説明

シート状二次電池セルおよびその製造方法

【課題】本発明の目的は高い電池容量を有し、かつ、長期間の繰り返し充放電に耐え、量産性にすぐれたシート状二次電池セルを提供することにある。
【解決手段】シート状の形状を有する二次電池セルの製造方法において、
正極又は負極どちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布する工程と、
他方の電極を塗布された前記固体電解質組成物面上に重ね、シート状二次電池セル前駆体を作成する工程と、
シート状二次電池セル前駆体の少なくとも一方の端部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記固体電解質組成物全体を硬化する工程
を有することを特徴とするシート状二次電池セルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状二次電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池は、電気自動車用や電力貯蔵用に容量の増大が求められ、電池セルの大型化が望まれている。大型電池はその用途から高容量のみならず、安全性の確保および長寿命であることが重要である。安全性高める手段の一つとしては、電池の形状をシート状にすることであり、シート状にすることで熱を効率よく外部に放出でき安全性の確保に有利である。特許文献1には、シート状電池をイオン液体を含有する固体電解質を用いて製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−310071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、固体電解質液を電極層に塗布し、硬化後に電極同士を熱圧着して貼り合わせることで製造する方法が開示されている。しかしながら、固体電解質が硬化後に貼り合わせを行っているため界面接着不十分で、内部抵抗が大きくなるという課題を有しており、長期間の繰り返し充放電に耐える電池を提供できているとは言い難い。また、特許文献1に開示されている技術を用いて大面積のシート状二次電池の作成を試みた場合、貼り合わせ時の電極同士の位置合わせを行うのが困難であり、大面積のシート状二次電池を安定的に製造することが困難になっていくことがわかった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は高い電池容量を有し且つ長期間の繰り返し充放電に耐え、量産性にすぐれたシート状二次電池セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題に基づいて本発明者が誠意検討した結果、電極の上に形成した固体電解質組成物を硬化する前にもう一方の電極を重ね、シート状二次電池セル前駆体の一部に活性エネルギー線を照射して重ねた電極がずれないように固定化した後、固体電解質組成物全体を硬化することにより、本願の目的を達成できることを見出した。
【0007】
即ち本発明の課題は以下の方法により達成される。
【0008】
1.シート状の形状を有する二次電池セルの製造方法において、
正極又は負極どちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布する工程と、
他方の電極を塗布された前記固体電解質組成物面上に重ね、シート状二次電池セル前駆体を作成する工程と、
シート状二次電池セル前駆体の少なくとも一方の端部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記固体電解質組成物全体を硬化する工程
を有することを特徴とするシート状二次電池セルの製造方法。
【0009】
2.前記正極及び負極がロール状電極であることを特徴とする前記1に記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【0010】
3.前記固体電解質組成物全体を硬化する工程が、加熱ロールにより行われることを特徴とする前記1又は2に記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【0011】
4.前記正極又は負極どちらか一方の電極に支持電解質塩溶液と塗布する工程の後に、前記固体電解質組成物を塗布する工程の
前記正極又は負極どちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布する工程の前に、
前記どちらか一方の電極に支持電解質塩の溶液を塗布する工程を有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【0012】
5.前記シート状二次電池セルの最も面積の大きいシート面の面積(S)が300cm以上20000cm以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【0013】
6.前記1〜5のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法により製造されたことを特徴とするシート状二次電池セル。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシート状二次電池セルの製造方法は固体電解質組成物の硬化前に電極と重ね合わせるため、界面接着性が充分に確保できる。これにより、内部抵抗及び電圧降下によるエネルギーロスが小さく、電池容量の高いシート状二次電池セルを製造することができる。さらに重ね合わせた電極同士の少なくとも一方の端部を事前に硬化することで、電極同士の位置合わせを簡便かつ正確に行うことができ、重ね合わせ時の電極同士の位置ズレやシワの発生を極めて少なくできる。
