説明

スクリーン印刷版およびその製造方法

【課題】 パターンの膜厚を均一にしつつカスレの発生を少なくすることができるスクリーン印刷版およびスクリーン印刷版の製造方法を提供する。
【解決手段】 ペースト通過孔4は、スキージの走行方向に平行な辺21,21’,22,22’を有する長方形状であるとともに一方の主面h側の第1孔部1および他方の主面t側の第2孔部2からなり、第1孔部1および第2孔部2の開口幅は、スキージの走行方向に平行な辺21,21’,22,22’間で第1孔部1より第2孔部2が大きく、スキージの走行方向に直交する辺31,31’,32,32’間で等しいスクリーン印刷版である。ペースト通過孔4の開口部においてスキージが最初に通過する部分での印刷ペーストの広がりは制限されるので、他方の主面t側より吐出するペースト量が周辺部でばらつかなくなり、パターンのカスレの発生を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層チップコンデンサ等の電子部品の導体パターン形成工程等に好適なスクリーン印刷版およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、積層チップコンデンサ等の電子部品の導体パターン形成工程等にスクリーン印刷が利用されている。
【0003】
スクリーン印刷に用いる従来の一般的なスクリーン印刷版は、所定の形状に形成されたペースト通過孔を有しており、一方の主面がスキージを走行させる側となり、他方の主面が印刷対象物に接触させる側となる。このスクリーン印刷版において、ペースト通過孔の一方の主面側の孔部の面積を他方の主面側の孔部の面積よりも小さく設定して、スキージが掻き出した印刷ペーストを面積が小さい一方の主面側の孔部を通過させた後で広げながら他方の主面側より吐出させることにより、形成されるパターンの周辺部の印刷ペーストの量を中央部に比べて少なくなるようにしたスクリーン印刷版が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
このスクリーン印刷版を用いれば、一般的にスクリーン印刷によって形成された印刷ペーストのパターンは周辺部が盛り上がりやすい傾向にあるためパターンの膜厚を均一にすることは困難であるが、周辺部の盛り上がりが抑えられるのでパターンの膜厚を均一にすることができるというものである。
【特許文献1】特開平6−143855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷では、スキージが印刷ペーストを掻き出す量が、ペースト通過孔の開口部においてスキージが最初に通過する部分で少なく、スキージが最後に通過する部分で多い。このうちペースト通過孔の開口部においてスキージが最初に通過する部分では、吐出される印刷ペーストの量が少ないことから、印刷ペーストがペースト通過孔の他方の主面側の開口の周辺部まで充分に行き届かないことがあり、パターンのカスレが発生しやすいという問題点があった。
【0006】
このようなパターンのカスレは、積層チップコンデンサの導体パターンのように長方形状のパターンを形成する場合であれば、スキージの走行方向に直交する辺に発生しやすく、そのような導体パターンが形成された積層チップコンデンサは静電容量値がばらついてしまうという問題点がある。このため、通常は長方形状のパターンに対するスキージの走行方向を長辺と平行に設定してパターンのカスレが発生する部分を少なくしているが、スキージが最初に通過する部分は残っているので、パターンのカスレを完全になくすことは困難である。
【0007】
なお、長方形状のパターンに対するスキージの走行方向を長辺に対して20〜70度と斜めにした設定は、パターンのカスレを改善することはできるが、この場合であれば使用するスキージが非常に長くなり印刷装置が大型化するので採用することは困難である。
【0008】
