説明

スクリュープレス

【課題】 せん断効果を増加して含水率の低下が図れる濃縮とろ過・脱水を行うスクリュープレスを提供する。
【解決手段】 外筒スクリーン2とスクリュー軸4でろ過室5を形成し、調質汚泥をスクリュー羽根3で移送しながら脱水し、排出口21から脱水ケーキを取出すスクリュープレス1において、排出口21の外筒スクリーン2の中心線bとスクリュー軸4の軸線aを交差させ、スクリュー軸4の汚泥供給側の軸線aを外筒スクリーン2の中心線bから偏芯させて配設し、スクリュー軸4に巻き掛けたスクリュー羽根3を外筒スクリーン2の内周面に摺接させるもので、スクリュー軸4の回転により容積が減少、膨張を繰り返し、濃縮汚泥をもみほぐし、脱水ケーキのせん断効果を増加して含水率の低下が図れる。容積の減少によりケーキは円周方向には回転しにくくなり、供回り現象の防止効果も図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水、集落排水、し尿処理、工場廃水等の排水処理設備の汚泥に凝集剤を添加して、濃縮とろ過・脱水を行うスクリュープレスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難ろ過性の有機性汚泥は凝集剤を添加してフロックを生成させてから、スクリュープレス等で圧搾脱水している。スクリュープレスは、スクリュー軸とスクリュー羽根の回転中心が同心状に構成され、汚泥はスクリュー羽根の回転により、円周方向に回転移動しながら入口側から出口側へと軸方向に移動してろ液が外筒スクリーンより分離される。供給された汚泥は、排出方向に搬送されながら圧搾されて一定の容積変化で厚密された後、脱水ケーキが排出される。例えば、ろ過筒にテーパー状のスクリュー軸を内設し、ろ過筒とスクリュー軸の間に形成するろ過室の容積を排出側に向って減少させて、スクリュー羽根の表裏に貫通する開口部を形成したスクリュープレスが、特許文献1に開示してある。また、外筒スクリーンにスクリュー羽根を設けたスクリュー軸を内設し、ろ過室の容積を排出側に向って一定として、出口部に弾性力を付与する蓋部材を設けた無テーパー型スクリュープレスも特許文献2に開示してある。そして、円筒状の外筒が前半部の濃縮ゾーンと後半部のろ過・脱水ゾーンに分割して回転可能に配設し、濃縮ゾーンのスクリュー羽根をスクリュー軸に二重に巻き掛けたスクリュープレスも、特許文献3に特許出願人が提案している。なお、スクリーンドラムとスクリューの軸心同士を偏芯させる固液分離装置としては、回転可能なスクリーンドラムに、下部内周面に接触させて上部において離隔する回転スクリューを内設した回転篩も、特許文献4に開示してある。
【特許文献1】特開2004−181511号公報(段落番号0017乃至段落番号0019、図1)
【特許文献2】特開2001−321991号公報(請求項1、図1)
【特許文献3】特表2003−513805号公報(段落番号0022及び段落番号0032、図2及び図5)
【特許文献4】特公平07−63873号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の外筒スクリーンにスクリュー羽根を配設した固液分離装置にあっては、外筒スクリーンに捕捉された固形物をスクリュー羽根が掻き取って目詰まりを未然に防止できるので、連続ろ過が可能となる。従来のろ過筒にテーパー状のスクリュー軸を内設したスクリュープレスは、含水率の低いケーキを取り出すことが出来るものであるが、高圧搾によりケーキの含水率が低下してくると、軸方向よりも円周方向の移動が多くなり搬送効率が悪化してくる。最悪の場合、供回り現象が生じ軸方向の移動がなくなり、最後には閉塞する恐れがあり、高圧搾脱水にも限度がある。また、ろ過室の容積を排出側に向って一定とした無テーパー型スクリュープレスは、スクリュー羽根が外筒スクリーンのろ過面を再生して、固形物負荷よりも水負荷の大きい濃度の低い汚泥でも、固液分離が可能となるものであるが、出口部の蓋部材の弾性力を大きくすると、ケーキの詰まりによる汚泥の移送が停滞し、いくら濃縮効率を上げても脱水部の圧密が促進されずに含水率の低下に限度がある。
