説明

シート状媒体に画像形成する画像形成装置、及び画像形成方法

【課題】シート状媒体の状態の分布を検出して、媒体に対して、比較的きめ細かな画像形成の調整が可能で、比較的高品位な画像を形成できる画像形成装置ないし方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、照射手段23と、検出手段24と、データ取得手段と、分布情報取得手段と、演算手段と、制御手段を有する。照射手段24は、印字するためのシート状媒体27に高周波電磁波25を複数の場所で照射する。検出手段は、媒体27の複数の場所における電磁波の伝搬状態の変化を検出する。データ取得手段は、媒体27の状態によって受ける電磁波の伝搬状態の変化に関するデータを取得する。分布情報取得手段は、取得データと検出手段24からのデータをもとに媒体27の状態の分布情報を取得する。演算手段は、媒体27の状態の分布情報に基づいて印字するための画像形成条件を判別する。制御手段は、媒体27の各場所の状態に応じて、判別結果をもとに画像形成条件を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触の高周波電磁波センシングにより、印字対象のシート状媒体の状態の分布情報を検出しその検出結果を用いて自動的に画像形成条件を調整することができる画像形成装置、及び画像形成方法に関する。典型的には、用いる電磁波は、30GHz乃至30THzの範囲の周波数の成分を含む電磁波(本明細書では、THz波またはテラヘルツ波ともいう)である。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、インクジェットプリンタ、レーザプリンタなどにおいては、印字する媒体に応じて、最適な画像を形成できる様に画像形成条件の制御を行っている。そのセンシング内容は、紙の種別、水分量(水分含有量)などであり、その為の各種センサを配して、そのセンシング結果に基づいて画像形成条件のフィードフォワード制御若しくはフィードバック制御を行っている。
【0003】
特に、最近になって高品質が要求されるプリントオンデマンド(POD)機といわれる画像形成装置では、環境によって変化する印字媒体に吸収されている水分量や、印字媒体表面のすき目による影響を極力回避して印字状態を向上させる様な検討も行われている。前者については、作像系の周辺に温湿度計を配置する方法や、光を照射してその反射光で水分量を判断する方法が提案されている(特許文献1参照)。すき目に関しては、一般的に、これを検出するセンサを組み込む方法ではなく、すき目の方向による照射光の反射量の違いから推定を行って、カール補正手段を設けることを行っている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8-137145号公報
【特許文献2】特開平2000-227694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
POD機の様な印刷装置並みの高画質な画像形成を行うためには、印字媒体の面内方向の状態の分布も問題になってくる。例えば、カセットにセットされた印字媒体は周囲の湿度が高い場合に、周辺部ほど水分量が多く、中央部では少ないことがある。この状態の分布は、環境温度や湿度、カセットにセットしたときの印字媒体の水分量、セットからの経過時間などにより複雑に変化する。この様な場合には、媒体の1点だけ計測して印字制御を行っても、全体の印字媒体の状態を反映していないことがあり、印字の最適化ができないことになる。
【0005】
一方、すき目についても、専用紙を使用しない限りは一定せず、反射量の違いからの推定だけでは、迷光や印字媒体の張り具合や折り目などによる反射量の変化に対応できないために、補正が十分できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の画像形成装置は、照射手段と、検出手段と、データ取得手段と、分布情報取得手段と、演算手段と、制御手段を有する。照射手段は、印字するためのシート状媒体に高周波の電磁波を複数の場所で照射する。検出手段は、シート状媒体の複数の場所における電磁波の伝搬状態の変化を検出する。データ取得手段は、印字するためのシート状媒体の状態によって受ける電磁波の伝搬状態の変化に関するデータを取得する。