【0015】
重ね合わせ時の電極同士の位置ズレ精度やシワの発生が長期間の繰り返し充放電特性に影響する理由は明確ではない。しかし、電極の位置ズレやシワ部分が長期間の繰り返し充放電で短絡を起こしたり、電極剥がれの原因になると考えられるため、容量低下や寿命低下の原因になり繰り返し充放電特性が悪化するものと推測される。
【0016】
即ち、本発明の上記手段により、高い電池容量を有し、かつ、長期間の繰り返し充放電に耐え、量産性にすぐれたシート状二次電池セルが提供できる。また、本願のシート状二次電池セルの製造方法はロール状電極を用いてシート状二次電池セルを製造する場合に特に好適である。従来の製造方法を用いてロール状電極に二次電池の作成を試みた場合、ロール状電極の一部に位置ズレやシワができると、その後の電極もすべて位置ズレやシワが発生して続けてしまう。そのため、製造ラインを一度止めて、位置ズレやシワの発生した部分を取り除くなどする必要があり、連続生産に適する方法ではなかった。一方本発明の製造方法は、位置ズレやシワの発生を従来の製造方法に比べて非常に減少できるため、シート状二次電池セルを効率よく連続的に製造することが可能となる。
【0017】
本発明の上記手段により、高い電池容量を有し、かつ、長期間の繰り返し充放電に耐え、量産性にすぐれたシート状二次電池セルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シート状二次電池セルの製造方法を模式的に示した図である。
【図2】シート状二次電池セルの製造に用いられる貼合装置の概略断面図である。
【図3】シート状二次電池セルの製造に用いられる貼合装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、固体電解質組成物を用いたシート状の形状を有する二次電池セルの製造方法であって、シート状二次電池セル前駆体を重ね合わせて接着させる方法(以後、貼合と表す)に特徴がある。
【0020】
(製造方法)
本発明のシート状の形状を有する二次電池セルの製造は、正極、負極のどちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布し、他方の電極を塗布された固体電解質組成物面上に重ねた後に、重ねられたシート状二次電池セル前駆体の少なくとも一方の端部の固体電解質組成物を活性エネルギー線により硬化する工程を有している。
【0021】
その後二次電池セルを外装体に封入するが、ロール状電極などを用いて大面積のシート状二次電極セルを製造した場合には、所定サイズに切断後外装体に封入ことが好ましい。
【0022】
本発明においては、電極に固体電解質組成物を塗布するが、塗布機としては、ドクターブレードコータ、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ、ロールコータなどを用いることができるが、特に装置を限定するものではなく、電極上に固体電解質組成物を塗布できる装置であれば、その他のいずれの装置を用いても構わない。
【0023】
塗布する固体電解質組成物の厚さは10μm〜200μmが好ましく、20μm〜100μmがより好ましい。厚さを10μm以上とすることで電極間の短絡の危険性をより減少させることが出来、200μm以下とすることで固体電解質の内部抵抗を好適な範囲にとどめることが出来る。
【0024】
本発明は貼合時に重ねられたシート状二次電池セル前駆体の少なくとも一方の端部の固体電解質組成物を活性エネルギー線により硬化することによって位置決めをするため、従来のシート状二次電池セルの製造方法と比べ位置精度の高いシート状二次電池セルを製造することができる。さらに電極としてロール状電極を用いることで、シート状電極を貼合する場合と比べて、量産性及び貼合時の電極の位置精度をより高めることができる。位置決めのためにシート状二次電池セル前駆体を硬化する場所に特に限定はないが、シート状二次電池セルの一端を硬化することが好ましく、両端部の固体電解質組成物を活性エネルギー線により硬化するのがより好ましい。
【0025】
本発明における活性エネルギー線は、固体電解質組成物を硬化することができればよく、用いる固体電解質組成物に応じて、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等を用いることができる。中でも電極に吸収されにくく、シート状二次電池セル前駆体の一端から照射した場合に硬化できる範囲が広い赤外線又はマイクロ波が好ましい。
【0026】
本発明における固体電解質組成物全体を硬化する方法については、硬化させることができる手段であれば特に制限はなく、シート状二次電池セル前駆体全体を加熱炉内に通す方法や両面からダブルロールラミネータ等を用いて、加熱ロールで圧着する方法が挙げられる。このうち、両面から加熱ロールで圧着する方法が最も効率よく熱を伝え、かつ硬化の均一性を向上させられる点で好ましい。その際、加熱温度としては、50℃〜200℃の範囲が好ましい。加熱温度を上記の範囲とすることで、接着性が高く、固体電解質にダメージを与えること無くシート状二次電池セルを製造することが出来る。