【0004】
そして、前半部の濃縮ゾーンの外筒を回転自在に配設し、濃縮ゾーンのスクリュー羽根をスクリュー軸に二重に巻き掛けたスクリュープレスは、濃縮ゾーンのスクリュー羽根と外筒スクリーンの差速回転によりろ過面の摺接回数を増加させ、二重のスクリュー羽根が押し込み圧を高めるので、大容量処理を可能とするものであるが、ろ過性の良い汚泥にあっては、ろ過・圧搾ゾーンの高圧搾により軸方向よりも円周方向の移動が多くなり搬送効率が悪化して、高圧搾にも限度がある。従来のスクリーンドラムと回転スクリューの軸心を偏芯させる回転篩は回転スクリューとスクリーンドラムを、逆方向に差速回転させれば、下部内周面のスクリーンの再生頻度が多くなるものであるが、回転スクリューが離隔する上部においてろ材の再生が困難で目詰まりを起こす恐れがある。
【0005】
この発明は、スクリュー羽根を巻き掛けたスクリュー軸を工夫して、外筒スクリーンに内設するろ過室の濃縮汚泥及び脱水ケーキにもみほぐし作用を与え、供回り防止効果も発揮して脱水効率の向上を図るスクリュープレスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るスクリュープレスは、外筒スクリーンとスクリュー軸でろ過室を形成し、ろ過室に供給した凝集汚泥を、スクリュー軸に巻き掛けたスクリュー羽根で移送しながら脱水し、排出口から脱水ケーキを取出すスクリュープレスにおいて、スクリュー軸の軸線を外筒スクリーンの中心線から偏芯させて配設し、スクリュー軸に巻き掛けたスクリュー羽根を外筒スクリーンの内周面に摺接させるもので、偏芯させたスクリュー軸が一回転する間にスクリュー軸と外筒スクリーンでろ過室のろ室容積の空隙を変化させ、脱水ケーキのせん断効果を発揮して含水率の低下が図れる。
【0007】
請求項2に記載のスクリュープレスの発明は、ろ過室の排出口で外筒スクリーンの中心線とスクリュー軸の軸線を交差させ、ろ過室の汚泥供給側でスクリュー軸の軸線を外筒スクリーンの中心線から偏芯させたもので、スクリュー軸の回転によりろ室容積が減少、膨張を繰り返して濃縮汚泥と脱水ケーキをもみほぐし、ろ室容積の減少により濃縮汚泥と脱水ケーキは円周方向(減少方向)には回転しにくくなり、供回り現象の防止効果が図れる。
【0008】
請求項3に記載のスクリュープレスの発明は、スクリュー軸に原液の供給路を内設し、供給路に連通する供給口からろ過室に調質汚泥を供給するもので、スクリュー軸の軸心から供給する軟弱な凝集汚泥が、スクリュー羽根の影響を受けて破壊されることがなく、調質汚泥の供給口が外筒スクリーンの回転に支障となることもない。請求項4に記載のスクリュープレスの発明は、スクリュー羽根を巻き掛けた前半部の濃縮ゾーンのスクリュー軸に、位相をずらせて同じピッチのスクリュー羽根を巻き掛けたもので、外筒スクリーンへの摺接回数が多くなり、スクリーンの目詰りが未然に防止される。濃縮ゾーンでの濃縮効果が高められ、含水率の低い濃縮汚泥をろ過・脱水ゾーンへ移送できる。請求項5に記載のスクリュープレスの発明は、外筒スクリーンに張設したスクリーンの微細孔の大きさを、調質汚泥の供給側からケーキの排出側に向かって段階的に縮小したもので、順次内圧が高まるろ過室から固形分の目抜けが防止され、ろ液濁度を悪化させることもなく、ろ液回収率が高くなる。
【0009】
請求項6に記載のスクリュープレスの発明は、外筒スクリーンに内設するスクリュー軸は汚泥の供給側からケーキの排出側に向って拡大し、外筒スクリーンとスクリュー軸の間に形成するろ過室の容積を排出側に向って減少させたもので、一定の容積変化で圧密され、偏芯したスクリュー軸の回転により供回り現象が防止され、脱水ケーキの高圧搾が可能となる。請求項7に記載のスクリュープレスの発明は、スクリュー軸を円筒状に構成したもので、水負荷が大きく、目詰まりしやすい凝集汚泥でも大容量処理が可能となり、偏芯したスクリュー軸のもみほぐし作用により、濃縮汚泥の含水率を低下させることができる。