本発明は上記のような従来のスクリーン印刷版における問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、印刷ペーストのパターンの膜厚を均一にしつつパターンのカスレの発生を少なくすることができるスクリーン印刷版およびそのスクリーン印刷版の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスクリーン印刷版は、一方の主面上のスキージの走行に伴って前記一方の主面からペースト通過孔を通して他方の主面に印刷ペーストを通過させるスクリーン印刷版であって、前記ペースト通過孔は、前記スキージの走行方向に平行な辺を有する長方形状であるとともに前記一方の主面側の第1孔部および前記他方の主面側の第2孔部からなり、前記第1孔部および前記第2孔部の開口幅は、前記スキージの走行方向に平行な辺間で前記第1孔部より前記第2孔部が大きく、前記スキージの走行方向に直交する辺間で等しいことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明のスクリーン印刷版は、上記構成において、前記第1孔部および前記第2孔部の開口幅は、それぞれ深さ方向で一定であることを特徴とするものである。
【0011】
さらに本発明のスクリーン印刷版の製造方法は、スクリーン印刷用基材の一方の主面に第1感光性樹脂層を形成する工程と、前記第1感光性樹脂層に長方形状の第1遮光部を有する第1露光用マスクを通して露光する工程と、前記第1感光性樹脂層の前記第1遮光部に対応する部位を除去して、平行な一方の辺および平行な他方の辺を有する仮設孔部を設けた第1樹脂層を形成する工程と、前記仮設孔部を充填しつつ前記第1樹脂層の一方の主面に第2感光性樹脂層を形成する工程と、前記第2感光性樹脂層の一方の主面に、前記第1遮光部よりも平行な一方の辺間で幅が大きく平行な他方の辺間で幅が小さい長方形状の第2遮光部を有する第2露光用マスクを通して、前記第2遮光部の平行な一方の辺間に前記仮設孔部の平行な一方の辺が位置するとともに、前記第2遮光部の平行な他方の辺が前記仮設孔部の平行な他方の辺間に位置するように位置合わせして露光する工程と、前記第2感光性樹脂層の前記第2遮光部に対応する部位を除去して第2樹脂層を形成し、前記仮設孔部内に前記仮設孔部の平行な一方の辺および前記第2樹脂層に形成された前記第2遮光部に対応する平行な他方の辺を有する第1孔部を形成するとともに、前記第1樹脂層の一方の主面側の前記第2樹脂層に前記第2遮光部に対応する平行な一方の辺および平行な他方の辺を有する第2孔部を形成して、前記第1孔部および前記第2孔部からなるペースト通過孔を設ける工程とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリーン印刷版によれば、ペースト通過孔の第1孔部および第2孔部の開口幅は、スキージの走行方向に平行な辺間で第1孔部より第2孔部が大きいことから、第1孔部を通過した印刷ペーストを広げながら第2孔部より吐出させるので、形成された印刷ペーストのパターンはスキージの走行方向に平行な辺部のペースト量が中央部に比べて少なくなり、周辺部の盛り上がりが抑えられる。他方、ペースト通過孔の第1孔部および第2孔部の開口幅は、スキージの走行方向に直交する辺間で等しいことから、ペースト通過孔の開口部においてスキージが最初に通過する部分での印刷ペーストを第1孔部から第2孔部を通過する間に第2孔部のスキージが最初に通過する辺まで充分に行き届かせることができるので、他方の主面側より吐出するペースト量が周辺部でばらつかなくなる。即ち、本発明のスクリーン印刷版は、周辺部の盛り上がりを抑えてパターンの膜厚を均一にしつつ、スキージの走行方向による吐出するペースト量のばらつきを抑えてカスレの発生を少なくすることができる。
【0013】
また本発明のスクリーン印刷版によれば、上記構成において、第1孔部および第2孔部の開口幅が、それぞれ深さ方向で一定であるときには、印刷ペーストの流れは開口幅が一定な部分を通過する間に乱れが少なくなるので、それぞれの孔部での印刷ペーストの通過状態を安定させることができる。
【0014】