【0027】
本発明では製造したシート状二次電池セルが大きい場合には所定サイズに切断後、外装体に封入しシート状二次電池とすることができるが、所定サイズに切断したシート状二次電池セル前駆体を複数積層して多層積層体として外装体に封入し複数のセルからなるシート状二次電池を製造することもできる。本発明のシート状二次電池セルに用いられる外装体としては金属ケース、樹脂ケース、もしくはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムとからなるラミネートフィルム等を用いることができるが、軽量化できる点でラミネートフィルムが好ましい。
【0028】
本発明のシート状二次電池セルの製造工程は低湿度下で行われることが重要であり、露点温度−30℃以下が好ましく、露点温度−60℃以下の乾燥空気、窒素ガス、アルゴンガスなどの気体で満たされた環境で製造することがより好ましい。
【0029】
(シート状二次電池セル)
本発明のシート状二次電池セルの製造方法は、特にシート状リチウムイオン二次電池セルに用いることが好ましい。本発明のシート状二次電池セルは正極、負極および固体電解質を有し、必要に応じてセパレータなどの安全性をより高める機構を有していてもよい。
【0030】
(固体電解質組成物)
固体電解質組成物について説明する。本発明における固体電解質組成物とは、イオン伝導性を有し、常温又は加熱することで電極に塗布可能な程度まで粘度を低くすることができ、かつ活性エネルギー線や熱により硬化して、固体電解質となる電解質であれば特に制限はない。固体電解質の組成としては、無機微粒子(A)、イオン液体(B)、支持電解質塩(C)及び重合性化合物(D)を含有するものが好ましい。
【0031】
(無機微粒子(A))
本発明の固体電解質に係る無機微粒子としては、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アンチモン、クレー、酸化スズ、酸化タングステン、酸化チタン、リン酸アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムや、これらの複合酸化物が好ましく使用できる。
【0032】
無機微粒子の平均粒径は、安全性、電圧特性の面から0.05〜50μmであることが好ましく、更に0.1〜20μmであることが好ましい。
【0033】
平均粒径は、各粒子を同体積の球に換算した時の直径(球換算粒径)の体積平均値であり、この値は電子顕微鏡写真から評価することができる。即ち、電池組成物または粒子紛体の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、一定の視野範囲にある粒子を200個以上測定して各粒子の球換算粒径を求め、その平均値を求めることにより得られた値である。
【0034】
無機微粒子の含有量は特に限定はないが、イオン性液体100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下が好ましく、更に好ましくは10質量部以上70質量部以下である。
【0035】
(イオン液体(B))
本発明の固体電解質に係るイオン液体は、常温で液体である塩であれば特に制限は無く、アルキルアンモニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩などを用いることができる。下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩も好ましく用いることができる。
【0036】
【化1】

【0037】
上記一般式(1)中、R及びRは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の炭化水素基を示し、R、R及びRは、それぞれ水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、もしくはアルデヒド基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を示し、Xは一価のアニオンを表し、具体的には塩素、臭素、ヨウ素、BF、BF、PF,NO、CFCO、CFSO、(FSO、(CFSO、(CFSO、(CSO、AlCl、AlClなどが挙げられる。
【0038】
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、例えば、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニル塩、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニル塩、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニル塩、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニル塩、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニル塩、及び、上記ビストリフルオロメタンスルホニルアニオン部分をそれぞれビスフルオロスルホニルアニオンにした塩等が挙げられ、中でもイオン導電率の点で1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビスフルオロスルホニル塩が好ましく用いることができる。