【0010】
請求項8に記載のスクリュープレスの発明は、外筒スクリーンに中間軸受を配設して、前半部の濃縮ゾーンの外筒スクリーンと後半部のろ過・脱水ゾーンの外筒スクリーンに分割し、濃縮ゾーンの外筒スクリーンとろ過・脱水ゾーンの外筒スクリーンを個別に回転自在に配設したもので、濃縮ゾーンの外筒スクリーンをスクリュー軸と逆方向に差速回転させれば、相対的に外筒スクリーンとスクリュー羽根の摺接回数が高められ、スクリーンの目詰まりを未然に防止できる。濃縮ゾーンでは濃度が低く水負荷が大きい汚泥でも濃縮密度が高くなり、汚泥の処理量が増加して、ろ過・脱水ゾーンへの移送汚泥濃度を高められる。そして、ろ過・脱水ゾーンの外筒スクリーンと濃縮ゾーンの外筒スクリーンを共回りさせれば、脱水ケーキを剥離させる方向にせん断力を作用させ、過剰に滞留したケーキも軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るスクリュープレスは上記のように構成してあり、外筒スクリーンとスクリュー軸でろ過室を形成し、スクリュー軸の軸線を外筒スクリーンの中心線から偏芯させ、スクリュー羽根の先端を全周に渡って常時外筒スクリーンのスクリーン面に摺接させるので、偏芯させたスクリュー軸が汚泥の供回り現象を防止ながら、ろ過室の濃縮汚泥と脱水ケーキにもみほぐし効果を発揮して、濃縮ゾーンでの汚泥の濃縮と濃縮汚泥の移送を促進し、ろ過・脱水ゾーンでの脱水ケーキの圧密が加速され、低含水率の脱水ケーキが得られる。そして、スクリュー軸の軸芯から調質汚泥をろ過室に供給すれば、凝集フロックの破壊が防止されて濃縮効率が高くなり、機体をコンパクトに構成して、濃縮時間とろ過面積が大きくなる。
【0012】
濃縮ゾーンのスクリュー羽根をスクリュー軸に二重に巻き掛ければ、濃縮汚泥の移送量を増加させ、ろ過・脱水ゾーンでの圧密効果を高めることができる。そして、外筒スクリーンに張設したスクリーンの微細孔の大きさを、調質汚泥の供給側からケーキの排出側に向かって段階的に縮小すれば、固形分の目抜けが防止され、ろ液回収率が高くなる。また、外筒スクリーンとスクリュー軸の間隙をケーキの排出方向に相対的に減少させれば、脱水ケーキの高圧搾が可能となる。なお、外筒スクリーンに同心状のスクリュー軸を配設すれば、濃縮装置としても利用でき、処理量が増加して製作費も安くなる。
【0013】
固形物負荷よりも水負荷の大きい濃度の低い汚泥でもスクリーンの目詰まりが防止できるスクリュープレスとして、前半部の濃縮ゾーンの外筒スクリーンと後半部のろ過・脱水ゾーンの外筒スクリーンを分割して回転自在に配設すれば、外筒スクリーンとスクリュー軸の回転数の調節が可能となり、ろ過速度、ケーキ含水率ともに容易に調整できる。低水分・高能率などの自由度の高い運転が可能となり、多種、多様な性状の有機性汚泥に対し、濃縮ゾーンとろ過・脱水ゾーンの最適な運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明に係るスクリュープレスを図面に基づき詳述すると、先ず、図1はスクリュープレスの一部縦断側面図であって、スクリュープレス1は、外筒スクリーン2とスクリュー羽根3を巻き掛けたスクリュー軸4でろ過室5を形成し、スクリュー軸4を調質汚泥の供給側からケーキの排出側に向って拡大させて、外筒スクリーン2とスクリュー軸4の間のろ過室5を排出側に向って縮小させてある。図2は外筒スクリーン2の縦断面図であって、外筒スクリーン2には複数の微細孔を配設したスクリーン6が張設してあり、汚泥の供給側から脱水ケーキの排出側に向かってスクリーン6の微細孔の大きさを段階的に縮小してある。この発明の実施例では、濃縮ゾーンAの外筒スクリーン2に直径がφ1.5mmの微細孔のスクリーン6aが張設してあり、ろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン2には排出側に向かって順次微細孔を小さくした直径がφ1.5mm、φ1.0mm、φ0.5mmのスクリーン6b、6c、6dを張設してある。外筒スクリーン2の孔径を供給側から搬出側に向って段階的に縮小すれば、順次内圧が高まるろ過室5から固形分の目抜けが防止され、ろ液濁度が悪化することもなく、ろ液回収率が良くなる。