さらに本発明のスクリーン印刷版の製造方法によれば、第1遮光部に対応した仮設孔部を有する第1樹脂層を形成しておいて、仮設孔部を充填しつつ第1樹脂層の一方の主面に第2感光性樹脂層を形成し、第2遮光部の平行な一方の辺間に仮設孔部の平行な一方の辺が位置するとともに、第2遮光部の平行な他方の辺が仮設孔部の平行な他方の辺間に位置するように位置合わせして露光することから、第2遮光部の位置合わせに多少のずれがあったとしても、仮設孔部内に仮設孔部の平行な一方の辺および第2樹脂層に形成された第2遮光部に対応する平行な他方の辺を有する第1孔部が形成されるとともに、第1樹脂層の一方の主面側の第2樹脂層に第2遮光部に対応する平行な一方の辺および平行な他方の辺を有する第2孔部が形成される。従って、第1孔部および第2孔部の開口幅がスキージの走行方向に平行な辺間で第1孔部より第2孔部が大きくスキージの走行方向に直交する辺間で等しいペースト通過孔を容易に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明のスクリーン印刷版6の実施の形態の一例を示す、一部を下方から見た平面図であり、図2(a)は図1のA−A’線断面図であり、(b)は図1のB−B’線断面図である。これらの図に示す本発明のスクリーン印刷版6は、層状に形成された樹脂層3の一部に主面側からみて長方形状をなすペースト通過孔4が設けられている。また、樹脂層3の内部には印刷ペーストを通過させることが可能なメッシュ状のスクリーン印刷用基材5が埋め込まれており、スクリーン印刷用基材5の一部はペースト通過孔4が設けられた領域で露出している。
【0017】
本発明のスクリーン印刷版6を用いたスクリーン印刷は、一方の主面h上に印刷ペースト(図示せず)を載せるとともに他方の主面t側に印刷対象物(図示せず)を配置しておいて、一方の主面h上にスキージ(図示せず)を押し当てて走行させることにより、スキージの走行に伴って一方の主面hからペースト通過孔4を通して他方の主面tに印刷ペーストを通過させて、印刷対象物に印刷パターンを形成する工程である。
【0018】
本発明のスクリーン印刷版6において印刷用マスクの役割を果たす樹脂層3は、感光性樹脂を露光して硬化させることにより形成される。感光性樹脂の材質としては、例えばジアゾ系化合物モノマー、PVAモノマー、エチレンモノマー、もしくはアクリルモノマー等が用いられる。
【0019】
スクリーン印刷用基材5は、樹脂層3を補強するとともに一方の主面h上に載せた印刷ペーストがスキージの通過前にペースト通過孔4に入り込むことを防止するためのものであり、例えばステンレスメッシュ、ナイロンメッシュ等の強度および耐腐食性が高い細線を平織り加工したメッシュ材が用いられる。また、ニッケル等を電気鋳造法を用いてメッシュ形状に形成したプレート状のメッシュ材を用いることもできる。
【0020】
本発明のスクリーン印刷版において、ペースト通過孔4は、スキージの走行方向に平行な辺を有する長方形状であるとともに、一方の主面h側の第1孔部1および他方の主面t側の第2孔部2からなっている。
【0021】
そして、ペースト通過孔4の第1孔部1および第2孔部2の開口幅を、スキージの走行方向に平行な辺21,21’,22,22’間で第1孔部1より第2孔部2を大きくしたことから、第1孔部1を通過した印刷ペーストを広げながら第2孔部2より吐出させるので、形成されたパターンはスキージの走行方向に平行な辺22,22’部のペースト量が中央部に比べて少なくなり、周辺部の盛り上がりが抑えられる。他方で、ペースト通過孔4の第1孔部1および第2孔部2の開口幅を、スキージの走行方向に直交する辺31,31’,32,32’間で等しくしたことから、ペースト通過孔4の開口部においてスキージが最初に通過する部分での印刷ペーストを第1孔部1から第2孔部2を通過する間に第2孔部2のスキージが最初に通過する辺32’まで充分に行き届かせることができるので、他方の主面t側より吐出するペースト量が周辺部でばらつかなくなる。即ち、本発明のスクリーン印刷版6によれば、周辺部の盛り上がりを抑えて印刷ペーストのパターンの膜厚を均一にしつつ、スキージの走行方向による吐出するペースト量のばらつきを抑えてパターンのカスレの発生を少なくすることができる。なお、本発明のスクリーン印刷版6によれば、ペースト通過孔4の開口部においてスキージが最後に通過する部分でも印刷ペーストの広がりが制限されているので、スキージの走行方向を逆向きにしてもスクリーン印刷を行なうことができる。
【0022】
具体的には、例えば図2(a)に示すスキージの走行方向に平行な辺21,22間の距離xの値は10〜300μmに設定することが好ましい。xの値が10μmよりも小さい場合には周辺部の盛り上がりを充分に抑えることができず、またxの値が300μmよりも大きい場合には他方の主面t側より吐出するペースト量が周辺部でばらつくので一部にカスレが発生することがある。
【0023】