【0039】
イオン液体は、常温(25℃)付近で液体である塩であれば特に制限は無い。これらの化合物の融点は80℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは30℃以下である。
【0040】
イオン液体の固体電解質組成物中に対する含有量としては、10質量%〜90質量%が好ましく、特に30質量%〜80質量%が好ましい。
【0041】
(支持電解質塩(C))
本発明の固体電解質に係る支持電解質塩は、二次電池用電解質組成物中でイオンを与える塩であり、電池に用いられる公知の支持電解質塩を用いることができる。
【0042】
支持電解質塩としては、任意のものを用いることができるが、好ましくは周期律表Ia族またはIIa族に属する金属イオンの塩が用いられる。
【0043】
周期律表Ia族またはIIa族に属する金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムのイオンが好ましい。
【0044】
金属イオンの塩のアニオンとしては、ハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、SCN、BF、PF、ClO、SbF、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、Ph、(C、(CFSO、CFCOO、CFSO、CSO等が挙げられる。
【0045】
アニオンとしては、SCN、BF、PF、ClO、SbF、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、(CFSO、CFSOがより好ましい。
【0046】
代表的な電解質塩としては、LiCFSO、LiPF、LiClO、LiI、LiBF、LiCFCO、LiSCN、LiN(SOCF、LiN(SOF)、NaI、NaCFSO、NaClO、NaBF、NaAsF、KCFSO、KSCN、KPF、KClO、KAsFなどが挙げられる。更に好ましくは、上記Li塩である。これらは一種または二種以上を混合してもよいが、使用するイオン液体と同じアニオンを用いるのが好ましい。
【0047】
シート状二次電池セル用電解質組成物中の支持電解質塩の配合量は、5〜40質量%とすることが好ましく、特に、10〜30質量%とすることが好ましい。
【0048】
(重合性化合物(D))
本発明の固体電解質に係る重合性化合物(D)には、重合により高分子化する重合性モノマー、または、重合性オリゴマーが用いられる。
【0049】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性モノマーやカチオン重合性モノマーが挙げられ、特に限定されないが以下に示されるエチレン性不飽和モノマーが好ましく用いられる。
【0050】
エチレン性不飽和モノマーとしては、2−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピルエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の単官能モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の3官能以上のモノマー、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0051】
重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が挙げられるが、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が好ましく用いられる。これら重合性モノマー、及び、重合性オリゴマーは、複数を組み合わせて用いることができる。
【0052】
固体電解質組成物中の重合性モノマーの配合量は、5〜40質量%とすることが好ましく、特に、10〜30質量%とすることが好ましい。
【0053】
上記のモノマーの重合方法としては、熱、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等による方法が挙げられる。紫外線による方法の場合、反応を効果的に進行させるため、固体電解質組成物中に紫外線に反応する重合開始剤を配合することも出来る。紫外線重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ビアセチル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの開始剤は、単独であるいは複数を組み合わせて用いることができる。
【0054】
熱、赤外線、マイクロ波による重合の場合は、熱重合開始剤を使用することが出来る。熱重合開始剤としては、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス−[4,4−ジ(ターシャルブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン]、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、ターシャリブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、ターシャリブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの開始剤は、単独であるいは複数を組み合わせて用いることができる。