【0015】
図3はスクリュープレスの供給側の拡大図であって、外筒スクリーン2の供給側に嵌着した入口フランジ7にスプロケット8を外嵌し、フレーム9に載置した正逆転可能な外筒駆動機10に連動連結してある。スクリュー軸4に供給管11が連結してあり、スクリュー軸4に凝集スラリーの供給路12を設け、ろ過室5の始端部に供給孔12aを開口してある。スクリュー軸4の供給口12aから供給する汚泥は、一連に巻き掛けたスクリュー羽根3に掻き乱されることがない。軟弱な凝集フロックの破壊を防止して濃縮効率が高くなり、機体をコンパクトに構成して、濃縮時間とろ過面積が大きくなる。
【0016】
図4はスクリュープレスの排出側の拡大図であって、外筒スクリーン2の排出側に連結した回転板13に外筒スクリーン2と同径の外筒ケーシング14が連結してあり、回転板13がフレーム15に配設した回転板軸受16に回転可能に軸支してある。外筒スクリーン2に連設した外筒ケーシング14にスクリュー軸4の後端部を延設し、スクリュー軸4の後端部を円柱状に形成して外筒ケーシング14の内部に調整室17を形成してある。ろ過・脱水ゾーンBからスクリュー羽根3で調整室17に押出された脱水ケーキを圧密して含水率のバラツキを均一化させる。外筒スクリーン2とスクリュー軸4で形成するろ過室5は、ろ過室5に供給した水負荷の大きい調質汚泥を、外筒スクリーン2から大量のろ液を排出する濃縮ゾーンAと、濃縮された汚泥を外筒スクリーン2から更にろ液を排出しながらスクリュー羽根3で加圧して脱水するろ過・脱水ゾーンBに区分してあり、密閉状の調整室17を、脱水ケーキを圧密して含水率のバラツキを均一化させる調整ゾーンCとしてある。調整室17の後端側に脱水ケーキの背圧調整用のプレッサー18が配設してあり、フレーム15に設けた移動軸19に摺動自在に支架してある。プレッサー18はフレーム15に配設したシリンダー20で移動させ、排出口21の開口量を調節し、調整室17のケーキに背圧を加えて水分を均一化させる。更に、調整ゾーンCからろ過・脱水ゾーンBのろ過室5に背圧を加えながら固液分離を促進させ、水分を調整する。
【0017】
図1に示すように、スクリュー軸4の後端部に連結したスクリュー駆動軸22が、フレーム13の架台23に設けた軸受24に軸支して、スクリュー駆動軸22に嵌着したスプロケット25が、フレーム13に載置したスクリュー駆動機26に連動連結してあり、外筒スクリーン2とスクリュー軸4を差速回転可能としてある。外筒スクリーン2とスクリュー軸4を逆方向に差速回転させれば、相対的にスクリュー羽根3の回転数を高め、外筒スクリーン2のろ過面の摺接回数を増加させる。なお、符号29は外筒スクリーン2の外周面に沿って配設した洗浄管であって、必要に応じて洗浄管29から洗浄水を噴射して外筒スクリーン2を回転させながら、スクリーン6を洗浄する。符号30はろ液受トラフ、符号31は脱水ケーキを受けるケーキホッパーである。
【0018】
図5はスクリュー羽根の先端部に一連のスクレーパーを配設した一部縦断側面図であって、スクリュー軸4に巻き掛けたスクリュー羽根3の先端部にゴム等の弾力性のスクレーパー27を着脱自在にボルト28で螺着して、濃縮ゾーンの始端部からろ過・脱水ゾーンの終端部に渡って一連のスクレーパー27を外筒スクリーン2のスクリーン6に摺接させても良いものである。
【0019】
図6は外筒スクリーンの中心線からスクリュー軸の軸線を偏芯させたスクリュープレスの一部縦断側面図であって、外筒スクリーン2に内接するスクリュー軸4は、その軸線aを外筒スクリーン2の中心線bから偏芯させて配設してある。スクリュー軸4に巻き掛けたスクリュー羽根3の先端3aを外筒スクリーン2の内周面に摺設させてある。この発明の実施例では、ろ過室5の脱水ケーキ排出口21で外筒スクリーン2の中心線bとスクリュー軸4の軸線aを交差させ、ろ過室5の汚泥供給側でスクリュー軸4の軸線aを外筒スクリーン2の中心線bから偏芯させてあり、偏芯角度は、0.3〜1.0度としてある。スクリュー羽根3を巻き掛けたスクリュー軸4は、外筒スクリーン2の中心線bを基準に回転する。