分布情報取得手段は、前記取得されたデータと前記検出手段で検出されるデータをもとにシート状媒体の状態の分布情報を取得する。演算手段は、シート状媒体の状態の分布情報に基づいて印字するための画像形成条件を判別する。制御手段は、前記電磁波を照射した印字するためのシート状媒体の各場所の状態に応じて、前記判別した結果をもとに画像形成条件を調整する。前記高周波電磁波は、典型的には、30GHz乃至30THzの周波数領域の少なくとも一部の周波数の電磁波を含む。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の画像形成方法は、次の工程を有する。第1の工程において、印字するためのシート状媒体に高周波の電磁波を複数の場所で照射する。第2の工程において、シート状媒体の複数の場所における電磁波の伝搬状態の変化を検出する。第3の工程において、印字するためのシート状媒体の状態によって受ける電磁波の伝搬状態の変化に関するデータと前記検出されたデータをもとにシート状媒体の状態の分布情報を取得してこれに基づいて印字するための画像形成条件を判別する。第4の工程において、前記電磁波を照射した印字するためのシート状媒体の各場所の状態に応じて、前記判別した結果をもとに画像形成条件を調整する。ここにおいて、例えば、シート状媒体を画像形成部に搬送することに同期して前記複数の場所に照射する位置を変化させて前記シート状媒体の分布情報を取得し、画像形成部においても画像形成する過程でシート状媒体の搬送に同期させて、前記分布情報をもとに判別したところと同一個所の画像形成条件を制御する情報を用いて画像形成条件を調整する形態にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、シート状媒体の面内方向の状態(水分量やすき目方向など)の分布をセンシングできるため、例えば、媒体1枚の中でも比較的きめ細かな画像形成の調整が可能で、比較的高品位な画像をシート状媒体上に得ることができる。特に、例えば、水分量の印字媒体端部と中央部の違いに応じて画像形成条件を数ライン毎に調整したり、すき目の方向に対応して画像形成条件を調整したりすることで、周囲環境などに影響されずに常に安定した画像形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本発明の画像形成装置の一実施形態は、照射手段と、検出手段と、データ取得手段と、分布情報取得手段と、演算手段と、制御手段を有する。照射手段は、紙などのシート状媒体にテラヘルツ波を複数の場所で照射する。検出手段は、シート状媒体の複数の場所におけるテラヘルツ波の伝搬状態の変化を検出する。データ取得手段は、シート状媒体の水分量、すき目などの状態によって受けるテラヘルツ波の伝搬状態の変化に関するデータを取得する。分布情報取得手段は、前記取得されたデータと検出手段で検出されるデータをもとにシート状媒体の状態の分布情報を取得する。演算手段は、シート状媒体の状態の分布情報に基づいて印字するための画像形成条件を判別する。制御手段は、シート状媒体の各場所の状態に応じて、前記判別した結果をもとに画像形成条件を調整する。画像形成条件としては、例えば、電子写真方式の画像形成装置では、定着時の加熱温度や転写時のトナーのバイアス電圧などがある。また、例えば、インクジェット方式の画像形成装置では、インク吐出ノズルの駆動数、駆動電圧パルスのパターンなどがある。
【0010】
本実施形態は、従来の様に光を照射してその反射光を利用する方法でなく、THz波の透過、反射波を用いるものである。外部からの迷光の問題がなく、電磁波の波長が数100μm前後と長いため、印字媒体表面の凹凸の影響もないので、ビーム方向をスキャンしながらシート状媒体の状態の面内分布を見る場合にも精度良く検出できる。
【0011】
本実施形態では、シート状印字媒体とTHz波のビームを相対的に移動させながら、透過波若しくは反射波、場合によってはその両方を検出して、印字媒体の状態の面内分布を非接触で検出する。また、画像形成する際に、1枚の印字媒体中においても、状態の面内分布の検出結果をもとに印字条件を制御する。
【0012】