【0055】
(高分子(E))
本発明に係る固体電解質組成物は、高分子(E)をさらに含有させることで、長期間の繰り返し充放電に耐える電池をさらに安定に製造することができる。
【0056】
本発明における高分子は、重合単位(モノマー)の数平均重合度が1000個以上のものであることが好ましく、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフロライド、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリ(メタ)アクリル酸アリール、ポリフルオレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどが好適に用いられる。中でもポリ(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく用いられる。
【0057】
本発明に用いられる固体電解質組成物は、上記の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、溶媒を含有することができる。
【0058】
(溶媒(F))
本発明に係る固体電解質組成物は、粘度の低下、イオン伝導性の向上などを目的として溶媒(F)を加えることが出来る。溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシ−1−メトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒の一種又は二種以上を混合して使用したものが挙げられる。
【0059】
上記(A)〜(D)、必要に応じて(E)を混合攪拌することで、本発明に係る固体電解質組成物を得ることができるが、粘度が高い場合は攪拌時の泡の混入を防止するために、真空脱泡しながら攪拌することが好ましい。
【0060】
本発明においては、上記固体電解質組成物を塗布するに先立って、正極、負極のどちらか一方の電極に上記支持電解質塩(C)の溶液を塗布したほうが好ましく、正極、負極両方の電極に塗布したほうがさらに好ましい。これにより本発明の効果をより高めることができる。本発明でいう支持電解質塩(C)の溶液とは、支持電解質塩(C)と溶媒(F)、または、支持電解質塩(C)とイオン液体(B)との混合溶解物を指す。
【0061】
(シート形状)
本発明のシート状の形状を有する二次電池セルの形状を最も大きいシート面と厚みという形で表現した場合、最も面積の大きいシート面の面積(S)が300cm以上20000cm以下であることが好ましく、1000cm以上の場合がさらに好ましい。300cm以上とすることでシート状二次電池セルの放熱を効果的に行うことができ、20000cm以下とすることで固体電解質と電極の硬化をムラなく行うことが出来る。
【0062】
ここで最も面積の大きい面の面積(S)とは容器が金属ケース、樹脂ケースの場合は、端子部を除く外形寸法で見た場合であり、ラミネートフィルムの場合はヒートシール部を除く、封入されている電極面積部分とする。なお厚み(T)とは、最も面積の大きい面に対して垂直な部分の長さのことであり、シート状二次電池セルを複数枚積層することによって調節できるが、放熱効果による安全性の観点からその厚み(T)は2cm以下が好ましい。
【0063】
(電極)
本発明のシート状二次電池セルにかかる正極および負極について以下に説明する。
【0064】
(正極)
正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられた、正極活物質を含有する正極活物質層とからなる。
【0065】
正極集電体としては、例えば、アルミニウムからなる箔・パンチングメタル・網・エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常アルミニウム箔が好適に用いられる。
【0066】
正極集電体の厚みは強度と電導度の関係から10〜30μmの範囲内にあることが特に好ましい。
【0067】
正極活物質層が含有する正極活物資としては、例えば、LiCoO、LiNiOのNiの一部をCoで置換したLiNiCo(1−x)などのカルコゲナイト系酸化物、LiMnといったスピネル酸化物、LiNi(1−x)/2MnxOといった層状MnNi系化合物、LiNi1/3Mn1/3Co1/3といったNiMnCo三元系化合物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe)などのオリビン系酸化物など、通常のリチウム二次電池に用いられているリチウムイオンを吸蔵放出可能な無機酸化物などが挙げられる。
【0068】
正極活物質層は、さらに導電性を付与するための導電助剤、結着性を付与するためのバインダを含むことが好ましい。
【0069】
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、非晶質炭素などの炭素材料を1種単独で用いてもよいし、または2種以上を併用して用いてもよい。
【0070】
バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂材料、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、などを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