【0020】
図7はスクリュー軸の軸線を偏芯させたスクリュープレスの概念図であって、図7(イ)はスクリュー軸の軸線を偏芯させたスクリュープレスの概念図であって、図7(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)は、図7(イ)に示すA−A断面のスクリュー羽根の羽根面高さh1,h2を0度、90度、180度、270度ずつ回転させた時の断面図を示している。偏芯させたスクリュー軸4が一回転する間にスクリュー軸4と外筒スクリーン2でろ過室5の空隙を変化させ、ろ室容積の減少と膨張を行って、濃縮汚泥と脱水ケーキのもみほぐし作用を発揮する。図6に示す、スクリュー軸4の供給口12aからろ過室5に凝集スラリーを供給すると、濃縮ゾーンAでは、凝集スラリーをスクリュー羽根3で移送して、外筒スクリーン2からろ液を分離しながら濃縮汚泥をもみほぐし、ろ過・脱水ゾーンBでは、更に濃縮汚泥からろ液を分離して脱水ケーキをもみほぐし、せん断効果を増加して、含水率の低下が図れる。ろ過室5の容積の減少により脱水ケーキは円周方向(減少方向)には回転しにくくなり、供回り現象の防止効果も奏する。
【0021】
図8は濃縮ゾーンのスクリュー羽根を二重としたスクリュープレスの他の実施例であって、スクリュー羽根3を巻き掛けた前半部の濃縮ゾーンAのスクリュー軸4に位相をずらせて同ピッチのスクリュー羽根32をスクリュー軸4に二重に巻き掛けてあり、外筒スクリーン2のスクリーン6へのスクリュー羽根3、32の摺接回数が増加して、スクリーン6の目詰りが未然に防止する。濃縮ゾーンAでの濃縮効果が高められ、ろ過・脱水ゾーンBへの濃縮汚泥の移送量も増加する。
【0022】
図9はスクリュー軸を円筒状に構成したスクリュープレスの他の実施例であって、スクリュープレス1aは外筒スクリーン33と外筒スクリーン33に内設するスクリュー軸34を円筒状に構成し、ろ過室37の排出口35で外筒スクリーン33の中心線b’とスクリュー軸34の軸線a’を交差させ、ろ過室37の汚泥供給側でスクリュー軸34の軸線a’を外筒スクリーン33の中心線b’から偏芯させてある。スクリュー軸34に巻き掛けたスクリュー羽根36を外筒スクリーン33に摺接させて、ろ過室37を供給側から排出側に向って同形状としたもので、スクリュー軸34に設けた供給口38aからろ過室37の始端部に供給する調質汚泥は、水負荷が大きく、目詰まりしやすい凝集汚泥でも大容量処理が可能となり、濃縮汚泥のもみほぐし作用を発揮して、濃縮汚泥の含水率を低下する。
【0023】
図10は外筒スクリーンに中間軸受を配設したスクリュープレスの他の実施例であって、スクリュープレス1bは円筒状の外筒スクリーン39が前半部の濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aと後半部のろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン39bに分割されており、濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aとろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン39bの間に中間軸受40が介装してある。中間軸受40は濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aに連結した軸継手40aと、ろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン39bに連結した軸継手40bで構成してある。濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aとろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン39bが、個別の外筒駆動機(図示せず)に連動連結してあり、それぞれ独立して回転できるようにしてある。濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aとろ過・脱水ゾーンBの外筒スクリーン39bの内部に一連のスクリュー羽根41を巻き掛けたスクリュー軸42が配設してあり、スクリュー羽根41を巻き掛けた濃縮ゾーンAのスクリュー軸42に位相をずらせて同ピッチのスクリュー羽根43を巻き掛けてある。スクリュー軸42は汚泥の供給側からケーキの排出側に向って拡大させてあり、外筒スクリーン39とスクリュー軸42との間のろ過室44を供給側から排出側に向って縮小させてある。スクリュー軸42に凝集スラリーの供給路45を設け、ろ過室44の始端部に供給口45aを開口してある。スクリュー軸42の後端部を円柱状に形成して、外筒ケーシング46の内部に調整室47を構成してあり、調整室47の後端側に配設したプレッサー48で脱水ケーキに背圧を付与する。外筒スクリーン39とスクリュー軸42で形成するろ過室44は、水負荷の大きい調質汚泥を処理する濃縮ゾーンAと、濃縮された汚泥を加圧脱水するろ過・脱水ゾーンBに区分してあり、調整室47を脱水ケーキの水分を均一化させる調整ゾーンCとしてある。
【0024】
図10に示す濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aとろ過・脱水ゾーンBとを独立して回転自在としたスクリュープレス1bは、図8と同様に,スクリュー軸42の軸線aを外筒スクリーン39の中心線bから偏芯させて配設し、スクリュー軸42に巻き掛けたスクリュー羽根41、43の中心は外筒スクリーン39の中心線bと同一であり、スクリュー羽根41、43の先端を常時外筒スクリーン39の内周面に摺接させてある。この発明の実施例ではろ過室44の排出口49で外筒スクリーン39の中心線bとスクリュー軸42の軸線aを交差させ、ろ過室44の汚泥供給側でスクリュー軸42の軸線aを外筒スクリーン39の中心線bから偏芯させてあり、偏芯角度は、0.3〜1.0度としてある。スクリュープレス1bの運転は、スクリュー駆動機(図示せず)でスクリュー軸42を回転させながら、濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aを外筒駆動機(図示せず)で逆方向に回転させて汚泥の濃縮、脱水を行なう。偏芯させたスクリュー軸42の回転により、スクリュー軸42と外筒スクリーン39でろ過室44の空隙を変化させ、濃縮ゾーンAでは濃縮汚泥のもみほぐし作用を発揮して、ろ液を分離する。
【0025】
濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aをスクリュー軸42とは逆方向に差速回転させることにより、スクリュー軸42の相対回転速度が速くなり、ろ過・脱水ゾーンBへの押込み圧を高めることができる。固形物負荷よりも水負荷が大きい汚泥でも、濃縮ゾーンAの外筒スクリーン39aの内周面にスクリュー羽根41、43の摺接回数が増加して、目詰りを未然に防止した外筒スクリーン39aからろ液が分離され、濃度の高い濃縮汚泥がろ過・脱水ゾーンBへ移送され、汚泥の処理量が増加する。ろ過・脱水ゾーンBに移送された濃縮汚泥は、脱水ケーキのもみほぐし作用及びせん断効果の増加により、更にろ液が分離され、含水率の低下が図れる。ろ過室44の容積の減少でケーキは円周方向(減少方向)には回転しにくくなり、供回り現象の防止効果も図れる。調整ゾーンCの密閉状の調整室47では、ろ過・脱水ゾーンBからスクリュー羽根41で調整室47に押出された脱水ケーキを圧密して含水率のバラツキを均一化させ、排出口49から水分を均一化して圧密されたケーキを取出す。なお、前半部の濃縮ゾーンAのスクリュー軸42に二連に巻き掛ける一方のスクリュー羽根43を省略しても良いものである。
【実施例】
【0026】