THz波は水分で吸収される性質があるため、水分量に応じて透過または反射する量に変化が生じる。これを利用した検量線を、印字媒体の種類や環境の状況に応じてデータベース化しておけば、水分量の印字媒体内の分布を取得することができる。すき目については、すき方向がTHz波の伝搬に対して偏波分散を与えるので、その透過量や反射量を検出することでデータベースをもとに推定することができる。
【0013】
更に詳細に説明する。図1に示す画像形成装置ないし方法において、1はシート状印字媒体であり、その積層体2から1枚の媒体1が搬送され始めた状態を図1(a)は示している。3はTHz波の発生源であり、量子カスケードレーザ、共鳴トンネルダイオードやガンダイオードに高調波発生手段を取り付けたものなどが用いられる。比較的大型になれば、後進行波管や非線形結晶素子を用いたパラメトリック発生器などを用いてもよい。また、フェムト秒レーザを光伝導素子に照射して発生させる方法を用いるTHz波発生源でもよい。
【0014】
発生源3から出射されたTHz波は、不図示のビーム偏向手段により、シート状印字媒体1の搬送方向(矢印9で示す)とは略垂直方向(矢印11で示す)にスキャンされる。発生源3から出射されてシート状印字媒体1に対して正面から照射されるTHz波ビーム5は、典型的には、1cmΦ程度のスポットの平行ビームに調整してある。THz波ビーム5を符号10で示す様に偏向させれば、印字媒体1上では矢印11の方向に照射位置がスキャンされる。そして、THz波ビーム5は印字媒体1を透過後に透過ビーム6となって、シリンドリカルレンズ7を通して検出器4に到達する。検出器4としては、焦電型検出器であるDLATGS検出器やゴーレイセルなどを用いることができる。これらの検出器を用いる場合には、一般に、光チョッパー(不図示)で光強度を変調させて同期検波することが、S/N向上のための常套手段として用いられる。
【0015】
印字媒体1が矢印9の方向に搬送されるにあたって、上記の様に矢印11の方向にビームスキャンを行えば、図1(b)の符号8の様にジグザグ状にビームスポットを掃引してシート状媒体1の状態分布の情報を取得することができる。
【0016】
ここで、透過THz波6には、図5の検量線で示す様に印字媒体1に含有される水分量に応じて減衰が起こる。そのため、印字媒体1の種類が既知であれば、透過THz波6の強度を検出して水分量の面内分布を取得することができる。図6は、この様な手段で取得される水分量分布の例のイメージ図である。これは、シート状印字媒体1の中央部611より周辺部612に行くほど水分量が多くなるという例である。
【0017】
この様なシート状媒体の水分含有量の分布の取得情報を、図7に示す様な画像形成装置700において、水分量の違いに応じて定着時の加熱温度や転写時のトナーのバイアス電圧などの画像形成条件を制御する画像形成制御部707の画像形成条件に反映させる。このことで、給紙部701のシート状媒体の積層体709から分離されて搬送されてくるシート状印字媒体710上に、ムラのない高品位な画像形成が可能となる。より具体的には、搬送手段712と同期させて分布検出手段706で取得した印字媒体710の状態分布情報に対して、演算処理部705において、水分量などの情報(上記の如き検量線などの情報)を格納する記憶部704のデータをもとに比較を行う。そして、この比較結果による情報の信号を画像形成制御部707に送る。画像形成制御部707では、この情報信号から画像形成条件に関する制御信号を生成する。画像形成手段708では、この画像形成制御部707からの画像形成条件に関する信号をもとに、搬送手段712と同期しながら、画像形成部702に搬送されてきた印字媒体710に、例えば、数ライン毎に画像形成条件を調整しつつ、画像形成を行う。これにより、印字媒体710の状態分布に応じたムラのない高品位の画像形成が可能となる。画像形成された印字媒体710は排紙部703に送られて、そこに符号711で示す様に積層される。
【実施例】
【0018】
以下に、より具体的な実施例について説明する。
【0019】
(実施例1)
本発明による第1の実施例は、シート状印字媒体を搬送すると同時にTHz波をスキャンさせて、印字媒体全体の水分量分布を調べて画像形成条件を制御するものである。
【0020】
図1に示す本実施例の構成において、THz波発生源3は、共鳴トンネルダイオードにより600GHzで電磁波を発生する光源と、ビーム5を矢印10の方向に偏向するガルバノミラーで構成されている。ビーム5の径は約1cm程度に調整されている。このガルバノミラーにより偏向することで、ビーム5が印字媒体1の表面上で矢印11の方向にスキャンされる。シート状印字媒体1を透過したTHz波6は、シリンドリカルレンズ7でDLATGS検出器4に集光されて検出する。