また、第1孔部1および第2孔部2の開口部は、それぞれ深さ方向で一定であることから、印刷ペーストの流れは開口幅が一定な部分を通過する間に乱れが少なくなるので、それぞれの孔部でのペーストの通過状態を安定させることができる。換言すれば、ペースト通過孔4は、ペーストの通過方向の断面において全域が第1孔部1に等しい領域と、ペーストの通過方向の断面において全域が第2孔部2に等しい領域とからなる。
【0024】
本発明のスクリーン印刷版は以下に示す製造方法により製作される。
【0025】
(工程1)図3(1a)はスクリーン印刷用基材5の一部を示す断面図であり、図3(1b)は図3(1a)のスクリーン印刷用基材5に第1感光性樹脂層7を形成した図である。本例におけるスクリーン印刷用基材5はステンレスメッシュであり、予めアルミ・ダイキャストフレーム等(図示せず)に接着剤で固着して所定のテンションに設定したものを用いた。そして、上記スクリーン印刷用基材5の一方の主面fに、ジアゾ系化合物モノマーに開始剤および溶剤を加えて成る樹脂液を、厚みが均一になるように専用バケットを用いて一方向もしくは往復するように塗布し、乾燥させることにより第1感光性樹脂層7が形成される。このとき、樹脂液をステンレスメッシュ5に塗り込むように塗布すると、樹脂液はステンレスメッシュ5の他方の主面rに到達することができる。本例における第1感光性樹脂層7の厚みはステンレスメッシュ5の厚みとほぼ同じか若干厚くなるように設定され、ステンレスメッシュ5が第1感光性樹脂層7内に埋め込まれる。
【0026】
(工程2)図3(2a)および(2b)に示すように、第1露光用マスク9を通して第1感光性樹脂層7を露光する。第1露光用マスク9は、長方形状の第1遮光部13を有しており、プラスチックやガラス等の光透過性の高い材料が用いて板状もしくはフィルム状に形成されたものである。なお、図3(2a)は第1遮光部13の短辺に平行な断面図であり、図3(2b)は第1遮光部13の長辺に平行な断面図である。具体的には、第1露光用マスク9を第1感光性樹脂層7に密着させておいて、例えば400mJ/cm2の光量の紫外線を用いて露光を行ない、露光した後に、密着させた第1露光マスク9を第1感光性樹脂層7から取り外す。
【0027】
(工程3)図3(3a)および図3(3b)は、図3(2a)および(2b)からそれぞれ第1感光性樹脂層7の第1遮光部13に対応する部位を除去して、仮設孔部11aを設けた第1樹脂層11を形成した図である。第1遮光部13に対応する部位は、未硬化状態なので例えば純水に一定時間浸して揺動させることにより除去することができる。また、硬化部分はIPAで洗浄して20〜40℃の温風で乾燥させる。そして形成された仮設孔部11aは、平行な一方の辺41,41’および平行な他方の辺42,42’を有したものとなる。
【0028】
(工程4)図3(4a)および図3(4b)は、図3(3a)および図3(3b)の仮設孔部11aを充填しつつ第1樹脂層11の一方の主面sにそれぞれ第2感光性樹脂層8を形成した図である。第2感光性樹脂層8は、上記工程1と同様の方法を用いて樹脂液を塗布し、乾燥させることにより形成される。なお、第2感光性樹脂層8を形成する樹脂液として、第1感光性樹脂層7に用いた樹脂液を用いておけば、第1樹脂層11と後述する第2樹脂層12との接合性がよく、また熱膨張係数等の物理的な性質が同じになるので、スクリーン印刷版の信頼性を高くすることができる。
【0029】
(工程5)図3(5a)および(5b)は、図3(4a)および図3(4b)の第2感光性樹脂層8の一方の主面に、それぞれ第2露光用マスク10を通して露光する工程を示す図である。第2露光用マスク10は、第1遮光部13よりも平行な一方の辺61,61’間で幅が大きく平行な他方の辺62,62’間で幅が小さい長方形状の第2遮光部14を有しており、露光するときには第2感光性樹脂層8の一方の主面pに、第2遮光部14の平行な一方の辺61,61’間に仮設孔部11aの平行な一方の辺41,41’が位置するとともに、第2遮光部14の平行な他方の辺62,62’が仮設孔部11aの平行な他方の辺42,42’間に位置するように位置合わせして密着させておく。
【0030】