正極は、正極活物質を含有する塗布液を集電体表面に塗布し、乾燥し、さらにプレスして、正極活物質層を形成することで得られる。
【0072】
塗布液としては、例えば、必要に応じ、上記導電助剤、バインダおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水、トルエンなどの分散媒を含むスラリー状の塗布液が用いられる。
【0073】
正極活物質層としては、例えば、活物質量が50〜99質量%、導電助剤量が0.5〜40質量%、バインダ量が0.5〜20質量%含有する活物質層であることが好ましい。
【0074】
正極活物質層の厚みは、10〜200μmの範囲であることが好ましい。
【0075】
(負極)
負極は、負極集電体と負極集電体上に設けられた負極活物質を含有する負極活物質層とからなる。
【0076】
負極集電体としては、銅製やニッケルからなる箔・パンチングメタル・網・エキスパンドメタルなどを用い得るが、銅箔が好ましく用いられる。
【0077】
負極集電体の厚みは集電体の強度と電導度の関係から6〜30μmであることが好ましい。
【0078】
負極活物質層が含有する負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金、若しくはリチウムと合金化し得る金属が挙げられる。
【0079】
リチウム合金としては、例えば、リチウム−アルミニウム合金などが挙げられる。
【0080】
リチウムと合金化し得る金属としては、例えば、Sn、Siなどが例示できる。
【0081】
その他、リチウムを吸蔵放出可能な材料としては、非晶質炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素系材料などが挙げられる。
【0082】
例えば、リチウム金属やリチウム合金、リチウムと合金化し得る金属の場合には、それらで構成される薄膜(金属箔状にするなど)を負極活物質層として負極集電体表面にそれらを含有する層(負極活物質層)を形成するなどして、負極を得ることができる。
【0083】
負極活物質層は、さらに導電性を付与するための導電助剤、結着性を付与するためのバインダを含んでもよい。
【0084】
導電助剤としては、例えば、AB、KB、非晶質炭素などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
また、バインダとしては、例えば、PVDF、PTFE、スチレン・ブタジエンラバー(SBR)などのゴム系材料などが例示でき、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0086】
バインダを含有する場合には、負極活物質層は、負極活物質、バインダおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水、トルエンなどの分散媒を含むスラリー状の塗布液を集電体表面に塗布し、乾燥し、さらにプレスして、負極活物質層を形成することで得られる。
【0087】
導電助剤やバインダを用いて負極の活物質含有層を構成する場合、負極活物質層においては、例えば、活物質量が50〜99質量%、導電助剤が0〜40質量%、バインダ量が0.5〜20質量%であることが好ましい。
【0088】
負極活物質層の厚みは、30〜150μmの範囲内であることが好ましい。
【0089】
本発明では単位面積当たりの正極の容量(C)と単位面積当たりの負極の容量(A)の比(A/C)が1.05以上であることが好ましく、1.10以上がより好ましい。この比が1.05より小さくなると、充放電の際に電極上に金属リチウムが発生しやすくなり、短絡する危険があるので好ましくない。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」は「質量部」を表す。
【0091】
実施例1
(固体電解質組成物の作製)
酸素濃度10ppm以下、露点−60℃以下の乾燥空気で満たされたドライブース内にて60質量%の1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(B−1)に、支持電解質塩として10質量%のLiN(SOCFを溶解後、20質量%の酸化ケイ素微粒子(平均粒子径:2μm)を添加混合してスラリーを作成した。これのスラリーに10質量%相当のメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(90部)、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート(8部)及びベンゾイルパーオキサイド(2部)の混合物(D−1)を添加混合し常温で液体状の固体電解質組成物1を得た。
【0092】
さらに、各組成物の種類および量を表1記載のようにした以外は固体電解質1の作成と同様の方法で、固体電解質組成物2〜6を調製した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1中でのイオン液体、及び重合性化合物を以下に示す。
B−1: 1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル) イミド
B−2: 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド
B−3: 1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボーレート
D−1: メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(90部)、エチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート(8部)、ベンゾイルパーオキサイド(2部)の混合物
D−2: エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロックポリエーテルポリオール(旭電化工業社製、「CM−211」、Mw:約2100)(45部)、イソホロンジイソシアネート(30部)と2−ヒドロキシエチルアクリレート(20部)の反応生成物と1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(3部)とベンゾイルパーオキサイド(2部)の混合物
(支持電解質塩溶液の調製)
エチレンカーボネート(EC)に支持電解質塩としてLiN(SOCFを1Mの濃度になるように溶解して支持電解質塩溶液Q−1を調製した。エチレンカーボネート(EC)に変えて1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いた以外は同様にして支持電解質塩溶液Q−2を調製した。
【0095】
(正極および負極の作製)
正極の製造:リン酸鉄リチウム(LiFePO)90質量%と、補助導電材としてグラファイト粉末6質量%とを混合し、これに、ポリフッ化ビニリデン共重合体4質量%とN−メチルピロリドンとを加えて、混合してスラリーを調製した。このスラリーをロール長300m、幅300mm、厚さ20μmのアルミニウム箔上全面に連続して塗布乾燥し、ロールプレスすることによりロール状の正極を作製した。得られた正極の容量は2.0mAh/cmだった。
【0096】
負極の製造:グラファイト96質量%とポリフッ化ビニリデン共重合体4質量%とN−メチルピロリドンとを加えて、混合してスラリーを調製した。このスラリーをロール長300m、幅300mm、厚さ15μmの銅箔上全面に連続して塗布乾燥し、ロールプレスすることによりロール状の負極を作製した。得られた負極の容量は2.1mAh/cmだった。
【0097】
(シート状二次電池1の作製)
酸素濃度10ppm以下、露点−60℃以下の乾燥空気で満たされたドライブース内にて、図1に示すように、負極(1)上の全面に固体電解質組成物1(2)を厚みが20μmになるように押し出しコーター(3)にて塗布した。続いて、正極(4)を固体電解質組成物1面上に重ね、シート状二次電池セル前駆体(7)の長辺の両端から赤外線ヒーター(5及び5′)を用いて、両端部の固体電解質組成物を硬化した。
【0098】
その後、両端の長辺を固体電解質組成物を硬化したシート状二次電池セル前駆体を対向する温度180℃の加熱ローラー(6)に通し、内部の固体電解質組成物を硬化させた。切断機(8)により長辺を150mmの長さに切断してシート状二次電池セル1(9)を作成した。
【0099】
その後正極、負極それぞれに電流端子(タブ)を超音波溶接してからラミネートフィルム製の外装体に入れ、ヒートシールを行い封入してシート状二次電池1を作製した。
【0100】
(シート状二次電池2の作製)
シート状二次電池1の作製において、シート状二次電池セル前駆体の両方の長辺を硬化する代わりに、片方の長辺のみを赤外線ヒーター(5)で硬化した以外は、同様の方法でシート状二次電池2を作製した。
【0101】
(シート状二次電池3の作製)
シート状二次電池1の作製において、加熱ローラーの代わりに、温度180℃に熱せられた加熱炉内にシート状二次電池セルを通して、内部の固体電解質組成物を硬化させた以外は同様の方法で、シート状二次電池3を作製した。
【0102】
(シート状二次電池4〜7の作製)
シート状二次電池1の作製において、固体電解質組成物1を固体電解質組成物を2〜5に変えた以外は同様の方法で、シート状二次電池4〜7を作製した。
【0103】
(シート状二次電池8の作製)
シート状二次電池1の作製において、両端の長辺を硬化させる手段を赤外線ヒーターからマイクロ波照射機に変更した以外は、同様の方法でシート状二次電池8を作製した。
【0104】
(シート状二次電池9の作製)
シート状二次電池1の作製において、固体電解質組成物1を固体電解質組成物6に変え、両端の長辺を硬化させる手段を赤外線ヒーターからUVランプに変更した以外は同様の方法で、シート状二次電池9を製造した。
【0105】
(シート状二次電池10の作製)
酸素濃度10ppm以下、露点−60℃以下の乾燥空気で満たされたドライブース内にて、図2に示すように、負極(1)上の全面に支持電解質塩溶液として、上で調製した支持電解質塩溶液Q−1を厚みが50μmになるように押し出しコーター(3′)にて塗布した。支持電解質塩溶液を電極内部に含侵させた後、押し出しコーター(3)を用いて固体電解質組成物1を塗布した。固体電解質組成物1の上に、支持電解質塩溶液Q−1を厚みが50μmになるように塗布してから正極を張り合わせた。張り合わせたシート状二次電池セル前駆体(7)の長辺の両端から赤外線ヒーター(5及び5′)を用いて、両端部の固体電解質組成物を硬化した。
【0106】