【0021】
印字媒体1が矢印9の方向に搬送されながら、この様なスキャンを行うと、図1(b)の符号8で示す様なジグザグの軌跡をたどってTHz波が照射/検出される。この結果、印字媒体1の水分量の分布が、搬送位置の情報とともに取得される。
【0022】
図5には、印字媒体1の水分量による透過電磁波強度のイメージ図が示されている。水分量が増加すると水分によるTHz波の吸収量が増大するために、分布検出手段で検出される電磁波強度が低下することが分かる。印字媒体の種類(ここでは便宜的にA,B,Cとしている)によっても水分吸収量が異なるので、これをパラメータとしてデータを取得しておく必要がある。この印字媒体の種類の情報については、オペレータが入力するか、別の検出手段、例えば光による方法などを用いて装置に記憶させておけばよい。
【0023】
記憶部に格納されたこうした検量線を用いて、演算処理部でシート状印字媒体1の水分量の分布を検知した例が、図6に示されている。ここでは、例えば、印字媒体1のうちの中央部の白い部分611は水分量が少なく3%以下で、周囲に行くにしたがって周辺部612の領域では徐々に水分量が増大し6%程度にまでなっている。印字媒体1を保管していた場所が乾燥していて、印字媒体1をセットしたときの環境の湿度が高い場合に、十分時間が経過していないときにこの様な分布が生じる。この様な面内分布は従来の検出法では得ることができなかった。
【0024】
この様な印字媒体1の場合、矢印9の方向に搬送しているとすれば、最初の部分においては水分量が多く、中央部で減少し、また最終部分において水分量が増大するということになる。搬送状態に同期させて、同じ印字媒体1内で、この様な状態の違いに応じて画像形成制御部が画像形成手段の画像形成条件を調整すれば、印字状態、印字媒体1のカールの状況などについて最適に制御することができる。
【0025】
画像形成装置700全体について図7を用いて説明する。給紙部701には、印字媒体709がセットされ、印字命令とともに、一部の印字媒体710が搬送手段712により画像形成部702へと供給される。分布検出手段706は図1で説明したものであり、そこで得られた電磁波検出情報が、搬送手段712による印字媒体710の搬送位置情報とともに演算処理部705に送られる。演算処理部705では、これらの取得情報と、予め印字媒体の種類やその水分量に関する電磁波強度情報をデータベースとして記憶していた記憶部704の情報とを比較し、位置に応じた印字媒体の状態の分布を判断する。そして、これをもとにした画像形成制御情報を画像形成制御手段707に送る。或いは、印字媒体の状態の分布情報を画像形成制御手段707に送って、画像形成制御手段707で画像形成制御情報を得てもよい。画像形成制御部707では、画像形成制御情報を、定着時の加熱温度や転写時のトナーのバイアス電圧として反映させる。そして、この反映させた信号を。搬送手段712からの印字媒体710の搬送位置情報をもとに画像形成手段708に順次送って印字媒体710上に画像形成を行う。その後、画像形成された印字媒体710は、排紙部703に積層体711として保持される。
【0026】
この様な1枚のシート状印字媒体の面内で画像形成条件を適切に調整する画像形成装置を提供することで、印字ムラやカールを少なくして、高品位な画像を印字媒体上に得ることができる。
【0027】
(実施例2)
本発明による第2の実施例を、図2を用いて説明する。実施例1では、細かくシート状媒体の状態分布を検出するためにビームのスキャンを行っていたが、実施例2は、固定の複数対の発生器と検出器を設置して、ビームのスキャン系を無くしたものである。
【0028】
図2において、23a乃至23cは実施例1の電磁波発生源3と同様の電磁波発生源、24a乃至24cは実施例1の検出器4と同様の検出器である。なお、電磁波発生源については、1つの発生器からの電磁波ビームを分岐させて複数ビームとしてもよい。各ビーム25は、積層体29から分離して搬送されるシート状印字媒体27を透過して、透過ビーム26となり、透過ビーム26は検出器24a乃至24cで検出されて印字媒体27の状態を各ポイントで取得することになる。