濃縮ゾーンの外筒スクリーン(長さ500mm)と、ろ過・脱水ゾーンの外筒スクリーン(長さ1000mm)に分割したスクリーン径φ300mmのスクリュープレスを使用し、標準軸のスクリュープレスと、汚泥供給側のスクリュー軸の軸線を外筒スクリーンの中心線から0.6度偏芯させた偏芯軸のスクリュープレスで某下水処理場の混合生汚泥のろ過試験を行った。設定条件は、濃度3.5%の混合生汚泥に高分子凝集剤1%を添加して、汚泥圧入圧10kPaでスクリュープレスに圧入し、ケーキ排出口のプレッサーの圧力を300kPaに設定し、スクリュー軸と逆回転させる濃縮ゾーンの外筒スクリーンの回転数を三段階に切り替えて、ケーキ処理量(kgDS/h)とケーキ含水率(%)を測定した。その比較試験の結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表2は、表1の試験結果からケーキ処理量とケーキ含水率の相関関係を表した図表であって、縦軸にケーキ処理量(kgDS/h)と横軸にケーキ含水率(%)を表わしている。測定結果は、同等のケーキ処理量に対し、標準軸より偏芯軸を使用したスクリュープレスがケーキ含水率を約2%低減させる。
【0029】
【表2】

【0030】
表3はスクリュー回転数とケーキ含水率の相関図であって、縦軸にスクリュー回転数(min-1)と横軸にケーキ含水率(%)を表わしている。同等のスクリュー回転数に対し、標準軸より偏芯軸のスクリュープレスがケーキ含水率を約2%低減させる。
【0031】
【表3】

【0032】
上記の表1乃至表3の比較試験の結果から、偏芯軸を使用するスクリュープレスは、外筒スクリーンに内設した偏芯軸の回転により、ろ過室の空隙を変化させ、ろ過室に圧入された汚泥容積の減少、膨張を繰り返し、もみほぐし作用を発揮するものと思われる。そして、ろ過室の容積の減少で脱水されたケーキは円周方向(減少方向)には回転しにくくなり、供回り現象の防止効果も図れるものと推測できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明に係るスクリュープレスは、スクリュー軸の軸線を外筒スクリーンの中心線から偏芯させると共に、スクリュー羽根の先端は常時外筒スクリーンの内周面に摺接させるので、外筒スクリーンに内設するろ過室の濃縮汚泥と脱水ケーキにもみほぐし作用を与え、供回り防止効果を発揮して、含水率の低下と均一な含水率の脱水効率の向上を図ることができる。従って、下水、し尿、或いは、食品生産加工廃水等の濃縮と、難ろ過性汚泥の圧搾脱水に適するスクリュープレスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明に係るスクリュープレスの一部縦断側面図である。
【図2】同じく、外筒スクリーンの縦断面図である。
【図3】同じく、スクリュープレスの供給側の拡大図である。
【図4】同じく、スクリュープレスの排出側の拡大図である。
【図5】同じく、スクリュー羽根の先端部に一連のスクレーパーを配設した一部縦断側面図である。
【図6】同じく、外筒スクリーンの中心線からスクリュー軸の軸線を偏芯させたスクリュープレスの一部縦断側面図である。
【図7】同じく、図7(イ)はスクリュー軸の軸線を偏芯させたスクリュープレスの概念図であって、図7(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)は、スクリュー軸が一回転する間に減少、膨張と変化するろ室容積の概念図である。
【図8】同じく、濃縮ゾーンのスクリュー羽根を二重とした他の実施例のスクリュープレスである。
【図9】同じく、スクリュー軸を円筒状に構成した他の実施例のスクリュープレスである。
【図10】同じく、外筒スクリーンに中間軸受を配設した他の実施例のスクリュープレスの一部縦断側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1、1a、1bスクリュープレス
2、33、39、39a、39b 外筒スクリーン
3、32、36、41、43 スクリュー羽根
4、34、42 スクリュー軸