(工程6)図3(6a)および(6b)は、図3(5a)および(5b)からそれぞれ第2感光性樹脂層8の第2遮光部14に対応する部位を除去して第2樹脂層を形成する工程を示す図である。第2遮光部14に対応する部位は未硬化状態であり、上記工程3と同様の方法を用いて除去・乾燥することによりペースト通過孔4が設けられた第2樹脂層12が形成される。ペースト通過孔4は、仮設孔部11a内に仮設孔部11aの平行な一方の辺41(21),41’(21’)および第2樹脂層12に形成された第2遮光部14に対応する平行な他方の辺31,31’を有する第1孔部1が形成されるとともに、第1樹脂層11の一方の主面側の第2樹脂層12に第2遮光部14に対応する平行な一方の辺22,22’および平行な他方の辺32,32’を有する第2孔部2が形成される。
【0031】
このようにして、第1樹脂層11および第2樹脂層12から構成される層状に形成された樹脂層3と、樹脂層3の一部に設けられ一方の主面h側の第1孔部1および他方の主面t側の第2孔部2からなるペースト通過孔4と、一部がペースト通過孔4が設けられた領域で露出するようにして樹脂層3の内部に埋め込まれたスクリーン印刷用基材5とを備えた本発明のスクリーン印刷版6が完成する。
【0032】
本発明のスクリーン印刷版6の製造方法によれば、工程5のときに、第1遮光部13に対応した仮設孔部11aを有する第1樹脂層11を形成しておいて、仮設孔部11aを充填しつつ第1樹脂層11の一方の主面に第2感光性樹脂層8を形成し、第2遮光部14の平行な一方の辺61,61’間に仮設孔部11aの平行な一方の辺41,41’が位置するとともに、第2遮光部14の平行な他方の辺62,62’が仮設孔部11aの平行な他方の辺42,42’間に位置するように位置合わせして露光することから、第2遮光部14の位置合わせに多少のずれがあったとしても、工程6においては、仮設孔部11a内に仮設孔部11aの平行な一方の辺41(21),41’(21’)および第2樹脂層12に形成された第2遮光部14に対応する平行な他方の辺31,31’を有する第1孔部1が形成されるとともに、第1樹脂層11の一方の主面s側の第2樹脂層12に第2遮光部14に対応する平行な一方の辺22,22’および平行な他方の辺32,32’を有する第2孔部2が形成される。従って、第1孔部1および第2孔部2の開口幅がスキージの走行方向に平行な辺21,21’,22,22’間で第1孔部1より第2孔部2が大きく、スキージの走行方向に直交する辺31,31’,32,32’間で等しいペースト通過孔4を容易に設けることができる。
【0033】
具体的な実施例として、第2孔部2の形状を600×300μmの長方形とし、図2(a)に示すスキージの走行方向に平行な辺21,22間の距離xの値をそれぞれ0,10,20,40,60,80,100,200,300および400μmに設定した本発明のスクリーン印刷版を用いて、ニッケル粉末,エチルセルロースおよびターピネオールからなるペーストを100ポイズの粘度に設定してスクリーン印刷テストを行なった。
【0034】
テストに用いたスクリーン印刷版6は、スクリーン印刷用基材5として、線径が18μmのステンレス鋼線を平織り加工し、開口率を42%、透過体積を17cm/mに設定した500番メッシュを用いた。このスクリーン印刷用基材5を、テンションが0.28mmの条件で450×450mmのアルミ・ダイキャストフレームに接着剤で固定し、スクリーン印刷用基材5を埋め込むように厚み30μmの第1感光性樹脂層7を形成して露光することにより仮設孔部11aが設けられた第1樹脂層11を形成した後、第1樹脂層の表面に厚み3μmの第2感光性樹脂層8を形成して露光することにより、ペースト通過孔4が設けられた第2樹脂層12を形成してスクリーン印刷版6を製造した。第1感光性樹脂層7および第2感光性樹脂層8としてはジアゾ化合物モノマーを用いた。
【0035】
上記テストの結果、xの値が0μmのときには周辺部が盛り上がり、xが400μmのときには印刷ペーストのパターンの周辺部に印刷ペーストのカスレが発生した。そしてxの値が10〜300μmのときには、周辺部の盛り上がりがなく、カスレも発生しなかった。
【0036】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0037】