【0029】
印字媒体27の矢印28の方向の搬送により、各ビーム25が照射されるシート状媒体27の各ポイントの情報を線状にスキャンして、状態分布の情報を取得することになる。水分量としては、実施例1で説明した様に周囲と中央部で差が出るパターンが多く、シート状媒体27の全ての表面から情報を取得しなくてよい場合も多い。そうした場合には、本実施例の様に、間引きした状態情報をもとに画像形成装置の画像形成条件を調整させることができる。本実施例の制御方法などは、実施例1と同様である。
【0030】
本実施例では、シリンドリカルレンズなどの光学部品を減らすことでコストを低減することができる。
【0031】
(実施例3)
本発明による第3の実施例を、図3を用いて説明する。本実施例は、シート状印字媒体が紙の場合に、紙のすき目情報を取得するものである。紙のすき目は、一般に、専用紙でなければ紙によってランダムな方向となっている。しかし、1枚の紙で、すき目に或る程度方向性があれば、図3に示した1つのTHz波ビーム35を用いて、矢印38の方向に搬送されている紙37からの透過ビーム36の強度変化を見ていれば、すき目の方向を推定できる。すなわち、紙のすき目はTHz波にとっては偏波分散の要因となり得るので、THz波光源33からの電磁波35を偏光子31で直線偏光として印字媒体37に照射すれば、すき目方向に応じた電磁波強度が検出器34で取得される。
【0032】
搬送方向38に対して平行な偏波にしておけば、透過光36の強度は、すき目方向が偏波方向に一致したとき強くなり、偏波方向と直交したときに弱くなる。検出器34で検出される信号が、変化としては小さいときは、或る領域の信号を積分して平均のすき目方向を決定することができる。
【0033】
すき目方向の分布の情報は、画像形成条件の調整に対して、次の様に使える。例えば、インクジェットプリンタなどにおいて、すき目方向によってインクの浸潤方向が異なり、着弾パターンが安定しないことがある。予め本実施例の方法により、紙のすき目方向が分かれば、画像形成制御部による画像形成手段の調整で紙への着弾パターンを制御して、高品位な安定した画像が得られることになる。
【0034】
必要に応じて、1枚の印字媒体内のすき目方向の分布を取得するために、実施例2の様に複数の電磁波検出素子を備えてもよい。
【0035】
(実施例4)
本発明による第4の実施例を、図4を用いて説明する。本実施例は、図4に示した様に印字媒体47での反射波45も利用するものである。
【0036】
本実施例では、THz波発生器40の出力を偏光子43で直線偏波44とし、シート状印字媒体47に照射した後、透過波46は検出器42で、反射波45は検出器41で検出される。反射波45と透過波46においては、印字媒体47の水分量、すき目方向のいずれの影響をも受けることになる。そこで、2つの検出器41、42で得られる情報と水分量とすき目の対応関係について、予め推定するためのデータベースを記憶部に格納しておけば、水分量とすき目の両方の分布を取得することができる。これも、必要に応じて、複数対の発生器と検出器を用意して、矢印48の方向に搬送されるシート状媒体の全体の分布を取得してもよい。
【0037】
偏光子43を回転させて直線偏波44の偏光の方向を変化させれば、反射と透過の強度比率を変化させることができる。従って、偏光子43の回転と同期させて信号を同期検波で取得すれば、感度を向上させることもできる。
【0038】
本実施例の方法では、例えば、特にPOD機において両面に印字する場合に、印字媒体の定着時に起こるカールの量を調整する様に、水分量とすき目の分布の情報に基づいて定着温度や定着時間を調整して、高品位な画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明によるシート状媒体の状態分布を検出する装置の実施形態及び第1の実施例を説明する図。
【図2】本発明による第2の実施例のシート状媒体の状態分布を検出する装置を示す斜視図。
【図3】本発明による第3の実施例のシート状媒体の状態分布を検出する装置を示す斜視図。
【図4】本発明による第4の実施例のシート状媒体の状態分布を検出する装置を示す斜視図。
【図5】テラヘルツ波用いた検出の検量線の例を説明する図。
【図6】シート状媒体の水分量分布の例を示す平面図。