5、37、44 ろ過室
6、6a、6b、6c、6d スクリーン
12、38、45 供給路
12a、38a、45a 供給口
21、35、49 排出口
40 中間軸受
a 軸線
b 中心線
A 濃縮ゾーン
B ろ過・脱水ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒スクリーン(2、33、39)とスクリュー軸(4、34、42)でろ過室(5、37、44)を形成し、ろ過室(5、37、44)に供給した調質汚泥を、スクリュー軸(4、34、42)に巻き掛けたスクリュー羽根(3、32、36、41、43)で移送しながら脱水し、排出口(21、35、49)から脱水ケーキを取出すスクリュープレス(1、1a、1b)において、スクリュー軸(4、34、42)の軸線(a)を外筒スクリーン(2、33、39)の中心線(b)から偏芯させて配設し、スクリュー軸(4、34、42)に巻き掛けたスクリュー羽根(3、32、36、41、43)を外筒スクリーン(2、33、39)の内周面に摺接させることを特徴とするスクリュープレス。
【請求項2】
上記ろ過室(5、37、44)の排出口(21、35、49)で外筒スクリーン(2、33、39)の中心線(b)とスクリュー軸(4、34、42)の軸線(a)を交差させ、ろ過室(5、37、44)の汚泥供給側でスクリュー軸(4、34、42)の軸線(a)を外筒スクリーン(2、33、39)の中心線(b)から偏芯させたことを特徴とする請求項1に記載のスクリュープレス。
【請求項3】
上記スクリュー軸(4、34、42)に原液の供給路(12、38、45)を内設し、供給路(12、38、45)に連通する供給口(12a、38a、45a)からろ過室(5、37、44)に調質汚泥を供給することを特徴とする請求項1または2に記載のスクリュープレス。
【請求項4】
上記スクリュー羽根(3、41)を巻き掛けた前半部の濃縮ゾーン(A)のスクリュー軸(4、42)に、位相をずらせて同ピッチのスクリュー羽根(32、43)を巻き掛けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスクリュープレス。
【請求項5】
上記外筒スクリーン(2)に張設したスクリーン(6a、6b、6c、6d)の微細孔の大きさを、調質汚泥の供給側からケーキの排出側に向かって段階的に縮小したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のスクリュープレス。
【請求項6】
上記スクリュー軸(4、42)は汚泥の供給側からケーキの排出側に向って拡大し、外筒スクリーン(2、39)とスクリュー軸(4、42)の間に形成するろ過室(5,44)の容積を排出側に向って減少させたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のスクリュープレス。
【請求項7】
上記スクリュー軸(34)を円筒状に構成してあることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のスクリュープレス。
【請求項8】
上記外筒スクリーン(39)に中間軸受(40)を配設して、前半部の濃縮ゾーン(A)の外筒スクリーン(39a)と後半部のろ過・脱水ゾーン(B)の外筒スクリーン(39b)に分割して、濃縮ゾーン(A)の外筒スクリーン(39a)とろ過・脱水ゾーン(B)の外筒スクリーン(39b)を個別に回転自在に配設したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のスクリュープレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−110661(P2010−110661A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282800(P2008−282800)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】