例えば、上述した実施の形態の例においては、スクリーン印刷用基材5が第1樹脂層11内に埋め込まれているが、スクリーン印刷用基材5はなくても構わない。この場合のスクリーン印刷版6の製造方法においては、第1感光性樹脂層7を形成した後に、工程4の前にスクリーン印刷用基材5を第1感光性樹脂層7から分離させるような補助工程を採用するとよい。なお、スクリーン印刷用基材5を第1感光性樹脂層7から分離させる補助工程は、工程2で露光する前で行なっても、工程3で露光した後で行なっても構わない。このような製造方法に用いるスクリーン印刷用基材5は、分離を容易にするために表面が平滑な板材を用いるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のスクリーン印刷版の実施の形態の一例を示す、一部を下方から見た平面図である。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ図1に示すスクリーン印刷版のA−A’線およびB−B’線断面図である。
【図3】(1a)、(1b)、(2a)、(2b)、(3a)、(3b)、(4a)、(4b)、(5a)、(5b)、(6a)および(6b)は、それぞれ本発明のスクリーン印刷版の製造方法を示す各工程毎の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1・・・第1孔部
2・・・第2孔部
3・・・樹脂層
4・・・ペースト通過孔
5・・・スクリーンメッシュ
6・・・スクリーン印刷版
7・・・第1感光性樹脂層
8・・・第2感光性樹脂層
9・・・第1露光用マスク
10・・・第2露光用マスク
11・・・第1樹脂層
11a・・・仮設孔部
12・・・第2樹脂層
13・・・第1遮光部
14・・・第2遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面上のスキージの走行に伴って前記一方の主面からペースト通過孔を通して他方の主面に印刷ペーストを通過させるスクリーン印刷版であって、前記ペースト通過孔は、前記スキージの走行方向に平行な辺を有する長方形状であるとともに前記一方の主面側の第1孔部および前記他方の主面側の第2孔部からなり、前記第1孔部および前記第2孔部の開口幅は、前記スキージの走行方向に平行な辺間で前記第1孔部より前記第2孔部が大きく、前記スキージの走行方向に直交する辺間で等しいことを特徴とするスクリーン印刷版。
【請求項2】
前記第1孔部および前記第2孔部の開口幅は、それぞれ深さ方向で一定であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷版。
【請求項3】
スクリーン印刷用基材の一方の主面に第1感光性樹脂層を形成する工程と、
前記第1感光性樹脂層に長方形状の第1遮光部を有する第1露光用マスクを通して露光する工程と、
前記第1感光性樹脂層の前記第1遮光部に対応する部位を除去して、平行な一方の辺および平行な他方の辺を有する仮設孔部を設けた第1樹脂層を形成する工程と、
前記仮設孔部を充填しつつ前記第1樹脂層の一方の主面に第2感光性樹脂層を形成する工程と、
前記第2感光性樹脂層の一方の主面に、前記第1遮光部よりも平行な一方の辺間で幅が大きく平行な他方の辺間で幅が小さい長方形状の第2遮光部を有する第2露光用マスクを通して、前記第2遮光部の平行な一方の辺間に前記仮設孔部の平行な一方の辺が位置するとともに、前記第2遮光部の平行な他方の辺が前記仮設孔部の平行な他方の辺間に位置するように位置合わせして露光する工程と、
前記第2感光性樹脂層の前記第2遮光部に対応する部位を除去して第2樹脂層を形成し、前記仮設孔部内に前記仮設孔部の平行な一方の辺および前記第2樹脂層に形成された前記第2遮光部に対応する平行な他方の辺を有する第1孔部を形成するとともに、前記第1樹脂層の一方の主面側の前記第2樹脂層に前記第2遮光部に対応する平行な一方の辺および平行な他方の辺を有する第2孔部を形成して、前記第1孔部および前記第2孔部からなるペースト通過孔を設ける工程と
を具備することを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−327064(P2006−327064A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155052(P2005−155052)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】