【図7】本発明による画像形成装置の全体を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0040】
1、2、27、29、37、47、709、710、711‥シート状媒体(印字媒体、シート状媒体の積層体)
3、23a乃至23c、33、40‥照射手段(電磁波発生器、発生源)
4、24a乃至24c、34、41、42‥検出手段(検出器)
5、6、25、26、35、36、44、45、46‥電磁波ビーム(透過波、反射波)
31、43‥偏光子
700‥画像形成装置
704‥データ取得手段(記憶部)
705‥分布情報取得手段(演算処理部)
706‥検出手段(分布検出手段)
707‥制御手段、演算手段(画像形成制御部)
708‥画像形成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字するためのシート状媒体に高周波の電磁波を複数の場所で照射する照射手段と、前記媒体の複数の場所における前記電磁波の伝搬状態の変化を検出する検出手段と、前記印字するためのシート状媒体の状態によって受ける電磁波の伝搬状態の変化に関するデータを取得するデータ取得手段と、前記取得されたデータと前記検出手段で検出されるデータをもとに前記シート状媒体の状態の分布情報を取得する分布情報取得手段と、前記シート状媒体の状態の分布情報に基づいて印字するための画像形成条件を判別する演算手段と、前記電磁波を照射した印字するためのシート状媒体の各場所の状態に応じて、前記判別した結果をもとに画像形成条件を調整する制御手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出するシート状媒体の状態は、前記シート状媒体に含まれる水分量であり、前記制御手段は、水分量の面内分布に応じて画像形成条件を調整することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出するシート状媒体の状態は、前記シート状媒体のすき方向であり、前記制御手段は、すき方向の面内分布に応じて画像形成条件を調整することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記照射手段は、高周波の電磁波の発生源において、その放射方向を偏向させる手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記照射手段は、前記シート状媒体を画像形成部に搬送することに同期して前記シート状媒体上の照射位置を変化させることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記高周波電磁波は30GHz乃至30THzの周波数領域の少なくとも一部の周波数の電磁波を含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
印字するためのシート状媒体に高周波の電磁波を複数の場所で照射して、前記媒体の複数の場所における前記電磁波の伝搬状態の変化を検出し、前記印字するためのシート状媒体の状態によって受ける電磁波の伝搬状態の変化に関するデータと前記検出されたデータをもとに前記シート状媒体の状態の分布情報を取得してこれに基づいて印字するための画像形成条件を判別し、前記電磁波を照射した印字するためのシート状媒体の各場所の状態に応じて、前記判別した結果をもとに画像形成条件を調整することを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記印字するためのシート状媒体を画像形成部に搬送することに同期して前記複数の場所に照射する位置を変化させて前記シート状媒体の分布情報を取得し、前記画像形成部においても画像形成する過程で前記シート状媒体の搬送に同期させて、前記分布情報をもとに判別したところと同一個所の画像形成条件を制御する情報を用いて画像形成条件を調整することを特徴とする請求項7記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−32394(P2008−32394A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202645(P2006−202645)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】