面電極部の基端の径が、前記短絡部の表面電極部と接する側の端の径よりも大きいことを特徴とするシート状プローブ。
【請求項2】
前記表面電極部は先端部分と基端部分とにより形成され、前記先端部分の側面の傾斜角度と基端部分の側面の傾斜角度が異なることを特徴とする請求項1に記載のシート状プローブ。
【請求項3】
前記表面電極部の先端部分と基端部分が異なる金属により形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシート状プローブ。
【請求項4】
検査対象である回路装置とテスターとの電気的接続を行うためのプローブカードであって、
検査対象である回路装置の被検査電極に対応して複数の検査電極が形成された検査用回路基板と、
この検査用回路基板上に配置された異方導電性コネクターと、
この異方導電性コネクター上に配置された請求項1から3のいずれかに記載のシート状プローブと、
を備えてなることを特徴とするプローブカード。
【請求項5】
検査対象である回路装置が多数の集積回路が形成されたウエハであり、
異方導電性コネクターは、
検査対象であるウエハに形成された全ての集積回路または一部の集積回路における被検査電極が配置された電極領域に対応して複数の開口が形成されたフレーム板と、
このフレーム板の各開口を塞ぐよう配置された異方導電性シートと、
を有してなることを特徴とする請求項4に記載のプローブカード。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載されたプローブカードを備えてなることを特徴とする回路装置の検査装置。
【請求項7】
複数の集積回路が形成されたウエハの各集積回路を、
請求項4または請求項5に記載されたプローブカードを介してテスターに電気的に接続し、
前記各集積回路の電気検査を行うことを特徴とするウエハの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2006−58308(P2006−58308A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270659(P2005−270659)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【分割の表示】特願2005−128650(P2005−128650)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】