その後、両端の長辺を固体電解質組成物を硬化したシート状二次電池セル前駆体を対向する温度180℃の加熱ローラー(6)に通し、内部の固体電解質組成物を硬化させた。切断機(8)により長辺を150mmの長さに切断してシート状二次電池セル10(9)を作成した。
【0107】
その後、正極、負極それぞれに電流端子(タブ)を超音波溶接してからラミネートフィルム製の外装体に入れ、ヒートシールを行い封入してシート状二次電池10を作製した。
【0108】
(シート状二次電池11の製造)
シート状二次電池1の作製において、支持電解質塩溶液を上で調製した支持電解質塩溶液Q−2に変更した以外はシート状二次電池10の作製と同様の方法で、シート状二次電池11を製造した。
【0109】
(シート状二次電池12の作製(比較例))
図3に示すように、負極上に固体電解質組成物1を設けた後、正極を重ねる前に赤外線ヒーター(5)で固体電解質組成物を硬化した。その後正極を重ね、温度180℃の加熱ローラーで両者を圧着した以外はシート状二次電池1の作製と同様の方法で、シート状二次電池12を製造した。
【0110】
(シート状二次電池13の作製(比較例))
シート状二次電池1の作製において、赤外線ヒーターによるシート状二次電池前駆体の両端部の硬化を省略した以外は同様の方法で、シート状二次電池13を製造した。
【0111】
(電池容量の評価)
得られたシート状二次電池セルを25℃環境下において、電圧2.0V〜4.0Vの範囲で200mAの定電流充放電を5回繰り返し、5回目の放電容量を電池容量とし、設計容量に対する割合(%)を算出した。
【0112】
(量産適性の評価)
シート状二次電池セルを100個製造し、25℃環境下において、電圧2.0V〜4.0Vの範囲で200mAの定電流充放電を300回繰り返し、300回目の放電容量が5回目に対して80%以上保持している電池の個数割合(%)を算出した。
【0113】
評価結果を表2に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
本発明により製造されたシート状二次電池セルの電池容量、量産適性は比較シート状二次電池セルより明らかに良好な結果が得られた。これにより、本発明により、高い電池容量を有し、かつ、長期の間の繰り返し充放電に耐え、量産性にすぐれた二次電池が得られることは明白である。
【0116】
実施例2
シート状二次電池セル1と二次電池セル12について、今度はシート状二次電池セルの最も面積の大きい面の面積(S)を変えたものをそれぞれ製造し、量産適性を評価した。
【0117】
評価結果を表3に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
本発明によりシート状二次電池セルの最も面積の大きい面の面積(S)が大きくなるほど、本発明のシート状二次電池セルの量産効果が顕著に現れることは明白である。
【符号の説明】
【0120】
1 負極
2 固体電解質組成物
3 固体電解質組成物塗布用押し出しコーター
3′ 支持電解質塩溶液塗布用押し出しコーター
4 正極
5、5′ 赤外線ヒーター
6 加熱ローラー
7 シート状二次電池前駆体
8 切断機
9 シート状二次電池セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の形状を有する二次電池セルの製造方法において、
正極又は負極どちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布する工程と、
他方の電極を塗布された前記固体電解質組成物面上に重ね、シート状二次電池セル前駆体を作成する工程と、
シート状二次電池セル前駆体の少なくとも一方の端部に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記固体電解質組成物全体を硬化する工程
を有することを特徴とするシート状二次電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記正極及び負極がロール状電極であることを特徴とする請求項1に記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記固体電解質組成物全体を硬化する工程が、加熱ロールにより行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記正極又は負極どちらか一方の電極に支持電解質塩溶液と塗布する工程の後に、前記固体電解質組成物を塗布する工程の
前記正極又は負極どちらか一方の電極に固体電解質組成物を塗布する工程の前に、
前記どちらか一方の電極に支持電解質塩の溶液を塗布する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記シート状二次電池セルの最も面積の大きいシート面の面積(S)が300cm以上20000cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のシート状二次電池セルの製造方法により製造されたことを特徴とするシート状二次電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−129398(P2011−129398A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287414(P2009−287414)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】